Petersenグラフ(Petersen graph)とは、$\{1,2,3,4,5\}$ の 2 元部分集合 10 個を頂点とし、交わらない 2 つを辺で結んだグラフであり、五角形と五芒星を 5 本の辺でつないだ形にも描ける。3-正則で内周は $5$ であり、内周 $5$ の 3-正則グラフのうち頂点が最少の 10 個のものはこれしかない。自己同型群は対称群 $S_5$ で頂点にも辺にも推移的に作用するが、Hamilton 閉路をもたず、1 頂点を除くと Hamilton 閉路をもつ。彩色数は $3$、辺彩色数は $4$ で、Vizing の定理の第 2 類に属する橋のない 3-正則グラフの代表例として、グラフ理論の多くの予想の反例に現れる。
前提知識: グラフ, 正則グラフ, Hamilton閉路, 辺彩色
Petersen グラフ(Petersen graph)とは、集合 $\{1,2,3,4,5\}$ の 2 元部分集合 10 個を頂点とし、交わらない 2 つを辺で結んだグラフのことである。五角形と五芒星を 5 本の線分でつないだ形にも描ける。頂点は 10 個、辺は 15 本しかないが、グラフ理論で予想を立てると最初に反例として現れることが多く、「Petersen グラフで確かめよ」は定理や予想を試す合言葉になっている。
このグラフは、3-正則で三角形も長さ $4$ の閉路ももたないグラフのうち頂点がもっとも少ないものであり、そのようなグラフは 10 頂点では Petersen グラフしかない。対称性も大きく、自己同型群は 5 文字の対称群 $S_5$ で、どの頂点もどの辺も同じ立場にある。それにもかかわらず、すべての頂点を 1 回ずつ通る閉路(Hamilton 閉路)をもたず、辺を 3 色で塗り分けることもできない。この記事では、定義と二つの描き方の対応から始めて、これらの性質を記事の中で証明する。
$\{1,2,3,4,5\}$ の 2 元部分集合の全体を頂点の集合とし、2 つの頂点 $A,B$ を $A\cap B=\emptyset$ のときに限り辺で結んだ単純グラフを Petersen グラフ といい、$P$ で表す。頂点 $\{i,j\}$ を $ij$ と略記する。
頂点 $ij$ と交わらない 2 元部分集合は、残りの 3 元から 2 つを選んだ $3$ 個である。よって $P$ は 3-正則で、辺の本数は $10\cdot3/2=15$ である。
$P$ はよく、外側の五角形 $v_0v_1v_2v_3v_4$、内側の五芒星 $u_0u_2u_4u_1u_3$、両者をつなぐ 5 本の「スポーク」$v_iu_i$ として描かれる。彩色数・辺彩色 の記事もこの描き方を使っている。
頂点 $v_0,\dots,v_4,u_0,\dots,u_4$ をもち、添字を $5$ を法として読んで、辺を
$$
v_iv_{i+1}\ (\text{外側}),\qquad v_iu_i\ (\text{スポーク}),\qquad u_iu_{i+2}\ (\text{内側})\qquad(i=0,\dots,4)
$$
の 15 本とするグラフを $P'$ とする。下の表の対応は $P'$ から $P$ への同型写像である。
| 頂点 | $v_0$ | $v_1$ | $v_2$ | $v_3$ | $v_4$ | $u_0$ | $u_1$ | $u_2$ | $u_3$ | $u_4$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2 元部分集合 | $12$ | $34$ | $15$ | $23$ | $45$ | $35$ | $25$ | $24$ | $14$ | $13$ |
表の 10 個の 2 元部分集合は相異なり、10 個すべてを尽くすので、対応は頂点の全単射である。$P'$ の 15 本の辺の端点の組が $P$ で交わらないことを確かめる。外側の辺は $12$–$34$、$34$–$15$、$15$–$23$、$23$–$45$、$45$–$12$、スポークは $12$–$35$、$34$–$25$、$15$–$24$、$23$–$14$、$45$–$13$、内側の辺 $u_0u_2,u_1u_3,u_2u_4,u_3u_0,u_4u_1$ は $35$–$24$、$25$–$14$、$24$–$13$、$14$–$35$、$13$–$25$ で、どれも交わらない。よって対応は $P'$ の辺を $P$ の辺に写す。辺の本数はどちらも $15$ なので、$P$ の辺はすべて $P'$ の辺の像であり、対応は同型写像である。$\square$
以下、どちらの描き方も $P$ と書く。
強正則グラフ の言葉でいえば、次の命題は $P$ が $(10,3,0,1)$ 型の強正則グラフであることを述べている。グラフの 内周(girth)とは、もっとも短い閉路の長さのことである。
1.隣接する $ab$ と $cd$ は交わらないので、$a,b,c,d$ は相異なる。両方と交わらない 2 元部分集合は、残りの 1 元 $\{e\}$ に含まれなければならないが、そのようなものはない。
2.隣接しない相異なる 2 頂点は交わるので、$ab$ と $ac$($b\ne c$)と書ける。両方と交わらない 2 元部分集合は $\{1,\dots,5\}\setminus\{a,b,c\}$ に含まれ、この集合はちょうど 2 元なので、それ自身がただ 1 つの共通の隣接頂点である。
3.1 から三角形はない。長さ $4$ の閉路 $xyzw$ があれば、三角形がないので $x$ と $z$ は隣接せず、$y$ と $w$ という 2 つの共通の隣接頂点をもつことになり、2 に反する。一方、外側の五角形は長さ $5$ の閉路である。直径については、隣接しない 2 頂点が 2 により距離 $2$ で結ばれることから従う。$\square$
頂点 $x$ を 1 つ固定すると、$x$ からの距離が $1$ の頂点は $3$ 個、距離が $2$ の頂点は残りの $6$ 個である。次の定理は、この数え方が 3-正則で内周 $5$ のグラフの頂点数の下界を与え、下界をとるグラフが Petersen グラフしかないことを示す。
$G$ を 3-正則で内周が $5$ 以上の有限単純グラフとする。
頂点 $x$ を固定し、その隣接頂点を $a,b,c$ とする。$a$ の $x$ 以外の隣接頂点を $a_1,a_2$、同様に $b_1,b_2$、$c_1,c_2$ とする。
段 1(10 頂点が相異なる). $a_i$ は $x$ でない(単純グラフなので $x$ は $a$ に 1 回しか隣接しない)。$a_i\in\{b,c\}$ なら $x,a,a_i$ が三角形をなす。$a_i=b_j$ なら $x\,a\,a_i\,b\,x$ が長さ $4$ の閉路になる。他の組も同様なので、$x,a,b,c,a_1,a_2,b_1,b_2,c_1,c_2$ は相異なる。これで 1 が示された。
段 2(2 段目の辺). 頂点がちょうど $10$ 個なら、これらが全頂点である。$x,a,b,c$ はすでに次数 $3$ をもつので、$a_1$ の残り 2 本の辺は 2 段目の頂点へ行く。$a_1$ と $a_2$ は隣接しない($a$ と三角形をなす)。$a_1$ が $b_1$ と $b_2$ の両方に隣接すると $a_1b_1bb_2a_1$ が長さ $4$ の閉路になる。よって $a_1$ は $b_1,b_2$ のちょうど一方と、$c_1,c_2$ のちょうど一方に隣接する。2 段目のどの頂点についても同じことが成り立つ。
段 3(名前の付け方で辺が決まる). 必要なら $b_1,b_2$ の名前を入れ替えて $a_1\sim b_1$ とする。$b_1$ の $a$ 側の隣接頂点は $a_1$ だけなので $a_2\not\sim b_1$、よって $a_2\sim b_2$ である。同様に $c_1,c_2$ の名前を選んで $a_1\sim c_1$、$a_2\sim c_2$ とする。$b_1\sim c_1$ なら $a_1b_1c_1$ が三角形になるので $b_1\sim c_2$、したがって $b_2\sim c_1$ である。これで $G$ の 15 本の辺
$$
xa,\ xb,\ xc,\ aa_1,\ aa_2,\ bb_1,\ bb_2,\ cc_1,\ cc_2,\ a_1b_1,\ a_2b_2,\ a_1c_1,\ a_2c_2,\ b_1c_2,\ b_2c_1
$$
がすべて決まった。
段 4(同型と個数). $P$ は 3-正則で内周 $5$(prop-pg-srg)の 10 頂点のグラフなので、$P$ にも同じ名前付けができる。両方の名前付けで同じ名前の頂点を対応させると、辺の一覧が同じなので同型写像になる。逆に、同型写像 $\varphi\colon G\to P$ は、$\varphi(x)$($10$ 通り)、$\varphi(a),\varphi(b),\varphi(c)$ の並び($3!=6$ 通り)、$\varphi(a_1)$($\varphi(a)$ の $\varphi(x)$ 以外の隣接頂点で $2$ 通り)を決めると、残りの像がすべて決まる。実際、$\varphi(a_2)$ は $\varphi(a)$ の残りの隣接頂点、$\varphi(b_1)$ は $\varphi(b)$ の隣接頂点のうち $\varphi(a_1)$ に隣接するただ 1 つの頂点(段 2)であり、以下同様である。よって同型写像は $10\cdot6\cdot2=120$ 個以下である。$\square$
1 の下界は、最小次数が $d$ 以上で内周が $5$ 以上のグラフの頂点は $1+d^2$ 個以上であるという 閉路 の記事の定理「内周 5 以上のグラフの頂点の個数」の $d=3$ の場合である(BM76 Exercise 1.7.4 (b)、p. 15)。内周 $5$ の 3-正則グラフのうち頂点数が最小のもの($(3,5)$-ケージ)が Petersen グラフであることは BM76 Appendix III(p. 236)にもある。
$\{1,\dots,5\}$ の置換 $\sigma$ は $ij\mapsto\sigma(i)\sigma(j)$ により $P$ の自己同型を定め、これで対称群 $S_5$ が $P$ の自己同型群と同型になる。とくに $|\operatorname{Aut}P|=120$ であり、$P$ の自己同型群は頂点の集合にも、向きを付けた辺(隣接する頂点の順序対)の集合にも推移的に作用する。
$\sigma$ は 2 元部分集合を 2 元部分集合に写し、交わらないという関係を保つので、$P$ の自己同型を定める。対応 $\sigma\mapsto(\text{その自己同型})$ は群の準同型である。単射であることを示す。$\sigma$ がすべての頂点を固定するとし、$a\in\{1,\dots,5\}$ と $b\ne c$($b,c\ne a$)をとる。$\sigma(\{a,b\})=\{a,b\}$ と $\sigma(\{a,c\})=\{a,c\}$ から $\sigma(a)\in\{a,b\}\cap\{a,c\}=\{a\}$ である。よって $\sigma$ は恒等置換である。
したがって $\operatorname{Aut}P$ は位数 $120$ の部分群を含む。一方、thm-pg-moore の 2 を $G=P$ に当てると $P$ から $P$ への同型写像は $120$ 個以下である。よって $S_5\cong\operatorname{Aut}P$ である。
推移性:交わらない 2 元部分集合の順序対 $(ab,cd)$ と $(a'b',c'd')$ が与えられたとき、残りの元を $e,e'$ として $a\mapsto a'$、$b\mapsto b'$、$c\mapsto c'$、$d\mapsto d'$、$e\mapsto e'$ とする置換は前者を後者に写す。頂点の推移性はとくにこの場合である。$\square$
頂点推移的なグラフでは、1 つの頂点について確かめた性質がすべての頂点について成り立つ。これは次の節で使う。グラフの自己同型と頂点推移性については グラフ同型 の記事も参照。
$P$ は 3-正則で、頂点の個数が偶数で、対称性も大きいが、Hamilton 閉路をもたない(BM76 §4.2、図 4.4、pp. 54–55)。Hamilton閉路 の記事の命題「Petersenグラフが Hamilton閉路をもたないこと」には、Hamilton 閉路に含まれない 5 本の辺の配置を調べる証明がある。ここでは内周を使う別の証明を与える。
Petersen グラフ $P$ は Hamilton 閉路をもたない。
Hamilton 閉路 $C=w_0w_1\cdots w_9w_0$ があるとして矛盾を導く(添字は $10$ を法とする)。各頂点は $C$ の 2 本の辺に接続し、次数は $3$ なので、$C$ に含まれない辺(弦 と呼ぶ)は各頂点にちょうど 1 本ずつあり、弦は全部で $5$ 本である。
弦 $w_iw_j$ について、$C$ の上での $w_i$ と $w_j$ の距離 $d$($|i-j|$ と $10-|i-j|$ の小さい方)を考える。弦は $C$ の辺でなく $P$ は単純グラフなので $d\ge2$ であり、弦と $C$ の短い方の弧は長さ $d+1$ の閉路をなす。$P$ の内周は $5$(prop-pg-srg)なので $d\ge4$、すなわち $d\in\{4,5\}$ である。
場合 1:すべての弦で $d=5$. 弦 $w_0w_5$ と $w_1w_6$ があり、$w_0w_1w_6w_5w_0$ は長さ $4$ の閉路になる。矛盾である。
場合 2:$d=4$ の弦がある. 添字をずらして、それが $w_0w_4$ であるとしてよい。$w_5$ の弦の相手は $d\in\{4,5\}$ から $w_1,w_9,w_0$ のどれかで、$w_0$ はすでに $w_4$ と結ばれている。$w_5w_1$ なら $w_0w_1w_5w_4w_0$ が長さ $4$ の閉路になるので、弦は $w_5w_9$ である。
$w_1$ の弦の相手は $w_5,w_6,w_7$ のどれかで、$w_5$ は使われている。
Hamilton 閉路をもたないグラフでも、1 頂点を除くと Hamilton 閉路をもつことがある。Hamilton 閉路をもたず、どの頂点を除いても Hamilton 閉路をもつグラフを 低 Hamilton 的(hypohamiltonian)という。
$P$ からどの頂点 $x$ を除いても、$P-x$ は Hamilton 閉路をもつ。したがって $P$ は低 Hamilton 的である。
thm-pg-automorphism により $P$ は頂点推移的なので、$x=v_0$ の場合を示せばよい。prop-pg-drawing の辺の一覧から
$$
v_1\,v_2\,v_3\,v_4\,u_4\,u_2\,u_0\,u_3\,u_1\,v_1
$$
の各隣接対は辺であり(外側の辺 $v_1v_2,v_2v_3,v_3v_4$、スポーク $v_4u_4,u_1v_1$、内側の辺 $u_4u_2,u_2u_0,u_0u_3,u_3u_1$)、$v_0$ 以外の 9 頂点をちょうど 1 回ずつ通る。$\square$
Petersen グラフは低 Hamilton 的なグラフのうち頂点数が最小のものである(BM76 Exercise 4.2.12 の注、p. 61。この記事では証明しない)。
$P$ の彩色数は $3$ である。
外側の五角形は長さ $5$ の奇閉路なので 2 色では塗れず、$\chi(P)\ge3$ である。次の 3 つの組に色 $1,2,3$ を塗る。
$$
\{12,13,14,15\},\qquad\{23,24,25\},\qquad\{34,35,45\}.
$$
最初の組はどれも $1$ を含み、2 番目の組はどれも $2$ を含む。3 番目の組は 3 元集合 $\{3,4,5\}$ の 2 元部分集合なので、どの 2 つも交わる。よって各組の中の 2 頂点は交わり、隣接しない。これは 3-頂点彩色であり、$\chi(P)=3$ である。$\square$
彩色数 の記事の例「Petersen グラフの彩色数」は、五角形と五芒星の描き方で具体的な 3 色の塗り方を与えている。互いに隣接しない頂点の最大個数(独立数)は $4$ であり、その証明は 独立集合 の記事の例「Petersen グラフの独立数」にある。3 色の組の大きさが $4,3,3$ なのは、独立数が $4$ であることと整合する。
Vizingの定理 により、単純グラフ $G$ の辺彩色数 $\chi'(G)$ は最大次数 $\Delta(G)$ か $\Delta(G)+1$ のどちらかであり、前者を第 1 類、後者を第 2 類という(Vizingの定理 の注意「第 1 類と第 2 類」)。Petersen グラフは第 2 類の代表例である。鍵になるのは、完全マッチング(グラフ理論)を除いた残りの形である。
$M$ を $P$ の任意の完全マッチングとする。$M$ の辺を除いたグラフ $P-M$ は、長さ $5$ の閉路 2 つの非交和である。
$P$ は 3-正則で、$M$ は各頂点にちょうど 1 本の辺をもつので、$P-M$ は 2-正則である。2-正則な有限グラフの各連結成分は閉路であり(閉路 の記事の命題「連結で次数がすべて 2 のグラフ」)、各閉路の長さは内周 $5$ 以上である(prop-pg-srg)。頂点は $10$ 個なので、$P-M$ は長さ $10$ の閉路 1 つか、長さ $5$ の閉路 2 つである。前者は $P$ の Hamilton 閉路になり、thm-pg-nonhamiltonian に反する。$\square$
たとえば 5 本のスポークは完全マッチングで、除くと外側の五角形と内側の五芒星が残る。
$\chi'(P)=4$ である。すなわち Petersen グラフは第 2 類である。
3 色の辺彩色があるとして矛盾を導く。各頂点には 3 本の辺が集まり、それらは相異なる色なので、各頂点に 3 色がちょうど 1 回ずつ現れる。したがって各色の辺の集合 $M_1,M_2,M_3$ は完全マッチングである。$P-M_3$ の辺は色 $1,2$ だけで塗られ、各頂点で 2 色が 1 本ずつ現れるので、$P-M_3$ の各閉路の辺は色 $1$ と色 $2$ が交互に並び、閉路の長さは偶数である。ところが lem-pg-two-factor により $P-M_3$ は長さ $5$ の閉路 2 つからなる。これは矛盾である。
よって $\chi'(P)\ge4$ であり、Vizingの定理 の定理「Vizing の定理」から $\chi'(P)\le\Delta(P)+1=4$ である。$\square$
4 色の具体的な塗り方は 辺彩色 の記事の例「Petersen グラフの 4-辺彩色」にある。同じ記事の定理「Petersen グラフの辺彩色数」には、外側と内側の五角形で各色の現れ方を数える別の証明がある。$k$-正則グラフでは「第 1 類である」ことと「辺の集合を $k$ 個の完全マッチングに分割できる(1-因子分解 をもつ)」ことが同値である。$k$ 色の辺彩色の各色の辺の集合は、証明の最初の段落と同じ理由で完全マッチングであり、逆に $k$ 個の完全マッチングへの分割があれば各マッチングに 1 色ずつ塗ればよいからである。したがって$P$ は完全マッチングをもつが 1-因子分解をもたない(BM76 Exercise 5.1.5 (a)、p. 71)。
辺彩色 の記事の補題「偶奇の補題」の系「橋をもつ 3-正則グラフ」が示すように、橋は 3 色で塗れない原因の一つである。$P$ には橋がないので、thm-pg-edge-chromatic は橋以外の原因で 3 色で塗れない 3-正則グラフの例になっている。橋のない 3-正則グラフはつねに完全マッチングをもつ(Petersen の定理。BM76 Corollary 5.4、p. 79)が、1-因子分解までは保証されない。
Petersen グラフは、もっともらしい含意の反例として何度も現れる。次の表の各行は、成り立つ定理から 1 つの条件を外すと結論が成り立たなくなることを示す。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 内周が $5$ 以上(thm-pg-moore の 2。内周 $4$ を許す) | 五角柱:$v_iv_{i+1}$、$u_iu_{i+1}$、$v_iu_i$ を辺とする 10 頂点の 3-正則グラフ | Petersen グラフと同型である |
| 3-正則(thm-pg-moore の 2。次数 $2$ を許す) | 長さ $10$ の閉路 $C_{10}$ | Petersen グラフと同型である |
| 二部グラフ($k$-正則二部グラフは 1-因子分解をもつ) | Petersen グラフ | 1-因子分解をもつ |
| 平面グラフ(橋のない 3-正則平面グラフは 3 色で辺を塗れる) | Petersen グラフ | 3 色で辺を塗れる |
| 最小次数が $n/2$ 以上(Dirac の定理) | Petersen グラフ($n=10$、最小次数 $3$) | Hamilton 閉路をもつ |
1 行目:五角柱は 3-正則で 10 頂点だが、$v_0v_1u_1u_0v_0$ が長さ $4$ の閉路なので内周は $4$ であり、内周が $5$ の $P$ とは同型でない。
2 行目:$C_{10}$ は内周 $10$ で 10 頂点だが、2-正則なので 3-正則な $P$ と同型でない。
3 行目:$k$-正則二部グラフが 1-因子分解をもつことは 多重グラフ の記事の定理「König の辺彩色定理」から従う(BM76 Exercise 5.2.3 (a)、p. 75)。$P$ は長さ $5$ の閉路をもつので二部グラフでなく、thm-pg-edge-chromatic により 1-因子分解をもたない。
4 行目:この主張は四色定理と同値である(辺彩色 の記事の注意「四色定理との関係」)。$P$ は橋のない 3-正則グラフで 3 色では辺を塗れないが、平面グラフではない(平面グラフ の記事の例「Petersenグラフは平面グラフでない」)。
5 行目:Dirac の定理は Hamilton閉路 の記事にある。$P$ の最小次数は $3<5$ で、thm-pg-nonhamiltonian により Hamilton 閉路をもたない。
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