加群の長さ(length of a module)とは、部分加群の真の包含からなる鎖の段数の上限である。有限長なら単純加群を各段に持つ組成列で数えられ、短完全列に対して加法的になる。局所環では極大イデアルの冪による商の剰余体次元で計算できる。整数の剰余加群、厚い点、平面曲線の横断交点と接点を例に、基礎環と局所化する点を明示して使う。
ベクトル空間の次元は、一次元ずつ増やす鎖の長さとして数えられる。一般の環の上の加群では、一次元という代わりに、これ以上分解できない単純加群を一段として数える。その段数が加群の長さである。例えば有限次元の $k$ ベクトル空間では長さと次元が等しいが、整数上の加群 $\mathbb Z/12\mathbb Z$ の長さは元の個数 $12$ ではなく $3$ である。
代数幾何では、点で局所化した環を商にしたときの長さが、点を重複度とともに数える。二本の曲線が横切る交点と接する交点は、どちらも集合としては一つの点でも、適切な商環の長さが異なる。長さは有限生成性やベクトル空間次元そのものとは違う不変量であり、環と加群の双方を明示して使う必要がある(Sta00IU、Sta0B01)。
本稿では可換な単位的環 $R$ 上の加群 $M$ を扱う。有限長の定義から、短完全列での加法性と局所環での計算法を証明する。組成列の構成そのものや環が Artin 的かどうかは別の主題であるが、長さを読むための必要な範囲で触れる。
$M$ の部分加群を厳密に増やす鎖を
$$
0=M_0\subsetneq M_1\subsetneq\cdots\subsetneq M_n=M
$$
と書く。この鎖の段数は真の包含の個数 $n$ である。$M=0$ のときは $n=0$ の鎖だけを考える。加群の長さは可能な段数の上限で定義されるので、特定の鎖を一つ選ぶ定義ではない。
$R$ 加群 $M$ の長さを
$$
\operatorname{length}_R(M)
=\sup\{n\geq0\mid
0=M_0\subsetneq M_1\subsetneq\cdots\subsetneq M_n=M
\text{ という }R\text{-部分加群の鎖がある}\}
$$
と定める。上限が有限なら有限長加群、有限でなければ長さを $\infty$ と書く。$M=0$ の長さは $0$ である(Sta00IU Definition 10.52.1)。
ここで鎖は $R$ の作用を保つ部分加群の鎖である。$M$ が同時に体 $k$ 上のベクトル空間でもあっても、$R$ 部分加群の鎖と $k$ 部分空間の鎖が常に同じとは限らない。したがって $\operatorname{length}_R(M)$ の添字 $R$ は飾りではない。
非零の加群 $S$ が単純であるとは、部分加群が $0$ と $S$ だけであることをいう。上の有限鎖で各商 $M_i/M_{i-1}$ が単純なら、その鎖を組成列という。有限長加群では、これ以上真に細分できない鎖が組成列になる。
可換環 $R$ 上の非零加群 $S$ が単純であることと、ある極大イデアル $\mathfrak m$ について $S\cong R/\mathfrak m$ であることは同値である。このとき $\operatorname{length}_R(S)=1$ である(Sta00IU Lemma 10.52.10)。
$S$ が単純なら $0\ne s\in S$ を選ぶ。$Rs$ は非零の部分加群なので $S=Rs$ であり、$R\to S,\ r\mapsto rs$ は全射である。その核 $I$ によって $S\cong R/I$。もし $I$ が極大でなければ、$I\subsetneq J\subsetneq R$ となるイデアル $J$ があり、$J/I$ は $S$ の非零かつ真の部分加群になって矛盾する。従って $I=\mathfrak m$ は極大である。逆に $R/\mathfrak m$ の部分加群は $\mathfrak m$ を含むイデアルに対応し、$0$ と全体しかない。非零単純加群の真の部分加群の鎖は一段しかないから長さは $1$ である。$\square$
体 $k$ 上では唯一の極大イデアルが $0$ であり、単純 $k$ 加群は一次元ベクトル空間 $k$ である。基底に従って一次元ずつ足せば、有限次元 $k$ ベクトル空間 $V$ について $\operatorname{length}_k(V)=\dim_kV$ を得る。無限次元なら任意の段数の部分空間の鎖を作れるので長さは $\infty$ である。
加群の長さの中心的な性質は、短完全列に対して和になることである。部分加群 $N\subset M$ に対して $0\to N\to M\to M/N\to0$ を使えば、$M$ の内部にある部分と、その外側の商で失われずに段数を数えられる。
短完全列 $0\to M'\to M\to M''\to0$ に対し
$$
\operatorname{length}_R(M)
=\operatorname{length}_R(M')+\operatorname{length}_R(M'')
$$
が成り立つ。右辺の一方が $\infty$ のときは和を $\infty$ と解釈する(Sta00IU Lemma 10.52.3)。
$M'$ を $M$ の部分加群と同一視する。$M'$ の鎖を一つ選び、$M''$ の鎖の各項の逆像を $M$ に取ると、$M'$ までの鎖の後へその逆像の鎖をつなげられる。段数は二つの段数の和だから、左辺は右辺以上である。
逆に $M$ の鎖 $0=M_0\subsetneq\cdots\subsetneq M_n=M$ を任意に取る。$M_i\cap M'$ の鎖と、$M_i$ の $M''$ における像の鎖を作る。一つの段 $M_i\subsetneq M_{i+1}$ で、交わりと像がどちらも変わらないと仮定すると、任意の $u\in M_{i+1}$ の像は $M_i$ のある $v$ の像と等しい。$u-v\in M'\cap M_{i+1}=M'\cap M_i$ だから $u\in M_i$ となり矛盾する。従って元の各段では少なくとも片方の鎖が真に増える。よって $n$ は二つの誘導鎖の真の段数の和以下であり、各段数はそれぞれの長さ以下である。すべての $n$ に上限を取れば逆向きの不等式を得る。$\square$
この証明では有限長を仮定していない。いずれかの端の加群に任意に長い鎖があれば、中央にも任意に長い鎖がある。中央が有限長なら両端も有限長になる。反対に両端が有限長なら中央の長さはその和で有限である。
有限長 $M$ の任意の部分加群 $N$ と商 $M/N$ は有限長で、$\operatorname{length}_R(N)\leq\operatorname{length}_R(M)$ である。また有限個の加群の直和について
$$
\operatorname{length}_R(M_1\oplus\cdots\oplus M_r)
=\sum_{i=1}^r\operatorname{length}_R(M_i)
$$
が成り立つ。
$0\to N\to M\to M/N\to0$ へ加法性を適用すると前半が従う。二つの加群なら $0\to M_1\to M_1\oplus M_2\to M_2\to0$ に適用し、一般の有限直和は帰納法で得る。$\square$
例えば $\mathbb Z/12\mathbb Z$ には $0\subsetneq 6\mathbb Z/12\mathbb Z\subsetneq2\mathbb Z/12\mathbb Z\subsetneq\mathbb Z/12\mathbb Z$ という鎖がある。各商は位数 $2$、$3$、$2$ の単純 $\mathbb Z$ 加群だから、この鎖は組成列で長さは $3$。元が $12$ 個あることとも、$\mathbb Z$ 加群として生成元が一つであることとも値は異なる。一般の正整数 $n=\prod p_i^{e_i}$ に対しては、素数ごとの単純な段を数えて $\operatorname{length}_{\mathbb Z}(\mathbb Z/n\mathbb Z)=\sum e_i$ となる。
「有限個の生成元で書ける」と「有限段で分解できる」は違う。例えば $\mathbb Z$ は一つの元 $1$ で生成されるが、$0\subsetneq2^n\mathbb Z\subsetneq2^{n-1}\mathbb Z\subsetneq\cdots\subsetneq2\mathbb Z\subsetneq\mathbb Z$ を任意の $n$ で作れるから長さは無限である。一方、有限長なら組成列の各段が一つの元で生成されるため、全体も有限生成になる。
昇鎖条件とは部分加群の増加列がいつか一定になること、降鎖条件とは減少列がいつか一定になることである。前者を満たす加群を Noether 加群、後者を満たす加群を Artin 加群という。
$R$ 加群 $M$ が有限長であることと、$M$ が Noether 加群かつ Artin 加群であることは同値である。
長さが有限なら、真の包含が連続する鎖の段数は一定の整数を超えない。従って増加列も減少列も一定になる。
逆に二つの鎖条件を仮定する。$M\ne0$ なら、Noether 条件により真の部分加群の集合には包含について極大な元 $M_1$ がある。$M/M_1$ は単純である。$M_1\ne0$ なら同じ操作を $M_1$ に施す。これを続けて無限の真の減少列ができれば Artin 条件に反するので、有限回で $0$ に至る。得られた減少列を逆に並べると各商が単純な組成列になる。この列がどの鎖より長いかは加法性を各段に繰り返して示せる。各単純商の長さは $1$ だから、$M$ の長さはその段数であり有限である。$\square$
有限長加群ではどの組成列も同じ段数を持つ。これは組成列の中間項が一意という意味ではない。例えば二次元ベクトル空間 $k^2$ では、途中の一次元部分空間は無数に選べるが、どの組成列も二段である。長さの加法性は、この選択によらず数値が定まることを説明する。単純商の種類まで含めた一意性は Jordan–Hölder の定理の内容であり、本稿で必要なのは段数の一致である。
$(R,\mathfrak m,\kappa)$ を局所環とする。$R$ 上の単純加群は $\kappa=R/\mathfrak m$ だけである。従って有限長加群の各組成因子は $\kappa$ に同型になる。ただし $M$ 全体が $\kappa$ ベクトル空間というわけではない。$\mathfrak m$ が $M$ に零で作用する場合に初めてそうなる。
$M$ を局所環 $(R,\mathfrak m,\kappa)$ 上の有限長加群とする。ある $q$ で $\mathfrak m^qM=0$ となり、
$$
\operatorname{length}_R(M)
=\sum_{i=0}^{q-1}
\dim_\kappa\bigl(\mathfrak m^iM/\mathfrak m^{i+1}M\bigr)
$$
が成り立つ。各商は $\mathfrak m$ で零になるため $\kappa$ ベクトル空間である(Sta00IU Lemmas 10.52.4, 10.52.6)。
有限長なのに $\mathfrak m^iM\ne0$ がすべての $i$ で成り立つと仮定する。有限長なら $\mathfrak m^0M\supseteq\mathfrak mM\supseteq\cdots$ はいずれ一定になる。ある $N=\mathfrak m^jM\ne0$ で $N=\mathfrak mN$ となる。しかし有限長から $N$ は有限生成であり、Nakayama の補題より $N=0$ となって矛盾する。従って $\mathfrak m^qM=0$ となる $q$ がある。各商は $\mathfrak m(\mathfrak m^iM/\mathfrak m^{i+1}M)=0$ なので $\kappa$ ベクトル空間である。冪の有限鎖の各段に加法性を適用し、$\kappa$ ベクトル空間としての次元が $R$ 長さに等しいことを用いれば式を得る。$\square$
この式は 長さが各段の次元の和 であることを述べる。$M$ 全体の $k$ 次元と無条件に等しいという主張ではない。係数体 $k\subset R$ があり、剰余体が $k$ 自身で、$M$ が有限次元 $k$ ベクトル空間なら、上の各段の $k$ 次元を足して $\dim_kM$ になる。剰余体が真の拡大なら、その次数も区別しなければならない。
$R=k[x]_{(x)}$、$M=R/(x^n)$ とする。$M\supset xM\supset\cdots\supset x^{n-1}M\supset x^nM=0$ の各商は $k$ と同型なので $\operatorname{length}_R(M)=n$。$\operatorname{Spec}R/(x^n)$ の台は一つの点だが、$n=1$ と $n>1$ では局所環の長さが異なる。集合としての点の数だけではこの厚みを見られない。
$A=k[x,y]_{(x,y)}/(x,y)^2$ とする。極大イデアル $\mathfrak m=(x,y)/(x,y)^2$ は二次の積で零になり、$\mathfrak m$ は $k$ 上二次元である。$A/\mathfrak m\cong k$ だから、冪の計算式で $\operatorname{length}_A(A)=2+1=3$。商の台は一点であり、一変数の厚い点 $k[x]_{(x)}/(x^3)$ と長さは同じでも、$\mathfrak m/\mathfrak m^2$ の次元はそれぞれ $2$ と $1$ である。長さ一つだけでは局所構造の形までは決まらない。
無限長の例として、局所整域 $k[x]_{(x)}$ を自分自身の加群とみると、$(x)^n$ が任意の $n$ で零にならず、長さは無限である。ここで有限生成であることと有限長であることの差が再び現れる。また $R/(x^n)$ は商環としては Artin 局所環であり、$R$ 加群としての長さは $R/(x^n)$ 自身を環として作用させた長さとも一致する。これは全射 $R\to R/(x^n)$ の下で両者の部分加群が同じだからである(Sta00IU Lemma 10.52.5)。
加群の長さは「どの環上で数えるか」に依存する。例えば $\mathbb C$ を $\mathbb C$ 加群とみれば長さは $1$、$\mathbb R$ 加群とみれば二次元実ベクトル空間なので長さは $2$ である。環準同型 $R\to S$ と $S$ 加群 $M$ があれば、$S$ 部分加群は $R$ 部分加群でもあるため $\operatorname{length}_R(M)\geq\operatorname{length}_S(M)$ となる。$R\to S$ が全射なら、$M$ の $R$ 部分加群と $S$ 部分加群は同じなので等号である。
$M$ を可換環 $R$ 上の有限長加群とする。組成列の各単純商はある極大イデアル $\mathfrak m_i$ に対する $R/\mathfrak m_i$ である。任意の極大イデアル $\mathfrak m$ について、$\operatorname{length}_{R_{\mathfrak m}}(M_{\mathfrak m})$ は、組成列で $\mathfrak m_i=\mathfrak m$ となる段の数に等しい。従って非零となる極大イデアルは有限個で、
$$
\operatorname{length}_R(M)
=\sum_{\mathfrak m\in\operatorname{Max}R}
\operatorname{length}_{R_{\mathfrak m}}(M_{\mathfrak m})
$$
が成り立つ(Sta00IU Lemma 10.52.11)。
組成列を $\mathfrak m$ で局所化する。局所化は完全なので、各段の商は $(R/\mathfrak m_i)_{\mathfrak m}$ になる。$\mathfrak m_i=\mathfrak m$ ならこれは剰余体 $\kappa(\mathfrak m)$ で長さ $1$、異なれば $\mathfrak m_i\setminus\mathfrak m$ の元が零を単元化するため $0$ である。零の段を除いた鎖に加法性を適用すると局所長さは該当する段数に等しい。組成列は有限なので、すべての極大イデアルについて足すと元の段数になる。$\square$
この式から、有限長加群は有限個の閉点に支えられるという幾何的な読み方ができる。ただし「有限個の閉点に支えられる加群なら必ず有限長」と無条件に逆向きに言うのは誤りである。例えば剰余体上の無限次元ベクトル空間は、台が一つの閉点でも長さは無限である。有限生成性や Noether 性などの仮定を別に確かめる必要がある。
平面曲線の交点を集合だけで数えると、接しているか横切っているかが消える。局所環の商の長さを使うと、この差を正の整数として残せる。以下では $k$ を体、$A=k[x,y]_{(x,y)}$ を原点における平面の局所環とする。二本の曲線が原点で適切に交わる場合、局所交点数は対応する商の長さで計算できる(Sta0B01 Lemma 43.16.1 の仮定の下での計算)。
直線 $y=0$ と直線 $x=0$ の商は $A/(y,x)\cong k$ だから長さは $1$。次に直線 $y=0$ と放物線 $y=x^2$ を原点で比べる。商は
$$
A/(y,y-x^2)\cong k[x]_{(x)}/(x^2)
$$
であり長さは $2$。いずれも集合としての交点は原点一つだが、後者は $x$ 方向の一次の厚みが残る。これは「二本が接する」ことを局所環で表した計算である。
この商環の長さをどんな交わりにもそのまま交点数と呼べるわけではない。交わりが適切な次元を持つか、局所環が必要な Cohen–Macaulay 条件を満たすかなどを確認する。一般の交叉理論では Tor の交代和が現れ、単純な商の長さとは一致しない例もある。本稿の二例は滑らかな平面の中で、共通成分のない二曲線を原点で交わらせた計算に限っている。
加群の長さは「何個の元があるか」や「いくつの生成元が要るか」とは異なる。単純な商を何段重ねたかを数え、短完全列に沿って和になる。この性質が、局所環の厚い点、交点の重複度、層や複体の有限な構成要素を数える場面で共通の尺度を与える。計算ではまず基礎環と局所化する点を固定し、有限長であることを確かめてから鎖を作る。
この記事の命題の仮定を一つずつ外すと、次のように結論が崩れる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| Artin 性(Noether 性だけにする) | $\mathbb Z$ 加群 $\mathbb Z$ | 有限長であること |
| Noether 性(Artin 性だけにする) | Prüfer 群 $\mathbb Z(p^\infty)$ | 有限長であること |
| 有限長(冪による計算法) | $R=k[x]_{(x)}$ を $R$ 加群とみる | ある $q$ で $\mathfrak m^qM=0$ となること |
| 有限生成など(台が有限個の閉点) | 剰余体上の無限次元ベクトル空間 | 台が有限個の閉点なら有限長であること |
| $R\to S$ が全射であること | $\mathbb R\to\mathbb C$ と $M=\mathbb C$ | $\operatorname{length}_R(M)=\operatorname{length}_S(M)$ |
Noether だが Artin でない。 $\mathbb Z$ の部分加群はイデアル $n\mathbb Z$ で、単項イデアル環なので増加列は一定になり、$\mathbb Z$ は Noether 加群である。しかし $2\mathbb Z\supsetneq4\mathbb Z\supsetneq8\mathbb Z\supsetneq\cdots$ は止まらない減少列で、Artin 加群でない。節「有限長と鎖条件」で見たとおり長さは無限である。
Artin だが Noether でない。 素数 $p$ について $\mathbb Z(p^\infty)=\{a/p^n+\mathbb Z:a\in\mathbb Z,n\ge0\}\subset\mathbb Q/\mathbb Z$ とし、$C_n=\langle1/p^n+\mathbb Z\rangle$(位数 $p^n$ の巡回群)と置く。部分群 $H$ が位数 $p^n$ の元 $a/p^n+\mathbb Z$($p\nmid a$)を含めば、$a$ は $p^n$ を法として可逆なので $1/p^n+\mathbb Z\in H$、つまり $C_n\subseteq H$ である。$\mathbb Z(p^\infty)$ の元の位数はすべて $p$ の冪なので、$H$ は元の位数が有界なら最大の $n$ について $H=C_n$、有界でなければ $H=\bigcup_nC_n=\mathbb Z(p^\infty)$ である。したがって部分群は $C_0\subsetneq C_1\subsetneq C_2\subsetneq\cdots$ と全体だけで、真の部分群はすべて有限である。減少列は有限群の中に入った時点でいつか一定になるから Artin 加群だが、上の増加列は止まらず Noether 加群でなく、任意の段数の鎖があるので長さは $\infty$ である。
どちらも命題「有限長と二つの鎖条件」の片方の条件を破り、結論の有限長が崩れる。
$R=k[x]_{(x)}$、$\mathfrak m=(x)$、$M=R$ とする。$R$ は整域なので $x^q\ne0$ で、$\mathfrak m^qM=(x^q)\ne0$ がすべての $q$ で成り立つ。命題「極大イデアルによる計算法」の和の各項は $\dim_k(x^iR/x^{i+1}R)=1$ で、どこで打ち切っても $M$ の長さを与えない(長さは $\infty$)。破る仮定は「$M$ が有限長」であり、証明で冪の減少列が一定になることを使った段が働かない。
局所環 $(R,\mathfrak m,\kappa)$ 上で、$\kappa$ 上の無限次元ベクトル空間 $V$ を $\mathfrak m$ が零で作用する加群とみる。$R$ 部分加群は $\kappa$ 部分空間と同じなので、任意の段数の部分空間の鎖が $R$ 部分加群の鎖となり、長さは $\infty$ である。一方、台は閉点 $\mathfrak m$ だけである($\mathfrak p\ne\mathfrak m$ なら $\mathfrak m\setminus\mathfrak p$ の元が $V$ を零にしつつ局所化で可逆になるので $V_{\mathfrak p}=0$)。破る仮定は「有限生成」で、有限生成なら $V$ は有限次元になり有限長である。
$\mathbb R\to\mathbb C$ は全射でなく、$M=\mathbb C$ の $\mathbb R$ 部分加群 $\mathbb R$ は $\mathbb C$ 部分加群でない。そのため $\operatorname{length}_{\mathbb R}(\mathbb C)=2>1=\operatorname{length}_{\mathbb C}(\mathbb C)$ となり、節「基礎環と局所化に注意する」の等号は、全射の仮定を外すと成り立たない。
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