発散(ベクトル場)(divergence of a vector field)とは、ベクトル場 $F$ の成分の偏導関数の和 $\operatorname{div}F=\sum_i\partial F_i/\partial x_i$(Jacobi 行列のトレース)で定まる関数である。点を囲む小さな立方体から流れ出る量を体積で割った値の極限に等しく、湧き出しの密度と、場に沿って動かしたときの体積の変化率を表す。線形な座標変換では変わらないが、曲線座標や Riemann 多様体の上では体積形式を使って定め、座標では $\frac1{\sqrt{\det g}}\sum_i\partial_i(\sqrt{\det g}\,X^i)$ と表される。発散定理や Laplace 作用素 $\Delta=\operatorname{div}\operatorname{grad}$ の基礎になる。
ベクトル場 $F$ を流体の速度の場とみなすと、各点のまわりの小さな箱から単位時間に流れ出る量を箱の体積で割ったものは、箱を小さくすると一定の値に近づく。この値が $F$ の発散(divergence)$\operatorname{div}F$ であり、座標では成分の偏導関数の和 $\sum_i\partial F_i/\partial x_i$ で計算できる。発散が正の点は湧き出し口、負の点は吸い込み口であり、発散が $0$ の場は体積を変えずに流れる。数列や級数が収束しないことも「発散」というが、この記事で扱うのはベクトル場の発散である。
この記事では、$\mathbb{R}^n$ の開集合の上のベクトル場の発散を定義し、流出量の密度としての特徴づけ、線形な座標変換での不変性、計算の規則、写像 $x\mapsto x+tF(x)$ による体積の変化率としての意味を証明する。座標の取り方を一般にすると成分の偏導関数の和は発散を表さなくなるので、Riemann 多様体の上では体積形式を使って発散を定め、その座標表示と共変微分のトレースによる表示を導く。
以下、$U\subset\mathbb{R}^n$ は開集合、$F=(F_1,\dots,F_n)\colon U\to\mathbb{R}^n$ はベクトル場であり、$DF(x)=\bigl(\partial F_i/\partial x_j(x)\bigr)_{i,j}$ を $F$ の Jacobi 行列とする。
$F$ の各成分が点 $x\in U$ で偏微分可能であるとき、
$$
\operatorname{div}F(x):=\sum_{i=1}^n\frac{\partial F_i}{\partial x_i}(x)=\operatorname{tr}DF(x)
$$
を $F$ の $x$ における発散という。$\nabla\cdot F$ とも書く。
$F$ が $C^1$ 級なら $\operatorname{div}F$ は $U$ 上の連続関数である。勾配 $\nabla f$、回転 $\operatorname{rot}F$ とあわせてベクトル解析の基本の微分作用素であり、$\mathbb{R}^3$ では 2 形式 $F_1\,dy\wedge dz+F_2\,dz\wedge dx+F_3\,dx\wedge dy$ の外微分の係数が $\operatorname{div}F$ になる(外微分 の記事の例「$\mathbb{R}^3$ のベクトル解析」。この 2 形式と発散の定義は Rud76 10.42、p. 281)。
速度の場 $F$ に乗って流れる流体を考える。点 $a$ を中心とする小さな箱の、$x_1$ 方向に向かい合う 2 つの面を通って流れ出る量は、おおよそ「面積 × $\bigl(F_1(\text{右の面})-F_1(\text{左の面})\bigr)$」であり、これは「面積 × 辺の長さ × $\partial F_1/\partial x_1$」、すなわち「体積 × $\partial F_1/\partial x_1$」に近い。すべての方向について足すと、箱から流れ出る量は「体積 × $\operatorname{div}F(a)$」に近い。下の thm-dv-flux はこれを正確に述べたものである。
点 $a$ を中心とし、辺の長さが $2r$ の閉じた立方体を $Q_r(a):=\{x\mid|x_i-a_i|\le r\ (i=1,\dots,n)\}$ と書く。$Q_r(a)\subset U$ のとき、その境界から流れ出る量(流束)を
$$
\Phi_F(Q_r(a)):=\sum_{i=1}^n\Bigl(\int_{\{x_i=a_i+r\}}F_i\,dS-\int_{\{x_i=a_i-r\}}F_i\,dS\Bigr)
$$
で定める。各面の上の積分は残りの $n-1$ 個の座標についての $(n-1)$ 重積分であり、面 $\{x_i=a_i\pm r\}$ の外向きの単位法線は $\pm e_i$ なので、これは外向きの法線方向の成分の面積分の和である。
$F$ を $U$ 上の $C^1$ 級のベクトル場、$a\in U$ とする。このとき
$$
\operatorname{div}F(a)=\lim_{r\to+0}\frac{\Phi_F(Q_r(a))}{(2r)^n}
$$
である。
$r_0>0$ を $Q_{r_0}(a)\subset U$ となるようにとり、$0< r\le r_0$ とする。Gaussの発散定理 の記事の命題「直方体に対する発散定理」により $\Phi_F(Q_r(a))=\int_{Q_r(a)}\operatorname{div}F\,dV$ であり、$Q_r(a)$ の体積は $(2r)^n$ なので
$$
\Bigl|\frac{\Phi_F(Q_r(a))}{(2r)^n}-\operatorname{div}F(a)\Bigr|=\Bigl|\frac1{(2r)^n}\int_{Q_r(a)}\bigl(\operatorname{div}F-\operatorname{div}F(a)\bigr)dV\Bigr|\le\max_{x\in Q_r(a)}|\operatorname{div}F(x)-\operatorname{div}F(a)|
$$
である。$\operatorname{div}F$ は連続なので、右辺は $r\to+0$ で $0$ に近づく。$\square$
座標の取り替えに対しては、次の節で示すとおり、線形な座標変換では発散は変わらない。
座標を $x=Ay+b$($A$ は正則な $n$ 次正方行列、$b\in\mathbb{R}^n$)と取り替えると、点 $x$ のベクトル $v$ は新しい座標では成分 $A^{-1}v$ で表される。したがって $F$ は新しい座標では
$$
G(y):=A^{-1}F(Ay+b)\qquad\bigl(y\in V:=A^{-1}(U-b)\bigr)
$$
というベクトル場で表される。
$F$ が $U$ 上で $C^1$ 級なら、$V$ 上で $\operatorname{div}G(y)=\operatorname{div}F(Ay+b)$ である。
連鎖律 により $DG(y)=A^{-1}\,DF(Ay+b)\,A$ である。行列 $P,Q$ について $\operatorname{tr}(PQ)=\operatorname{tr}(QP)$ なので、$\operatorname{tr}\bigl(A^{-1}BA\bigr)=\operatorname{tr}\bigl(BAA^{-1}\bigr)=\operatorname{tr}B$ である。$B=DF(Ay+b)$ として $\operatorname{div}G(y)=\operatorname{tr}DG(y)=\operatorname{tr}DF(Ay+b)$ を得る。$\square$
座標変換が線形でなければ、成分の偏導関数の和は発散を表すとは限らない。たとえば $F(x,y)=(x,y)$ は $\operatorname{div}F=2$ だが、極座標 $(r,\theta)$ での成分は、$F=r\,\partial_r$ なので $(r,0)$ であり、その偏導関数の和は $\partial r/\partial r+0=1$ である。正しい値は、体積の要素 $r\,dr\,d\theta$ を取り込んだ prop-dv-coordinates の式で得られる(ex-dv-polar)。
$F$ を $U$ 上の $C^1$ 級のベクトル場とする。
1 は積の微分 $\partial_i(fF_i)=(\partial_if)F_i+f\,\partial_iF_i$ を $i$ について足したものである。2 は定義そのものである。3:
$$
\operatorname{div}(\operatorname{rot}G)=\partial_1\partial_2G_3-\partial_1\partial_3G_2+\partial_2\partial_3G_1-\partial_2\partial_1G_3+\partial_3\partial_1G_2-\partial_3\partial_2G_1
$$
であり、偏微分 の記事の系「$C^2$ 級関数の偏微分の可換性」により、$\partial_1\partial_2G_3$ と $\partial_2\partial_1G_3$ などが打ち消し合って $0$ になる。$\square$
3 は Rud76 Theorem 10.43 (b)(p. 281)にあたり、$\mathbb{R}^3$ の微分形式では $d\circ d=0$ の一部である。2 の $\Delta$ は Laplace 作用素であり、$\Delta f=0$ となる関数が調和関数である。
流れに沿って領域を少し動かしたとき、体積がどれだけの割合で変わるかを発散が表す。そのもとになるのは、単位行列の近くでの行列式の 1 次近似である。
$B=(b_{ij})$ を $n$ 次正方行列とする。$t$ の多項式 $P_B(t)$ で
$$
\det(I+tB)=1+t\operatorname{tr}B+t^2P_B(t)
$$
となるものがあり、$|t|\le1$ のとき $|P_B(t)|\le n!\,(1+\beta)^n$ である($\beta:=\max_{i,j}|b_{ij}|$)。
行列式 の置換による展開 $\det(I+tB)=\sum_{\sigma}\operatorname{sgn}\sigma\prod_{i=1}^n\bigl(\delta_{i\sigma(i)}+tb_{i\sigma(i)}\bigr)$ を見る。恒等置換の項は $\prod_i(1+tb_{ii})=\sum_{S}t^{|S|}\prod_{i\in S}b_{ii}$($S$ は $\{1,\dots,n\}$ の部分集合を動く)であり、$|S|\le1$ の部分が $1+t\operatorname{tr}B$ である。残りを $t^2$ で割ったものは、$|t|\le1$ のとき絶対値が $\sum_S\beta^{|S|}=(1+\beta)^n$ 以下である。恒等置換でない $\sigma$ では $\sigma(i)\ne i$ となる $i$ が $2$ 個以上あり、その因子は $tb_{i\sigma(i)}$ なので、項は $t^2$ で割り切れ、$t^2$ で割ったものは、$|t|\le1$ のとき絶対値が $1+\beta$ 以下の因子 $n$ 個の積で押さえられる。恒等置換でない置換は $n!-1$ 個なので、合わせて評価を得る。$\square$
$F$ を $U$ 上の $C^1$ 級のベクトル場、$K\subset U$ を閉じた直方体とし、$\varphi_t(x):=x+tF(x)$ とおく。
$$
V(t):=\int_K\det D\varphi_t(x)\,dx
$$
とおくと、$V(0)$ は $K$ の体積であり、
$$
V'(0)=\int_K\operatorname{div}F(x)\,dx
$$
である。
$D\varphi_t(x)=I+t\,DF(x)$ である。$DF$ の成分は $K$ 上で連続なので、その絶対値の最大値 $\beta$ が $K$ 全体でとれる。lem-dv-det により、$0< |t|\le1$ で
$$
\Bigl|\frac{V(t)-V(0)}{t}-\int_K\operatorname{tr}DF(x)\,dx\Bigr|=\Bigl|t\int_KP_{DF(x)}(t)\,dx\Bigr|\le|t|\,n!\,(1+\beta)^n\operatorname{vol}(K)
$$
であり、$t\to0$ で $0$ に近づく。$\operatorname{tr}DF=\operatorname{div}F$ である。$\square$
$\varphi_t$ が $K$ の上で単射で $\det D\varphi_t>0$ のとき($|t|$ が小さければそうなる。$F$ は凸集合 $K$ の上で Lipschitz 連続なので、$\varphi_t(x)=\varphi_t(x')$ から $\|x-x'\|=|t|\,\|F(x)-F(x')\|$ が出て単射性が従い、正値性は lem-dv-det による)、重積分の変数変換により $V(t)$ は像 $\varphi_t(K)$ の体積に等しい。したがって $\operatorname{div}F$ の積分は、場 $F$ の向きに少し動かしたときの体積の変化率である。$F$ の流れ $\theta_t$(各点を時間 $t$ だけ流す写像。ベクトル場 の記事の定理「流れの基本定理」)についても同じことが成り立ち、流れが体積を保つことと $\operatorname{div}F=0$ が同値である(Lee13 Proposition 16.33、pp. 424–425。この記事では証明しない)。流体力学では、体積を保つ流れ(非圧縮性の流れ)の条件が $\operatorname{div}F=0$ である。
一般の座標や曲がった空間では、体積の測り方を決めないと発散は定まらない。$(M,g)$ を $n$ 次元の向き付けられた Riemann 多様体、$dV_g$ を Riemann 体積形式とする。向きと合う局所座標 $(x^1,\dots,x^n)$ では $dV_g=\sqrt{\det g}\,dx^1\wedge\dots\wedge dx^n$($\det g:=\det(g_{ij})$)である(LeeR18 Proposition 2.41、p. 30)。
滑らかなベクトル場 $X$ について、$n$ 形式 $d(\iota_XdV_g)$ を $dV_g$ の関数倍で書いたときの係数を $X$ の発散といい、$\operatorname{div}X$ と書く。すなわち
$$
d(\iota_XdV_g)=(\operatorname{div}X)\,dV_g
$$
である($\iota_X$ は内部積)。
これは LeeR18 の式 (2.19)(p. 32)の定義である。向きを逆にすると両辺の $dV_g$ がともに符号を変えるので、$\operatorname{div}X$ は向きによらず、向き付けられない多様体の上でも局所的に定まる。Lie微分 の Cartan の公式により $\mathcal{L}_XdV_g=d(\iota_XdV_g)$ なので、Gaussの発散定理 の記事の「Riemann 多様体上の発散定理」の節の定義と同じものである。
局所座標 $(x^i)$ で $X=\sum_iX^i\partial_i$ と書くと
$$
\operatorname{div}X=\frac1{\sqrt{\det g}}\sum_{i=1}^n\frac{\partial}{\partial x^i}\Bigl(\sqrt{\det g}\,X^i\Bigr)
$$
である。$\mathbb{R}^n$ の標準の計量と標準の座標では、def-dv-main の $\sum_i\partial X^i/\partial x^i$ に一致する。
向きを合わせて計算してよい。$\rho:=\sqrt{\det g}$ とおく。微分形式 の記事の補題「分解可能な形式の内部積」により
$$
\iota_XdV_g=\rho\sum_{i=1}^n(-1)^{i-1}X^i\,dx^1\wedge\dots\wedge\widehat{dx^i}\wedge\dots\wedge dx^n
$$
である($\widehat{\ }$ はその因子を除くこと)。外微分をとると、係数 $\rho X^i$ の微分のうち $dx^i$ の成分だけが残り、$dx^i$ を $i$ 番目の位置へ移すと符号 $(-1)^{i-1}$ が出て打ち消すので
$$
d(\iota_XdV_g)=\sum_i\partial_i(\rho X^i)\,dx^1\wedge\dots\wedge dx^n=\frac1\rho\sum_i\partial_i(\rho X^i)\,dV_g
$$
である。標準の計量では $\rho=1$ である。$\square$
この式は LeeR18 Proposition 2.46(pp. 32–33)にある。Riemann 接続 $\nabla$(Levi-Civita接続)を使うと、発散は共変微分のトレースでもある。
局所座標で $\operatorname{div}X=\sum_i\Bigl(\partial_iX^i+\sum_k\Gamma^i_{ik}X^k\Bigr)=\operatorname{tr}(\nabla X)$ である。ここで $\Gamma^k_{ij}$ は $\nabla$ の Christoffel 記号であり、$\nabla X$ は $Y\mapsto\nabla_YX$ という各点の線形写像を表す。
$\nabla_{\partial_k}X=\sum_i\bigl(\partial_kX^i+\sum_j\Gamma^i_{kj}X^j\bigr)\partial_i$ なので、$\operatorname{tr}(\nabla X)=\sum_i\bigl(\partial_iX^i+\sum_k\Gamma^i_{ik}X^k\bigr)$ である($\Gamma^i_{ik}=\Gamma^i_{ki}$)。Levi-Civita接続 の記事の命題「Christoffel 記号の公式」により
$$
\sum_i\Gamma^i_{ik}=\frac12\sum_{i,m}g^{im}\bigl(\partial_ig_{km}+\partial_kg_{im}-\partial_mg_{ik}\bigr)=\frac12\sum_{i,m}g^{im}\,\partial_kg_{im}
$$
である(第 1 項と第 3 項は $g^{im}$ の対称性で $i,m$ を入れ替えると打ち消し合う)。一方、lem-dv-det により $\det(G+hH)=\det G\,\det(I+hG^{-1}H)=\det G\,\bigl(1+h\operatorname{tr}(G^{-1}H)+O(h^2)\bigr)$ なので、$\det$ の $G$ における $H$ 方向の微分係数は $\det G\,\operatorname{tr}(G^{-1}H)$ である。$\det$ は成分の多項式なので微分可能であり、連鎖律 により $\partial_k\det g=\det g\sum_{i,m}g^{im}\partial_kg_{mi}$ である。よって $\sum_i\Gamma^i_{ik}=\partial_k\log\rho$($\rho=\sqrt{\det g}$)であり、
$$
\frac1\rho\sum_k\partial_k(\rho X^k)=\sum_k\partial_kX^k+\sum_kX^k\,\partial_k\log\rho=\sum_k\partial_kX^k+\sum_{i,k}\Gamma^i_{ik}X^k
$$
となる。prop-dv-coordinates と合わせて主張を得る。$\square$
この表示は LeeR18 Problem 5-14(p. 148)にある。同じ考え方で、テンソル場の発散を共変微分のトレースで定める。たとえば対称な 2 階共変テンソル場 $h$ の発散は $(\operatorname{div}h)_j:=\sum_{a,b}g^{ab}\nabla_ah_{bj}$ である(LeeR18 Problem 5-16、p. 149)。Ricci テンソル $\mathrm{Ric}$ とスカラー曲率 $S$ の間の縮約された Bianchi 恒等式 $\operatorname{div}\mathrm{Ric}=\frac12dS$(LeeR18 Proposition 7.18、p. 209。スカラー曲率 の記事の命題「2回縮約された第2 Bianchi 恒等式」)は、この意味の発散についての等式である。
$\mathbb{R}^n$ 上の $F(x)=x$ は $\operatorname{div}F=n$ で、どの点も一様な湧き出し口である。$\mathbb{R}^2$ 上の回転の場 $F=(-y,x)$ は $\operatorname{div}F=0$ で、原点の周りを体積(面積)を変えずに回る。$\mathbb{R}^n\setminus\{0\}$ 上の $F(x)=x/\|x\|^n$ は
$$
\frac{\partial}{\partial x_i}\Bigl(\frac{x_i}{\|x\|^n}\Bigr)=\frac1{\|x\|^n}-\frac{n\,x_i^2}{\|x\|^{n+2}}
$$
を $i$ について足して $\operatorname{div}F=\frac{n}{\|x\|^n}-\frac{n}{\|x\|^n}=0$ である。$n=3$ では点電荷の電場や点質量の重力場の形である。
$\mathbb{R}^2\setminus\{0\}$ の極座標 $(r,\theta)$ では標準の計量は $dr^2+r^2d\theta^2$、$\sqrt{\det g}=r$ である。$X=r\,\partial_r$(直交座標の $(x,y)$)なら、prop-dv-coordinates により $\operatorname{div}X=\frac1r\partial_r(r\cdot r)=2$ で、直交座標での値と一致する。$X=\partial_\theta$(直交座標の $(-y,x)$)なら $\operatorname{div}X=\frac1r\partial_\theta(r\cdot1)=0$ である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 座標変換が線形(prop-dv-linear) | 極座標 $(r,\theta)$ での $F(x,y)=(x,y)$ の成分 $(r,0)$ | 新しい座標での成分の偏導関数の和が発散に等しい |
| $F$ が $a$ の近くで $C^1$ 級(thm-dv-flux) | $\mathbb{R}^2$ 上の $F(x,y)=\dfrac{(x,y)}{x^2+y^2}$($F(0):=0$)、$a=0$ | 立方体からの流出量を体積で割った値が収束する |
| $G$ が $C^2$ 級(prop-dv-rules の 3) | $G=(0,0,h(x,y))$、$h=\dfrac{xy(x^2-y^2)}{x^2+y^2}$(原点で $h=0$) | $\operatorname{div}(\operatorname{rot}G)=0$ |
1 行目:成分の偏導関数の和は $1$、発散は $2$ である(ex-dv-polar)。
2 行目:$F$ は $\mathbb{R}^2$ 全体で定義され、$a=0\in\mathbb{R}^2$ であり、破れているのは原点での $C^1$ 性だけである($F_1(x,0)=1/x$ なので原点で連続でもない)。立方体の面は原点を通らないので、面 $x=r$ の上の流出量は $\int_{-r}^{r}\frac{r}{r^2+y^2}\,dy=2\arctan1=\frac\pi2$ で、対称性から 4 つの面で等しいので $\Phi_F(Q_r(0))=2\pi$ である。原点以外では $\operatorname{div}F=0$(ex-dv-basic)なのに、$2\pi/(2r)^2\to\infty$ となる。原点に湧き出し口が集中している。
3 行目:$h$ は $C^1$ 級で、$h_x(0,y)=-y$、$h_y(x,0)=x$ である。$\operatorname{rot}G=(h_y,-h_x,0)$ なので、原点で $\operatorname{div}(\operatorname{rot}G)=\partial_x(h_y)-\partial_y(h_x)=1-(-1)=2\ne0$ である。$h$ は $C^2$ 級でなく、2 階の偏微分の順序を交換できない(偏微分 の記事の例「反例:2 階の偏導関数の順序を交換できない関数」)。
thm-dv-flux を有界な領域全体に広げたものが Gaussの発散定理 であり、領域の上の発散の積分が境界からの流出量に等しい。Riemann 多様体の上では $\Delta u:=\operatorname{div}(\operatorname{grad}u)$ が Laplace–Beltrami 作用素であり(LeeR18 の式 (2.20)、p. 32)、2 次元の平面では Greenの定理 の命題「流束の形(2 次元の発散定理)」が発散定理にあたる。
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