Turánの定理(Turán's theorem)とは、$r\ge1$ とし、互いに隣接する $r+1$ 頂点(完全グラフ $K_{r+1}$)を含まない $n$ 頂点の単純グラフの辺の本数は、$n$ 頂点を大きさの差が高々 1 の $r$ 個の組に分けて異なる組の頂点をすべて結んだ Turán グラフ $T(n,r)$ の辺の本数 $t(n,r)$ 以下であり、等号はそのグラフが $T(n,r)$ と同型のときに限る、という極値グラフ理論の定理である。たとえば 5 頂点で三角形を含まないグラフの辺は高々 6 本で、6 本を達成するのは $K_{2,3}$ だけである。$r=2$ の場合は Mantel の定理であり、$t(n,r)\le(1-1/r)n^2/2$ から、辺がこれより多いグラフは $K_{r+1}$ を含む。
前提知識: グラフ, 完全グラフ, 部分グラフ, 次数(グラフ), 鳩の巣原理
5 つの頂点のあいだに辺を引いて、どの 3 頂点も互いに結ばれている(三角形ができる)ことのないようにしたい。頂点を $\{1,2\}$ と $\{3,4,5\}$ の 2 組に分け、組をまたぐ 6 組の頂点をすべて結ぶと、三角形はできない。三角形の 3 頂点のうち 2 つは同じ組に入り、同じ組の頂点は結ばれていないからである。7 本目の辺をどこに引いても三角形ができ、辺が 7 本以上あって三角形のないグラフは存在しない。同じように、6 頂点で「4 頂点が互いに結ばれている」形($K_4$)を避けたいなら、頂点を 2 個ずつ 3 組に分けて組をまたぐ 12 組を結ぶ(正八面体の頂点と辺の形)のが最善で、13 本の辺をもつ 6 頂点のグラフは必ず $K_4$ を含む。
一般に、$n$ 頂点のグラフが $r+1$ 個の頂点が互いに結ばれた部分($K_{r+1}$)をもたないとき、辺の本数は、頂点をできるだけ均等に $r$ 組に分けて組をまたぐ頂点をすべて結んだグラフの辺の本数を超えない。等号が成り立つのはそのグラフだけである。これが P. Turán が 1941 年に証明した Turán の定理 である(Tur41)。$r=2$ の場合(三角形を避ける場合)は W. Mantel が 1907 年に示していた(Man07)。Turán の定理は、ある部分構造を含まないという条件のもとで辺の本数などの最大値を調べる極値グラフ理論の出発点になった。
本記事では、グラフはループも平行辺ももたない有限の無向の単純グラフとする。$n$ 頂点の完全グラフを $K_n$ と書き、グラフ $G$ の頂点集合・辺集合を $V(G)$・$E(G)$、辺の本数を $e(G):=|E(G)|$ と書く。「$G$ が $K_{r+1}$ を含む」とは、$G$ のある部分グラフが $K_{r+1}$ とグラフ同型であること、すなわち互いに隣接する $r+1$ 個の頂点があることをいう。互いに隣接する頂点の集合を クリーク という。
$r\ge1$ とし、$n_1,\dots,n_r\ge0$ を整数とする。頂点集合を大きさ $n_1,\dots,n_r$ の互いに交わらない $r$ 個の組 $V_1,\dots,V_r$(部。空でもよい)に分け、異なる部に属する 2 頂点をすべて辺で結び、同じ部に属する 2 頂点は結ばないグラフを 完全 $r$ 部グラフ といい、$K_{n_1,\dots,n_r}$ と書く。
$n\ge1$、$r\ge1$ とし、$n=qr+s$($q\ge0$、$0\le s< r$)と割り算をする。$s$ 個の部の大きさが $q+1$、残りの $r-s$ 個の部の大きさが $q$ である完全 $r$ 部グラフを Turán グラフ といい、$T(n,r)$ と書く。その辺の本数を $t(n,r):=e(T(n,r))$ と書く。
$T(n,r)$ は、$n$ 個の頂点を大きさの差が高々 $1$ になるように $r$ 個の部に分けた完全 $r$ 部グラフである。部の大きさの組は並べ方を除いて $n$ と $r$ だけで決まるので、$T(n,r)$ は同型を除いて一意に定まる。$n< r$ なら $q=0$、$s=n$ で、大きさ $1$ の部が $n$ 個と空の部が $r-n$ 個になる。$n=r$ なら $q=1$、$s=0$ で、大きさ $1$ の部が $r$ 個になる。いずれの場合も $T(n,r)=K_n$ である。$r=2$ なら $T(n,2)$ は完全二部グラフ $K_{\lfloor n/2\rfloor,\lceil n/2\rceil}$ である。冒頭の 2 つのグラフは $T(5,2)=K_{2,3}$ と $T(6,3)=K_{2,2,2}$ である。
完全 $r$ 部グラフ $K_{n_1,\dots,n_r}$ の辺の本数は、全頂点対の個数から同じ部の中の頂点対の個数を引いて
$$
e(K_{n_1,\dots,n_r})=\sum_{1\le i< j\le r}n_in_j=\frac12\Bigl(n^2-\sum_{i=1}^rn_i^2\Bigr)\qquad(n=n_1+\cdots+n_r)
$$
である。特に
$$
t(n,r)=\frac12\bigl(n^2-s(q+1)^2-(r-s)q^2\bigr)
$$
である。たとえば $t(5,2)=6$、$t(6,3)=12$、$t(9,3)=27$、$t(100,4)=3750$ である。
$r\ge1$、$n\ge1$ とし、$G$ を $K_{r+1}$ を含まない $n$ 頂点のグラフとする。このとき
$$
e(G)\le t(n,r)
$$
であり、等号が成り立つのは $G$ が $T(n,r)$ と同型であるときに限る。
$T(n,r)$ 自身は $K_{r+1}$ を含まない。$r+1$ 個の頂点を選ぶと、鳩の巣原理によりそのうち 2 つは同じ部に入り、その 2 つは隣接しないからである。したがって thm-turan-theorem-main の上界は達成され、「$K_{r+1}$ を含まない $n$ 頂点のグラフの辺の本数の最大値」は $t(n,r)$ にちょうど等しい。対偶の形で言えば、$n$ 頂点のグラフの辺が $t(n,r)$ 本より多ければ、そのグラフは $K_{r+1}$ を含む。
$r=1$ では $K_2$(1 本の辺)を含まないグラフは辺をもたず、$t(n,1)=0$ なので主張は明らかである。$r=2$ の場合が Mantel の定理(Mantelの定理)で、その上界 $e(G)\le\lfloor n^2/4\rfloor$ の証明は 部分グラフ の記事の定理「三角形を含まないグラフの辺数の上界」にある。以下では一般の $r$ について、等号の場合まで含めた証明と、上界だけを示す別の証明を与える。
$r\ge1$、$n\ge1$ とする。$n_1+\cdots+n_r=n$ を満たす非負整数の組のうち、$\sum_{i< j}n_in_j$ を最大にするのは、どの 2 つの差も高々 $1$ である組だけである。したがって、$n$ 頂点の完全 $r$ 部グラフの辺の本数は $t(n,r)$ 以下であり、等号が成り立つのはそのグラフが $T(n,r)$ と同型であるときに限る。
組 $(n_1,\dots,n_r)$ に、ある $i,j$ で $n_i\ge n_j+2$ となるものがあるとする。$n_i$ を $1$ 減らし $n_j$ を $1$ 増やすと、和 $n$ は変わらず、$\sum_kn_k^2$ の変化は
$$
(n_i-1)^2+(n_j+1)^2-n_i^2-n_j^2=-2(n_i-n_j-1)\le-2
$$
である。辺の本数の式 $\frac12\bigl(n^2-\sum_kn_k^2\bigr)$ により、$\sum_{k< l}n_kn_l$ は $n_i-n_j-1\ge1$ だけ真に増える。したがって最大値をとる組では、どの 2 つの差も高々 $1$ である(非負整数の組は有限個なので最大値は存在する)。
逆に、どの 2 つの差も高々 $1$ である組は並べ方を除いて一意である。実際、そのような組の最小値を $m$ とすると各 $n_i$ は $m$ か $m+1$ で、$m+1$ に等しいものの個数を $s'$($0\le s'< r$ としてよい。$s'=r$ なら全部が $m+1$ で、最小値が $m+1$ になり矛盾する)とすると $n=mr+s'$ となるので、割り算の一意性から $m=q$、$s'=s$ である。したがってこの組は $T(n,r)$ の部の大きさの組であり、$\sum_{i< j}n_in_j$ の最大値は $t(n,r)$、最大値をとるのはこの組だけである。後半は、完全 $r$ 部グラフが部の大きさの組で同型を除いて決まることから従う。$\square$
次の証明は A. A. Zykov による対称化の方法(Zyk49)の形である。辺の本数が最大のグラフが完全多部グラフであることを示し、lem-turan-theorem-balanced に帰着させる。
$n$ と $r$ を固定する。$K_{r+1}$ を含まない $n$ 頂点のグラフは有限個しかないので、その中で辺の本数が最大のもの $G$ をとる。以下、$d(x)$ を $G$ での頂点 $x$ の次数(グラフ)、$N(x)$ を $G$ で $x$ に隣接する頂点の集合とする。
段階 1(複製)。 隣接しない 2 頂点 $u,v$ について、$u$ を取り除き、$v$ の「複製」$v'$ を加えたグラフ $G'$ を考える。$v'$ は $N(v)$ のすべての頂点と隣接し、$v$ とは隣接しない。$u$ と $v$ は隣接しないので $u\notin N(v)$ であり、$G'$ でも $v'$ はちょうど $d(v)$ 本の辺をもつ。したがって
$$
e(G')=e(G)-d(u)+d(v)
$$
である。$G'$ は $K_{r+1}$ を含まない。実際、$G'$ のクリークは隣接しない $v,v'$ の両方を含むことはなく、$v'$ を含むクリークは $v'$ を $v$ に置き換えると $G$ のクリークになる($v'$ と $v$ は同じ頂点に隣接し、$u$ はもう使われていない)。$G$ の辺の本数の最大性から $e(G')\le e(G)$、すなわち 隣接しない $u,v$ について $d(u)\ge d(v)$ である。$u$ と $v$ の役割を入れ替えれば $d(v)\ge d(u)$ でもあるので、隣接しない 2 頂点の次数は等しい。
段階 2(隣接しないことの推移性)。 $u,v,w$ を相異なる頂点とし、$uv\notin E(G)$、$vw\notin E(G)$ とする。$uw\notin E(G)$ を示す。$uw\in E(G)$ と仮定する。段階 1 により $d(u)=d(v)=d(w)$ である。$u$ と $w$ を取り除き、$v$ の複製 $v',v''$ を 2 つ加えたグラフ $G''$ を作る($v',v''$ はそれぞれ $N(v)$ の頂点すべてと隣接し、$v$ とも互いとも隣接しない)。$u,w\notin N(v)$ なので、$v',v''$ はそれぞれ $d(v)$ 本の辺をもつ。取り除いた辺は $u$ に接続する $d(u)$ 本と $w$ に接続する $d(w)$ 本だが、辺 $uw$ を 2 回数えているので
$$
e(G'')=e(G)-\bigl(d(u)+d(w)-1\bigr)+2d(v)=e(G)+1
$$
である。段階 1 と同じ理由で $G''$ のクリークは $v,v',v''$ のうち高々 1 つを含み、それを $v$ に置き換えると $G$ のクリークになるので、$G''$ は $K_{r+1}$ を含まない。これは $G$ の最大性に反する。したがって $uw\notin E(G)$ である。
段階 3(完全多部グラフであること)。 頂点の間の関係「$x=y$ または $x$ と $y$ が隣接しない」は反射的・対称的であり、段階 2 により推移的なので、同値関係である。その同値類を $V_1,\dots,V_p$ とすると、同じ同値類の 2 頂点は隣接せず、異なる同値類の 2 頂点は隣接する。したがって $G$ は部 $V_1,\dots,V_p$ をもつ完全 $p$ 部グラフである。各 $V_i$ から 1 頂点ずつ選ぶと互いに隣接する $p$ 頂点が得られるので、$G$ が $K_{r+1}$ を含まないことから $p\le r$ である。空の部を $r-p$ 個加えれば、$G$ は $n$ 頂点の完全 $r$ 部グラフとみなせる。
段階 4(結論)。 lem-turan-theorem-balanced により $e(G)\le t(n,r)$ である。$G$ は辺の本数が最大のものだったので、$K_{r+1}$ を含まない任意の $n$ 頂点のグラフ $H$ について $e(H)\le e(G)\le t(n,r)$ である。
等号の場合を示す。$H$ が $K_{r+1}$ を含まず $e(H)=t(n,r)$ を満たすとする。$T(n,r)$ も $K_{r+1}$ を含まないので、辺の本数の最大値は $t(n,r)$ であり、$H$ もその最大値をとる。段階 1〜3 は最大値をとるグラフなら何にでも使えるので、$H$ は完全 $r$ 部グラフであり、$e(H)=t(n,r)$ と lem-turan-theorem-balanced の等号条件から $H$ は $T(n,r)$ と同型である。$\square$
上界 $e(G)\le t(n,r)$ だけなら、頂点数に関する帰納法でも示せる。そのために $t(n,r)$ の漸化式を用意する。
$r\ge1$、$n>r$ のとき
$$
t(n,r)=t(n-r,r)+(r-1)(n-r)+\binom r2
$$
である。
$n>r$ なので $T(n,r)$ の部の大きさ $n_1,\dots,n_r$ はどれも $q\ge1$ 以上である。各部から 1 頂点ずつ、計 $r$ 頂点を取り除くと、部の大きさは $n_i-1$ になり、差は高々 $1$ のままなので、残りは $T(n-r,r)$ と同型である。取り除いた辺は、取り除いた $r$ 頂点どうしを結ぶ $\binom r2$ 本と、取り除いた頂点と残った頂点を結ぶ辺である。部 $V_i$ から取り除いた頂点は、残った $n-r$ 頂点のうち $V_i$ に残る $n_i-1$ 頂点以外のすべてと隣接するので、後者の本数は
$$
\sum_{i=1}^r\bigl((n-r)-(n_i-1)\bigr)=r(n-r)-(n-r)=(r-1)(n-r)
$$
である。$\square$
$r\ge1$ を固定し、$n$ に関する強い数学的帰納法で $e(G)\le t(n,r)$ を示す。$n\le r$ なら $T(n,r)=K_n$ なので $e(G)\le\binom n2=t(n,r)$ である。
$n>r$ とし、$n$ より少ない頂点数では主張が成り立つとする。$K_{r+1}$ を含まない $n$ 頂点のグラフ $G$ に、$K_{r+1}$ を含まないという条件を保ったまま辺を 1 本ずつ加えられるだけ加えたグラフを $G^+$ とする。$e(G)\le e(G^+)$ なので、$G^+$ について示せばよい。$G^+$ は $K_{r+1}$ を含まないので完全グラフではなく($n>r$)、隣接しない 2 頂点 $x,y$ がある。辺 $xy$ を加えると $K_{r+1}$ ができるので、$G^+$ には $x$ と、$x,y$ の両方に隣接する $r-1$ 個の頂点とが互いに隣接する $r$ 頂点の集合 $S$ がある。すなわち $G^+$ は $K_r$ を含む。
$S$ の外の頂点 $z$ は、$S$ の $r$ 頂点すべてと隣接することはない(隣接すれば $S\cup\{z\}$ が $K_{r+1}$ になる)ので、$S$ と $z$ を結ぶ辺は高々 $r-1$ 本である。したがって $S$ と $S$ の外を結ぶ辺は高々 $(r-1)(n-r)$ 本、$S$ の中の辺は $\binom r2$ 本である。$S$ を取り除いた $n-r$ 頂点のグラフ $G^+-S$ も $K_{r+1}$ を含まないので、帰納法の仮定により $e(G^+-S)\le t(n-r,r)$ である。これらを合わせ、lem-turan-theorem-recursion を使うと
$$
e(G^+)\le t(n-r,r)+(r-1)(n-r)+\binom r2=t(n,r)
$$
である。$\square$
$r\ge1$ とする。$t(n,r)\le\left(1-\frac1r\right)\frac{n^2}2$ であり、等号は $r$ が $n$ を割り切るときに限り成り立つ。したがって、$n$ 頂点のグラフ $G$ が
$$
e(G)>\left(1-\frac1r\right)\frac{n^2}{2}
$$
を満たせば、$G$ は $K_{r+1}$ を含む。
$T(n,r)$ の部の大きさを $n_1,\dots,n_r$ とすると、Cauchy–Schwarzの不等式により $n^2=\bigl(\sum_in_i\bigr)^2\le r\sum_in_i^2$ であり、等号は $n_1=\cdots=n_r$ のとき、すなわち $r\mid n$ のときに限る(部の大きさの差が高々 $1$ なので、すべて等しいことは $s=0$ と同じである)。したがって
$$
t(n,r)=\frac12\Bigl(n^2-\sum_in_i^2\Bigr)\le\frac12\Bigl(n^2-\frac{n^2}r\Bigr)=\left(1-\frac1r\right)\frac{n^2}2
$$
である。後半は thm-turan-theorem-main から従う。$\square$
$r=2$ では「$n^2/4$ 本より多くの辺をもつグラフは三角形を含む」となる。辺の密度(全頂点対 $\binom n2$ のうち辺になっている割合)で言えば、$K_{r+1}$ を含まないグラフの密度は、$n$ が大きいとき $1-\frac1r$ をほとんど超えられない。
Turán の定理を補グラフに使うと、独立集合(グラフ)(どの 2 頂点も隣接しない頂点の集合)の大きさの下界が得られる。$G$ の独立集合の大きさの最大値を $\alpha(G)$ と書く。次の命題はそれを直接に示し、そこから cor-turan-theorem-density の別証明が得られる。
$G$ を $n$ 頂点、$m$ 本の辺をもつグラフ($n\ge1$)とし、$d(v)$ を頂点 $v$ の次数とする。このとき
$$
\alpha(G)\ge\sum_{v\in V(G)}\frac1{d(v)+1}\ge\frac{n^2}{2m+n}
$$
である。
頂点の並べ方($V(G)$ の元を一列に並べる方法)は $n!$ 通りある。並べ方 $\sigma$ に対し、隣接するどの頂点よりも前に並んでいる頂点の集合を $I_\sigma$ とする。$I_\sigma$ は独立集合である。実際、隣接する $u,v$ がともに $I_\sigma$ に属すれば、$u$ は $v$ より前にあり、$v$ は $u$ より前にあることになって矛盾する。
頂点 $v$ が $I_\sigma$ に属するのは、$v$ と $v$ に隣接する $d(v)$ 頂点の計 $d(v)+1$ 頂点の中で $v$ が最初に並ぶときである。この $d(v)+1$ 頂点の並ぶ順番は $n!$ 通りの並べ方の中で均等に現れるので、そのような $\sigma$ は $n!/(d(v)+1)$ 通りある。したがって
$$
\sum_\sigma|I_\sigma|=\sum_v\#\{\sigma\mid v\in I_\sigma\}=\sum_v\frac{n!}{d(v)+1}
$$
であり、$|I_\sigma|$ の平均は $\sum_v\frac1{d(v)+1}$ である。平均以上の $|I_\sigma|$ をもつ $\sigma$ があるので、第 1 の不等式が従う。
第 2 の不等式は、Cauchy–Schwarz の不等式 $\bigl(\sum_va_v\bigr)\bigl(\sum_va_v^{-1}\bigr)\ge n^2$($a_v:=d(v)+1>0$)と、握手補題 $\sum_vd(v)=2m$(次数(グラフ) の記事を参照)による $\sum_va_v=2m+n$ から従う。$\square$
$G$ の補グラフ $\overline G$(隣接と非隣接を入れ替えたグラフ)の独立集合は $G$ のクリークである。$G$ が $n$ 頂点、$e$ 本の辺をもつとき、$\overline G$ の辺は $\binom n2-e$ 本なので、prop-turan-theorem-independent を $\overline G$ に使うと、$G$ のクリークの大きさの最大値 $\omega(G)$ について
$$
\omega(G)=\alpha(\overline G)\ge\frac{n^2}{2\bigl(\binom n2-e\bigr)+n}=\frac{n^2}{n^2-2e}
$$
である($e\le\binom n2<\frac{n^2}2$ なので分母は正)。$e>\left(1-\frac1r\right)\frac{n^2}2$ なら $n^2-2e<\frac{n^2}r$ なので $\omega(G)>r$、すなわち $G$ は $K_{r+1}$ を含む。これは cor-turan-theorem-density の後半の、thm-turan-theorem-main を使わない証明である。ただし、この方法では $r\nmid n$ のときの正確な最大値 $t(n,r)$ や等号の場合は得られない。
5 頂点の閉路 $C_5$(頂点 $0,1,2,3,4$ を輪に結んだ 5 本の辺)は三角形を含まない。$C_5$ に辺を 1 本加えると、加えた辺 $\{i,i+2\}$(添字は $5$ を法とする)は $i,i+1,i+2$ で三角形を作るので、$C_5$ は「三角形を含まないまま辺を加えられない」グラフである。しかし辺は 5 本で、最大値 $t(5,2)=6$ に届かない。したがって「三角形を含まないまま辺を加えられないグラフは辺の本数が最大である」という含意は成り立たない。極大(それ以上辺を加えられない)と最大(辺の本数が最大)は異なる。prf-turan-theorem-induction が辺を加えられるだけ加えたグラフを使うのは $K_r$ の存在を得るためだけで、極大なグラフが最大であることは使っていない。
また $C_5$ は三角形を含まないが二部グラフではない(長さ 5 の奇数の閉路である)ので、頂点を 2 色で塗り分けることはできず、彩色数は 3 である。したがって「$K_{r+1}$ を含まないグラフは $r$ 個の部に分けられる($r$ 色で塗り分けられる)」という含意は $r=2$ で破れる。thm-turan-theorem-main が述べる完全 $r$ 部グラフの構造は、辺の本数が最大のときに限って現れるものである。
「$n$ 頂点で $t(n,r)$ 本以上の辺をもつグラフは $K_{r+1}$ を含む」は成り立たない。$T(n,r)$ はちょうど $t(n,r)$ 本の辺をもち、$K_{r+1}$ を含まないからである。thm-turan-theorem-main の結論を得るには、辺が $t(n,r)$ 本より真に多いことが必要である。たとえば $n=5$、$r=2$ では、$K_{2,3}$ は 6 本の辺をもつが三角形を含まない。
$K_{r+1}$ の代わりに一般のグラフ $H$ を部分グラフとして含まない $n$ 頂点のグラフの辺の本数の最大値を $\operatorname{ex}(n,H)$ と書く。Turán の定理は $\operatorname{ex}(n,K_{r+1})=t(n,r)$ を述べている。Erdős と Stone は、$r\ge1$、$s\ge1$、$\varepsilon>0$ を固定すると、$n$ が十分大きければ $t(n,r)+\varepsilon n^2$ 本以上の辺をもつ $n$ 頂点のグラフは、各部の大きさが $s$ の完全 $(r+1)$ 部グラフ $K_{s,\dots,s}$ を含むことを示した(ES46)。ここから、$H$ の彩色数が $r+1\ge2$ なら
$$
\operatorname{ex}(n,H)=\left(1-\frac1r\right)\frac{n^2}2+o(n^2)\qquad(n\to\infty)
$$
であることが従う(Die17 第 7 章 §7.1)。$H$ が辺をもつ二部グラフ(彩色数 2)なら右辺の主要項は $0$ で、$\operatorname{ex}(n,H)$ は $n^2$ よりゆっくり増える。完全グラフを禁止する Turán の定理とは振る舞いが大きく異なる。
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