Euler標数(Euler characteristic)とは、空間を点・線分・円板などの胞体に分けたときの胞体の個数の交代和 $\chi=c_0-c_1+c_2-\cdots$ である。曲面なら頂点・辺・面の数で $v-e+f$ となり、凸多面体の表面(球面)では $2$、トーラスでは $0$、射影平面では $1$ である。この値は分け方によらず、ホモロジー群の階数の交代和に等しいので、ホモトピー不変量である。直積で積になり、$n$ 重被覆で $n$ 倍になる。Euler 標数が等しくても同相とは限らない(トーラスと Klein の壺)。
凸多面体の頂点の数を $V$、辺の数を $E$、面の数を $F$ とすると、$V-E+F=2$ である(Eulerの多面体定理(高校数学))。5 つの正多面体(正多面体)で確かめると次の表になる。
| 正多面体 | $V$ | $E$ | $F$ | $V-E+F$ |
|---|---|---|---|---|
| 正四面体 | 4 | 6 | 4 | 2 |
| 立方体 | 8 | 12 | 6 | 2 |
| 正八面体 | 6 | 12 | 8 | 2 |
| 正十二面体 | 20 | 30 | 12 | 2 |
| 正二十面体 | 12 | 30 | 20 | 2 |
一方、真ん中に四角い穴のあいた額縁の形の多面体では $V-E+F=0$ になる(Eulerの多面体定理(高校数学) の例「反例:額縁(穴のあいた多面体)」)。多面体の表面は、凸多面体なら球面と同じ形、額縁なら浮き輪の表面(トーラス)と同じ形をしている。$V-E+F$ は、表面をどう多角形に分けたかによらず、表面の「形」だけで決まる数ではないか。この数が Euler 標数である。
この記事では次の問いに答える。
多角形を貼り合わせて曲面を作るように、点・線分・円板・…を貼り合わせて空間を作る。$n$ 次元の閉球体を $D^n:=\{x\in\mathbb{R}^n\mid\lvert x\rvert\le1\}$、その境界を $S^{n-1}$ と書く($D^0$ は 1 点)。
空間 $X$ を次の手順で作る(Hat02 Chapter 0「Cell Complexes」)。
(1) 有限個の点からなる離散空間 $X^0$ から始める。その点を 0 胞体という。
(2) $X^{n-1}$ ができたら、有限個の $n$ 次元閉球体 $D^n_\alpha$ を、連続写像 $\phi_\alpha\colon S^{n-1}\to X^{n-1}$ で貼り付けて $X^n$ を作る:$X^n$ は $X^{n-1}$ と $D^n_\alpha$ たちの非交和を、$x\in\partial D^n_\alpha$ と $\phi_\alpha(x)$ を同一視して得られる商空間(商空間(位相))である。$D^n_\alpha$ の内部の像を $n$ 胞体 $e^n_\alpha$ という。
(3) ある $N$ で止めて $X:=X^N$ とする。
このようにして作った空間 $X$ を(有限)胞体複体、または有限 CW複体という。$n$ 胞体の個数を $c_n(X)$ と書く。$X$ は、互いに交わらない有限個の胞体の和集合である。
有限胞体複体 $X$ の Euler 標数 を
$$
\chi(X):=\sum_{n\ge0}(-1)^nc_n(X)=c_0(X)-c_1(X)+c_2(X)-\cdots
$$
で定める。2 次元の場合、$0$ 胞体・$1$ 胞体・$2$ 胞体を頂点・辺・面と呼び、個数を $v,e,f$ と書くと $\chi=v-e+f$ である(Hit18 Definition 7.5.22 は曲面の「胞体分割」でこれを定義している)。
4 つの曲面の胞体分割。球面は 1 点と 1 枚の面(円板の周全体を 1 点につぶす)で 2。トーラスと Klein の壺は正方形の 4 隅が 1 つの頂点、辺 a と b、面 1 枚で 0。射影平面は円板の境界の対蹠点を貼り、頂点 1(赤の 2 点が同じ点)、辺 a、面 1 枚で 1
凸多面体の表面も、頂点・辺・面を胞体とする 2 次元の胞体複体である。面に対角線を引く、辺の途中に頂点を加える、という細分では $v-e+f$ が変わらないことは Eulerの多面体定理(高校数学) の命題「細分しても Euler 標数は変わらない」が初等的に示している。ただし、同じ空間の任意の 2 つの分け方がこの操作でつながるかどうかは、この命題からは分からない。分け方によらないことをこの記事では、次のホモロジーによる定義を経由して示す。
有限生成アーベル群 $A$ は、有限群 $T(A)$(捩れ部分群)と $\mathbb{Z}^r$ の直和 $A\cong T(A)\oplus\mathbb{Z}^r$ に分かれる(自由アーベル群 の系「有限生成アーベル群の捩れ部分の分離」)。この $r$ を $A$ の 階数 といい $\operatorname{rank}A$ と書く($r$ が $A$ だけで決まることは次の節の lem-ec-rank の (1))。
位相空間 $X$ の特異ホモロジー群 $H_n(X)=H_n(X;\mathbb{Z})$(特異ホモロジー)がすべて有限生成で、有限個の $n$ を除いて $0$ であるとき、
$$
\chi(X):=\sum_{n\ge0}(-1)^n\operatorname{rank}H_n(X)
$$
を $X$ の Euler 標数という。$\operatorname{rank}H_n(X)$ を $X$ の $n$ 次の Betti 数という。
同相な空間、さらにホモトピー同値な空間のホモロジー群は同型なので(Hat02 Corollary 2.11)、この定義の $\chi$ はホモトピー不変量である。胞体の個数による定義とこの定義が一致すること(cor-ec-well-defined)が、この記事の中心である。
$A,B,C$ を有限生成アーベル群とする。
(1) $\operatorname{rank}A$ は、$A$ の元で $\mathbb{Z}$ 上 1 次独立なもの($\sum_in_ia_i=0$ となる整数は $n_i=0$ だけ)の個数の最大値に等しい。とくに $\operatorname{rank}A$ は $A$ だけで決まる。
(2) $A$ の部分群は有限生成である。
(3) 短完全列 $0\to A\xrightarrow{f}B\xrightarrow{g}C\to0$ があれば、$\operatorname{rank}B=\operatorname{rank}A+\operatorname{rank}C$ である。
要点:有限生成アーベル群を $T\oplus\mathbb{Z}^r$ と書き、捩れ部分を有限群の位数倍で消して $\mathbb{Z}^r\subset\mathbb{Q}^r$ の 1 次独立性の問題に直す。
(1) $A=T\oplus\mathbb{Z}^r$、$t:=\lvert T\rvert$ としてよい。$\mathbb{Z}^r$ の標準基底は 1 次独立なので最大値は $r$ 以上である。$s>r$ 個の元 $x_1,\dots,x_s$ をとると、$tx_i$ は $0\oplus\mathbb{Z}^r$ に入る($T$ の元は $t$ 倍で $0$)。$\mathbb{Q}^r$ の $s$ 個のベクトル $tx_i$ は $\mathbb{Q}$ 上 1 次従属なので、分母を払って、すべては $0$ でない整数 $n_i$ で $\sum_in_itx_i=0$ となるものがある。係数 $n_it$ はすべては $0$ でないので、$x_1,\dots,x_s$ は 1 次独立でない。よって最大値は $r$ である。
(2) $A=T\oplus\mathbb{Z}^r$ の部分群 $H$ について、第 2 成分への射影の像 $\pi(H)\subset\mathbb{Z}^r$ は有限生成(自由アーベル群 の命題「有限階数の自由アーベル群の部分群」)で、核 $H\cap T$ は有限である。$\pi(H)$ の生成元の $H$ での逆像と $H\cap T$ の元を合わせると $H$ を生成する。
(3) $r:=\operatorname{rank}A$、$s:=\operatorname{rank}C$ とおく。$\ge$:$A$ の 1 次独立な $a_1,\dots,a_r$ と $C$ の 1 次独立な $c_1,\dots,c_s$ をとり、$g(b_j)=c_j$ となる $b_j$ を選ぶ。$\sum_im_if(a_i)+\sum_jn_jb_j=0$ なら、$g$ を施して $\sum_jn_jc_j=0$、よって $n_j=0$、すると $f$ の単射性から $\sum_im_ia_i=0$、よって $m_i=0$。$B$ に $r+s$ 個の 1 次独立な元がある。
$\le$:$B$ に 1 次独立な $x_1,\dots,x_u$ があり $u>r+s$ とする。$C=T'\oplus\mathbb{Z}^s$、$t':=\lvert T'\rvert$ とすると、$t'g(x_k)$ は $\mathbb{Z}^s\subset\mathbb{Q}^s$ に入る。$u$ 個のベクトル $t'g(x_k)$ の $\mathbb{Q}$ 上の 1 次関係のなす $\mathbb{Q}^u$ の部分空間は $u-s$ 次元以上なので、分母を払って、$\mathbb{Q}$ 上 1 次独立な整数ベクトル $n^{(1)},\dots,n^{(u-s)}$ で $\sum_kn^{(j)}_kt'g(x_k)=0$ となるものがとれる。$z_j:=\sum_kn^{(j)}_kt'x_k$ は $g(z_j)=0$ なので $f(A)$ に入る。$\sum_jc_jz_j=0$ なら $\sum_k\bigl(\sum_jc_jn^{(j)}_k\bigr)t'x_k=0$ で、$x_k$ の独立性から $\sum_jc_jn^{(j)}=0$、$n^{(j)}$ の独立性から $c_j=0$ である。よって $f(A)\cong A$ に $u-s>r$ 個の 1 次独立な元があり、(1) に反する。$\square$
体 $F$ の上の有限次元ベクトル空間では、(3) は次元の等式 $\dim B=\dim A+\dim C$(核と像の次元の関係)そのものである。
有限生成アーベル群の鎖複体
$$
0\to C_N\xrightarrow{d_N}C_{N-1}\to\cdots\to C_1\xrightarrow{d_1}C_0\to0\qquad(d_{n}\circ d_{n+1}=0)
$$
のホモロジーを $H_n:=\operatorname{Ker}d_n/\operatorname{Im}d_{n+1}$ とする(ホモロジー)。このとき
$$
\sum_{n=0}^N(-1)^n\operatorname{rank}C_n=\sum_{n=0}^N(-1)^n\operatorname{rank}H_n
$$
である。
$Z_n:=\operatorname{Ker}d_n$、$B_n:=\operatorname{Im}d_{n+1}$ とおく($d_0=0$、$d_{N+1}=0$ とみなすので $Z_0=C_0$、$B_N=0$、また $B_{-1}:=0$)。$d_n\circ d_{n+1}=0$ より $B_n\subset Z_n$ で、これらは $C_n$ の部分群なので有限生成である(lem-ec-rank の (2))。$d_n$ は $C_n$ から $B_{n-1}$ への全射で核が $Z_n$ なので、また $H_n=Z_n/B_n$ なので、短完全列
$$
0\to Z_n\to C_n\xrightarrow{d_n}B_{n-1}\to0,\qquad0\to B_n\to Z_n\to H_n\to0
$$
がある。lem-ec-rank の (3) により
$$
\operatorname{rank}C_n=\operatorname{rank}Z_n+\operatorname{rank}B_{n-1}=\operatorname{rank}H_n+\operatorname{rank}B_n+\operatorname{rank}B_{n-1}
$$
である。$(-1)^n$ を掛けて $n=0,\dots,N$ で足すと、$B$ の項は
$$
\sum_{n=0}^N(-1)^n\bigl(\operatorname{rank}B_n+\operatorname{rank}B_{n-1}\bigr)=(-1)^N\operatorname{rank}B_N+\operatorname{rank}B_{-1}=0
$$
と打ち消し合う($n$ の項の $\operatorname{rank}B_n$ と $n+1$ の項の $\operatorname{rank}B_n$ が符号違いで消える)。よって主張の等式を得る。$\square$
この証明は Hat02 Theorem 2.44 の証明と同じで、純粋に代数的である。胞体の数え方とホモロジーを結ぶのは、次の系で使う胞体ホモロジーである。
$X$ を有限胞体複体とする。$X$ のホモロジー群はすべて有限生成で、$n>\dim X$ で $0$ であり、
$$
\sum_n(-1)^nc_n(X)=\sum_n(-1)^n\operatorname{rank}H_n(X)
$$
が成り立つ。したがって、胞体の個数による $\chi(X)$ は胞体への分け方によらず、同相な、さらにホモトピー同値な有限胞体複体どうしで等しい。
Hat02 Lemma 2.34 (a) により、$C^{\mathrm{CW}}_n:=H_n(X^n,X^{n-1})$ は $n$ 胞体と 1 対 1 に対応する基底をもつ自由アーベル群で、階数は $c_n(X)$ である。同書 §2.2 はこれらを並べた鎖複体(胞体鎖複体)を作り、Theorem 2.35 でそのホモロジーが $H_n(X)$ と同型であることを示している。この鎖複体に thm-ec-chain を当てはめれば等式が得られ、$H_n(X)$ は有限生成な $C^{\mathrm{CW}}_n$ の部分群の商なので有限生成で、$n>\dim X$ では $C^{\mathrm{CW}}_n=0$ なので $H_n(X)=0$ である。右辺は $X$ の位相だけで決まり、ホモトピー同値で変わらない(Hat02 Corollary 2.11)。$\square$
有限胞体複体 $X$ の部分集合 $A$ が、いくつかの胞体の和集合で、閉集合であるとき、$A$ を部分複体という。部分複体はそれ自身、その胞体による有限胞体複体である。
$X$ を有限胞体複体、$p\colon\tilde X\to X$ を $n$ 重の被覆写像(各点のファイバーがちょうど $n$ 点の被覆空間)とする。このとき $\tilde X$ は、$X$ の各 $k$ 胞体の上に $k$ 胞体がちょうど $n$ 個ある有限胞体複体の構造をもち、
$$
\chi(\tilde X)=n\,\chi(X)
$$
である。
要点:胞体は閉球体の像で、閉球体は単連結なので、胞体の特性写像は $\tilde X$ へちょうど $n$ 通りに持ち上がる。持ち上げた胞体が $\tilde X$ の胞体分割を与えるので、$c_k(\tilde X)=n\,c_k(X)$ であり、交代和をとれば $\chi(\tilde X)=n\chi(X)$ である。
$k$ 胞体 $e_\alpha$ の特性写像($D^k$ から $X^k$ への写像で、内部を $e_\alpha$ へ同相に移すもの)を $\Phi_\alpha\colon D^k\to X$ とする。$D^k$ は弧状連結・局所弧状連結で単連結なので、持ち上げの判定法(Hat02 Proposition 1.33)により、任意の $z\in D^k$ と $p(\tilde y)=\Phi_\alpha(z)$ をみたす $\tilde y$ に対し、$\tilde\Phi(z)=\tilde y$ となる持ち上げ $\tilde\Phi$($p\circ\tilde\Phi=\Phi_\alpha$)があり、被覆空間 の定理「持ち上げの一意性」によりただ 1 つである。とくに $\Phi_\alpha$ の持ち上げは、中心 $0$ の行き先 $p^{-1}(\Phi_\alpha(0))$ の $n$ 点に応じてちょうど $n$ 個ある。
段 1(開胞体の逆像).$\tilde y\in p^{-1}(e_\alpha)$ をとり、$p(\tilde y)=\Phi_\alpha(z)$($z$ は内部の点)とすると、$\tilde\Phi(z)=\tilde y$ となる持ち上げが 1 つあるので、$\tilde y$ は $n$ 個の持ち上げのどれかの内部の像に入る。2 つの持ち上げ $\tilde\Phi_1,\tilde\Phi_2$ の内部の像が点 $\tilde\Phi_1(z_1)=\tilde\Phi_2(z_2)$ を共有すれば、$p$ を施して $\Phi_\alpha(z_1)=\Phi_\alpha(z_2)$、内部での単射性から $z_1=z_2$ で、持ち上げの一意性から $\tilde\Phi_1=\tilde\Phi_2$ である。よって $p^{-1}(e_\alpha)$ は $n$ 個の互いに交わらない集合 $\tilde\Phi(\operatorname{int}D^k)$ に分かれる。
段 2(胞体であること).$\tilde\Phi$ は内部で単射かつ連続で、その像の上の逆写像は $(\Phi_\alpha|_{\operatorname{int}D^k})^{-1}\circ p$ なので連続である。よって $\tilde\Phi$ は内部から像への同相写像である。$\tilde\Phi(\partial D^k)$ は $p^{-1}(X^{k-1})$ に入り、段 1 により、それは $k$ より低い次元の持ち上げた胞体の和集合である。
段 3(胞体複体であること).$X$ は Hausdorff(有限胞体複体は Hausdorff、Hat02 Proposition A.3)なので、その被覆空間 $\tilde X$ も Hausdorff である(同じファイバーの異なる 2 点は、被覆の定義の開近傍の逆像の互いに交わらない成分で分けられ、異なるファイバーの 2 点は、下の 2 点を分ける開集合の逆像で分けられる)。以上と胞体が有限個であることから、Hat02 Proposition A.2 により、持ち上げた特性写像を特性写像とする胞体複体の構造が $\tilde X$ に入る(有限個の胞体の場合、同命題の条件 (iii) は自動的に成り立つ)。$\square$
左:長方形の対辺を同じ向きに貼ったトーラス。頂点 2(赤と紺)、辺 4(a、a′、b、c)、面 2。右:Klein の壺の正方形。頂点 1、辺 2、面 1。左半分はそのまま、右半分は上下を反転して右に重ねると、トーラスの各胞体が Klein の壺の胞体に 2 つずつ乗る
| 外す条件・期待すること | 例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| Euler 標数だけで曲面を区別する | トーラスと Klein の壺(どちらも $0$) | 「$\chi$ が等しい閉曲面は同相」 |
| ホモロジーが有限生成 | 無限個の円周のウェッジ和 | $\chi$ が定まること |
| 写像が被覆写像 | 複素数の球面の上の $z\mapsto z^2$ | $\chi(\text{上})=(\text{写像の次数})\times\chi(\text{下})$ |
トーラスと Klein の壺はどちらもコンパクトで連結な曲面で、Euler 標数はどちらも $0$ である(ex-ec-basic の (4))。しかし同相でない(トーラス の例「反例:Klein の壺」は、基本群が一方は可換で他方は可換でないことで区別している)。破る含意は「Euler 標数が等しいコンパクト連結曲面は同相である」である。
向き付け可能性を加えれば区別できる:コンパクト連結な曲面は、向き付け可能かどうかと Euler 標数の 2 つで決まる(Hit18 Theorem 7.5.12 の分類と Theorem 7.5.23 の値を合わせた p. 176 の要約。分類定理の証明は同書にはない)。向き付け可能なものは $\chi=2-2g$($g\ge0$)、向き付け不可能なものは $\chi=2-g$($g\ge1$)で、トーラスは $g=1$ の向き付け可能な曲面、Klein の壺は $g=2$ の向き付け不可能な曲面である(Hat02 §2.2、Theorem 2.44 の後の注意も $\chi(M_g)=2-2g$、$\chi(N_g)=2-g$ を述べる)。
可算無限個の円周を 1 点でつないだ空間 $X=\bigvee_{k\in\mathbb{N}}S^1$(0 胞体 1 つと無限個の 1 胞体からなる胞体複体)では、$H_1(X)$ は $\mathbb{Z}$ の無限個の直和である(Hat02 Corollary 2.25 と $H_1(S^1)\cong\mathbb{Z}$)。$H_1(X)$ は有限生成でないので、def-ec-homology の条件をみたさず、胞体の個数でも $1-\infty$ となって $\chi(X)$ は定まらない。満たす性質は「弧状連結で、無限個の胞体を許せば胞体複体である」こと、満たさない性質は「ホモロジーが有限生成」「胞体が有限個」である。
複素数平面に無限遠点 $\infty$ を加えた球面 $\hat{\mathbb{C}}$(位相的には $S^2$)の上の写像 $f(z):=z^2$($f(\infty):=\infty$)は連続な全射で、$0$ と $\infty$ 以外の点のファイバーはちょうど 2 点 $\{\pm w\}$ である。もし thm-ec-covering の式が成り立てば $\chi(S^2)=2\chi(S^2)$ となるが、$2\ne4$ である。$f$ は $0$ と $\infty$ でファイバーが 1 点になるので、被覆写像でない(被覆写像ではファイバーの点の個数が局所的に一定である。被覆空間 の命題「ファイバーの濃度の局所定数性」)。満たさない仮定は「被覆写像であること」である。分岐する点を数に入れて式を直したものが Riemann–Hurwitz の公式である(種数 の節「Riemann–Hurwitzの公式との関係」)。
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