イソトピー

同義語:isotopy

概要

イソトピー(isotopy)とは、多様体 $P$ から $N$ への埋め込みを、各時刻で埋め込みであるまま滑らかに(位相的な場合は連続的に)動かす変形のことで、$N$ 全体の微分同相写像の族 $H_t$($H_0$ は恒等写像)で動かすものをアンビエントイソトピーという。境界のない多様体へのコンパクトな多様体の埋め込みでは、イソトピーはコンパクト台のアンビエントイソトピーから得られ(イソトピー拡張定理)、とくに補空間は微分同相になる。このため三葉結び目と自明な結び目はホモトピックだがイソトピックでなく、埋め込む多様体のコンパクト性を外すと拡張定理は成り立たない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: はめ込みと埋め込み(可微分多様体), ホモトピー, ベクトル場の流れ, 隆起関数

イソトピー(isotopy)は、埋め込みを、各時刻で埋め込みであるまま動かす変形である。ホモトピー は途中の写像が単射であることを求めないので、ひもが自分自身を通り抜ける変形も許してしまい、結び目 はどれも互いにホモトピックになる。埋め込み方そのものを比べるには、途中でも交わらない変形、さらには周りの空間全体を動かす変形(アンビエントイソトピー)が要る。この記事では 2 つを定義し、コンパクトな多様体の埋め込みでは前者から後者が得られること(イソトピー拡張定理)を証明する。

問い答え
イソトピーはいつ空間全体の変形から来るか埋め込む多様体がコンパクトで行き先に境界がなければ、いつでも来る(thm-iso-extension)
ホモトピーとの違いは何か三葉結び目と自明な結び目はホモトピックだがイソトピックでない(cor-iso-knots)
定理の仮定は外せるかコンパクト性・各時刻で埋め込みであること・境界がないことのどれを外しても成り立たない(ex-iso-counter)

定義

この記事では、多様体は Hausdorff かつ第 2 可算で境界のない $C^\infty$ 級多様体とし(境界をもつものは断ってから使う)、「滑らか」は $C^\infty$ 級を指す。埋め込みは はめ込みと埋め込み(可微分多様体) の定義「はめ込みと埋め込み」の意味(はめ込みで、像への同相写像であるもの)とする。$P$、$N$ を多様体とする。

イソトピー

滑らかな写像 $F\colon\mathbb{R}\times P\to N$、$(t,x)\mapsto F_t(x)$ で、各 $t$ について $F_t$ が埋め込みであるものを、$F_0$ から $F_1$ への イソトピー という。2 つの埋め込み $f,g\colon P\to N$ の間に $F_0=f$、$F_1=g$ となるイソトピーがあるとき、$f$ と $g$ は イソトピック であるといい、$f\simeq g$ と書く。

開区間 $J\supset[0,1]$ の上だけで定まった族でも、隆起関数 の例「滑らかな階段関数」の関数 $\lambda$($t\le0$ で $0$、$t\ge1$ で $1$)を使って $F_{\lambda(t)}$ と付け替えれば、すべての $t$ で定まり $t\le0$ で $F_0$、$t\ge1$ で $F_1$ に等しいイソトピーになる。

アンビエントイソトピー

滑らかな写像 $H\colon\mathbb{R}\times N\to N$ で、各 $t$ について $H_t$ が $N$ の微分同相写像であり、$H_0=\mathrm{id}_N$ であるものを、$N$ の アンビエントイソトピー(ambient isotopy、全空間イソトピー)という。$N$ のコンパクト集合 $C'$ があってすべての $t$ で $H_t$ が $C'$ の外の点を動かさないとき、コンパクト台 であるという。埋め込み $f,g\colon P\to N$ について $H_1\circ f=g$ となるアンビエントイソトピー $H$ があるとき、$f$ と $g$ は アンビエントイソトピック であるという。

アンビエントイソトピー $H$ があれば $F_t:=H_t\circ f$ は $f$ から $g$ へのイソトピーである(埋め込みと微分同相写像の合成は埋め込み)。さらに $F$ は $f$ から $g$ へのホモトピーでもある。したがって
$$ \text{アンビエントイソトピック}\ \Longrightarrow\ \text{イソトピック}\ \Longrightarrow\ \text{ホモトピック} $$
であり、cor-iso-knots と ex-iso-counter の 1 行目は、どちらの矢印も逆向きには成り立たないことを示す。円板定理 の定義「コンパクト台のイソトピー」は、コンパクト台のアンビエントイソトピーに $t\le0$ と $t\ge1$ での定常性を加えたもので、上の $\lambda$ による付け替え $H_{\lambda(t)}$ で互いに移り合う。
位相空間と連続写像についても同じ形で定める。連続写像 $F\colon P\times[0,1]\to N$ で各 $F_t$ が 位相的埋め込み であるものを 位相的イソトピー、連続写像 $H\colon N\times[0,1]\to N$ で各 $H_t$ が 同相写像、$H_0=\mathrm{id}$ であるものを 位相的なアンビエントイソトピー という。結び目 の定義「結び目の同値と自明な結び目」の同値は、位相的なアンビエントイソトピーで結び目を移すことである。

イソトピックは同値関係

$P$ から $N$ への埋め込みの間の関係 $\simeq$ は同値関係である。

付け替えてつなぐ

反射律は $F_t:=f$、対称律は $t\mapsto F_{1-t}$ でよい。推移律:$F$ を $f$ から $g$ へ、$G$ を $g$ から $h$ へのイソトピーとし、$\lambda$ を上の関数として
$$ K_t:=\begin{cases}F_{\lambda(3t)}&(t\le\tfrac12)\\ G_{\lambda(3t-\frac32)}&(t\ge\tfrac12)\end{cases} $$
とおく。2 つの式はどちらもすべての $t\in\mathbb{R}$ で定まる滑らかな写像である。$t\ge\frac13$ では $\lambda(3t)=1$ なので 1 番目の式は $F_1=g$ であり、$t\le\frac12$ では $\lambda(3t-\frac32)=0$ なので 2 番目の式は $G_0=g$ である。よって区間 $[\frac13,\frac12]$ では 2 つの式が一致し、$K$ は $t<\frac12$ では 1 番目の式、$t>\frac13$ では 2 番目の式に等しい。したがって $K$ は滑らかで、各 $K_t$ は埋め込み、$K_0=F_0=f$、$K_1=G_1=h$ である。$\square$

例

イソトピーの例
  1. $A$ を $\det A>0$ の $n$ 次実正則行列とすると、線形写像 $x\mapsto Ax$ は $\mathbb{R}^n$ の恒等写像とイソトピックである。円板定理 の補題「一般線形群の中の道」により単位行列 $I$ と $A$ を結ぶ滑らかな道 $P_1,\dots,P_m$ があり、各 $x\mapsto P_i(s)x$ はイソトピーなので、lem-iso-equivalence の推移律の作り方でつなげばよい。つないだ族 $K$ は各時刻で線形同型で $K_0=\mathrm{id}$ なので、$K$ は $K_1=A$ となる $\mathbb{R}^n$ のアンビエントイソトピーでもある(Kos93 Ch. II (4.4)、p. 35)。
  2. 連結な多様体 $N$ の 2 点 $p,q$ について、点 $p$ の包含 $\{\ast\}\to N$ と点 $q$ の包含はイソトピックである。$N$ の 2 点は滑らかな曲線 $c$ で結べ(Kos93 Ch. I (2.6) Corollary、p. 8)、$F_t:=c(\lambda(t))$ がイソトピーになる(1 点からの写像はどれも埋め込み)。cor-iso-homogeneous はこれがアンビエントイソトピーから来ることを述べる。
  3. (Alexander のトリック)$h$ を閉円板 $D^n$ の同相写像で境界の球面の上で恒等写像であるものとする。$0< t\le1$ について $\lvert x\rvert< t$ なら $H_t(x):=t\,h(x/t)$、$t\le\lvert x\rvert\le1$ なら $H_t(x):=x$ とし、$H_0:=\mathrm{id}$ とおく。$H$ は $\mathrm{id}$ から $H_1=h$ への位相的なアンビエントイソトピーである。$H_t$ が同相写像であることは、半径 $t$ の円板の上で $h$ を相似拡大で共役にしたものであることからわかり、連続性は $\lvert H_t(x)-x\rvert\le2t$ から $t=0$ でも成り立つ。この変形は $t\to0$ で原点の近くの $h$ の情報を潰すので、一般に滑らかなイソトピーにはならない。

主定理:イソトピー拡張定理

イソトピー拡張定理

$P$、$N$ を(境界のない)多様体、$F\colon\mathbb{R}\times P\to N$ をイソトピー、$C\subset P$ をコンパクト集合とする。$N$ のコンパクト台のアンビエントイソトピー $H$ で
$$ H_t\bigl(F_0(x)\bigr)=F_t(x)\qquad(x\in C,\ 0\le t\le1) $$
となるものが存在する。とくに $P$ がコンパクトなら、イソトピックな埋め込み $f,g\colon P\to N$ はアンビエントイソトピックであり、$H_1$ は補空間の微分同相写像 $N\setminus f(P)\to N\setminus g(P)$ を与える。

考え方は、動いていく $F_t(C)$ の各点の速度を時間に依存するベクトル場とみて、それを $N$ 全体に延ばし、その流れで $N$ を動かすことである。時刻を 1 つの座標として $\mathbb{R}\times N$ の上で扱うと、時間に依存しないベクトル場の流れの言葉で書ける。円板定理 の補題「円板のイソトピーの延長」は、$N=\mathbb{R}^n$ で $F_t$ が開埋め込みの場合のこの議論である。

速度のベクトル場を延ばして流す

$m:=\dim P$、$n:=\dim N$ とする。
段 1(軌跡は部分多様体).$G(t,x):=(t,F_t(x))$ は $\mathbb{R}\times P$ から $\mathbb{R}\times N$ への滑らかな単射で、微分は $\begin{pmatrix}1&0\\ \ast&dF_t\end{pmatrix}$ の形なので単射であり、$G$ ははめ込みである。$C$ を含み閉包 $\overline U$ がコンパクトな開集合 $U\subset P$ をとる。$G$ はコンパクト集合 $[-1,2]\times\overline U$ の上で連続な単射なので、像への同相写像であり、その開集合 $(-1,2)\times U$ の上でも像への同相写像である。よって $G$ の $(-1,2)\times U$ への制限は埋め込みで、像 $S$ は $\mathbb{R}\times N$ の $(1+m)$ 次元の部分多様体である(はめ込みと埋め込み(可微分多様体) の定理「埋め込みの像は部分多様体」)。$S$ の上のベクトル場 $X$ を $X\bigl(G(t,x)\bigr):=dG(\partial_t)=\bigl(1,\partial_tF_t(x)\bigr)$ で定める。$G\colon(-1,2)\times U\to S$ は微分同相写像なので、$X$ は滑らかである。
段 2(延長).$K:=G([0,1]\times C)$ は $S$ のコンパクト集合である。要点は、$S$ の近くで $X$ を局所的に延ばし、1 の分割で貼り合わせることである。

延長の作り方を開く

$K$ の各点 $z$ について、$S$ のスライス座標(はめ込みと埋め込み(可微分多様体) の定義「部分多様体」)$\psi\colon W\to\mathbb{R}^{1+n}$ で、$\psi(W)$ が開球の積 $B'\times B''\subset\mathbb{R}^{1+m}\times\mathbb{R}^{n-m}$ であり、$\psi(W\cap S)=B'\times\{0\}$ となるものをとる。$\psi$ による座標で $X$ の成分を $X(a)$($a\in B'$)と書き、$W$ の上のベクトル場 $Y_W$ を、点 $\psi^{-1}(a,b)$ で成分が $X(a)$ となるものと定める。$Y_W$ は滑らかで、$W\cap S$ の上で $X$ に等しい。$K$ はコンパクトなので、このような $W_1,\dots,W_k$ で覆える。開被覆 $\{(\mathbb{R}\times N)\setminus K,W_1,\dots,W_k\}$ に従属する滑らかな 1 の分割 $\beta_0,\beta_1,\dots,\beta_k$(1の分割 の定理「滑らかな 1 の分割の存在」)と、$K$ の近傍で $1$、台がコンパクトな滑らかな関数 $\kappa$(隆起関数 の定理「コンパクト集合に対する隆起関数」)をとり、$Y:=\kappa\sum_{j=1}^k\beta_jY_{W_j}$(各項は $W_j$ の外で $0$ とする)とおく。$\operatorname{supp}\beta_0$ は $K$ と交わらない閉集合なので、$O:=(\mathbb{R}\times N)\setminus\operatorname{supp}\beta_0$ は $K$ の開近傍で、その上で $\sum_{j\ge1}\beta_j=1$ である。$s\in S\cap O$ で $\kappa(s)=1$ なら、$\beta_j(s)\neq0$ となる $j$ について $s\in W_j\cap S$ なので $Y_{W_j}(s)=X(s)$ であり、$Y(s)=X(s)$ である。

こうして、台がコンパクトな滑らかなベクトル場 $Y$ と $K$ の開近傍 $O'$ で、$S\cap O'$ の上で $Y=X$ となるものが得られる。$Y=(y_0,Y_N)$ と $T(\mathbb{R}\times N)=\mathbb{R}\oplus TN$ の成分に分け、$Z:=(1,Y_N)$ とおく。$X$ の第 1 成分は $1$ なので、$S\cap O'$ の上で $Z=X$ である。$Y_N$ の台を $[a,b]\times C'$($C'\subset N$ はコンパクト)に含める。
段 3($Z$ は完備).$Z$ の極大流れの定義域は $\{0\}\times(\mathbb{R}\times N)$ を含む開集合なので(ベクトル場の流れ の定理「流れの基本定理」)、コンパクト集合 $[a-1,b+1]\times C'$ の点から出る積分曲線がすべて $(-\delta,\delta)$ で定まる $\delta>0$ がある。それ以外の点 $(t_0,y_0)$ からは、$y_0\notin C'$ なら $s\mapsto(t_0+s,y_0)$ がすべての $s$ で、$t_0\notin[a-1,b+1]$ なら同じ曲線が $\lvert s\rvert<1$ で積分曲線である(その上で $Y_N=0$)。よってどの積分曲線も $\lvert s\rvert<\min\{\delta,1\}$ で定まり、同記事の定理「完備性の判定」の (R1) により $Z$ は完備である。
段 4(アンビエントイソトピー).$Z$ の流れを $\Psi$ とする。$Z$ の第 1 成分は $1$ なので $\Psi_s(0,y)=(s,H_s(y))$ と書け、$H\colon\mathbb{R}\times N\to N$ は滑らかである。$\Psi_s$ は $\{0\}\times N$ を $\{s\}\times N$ の上へ全単射に写し、逆は $\Psi_{-s}$ なので、$H_s$ は微分同相写像で、$H_0=\mathrm{id}$ である。$y\notin C'$ なら $s\mapsto(s,y)$ が $(0,y)$ を通る積分曲線なので $H_s(y)=y$ であり、$H$ はコンパクト台である。
段 5($C$ の点の軌跡).$x\in C$ について $\gamma(s):=G(s,x)=(s,F_s(x))$ は $\gamma'(s)=X(\gamma(s))$ を満たし、$0\le s\le1$ では $\gamma(s)\in K\subset S\cap O'$ なので $\gamma'(s)=Z(\gamma(s))$ である。$\gamma(0)=(0,F_0(x))$ なので、積分曲線の一意性(同記事の補題「積分曲線の一意性」)により $0\le s\le1$ で $\gamma(s)=\Psi_s(0,F_0(x))$、すなわち $F_s(x)=H_s(F_0(x))$ である。
$P$ がコンパクトなら $C=P$ とおけば $H_1\circ F_0=F_1$ であり、$H_1$ は $N$ の微分同相写像で $F_0(P)$ を $F_1(P)$ の上に写すので、補空間どうしの微分同相写像を与える。$\square$

$H_t$ を $H_{\lambda(t)}$ に付け替えれば、$t\le0$ で恒等写像、$t\ge1$ で $H_1$ に等しいもの、すなわち 円板定理 の意味のコンパクト台のイソトピーにできる($H_1$ は変わらない)。定理は Kos93 Ch. II (5.2) Theorem(pp. 36–37)にあり、$P$ がコンパクトで $C=P$ の場合は Ben19 Proposition 7.2(pp. 140–141)にもある。証明はベクトル場を延ばすという同じ方針による。

多様体の等質性

$N$ を連結な多様体、$p,q\in N$ とすると、$N$ のコンパクト台のアンビエントイソトピー $H$ で $H_1(p)=q$ となるものがある。

点のイソトピーを延ばす

ex-iso-examples の 2 のイソトピー $F_t=c(\lambda(t))$($P$ は 1 点)に thm-iso-extension を当てればよい。$\square$

これは Kos93 Ch. II (5.3) Corollary(p. 38)である。

結び目への応用

結び目 は滑らかな埋め込み $f\colon S^1\to\mathbb{R}^3$ の像である。$S^1$ はコンパクトなので、次が従う。

結び目のイソトピーと同値
  1. 滑らかな埋め込み $f,g\colon S^1\to\mathbb{R}^3$ がイソトピックなら、像の結び目 $f(S^1)$ と $g(S^1)$ は 結び目 の定義「結び目の同値と自明な結び目」の意味で同値であり、結び目群は同型である。
  2. 三葉結び目 $T_{2,3}$ と自明な結び目 $K_0$ のパラメータ表示は、ホモトピックだがイソトピックでない。
結び目群で区別する

1.thm-iso-extension のアンビエントイソトピー $H$ を $0\le t\le1$ に制限すれば、各 $H_t$ は同相写像、$H_0=\mathrm{id}$、$H_1(f(S^1))=g(S^1)$ である。結び目群の同型は 結び目 の命題「結び目群は不変量」による。
2.ホモトピックであることは 結び目 の命題「結び目はホモトピーでは区別できない」である。$K_0$ の結び目群は $\mathbb{Z}$(同記事の定理「自明な結び目の結び目群」)、$T_{2,3}$ の結び目群は $\Gamma:=\langle a,b\mid a^2=b^3\rangle$(同記事の定理「トーラス結び目の結び目群」)である。$a\mapsto(1\,2)$、$b\mapsto(1\,2\,3)$ は $a^2=b^3$ をどちらも単位元に写すので、$\Gamma$ から 3 次対称群への準同型を定め、像の 2 元は可換でない。よって $\Gamma$ は可換でなく、$\mathbb{Z}$ と同型でない。1 によりイソトピックでない。$\square$

反例:仮定を外すと

thm-iso-extension の後半(イソトピックならアンビエントイソトピック)の仮定を 1 つずつ外す。各行は 1 つの条件だけを破る。$\lambda$ は定義の後の関数である。

外す条件反例成り立たなくなること
$P$ がコンパクト$P=\mathbb{R}$、$N=\mathbb{R}^3$。結び目の入った閉じた直線 $L$ から $x$ 軸へのイソトピーアンビエントイソトピックであること
各 $F_t$ が埋め込み$P=S^1$、$N=\mathbb{R}^3$。三葉結び目から自明な結び目への $F_t=(1-\lambda(t))f+\lambda(t)g$アンビエントイソトピックであること
$N$ に境界がない$P$ は 1 点、$N=[0,\infty)$、$F_t=1-\lambda(t)$アンビエントイソトピックであること
反例の確かめ

2 行目:$F$ は $f$ から $g$ へのホモトピーで、cor-iso-knots の 2 によりアンビエントイソトピーは存在しない。
3 行目:各 $F_t$ は 1 点の埋め込みである。$N$ の同相写像 $h$ で $h(1)=0$ となるものがあれば、$N\setminus\{1\}$ と $N\setminus\{0\}$ が同相になるが、前者は連結でなく後者は連結なので、そのような $h$ はない。
1 行目:要点は次のとおりである。三葉結び目 $T_{2,3}$ を 1 点の近くで線分にまっすぐにしてから、その点を中心に反転すると、ある球の外では $x$ 軸と一致する閉じた直線 $L$ が得られ、$\mathbb{R}^3\setminus L$ の基本群は $T_{2,3}$ の結び目群と同型で可換でない。結び目の部分を無限遠へ送るイソトピーで $L$ は $x$ 軸に移るが、$\mathbb{R}^3$ から $x$ 軸を除いた空間の基本群は $\mathbb{Z}$ なので、アンビエントイソトピーでは移らない。同じ例は Kos93 Ch. II §5 の (5.2) の後の演習(pp. 37–38)にもある。

詳しい確かめを開く

(a) 線分を含む模型.$f\colon\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z}\to\mathbb{R}^3$ を $T_{2,3}$ の滑らかな埋め込みとする。平行移動と回転とパラメータの取り替え(逆関数定理)により、$f(0)=0$ で、ある $\delta>0$ について $\lvert s\rvert<\delta$ で $f(s)=(s,b(s))$($b$ は $\mathbb{R}^2$ 値、$b(0)=0$、$b'(0)=0$)と書けるとしてよい。$f(\{\delta\le\lvert s\rvert\le\pi\})$ はコンパクトで $0$ を含まないので、そこから $0$ までの距離より小さい $\varepsilon>0$ をとる。$\lvert s\rvert\le\delta/2$ で $\lvert b(s)\rvert\le As^2$ となる $A$ をとり、$4r\le\delta$ かつ柱 $Z:=\{\lvert x_1\rvert\le2r,\ \lvert(x_2,x_3)\rvert\le4Ar^2\}$ が $B_\varepsilon(0)$ に含まれるように $r>0$ をとる。$[-1,1]$ で $1$、$[-2,2]$ の外で $0$ の滑らかな関数 $\phi\colon\mathbb{R}\to[0,1]$ を使い、$\lvert s\rvert<\delta$ で $F_t(s):=\bigl(s,(1-\lambda(t)\phi(s/r))b(s)\bigr)$、それ以外で $F_t:=f$ とおく。$\lvert s\rvert<2r$ の部分は $Z$ の中のグラフで、$f$ の点で $Z$ に入るのは $\lvert s\rvert\le2r$ のグラフの点だけなので、各 $F_t$ は単射なはめ込みで、$S^1$ はコンパクトなので埋め込みである。よって $K':=F_1(S^1)$ は $T_{2,3}$ とイソトピックで、cor-iso-knots の 1 により結び目群は $T_{2,3}$ と同型で可換でない。$K'$ は線分 $\{(s,0,0)\mid\lvert s\rvert\le r\}$ を含み、$K'\cap B_r(0)$ はその内部の開線分である。

(b) 反転.$\iota(x):=x/\lvert x\rvert^2$ は $\mathbb{R}^3\setminus\{0\}$ の微分同相写像で、$0$ と $\infty$ を入れ替える $S^3=\mathbb{R}^3\cup\{\infty\}$ の同相写像に延びる。$L:=\iota(K'\setminus\{0\})=\iota(K')\cap\mathbb{R}^3$ は $\mathbb{R}^3$ の閉集合で、$\mathbb{R}^3\setminus L=S^3\setminus\iota(K')$ は $\iota$ により $S^3\setminus K'$ と同相である。結び目 の補題「無限遠点を加えても基本群は変わらない」により、$\pi_1(\mathbb{R}^3\setminus L)\cong\pi_1(\mathbb{R}^3\setminus K')$ は可換でない。$K'$ の $B_r(0)$ の外の点の像は $\lvert y\rvert\le1/r$ を満たし、開線分の点 $(s,0,0)$ は $(1/s,0,0)$ に写るので、$L$ は $\lvert y\rvert>1/r$ で $x$ 軸に一致する。$L$ は $S^1$ から 1 点を除いたものと微分同相な閉部分多様体なので、パラメータを選んで滑らかな埋め込み $\ell\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}^3$ で $\ell(\mathbb{R})=L$、$\lvert u\rvert\ge R$ で $\ell(u)=(u,0,0)$ となるもの($R>1/r$)がとれる(遠方では $s=1/u$ をパラメータにする)。

(c) イソトピー.$t<1$ で $\sigma(t):=\lambda(2t)/(1-t)$ とおく。$\sigma$ は滑らかで、$t\le0$ で $0$、$t\to1$ で $\infty$ に発散する。$t<1$ では $F_t(u):=\ell(u+\sigma(t))-\sigma(t)e_1$、$t\ge1$ では $F_t(u):=ue_1$ とおく($e_1=(1,0,0)$)。$\lvert u\rvert\le a$ の範囲では、$\sigma(t)\ge a+R$ となる $t<1$ について $u+\sigma(t)\ge R$ なので $F_t(u)=ue_1$ であり、$F$ は $t=1$ の近くで $t$ によらない。よって $F$ は滑らかで、各 $F_t$ は $\ell$ に平行移動を合成した埋め込みであり、$F_0=\ell$ から $x$ 軸のパラメータ表示 $F_1$ へのイソトピーである。

(d) アンビエントイソトピックでない.$H_1\circ\ell=F_1$ となる微分同相写像 $H_1$ があれば、$\mathbb{R}^3\setminus L$ と $\mathbb{R}^3\setminus(x\text{ 軸})$ が同相になる。後者は $(x_1,y)\mapsto(0,y/\lvert y\rvert)$($y\in\mathbb{R}^2\setminus\{0\}$)により円周を変位レトラクトにもち、基本群は $\mathbb{Z}$ で可換なので矛盾する。

補足

  • 位相的な場合:位相的イソトピーは滑らかなものよりずっと柔らかい。ex-iso-examples の 3 のように、ある部分を 1 点に潰していく変形が許されるからである。結び目 の定義「結び目の同値と自明な結び目」が、各時刻で単射なだけの変形ではなく、全空間を同相写像で動かすアンビエントイソトピーで同値を定めているのはこのためである。
  • 関連する定理:円板定理 は、連結な多様体の中の 2 つの滑らかな円板が向きをそろえればコンパクト台のアンビエントイソトピーで移り合うことを述べる。Thomの同位補題 は、層別された空間の族が局所的に自明であることを、ベクトル場を延ばして流すという同じ方針で示す。アニュラス予想と安定同相定理 の節「恒等写像へのイソトピー」は、同相写像の位相的イソトピーを扱う。
  • イソトピー類:$S^1$ から曲面や 3 次元多様体への埋め込みのイソトピー類は、低次元の位相幾何学の基本的な対象である。Dehn手術 では、トーラスの上の単純閉曲線をイソトピーを除いて考え、thm-iso-extension によって貼り合わせの結果がそのイソトピー類だけで決まることを示す。

関連項目

参考文献

[1]
Antoni A. Kosinski, Differential Manifolds, Pure and Applied Mathematics 138, Academic Press, 1993, Ch. I (2.6) Corollary(連結な多様体の 2 点を結ぶ滑らかな曲線、p. 8);Ch. II (4.1) Definition(イソトピー、p. 33)、(4.4)(線形写像のイソトピー、p. 35)、(5.1) Definition(アンビエントイソトピー、p. 36)、(5.2) Theorem(イソトピー拡張定理、pp. 36–37)とその後の演習(結び目の入った直線、pp. 37–38)、(5.3) Corollary(等質性、p. 38)
[2]
Riccardo Benedetti, Lectures on Differential Topology, arXiv:1907.10297, arXiv:1907.10297v1(2019-07-24)。§7.1 Proposition 7.2(Thom の補題:コンパクトな多様体の埋め込みのイソトピーはコンパクト台のアンビエントイソトピーに延びる、pp. 140–141)

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