Van Aubelの定理(三角形)(Van Aubel's theorem for triangles)とは、三角形 $ABC$ の内部の点 $P$ を通る Ceva 線 $AD,BE,CF$($D,E,F$ は辺 $BC,CA,AB$ の上)について $\frac{AP}{PD}=\frac{AF}{FB}+\frac{AE}{EC}$ が成り立つという定理である。3 つの三角形 $PBC,PCA,PAB$ の面積で両辺を書くと一致する。重心では $2=1+1$、内心 $I$ では $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$ として $\frac{AI}{ID}=\frac{b+c}{a}$ となる。$P$ が三角形の外にあっても、$P$ が 3 辺を延ばした直線の上になく交点 $D,E,F$ があれば、向きの符号をつけた比で同じ等式が成り立つ。
前提知識: Cevaの定理(高校数学), 三角形の面積比, 位置ベクトルと内分点
三角形 $ABC$ の内部に点 $P$ をとり、3 つの頂点と $P$ を結ぶ直線が向かい合う辺と交わる点を $D$、$E$、$F$ とする。Cevaの定理(高校数学) は、辺が分けられる 3 つの比 $\dfrac{BD}{DC}$、$\dfrac{CE}{EA}$、$\dfrac{AF}{FB}$ の積が $1$ になることを教える。では、点 $P$ そのものは線分 $AD$ をどんな比に分けるだろうか。まず座標で計算してみる。
Cevaの定理(高校数学) の最初の例と同じく、$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,6)$ と内部の点 $P(2,3)$ をとる。同記事で求めたとおり、直線 $AP$、$BP$、$CP$ と向かい合う辺の交点は
$$
D\left(\frac{12}5,\frac{18}5\right),\qquad E\left(0,\frac92\right),\qquad F(4,0)
$$
である。
(1) 辺の比。$AF=4$、$FB=2$ なので $\dfrac{AF}{FB}=2$ である。$E$ は $y$ 軸の上にあり、$AE=\dfrac92$、$EC=6-\dfrac92=\dfrac32$ なので $\dfrac{AE}{EC}=3$ である。
(2) $P$ が線分 $AD$ を分ける比。$\overrightarrow{AD}=\left(\dfrac{12}5,\dfrac{18}5\right)$、$\overrightarrow{AP}=(2,3)$ で、$\overrightarrow{AP}=\dfrac56\overrightarrow{AD}$ である。よって $AP:PD=5:1$、つまり
$$
\frac{AP}{PD}=5
$$
である。
(3) 比べる。(1) の 2 つの比の和は $2+3=5$ で、(2) の $\dfrac{AP}{PD}$ と一致する。
偶然かどうか、もう 1 つの三角形で確かめる。
$A(3,6)$、$B(0,0)$、$C(6,0)$ と、内部の点 $P(4,2)$ をとる。
(1) 直線 $AP$ は $A(3,6)$ から方向 $(1,-4)$ に進む直線で、$y=0$ となるのは $6-4t=0$、$t=\dfrac32$ のときなので、$D\left(\dfrac92,0\right)$ である。$P$ は $t=1$、$D$ は $t=\dfrac32$ の点なので $AP:PD=1:\dfrac12$、つまり $\dfrac{AP}{PD}=2$ である。
(2) 直線 $CP$ は $C(6,0)$ と $P(4,2)$ を通る直線 $x+y=6$ である。辺 $AB$ は直線 $y=2x$ なので、$x+2x=6$ より $F(2,4)$ である。$\overrightarrow{AF}=(-1,-2)$、$\overrightarrow{FB}=(-2,-4)$ で $\overrightarrow{FB}=2\overrightarrow{AF}$ なので、$\dfrac{AF}{FB}=\dfrac12$ である。
(3) 直線 $BP$ は $y=\dfrac12x$ である。辺 $CA$ は直線 $y=-2x+12$ なので、$\dfrac12x=-2x+12$ より $x=\dfrac{24}5$、$E\left(\dfrac{24}5,\dfrac{12}5\right)$ である。$\overrightarrow{AE}=\left(\dfrac95,-\dfrac{18}5\right)$、$\overrightarrow{EC}=\left(\dfrac65,-\dfrac{12}5\right)$ で $\overrightarrow{AE}=\dfrac32\overrightarrow{EC}$ なので、$\dfrac{AE}{EC}=\dfrac32$ である。
(4) $\dfrac{AF}{FB}+\dfrac{AE}{EC}=\dfrac12+\dfrac32=2=\dfrac{AP}{PD}$ で、ここでも一致する。
2 つの例では、どちらも「$P$ が $AD$ を分ける比」が「頂点 $A$ から出る 2 辺が分けられる比の和」に等しかった。これがいつも成り立つことを示すのが Van Aubelの定理(三角形) である。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 3 つの三角形の面積 $\triangle PBC$、$\triangle PCA$、$\triangle PAB$ | 面積の比で辺の比を書く | 重心座標 $(\alpha:\beta:\gamma)$ |
| $\dfrac{AP}{PD}=\dfrac{AF}{FB}+\dfrac{AE}{EC}$ | Van Aubelの定理 | $\dfrac{\beta+\gamma}\alpha=\dfrac\beta\alpha+\dfrac\gamma\alpha$ |
| 重心で $2=1+1$ | 系 | 3 点に等しい重さ |
| 外の点で符号をつけた比 | 符号つきの形 | 成分が負の重心座標 |
A(0,0)、B(6,0)、C(0,6) と P(2,3) の 3 本の Ceva 線。AF:FB=2:1、AE:EC=3:1 で、P は AD を 5:1 に分ける
三角形の頂点と、向かい合う辺の上の点(頂点とは異なる点)を結ぶ線分を Ceva 線 という(Cevaの定理(高校数学))。以下、三角形 $XYZ$ の面積を $\triangle XYZ$ と書く。
三角形 $ABC$ の内部の点 $P$ に対し、直線 $AP$、$BP$、$CP$ が辺 $BC$、$CA$、$AB$ と交わる点を、それぞれ $D$、$E$、$F$ とする。3 本の線分 $AD$、$BE$、$CF$ は $P$ を通る Ceva 線である。3 つの面積を
$$
S_a=\triangle PBC,\qquad S_b=\triangle PCA,\qquad S_c=\triangle PAB
$$
とおく。$P$ は内部にあるので、三角形 $ABC$ はこの 3 つの三角形に分かれ、$\triangle ABC=S_a+S_b+S_c$ である。
$P$ が内部にあるとき、$P$ は線分 $AD$ の上にあって $A$ とも $D$ とも異なる。$A$ から出て $P$ を通る半直線は三角形の内部を進み、辺 $BC$ を横切って外に出るので、その出口が $D$ で、$P$ は $A$ と $D$ の間にある。$BE$、$CF$ についても同じである(この事実の詳しい証明は Cevaの定理(高校数学) の定理の証明の段 1 にある)。
証明の道具は、面積の比についての次の 2 つの補題である。どちらも 三角形の面積比 で扱う形で、ここでは記事の中で証明しておく。
def-vat-setting の設定で
$$
\frac{\triangle ABC}{\triangle PBC}=\frac{AD}{PD}
$$
である。
要点:2 つの三角形は底辺 $BC$ が共通なので、面積の比は $A$、$P$ から直線 $BC$ までの高さの比である。高さの比は、$D$ の角を共有する相似な直角三角形から $\dfrac{AD}{PD}$ になる。
段 1(面積の比は高さの比)。$A$、$P$ から直線 $BC$ に下ろした垂線の長さを $h_A$、$h_P$ とする。$\triangle ABC=\dfrac12\cdot BC\cdot h_A$、$\triangle PBC=\dfrac12\cdot BC\cdot h_P$ なので、$\dfrac{\triangle ABC}{\triangle PBC}=\dfrac{h_A}{h_P}$ である。
段 2(高さの比)。$AD\perp BC$ なら、垂線の足はどちらも $D$ で、$h_A=AD$、$h_P=PD$ である。そうでないとき、垂線の足を $A'$、$P'$ とすると、直角三角形 $AA'D$ と $PP'D$ は $D$ の角を共有する($P$ は線分 $AD$ の上にあるので、半直線 $DA$ と $DP$ は同じ)。直角と $D$ の角が等しいので 2 つの直角三角形は相似で、$\dfrac{AA'}{PP'}=\dfrac{AD}{PD}$、つまり $\dfrac{h_A}{h_P}=\dfrac{AD}{PD}$ である。段 1 と合わせて結論を得る。$\square$
def-vat-setting の設定で
$$
\frac{AF}{FB}=\frac{S_b}{S_a},\qquad \frac{AE}{EC}=\frac{S_c}{S_a}
$$
である。
要点:$k=\dfrac{AF}{FB}$ とおく。「高さが等しい三角形の面積の比は底辺の比」(三角形の面積比)から $\triangle CAF=k\cdot\triangle CFB$、$\triangle PAF=k\cdot\triangle PFB$ で、引き算すると $\triangle CAP=k\cdot\triangle CBP$、つまり $S_b=k\,S_a$ である。$BE$ でも同じである。
段 1(比を $k$ とおく)。$k=\dfrac{AF}{FB}$ とおく。三角形 $CAF$ と $CFB$ は頂点 $C$ を共有し、底辺 $AF$、$FB$ が同じ直線 $AB$ の上にあるので高さが等しく、$\triangle CAF=k\cdot\triangle CFB$ である。$P$ も直線 $AB$ の上にないので、同じく $\triangle PAF=k\cdot\triangle PFB$ である。
段 2(引き算)。$P$ は線分 $CF$ の上にあるので、三角形 $CAF$ は三角形 $CAP$ と $PAF$ に分かれ、$\triangle CAP=\triangle CAF-\triangle PAF$ である。同じく $\triangle CBP=\triangle CFB-\triangle PFB$ である。段 1 から
$$\triangle CAP=k\cdot\triangle CFB-k\cdot\triangle PFB=k\cdot\triangle CBP$$
である。$\triangle CAP=S_b$、$\triangle CBP=S_a$ なので、$\dfrac{AF}{FB}=k=\dfrac{S_b}{S_a}$ である。
段 3(もう 1 つの比)。Ceva 線 $BE$ で同じ議論をすると、$\dfrac{AE}{EC}=\dfrac{\triangle BAP}{\triangle BCP}=\dfrac{S_c}{S_a}$ である。$\square$
lem-vat-side は Cevaの定理(高校数学) の証明で使った補題と同じものである。Ceva の定理は 3 つの比を掛けて面積を約分した。この記事では、同じ面積の比を 足す。
ex-vat-start2 の $A(3,6)$、$B(0,0)$、$C(6,0)$、$P(4,2)$ で面積を計算する。$\triangle ABC=\dfrac12\cdot6\cdot6=18$ である。$S_a=\triangle PBC$ は底辺 $BC=6$($x$ 軸の上)、高さ $2$ なので $S_a=6$ である。$S_c=\triangle PAB$ は、$\overrightarrow{BA}=(3,6)$、$\overrightarrow{BP}=(4,2)$ から $\dfrac12\lvert3\cdot2-6\cdot4\rvert=9$ である。残りは $S_b=18-6-9=3$ である。
(1) lem-vat-whole:$\dfrac{\triangle ABC}{\triangle PBC}=\dfrac{18}6=3$ で、$AD:PD=\dfrac32:\dfrac12=3$(ex-vat-start2 (1) の $t$ の値)と一致する。
(2) lem-vat-side:$\dfrac{S_b}{S_a}=\dfrac36=\dfrac12=\dfrac{AF}{FB}$、$\dfrac{S_c}{S_a}=\dfrac96=\dfrac32=\dfrac{AE}{EC}$ で、ex-vat-start2 の値と一致する。
三角形 $ABC$ の内部の点 $P$ を通る Ceva 線を $AD$、$BE$、$CF$ とする($D$、$E$、$F$ はそれぞれ辺 $BC$、$CA$、$AB$ の上)。このとき
$$
\frac{AP}{PD}=\frac{AF}{FB}+\frac{AE}{EC}
$$
が成り立つ。頂点 $B$、$C$ についても同じく $\dfrac{BP}{PE}=\dfrac{BD}{DC}+\dfrac{BF}{FA}$、$\dfrac{CP}{PF}=\dfrac{CE}{EA}+\dfrac{CD}{DB}$ である。
方針:左辺を lem-vat-whole で、右辺の 2 つの比を lem-vat-side で、def-vat-setting の 3 つの面積 $S_a$、$S_b$、$S_c$ の式に書き直し、両辺が同じ式になることを見る。
段 1(左辺を全体の面積で書く)。$P$ は線分 $AD$ の上にあるので $AP=AD-PD$ である。よって
$$
\frac{AP}{PD}=\frac{AD-PD}{PD}=\frac{AD}{PD}-1
$$
である。lem-vat-whole により $\dfrac{AD}{PD}=\dfrac{\triangle ABC}{\triangle PBC}$ なので
$$
\frac{AP}{PD}=\frac{\triangle ABC}{S_a}-1
$$
である。
段 2(左辺を 3 つの面積で書く)。def-vat-setting のとおり $\triangle ABC=S_a+S_b+S_c$ なので
$$
\frac{AP}{PD}=\frac{S_a+S_b+S_c}{S_a}-1=\frac{S_b+S_c}{S_a}
$$
である。
段 3(右辺)。lem-vat-side により
$$
\frac{AF}{FB}+\frac{AE}{EC}=\frac{S_b}{S_a}+\frac{S_c}{S_a}=\frac{S_b+S_c}{S_a}
$$
である。段 2 と段 3 の右辺が同じなので、定理の等式が成り立つ。
段 4(頂点 $B$、$C$)。頂点の名前を $A\to B\to C\to A$ と回すと、$D\to E\to F\to D$ と回り、段 1〜3 と同じ議論で $\dfrac{BP}{PE}=\dfrac{BD}{DC}+\dfrac{BF}{FA}$ を得る。もう一度回すと $C$ の式を得る。$\square$
証明の要点は、段 2 と段 3 に現れた式
$$
\frac{AP}{PD}=\frac{\overbrace{S_b}^{AF/FB\text{ の分子}}+\overbrace{S_c}^{AE/EC\text{ の分子}}}{S_a}
$$
である。左辺の分子の 2 つの面積が、右辺の 2 つの比の分子に 1 つずつ分かれる。図 2 は ex-vat-start2 の 3 つの面積 $S_a=6$、$S_b=3$、$S_c=9$ を塗り分けたものである。
A(3,6)、B(0,0)、C(6,0) と P(4,2)。三角形は面積 6、3、9 の 3 つの三角形に分かれる
ex-vat-start2 の三角形で、$S_a=6$、$S_b=3$、$S_c=9$ である。
(1) 頂点 $A$:$\dfrac{S_b+S_c}{S_a}=\dfrac{12}6=2$ で、$\dfrac{AP}{PD}=2$、$\dfrac{AF}{FB}+\dfrac{AE}{EC}=\dfrac12+\dfrac32=2$ である。
(2) 頂点 $B$:$\dfrac{BP}{PE}=\dfrac{S_c+S_a}{S_b}=\dfrac{15}3=5$、右辺は $\dfrac{BD}{DC}+\dfrac{BF}{FA}=3+2=5$ である。
(3) 頂点 $C$:$\dfrac{CP}{PF}=\dfrac{S_a+S_b}{S_c}=\dfrac99=1$、右辺は $\dfrac{CE}{EA}+\dfrac{CD}{DB}=\dfrac23+\dfrac13=1$ である。
(2) $BD=\dfrac92$、$DC=\dfrac32$ から $\dfrac{BD}{DC}=3$、ex-vat-start2 (2) から $\dfrac{BF}{FA}=2$ である。$\overrightarrow{BP}=(4,2)$、$\overrightarrow{PE}=\left(\dfrac45,\dfrac25\right)$ で $\overrightarrow{BP}=5\overrightarrow{PE}$ である。
(3) ex-vat-start2 (3) から $\dfrac{CE}{EA}=\dfrac23$、(1) から $\dfrac{CD}{DB}=\dfrac13$ である。$\overrightarrow{CP}=(-2,2)$、$\overrightarrow{PF}=(-2,2)$ で、$P$ は線分 $CF$ の中点である。
ex-vat-three の 3 つの値 $2$、$5$、$1$ を使うと、面積の比 $S_a:S_b:S_c$ が逆に求まる。実際、$\dfrac{AP}{PD}+1=\dfrac{\triangle ABC}{S_a}$ なので、$S_a:S_b:S_c=\dfrac1{2+1}:\dfrac1{5+1}:\dfrac1{1+1}=\dfrac13:\dfrac16:\dfrac12=2:1:3$ となり、$6:3:9$ と一致する。3 つの値の逆数の和 $\dfrac13+\dfrac16+\dfrac12=1$ は、$\dfrac{PD}{AD}+\dfrac{PE}{BE}+\dfrac{PF}{CF}=\dfrac{S_a+S_b+S_c}{\triangle ABC}=1$ という関係の数値の姿である。
Menelausの定理(高校数学) の例「2 本の線分の交点が分ける比」では、2 本の Ceva 線の交点が分ける比 $AP:PD$ を、三角形 $ADC$ と直線 $BE$ に Menelaus の定理を使って求めている。同じ方法を 2 つの三角形に使うと、面積を使わずに thm-vat-main が出る。
三角形 $ABD$ と、それを横切る直線 $CF$ を考える(図 3 の色を付けた三角形と緑の直線)。直線 $CF$ は辺 $AB$ と $F$ で、直線 $BD$ の延長と $C$ で、辺 $DA$ と $P$ で交わる。Menelaus の定理を三角形 $ABD$(頂点を $A\to B\to D$ の順)に使うと
$$\frac{AF}{FB}\cdot\frac{BC}{CD}\cdot\frac{DP}{PA}=1,\qquad\text{つまり}\qquad \frac{AF}{FB}=\frac{AP}{PD}\cdot\frac{CD}{BC}$$
である。同じく三角形 $ADC$(頂点を $A\to D\to C$ の順)と直線 $BE$ に使うと
$$\frac{AP}{PD}\cdot\frac{DB}{BC}\cdot\frac{CE}{EA}=1,\qquad\text{つまり}\qquad \frac{AE}{EC}=\frac{AP}{PD}\cdot\frac{DB}{BC}$$
である。$D$ は辺 $BC$ の上にあるので $CD+DB=BC$ で、2 式を足すと
$$\frac{AF}{FB}+\frac{AE}{EC}=\frac{AP}{PD}\cdot\frac{CD+DB}{BC}=\frac{AP}{PD}$$
を得る。ex-vat-start で確かめると、$\dfrac{CD}{BC}=\dfrac25$、$\dfrac{DB}{BC}=\dfrac35$ で、$5\cdot\dfrac25=2=\dfrac{AF}{FB}$、$5\cdot\dfrac35=3=\dfrac{AE}{EC}$ である。
三角形 ABD と、それを横切る直線 CF。Menelaus の定理で AF/FB を AP/PD と CD/BC で表す
thm-vat-main の右辺の 2 つの比は、よく知られた点では辺の長さや角で書ける。
三角形 $ABC$ の辺の長さを $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$ とし、角の大きさを $A$、$B$、$C$ で表す。頂点 $A$ から出る Ceva 線を $AD$ とする。
(1) 重心 $G$ について $\dfrac{AG}{GD}=1+1=2$ である。
(2) 内心 $I$ について $\dfrac{AI}{ID}=\dfrac ba+\dfrac ca=\dfrac{b+c}a$ である。
(3) 鋭角三角形の垂心 $H$ について $\dfrac{AH}{HD}=\dfrac{\cos A}{\cos B\cos C}$ である。
$B(0,0)$、$C(14,0)$、$A(5,12)$ の三角形($a=14$、$b=15$、$c=13$)を使う。
(1) 重心 $G\left(\dfrac{19}3,4\right)$、辺 $BC$ の中点 $D(7,0)$ で、$\overrightarrow{AG}=\left(\dfrac43,-8\right)$、$\overrightarrow{GD}=\left(\dfrac23,-4\right)$ なので $\dfrac{AG}{GD}=2$ である。
(2)(3) 内心 $I(6,4)$ では $\dfrac{b+c}a=\dfrac{28}{14}=2$、垂心 $H\left(5,\dfrac{15}4\right)$ では $\dfrac{\cos A}{\cos B\cos C}=\dfrac{11}5$ で、どちらも座標で求めた $\dfrac{AI}{ID}$、$\dfrac{AH}{HD}$ と一致する。
(2) 内心は $I(6,4)$ で、$\dfrac{b+c}a=\dfrac{28}{14}=2$ である。頂点 $A$ の二等分線は $BC$ を $c:b=13:15$ に分けるので、$BD=14\cdot\dfrac{13}{28}=\dfrac{13}2$、$D\left(\dfrac{13}2,0\right)$ である。$\overrightarrow{AI}=(1,-8)$、$\overrightarrow{ID}=\left(\dfrac12,-4\right)$ で $\dfrac{AI}{ID}=2$ となり一致する。右辺の 2 項は $\dfrac ba=\dfrac{15}{14}$、$\dfrac ca=\dfrac{13}{14}$ である。
(3) 余弦定理から $\cos A=\dfrac{b^2+c^2-a^2}{2bc}=\dfrac{33}{65}$、$\cos B=\dfrac5{13}$、$\cos C=\dfrac35$ で、$\dfrac{\cos A}{\cos B\cos C}=\dfrac{33}{65}\cdot\dfrac{13}5\cdot\dfrac53=\dfrac{11}5$ である。垂心は $H\left(5,\dfrac{15}4\right)$、垂線の足は $D(5,0)$ で、$AH=12-\dfrac{15}4=\dfrac{33}4$、$HD=\dfrac{15}4$ なので $\dfrac{AH}{HD}=\dfrac{33}{15}=\dfrac{11}5$ となり一致する。
3 つの点を表にまとめる(13、14、15 の三角形の値)。
| 点 $P$ | $\dfrac{AF}{FB}$ | $\dfrac{AE}{EC}$ | $\dfrac{AP}{PD}$ | 13、14、15 の三角形 |
|---|---|---|---|---|
| 重心 $G$ | $1$ | $1$ | $2$ | $1+1=2$ |
| 内心 $I$ | $\dfrac ba$ | $\dfrac ca$ | $\dfrac{b+c}a$ | $\dfrac{15}{14}+\dfrac{13}{14}=2$ |
| 垂心 $H$(鋭角三角形) | $\dfrac{b\cos A}{a\cos B}$ | $\dfrac{c\cos A}{a\cos C}$ | $\dfrac{\cos A}{\cos B\cos C}$ | $\dfrac{99}{70}+\dfrac{11}{14}=\dfrac{11}5$ |
13、14、15 の三角形では重心と内心の比がどちらも $2$ になるが、これは $b+c=2a$ だからである。一般の三角形では $\dfrac{AI}{ID}=\dfrac{b+c}a$ は $2$ とは限らない。三角形の 2 辺の和は残りの辺より長い(三角形の辺と角の大小)ので、$\dfrac{AI}{ID}>1$ で、内心は二等分線 $AD$ の中点よりも $D$ の側にある。
thm-vat-main の仮定や式の形を変えると何が崩れるかを並べる。どれも ex-vat-start の三角形 $A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,6)$ で調べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $P$ が三角形の内部にある | 外の点 $P\left(-\frac32,\frac92\right)$ で、比を長さの比のまま使う | $\frac{AP}{PD}=\frac{AF}{FB}+\frac{AE}{EC}$(左辺 $1$、右辺 $2$) |
| 比はどれも頂点 $A$ の側から測る | ex-vat-start で $\frac{FB}{AF}+\frac{EC}{AE}$ にする | 右辺が $\frac12+\frac13=\frac56$ になり、$5$ と合わない |
| 3 本が同じ点 $P$ を通る | ex-vat-start で $F$ だけ $AB$ の中点に取りかえる | 右辺が $1+3=4$ になり、$5$ と合わない |
$P\left(-\dfrac32,\dfrac92\right)$ は $x<0$ なので三角形の外(辺 $CA$ の向こう側)にある。直線 $AP$、$BP$、$CP$ と直線 $BC$、$CA$、$AB$ の交点は
$$
D(-3,9),\qquad E\left(0,\frac{18}5\right),\qquad F(-6,0)
$$
である(図 4)。$D$ は辺 $BC$ の $C$ の側の延長に、$F$ は辺 $AB$ の $A$ の側の延長にある。
(1) 長さの比。$\overrightarrow{AP}=\left(-\dfrac32,\dfrac92\right)$、$\overrightarrow{PD}=\left(-\dfrac32,\dfrac92\right)$ なので $\dfrac{AP}{PD}=1$ である。$AF=6$、$FB=12$ なので $\dfrac{AF}{FB}=\dfrac12$、$AE=\dfrac{18}5$、$EC=\dfrac{12}5$ なので $\dfrac{AE}{EC}=\dfrac32$ である。右辺は $\dfrac12+\dfrac32=2$ で、左辺の $1$ と一致しない。
(2) 向きを考えた比。$\overrightarrow{AF}=(-6,0)$、$\overrightarrow{FB}=(12,0)$ で、$\overrightarrow{AF}=-\dfrac12\overrightarrow{FB}$ である。向きが逆なので、比に負の符号をつけて $-\dfrac12$ とすると、$-\dfrac12+\dfrac32=1$ となり左辺と一致する。この「符号つきの比」で等式が回復することを thm-vat-signed で示す。
(3) 外の点でも、たまたま長さの比のままで成り立つことがある。Cevaの定理(高校数学) の例の点 $P(4,4)$(辺 $BC$ の向こう側)では $D(3,3)$、$E(0,12)$、$F(12,0)$ で、$\dfrac{AP}{PD}=4$、$\dfrac{AF}{FB}=2$、$\dfrac{AE}{EC}=2$ となり、$4=2+2$ である。このときは 3 つの比がどれも向きが逆で、符号つきの比では $-4=(-2)+(-2)$ となる。符号がそろうので、長さの比でも等式が崩れない。
(2 行目) ex-vat-start の $\dfrac{AF}{FB}=2$、$\dfrac{AE}{EC}=3$ の逆数の和は $\dfrac12+\dfrac13=\dfrac56$ で、$\dfrac{AP}{PD}=5$ と異なる。逆数どうしなら $\dfrac{PD}{AP}=\dfrac15$ とも異なる。定理は「頂点 $A$ から $P$ までと、$P$ から先」の比を、「頂点 $A$ から辺の上の点までと、その点から先」の比で表すので、3 つの比の向きをそろえることが要る。
(3 行目) $F$ を $AB$ の中点 $(3,0)$ に取りかえると $\dfrac{AF}{FB}=1$ で、右辺は $1+3=4$ になる。このとき直線 $CF$ は $y=6-2x$ で、直線 $AD$($y=\dfrac32x$)とは $\left(\dfrac{12}7,\dfrac{18}7\right)$ で交わり、$P(2,3)$ を通らない。3 本の Ceva 線が 1 点で交わらなければ、lem-vat-side の面積の式が使えない。
三角形の外の点 P(-3/2, 9/2)。D は辺 BC の延長の上、F は辺 AB の延長の上にある
prf-vat-main の 3 つの面積 $S_a$、$S_b$、$S_c$ の比は、$P$ の 重心座標 である(Cevaの定理(高校数学) の後半)。$P=\alpha A+\beta B+\gamma C$($\alpha+\beta+\gamma=1$)と書いたときの $(\alpha,\beta,\gamma)$ で、$P$ が内部にあれば $\alpha:\beta:\gamma=S_a:S_b:S_c$ である。この言葉では、Van Aubel の定理は分数の足し算
$$
\frac{\beta+\gamma}\alpha=\frac\beta\alpha+\frac\gamma\alpha
$$
そのものになる。しかも、成分が負になることを許すと、三角形の外の点にもそのまま広がる。
符号つきの比を思い出す。直線の上の 3 点 $X$、$Y$、$Z$($Y\ne Z$)について、$\overrightarrow{XY}=k\,\overrightarrow{YZ}$ を満たす実数 $k$ を $\dfrac{\overline{XY}}{\overline{YZ}}$ と書く(Cevaの定理(高校数学) の「符号つきの比」)。$Y$ が線分 $XZ$ の内部にあれば $k>0$、外にあれば $k<0$ である。
点 $P$ は直線 $BC$、$CA$、$AB$ のどれの上にもないとし、$P$ の重心座標を $(\alpha,\beta,\gamma)$ とする。$\beta+\gamma$、$\gamma+\alpha$、$\alpha+\beta$ がどれも $0$ でないとき、直線 $AP$、$BP$、$CP$ は直線 $BC$、$CA$、$AB$ とそれぞれ 1 点 $D$、$E$、$F$ で交わり
$$
\frac{\overline{AP}}{\overline{PD}}=\frac{\overline{AF}}{\overline{FB}}+\frac{\overline{AE}}{\overline{EC}}
$$
が成り立つ。3 つの比の値は順に $\dfrac{\beta+\gamma}\alpha$、$\dfrac\beta\alpha$、$\dfrac\gamma\alpha$ である。
方針:Cevaの定理(高校数学) の命題「Ceva 線の足の重心座標」を使って、3 つの比を $\alpha$、$\beta$、$\gamma$ で書く。
段 1(成分は $0$ でない)。$\alpha=0$ なら $P=\beta B+\gamma C$($\beta+\gamma=1$)は直線 $BC$ の上にある。仮定よりそうではないので $\alpha\ne0$ である。同じく $\beta\ne0$、$\gamma\ne0$ である。
段 2($D$ と左辺)。$D=\dfrac{\beta B+\gamma C}{\beta+\gamma}$ とおく。係数の和が $1$ なので $D$ は直線 $BC$ の上にあり、$\beta B+\gamma C=(\beta+\gamma)D$ から
$$
P=\alpha A+(\beta+\gamma)D
$$
である。$\alpha=1-(\beta+\gamma)$ を使うと、$\overrightarrow{AP}=P-A=(\beta+\gamma)(D-A)$、$\overrightarrow{PD}=D-P=D-\alpha A-(1-\alpha)D=\alpha(D-A)$ である。よって $D$ は直線 $AP$ の上にあり($A$ は直線 $BC$ の上にないので、2 直線の交点は $D$ だけ)、$\alpha\ne0$ より
$$
\overrightarrow{AP}=\frac{\beta+\gamma}\alpha\,\overrightarrow{PD},\qquad \frac{\overline{AP}}{\overline{PD}}=\frac{\beta+\gamma}\alpha
$$
である。
段 3(右辺)。Cevaの定理(高校数学) の命題(直線 $AP$ と直線 $BC$ の交点 $D$ について $\dfrac{\overline{BD}}{\overline{DC}}=\dfrac\gamma\beta$)を、頂点の名前を回して使う。$A\to B\to C\to A$ と 1 回回すと $\dfrac{\overline{CE}}{\overline{EA}}=\dfrac\alpha\gamma$、もう 1 回回すと $\dfrac{\overline{AF}}{\overline{FB}}=\dfrac\beta\alpha$ である。$\overrightarrow{CE}=\dfrac\alpha\gamma\overrightarrow{EA}$ を書き直すと $\overrightarrow{AE}=\dfrac\gamma\alpha\overrightarrow{EC}$ なので、$\dfrac{\overline{AE}}{\overline{EC}}=\dfrac\gamma\alpha$ である。
段 4(足す)。$\dfrac\beta\alpha+\dfrac\gamma\alpha=\dfrac{\beta+\gamma}\alpha$ なので、段 2 と段 3 から等式が成り立つ。$\square$
$\alpha$、$\beta$、$\gamma$ が正のとき、頂点 $A$、$B$、$C$ に重さ $\alpha$、$\beta$、$\gamma$ のおもりを置く。$B$ と $C$ のおもりだけを見ると、つり合う点は $BC$ を $\gamma:\beta$ に分ける点 $D$ で、そこに重さ $\beta+\gamma$ がまとまっていると考えてよい(てこの原理:支点からの距離と重さの積が左右で等しい)。次に $A$ の重さ $\alpha$ と $D$ の重さ $\beta+\gamma$ をつり合わせると、支点は $AD$ を $(\beta+\gamma):\alpha$ に分ける点で、これが 3 つのおもり全体の重心 $P$ である。
この見方では、$\dfrac{AP}{PD}=\dfrac{\beta+\gamma}\alpha$ の分子の重さ $\beta+\gamma$ は、$B$ の重さ $\beta$ と $C$ の重さ $\gamma$ の和である。一方 $\dfrac{AF}{FB}=\dfrac\beta\alpha$ は $A$ と $B$ のおもりだけのつり合い、$\dfrac{AE}{EC}=\dfrac\gamma\alpha$ は $A$ と $C$ のおもりだけのつり合いである。Van Aubel の定理は「重さを $\beta$ と $\gamma$ に分ける」ことにあたる。重心 $G$ では 3 つの重さが等しく $1:1:1$ なので、$\dfrac{AG}{GD}=\dfrac{1+1}1=2$ となる(三角形の重心(高校数学))。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する