線形代数学(linear algebra)とは、体 $K$ 上のベクトル空間(加法とスカラー倍が 8 つの公理を満たす集合)と、その間の線形写像、およびそれらを行列の計算によって調べる方法を研究する代数学の分野である。高校で学ぶ平面・空間のベクトルと連立1次方程式を抽象化した理論であり、行列の算術、連立1次方程式と掃き出し法、基底と表現行列、行列式、固有値問題と Jordan 標準形、内積空間と正規行列のユニタリ対角化、2次形式の標準形を主題とする。次元定理 $\dim V=\dim\ker T+\dim\operatorname{im}T$、表現行列と基底の取り替えの公式 $Q^{-1}AP$、相異なる固有値に属する固有ベクトルの線形独立性、行列式の乗法性、Jordan 標準形、スペクトル定理、Sylvester の慣性法則が基本定理であり、加群論・関数解析・表現論・体論へ一般化される。
$K$ を体(たとえば実数全体 $\mathbb{R}$ や複素数全体 $\mathbb{C}$)とする。集合 $V$ に、加法 $V\times V\to V$、$(x,y)\mapsto x+y$ と、スカラー倍 $K\times V\to V$、$(a,x)\mapsto ax$ が定められ、次の 8 条件を満たすとき、$V$ を $K$ 上のベクトル空間(vector space、ベクトル空間)または $K$ 上の線形空間(linear space)という。$V$ の元をベクトル、$K$ の元をスカラーという。
線形代数学(linear algebra)とは、ベクトル空間と、その間の構造を保つ写像(線形写像)、およびそれらを行列の計算によって調べる方法を研究する代数学の分野である。
条件 3 の $0$ は一意に定まり($0=0+0'=0'$)、条件 4 の $x'$ も各 $x$ について一意に定まる($x'=x'+0=x'+(x+x'')=(x'+x)+x''=x''$)ので、後者を $-x$ と書く。また $0x=0$、$(-1)x=-x$ が公理から従う($0x=(0+0)x=0x+0x$ の両辺に $-(0x)$ を加える、$x+(-1)x=(1+(-1))x=0x=0$)。$V$ の部分集合 $W$ が加法とスカラー倍について閉じており $0\in W$ であるとき、$W$ は同じ演算でベクトル空間になる。これを $V$ の部分空間(部分空間)という。
$V,W$ を $K$ 上のベクトル空間とする。写像 $T\colon V\to W$ が任意の $x,y\in V$、$a\in K$ について $T(x+y)=T(x)+T(y)$、$T(ax)=aT(x)$ を満たすとき、$T$ を線形写像(線形写像)という。$\ker T:=\{x\in V\mid T(x)=0\}$ を $T$ の核(核(線形写像))、$\operatorname{im}T:=T(V)=\{T(x)\mid x\in V\}$ を $T$ の像(像(線形写像))という。核は $V$ の部分空間、像は $W$ の部分空間である。$T$ が全単射でもあるとき $T$ を同型(線形同型)といい、同型が存在する 2 つのベクトル空間は同型であるといって $V\cong W$ と書く。$V$ から $V$ 自身への線形写像を $V$ の線形変換(線形変換)という。
ベクトル $v_1,\ldots,v_n\in V$ の線形結合とは $a_1v_1+\cdots+a_nv_n$($a_i\in K$)の形のベクトルであり、その全体を線形包 $\operatorname{span}\{v_1,\ldots,v_n\}$ という。$\operatorname{span}\{v_1,\ldots,v_n\}=V$ のとき $v_1,\ldots,v_n$ は $V$ を生成する(生成系(ベクトル空間))といい、$a_1v_1+\cdots+a_nv_n=0$ が $a_1=\cdots=a_n=0$ のときに限るとき $v_1,\ldots,v_n$ は線形独立(線形独立)であるという。線形独立な生成系を $V$ の基底(基底)という。有限個のベクトルで生成されるベクトル空間を有限次元といい、その基底の元の個数(thm-linear-algebra-rank-nullity の前に述べるように基底の取り方によらない)を $V$ の次元(次元(ベクトル空間))といって $\dim V$ と書く。
有限生成なベクトル空間には基底が存在する(生成系から極大な線形独立部分族をとればよい。線形独立 の記事の命題「極大線形独立集合と基底」)。
$V$ の基底 $v_1,\ldots,v_n$ を 1 つ固定すると、各 $x\in V$ は $x=a_1v_1+\cdots+a_nv_n$ とただ一通りに書ける(一意性は 線形独立 の記事の定理「線形独立性の同値条件」の 3 による)。この $(a_1,\ldots,a_n)\in K^n$ を $x$ の座標(座標(ベクトル空間))という。座標を対応させる写像 $V\to K^n$ は同型であり、有限次元のベクトル空間は次元が等しいとき、かつそのときに限り同型である(次元が等しければ双方の基底を $1$ 対 $1$ に対応させる線形写像が同型を与え、逆に同型写像は基底を基底に送るので次元を保つ)。
線形代数学は、高校で学ぶ平面・空間のベクトルと連立1次方程式を、体 $K$ 上の一般のベクトル空間と線形写像へ抽象化した理論である。定義は一見単純だが、線形構造に由来する問題は数学のあらゆる分野に現れ、それらの多くは「線形部分空間の決定」「線形写像の分類」「固有値問題」「正規行列のユニタリ対角化」「2次形式の標準化」といった線形代数の基本問題の組み合わせに帰着して解かれる。線形代数学は通常大学の学部 1 年で扱われるが、その時点ではのちに続く各分野での有用性を知る由もなく、集合論の言葉による無味乾燥な一般化に感じられることも少なくない。以下では「なぜ線形代数を学ぶのか」という観点から、主題を学ぶ順に概観する。
「線形」と「線型」は linear の訳語としてどちらも使われるが、本サイトでは「線形」に統一する(一般線型群など固有名詞化した語は例外)。「ベクトル空間」と「線形空間」は同じ概念の 2 つの呼び名であり、「$K$-ベクトル空間」「$K$ 上のベクトル空間」も同じ意味である。「線形写像」と「線形変換」は、後者を定義域と終域が同じ線形写像に限って使うのが本サイトの用法であるが、文献によっては区別しない。また高校数学の「向きと大きさをもつ量」としてのベクトルは、$\mathbb{R}^2$ や $\mathbb{R}^3$ の元として上の定義に含まれるが、一般のベクトルは矢印のイメージをもつ必要はなく、多項式や関数や行列もベクトルである(ex-linear-algebra-polynomial、ex-linear-algebra-matrix-space)。
以下では、線形代数学の各主題に共通する基本定理を掲げる。有限次元のベクトル空間に関する定理から始める。次元が基底の取り方によらないこと(2 つの基底の元の個数が等しいこと)、および「$n$ 個のベクトルで生成されるベクトル空間の線形独立な部分集合は高々 $n$ 個の元しかもたない」ことは、Steinitz の交換補題(線形独立 の記事の定理「Steinitzの交換補題の言明」、証明は Steinitzの交換補題)から従う。以下ではこれを既知とする。
$V$ を $n$ 次元のベクトル空間とする。
2 を示す。$S_0:=\{u_1,\ldots,u_k\}$ とおく。$\operatorname{span}(S_0)=V$ なら $S_0$ は基底であり $r=0$ でよい。そうでなければ $w_1\in V\setminus\operatorname{span}(S_0)$ をとる。線形独立 の記事の命題「一ベクトルの追加」により $S_1:=S_0\cup\{w_1\}$ は線形独立である。これを繰り返す。各段階の $S_i$ は線形独立で $k+i$ 個の元をもつから、Steinitz の交換補題により $k+i\le n$ であり、この手続きは高々 $n-k$ 回で止まる。止まったとき $\operatorname{span}(S_r)=V$ であるから $S_r$ は線形独立な生成系、すなわち基底である。
1 を示す。$W$ の中で同じ手続きを行う。$W=\{0\}$ なら空集合が基底であり $\dim W=0$ である。そうでなければ $0$ でない $u_1\in W$ をとり、$\operatorname{span}\{u_1,\ldots,u_i\}\ne W$ である限り $u_{i+1}\in W\setminus\operatorname{span}\{u_1,\ldots,u_i\}$ をとる。各段階のベクトルの族は $V$ の線形独立な族でもあるから、その個数は $n$ を超えず、手続きは止まる。止まったときの $u_1,\ldots,u_m$ は $W$ の基底であり、$\dim W=m\le n$ である。$\square$
lem-linear-algebra-extend-basis の 1 により $\ker T$ は有限次元である。その基底を $u_1,\ldots,u_k$ とし、同補題の 2 により $w_1,\ldots,w_r$ を付け加えて $u_1,\ldots,u_k,w_1,\ldots,w_r$ を $V$ の基底にする。$\dim V=k+r$ である。$T(w_1),\ldots,T(w_r)$ が $\operatorname{im}T$ の基底であることを示せば、$\dim\operatorname{im}T=r$ となり主張が従う。
生成すること。任意の $y\in\operatorname{im}T$ は $y=T(x)$ と書け、$x=\sum_i a_iu_i+\sum_j b_jw_j$ と表せる。$T(u_i)=0$ であるから $y=\sum_j b_jT(w_j)$ であり、$y\in\operatorname{span}\{T(w_1),\ldots,T(w_r)\}$ である。
線形独立であること。$\sum_j b_jT(w_j)=0$ とする。線形性から $T\bigl(\sum_j b_jw_j\bigr)=0$、すなわち $\sum_j b_jw_j\in\ker T$ であるから、$\sum_j b_jw_j=\sum_i c_iu_i$ と書ける。移項すると $\sum_i c_iu_i-\sum_j b_jw_j=0$ であり、$u_1,\ldots,u_k,w_1,\ldots,w_r$ の線形独立性からすべての $b_j$(と $c_i$)は $0$ である。
最後の主張について。$T$ が単射であることは $\ker T=\{0\}$ と同値であり($T(x)=T(y)\iff T(x-y)=0$)、上の等式により $\dim\operatorname{im}T=\dim V=\dim W$ と同値である。一方、部分空間 $\operatorname{im}T\subset W$ について $\dim\operatorname{im}T=\dim W$ は $\operatorname{im}T=W$ と同値である。実際、$\operatorname{im}T$ の基底は $W$ の線形独立な族であり、lem-linear-algebra-extend-basis の 2 により $W$ の基底に延長できるが、元の個数が既に $\dim W$ に等しいので付け加えるものはなく、$\operatorname{im}T=W$ である。逆は明らかである。$\square$
$V,W$ を有限次元のベクトル空間、$v_1,\ldots,v_n$ を $V$ の基底、$w_1,\ldots,w_m$ を $W$ の基底とする。線形写像 $T\colon V\to W$ に対し、
$$
T(v_j)=\sum_{i=1}^{m}a_{ij}w_i\qquad(j=1,\ldots,n)
$$
によって定まる $m\times n$ 型の行列 $A=(a_{ij})$ を、これらの基底に関する $T$ の表現行列(表現行列)という。このとき次が成り立つ。
1 を示す。まず線形写像は基底上の値で定まる。実際 $x=\sum_j c_jv_j$ なら線形性から $T(x)=\sum_j c_jT(v_j)$ であり、$T(v_j)$ は $A$ の第 $j$ 列の成分を係数とする $w_1,\ldots,w_m$ の線形結合であるから、$T$ は $A$ から復元できる。よって $T\mapsto A$ は単射である。全射であることを示す。任意の $A=(a_{ij})\in M_{m,n}(K)$ に対し、写像 $T\colon V\to W$ を
$$
T\Bigl(\sum_{j}c_jv_j\Bigr):=\sum_{j}c_j\sum_{i}a_{ij}w_i
$$
で定める。座標 $(c_j)$ は $x$ からただ一通りに定まるので $T$ は矛盾なく定義され、$x=\sum c_jv_j$、$y=\sum d_jv_j$ について $x+y=\sum(c_j+d_j)v_j$、$ax=\sum(ac_j)v_j$ であるから $T(x+y)=T(x)+T(y)$、$T(ax)=aT(x)$ が成り立つ。$T(v_j)=\sum_i a_{ij}w_i$ であるから $T$ の表現行列は $A$ である。
2 を示す。$S(w_i)=\sum_k b_{ki}u_k$ とすると
$$
(S\circ T)(v_j)=S\Bigl(\sum_i a_{ij}w_i\Bigr)=\sum_i a_{ij}\sum_k b_{ki}u_k=\sum_k\Bigl(\sum_i b_{ki}a_{ij}\Bigr)u_k
$$
であり、$u_k$ の係数 $\sum_i b_{ki}a_{ij}$ は $BA$ の $(k,j)$ 成分である。
3 を示す。$P$ は、基底 $v'$ と基底 $v$ に関する恒等写像 $\mathrm{id}_V$ の表現行列である($\mathrm{id}_V(v'_j)=v'_j=\sum_i p_{ij}v_i$)。同様に $Q$ は基底 $w'$ と $w$ に関する $\mathrm{id}_W$ の表現行列である。基底 $v$ と $v'$ に関する $\mathrm{id}_V$ の表現行列を $P'$ とすると、2 により $\mathrm{id}_V=\mathrm{id}_V\circ\mathrm{id}_V$ の($v'$ から $v'$ への、および $v$ から $v$ への)表現行列は $P'P$ および $PP'$ であり、恒等写像の同じ基底に関する表現行列は単位行列であるから $P'P=PP'=I_n$ となる。よって $P$ は正則で $P'=P^{-1}$ である。$Q$ についても同様である。最後に $T=\mathrm{id}_W\circ T\circ\mathrm{id}_V$ を、基底 $v'$ から $v$($\mathrm{id}_V$)、$v$ から $w$($T$)、$w$ から $w'$($\mathrm{id}_W$)と分けて 2 を 2 回使うと、$v',w'$ に関する $T$ の表現行列は $Q^{-1}AP$ である。$\square$
$V=W$、$v=w$、$v'=w'$ のときは $P=Q$ であり、線形変換の表現行列は基底の取り替えで $P^{-1}AP$ に変わる。この形の変換で結ばれる 2 つの正方行列を相似といい、線形変換の分類は正方行列の相似による分類と同じである。
$T$ を $V$ の線形変換とする。$\lambda\in K$ と $0$ でない $v\in V$ が $T(v)=\lambda v$ を満たすとき、$\lambda$ を $T$ の固有値(固有値)、$v$ を $\lambda$ に属する固有ベクトル(固有ベクトル)という。相異なる固有値 $\lambda_1,\ldots,\lambda_r$ に属する固有ベクトル $v_1,\ldots,v_r$ は線形独立である。とくに $\dim V=n$ のとき $T$ の相異なる固有値は高々 $n$ 個であり、$n$ 個の相異なる固有値をもてば $T$ は固有ベクトルからなる基底をもつ(対角化可能である)。
$r$ に関する帰納法で示す。$r=1$ のときは $v_1\ne0$ から従う。$r\ge2$ とし、$r-1$ 個の場合を仮定する。$a_1v_1+\cdots+a_rv_r=0$ とする。両辺に $T$ を施すと $a_1\lambda_1v_1+\cdots+a_r\lambda_rv_r=0$ であり、元の式に $\lambda_r$ を掛けたものを引くと
$$
a_1(\lambda_1-\lambda_r)v_1+\cdots+a_{r-1}(\lambda_{r-1}-\lambda_r)v_{r-1}=0
$$
となる。帰納法の仮定により $a_i(\lambda_i-\lambda_r)=0$($i< r$)であり、$\lambda_i\ne\lambda_r$ であるから $a_i=0$($i< r$)である。すると元の式は $a_rv_r=0$ となり、$v_r\ne0$ から $a_r=0$ である。
後半について。$n$ 個を超える相異なる固有値があれば $n$ 個を超える線形独立なベクトルがあることになり、Steinitz の交換補題に反する。$n$ 個の相異なる固有値に属する固有ベクトル $v_1,\ldots,v_n$ は線形独立であり、lem-linear-algebra-extend-basis の 2 により基底に延長できるが、個数が既に $n$ なので付け加えるものはなく、$V$ の基底である。この基底に関する $T$ の表現行列は対角成分が $\lambda_1,\ldots,\lambda_n$ の対角行列である。$\square$
$n$ 次正方行列 $A,B\in M_n(K)$ について $\det(AB)=\det A\cdot\det B$ が成り立つ。また $A$ が正則であることと $\det A\ne0$ は同値であり、このとき $Ax=b$ の解は $x=A^{-1}b$ ただ 1 つで、その第 $j$ 成分は $A$ の第 $j$ 列を $b$ で置き換えた行列の行列式を $\det A$ で割ったものに等しい(Cramer の公式)。
行列式の定義(置換の符号による展開、または交代多重線形形式としての特徴づけ)、乗法性、余因子展開、Cramer の公式の証明は 行列式 および Cramerの公式 の記事、ならびに Lan02 XIII §4 に譲る。線形変換 $T$ の行列式は表現行列の行列式として定まり、thm-linear-algebra-representation の 3 と乗法性により基底の取り方によらない($\det(P^{-1}AP)=\det P^{-1}\det A\det P=\det A$)。
$K$ を代数閉体(たとえば $\mathbb{C}$)とし、$A\in M_n(K)$ とする。このとき正則行列 $P$ が存在して $P^{-1}AP$ はJordan細胞
$$
J_k(\lambda)=\begin{pmatrix}\lambda & 1 & & \\ & \lambda & \ddots & \\ & & \ddots & 1 \\ & & & \lambda\end{pmatrix}\in M_k(K)
$$
を対角に並べた区分対角行列(Jordan 標準形)になる。現れる細胞の組は並べ方を除いて $A$ から一意に定まる。とくに $A$ が対角化可能であることと、すべての細胞の大きさが $1$ であることは同値である。
証明は スペクトル定理 の記事および Axl15 Chapter 7、HJ13 Chapter 2 に譲る。証明の要点は、内積空間で固有ベクトルの直交補空間が正規変換で不変であることと、Gram–Schmidtの直交化による正規直交基底の構成である。正規でない行列(たとえば rem-linear-algebra-counterexamples の Jordan 細胞)はユニタリ対角化できない。
実対称行列 $A\in M_n(\mathbb{R})$ に対し、正則行列 $P$ が存在して $P^{\top}AP$ は対角成分が $1$ が $p$ 個、$-1$ が $q$ 個、$0$ が $n-p-q$ 個の対角行列になる。組 $(p,q)$ は $P$ の取り方によらず $A$ から定まり、$p$($q$)は $A$ の正(負)の固有値の個数(重複を込める)に等しい。
これは Sylvester の慣性法則(Sylvesterの慣性法則)である。証明は同記事および Lan02 XV §4、HJ13 Chapter 4 に譲る。$P^{\top}AP$ の形の変換は 2次形式 $x^{\top}Ax$ の変数の 1 次変換 $x=Py$ に対応し、thm-linear-algebra-spectral のユニタリ(直交)対角化を使えば計量を保ったまま、掃き出し法(平方完成)を使えば計量を保たずに、交差項を取り除くことができる。
$K^n$($K$ の元を $n$ 個並べた列ベクトルの全体)は成分ごとの和とスカラー倍で $n$ 次元のベクトル空間であり、標準基底 $e_1,\ldots,e_n$ をもつ。$m\times n$ 型の行列 $A$ は線形写像 $x\mapsto Ax$ を定め(行列 の記事の定理「行列と線形写像の対応」)、連立1次方程式 $Ax=b$ の解の全体は、解 $x_0$ が 1 つあれば $x_0+\ker A$ である。たとえば
$$
\begin{cases} x+2y+z=1 \\ 2x+4y+3z=3 \end{cases}
$$
は、第 2 式から第 1 式の 2 倍を引いて $z=1$、したがって $x+2y=0$ となり、解の全体は $(x,y,z)=(-2t,t,1)$($t\in K$)である。核 $\ker A=\{(-2t,t,0)\}$ は 1 次元、像は $K^2$ 全体で 2 次元、$\dim K^3=3=1+2$ は thm-linear-algebra-rank-nullity の等式である。
実数係数の $n$ 次以下の多項式全体 $\mathbb{R}[x]_{\le n}$ は多項式の和とスカラー倍について $\mathbb{R}$ 上のベクトル空間であり、$1,x,\ldots,x^n$ を基底にもつ(線形独立性は 線形独立 の記事の例「多項式の単項式」)ので $n+1$ 次元である。微分 $D\colon f\mapsto f'$ は $\mathbb{R}[x]_{\le n}$ の線形変換であり、$\ker D$ は定数多項式の全体(1 次元)、$\operatorname{im}D=\mathbb{R}[x]_{\le n-1}$($n$ 次元)である。基底 $1,x,\ldots,x^n$ に関する $D$ の表現行列は $(i,i+1)$ 成分が $i$($i=1,\ldots,n$)でそれ以外が $0$ の $(n+1)$ 次正方行列であり、固有値は $0$ のみ、$D$ は対角化可能でない($D^{n+1}=0$ だが $D\ne0$)。
$m\times n$ 型の行列の全体 $M_{m,n}(K)$ は行列の和とスカラー倍について $mn$ 次元のベクトル空間であり、$(i,j)$ 成分だけが $1$ で他が $0$ の行列 $E_{ij}$ が基底をなす。転置 $A\mapsto A^{\top}$ は $M_{m,n}(K)$ から $M_{n,m}(K)$ への同型である。$n$ 次対称行列の全体は $M_n(K)$ の部分空間で、$E_{ii}$($n$ 個)と $E_{ij}+E_{ji}$($i< j$、$n(n-1)/2$ 個)を基底にもつので次元は $n(n+1)/2$ である。
線形代数学の基礎は、公開記事を次の順序でたどると学べる。
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