関数の連続性と中間値の定理(continuity and the intermediate value theorem)とは、関数 $f$ が点 $a$ で連続であることを $\lim_{x\to a}f(x)=f(a)$ で定め、閉区間 $[a,b]$ で連続な $f$ について $f(a)\ne f(b)$ のとき、$f(a)$ と $f(b)$ の間の任意の数 $k$ に対し $f(c)=k$、$a<c<b$ となる $c$ が存在するという定理を、高校の極限の知識で証明する記事である。証明は区間を半分にし続ける二分法で、両端の数列が単調で有界なので収束するという実数の連続性を 1 か所だけ認めて使う。連続でない関数、1 つの区間でない定義域、有理数だけの範囲では、結論が成り立たない例がある。方程式の解の存在、平方根の存在、不動点の存在に使う。
数学 III の極限の単元では、関数が 連続 であることを極限で定め、「閉区間で連続な関数は、両端の値の間の値を必ずとる」という 中間値の定理 を学ぶ。教科書では、この定理をグラフの見た目(つながった曲線は、横線を横切らずに上から下へは移れない)で納得し、証明は大学に回すことが多い。この記事では、連続の定義から出発して、中間値の定理を高校の極限の知識で証明する。証明の中で 1 か所だけ、実数の性質を「認めて使う」ところがあり、それがどこかをはっきりさせる。
まず、定理が何を言っているかを 2 つの例で見る。
方程式 $x^3+x-1=0$ を考える。左辺を $f(x)=x^3+x-1$ とおくと
$$
f(0)=0+0-1=-1<0,\qquad f(1)=1+1-1=1>0
$$
である。$y=f(x)$ のグラフは、$x=0$ で $x$ 軸より下、$x=1$ で $x$ 軸より上にある。グラフが途切れずにつながっていれば、途中で $x$ 軸を横切るはずなので、$0< c<1$ の範囲に $f(c)=0$ となる $c$ がある。3 次方程式の解の公式を使わなくても、解が $0$ と $1$ の間にあることが分かる。実際の解は $c=0.6823\ldots$ である(ex-ivh-bisection で小数第 3 位まで追い込む)。
実数 $x$ を超えない最大の整数を $[x]$ と書く(ガウス記号)。たとえば $[0.3]=0$、$[1]=1$、$[1.7]=1$、$[2]=2$ である。$f(x)=[x]$ を区間 $0\le x\le2$ で考えると、$f(0)=0$、$f(2)=2$ で、$\frac12$ は $0$ と $2$ の間の値である。しかし $f$ の値は $0,1,2$ のどれかなので、$f(c)=\frac12$ となる $c$ はない。グラフは $x=1$ で $0$ の高さから $1$ の高さへ跳んでいて(図 3)、$\frac12$ の高さを飛び越えている。
2 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校の言い方 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| グラフがつながっている | $\lim_{x\to a}f(x)=f(a)$ がすべての点で成り立つ | def-ivh-continuity |
| 多項式・分数関数は連続 | 連続関数の和・差・積・商・合成は連続 | thm-ivh-operations |
| 符号が変われば間に解がある | 中間値の定理 | thm-ivh-ivt |
| 区間を半分にして解を追い込む | 二分法。証明そのものになる | ex-ivh-bisection、prf-ivh-ivt |
| 数直線にすき間がない | 実数の連続性(単調で有界な数列は収束する) | rem-ivh-facts、ex-ivh-rationals |
$f$ を区間 $I$ で定義された関数とし、$a$ を $I$ の点とする。
$$
\lim_{x\to a}f(x)=f(a)
$$
が成り立つとき、$f$ は $x=a$ で 連続 であるという。$a$ が $I$ の端点のときは、$I$ の内側からの片側極限で考える(たとえば $I=[a,b]$ の左端 $a$ では $\lim_{x\to a+0}f(x)=f(a)$)。$I$ のすべての点で連続なとき、$f$ は $I$ で 連続 である、あるいは $I$ で連続な関数であるという。定義域が区間でない集合(2 つの区間を合わせたもの、有理数だけの集合など)のときも、$x$ をその集合の点だけ動かして極限を考え、同じように連続を定める。
定義の等式には、次の 3 つがまとめて入っている。1 つでも欠けると連続でない。
(R1) $f(a)$ が定まっている($a$ が定義域に入っている)。
(R1) 極限 $\lim_{x\to a}f(x)$ が有限の値として存在する。
(R1) その極限の値が $f(a)$ に等しい。
条件 (ii) の極限は、$x$ を $a$ と異なる値をとりながら $a$ に近づけたときの行き先で、$f(a)$ の値は見ない。条件 (iii) で初めて、行き先と $f(a)$ を比べる。
高校の極限の単元では、次の事実を認めて使う。この記事でも認める。1〜3 は極限の定義(極限とε-δ)から証明できる。4 は実数そのものの性質で、証明するには実数をどう定めるかまで戻る必要がある。
$f$、$g$ が区間 $I$ の点 $a$ で連続なら、$f+g$、$f-g$、$fg$ も $a$ で連続である。$g(a)\ne0$ なら $\dfrac fg$ も $a$ で連続である。また、$g$ が $a$ で連続で、$f$ が $g(a)$ で連続なら、合成関数 $f(g(x))$ も $a$ で連続である。
要点:和・差・積・商は極限の四則(rem-ivh-facts の 1)、合成は数列で言い換えた連続性(rem-ivh-facts の 3)を 2 回使う。
段 1(和・差・積・商)。$f$、$g$ が $a$ で連続なので $\lim_{x\to a}f(x)=f(a)$、$\lim_{x\to a}g(x)=g(a)$ である。rem-ivh-facts の 1 により
$$\lim_{x\to a}\bigl(f(x)+g(x)\bigr)=f(a)+g(a)$$
で、右辺は $f+g$ の $x=a$ での値である。よって $f+g$ は $a$ で連続である。差・積も同じで、商は $g(a)\ne0$ のとき同じく $\lim_{x\to a}\dfrac{f(x)}{g(x)}=\dfrac{f(a)}{g(a)}$ となる。
段 2(合成)。$h(x)=f(g(x))$ とおく。$a$ に収束する $I$ の点の数列 $(x_n)$ を任意にとる。$g$ は $a$ で連続なので、rem-ivh-facts の 3 により $g(x_n)\to g(a)$ である。次に、数列 $\bigl(g(x_n)\bigr)$ は $g(a)$ に収束し、$f$ は $g(a)$ で連続なので、もう一度 rem-ivh-facts の 3 により $f(g(x_n))\to f(g(a))$ である。つまり $h(x_n)\to h(a)$ である。$a$ に収束するどの数列でもこうなるので、rem-ivh-facts の 3 の後半(逆向き)により、$h$ は $a$ で連続である。$\square$
多項式は数直線全体で連続なので、ex-ivh-start-cubic の $x^3+x-1$ は、閉区間 $[0,1]$ で連続である。次の節の定理を使うための仮定が、これで確かめられた。
定理を証明する前に、ex-ivh-start-cubic の解を実際に追い込んでみる。やり方は単純で、「両端で符号が違う区間」を半分に切り、中点での符号を見て、符号が違うほうの半分を残す。これを 二分法 という。
$f(x)=x^3+x-1$ とする。区間 $[0,1]$ から始める。$f(0)<0< f(1)$ である。
1 回目。中点は $0.5$ で、$f(0.5)=0.125+0.5-1=-0.375<0$ である。左端と中点はどちらも負なので、符号が変わるのは右半分である。$[0.5,1]$ を残す。
2 回目。中点は $0.75$ で、$f(0.75)=0.421875+0.75-1=0.171875>0$ である。中点と右端はどちらも正なので、左半分 $[0.5,0.75]$ を残す。
以下同じ操作をくり返すと、次の表のようになる。残す区間では、いつも左端で $f<0$、右端で $f>0$ である。
| 回 | 区間 | 中点 $m$ | $f(m)$ | 残す区間 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | $[0,\,1]$ | $0.5$ | $-0.375$ | $[0.5,\,1]$ |
| 2 | $[0.5,\,1]$ | $0.75$ | $0.1719$ | $[0.5,\,0.75]$ |
| 3 | $[0.5,\,0.75]$ | $0.625$ | $-0.1309$ | $[0.625,\,0.75]$ |
| 4 | $[0.625,\,0.75]$ | $0.6875$ | $0.0125$ | $[0.625,\,0.6875]$ |
| 5 | $[0.625,\,0.6875]$ | $0.65625$ | $-0.0611$ | $[0.65625,\,0.6875]$ |
| 6 | $[0.65625,\,0.6875]$ | $0.671875$ | $-0.0248$ | $[0.671875,\,0.6875]$ |
| 7 | $[0.671875,\,0.6875]$ | $0.6796875$ | $-0.0063$ | $[0.6796875,\,0.6875]$ |
| 8 | $[0.6796875,\,0.6875]$ | $0.68359375$ | $0.0030$ | $[0.6796875,\,0.68359375]$ |
| 9 | $[0.6796875,\,0.68359375]$ | $0.681640625$ | $-0.0016$ | $[0.681640625,\,0.68359375]$ |
| 10 | $[0.681640625,\,0.68359375]$ | $0.6826171875$ | $0.0007$ | $[0.681640625,\,0.6826171875]$ |
| 11 | $[0.681640625,\,0.6826171875]$ | $0.68212890625$ | $-0.0005$ | $[0.68212890625,\,0.6826171875]$ |
区間の長さは 1 回ごとに半分になるので、11 回後の長さは $\dfrac1{2^{11}}=\dfrac1{2048}$ である。11 回後の区間は $0.68212\ldots\le x\le0.68261\ldots$ で、この区間のどの数も小数第 3 位までは $0.682$ である。解はこの区間に入っているので、小数第 3 位まで $0.682$ と決まる(実際の解は $0.682327\ldots$)。
$y=x^3+x-1$ のグラフ(青)と、二分法の 0 回目から 5 回目までに残した区間(橙の横棒、下へ行くほど後の回)。区間が解 $0.6823\ldots$(赤の点線)を含んだまま半分ずつ縮むことを見る図。
図 1 のように、残した区間は入れ子になって縮んでいく。左端の列 $0,\ 0.5,\ 0.5,\ 0.625,\ \ldots$ は増えるか変わらないかで、右端の列 $1,\ 1,\ 0.75,\ 0.75,\ \ldots$ は減るか変わらないかである。両端が同じ 1 つの数に近づき、その数で $f$ の値が $0$ になる、というのが証明の筋書きである。「両端が同じ数に近づく」ことを保証するのが、次の補題である。
閉区間の列 $[a_1,b_1],[a_2,b_2],[a_3,b_3],\ldots$ が、すべての $n$ で次を満たすとする。
$$
a_n\le a_{n+1}\le b_{n+1}\le b_n,\qquad b_n-a_n=\frac{b_1-a_1}{2^{n-1}}
$$
このとき、数列 $(a_n)$ と $(b_n)$ は同じ値 $c$ に収束し、すべての $n$ で $a_n\le c\le b_n$ である。
方針:左端の列と右端の列が、それぞれ実数の連続性で収束することを示し、2 つの極限が等しいことを区間の長さから示す。
段 1(左端の列の収束)。仮定から $a_1\le a_2\le a_3\le\cdots$ で、$(a_n)$ は単調に増加する。また、すべての $n$ で $a_n\le b_n\le b_1$ なので、$(a_n)$ は $b_1$ を超えない。つまり上に有界である。rem-ivh-facts の 4 により、$(a_n)$ は収束する。極限を $c$ とおく。
段 2(右端の列の収束)。同じく $(b_n)$ は単調に減少し、すべての $n$ で $b_n\ge a_n\ge a_1$ なので下に有界である。rem-ivh-facts の 4 により、$(b_n)$ も収束する。極限を $c'$ とおく。
段 3(2 つの極限が等しい)。$b_n=a_n+\dfrac{b_1-a_1}{2^{n-1}}$ で、$n\to\infty$ のとき $\dfrac{b_1-a_1}{2^{n-1}}\to0$ である。rem-ivh-facts の 1 により、両辺の極限をとって $c'=c+0=c$ である。
段 4($a_n\le c\le b_n$)。番号 $n$ を 1 つ決める。$m\ge n$ なら $a_m\le b_m\le b_n$ なので、数列 $(a_m)_{m\ge n}$ はすべて $b_n$ 以下である。rem-ivh-facts の 2 により、極限も $c\le b_n$ である。同じく $m\ge n$ で $b_m\ge a_m\ge a_n$ なので、極限をとって $c\ge a_n$ である。$\square$
段 1 と段 2 で使った rem-ivh-facts の 4 が、この記事の証明で実数の連続性を使う唯一の場所である(ex-ivh-build の 3 で認めた関数の連続性は別に認めている)。有理数だけの世界では、この補題が崩れる(ex-ivh-rationals)。
$a< b$ とし、$f$ を閉区間 $[a,b]$ で連続な関数とする。$f(a)\ne f(b)$ とし、$k$ を $f(a)$ と $f(b)$ の間の数($f(a)< k< f(b)$ または $f(b)< k< f(a)$)とする。このとき
$$
f(c)=k,\qquad a< c< b
$$
となる $c$ が少なくとも 1 つある。
特に $k=0$ とすると、「$f(a)$ と $f(b)$ の符号が違えば($f(a)f(b)<0$ なら)、$f(c)=0$ となる $c$ が $a$ と $b$ の間にある」という形になる。ex-ivh-start-cubic で使ったのはこの形である。
方針:ex-ivh-bisection と同じ操作で、「左端では $f< k$、右端では $f\ge k$」を保つ区間の列を作る。lem-ivh-nested で両端が 1 つの数 $c$ に集まり、$f$ の連続性から $f(c)=k$ となる。
段 1($f(a)< k< f(b)$ の場合に帰着する)。$f(b)< k< f(a)$ の場合は、$g(x)=-f(x)$ と $-k$ を考えると $g(a)<-k< g(b)$ で、$g$ も $[a,b]$ で連続である(thm-ivh-operations)。$g(c)=-k$ となる $c$ があれば $f(c)=k$ なので、以下では $f(a)< k< f(b)$ とする。
段 2(区間の列を作る)。$a_1=a$、$b_1=b$ とおく。$[a_n,b_n]$ まで決まったら、中点を $m_n=\dfrac{a_n+b_n}2$ として
段 4 では、$f(a_n)< k$(等号なし)から、極限では $f(c)\le k$(等号あり)しか言えないことに注意する。rem-ivh-facts の 2 を、数列 $p_n=f(a_n)$ と、すべての項が $k$ の定数列 $q_n=k$ に使っている。等号が外れない例として、$p_n=-\frac1n$ はすべて $0$ より小さいが、極限は $0$ で、$0$ より小さくはない。この記事の証明では、$f(c)\le k$ と $f(c)\ge k$ の 2 つの「等号つき」の不等式を組み合わせて、等式 $f(c)=k$ を得ている。
証明は、$c$ を「作る」手順にもなっている。$n$ 回の操作で、$c$ は長さ $\dfrac{b-a}{2^{n}}$ の区間 $[a_{n+1},b_{n+1}]$ に閉じ込められる。ex-ivh-bisection はこの手順を $11$ 回実行したものである。ただし、定理が保証するのは「少なくとも 1 つある」ことだけで、$c$ がいくつあるかは教えない。$f(x)=x^3-x$ を $[-2,2]$ で考えると、$f(-2)=-6<0<6=f(2)$ で、$f(c)=0$ となる $c$ は $-1,0,1$ の 3 つある。二分法はそのうちの 1 つを見つける。
中間値の定理は、値を具体的に求めずに「ある」ことを示す道具である。使うときは、いつも次の 2 つを確かめる:(a) 関数が閉区間で連続であること、(b) 両端の値の間に、とってほしい値 $k$ があること。
$f(x)=x^5-3x+1$ とする。多項式なので、すべての実数で連続である(ex-ivh-build)。整数の点での値は
$$
f(-2)=-32+6+1=-25,\quad f(-1)=-1+3+1=3,\quad f(0)=1,\quad f(1)=1-3+1=-1,\quad f(2)=32-6+1=27
$$
である。符号は $-2$ と $-1$ の間、$0$ と $1$ の間、$1$ と $2$ の間で変わる。thm-ivh-ivt を $k=0$ として 3 つの区間 $[-2,-1]$、$[0,1]$、$[1,2]$ にそれぞれ使うと、$f(x)=0$ の解が各区間の内側に 1 つ以上ある。3 つの区間の内側は重ならないので、実数解は少なくとも 3 つある。数値計算では $-1.3888\ldots$、$0.3347\ldots$、$1.2146\ldots$ である。
$x^2=2$ となる正の数 $x$ があることを示す。$f(x)=x^2$ は $[1,2]$ で連続で、$f(1)=1<2<4=f(2)$ である。thm-ivh-ivt により、$c^2=2$、$1< c<2$ となる $c$ がある。これが $\sqrt2$ である。同じ議論で、正の数 $p$ と正の整数 $n$ について $x^n=p$ となる正の数 $x$($p$ の $n$ 乗根)の存在が示せる。$[0,\ p+1]$ で $f(x)=x^n$ を考えると、$f(0)=0< p$ で、$p+1\ge1$ から $(p+1)^n\ge p+1>p$ だからである。累乗根の存在を指数関数の定義にどう使うかは、指数関数と対数関数はどう定義するか で扱う。
$g(x)=\cos x-x$ とおく。$\cos x$ と $x$ は連続なので、差 $g$ も連続である(thm-ivh-operations)。
$$
g(0)=\cos0-0=1>0,\qquad g(1)=\cos1-1=-0.4596\ldots<0
$$
である($\cos x=1$ となるのは $x$ が $2\pi$ の整数倍のときだけなので、$\cos1<1$ である)。thm-ivh-ivt により $g(c)=0$、すなわち $\cos c=c$ となる $c$ が $0< c<1$ にある。数値では $c=0.7390\ldots$ である(図 2)。$\cos c=c$ となる $c$ は、関数 $\cos$ で動かない点(不動点)である。漸化式 $a_{n+1}=\cos a_n$ がこの $c$ に近づくことは、縮小写像と漸化式 で扱う。
$y=\cos x$(青)と $y=x$(緑の破線)の $0\le x\le1$ のグラフ。$x=0$ では $\cos x$ が上、$x=1$ では $x$ が上にあり、交点 $c=0.7390\ldots$(赤)で入れ替わることを見る図。
ex-ivh-cos は、「$[0,1]$ から $[0,1]$ への連続関数は不動点をもつ」という一般の事実の特別な場合である。
$f$ が $[0,1]$ で連続で、値がいつも $0$ 以上 $1$ 以下なら、$g(x)=f(x)-x$ は $g(0)=f(0)\ge0$、$g(1)=f(1)-1\le0$ を満たす。どちらかが $0$ ならその端点が不動点で、そうでなければ thm-ivh-ivt により間に $g(c)=0$ となる $c$ がある。
$f$ が区間 $I$ で連続で、$I$ のどの点でも $f(x)\ne0$ なら、$f$ は $I$ 全体で正であるか、$I$ 全体で負である。
$I$ の 2 点 $p< q$ で $f(p)$ と $f(q)$ の符号が違ったと仮定する。$I$ は区間なので $[p,q]$ は $I$ に含まれ、$f$ は $[p,q]$ で連続である。$f(p)$ と $f(q)$ の間に $0$ があるので、thm-ivh-ivt により $f(c)=0$ となる $c$ が $p$ と $q$ の間にある。これは「どの点でも $f(x)\ne0$」に反する。よって、$I$ のどの 2 点でも符号は同じである。$\square$
2 次不等式で「解と解の間では符号が一定」と言えるのは、この系の特別な場合である(2次不等式)。方程式の解の位置を符号で調べる方法は 解の配置、解の個数をグラフと直線の交点で数える方法は 定数分離と方程式の実数解の個数 でも使う。
方程式 $2^x=3x$ が、$0< x<1$ と $3< x<4$ の範囲にそれぞれ少なくとも 1 つの解をもつことを示せ。
$h(x)=2^x-3x$ とおく。$2^x$ と $3x$ は連続なので、$h$ も連続である(thm-ivh-operations)。$h(0)=1-0=1>0$、$h(1)=2-3=-1<0$ なので、thm-ivh-ivt により $0< c<1$ で $h(c)=0$ となる $c$ がある。また $h(3)=8-9=-1<0$、$h(4)=16-12=4>0$ なので、$3< c'<4$ で $h(c')=0$ となる $c'$ がある。$h(c)=0$ は $2^c=3c$ ということなので、どちらも方程式の解である。数値では $c=0.4578\ldots$、$c'=3.3131\ldots$ である。
thm-ivh-ivt の仮定は、(a) $f$ が連続、(b) 定義域が 1 つの閉区間、(c) 数が実数、の 3 つである。どれか 1 つを外すと、結論が成り立たない例がある。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $f$ が連続 | $[0,2]$ 上の $f(x)=[x]$(ガウス記号)、$k=\frac12$ | $f(c)=k$ となる $c$ がある |
| 定義域が 1 つの区間 | $-1\le x<0$ と $0< x\le1$ で定めた $f(x)=\frac1x$、$k=0$ | $f(c)=k$ となる $c$ がある |
| 実数で考える | 有理数 $x$($1\le x\le2$)だけで考えた $f(x)=x^2-2$、$k=0$ | $f(c)=k$ となる $c$ がある |
ガウス記号の関数の $0\le x\le2$ でのグラフ。$x=1$ で高さ $0$ から $1$ へ跳び、高さ $\frac12$ の破線と交わらないことを見る図。
$y=\frac1x$ の、定義域を $-1\le x<0$ と $0< x\le1$ に限ったグラフ。$x=0$ の両側で符号が変わるのに、高さ $0$ の破線と交わらないことを見る図。
$f(x)=[x]$ を $[0,2]$ で考える。ex-ivh-start-floor で見たとおり、$f(0)=0<\frac12<2=f(2)$ なのに、$f(c)=\frac12$ となる $c$ はない(図 3)。
破れている仮定は (a) である。ex-ivh-continuity-check の 2 で見たとおり、$f$ は $x=1$ で連続でない($x=2$ でも、左からの極限 $1$ と $f(2)=2$ が違うので連続でない)。証明のどこが崩れるかを見ると、prf-ivh-ivt の区間の列は $x=1$ に集まり、$f(a_n)=0<\frac12\le1=f(b_n)$ だが、$f(a_n)\to0$ と $f(b_n)\to1$ で行き先が違う。段 4 の「両方とも $f(c)$ に近づく」が使えない。
$f(x)=\dfrac1x$ を、$-1\le x<0$ と $0< x\le1$ を合わせた範囲で考える。$f$ は定義域のどの点でも連続である(分母が $0$ でない点での商)。$f(-1)=-1<0<1=f(1)$ だが、$\dfrac1x=0$ となる $x$ はない(図 4)。
破れている仮定は (b) である。定義域は $x=0$ のところで切れていて、1 つの区間 $[-1,1]$ ではない。二分法を実行しようとすると、最初の中点 $0$ が定義域に入らないので、1 回目から $f(m_1)$ が決まらない。符号が変わる点 $0$ に定義域の点がないので、prf-ivh-ivt の段 3・段 4 のように「区間が集まる点 $c$ で $f$ が連続」とは言えない。
図 3 と図 4 のグラフは、どちらも横線をまたいでいるのに交わらない。図 3 は値が跳ぶから、図 4 は定義域が切れているからである。
有理数 $x$ で $1\le x\le2$ のものだけを考え、$f(x)=x^2-2$ とする。$f(1)=-1<0<2=f(2)$ である。$f$ は多項式なので、有理数の点だけで考えても def-ivh-continuity の意味で連続である。しかし、$x^2=2$ となる有理数 $x$ はない($\sqrt2$ が無理数であることは 実数とは何か:無理数の証明 で証明している)。したがって、有理数の範囲には $f(c)=0$ となる $c$ がない。
破れている仮定は (c) である。二分法を実行すると、区間の端はいつも有理数で
$$
[1,2]\to\Bigl[1,\frac32\Bigr]\to\Bigl[\frac54,\frac32\Bigr]\to\Bigl[\frac{11}8,\frac32\Bigr]\to\Bigl[\frac{11}8,\frac{23}{16}\Bigr]\to\Bigl[\frac{45}{32},\frac{23}{16}\Bigr]\to\cdots
$$
となる(中点の 2 乗が $2$ より小さければ右半分、大きければ左半分を残す)。左端の列は増加して $2$ 以下なので上に有界だが、その極限 $\sqrt2=1.41421\ldots$ は有理数ではない。有理数だけの世界では、lem-ivh-nested の「両端の列が収束する」が成り立たない。崩れているのは rem-ivh-facts の 4(実数の連続性)である。
3 つ目の反例は、中間値の定理が「グラフが見た目でつながっている」ことだけでは証明できないことを示している。有理数の点だけを打ったグラフも、細かく見なければつながって見える。定理を支えているのは、数直線にすき間がないという実数の性質である。
この記事で認めた「単調で有界な数列は収束する」(rem-ivh-facts の 4)は、大学では実数の 完備性(連続性)の言い方の 1 つとして扱う。ほかに「上に有界な空でない集合は上限(最小の上界)をもつ」(上限公理)、区間縮小法(lem-ivh-nested を一般の縮む閉区間の列にしたもの)、Cauchy 列の収束などの言い方がある。四則と大小の性質(順序体の公理)のもとで、単調有界数列の収束は上限公理と同値である。区間縮小法と Cauchy 列の収束は、「どんな数よりも大きい自然数がある」(Archimedes の性質)と組にすると、上限公理と同値になる(極限とε-δ の節「単調有界数列と実数の連続性」、Leb26 §1.2)。
大学の教科書では、上限公理から出発して中間値の定理を示すことが多い。たとえば Leb26 は、まず $f(a)<0< f(b)$ の場合を二分法で示し(Lemma 3.3.7)、それから一般の $k$ の場合を $f(x)-k$ を考えて導いている(Theorem 3.3.8、Bolzano の中間値の定理)。この記事の証明と同じ筋である。
中間値の定理は、「区間 $I$ で連続な関数 $f$ の値の集合 $f(I)=\{f(x)\mid x\in I\}$ は、また区間である」と言い換えられる。集合 $J$ が区間であるとは、$J$ の 2 点 $p< q$ の間の数がすべて $J$ に入ることである。中間値の定理は、$f(I)$ の 2 つの値の間の数がまた値になっていることを言っているので、$f(I)$ は区間である。
大学の位相空間論では、「2 つの空でない開集合に分けられない」空間を 連結 という(連結空間)。実数の部分集合では、連結な集合はちょうど区間である。そして、連結な空間の連続写像による像は連結である。この 2 つを合わせると、「区間の連続像は区間」、すなわち中間値の定理が出る。ex-ivh-reciprocal の定義域は $x=0$ で 2 つに分かれていて連結でなく、ex-ivh-rationals の有理数の集合も($\sqrt2$ より小さい部分と大きい部分に分けられるので)連結でない。どちらの反例も、定義域の連結性が崩れている例として読める。位相空間での中間値の定理と、その逆(途中の値をすべてとっても連続とは限らない例)は、大学向けの記事 中間値の定理 で扱う。
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