局所写像度(local degree)とは、球面 $S^n$($n\ge1$)や Euclid 空間の開集合の間の連続写像 $f$ と、逆像 $f^{-1}(f(x))$ の孤立点 $x$ について、$f$ が局所ホモロジー $H_n(W,W\setminus\{x\})\to H_n(S^n,S^n\setminus\{f(x)\})$ に誘導する写像を表す整数 $\deg_xf$ である。球面の写像 $f\colon S^n\to S^n$ の写像度は、逆像が有限個の点からなる点について、逆像の各点の局所写像度の和に等しい。可逆な線形写像の局所写像度は行列式の符号であり、点 $x$ で微分可能で微分が可逆なら $\operatorname{sgn}\det Df(x)$ に等しい。複素多項式の根での局所写像度は根の重複度で、ここから代数学の基本定理が従う。
前提知識: 写像度, 局所ホモロジー, 切除定理(特異ホモロジー), 相対ホモロジーと長完全列
球面の写像 $f\colon S^n\to S^n$ の写像度は球面全体で決まる整数だが、ある点 $y$ の逆像が有限個の点 $x_1,\dots,x_m$ からなるときは、各 $x_i$ のごく近くでの $f$ のふるまいを表す整数の和に分かれる。この整数が局所写像度(local degree)$\deg_{x_i}f$ であり、$x_i$ の小さな近傍 $W$ の上の $f$ が局所ホモロジーの群 $H_n(W\mid x_i)\cong H_n(S^n\mid x_i)$ から $H_n(S^n\mid y)$ へ誘導する写像として定まる。局所写像度は、可逆な線形写像では行列式の符号に、微分が可逆な点では微分の行列式の符号に、複素多項式の根では根の重複度になる。こうして写像度の計算は、逆像の点を符号や重複度をつけて数えることに帰着する。この記事ではこれらを証明し、応用として代数学の基本定理を導く。
以下 $n\ge1$ とし、整数係数の特異ホモロジーを使う。部分集合 $A\subset X$ について $H_n(X\mid A):=H_n(X,X\setminus A)$ と書く(局所ホモロジー の記号)。
$x\in S^n$ とする。包含が誘導する写像 $j_x\colon H_n(S^n)\to H_n(S^n\mid x)$ は同型である。また $U\subset S^n$ が $x$ を含む開集合なら、包含は同型 $H_n(U\mid x)\cong H_n(S^n\mid x)$ を誘導する。
$S^n\setminus\{x\}$ は $\mathbb{R}^n$ と同相なので(球面 の記事の命題(Euclid 空間の一点コンパクト化))可縮であり、被約ホモロジーはすべて $0$ である。被約ホモロジーの対の長完全列(相対ホモロジーと長完全列 の記事の命題(被約ホモロジーの対の長完全列))の部分
$$
\tilde H_n(S^n\setminus\{x\})\to\tilde H_n(S^n)\xrightarrow{\ j_x\ }H_n(S^n\mid x)\to\tilde H_{n-1}(S^n\setminus\{x\})
$$
の両端は $0$ であり、$n\ge1$ なので $\tilde H_n(S^n)=H_n(S^n)$ である。よって $j_x$ は同型である。後半は、$S^n$ の点が閉集合であることから 局所ホモロジー の命題(局所ホモロジーの局所性)による。
以下、生成元 $\alpha\in H_n(S^n)\cong\mathbb{Z}$ を一つ固定し、$\mu_x:=j_x(\alpha)\in H_n(S^n\mid x)$ とおく。$x$ を含む開集合 $U$ について、$H_n(U\mid x)$ の元で $\mu_x$ に対応するもの(lem-ld-generator の同型による)も同じ記号 $\mu_x$ で表す。
$U\subset S^n$ を開集合、$f\colon U\to S^n$ を連続写像、$x\in U$、$y:=f(x)$ とし、$x$ が $f^{-1}(y)$ の孤立点であるとする。$x$ の開近傍 $W\subset U$ で $W\cap f^{-1}(y)=\{x\}$ となるものをとると、$f$ は対の写像 $(W,W\setminus\{x\})\to(S^n,S^n\setminus\{y\})$ であり、ある整数 $d$ によって
$$
f_*(\mu_x)=d\,\mu_y\qquad\bigl(f_*\colon H_n(W\mid x)\to H_n(S^n\mid y)\bigr)
$$
と書ける。この $d$ を $f$ の $x$ における局所写像度(local degree)といい、$\deg_xf$ と書く。
$d$ は $W$ の選び方によらない。$W'\subset W$ なら、$W'$ の上の $f$ は包含 $(W',W'\setminus\{x\})\hookrightarrow(W,W\setminus\{x\})$ を経由し、この包含は $\mu_x$ を $\mu_x$ に写す。一般の $W,W'$ は $W\cap W'$ と比べればよい。また $\alpha$ を $-\alpha$ に替えると $\mu_x$ と $\mu_y$ が同時に符号を変えるので、$d$ は $\alpha$ にもよらない。
$\mathbb{R}^n$ は、北極 $N:=(0,\dots,0,1)$ からの立体射影 $\sigma\colon S^n\setminus\{N\}\to\mathbb{R}^n$、$\sigma(x',x_{n+1})=x'/(1-x_{n+1})$ によって $S^n$ の開集合 $S^n\setminus\{N\}$ と同一視する。こうして、$\mathbb{R}^n$ の開集合 $U$ から $\mathbb{R}^n$ への連続写像の局所写像度も定まる。
$U$、$f$、$x$、$y$ を def-ld-main のとおりとする。
1.定義の $W$ を、$f$ と $g$ が一致する近傍の中にとれば、同じ対の写像になる。
2.$F$ は対の写像 $(W,W\setminus\{x\})\to(S^n,S^n\setminus\{y\})$ のあいだの対としてのホモトピーなので、$F_0$ と $F_1$ は同じ準同型を誘導する(相対ホモロジーと長完全列 の記事の命題(対のホモトピー不変性))。
3.$h^{-1}(h(x))=\{x\}$ なので $W=S^n$ ととれる。$h$ は対の写像 $(S^n,\emptyset)\to(S^n,\emptyset)$ と $(S^n,S^n\setminus\{x\})\to(S^n,S^n\setminus\{h(x)\})$ を与え、包含と可換なので $h_*\circ j_x=j_{h(x)}\circ h_*$ である。よって $h_*\mu_x=j_{h(x)}(h_*\alpha)=\deg h\cdot\mu_{h(x)}$ である。
4.$W$ を $f$ の定義の近傍とする。$h$ は単射なので $W\cap(h\circ f)^{-1}(h(y))=\{x\}$ であり、3 の計算から $(h\circ f)_*\mu_x=h_*(\deg_xf\cdot\mu_y)=\deg h\cdot\deg_xf\cdot\mu_{h(y)}$ である。後者は、$x':=h^{-1}(x)$、$W':=h^{-1}(W)$ とおくと $h$ が対の写像 $(W',W'\setminus\{x'\})\to(W,W\setminus\{x\})$ で $\mu_{x'}$ を $\deg h\cdot\mu_x$ に写す(3 と同じ計算を包含と合わせる)ことから従う。
5.$y\in V$ で、$f|_W$ は対の同相 $(W,W\setminus\{x\})\to(V,V\setminus\{y\})$ なので $H_n(W\mid x)\cong H_n(V\mid y)$ を誘導し、$\mu_x$ を生成元 $\pm\mu_y$ に写す。
3 から、恒等写像の局所写像度は $1$、鏡映の局所写像度は $-1$ である(写像度 の記事の定理(鏡映の写像度))。
$f\colon S^n\to S^n$ を連続写像とし、$y\in S^n$ の逆像 $f^{-1}(y)$ が有限集合 $\{x_1,\dots,x_m\}$ であるとする($m=0$ でもよい)。このとき
$$
\deg f=\sum_{i=1}^m\deg_{x_i}f
$$
が成り立つ($m=0$ なら右辺は $0$)。
$X:=S^n$、$L:=f^{-1}(y)$ とおき、$x_i$ の開近傍 $U_1,\dots,U_m$ を互いに交わらないようにとる($X$ は Hausdorff)。$f$ は $X\setminus L$ を $X\setminus\{y\}$ に写すので、対の写像 $(X,X\setminus L)\to(X,X\setminus\{y\})$ である。
段 1(分解).$Z:=X\setminus\bigcup_iU_i$ は閉集合で、開集合 $X\setminus L$ に含まれる。切除定理(切除定理(特異ホモロジー) の記事の定理(切除定理)の (1))により、包含は同型 $H_n(\bigcup_iU_i,\bigcup_iU_i\setminus L)\cong H_n(X\mid L)$ を誘導する。特異単体の像は弧状連結なので、互いに交わらない開集合 $U_i$ のどれか 1 つに入る。よって鎖群は直和に分かれ、包含 $k_i\colon H_n(U_i\mid x_i)\to H_n(X\mid L)$ を並べた写像
$$
\textstyle\bigoplus_ik_i\colon\bigoplus_{i=1}^mH_n(U_i\mid x_i)\to H_n(X\mid L)
$$
は同型である。$m=0$ なら $H_n(X\mid\emptyset)=H_n(X,X)=0$ である。
段 2($j(\alpha)$ の成分).包含が誘導する写像を $j\colon H_n(X)\to H_n(X\mid L)$、$p_i\colon H_n(X\mid L)\to H_n(X\mid x_i)$ とする。包含の合成なので $p_i\circ j=j_{x_i}$ であり、$p_i\circ k_i$ は lem-ld-generator の同型である。$i\ne l$ のとき、$U_l\subset X\setminus\{x_i\}$ なので $p_i\circ k_l$ は $H_n(U_l,U_l)=0$ を経由し、$p_i\circ k_l=0$ である。段 1 により $j(\alpha)=\sum_lk_l(a_l)$ と書け、$p_i$ を当てると $\mu_{x_i}=j_{x_i}(\alpha)=p_ik_i(a_i)$、すなわち $a_i=\mu_{x_i}$ である。よって $j(\alpha)=\sum_ik_i(\mu_{x_i})$ である。
段 3($f$ を当てる).$f$ と包含は可換なので $f_*\circ j=j_y\circ f_*$ であり、
$$
f_*j(\alpha)=j_y(f_*\alpha)=j_y(\deg f\cdot\alpha)=\deg f\cdot\mu_y
$$
である。一方 $f_*k_i(\mu_{x_i})$ は、$W=U_i$ とした def-ld-main の写像の像なので $\deg_{x_i}f\cdot\mu_y$ である。段 2 と合わせて $\deg f\cdot\mu_y=\sum_i\deg_{x_i}f\cdot\mu_y$ となり、$\mu_y$ は無限巡回群の生成元なので主張が従う。
$m=0$ の場合が、全射でない写像の写像度が $0$ であること(写像度 の記事の命題(写像度の基本性質)の (v))にあたる。この定理は Hat02 Proposition 2.30(p. 136)である。
証明では、$\alpha$ を左上から右下へ運ぶ 2 つの道を比べた。先に下へ進む道では写像度が、先に右へ進む道では局所写像度の和が現れる。
$$
\xymatrix{
H_n(X) \ar[r]^-{j} \ar[d]_{f_*} & H_n(X\mid L)\cong\bigoplus_iH_n(U_i\mid x_i) \ar[d]^{f_*}\\
H_n(X) \ar[r]^-{j_y} & H_n(X\mid y)
}
$$
$\mathbb{R}^n$ の同相写像 $\varphi$ で、$\varphi$ と $\varphi^{-1}$ がともに $\lvert z\rvert\to\infty$ のとき $\lvert\varphi(z)\rvert\to\infty$ を満たすものは、$\hat\varphi(N):=N$ とおくことで $S^n=\mathbb{R}^n\cup\{N\}$ の同相写像 $\hat\varphi$ に延びる(立体射影で $\{\lvert z\rvert>R\}\cup\{N\}$ の形の集合が $N$ の近傍の基本系になるので)。平行移動 $\tau_v(z):=z+v$ と可逆な線形写像はこの条件を満たす。
1.$(z,s)\mapsto z+sv$ を $(N,s)\mapsto N$ で延ばした写像は、$\lvert z+sv\rvert\ge\lvert z\rvert-\lvert v\rvert$ により $S^n\times[0,1]$ の上で連続であり、恒等写像から $\hat\tau_v$ へのホモトピーである。
2.$\sigma(Bx',x_{n+1})=Bx'/(1-x_{n+1})=B\sigma(x',x_{n+1})$ なので、$\hat B$ は $(n+1)$ 次の直交行列 $\operatorname{diag}(B,1)$ による $S^n$ の写像である。写像度 の記事の命題(直交変換の写像度)により、その写像度は $\det\operatorname{diag}(B,1)=\det B$ である。
$A$ を $n$ 次の実可逆行列とし、$A\colon\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}^n$ を線形写像とみなす。このとき
$$
\deg_0A=\operatorname{sgn}\det A
$$
である。
$A^{-1}(0)=\{0\}$ で、$A$ は $\hat A$ と $\mathbb{R}^n$ の上で一致するので、prop-ld-basic の 1・3 により $\deg_0A=\deg\hat A$ である。
段 1(対角行列への道).行 $i$ に行 $l$ の $c$ 倍を加える基本変形の行列 $E_{il}(c):=I+ce_{il}$($i\ne l$、$e_{il}$ は $(i,l)$ 成分だけが $1$ の行列)を左から有限回掛けると、$A$ は対角行列 $D=\operatorname{diag}(d_1,\dots,d_n)$ になる(下の「詳細」)。$E_k\cdots E_1A=D$、$E_r=E_{i_rl_r}(c_r)$ とすると、$E_{il}(c)^{-1}=E_{il}(-c)$ なので
$$
A_s:=E_{i_1l_1}(-sc_1)\cdots E_{i_kl_k}(-sc_k)\,D\qquad(0\le s\le1)
$$
は $A_1=A$、$A_0=D$ を満たし、$\det A_s=\det D\ne0$ である。続いて $D_s:=\operatorname{diag}\bigl((1-s)d_i+s\operatorname{sgn}d_i\bigr)$ は $D$ と $\operatorname{diag}(\operatorname{sgn}d_1,\dots,\operatorname{sgn}d_n)$ を可逆行列のまま結ぶ。
段 2(ホモトピー).段 1 の道をつないだ可逆行列の連続な族を $(C_s)_{0\le s\le1}$ とする。$s\mapsto C_s^{-1}$ は連続なので $K:=\max_s\| C_s^{-1}\|< \infty$ であり、$\lvert C_sz\rvert\ge\lvert z\rvert/K$ である。よって $\hat C_s$ をまとめた写像 $S^n\times[0,1]\to S^n$ は $N$ の近くでも連続で、$\hat A$ と $\hat Q$($Q:=\operatorname{diag}(\operatorname{sgn}d_i)$)を結ぶホモトピーである。
段 3(計算).$Q$ は直交行列なので、lem-ld-extension の 2 と 写像度 の記事の命題(写像度の基本性質)の (ii) により $\deg\hat A=\deg\hat Q=\det Q=\prod_i\operatorname{sgn}d_i=\operatorname{sgn}\det D$ である。$\det E_{il}(c)=1$ なので $\det D=\det A$ であり、主張が従う。
$n$ に関する帰納法による。$A$ は可逆なので第 1 列に $0$ でない成分がある。$a_{11}=0$ なら、第 1 列の成分が $0$ でない行を第 1 行に加えて $a_{11}\ne0$ とする。第 1 行の適当な倍数を他の行に加えて、第 1 列の他の成分を $0$ にする。右下の $(n-1)$ 次の小行列は行列式が $\det A/a_{11}\ne0$ なので可逆であり、第 2 行以下どうしの基本変形は第 1 列の $0$ を変えないので、帰納法の仮定により小行列を対角化できる。こうして得た上三角行列の対角成分は $0$ でないので、下の行の倍数を上の行に加えて対角成分より上を消せば対角行列になる。
$U\subset\mathbb{R}^n$ を開集合、$f\colon U\to\mathbb{R}^n$ を連続写像とし、$f$ が点 $x\in U$ で微分可能で、微分 $A:=Df(x)$ が可逆であるとする。このとき $x$ は $f^{-1}(f(x))$ の孤立点であり、
$$
\deg_xf=\operatorname{sgn}\det Df(x)
$$
である。
$y:=f(x)$、$\kappa:=1/\| A^{-1}\|$ とおくと、$\lvert Ah\rvert\ge\kappa\lvert h\rvert$ である。微分可能性により、$r>0$ を、開球 $W:=\{\lvert z-x\rvert< r\}$ が $U$ に含まれ、$z\in W$ で $\lvert f(z)-y-A(z-x)\rvert\le\tfrac{\kappa}{2}\lvert z-x\rvert$ となるようにとれる。$z\in W$、$t\in[0,1]$ について
$$
F(z,t):=y+A(z-x)+(1-t)\bigl(f(z)-y-A(z-x)\bigr)
$$
とおくと、
$$
\lvert F(z,t)-y\rvert\ge\kappa\lvert z-x\rvert-\tfrac{\kappa}{2}\lvert z-x\rvert=\tfrac{\kappa}{2}\lvert z-x\rvert
$$
なので、$z\ne x$ なら $F(z,t)\ne y$ であり、$F(x,t)=y$ である。$t=0$ から $f(z)\ne y$($z\in W\setminus\{x\}$)が分かり、$x$ は孤立点である。prop-ld-basic の 2 により、$\deg_xf$ は $g(z):=y+A(z-x)$ の $x$ での局所写像度に等しい。$g=\tau_y\circ A\circ\tau_{-x}$ は $S^n$ の同相写像 $\hat g=\hat\tau_y\circ\hat A\circ\hat\tau_{-x}$ に延びるので、prop-ld-basic の 1・3、lem-ld-extension の 1、thm-ld-linear と写像度の積の性質により
$$
\deg_xg=\deg\hat g=\deg\hat\tau_y\cdot\deg\hat A\cdot\deg\hat\tau_{-x}=\operatorname{sgn}\det A
$$
である。
微分可能性は点 $x$ だけで使い、$f$ が $x$ の近くで $C^1$ 級であることは仮定していない。thm-ld-sum と合わせると、写像度を符号付きの点の個数として数えられる。
$f\colon S^n\to S^n$ を連続写像、$y\in S^n\setminus\{N\}$ とし、$f^{-1}(y)=\{x_1,\dots,x_m\}$ が $S^n\setminus\{N\}$ に含まれる有限集合であるとする。座標表示 $f_\sigma:=\sigma\circ f\circ\sigma^{-1}$($\sigma(x_i)$ の近くで定義される)が各 $\sigma(x_i)$ で微分可能で、微分が可逆であるとする。このとき
$$
\deg f=\sum_{i=1}^m\operatorname{sgn}\det Df_\sigma\bigl(\sigma(x_i)\bigr)
$$
である。
$S^n\setminus\{N\}$ と $\mathbb{R}^n$ の同一視のもとで $\deg_{x_i}f=\deg_{\sigma(x_i)}f_\sigma$ である。thm-ld-sum と thm-ld-differentiable による。
$n=2$ とし、$\mathbb{R}^2=\mathbb{C}$ と立体射影により $S^2=\mathbb{C}\cup\{\infty\}$($\infty:=N$)とみなす。$0$ でない複素数 $c$ による掛け算 $z\mapsto cz$ は実線形写像として行列式 $\lvert c\rvert^2>0$ をもつので、thm-ld-linear と prop-ld-basic の 3 により、その延長の写像度は $1$ である。
$k\ge1$ とし、$P_k(z):=z^k$ を $P_k(\infty):=\infty$ で $S^2$ に延ばす。$1$ の逆像は $1$ の $k$ 乗根 $\zeta_1,\dots,\zeta_k$ で、$P_k$ の微分は $\zeta_j$ で複素数 $k\zeta_j^{k-1}\ne0$ の掛け算なので、cor-ld-count により $\deg P_k=k$ である。一方 $0$ の逆像は $\{0\}$ だけなので、thm-ld-sum により $\deg_0P_k=\deg P_k=k$ である(原点では微分が $0$ である)。
$p(z)=\sum_{l=0}^da_lz^l$($a_d\ne0$、$d\ge1$)を複素多項式とし、$p(\infty):=\infty$ とおいて連続写像 $\hat p\colon S^2\to S^2$ を定める。
$\lvert z\rvert\ge1$ のとき $\lvert p(z)\rvert\ge\lvert a_d\rvert\lvert z\rvert^d-\bigl(\sum_{l< d}\lvert a_l\rvert\bigr)\lvert z\rvert^{d-1}$ なので、$\lvert z\rvert\to\infty$ で $\lvert p(z)\rvert\to\infty$ となり、$\hat p$ は連続である。
1.$H(z,t):=a_dz^d+t\sum_{l< d}a_lz^l$、$H(\infty,t):=\infty$ とおく。上と同じ評価が $t\in[0,1]$ について一様に成り立つので、$H$ は $S^2\times[0,1]$ の上で連続であり、$\hat p$ と $z\mapsto a_dz^d$ の延長を結ぶ。後者は $a_d$ 倍と $P_d$ の延長の合成なので、写像度は $1\cdot d=d$ である(ex-ld-power と 写像度 の記事の命題(写像度の基本性質)の (ii)(iii))。
2.$p(z)=(z-a)^mg(z)$、$g$ は多項式で $g(a)\ne0$ と書ける。$r>0$ を、$\lvert z-a\rvert< r$ で $\lvert g(z)-g(a)\rvert< \lvert g(a)\rvert$ となるようにとり、$W:=\{\lvert z-a\rvert< r\}$ の上で
$$
F(z,t):=(z-a)^m\bigl((1-t)g(z)+tg(a)\bigr)
$$
とおく。$\lvert(1-t)g(z)+tg(a)-g(a)\rvert=(1-t)\lvert g(z)-g(a)\rvert< \lvert g(a)\rvert$ なので括弧の中は $0$ でなく、$F(z,t)=0$ となるのは $z=a$ のときに限る。prop-ld-basic の 2 により、$\deg_a\hat p=\deg_ap$ は $q(z):=g(a)(z-a)^m$ の $a$ での局所写像度に等しい。$q$ は $\tau_{-a}$、$P_m$、$g(a)$ 倍の合成なので、prop-ld-basic の 4、ex-ld-power、lem-ld-extension の 1 と、節の冒頭の $c$ 倍の写像度により $\deg_aq=1\cdot m\cdot1=m$ である。
3.$\hat p(\infty)=\infty\ne0$ なので、$\hat p$ の $0$ の逆像は $p$ の根の集合で、$p$ は $0$ でない多項式なので根は高々 $d$ 個である。根がなければ thm-ld-sum により $\deg\hat p=0$ となり、1 の $\deg\hat p=d\ge1$ に反する。根があるとき、thm-ld-sum と 2 により重複度の総和は $\deg\hat p=d$ に等しい。
3 は 代数学の基本定理 の一つの証明である。多項式の局所写像度はつねに正で、次の実数の例のような打ち消し合いは起こらない。
$n=1$ の $\mathbb{R}$ の上で、$f(z)=z^3$ は $0$ で微分が $0$ だが、$\mathbb{R}$ の同相写像なので $\deg_0f=1$ である(延長の写像度は、$1$ の逆像 $\{1\}$ での微分 $3>0$ から $1$)。$f(z)=z^2$ も $\infty\mapsto\infty$ で $S^1$ に延び、$-1$ の逆像が空なので延長の写像度は $0$(thm-ld-sum の $m=0$)、$0$ の逆像は $\{0\}$ だけなので $\deg_0f=0$ である。$y=1/4$ の逆像 $\pm1/2$ では thm-ld-differentiable により局所写像度が $+1$ と $-1$ で、和はやはり $0$ である。$z^3$ と $z^2$ はどちらも $0$ で微分が $0$ だが局所写像度は $1$ と $0$ で、微分が退化した点の局所写像度は微分だけからは決まらない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $x$ が $f^{-1}(f(x))$ の孤立点(def-ld-main) | 定値写像 $f\colon S^n\to S^n$ | $\deg_xf$ が定まる |
| $Df(x)$ が可逆(thm-ld-differentiable) | $\mathbb{C}$ 上の $z\mapsto z^2$、$x=0$ | $\deg_xf=\operatorname{sgn}\det Df(x)$(左辺は $2$、$\det Df(0)=0$) |
| 定義域が $S^n$ 全体(thm-ld-sum) | $U=(-1,\infty)\subset\mathbb{R}$ 上の $f(z)=z^2$ | 逆像の局所写像度の和が $y$ によらない |
3 行目:$U$ は $\mathbb{R}$ の開集合で、$f$ は $S^1$ 全体の写像ではない。$y=1/4$ の逆像 $\{\pm1/2\}$ では和が $1+(-1)=0$、$y=4$ の逆像は $\{2\}$($-2\notin U$)だけで和は $1$、$y=-1$ の逆像は空で和は $0$ である。和が $y$ によらない整数になるのは、thm-ld-sum では和が $f$ の写像度に等しいからである。2 行目は ex-ld-power の $k=2$ である。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する