基本近傍系

同義語:近傍基neighborhood basislocal basefundamental system of neighborhoods

概要

基本近傍系(neighborhood basis, local base)とは、位相空間の点 $x$ の近傍からなる族 $\mathcal{B}(x)$ であって、$x$ のどの近傍もその族のある成員を含むようにできるもののことで、近傍基ともいう。近傍系全体を列挙する代わりに「いくらでも小さい近傍の見本」を指定すれば、開集合の判定、点列の収束、写像の一点での連続性など、点の周りで決まる位相的性質はすべて基本近傍系だけで記述できる。距離空間では開球の族 $\{B(x,1/n)\}_{n\ge1}$ が可算な基本近傍系をなし、これが $\varepsilon$-$\delta$ 論法の根拠であり、第1可算公理の原型である。空間全体の開基が大域的な部品集であるのに対し、基本近傍系はその一点版である。各点に適当な三条件を満たす集合族を与えると、それらを基本近傍系とする位相がただ一つ定まる。

$$$$

前提知識: 位相空間, 開集合, 近傍, 近傍系

定義

位相空間 $X$ の点 $x$ に対し、部分集合 $N\subset X$ が $x$ の近傍であるとは、ある開集合 $U$ が存在して $x\in U\subset N$ となることをいう。$x$ の近傍全体の族を $\mathcal{N}(x)$ と書き、$x$ の近傍系という。

点の基本近傍系

$X$ を位相空間、$x\in X$ とする。$x$ の近傍からなる族 $\mathcal{B}(x)\subset\mathcal{N}(x)$ が $x$ の基本近傍系(neighborhood basis, neighborhood base, local base, fundamental system of neighborhoods)または近傍基であるとは、次を満たすことをいう。

  • 任意の近傍 $N\in\mathcal{N}(x)$ に対し、ある $B\in\mathcal{B}(x)$ が存在して $B\subset N$ となる。
    基本近傍系の成員がすべて開集合であるとき、$\mathcal{B}(x)$ を $x$ の開基本近傍系(open neighborhood basis)または開近傍基という。

この定義は、「$x$ の周りのどんなに狭い範囲 $N$ を指定されても、手持ちの見本 $\mathcal{B}(x)$ の中から、さらにその範囲に収まるもの $B$ を取り出せる」ことを意味する。近傍系 $\mathcal{N}(x)$ 自身は常に $x$ の基本近傍系である(各 $N$ に対し $B:=N$ をとればよい)。したがって基本近傍系は常に存在するが、意味があるのは近傍系よりずっと小さい(たとえば可算な)基本近傍系がとれる場合である。また基本近傍系 $\mathcal{B}(x)$ から近傍系は
$$ \mathcal{N}(x)=\{N\subset X\mid \text{ある }B\in\mathcal{B}(x)\text{ について }B\subset N\} $$
として復元される($\supset$ は近傍系の上方閉性、$\subset$ は基本近傍系の定義による)。

流儀差

「近傍」を「$x$ を含む開集合」の意味で用いる教科書(Munkres Mun00 など)では、基本近傍系の成員も自動的に開集合となり、本記事でいう開基本近傍系だけを扱うことになる。その流儀では、閉区間の族 $\{[x-1/n,\,x+1/n]\}$ のような例は基本近傍系と呼ばれない。本記事は Bourbaki Bou98・Willard Wil04・松坂 Mat68 と同じく、開集合を内側に含む集合をすべて近傍と呼ぶ流儀をとる。二つの流儀の比較は近傍が扱う。

直感

基本近傍系は、点の近くを論じるときに全部の近傍を持ち出す代わりに使える、「いくらでも内側に食い込む小さな近傍の見本集」である。空間全体の開基が「開集合を生成する部品集」であるのに対し、基本近傍系はその一点版であり、収束・連続性(連続写像)・閉包など点の周りで決まる概念は、近傍系を基本近傍系で置き換えて検査できる。距離空間で半径 $1/n$ の開球の族という可算な基本近傍系がとれることが、点列だけで位相を扱えることの根拠になる。

例と反例

実数直線の基本近傍系

通常の位相を持つ $\mathbb{R}$ の点 $x$ に対し、次はいずれも $x$ の基本近傍系である。$N$ を $x$ の任意の近傍とすると、ある $\varepsilon>0$ で $(x-\varepsilon,\,x+\varepsilon)\subset N$ となる(近傍)ことを使う。

  1. 開区間(区間)の族 $\{(x-1/n,\,x+1/n)\mid n\in\mathbb{N},\ n\ge1\}$:$1/n<\varepsilon$ となる $n$ をとればよい。
  2. 閉区間の族 $\{[x-1/n,\,x+1/n]\mid n\in\mathbb{N},\ n\ge1\}$:$1/n<\varepsilon$ なら $[x-1/n,\,x+1/n]\subset(x-\varepsilon,\,x+\varepsilon)$ である。各成員は開集合ではないが $x\in(x-1/n,\,x+1/n)\subset[x-1/n,\,x+1/n]$ により近傍である。基本近傍系の成員は開集合である必要はない。
  3. 有理数半径の族 $\{(x-q,\,x+q)\mid q\in\mathbb{Q},\ q>0\}$:$0< q<\varepsilon$ なる有理数 $q$ をとればよい。
  4. $x$ を中心とするすべての開区間 $\{(x-r,\,x+r)\mid r>0\}$。これは非可算だが、1 の可算な部分族で置き換えられる。
距離空間の基本近傍系

距離空間 $(X,d)$ の点 $x$ について、開球 $B(x,r):=\{y\in X\mid d(x,y)< r\}$ を用いた族
$$ \{B(x,\varepsilon)\mid\varepsilon>0\},\qquad \{B(x,1/n)\mid n\in\mathbb{N},\ n\ge1\} $$
はいずれも $x$ の開基本近傍系である(prop-neighborhood-basis-open-neighborhoods)。前者は $\{B(x,1/n)\mid n\ge1\}$ を含むので基本近傍系であり、後者は可算であり、このように可算な基本近傍系がとれることが第1可算公理の本質である。閉球の族 $\{\{y\mid d(x,y)\le1/n\}\mid n\ge1\}$ も基本近傍系である。

平面の基本近傍系

Euclid 平面(Euclid空間)$\mathbb{R}^2$ の点 $x=(x_1,x_2)$ に対し、次はいずれも $x$ の基本近傍系である。

  1. $x$ を中心とする開円板全体 $\{B(x,r)\mid r>0\}$(距離空間の例による)。
  2. $x$ を中心とする開正方形全体 $\{(x_1-r,\,x_1+r)\times(x_2-r,\,x_2+r)\mid r>0\}$。
  3. $x$ を含む開凸集合(凸集合)全体。
    1 と 2 が基本近傍系であることは、半径 $r$ の開円板が一辺 $2r$ の開正方形に含まれ、一辺 $2r$ の開正方形が半径 $r\sqrt2$ の開円板に含まれることから従う。3 は、開円板が $x$ を含む開凸集合であることから従う。開円板と開正方形の族は互いに他方の成員の内側に入り込めるため、「同じ位相を見る道具」として交換可能である。2 は積位相における標準的な基本近傍系(各座標の近傍の積)の最も簡単な場合である。同じ点に対する基本近傍系は一意でなく、扱いやすい形のものを選んでよい。
離散位相と密着位相の基本近傍系

離散位相を持つ空間 $X$ では、各点 $x$ に対し一点集合だけからなる族 $\{\{x\}\}$ が基本近傍系である。$\{x\}$ が開集合で、どの近傍も $x$ を含む以上 $\{x\}$ を含むからである。逆の極端として、密着位相では $x$ の近傍は $X$ ただ一つであり、$\{X\}$ が基本近傍系である。

反例:小さくならない族

$\mathbb{R}$ に通常の位相を入れ、点 $x$ をとる。

  1. 族 $\{(x-n,\,x+n)\mid n\in\mathbb{N},\ n\ge1\}$ は、満たす性質「各成員は $x$ の近傍である」を持つが、満たさない性質「基本近傍系である」を持たない。近傍 $N=(x-\tfrac12,\,x+\tfrac12)$ をとると、族のどの成員も長さ $2$ 以上の区間だから $N$ に含まれない。この例は含意「$x$ の近傍からなる族 $\Rightarrow$ 基本近傍系」を破る。基本近傍系の条件は「近傍をたくさん持つこと」ではなく「いくらでも小さい近傍を持つこと」である。
  2. 族 $\{[x,\,x+1/n)\mid n\in\mathbb{N},\ n\ge1\}$ は、満たす性質「どの近傍の内側にも成員が入り込む」を持つが、満たさない性質「各成員が $x$ の近傍である」を持たない($[x,x+1/n)$ は $x$ の左側に余裕がない)ので、基本近傍系ではない。ただし半開区間を開基とするSorgenfrey直線(下限位相)では、同じ族が $x$ の開基本近傍系になる。どの族が基本近傍系かは位相のとり方に依存する。

性質

開近傍全体と開球の族

$X$ を位相空間、$x\in X$ とする。$x$ を含む開集合全体の族
$$ \mathcal{U}(x):=\{U\subset X\mid U\text{ は開集合で }x\in U\} $$
は $x$ の開基本近傍系である。さらに $(X,d)$ が距離空間のとき、開球の族 $\{B(x,1/n)\mid n\in\mathbb{N},\ n\ge1\}$ は $x$ の可算な開基本近傍系である。

$x$ を含む開集合 $U$ は $x\in U\subset U$ を満たすから $x$ の近傍であり、$\mathcal{U}(x)\subset\mathcal{N}(x)$ である。任意の近傍 $N\in\mathcal{N}(x)$ に対し、近傍の定義からある開集合 $U$ が存在して $x\in U\subset N$ となる。この $U$ は $\mathcal{U}(x)$ の成員だから、$\mathcal{U}(x)$ は基本近傍系である。
次に距離空間の場合を考える。各開球 $B(x,1/n)$ は距離位相の開集合で $x$ を含むから、$x$ の開近傍である。任意の近傍 $N$ をとると、ある開集合 $U$ で $x\in U\subset N$ となるものがあり、距離位相の定義からある $\varepsilon>0$ で $B(x,\varepsilon)\subset U$ となる(開球が開集合であることを含め、近傍を参照)。$1/n<\varepsilon$ を満たす $n\ge1$ を選べば
$$ B(x,1/n)\subset B(x,\varepsilon)\subset U\subset N $$
となる。よって $\{B(x,1/n)\}_{n\ge1}$ は $x$ の基本近傍系であり、添字集合が可算だから可算である。$\square$

基本近傍系による開集合の特徴付け

$X$ を位相空間とし、各点 $x\in X$ に基本近傍系 $\mathcal{B}(x)$ が与えられているとする。部分集合 $U\subset X$ について次は同値である。

  1. $U$ は開集合である。
  2. 任意の $x\in U$ に対し、ある $B\in\mathcal{B}(x)$ が存在して $B\subset U$ となる。

$1\Rightarrow2$:$U$ が開集合で $x\in U$ なら、$x\in U\subset U$ より $U$ は $x$ の近傍である。基本近傍系の定義から、ある $B\in\mathcal{B}(x)$ で $B\subset U$ となるものがとれる。
$2\Rightarrow1$:各 $x\in U$ に対し、仮定からある $B_x\in\mathcal{B}(x)$ で $B_x\subset U$ となるものをとる。$B_x$ は $x$ の近傍だから、ある開集合 $V_x$ が存在して $x\in V_x\subset B_x\subset U$ となる。このとき $U=\bigcup_{x\in U}V_x$ が成り立つ。実際、各 $V_x$ は $U$ に含まれるから右辺 $\subset U$ であり、各 $x\in U$ は $V_x$ に属するから $U\subset$ 右辺である。よって $U$ は開集合の合併として開集合である。$\square$

この命題は、各点の基本近傍系をすべて合わせれば位相が完全に復元できることを意味する。とくに、同じ集合上の二つの位相が各点で互いに入り込み合う基本近傍系を持てば、それらの位相は一致する(ex-neighborhood-basis-plane の Euclid 距離と最大値距離が同じ位相を定めることがその典型である)。

収束の基本近傍系による判定

$X$ を位相空間、$x\in X$、$\mathcal{B}(x)$ を $x$ の基本近傍系とする。点列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ について次は同値である。

  1. $(x_n)$ は $x$ に収束する。すなわち、$x$ の任意の近傍 $N$ に対しある $n_0\in\mathbb{N}$ が存在して、$n\ge n_0$ ならば $x_n\in N$。
  2. 任意の $B\in\mathcal{B}(x)$ に対しある $n_0\in\mathbb{N}$ が存在して、$n\ge n_0$ ならば $x_n\in B$。

$1\Rightarrow2$:各 $B\in\mathcal{B}(x)$ は $x$ の近傍だから、1 をそのまま適用すればよい。
$2\Rightarrow1$:$N$ を $x$ の任意の近傍とする。基本近傍系の定義から $B\in\mathcal{B}(x)$ で $B\subset N$ となるものがあり、仮定 2 から $n_0$ で「$n\ge n_0$ ならば $x_n\in B$」となるものがとれる。このとき $n\ge n_0$ ならば $x_n\in B\subset N$ である。$\square$

同じ議論はネットやフィルターの収束にもそのまま通用する。すなわち、収束の検査には近傍系全体ではなく基本近傍系だけを調べれば十分である。

連続性の基本近傍系による言い換え

$f\colon X\to Y$ を位相空間の間の写像、$x\in X$ とし、$\mathcal{B}(x)$ を $x$ の基本近傍系、$\mathcal{B}'(f(x))$ を $f(x)$ の基本近傍系とする。次は同値である。

  1. $f$ は $x$ で連続である。すなわち、$f(x)$ の任意の近傍 $N'$ に対し $f^{-1}(N')$ は $x$ の近傍である(連続写像)。
  2. 任意の $B'\in\mathcal{B}'(f(x))$ に対し、ある $B\in\mathcal{B}(x)$ が存在して $f(B)\subset B'$ となる。

$1\Rightarrow2$:$B'\in\mathcal{B}'(f(x))$ をとる。$B'$ は $f(x)$ の近傍だから、仮定 1 より $f^{-1}(B')$ は $x$ の近傍である。$\mathcal{B}(x)$ が基本近傍系であることから、ある $B\in\mathcal{B}(x)$ で $B\subset f^{-1}(B')$ となるものがとれる。このとき $f(B)\subset f(f^{-1}(B'))\subset B'$ である。
$2\Rightarrow1$:$N'$ を $f(x)$ の任意の近傍とする。$\mathcal{B}'(f(x))$ が基本近傍系だから、ある $B'\in\mathcal{B}'(f(x))$ で $B'\subset N'$ となるものがある。仮定 2 より、ある $B\in\mathcal{B}(x)$ で $f(B)\subset B'$ となるものがとれる。すると
$$ B\subset f^{-1}(B')\subset f^{-1}(N') $$
であり、$B$ は $x$ の近傍だから、$B$ を含む $f^{-1}(N')$ も $x$ の近傍である($x\in V\subset B\subset f^{-1}(N')$ なる開集合 $V$ がとれる)。よって $f$ は $x$ で連続である。$\square$

距離空間の開球の基本近傍系にこの命題を適用すると、いわゆる $\varepsilon$-$\delta$ 論法(任意の $\varepsilon>0$ に対しある $\delta>0$ が存在して $f(B(x,\delta))\subset B(f(x),\varepsilon)$)がそのまま得られる。$\varepsilon$-$\delta$ 論法とは「開球という特定の基本近傍系で連続性を検査すること」にほかならない。

基本近傍系のフィルター基としての性質

$X$ を位相空間とし、各点 $y\in X$ に基本近傍系 $\mathcal{B}(y)$ が与えられているとし、$x\in X$ とする。このとき次が成り立つ。

  1. $\mathcal{B}(x)\neq\emptyset$ であり、各 $B\in\mathcal{B}(x)$ は $x$ を含む。とくに $B\neq\emptyset$ である。
  2. 任意の $B_1,B_2\in\mathcal{B}(x)$ に対し、ある $B_3\in\mathcal{B}(x)$ が存在して $B_3\subset B_1\cap B_2$ となる。
  3. 任意の $B\in\mathcal{B}(x)$ に対し、ある $B_0\in\mathcal{B}(x)$ が存在して、すべての $y\in B_0$ についてある $B'\in\mathcal{B}(y)$ で $B'\subset B$ となるものがある。

1:$X$ は $x$ の近傍だから、基本近傍系の定義により $\mathcal{B}(x)$ は $X$ に含まれる成員を持ち、特に空でない。$B\in\mathcal{B}(x)$ は $x$ の近傍だから、ある開集合 $U$ で $x\in U\subset B$ となるものがあり、とくに $x\in B$ である。
2:$B_1,B_2$ はいずれも $x$ の近傍だから、開集合 $U_1,U_2$ で $x\in U_i\subset B_i$($i=1,2$)となるものがとれる。$U_1\cap U_2$ は開集合で $x\in U_1\cap U_2\subset B_1\cap B_2$ だから、$B_1\cap B_2$ は $x$ の近傍である。$\mathcal{B}(x)$ が基本近傍系であることから、ある $B_3\in\mathcal{B}(x)$ で $B_3\subset B_1\cap B_2$ となるものが存在する。
3:$B\in\mathcal{B}(x)$ に対し、開集合 $U$ で $x\in U\subset B$ となるものをとる。$U$ は $x$ の近傍だから、ある $B_0\in\mathcal{B}(x)$ で $B_0\subset U$ となるものがある。任意の $y\in B_0$ に対し $y\in U\subset B$ で $U$ は開集合だから $B$ は $y$ の近傍であり、$\mathcal{B}(y)$ が基本近傍系であることから、ある $B'\in\mathcal{B}(y)$ で $B'\subset B$ となるものがとれる。$\square$

性質 1・2 は、$\mathcal{B}(x)$ が $X$ 上のフィルター基をなし、それが生成するフィルターが近傍系 $\mathcal{N}(x)$ であることを意味する。性質 3 は、近傍系の公理のうち「開核の存在」にあたる条件を基本近傍系の言葉で述べたものである。次の定理は、この三性質が「基本近傍系になりうる族」を特徴付けることを示す。

基本近傍系による位相の導入

$X$ を集合とし、各点 $x\in X$ に部分集合の族 $\mathcal{B}(x)\subset\mathcal{P}(X)$(冪集合)が与えられ、prop-neighborhood-basis-filter-base の性質 1〜3 を満たすとする。このとき、各点 $x$ で $\mathcal{B}(x)$ が $x$ の基本近傍系となるような $X$ 上の位相がただ一つ存在する。その位相の開集合は、「任意の $x\in U$ に対しある $B\in\mathcal{B}(x)$ で $B\subset U$ となる」集合 $U$ である。

各点 $x$ に対し
$$ \mathcal{V}(x):=\{N\subset X\mid \text{ある }B\in\mathcal{B}(x)\text{ について }B\subset N\} $$
とおき、$\mathcal{V}(x)$ が近傍系の四条件(所属・上方閉性・有限交叉閉性・開核の存在)を満たすことを確かめる。所属:性質 1 より $\mathcal{B}(x)$ は成員 $B$ を持ち $B\subset X$ だから $X\in\mathcal{V}(x)$。また $N\in\mathcal{V}(x)$ なら $B\subset N$ なる $B\in\mathcal{B}(x)$ があり、性質 1 より $x\in B\subset N$。上方閉性:$B\subset N\subset M$ なら $B\subset M$ である。有限交叉閉性:$N_1,N_2\in\mathcal{V}(x)$ に対し $B_i\subset N_i$ なる $B_i\in\mathcal{B}(x)$ をとると、性質 2 より $B_3\subset B_1\cap B_2\subset N_1\cap N_2$ なる $B_3\in\mathcal{B}(x)$ があり、$N_1\cap N_2\in\mathcal{V}(x)$。開核の存在:$N\in\mathcal{V}(x)$ に対し $B\subset N$ なる $B\in\mathcal{B}(x)$ をとり、性質 3 により $B_0\in\mathcal{B}(x)$ で「すべての $y\in B_0$ についてある $B'\in\mathcal{B}(y)$ で $B'\subset B$」となるものをとる。$W:=B_0$ とおくと $W\in\mathcal{V}(x)$ であり、任意の $y\in W$ に対し $B'\subset B\subset N$ なる $B'\in\mathcal{B}(y)$ があるので $N\in\mathcal{V}(y)$ である。
よって近傍系の再構成定理により、各点の近傍系が $\mathcal{V}(x)$ に一致する $X$ 上の位相 $\mathcal{O}$ がただ一つ存在し、その開集合は「任意の $x\in U$ に対し $U\in\mathcal{V}(x)$」を満たす集合 $U$、すなわち「任意の $x\in U$ に対しある $B\in\mathcal{B}(x)$ で $B\subset U$」を満たす集合である。この位相で $\mathcal{B}(x)$ は $x$ の基本近傍系である。実際 $\mathcal{B}(x)\subset\mathcal{V}(x)$($B\subset B$)であり、任意の近傍 $N\in\mathcal{V}(x)$ は定義によりある $B\in\mathcal{B}(x)$ を含む。
一意性:$\mathcal{O}'$ を、各点で $\mathcal{B}(x)$ が基本近傍系となる位相とする。$\mathcal{O}'$ に関する $x$ の近傍系は、上方閉性と基本近傍系の定義により「ある $B\in\mathcal{B}(x)$ を含む集合」全体、すなわち $\mathcal{V}(x)$ に一致する。したがって再構成定理の一意性から $\mathcal{O}'=\mathcal{O}$ である。$\square$

開基との関係

$X$ を位相空間とする。

  1. $\mathcal{B}$ を $X$ の開基とすると、各点 $x$ に対し $\mathcal{B}_x:=\{B\in\mathcal{B}\mid x\in B\}$ は $x$ の開基本近傍系である。
  2. 逆に、各点 $x$ に開基本近傍系 $\mathcal{B}(x)$ が与えられているとき、合併 $\mathcal{B}:=\bigcup_{x\in X}\mathcal{B}(x)$ は $X$ の開基である。

開基の定義として、「開集合からなる族 $\mathcal{B}$ で、任意の開集合 $U$ と任意の $x\in U$ に対し $x\in B\subset U$ となる $B\in\mathcal{B}$ が存在するもの」を用いる(これは「任意の開集合が $\mathcal{B}$ の成員の合併になる」と同値である。開基)。
1:$\mathcal{B}_x$ の各成員は $x$ を含む開集合だから $x$ の開近傍である。$N$ を $x$ の任意の近傍とし、開集合 $U$ で $x\in U\subset N$ となるものをとると、開基の定義により $x\in B\subset U\subset N$ となる $B\in\mathcal{B}$ があり、$B\in\mathcal{B}_x$ である。
2:$\mathcal{B}$ の各成員は開集合である。$U$ を開集合、$x\in U$ とすると、$U$ は $x$ の近傍だから、ある $B\in\mathcal{B}(x)\subset\mathcal{B}$ で $B\subset U$ となるものがあり、prop-neighborhood-basis-filter-base の性質 1 より $x\in B$ である。よって $\mathcal{B}$ は開基である。$\square$

開基が「大域的な部品集」、基本近傍系が「局所的な部品集」であり、開集合に限る限り相互に行き来できる。ただし基本近傍系は開集合でない成員も許す分だけ柔軟である。

補足:可算な基本近傍系と第1可算公理

各点が可算な基本近傍系を持つ位相空間は第1可算公理を満たすという。prop-neighborhood-basis-open-neighborhoods により距離空間はすべて第1可算である。第1可算空間では、閉包や連続性(点列連続性との一致)などが点列だけで特徴付けられる(たとえば $x\in\overline{A}$ であることと、$A$ の点列で $x$ に収束するものが存在することが同値になる)。これらの定式化と証明は第1可算公理が扱う。
可算な基本近傍系 $\{B_n\}_{n\in\mathbb{N}}$ がとれるときは、$B'_0:=B_0$ とし、$B'_{n+1}\subset B'_n\cap B_{n+1}$ を満たす $B'_{n+1}\in\mathcal{B}(x)$ を prop-neighborhood-basis-filter-base の性質 2 により順に選ぶことで、単調減少な基本近傍系 $B'_0\supset B'_1\supset\cdots$ が得られる($B'_n\subset B_n$ だから、どの近傍もある $B_n$ を含み、したがってある $B'_n$ を含む)。この取り直しは点列を用いる議論で頻繁に使われる。
一方、可算な基本近傍系を持たない点のある空間もある。たとえば非可算集合上の補可算位相や、$\mathbb{R}$ 上の実数値関数全体に各点収束の位相を入れた空間 $\mathbb{R}^{\mathbb{R}}$ は第1可算でない(Wil04 §4・§10、Engelking89 §1.1)。点 $x$ における基本近傍系の最小濃度は点 $x$ の指標(character)$\chi(x,X)$ と呼ばれ、位相的基数不変量の一つである(Engelking89 §1.1)。

関連項目

参考文献

[1]
Stephen Willard, General Topology, Dover Books on Mathematics, Dover Publications, 2004, §4(Neighborhoods:近傍基・開集合と連続性の近傍基による特徴付け)、§5(Bases and subbases)、§10(Sequences:第1可算公理と非第1可算の例)
[2]
Nicolas Bourbaki, General Topology: Chapters 1–4, Elements of Mathematics, softcover reprint of the 1989 English edition, Springer-Verlag, 1998, Chapter I §1.2(Neighbourhoods)、§1.3(Fundamental systems of neighbourhoods:基本近傍系による位相の定義)
[3]
松坂和夫, 集合・位相入門, 岩波書店, 1968, 第4章(位相空間:近傍系・基本近傍系・第1可算公理)、第5章(距離空間の位相)
[4]
James R. Munkres, Topology, Prentice Hall, 2000, §17(neighborhood を「$x$ を含む開集合」の意味で用いる流儀)、§21(距離空間と第1可算公理、点列補題)
[5]
Ryszard Engelking, General Topology, Sigma Series in Pure Mathematics 6, Heldermann Verlag, 1989, §1.1(Topological spaces:base at a point、点の指標 $\chi(x,X)$、第1可算公理)

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する