二重根号(nested radical)とは、$\sqrt{5+2\sqrt6}$ のように根号の中に根号を含む式である。$a,b$ が正の有理数で $\sqrt b$ が無理数のとき、$\sqrt{a+\sqrt b}$ を有理数 $x,y\ge0$ で $\sqrt x+\sqrt y$ と外せるのは $a^2-b$ が有理数の 2 乗のときに限る。そのとき $x,y$ は $t^2-at+\frac b4=0$ の 2 解 $\frac{a\pm\sqrt{a^2-b}}2$ にただ 1 通りに決まり、$\sqrt{a-\sqrt b}$ も $\sqrt x-\sqrt y$($x\ge y$)と外せる。証明に $\sqrt b$ の無理数性を使う。$\sqrt{1+\sqrt2}$ や $\sin72^\circ$ の $\sqrt{10+2\sqrt5}$ はこの形に外せない。
前提知識: 分母の有理化と数の体, 根と係数の関係と対称式
$\sqrt{5+2\sqrt6}$ のように、根号の中にさらに根号を含む式を 二重根号 という。二重根号を、根号が 1 重の式の和や差に書き直すことを「二重根号を外す」という。
高校では次の計算で外す。$x>y>0$ のとき
$$
(\sqrt x+\sqrt y)^2=x+y+2\sqrt{xy},\qquad (\sqrt x-\sqrt y)^2=x+y-2\sqrt{xy}
$$
であり、$\sqrt x+\sqrt y$ と $\sqrt x-\sqrt y$ はどちらも正なので
$$
\sqrt{(x+y)+2\sqrt{xy}}=\sqrt x+\sqrt y,\qquad \sqrt{(x+y)-2\sqrt{xy}}=\sqrt x-\sqrt y
$$
となる。つまり、根号の中を「$p\pm2\sqrt q$」の形にして、和が $p$、積が $q$ になる 2 数 $x,y$ を探せばよい。
図 1 は、1 の計算を面積で見たものである。1 辺が $\sqrt3+\sqrt2$ の正方形は、面積 $3$ と $2$ の正方形と、面積 $\sqrt6$ の長方形 2 枚に分かれる。
1 辺が √3 + √2 の正方形を、面積 x = 3 の正方形、面積 y = 2 の正方形、面積 √(xy) = √6 の長方形 2 枚に分けた図。全体の面積は 5 + 2√6 である
ところが、どんな二重根号でも外せるわけではない。たとえば $\sqrt{1+\sqrt2}=\sqrt{1+2\sqrt{1/2}}$ では、和が $1$、積が $\dfrac12$ の 2 数は $t^2-t+\dfrac12=0$ の解だが、判別式が $1-2=-1<0$ なので実数の範囲に見つからない。この記事では次の問いに答える。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| 和が $p$、積が $q$ の 2 数を探す | 2 次方程式 $t^2-pt+q=0$ の 2 解 | lem-nr-sum-product |
| 2 数が見つかる | 判別式 $p^2-4q$ が有理数の 2 乗 | cor-nr-highschool |
| $\sqrt{a+\sqrt b}$ を外す | $a^2-b$ が有理数の 2 乗であることと同値 | thm-nr-main |
| 係数を比べる | $\sqrt b$ が無理数なので、$r+s\sqrt b$ の表し方はただ 1 通り | 分母の有理化と数の体 |
外し方の核心は、和と積から 2 数を求めることである。
実数 $s,m$ に対し、$x+y=s$ かつ $xy=m$ を満たす実数の組 $x,y$ は、2 次方程式
$$
t^2-st+m=0
$$
の 2 つの解(重解なら同じ数 2 つ)であり、それに限る。とくに $(x-y)^2=s^2-4m$ である。($s$ は和、$m$ は積を表す文字である。)
段 1($x,y$ は解)。$x+y=s$、$xy=m$ なら
$$
(t-x)(t-y)=t^2-(x+y)t+xy=t^2-st+m
$$
なので、$x$ と $y$ は $t^2-st+m=0$ の解である。
段 2(解なら条件を満たす)。逆に、$t^2-st+m=0$ の 2 解を $x,y$ とすると、解と係数の関係(根と係数の関係と対称式)により $x+y=s$、$xy=m$ である。
段 3(差の 2 乗)。$(x-y)^2=(x+y)^2-4xy=s^2-4m$ である。$\square$
lem-nr-sum-product の $(x-y)^2=s^2-4m$ は、2 次方程式の判別式そのものである(2次方程式の判別式の正体)。$s,m$ が有理数のとき、2 数 $\dfrac{s\pm\sqrt{s^2-4m}}2$ が有理数になるのは、判別式 $s^2-4m$ が有理数の 2 乗のときであり、そのときに限る。これが次の定理の条件になる。
二重根号を $\sqrt{a+\sqrt b}$ の形で考える。高校の形 $\sqrt{p+2\sqrt q}$ は、$a=p$、$b=4q$ の場合である($2\sqrt q=\sqrt{4q}$)。
$a,b$ を正の有理数とし、$\sqrt b$ は無理数とする。
方針:外せるとすると、2 乗して比べることで $x+y=a$、$xy=\dfrac b4$ が出る。比べるときに「$\sqrt b$ が無理数」を使う。あとは lem-nr-sum-product で、$x,y$ が 2 次方程式の解になり、判別式が $a^2-b$ になる。
段 1(条件が成り立てば外せる)。$a^2-b=c^2$($c\ge0$ は有理数)とする。$c=0$ なら $b=a^2$ で $\sqrt b=a$ が有理数になり、仮定に反するので $c>0$ である。また $b>0$ なので $c^2=a^2-b< a^2$ であり、$a>0$、$c>0$ だから $c< a$ である。そこで
$$
x=\frac{a+c}2,\qquad y=\frac{a-c}2
$$
とおくと、$x>y>0$ はどちらも有理数で、
$$
x+y=a,\qquad xy=\frac{a^2-c^2}4=\frac b4
$$
である。よって
$$
(\sqrt x+\sqrt y)^2=x+y+2\sqrt{xy}=a+2\sqrt{\frac b4}=a+\sqrt b
$$
となる。$\sqrt x+\sqrt y>0$ なので、$\sqrt{a+\sqrt b}=\sqrt x+\sqrt y$ である。同じく $(\sqrt x-\sqrt y)^2=a-\sqrt b$ で、$x>y$ より $\sqrt x-\sqrt y>0$ なので、$\sqrt{a-\sqrt b}=\sqrt x-\sqrt y$ である(このとき $a-\sqrt b=(\sqrt x-\sqrt y)^2>0$ なので $a^2>b$ も成り立っている)。
段 2(外せるなら $x+y=a$、$xy=\dfrac b4$)。有理数 $x,y\ge0$ で $\sqrt{a+\sqrt b}=\sqrt x+\sqrt y$ とする。両辺を 2 乗して
$$
a+\sqrt b=x+y+2\sqrt{xy}
$$
である。$\sqrt{xy}$ について解くと
$$
\sqrt{xy}=r+\frac12\sqrt b,\qquad r=\frac{a-x-y}2\ (\text{有理数})
$$
である。さらに両辺を 2 乗すると
$$
xy=r^2+\frac b4+r\sqrt b
$$
となる。$r\ne0$ と仮定すると $\sqrt b=\dfrac{xy-r^2-b/4}r$ となり、右辺は有理数なので、$\sqrt b$ が無理数であることに反する。よって $r=0$、つまり $x+y=a$ であり、このとき $xy=\dfrac b4$ である。
段 3(条件が必要なこと、外し方がただ 1 通りなこと)。段 2 と lem-nr-sum-product により、$x,y$ は $t^2-at+\dfrac b4=0$ の 2 解であり、
$$
(x-y)^2=a^2-4\cdot\frac b4=a^2-b
$$
である。$x-y$ は有理数なので、$a^2-b$ は有理数 $\lvert x-y\rvert$ の 2 乗である。これで 1 の「そのときに限る」が示された。さらに $\lvert x-y\rvert=c$、$x+y=a$ から、$x,y$ は順序を除いて $\dfrac{a+c}2$、$\dfrac{a-c}2$ に決まる。これで 2 が示された。
段 4(引き算の形)。有理数 $x\ge y\ge0$ で $\sqrt{a-\sqrt b}=\sqrt x-\sqrt y$ とする。両辺を 2 乗すると $a-\sqrt b=x+y-2\sqrt{xy}$ で、$\sqrt{xy}=\dfrac{x+y-a}2+\dfrac12\sqrt b$ である。段 2 と同じ議論($r=\dfrac{x+y-a}2$ とおく)で $x+y=a$、$xy=\dfrac b4$ が出て、段 3 と同じく $a^2-b=(x-y)^2$ は有理数の 2 乗である。$x\ge y$ なので $x-y=c$ で、$x=\dfrac{a+c}2$、$y=\dfrac{a-c}2$ である。逆向きは段 1 で示した。$\square$
段 2 で「$\sqrt b$ が無理数だから $r=0$」としたのは、$\mathbb{Q}(\sqrt b)$ の数の $r+s\sqrt b$ という表し方がただ 1 通りであること(分母の有理化と数の体 の主定理を $\sqrt2$ から $\sqrt b$ に替えたもの。Mil22 p. 18)を、その場で確かめたものである。問い 2 の答えは「外し方は順序を除いてただ 1 通り」である。
高校の形に書き直すと、次のようになる。
$p,q$ を正の有理数とし、$\sqrt q$ は無理数とする。$\sqrt{p+2\sqrt q}$ が有理数 $x,y\ge0$ によって $\sqrt x+\sqrt y$ と外せるのは、2 次方程式 $t^2-pt+q=0$ が有理数の解をもつとき、つまり判別式 $p^2-4q$ が有理数の 2 乗のときであり、そのときに限る。そのとき $x,y$ はこの 2 次方程式の 2 解である。$\sqrt{p-2\sqrt q}$($p^2>4q$)についても同じで、$x>y$ として $\sqrt x-\sqrt y$ になる。
thm-nr-main で $a=p$、$b=4q$ とおく。$\sqrt b=2\sqrt q$ は無理数である。$a^2-b=p^2-4q$ であり、$x,y$ は $t^2-at+\dfrac b4=t^2-pt+q=0$ の 2 解である。$\square$
ex-nr-start の 3 で「$2$ を掛けて作った」のは、$\sqrt{2+\sqrt3}$ を $\sqrt{\dfrac{4+2\sqrt3}2}$ として、高校の形 $\sqrt{4+2\sqrt3}$ を取り出す操作だった。thm-nr-main を直接使えば、この変形は要らない。$a=2$、$b=3$ で $a^2-b=1=1^2$、$c=1$ なので、$x=\dfrac32$、$y=\dfrac12$ で
$$
\sqrt{2+\sqrt3}=\sqrt{\frac32}+\sqrt{\frac12}=\frac{\sqrt6}2+\frac{\sqrt2}2
$$
となり、ex-nr-start の 3 と一致する。これが問い 3 の答えである。
thm-nr-main を使うと、外せるかどうかは $a^2-b$ を計算するだけで分かる。いくつかの例を並べる。
| 二重根号 | $a$ | $b$ | $a^2-b$ | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| $\sqrt{5+2\sqrt6}$ | $5$ | $24$ | $1=1^2$ | $\sqrt3+\sqrt2$ |
| $\sqrt{7-4\sqrt3}$ | $7$ | $48$ | $1=1^2$ | $2-\sqrt3$ |
| $\sqrt{2+\sqrt3}$ | $2$ | $3$ | $1=1^2$ | $\dfrac{\sqrt6+\sqrt2}2$ |
| $\sqrt{11+6\sqrt2}$ | $11$ | $72$ | $49=7^2$ | $3+\sqrt2$ |
| $\sqrt{6+2\sqrt5}$ | $6$ | $20$ | $16=4^2$ | $1+\sqrt5$ |
| $\sqrt{3+\sqrt5}$ | $3$ | $5$ | $4=2^2$ | $\dfrac{\sqrt{10}+\sqrt2}2$ |
| $\sqrt{1+\sqrt2}$ | $1$ | $2$ | $-1$ | 外せない |
| $\sqrt{3+\sqrt2}$ | $3$ | $2$ | $7$ | 外せない |
| $\sqrt{10+2\sqrt5}$ | $10$ | $20$ | $80$ | 外せない |
$a,b$ を整数に限って、外せる組 $(a,b)$ を描いたのが図 2 である。外せる組は、$c=1,2,3,\dots$ ごとの放物線 $b=a^2-c^2$ の上に並ぶ。$b$ を 1 つ決めると、外せる $a$ はとびとびにしか現れない。
a を 1 から 10、b を 1 から 100 の整数(b は平方数でないもの)として、√(a + √b) が外せる組を赤で示した図。赤い点は放物線 b = a² − c²(c = 1, 2, …, 9)の上にある
二重根号は、三角比の値を求めるときに自然に現れる。
図 3 のように、$\angle\mathrm C=90^\circ$、$\mathrm{CA}=1$、$\angle\mathrm{ABC}=30^\circ$ の直角三角形 $\mathrm{ABC}$ をとる。$\mathrm{AB}=2$、$\mathrm{CB}=\sqrt3$ である。辺 $\mathrm{CB}$ を $\mathrm B$ の先に延ばし、$\mathrm{BD}=\mathrm{BA}=2$ となる点 $\mathrm D$ をとる。
段 1(角)。三角形 $\mathrm{ABD}$ は $\mathrm{BA}=\mathrm{BD}$ の二等辺三角形なので $\angle\mathrm{BAD}=\angle\mathrm{BDA}$ である。$\angle\mathrm{ABC}=30^\circ$ は三角形 $\mathrm{ABD}$ の外角なので、$\angle\mathrm{BAD}+\angle\mathrm{BDA}=30^\circ$、よって $\angle\mathrm{ADC}=15^\circ$ である。
段 2(辺)。$\mathrm{CD}=\sqrt3+2$ で、三平方の定理により
$$
\mathrm{AD}^2=1^2+(2+\sqrt3)^2=1+7+4\sqrt3=8+4\sqrt3
$$
である。$\sqrt{8+4\sqrt3}=\sqrt{8+2\sqrt{12}}$ で、和が $8$、積が $12$ の 2 数は $6$ と $2$ なので(ex-nr-sum-product の 2)、$\mathrm{AD}=\sqrt6+\sqrt2$ である。
段 3(余弦)。直角三角形 $\mathrm{ACD}$ で
$$
\cos15^\circ=\frac{\mathrm{CD}}{\mathrm{AD}}=\frac{2+\sqrt3}{\sqrt6+\sqrt2}=\frac{(2+\sqrt3)(\sqrt6-\sqrt2)}{6-2}=\frac{2\sqrt6-2\sqrt2+3\sqrt2-\sqrt6}4=\frac{\sqrt6+\sqrt2}4
$$
である($\sqrt3\sqrt6=3\sqrt2$、$\sqrt3\sqrt2=\sqrt6$)。同じく $\sin15^\circ=\dfrac{\mathrm{CA}}{\mathrm{AD}}=\dfrac1{\sqrt6+\sqrt2}=\dfrac{\sqrt6-\sqrt2}4$ である。
角 C が直角で CA = 1、角 ABC = 30° の直角三角形 ABC と、CB を延ばして BD = BA = 2 とした点 D。角 ADC は 15° で、AD = √(8 + 4√3) = √6 + √2 である
半角の公式 $\cos^2\dfrac\theta2=\dfrac{1+\cos\theta}2$ を使うと、$\cos^215^\circ=\dfrac{1+\cos30^\circ}2=\dfrac{2+\sqrt3}4$ なので $\cos15^\circ=\dfrac{\sqrt{2+\sqrt3}}2$ となる。これは二重根号で、ex-nr-start の 3 で外すと $\dfrac{\sqrt6+\sqrt2}4$ になり、ex-nr-cos15 と一致する。半角の公式は 加法定理から2倍角・半角・3倍角の公式を導く で導く。
正五角形に現れる角でも同じことが起こる。$\cos36^\circ=\dfrac{1+\sqrt5}4$ である(正五角形と黄金比)。
thm-nr-main の仮定を外すと、何が崩れるかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $\sqrt b$ が無理数 | $\sqrt{3+\sqrt4}=\sqrt5$ | 外せるなら $a^2-b$ は有理数の 2 乗($9-4=5$ でも外せる) |
| $x,y$ が有理数 | $x=1+\sqrt2$、$y=0$ | 「外せる」ことが何も言わなくなる(どの二重根号も外せてしまう) |
| 引き算の形で $x\ge y$ | $\sqrt{5-2\sqrt6}$ を $\sqrt2-\sqrt3$ とする | 左辺は正なのに右辺は負 |
$a=3$、$b=4$ とすると、$\sqrt b=2$ は有理数である。$\sqrt{3+\sqrt4}=\sqrt5=\sqrt5+\sqrt0$ なので、$x=5$、$y=0$ で「外せる」。しかし $a^2-b=9-4=5$ は有理数の 2 乗でない。thm-nr-main の証明の段 2 で $r=0$ を導くときに $\sqrt b$ が無理数であることを使っており、その仮定がないと $x+y=a$ が出ない。実際ここでは $x+y=5\ne3=a$ である。
$x,y$ を有理数に限らなければ、どんな二重根号も $x=a+\sqrt b$、$y=0$ として $\sqrt{a+\sqrt b}=\sqrt x+\sqrt y$ と「外せる」。たとえば $\sqrt{1+\sqrt2}=\sqrt{1+\sqrt2}+\sqrt0$ である。これでは根号は 1 つも減っていない。「二重根号を外す」とは、根号の中を有理数にすることであり、thm-nr-main で $x,y$ を有理数とした理由はここにある。
$\sqrt{5-2\sqrt6}$ で、和が $5$、積が $6$ の 2 数は $3$ と $2$ である。$(\sqrt2-\sqrt3)^2=5-2\sqrt6$ も成り立つが、$\sqrt2-\sqrt3<0$ であり、根号 $\sqrt{\ }$ は $0$ 以上の値を表すので $\sqrt{5-2\sqrt6}=\sqrt2-\sqrt3$ は誤りである。正しくは大きい方から小さい方を引いて、$\sqrt{5-2\sqrt6}=\sqrt3-\sqrt2$ である。thm-nr-main の 3 で $x\ge y$ としたのはこのためである。
和と積から 2 数を求める考え方は、2 乗して $-1$ になる数 $i$ を使う複素数の平方根にもそのまま使える。複素数の定義と計算規則は次の記事 複素数の導入(高校数学) で扱うので、ここでは計算の形だけを見る。
$(x+yi)^2=3+4i$ となる実数 $x,y$ を探す。$(x+yi)^2=x^2-y^2+2xyi$ なので、実部と虚部を比べて $x^2-y^2=3$、$2xy=4$ である。ここで $x^2$ と $-y^2$ の 2 数を考えると、和は $x^2+(-y^2)=3$、積は $-x^2y^2=-(xy)^2=-4$ である。lem-nr-sum-product により、2 数は $t^2-3t-4=(t-4)(t+1)=0$ の解 $4$ と $-1$ である。$x^2\ge0$ なので $x^2=4$、$y^2=1$ で、$xy=2>0$ から $(x,y)=(2,1)$ または $(-2,-1)$ である。よって $3+4i$ の平方根は $\pm(2+i)$ である。確かめると $(2+i)^2=4+4i+i^2=3+4i$ である。
thm-nr-main は、体の言葉では次のように言える。外せるとき、$\sqrt{a+\sqrt b}=\sqrt x+\sqrt y$ は、有理数の平方根 $\sqrt x$ と $\sqrt y$ を $\mathbb{Q}$ に「横に並べて」付け加えた体に入る。外せないときは、まず $\sqrt b$ を付け加えた体 $\mathbb{Q}(\sqrt b)$(分母の有理化と数の体)を作り、その数 $a+\sqrt b$ の平方根を「上に積んで」もう 1 段付け加えることになる(体の拡大)。
$\sqrt{5+2\sqrt6}=\sqrt3+\sqrt2$ は、$\mathbb{Q}$ に $\sqrt2$ と $\sqrt3$ を付け加えた体 $\mathbb{Q}(\sqrt2)(\sqrt3)$ の数 $a+b\sqrt2+c\sqrt3+d\sqrt6$($a=d=0$、$b=c=1$)である。$\sqrt2$ も $\sqrt3$ も、有理数の平方根である。
一方 $\sqrt{1+\sqrt2}$ は $\mathbb{Q}(\sqrt2)$ に入らない(下の演習の 3)。$\sqrt{1+\sqrt2}$ を含む体を作るには、$\mathbb{Q}(\sqrt2)$ の数 $1+\sqrt2$ の平方根を、$\mathbb{Q}(\sqrt2)$ の上に付け加える。thm-nr-main は、$\sqrt{a+\sqrt b}$ を有理数の平方根 2 つを「並べた」形 $\sqrt x+\sqrt y$ に書けるのは、$a^2-b$ が有理数の 2 乗のときに限る、と言っている。
この記事で調べたのは、有理数 $x,y$ による $\sqrt x+\sqrt y$ という形に限った判定である。4 乗根などを含むもっと一般の形で根号の重なりを減らせるかどうかは、大学の Galois理論 を使って調べられる問題であり、この記事では扱わない。
1. $4\sqrt5=\sqrt{80}$ なので $a=9$、$b=80$、$a^2-b=81-80=1$、$c=1$ である。$x=5$、$y=4$ で、$\sqrt{9+4\sqrt5}=\sqrt5+2$ である。確かめると $(\sqrt5+2)^2=5+4\sqrt5+4=9+4\sqrt5$ である。
2. $a=4$、$b=15$、$a^2-b=1$、$c=1$ である。$x=\dfrac52$、$y=\dfrac32$ で、$\sqrt{4-\sqrt{15}}=\sqrt{\dfrac52}-\sqrt{\dfrac32}=\dfrac{\sqrt{10}-\sqrt6}2$ である。確かめると $\left(\dfrac{\sqrt{10}-\sqrt6}2\right)^2=\dfrac{16-2\sqrt{60}}4=4-\sqrt{15}$ である($\sqrt{60}=2\sqrt{15}$)。
3. $\sqrt{1+\sqrt2}=p+q\sqrt2$ と書けたとする。2 乗すると $1+\sqrt2=(p^2+2q^2)+2pq\sqrt2$ で、係数を比べて(分母の有理化と数の体 の表し方の一意性)$p^2+2q^2=1$、$2pq=1$ である。$q\ne0$ で $p=\dfrac1{2q}$ を代入し $4q^2$ を掛けると $8q^4-4q^2+1=0$ となる。$u=q^2$ とおくと $8u^2-4u+1=0$ で、判別式は $16-32=-16<0$ なので実数 $u$ はない。これは矛盾である。
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