帰納極限

同義語:direct limitinductive limit順極限帰納的極限有向余極限

概要

帰納極限(direct limit)とは、有向集合 $I$ で添字づけられた対象の族 $(M_i)$ と推移射 $\varphi_{ij}\colon M_i\to M_j$($i\le j$)からなる帰納系を、推移射に沿って貼り合わせた対象 $\varinjlim M_i$ のことで、有向集合を添字圏とする余極限にほかならない。集合や加群では非交和 $\bigsqcup M_i$ を「十分先で一致する」という同値関係で割って構成され、$M_i$ の元が極限で $0$ になるのはある $M_j$ で $0$ になるときに限る。加群の帰納極限は完全関手で、テンソル積・核・余核と交換する。層の茎、$\mathbb{Q}=\varinjlim\frac{1}{n}\mathbb{Z}$、局所化、$\mathbb{Q}_p/\mathbb{Z}_p$、代数閉包が代表例である。射影極限と対をなす。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 有向集合, 加群, 完全列, 同値関係, 圏, 関手

定義

帰納極限は、有向集合で添字づけられた対象の族を、それらをつなぐ射に沿って「貼り合わせて」1 つの対象にまとめる操作である。まず添字集合と対象の族の組(帰納系)を定め、次に帰納極限を普遍性で定義し、そのあと集合と加群の場合に具体的な構成を与える。

帰納系

$(I,\le)$ を有向集合(前順序をもち、任意の 2 元 $i,j\in I$ に対して $i\le k$ かつ $j\le k$ なる $k\in I$ が存在する空集合でない集合)とする。圏 $\mathcal{C}$ における $I$ 上の帰納系(direct system, inductive system)とは、対象の族 $(M_i)_{i\in I}$ と、$i\le j$ なる各組に対する射 $\varphi_{ij}\colon M_i\to M_j$(推移射という)の組であって、次をみたすものをいう。

  1. 各 $i\in I$ について $\varphi_{ii}=\operatorname{id}_{M_i}$。
  2. $i\le j\le k$ ならば $\varphi_{jk}\circ\varphi_{ij}=\varphi_{ik}$。
    帰納系 $(M_i,\varphi_{ij})$ から帰納系 $(N_i,\psi_{ij})$ への射とは、射の族 $f_i\colon M_i\to N_i$ であって $i\le j$ のとき $f_j\circ\varphi_{ij}=\psi_{ij}\circ f_i$ をみたすものをいう。

有向集合を圏とみなす(対象は $I$ の元、$i\le j$ のとき $i$ から $j$ への射がちょうど 1 本)と、帰納系はちょうど関手 $I\to\mathcal{C}$ であり、帰納系の射は自然変換である。

帰納極限

$(M_i,\varphi_{ij})$ を圏 $\mathcal{C}$ における有向集合 $I$ 上の帰納系とする。対象 $M$ と射の族 $\mu_i\colon M_i\to M$($i\in I$)の組 $(M,(\mu_i)_i)$ が次の 2 条件をみたすとき、これを帰納系の帰納極限(direct limit, inductive limit)といい、$M=\varinjlim_{i\in I}M_i$ と書く。

  1. (両立性)$i\le j$ ならば $\mu_j\circ\varphi_{ij}=\mu_i$。
  2. (普遍性)対象 $N$ と射の族 $\nu_i\colon M_i\to N$ が $i\le j$ のとき $\nu_j\circ\varphi_{ij}=\nu_i$ をみたすならば、$\nu_i=\nu\circ\mu_i$(すべての $i$)をみたす射 $\nu\colon M\to N$ がただ 1 つ存在する。
    射 $\mu_i$ を標準射という。
帰納極限の一意性

帰納極限は、存在すれば標準射と両立する同型を除いて一意である。すなわち $(M,(\mu_i))$ と $(M',(\mu'_i))$ がともに同じ帰納系の帰納極限ならば、$\theta\circ\mu_i=\mu'_i$(すべての $i$)をみたす同型 $\theta\colon M\to M'$ がただ 1 つ存在する。

帰納極限は次に述べるとおり余極限(圏論)の特別な場合であり、この一意性は余極限一般について成り立つ。証明は 余極限(圏論) の記事の命題「余錐を保つ同型までの一意性」に譲る($M$ と $M'$ の普遍性から互いに逆向きの射 $\theta,\theta'$ を得て、合成が恒等射になることを普遍性の一意性の部分から導く)。

帰納極限は、有向集合を添字圏とする余極限(圏論)にほかならない。すなわち def-direct-limit は、関手 $I\to\mathcal{C}$ の余極限の定義を有向集合 $I$ の場合に書き下したものである。逆向きの射 $M_j\to M_i$($i\le j$)をもつ族の「極限」が射影極限であり、これは有向集合を添字とする極限(圏論)である。

集合と加群における構成

集合の帰納極限の構成

$(M_i,\varphi_{ij})$ を集合の圏における有向集合 $I$ 上の帰納系とする。直和(非交和)$\bigsqcup_{i\in I}M_i=\{(i,x)\mid i\in I,\ x\in M_i\}$ の上の関係 $\sim$ を
「$(i,x)\sim(j,y)$ $\iff$ ある $k\ge i,j$ が存在して $\varphi_{ik}(x)=\varphi_{jk}(y)$」で定める。このとき $\sim$ は同値関係であり、商集合 $M:=\bigsqcup_iM_i/\sim$ と、$\mu_i(x):=[(i,x)]$ で定まる写像 $\mu_i\colon M_i\to M$ の組は帰納系の帰納極限である。

反射律は $k=i$ ととればよく、対称律は定義から明らかである。推移律を示す。$(i,x)\sim(j,y)$、$(j,y)\sim(l,z)$ とし、$\varphi_{ik}(x)=\varphi_{jk}(y)$、$\varphi_{jk'}(y)=\varphi_{lk'}(z)$ とする。$I$ は有向なので $k\le m$、$k'\le m$ なる $m$ がある。推移射の合成則により
$$ \varphi_{im}(x)=\varphi_{km}(\varphi_{ik}(x))=\varphi_{km}(\varphi_{jk}(y))=\varphi_{jm}(y)=\varphi_{k'm}(\varphi_{jk'}(y))=\varphi_{k'm}(\varphi_{lk'}(z))=\varphi_{lm}(z) $$
となり、$(i,x)\sim(l,z)$。ここで $I$ の有向性を本質的に使った。
両立性:$i\le j$ のとき $(i,x)\sim(j,\varphi_{ij}(x))$ は $k=j$ ととれば明らかなので $\mu_j\circ\varphi_{ij}=\mu_i$。
普遍性:集合 $N$ と写像の族 $\nu_i\colon M_i\to N$ が $\nu_j\circ\varphi_{ij}=\nu_i$ をみたすとする。$\nu([(i,x)]):=\nu_i(x)$ とおく。これが well-defined(代表元のとり方によらない)であることを示す。$(i,x)\sim(j,y)$、$\varphi_{ik}(x)=\varphi_{jk}(y)$ とすると $\nu_i(x)=\nu_k(\varphi_{ik}(x))=\nu_k(\varphi_{jk}(y))=\nu_j(y)$。定義から $\nu\circ\mu_i=\nu_i$ であり、$M$ の各元は何らかの $\mu_i(x)$ の形なので、この等式をみたす $\nu$ はこれしかない。$\square$

加群の帰納極限の構成

$A$ を環(本記事では環はすべて可換環とする)、$(M_i,\varphi_{ij})$ を $A$ 加群と $A$ 準同型からなる有向集合 $I$ 上の帰納系とする。prop-direct-limit-set の集合 $M=\bigsqcup_iM_i/\sim$ に、
$$ [(i,x)]+[(j,y)]:=[(k,\varphi_{ik}(x)+\varphi_{jk}(y))]\quad(k\ge i,j),\qquad a[(i,x)]:=[(i,ax)] $$
で $A$ 加群の構造が well-defined に定まり、各 $\mu_i$ は $A$ 準同型になる。この $(M,(\mu_i))$ は $A$ 加群の圏における帰納極限である。さらに、$M$ は直和 $\bigoplus_{i\in I}M_i$ を、$x\in M_i$、$i\le j$ に対する元 $\iota_i(x)-\iota_j(\varphi_{ij}(x))$($\iota_i$ は直和への標準包含)の全体が生成する部分加群 $R$ で割った商加群 $\bigoplus_iM_i/R$ とも同型である。

和の well-defined 性:$k$ のとり方によらないことは、$k\le k'$ のとき $(k,\varphi_{ik}(x)+\varphi_{jk}(y))\sim(k',\varphi_{ik'}(x)+\varphi_{jk'}(y))$ が推移射の加法性から従い、2 つの $k,k'$ に対して共通の上界をとればよい。代表元のとり方によらないことは、$(i,x)\sim(i',x')$ なら十分大きい $k$ で $\varphi_{ik}(x)=\varphi_{i'k}(x')$ となることから同様に従う。スカラー倍も同じである。加群の公理は各 $M_i$ の公理から、必要な元を共通の $M_k$ に送って確かめられる。$\mu_i$ の $A$ 線型性は定義から明らかである。
普遍性:$A$ 加群 $N$ と両立する準同型の族 $\nu_i$ に対し、prop-direct-limit-set で得た写像 $\nu\colon M\to N$ が $A$ 線型であることを確かめればよい。$\nu([(i,x)]+[(j,y)])=\nu_k(\varphi_{ik}(x)+\varphi_{jk}(y))=\nu_i(x)+\nu_j(y)$、$\nu(a[(i,x)])=\nu_i(ax)=a\nu_i(x)$。一意性は集合の場合と同じである。
$\bigoplus_iM_i/R$ との同型:$\pi\colon\bigoplus_iM_i\to\bigoplus_iM_i/R$ を商写像とすると、$\pi\circ\iota_i$ の族は $R$ の定義から両立するので、$M$ の普遍性から $\alpha\colon M\to\bigoplus_iM_i/R$ が得られる。逆に、直和の普遍性から $\mu_i$ の族は $\beta'\colon\bigoplus_iM_i\to M$ を定め、$\beta'(\iota_i(x)-\iota_j(\varphi_{ij}(x)))=\mu_i(x)-\mu_j(\varphi_{ij}(x))=0$ なので $\beta'$ は $\beta\colon\bigoplus_iM_i/R\to M$ を誘導する。$\beta\circ\alpha\circ\mu_i=\mu_i$ より $M$ の普遍性から $\beta\circ\alpha=\operatorname{id}$、また $\alpha\circ\beta\circ\pi\circ\iota_i=\pi\circ\iota_i$ で $\pi\circ\iota_i$ の像が $\bigoplus M_i/R$ を生成するので $\alpha\circ\beta=\operatorname{id}$。$\square$

AM69 第 2 章演習 14 は後者の $\bigoplus_iM_i/R$ を定義として採用している。構成から直ちに従う次の事実が、帰納極限に関するほとんどの議論の出発点である。

帰納極限の元の表示

$(M_i,\varphi_{ij})$ を $A$ 加群の有向集合 $I$ 上の帰納系、$M=\varinjlim M_i$ とする。

  1. $M$ の任意の元は、ある $i\in I$ とある $x\in M_i$ により $\mu_i(x)$ と書ける。また有限個の元 $\mu_{i_1}(x_1),\dots,\mu_{i_n}(x_n)$ は、共通の添字 $k\ge i_1,\dots,i_n$ をとって $\mu_k(\varphi_{i_1k}(x_1)),\dots,\mu_k(\varphi_{i_nk}(x_n))$ と書き直せる。
  2. $x\in M_i$ について、$\mu_i(x)=0$ であることと、ある $j\ge i$ で $\varphi_{ij}(x)=0$ となることは同値である。
  3. 各 $\varphi_{ij}$ が単射ならば各 $\mu_i$ は単射であり、$M$ は部分加群 $\mu_i(M_i)$ の有向な($i\le j$ ならば $\mu_i(M_i)\subset\mu_j(M_j)$ となる)族の和集合とみなせる。

1 は prop-direct-limit-module の構成と、有限個の添字の共通上界の存在(有向性)から従う。2 について、$\mu_i(x)=0=\mu_i(0)$ は $(i,x)\sim(i,0)$、すなわちある $j\ge i$ で $\varphi_{ij}(x)=\varphi_{ij}(0)=0$ となることと同値である。3 は 2 から直ちに従う。$\square$

直感

帰納極限は「だんだん大きくなる(あるいは、だんだん精密になる)対象の族の行き着く先」である。もっとも素朴な場合は、増大する部分加群の列 $M_1\subset M_2\subset\cdots$ の和集合 $\bigcup_nM_n$ で、推移射は包含写像、帰納極限は和集合そのものである(lem-direct-limit-element の 3)。推移射が単射でない場合には、$M_i$ の元のうち「先で消えるもの」は極限で $0$ になり(lem-direct-limit-element の 2)、$M_i$ の元と $M_j$ の元は「十分先で一致する」とき同一視される。
有向性が本質的である。有向でない添字圏上の余極限(たとえば余等化子や押し出し)も「貼り合わせ」だが、そこでは互いに異なる元が新しい関係で強引に同一視されることがあり、lem-direct-limit-element のような単純な元の記述や、あとで述べる完全性(thm-direct-limit-exact)は成り立たない(ex-direct-limit-non-directed)。有向集合の上では「有限個のものはいつでも 1 つの $M_k$ の中で比べられる」ので、有限個の元や有限個の等式に関する性質は極限に遺伝する。これが、帰納極限がテンソル積・核・余核・ホモロジーなど「有限的な」構成と交換する理由である。

例と反例

層の茎

$X$ を位相空間、$\mathcal{F}$ を $X$ 上のアーベル群の前層とし、$x\in X$ とする。$x$ の開近傍の全体 $I_x$ に「$U\le V\iff V\subset U$」で順序を入れると、$U\cap V$ が $U,V$ の共通の上界なので $I_x$ は有向集合であり、制限写像 $\mathcal{F}(U)\to\mathcal{F}(V)$ を推移射として $(\mathcal{F}(U))_{U\in I_x}$ は帰納系になる。その帰納極限
$$ \mathcal{F}_x:=\varinjlim_{U\ni x}\mathcal{F}(U) $$
が $\mathcal{F}$ の $x$ における茎である。lem-direct-limit-element により、$\mathcal{F}_x$ の元は「ある開近傍 $U$ 上の切断 $s\in\mathcal{F}(U)$」の類であり、$s\in\mathcal{F}(U)$ と $t\in\mathcal{F}(V)$ が同じ類(芽)を定めるのは、ある開近傍 $W\subset U\cap V$ で $s|_W=t|_W$ となるときである。また $s\in\mathcal{F}(U)$ の芽が $0$ であるのは、$x$ のある開近傍で $s$ が $0$ になるときである。層の射の単射性・全射性・完全性は茎で判定されるが、それが可能なのは茎が(有向な)帰納極限であり、帰納極限が完全関手だから(thm-direct-limit-exact)である。

有理数と局所化

正の整数の全体 $\mathbb{N}_{\ge1}$ に整除関係 $n\le m\iff n\mid m$ で順序を入れると、$\operatorname{lcm}(n,m)$ が共通の上界なので有向集合である。各 $n$ に $M_n:=\mathbb{Z}$ を対応させ、$n\mid m$ のとき推移射 $\varphi_{nm}\colon\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}$ を $m/n$ 倍とすると帰納系になり、
$$ \varinjlim_n\mathbb{Z}\cong\mathbb{Q},\qquad \mu_n(x)=\frac{x}{n} $$
である。実際 $\mu_n$ の族は両立し($\frac{(m/n)x}{m}=\frac{x}{n}$)、普遍性から得られる $\nu\colon\varinjlim\mathbb{Z}\to\mathbb{Q}$ は、任意の有理数 $x/n$ が $\mu_n(x)$ の像なので全射であり、$\nu(\mu_n(x))=x/n=0$ なら $x=0$、すなわち $\mu_n(x)=0$ であり、任意の元が $\mu_n(x)$ の形なので(lem-direct-limit-element の 1)単射である。これは「$\mathbb{Q}=\varinjlim\frac1n\mathbb{Z}$、すなわち $\mathbb{Q}$ は部分群 $\frac1n\mathbb{Z}\subset\mathbb{Q}$ の増大する有向族の和集合である」と言い換えられる。
同じ構成が局所化を与える。$A$ を環、$f\in A$ とすると、$\mathbb{N}$ 上の帰納系 $A\xrightarrow{f}A\xrightarrow{f}A\xrightarrow{f}\cdots$($M_n=A$、$\varphi_{nm}=f^{m-n}$ 倍)の帰納極限は $A_f=A[1/f]$ であり、$\mu_n(a)=a/f^n$ である。全射性は明らかで、単射性は「$a/f^n=0$ $\iff$ ある $N$ で $f^Na=0$ $\iff$ $\varphi_{n,n+N}(a)=0$」からわかる。より一般に、乗法的集合(積閉集合)$S$ による局所化は $S^{-1}M\cong\varinjlim_{f\in S}M_f$($S$ に整除で順序を入れる)と書ける。

捩れ群と代数閉包

$p$ を素数とする。$\mathbb{N}$ 上の帰納系 $\mathbb{Z}/p\xrightarrow{p}\mathbb{Z}/p^2\xrightarrow{p}\mathbb{Z}/p^3\xrightarrow{p}\cdots$(推移射は $x\bmod p^n\mapsto px\bmod p^{n+1}$。これは単射である)の帰納極限は
$$ \varinjlim_n\mathbb{Z}/p^n\cong\mathbb{Q}_p/\mathbb{Z}_p\cong\mathbb{Z}[1/p]/\mathbb{Z} $$
である。実際 $\mathbb{Z}/p^n\to\mathbb{Z}[1/p]/\mathbb{Z}$、$x\mapsto x/p^n$ は単射で像は $p^{-n}\mathbb{Z}/\mathbb{Z}$、これらは両立し、和集合は全体であるから lem-direct-limit-element の 3 により同型である。また $\mathbb{Z}[1/p]\to\mathbb{Q}_p/\mathbb{Z}_p$ は全射($\mathbb{Q}_p$ の元は $p^n$ 倍すれば $\mathbb{Z}_p$ に入り、$\mathbb{Z}_p$ の元は $\mathbb{Z}$ の元で $p^n$ を法として近似できる)で核は $\mathbb{Z}_p\cap\mathbb{Z}[1/p]=\mathbb{Z}$ なので、2 番目の同型が従う。この群は Prüfer群ともよばれ、p進整数環 $\mathbb{Z}_p=\varprojlim\mathbb{Z}/p^n$ が射影極限であるのと対照的である。
体 $k$ の代数閉包 $\bar{k}$ は、$\bar{k}$ に含まれる $k$ の有限次拡大体全体を包含で順序づけた有向集合(2 つの有限次拡大の合成体が共通の上界)上の帰納系の帰納極限である。とくに $\bar{\mathbb{F}}_p=\varinjlim_n\mathbb{F}_{p^n}$($n$ は整除で順序づけ、$n\mid m$ のとき $\mathbb{F}_{p^n}\subset\mathbb{F}_{p^m}$)である。同様に、任意の体はその有限生成部分体の帰納極限であり、任意の環はその有限生成部分環($\mathbb{Z}$ 上有限生成なので Noether環)の帰納極限である。

反例:有向でない図式の余極限は完全でない

添字圏を有向集合以外にとると、余極限をとる操作は一般に完全でない。$J$ を対象 $a,b$ と 2 本の平行な射 $a\rightrightarrows b$ からなる圏とすると、$J$ 上の図式 $F\colon(F(a)\rightrightarrows F(b))$ の余極限は余等化子 $\operatorname{coeq}(f,g)=F(b)/\operatorname{im}(f-g)$ である。アーベル群の図式
$$ F'\colon\ (0\rightrightarrows\mathbb{Z}),\qquad F\colon\ (\mathbb{Z}\rightrightarrows\mathbb{Z},\ f=0,\ g=\operatorname{id}),\qquad F''\colon\ (\mathbb{Z}\rightrightarrows0) $$
を考えると、$0\to F'\to F\to F''\to0$ は図式の短完全列(各対象ごとに短完全列)である。ところが余極限は $\operatorname{colim}F'=\mathbb{Z}$、$\operatorname{colim}F=\mathbb{Z}/\operatorname{im}(0-\operatorname{id})=0$、$\operatorname{colim}F''=0$ であり、誘導される列 $0\to\mathbb{Z}\to0\to0\to0$ は $\mathbb{Z}$ の位置で完全でない。すなわち余極限は右完全(thm-direct-limit-exact の証明の前半参照)だが、有向でない添字圏では単射を保たない。余核や押し出しも同じ理由で単射を保たない。この例が破っているのは lem-direct-limit-element の 2 に相当する記述で、$F(b)=\mathbb{Z}$ の元 $1$ は「先で $0$ に送られる」わけではないのに余極限で $0$ になる。

反例:位相空間の帰納極限の位相

位相空間の圏でも帰納極限は存在し、その台集合は集合の帰納極限 $\bigsqcup X_i/\sim$、位相は標準写像 $\mu_i\colon X_i\to X$ をすべて連続にする最も細かい位相(終位相:$U\subset X$ が開 $\iff$ すべての $i$ で $\mu_i^{-1}(U)$ が $X_i$ の開集合)である。この位相は「期待される」位相と一致しないことがある。

  1. $X_n:=\{0\}\cup\{x\in\mathbb{R}\mid|x|\ge1/n\}$ に $\mathbb{R}$ の相対位相を入れ、包含写像を推移射とする $\mathbb{N}_{\ge1}$ 上の帰納系を考える。集合としては $\varinjlim X_n=\bigcup_nX_n=\mathbb{R}$ だが、$\{0\}\cap X_n=\{0\}$ は各 $X_n$ で開($0$ は $X_n$ の孤立点)なので、$\{0\}$ は帰納極限の位相で開集合である。よって $\varinjlim X_n$ は $\mathbb{R}$ と同相でない($0$ が孤立した $\mathbb{R}$ である)。部分空間の増大列の位相空間としての帰納極限は、和集合に相対位相を入れたものと一般に異なる。
  2. $\mathbb{R}^\infty:=\varinjlim_n\mathbb{R}^n$($\mathbb{R}^n\hookrightarrow\mathbb{R}^{n+1}$、$x\mapsto(x,0)$)を考える。台集合は「有限個を除いて $0$ の実数列」の集合で、$\mathbb{R}^{\mathbb{N}}$ の部分集合だが、帰納極限の位相は $\mathbb{R}^{\mathbb{N}}$ の直積位相からの相対位相より真に細かく、原点で第1可算公理をみたさない(したがって距離化可能空間でない)。実際、$U:=\{x\in\mathbb{R}^\infty\mid|x_k|<1/k\ (\forall k)\}$ は $U\cap\mathbb{R}^n$ が各 $n$ で開なので帰納極限の位相で開だが、直積位相では開でない。さらに、原点の可算個の近傍 $V_1,V_2,\dots$ が与えられたとする。各 $m$ について $V_m\cap\mathbb{R}^m$ は $\mathbb{R}^m$ における原点の近傍なので、第 $m$ 座標が $0$ でない点 $p_m\in V_m\cap\mathbb{R}^m$ がとれる。$W:=\mathbb{R}^\infty\setminus\{p_1,p_2,\dots\}$ とおくと、$p_m\notin\mathbb{R}^n$($m>n$)より $W\cap\mathbb{R}^n=\mathbb{R}^n\setminus\{p_1,\dots,p_n\}$ は開であり、$W$ は原点を含む開集合だが、$p_m\in V_m\setminus W$ よりどの $V_m$ も $W$ に含まれない。よって原点は可算な近傍基をもたない。

性質

以下、$A$ は環、添字集合 $I$ は有向集合とする。帰納系の射 $(f_i)\colon(M_i)\to(N_i)$ は、普遍性により帰納極限の間の準同型 $\varinjlim f_i\colon\varinjlim M_i\to\varinjlim N_i$($\mu_i(x)\mapsto\mu'_i(f_i(x))$)を誘導し、$\varinjlim$ は $I$ 上の帰納系の圏から $A$ 加群の圏への関手になる。帰納系の列 $0\to(M'_i)\to(M_i)\to(M''_i)\to0$ が完全であるとは、各 $i$ で $0\to M'_i\to M_i\to M''_i\to0$ が完全列であることをいう。

帰納極限の完全性

$A$ 加群の有向集合 $I$ 上の帰納系の完全列 $0\to(M'_i)\xrightarrow{(f_i)}(M_i)\xrightarrow{(g_i)}(M''_i)\to0$ に対し、誘導される列
$$ 0\longrightarrow\varinjlim M'_i\xrightarrow{\ f\ }\varinjlim M_i\xrightarrow{\ g\ }\varinjlim M''_i\longrightarrow0 $$
は完全である。すなわち $\varinjlim$ は完全関手である。

$\mu'_i,\mu_i,\mu''_i$ をそれぞれの標準射とする。
$g$ の全射性:$\varinjlim M''_i$ の元は lem-direct-limit-element により $\mu''_i(z)$($z\in M''_i$)と書け、$g_i$ が全射なので $z=g_i(y)$、$y\in M_i$ となり、$g(\mu_i(y))=\mu''_i(g_i(y))=\mu''_i(z)$。
$\operatorname{im}f=\ker g$:$g\circ f=\varinjlim(g_i\circ f_i)=0$ より $\operatorname{im}f\subset\ker g$。逆に $\mu_i(y)\in\ker g$ とすると $\mu''_i(g_i(y))=0$ なので、lem-direct-limit-element の 2 によりある $j\ge i$ で $\varphi''_{ij}(g_i(y))=g_j(\varphi_{ij}(y))=0$。$M_j$ での完全性から $\varphi_{ij}(y)=f_j(x)$、$x\in M'_j$ となり、$\mu_i(y)=\mu_j(\varphi_{ij}(y))=\mu_j(f_j(x))=f(\mu'_j(x))\in\operatorname{im}f$。
$f$ の単射性:$f(\mu'_i(x))=\mu_i(f_i(x))=0$ とすると、lem-direct-limit-element の 2 によりある $j\ge i$ で $\varphi_{ij}(f_i(x))=f_j(\varphi'_{ij}(x))=0$。$f_j$ が単射なので $\varphi'_{ij}(x)=0$、よって $\mu'_i(x)=\mu'_j(\varphi'_{ij}(x))=0$。
全射性と $\operatorname{im}f=\ker g$ の証明は右完全性であり、これは帰納極限が余極限であることだけから従う一般的事実である(余極限は余核と交換する)。単射性の証明で lem-direct-limit-element の 2、すなわち $I$ の有向性を使った。同じ証明は AM69 第 2 章演習 19、Wei94 Theorem 2.6.15 にある。$\square$

核・余核・ホモロジーとの交換

帰納系の射 $(f_i)\colon(M_i)\to(N_i)$ に対し、$\varinjlim\ker f_i\cong\ker(\varinjlim f_i)$、$\varinjlim\operatorname{coker}f_i\cong\operatorname{coker}(\varinjlim f_i)$、$\varinjlim\operatorname{im}f_i\cong\operatorname{im}(\varinjlim f_i)$ である。とくに、$A$ 加群の鎖複体の有向な帰納系 $(C_{\bullet,i})$ に対し、ホモロジーは帰納極限と交換する:$H_n(\varinjlim_iC_{\bullet,i})\cong\varinjlim_iH_n(C_{\bullet,i})$。

$0\to\ker f_i\to M_i\to\operatorname{im}f_i\to0$ と $0\to\operatorname{im}f_i\to N_i\to\operatorname{coker}f_i\to0$ は帰納系の完全列なので、thm-direct-limit-exact により極限をとっても完全であり、$\varinjlim M_i\to\varinjlim\operatorname{im}f_i\to\varinjlim N_i$ の合成が $\varinjlim f_i$ であることから 3 つの同型が従う。ホモロジーは $\ker d_n/\operatorname{im}d_{n+1}$ であり、核・像・商(余核)がそれぞれ帰納極限と交換するので、ホモロジーも交換する。$\square$

テンソル積との交換

$(M_i,\varphi_{ij})$ を $A$ 加群の帰納系、$N$ を $A$ 加群とする。$(M_i\otimes_AN,\varphi_{ij}\otimes1)$ は帰納系であり、標準的な同型
$$ \varinjlim_i(M_i\otimes_AN)\cong\bigl(\varinjlim_iM_i\bigr)\otimes_AN $$
がある。同様に、帰納極限は直和と交換する:$\varinjlim_i\bigoplus_\lambda M_{i,\lambda}\cong\bigoplus_\lambda\varinjlim_iM_{i,\lambda}$。

$M:=\varinjlim M_i$、標準射を $\mu_i$ とする。$\mu_i\otimes1\colon M_i\otimes N\to M\otimes N$ の族は両立するので、普遍性から $\alpha\colon\varinjlim(M_i\otimes N)\to M\otimes N$ が得られる。逆向きに、写像 $M\times N\to\varinjlim(M_i\otimes N)$ を「$x=\mu_i(x_i)$ のとき $(x,n)\mapsto\lambda_i(x_i\otimes n)$」($\lambda_i$ は $M_i\otimes N\to\varinjlim(M_i\otimes N)$ の標準射)で定める。これが well-defined であることを示す。$\mu_i(x_i)=\mu_j(x_j)$ なら、ある $k\ge i,j$ で $\varphi_{ik}(x_i)=\varphi_{jk}(x_j)$ であり、$\lambda_i(x_i\otimes n)=\lambda_k(\varphi_{ik}(x_i)\otimes n)=\lambda_k(\varphi_{jk}(x_j)\otimes n)=\lambda_j(x_j\otimes n)$。この写像は、2 つの $x$ を共通の $M_k$ の元で表せば双線型写像であることがわかるので、$\beta\colon M\otimes N\to\varinjlim(M_i\otimes N)$ を誘導する。$\alpha\beta(\mu_i(x_i)\otimes n)=\alpha\lambda_i(x_i\otimes n)=\mu_i(x_i)\otimes n$、$\beta\alpha\lambda_i(x_i\otimes n)=\beta(\mu_i(x_i)\otimes n)=\lambda_i(x_i\otimes n)$ であり、両辺を生成する元の上で一致するので $\alpha,\beta$ は互いに逆である。直和との交換は、$\bigoplus_\lambda M_{i,\lambda}$ を有限部分和の帰納極限とみなして帰納極限どうしが交換すること(rem-direct-limit-interchange)を使うか、同じく元の表示で直接確かめればよい。$\square$

より概念的には、$-\otimes_AN$ は $\operatorname{Hom}_A(N,-)$ の左随伴関手であり、左随伴はすべての余極限を保つ(随伴関手。余極限(圏論) の記事の命題「左随伴は余極限を保存する」)。上の証明はこの一般論を帰納極限に限って元の表示で書き下したものである。

Homとの交換

$(M_i)$ を $A$ 加群の帰納系、$N,P$ を $A$ 加群とする。

  1. $\operatorname{Hom}_A(\varinjlim_iM_i,N)\cong\varprojlim_i\operatorname{Hom}_A(M_i,N)$。ここで右辺は $\operatorname{Hom}(\varphi_{ij},N)$ を推移射とする射影系の射影極限である。
  2. $P$ が有限表示加群ならば、標準写像 $\varinjlim_i\operatorname{Hom}_A(P,M_i)\to\operatorname{Hom}_A(P,\varinjlim_iM_i)$ は同型である。

1 は帰納極限の普遍性の言い換えである。$\operatorname{Hom}(\varinjlim M_i,N)$ の元 $\nu$ は両立する族 $(\nu\circ\mu_i)_i$ を定め、逆に両立する族 $(\nu_i)_i$ はただ 1 つの $\nu$ を定める。両立する族の全体がちょうど右辺の射影極限(射影系の元の族で推移射と両立するものの集合)である。
2 は $P=A^n$ のとき lem-direct-limit-element から直ちに従う($\operatorname{Hom}(A^n,M)=M^n$ で、有限個の元は共通の $M_k$ から来て、有限個の元が $0$ になることも共通の $M_k$ で起こる)。一般の有限表示加群 $P=\operatorname{coker}(A^m\to A^n)$ については、$\operatorname{Hom}(-,M)$ が左完全であることから $0\to\operatorname{Hom}(P,M_i)\to\operatorname{Hom}(A^n,M_i)\to\operatorname{Hom}(A^m,M_i)$ が完全であり、帰納極限が完全(thm-direct-limit-exact)なので極限をとっても完全で、右の 2 項で同型が成り立ち、左端はどちらの行でも右端の射の核なので、左端でも同型である。$\square$

有限表示の仮定が外せないこと

prop-direct-limit-hom の 2 で有限表示の仮定は外せない。ex-direct-limit-localization の $\mathbb{Q}=\varinjlim_n\mathbb{Z}$(推移射は $m/n$ 倍、$\mu_n(x)=x/n$)と $P=\mathbb{Q}$ をとると、$\operatorname{Hom}_\mathbb{Z}(\mathbb{Q},\mathbb{Z})=0$($\mathbb{Q}$ の元はどの整数でも割れるが $\mathbb{Z}$ の $0$ でない元はそうでない)なので左辺 $\varinjlim_n\operatorname{Hom}(\mathbb{Q},\mathbb{Z})=0$ だが、右辺は $\operatorname{Hom}(\mathbb{Q},\mathbb{Q})\cong\mathbb{Q}\neq0$ である。逆に、$\operatorname{Hom}_A(P,-)$ がすべての有向な帰納極限と交換する $A$ 加群 $P$ は有限表示加群に限る(Stacks Algebra 章 Characterizing finite and finitely presented modules の節)。

有限生成部分加群の帰納極限

任意の $A$ 加群 $M$ は、その有限生成加群である部分加群全体(包含で順序づける)を添字とする帰納系の帰納極限である:$M\cong\varinjlim_{M'\subset M,\ M'\text{ 有限生成}}M'$。さらに $M$ は有限表示加群の有向な帰納極限としても書ける。

有限生成部分加群 $M',M''$ に対し $M'+M''$ は有限生成で両方を含むので、添字集合は有向である。推移射は包含写像で単射だから、lem-direct-limit-element の 3 により $\varinjlim M'$ は $M$ の部分加群 $M'$ の和集合、すなわち $M$ 自身である($M$ の各元 $x$ は $Ax$ に属する)。
有限表示加群の極限としての表示:添字を「有限個の元 $x_1,\dots,x_n\in M$ と、それらの間の有限個の関係 $r_1,\dots,r_m\in\ker(A^n\to M)$」の組 $\sigma$ 全体とし、$\sigma\le\sigma'$ を「元の列と関係の列がともに $\sigma'$ のものに含まれる」で定めると有向である。各 $\sigma$ に有限表示加群 $P_\sigma:=A^n/(r_1,\dots,r_m)$ と標準写像 $P_\sigma\to M$ を対応させると帰納系になり、標準射 $\varinjlim P_\sigma\to M$ は、全射性は明らかで、単射性は「$P_\sigma$ の元 $\bar{a}$ が $M$ で $0$ なら $a\in\ker(A^n\to M)$ であり、関係 $a$ を追加した $\sigma'\ge\sigma$ で $\bar{a}\mapsto0$」により lem-direct-limit-element の 2 から従う。$\square$

極限との交換とフィルター余極限
  1. 帰納極限どうしは交換する:$I\times J$ 上の帰納系(2 重帰納系)に対し $\varinjlim_i\varinjlim_jM_{ij}\cong\varinjlim_j\varinjlim_iM_{ij}\cong\varinjlim_{(i,j)}M_{ij}$。これは余極限一般の性質である(Mac98 IX.2)。
  2. 集合・アーベル群・$A$ 加群の圏では、有向な帰納極限は有限極限(圏論)(直積、核、等化子、ファイバー積)と交換する(Mac98 IX.2、Stacks Categories 章の Filtered colimits の節)。thm-direct-limit-exact の単射性の部分はその特別な場合である。
  3. 添字を有向集合からフィルター圏(任意の 2 対象が共通の行き先をもち、任意の平行な 2 射が等化される小圏)に広げた余極限をフィルター余極限という。フィルター余極限も上の性質(lem-direct-limit-element、thm-direct-limit-exact、有限極限との交換)をすべてみたし、さらに任意のフィルター圏上の余極限はある有向集合上の帰納極限に書き直せる(Mac98 IX.1、Stacks Categories 章の Filtered colimits の節)。
層とコホモロジーにおける帰納極限

位相空間 $X$ 上の層の帰納系 $(\mathcal{F}_i)$ に対し、開集合ごとの帰納極限 $U\mapsto\varinjlim\mathcal{F}_i(U)$ は前層であるが一般には層でなく、層の圏における帰納極限はその層化である。ただし $X$ がNoether空間(開集合について昇鎖条件をみたす空間。たとえば Noether スキーム)ならば、この前層はすでに層であり(Har77 II 演習 1.11)、さらに層コホモロジーは帰納極限と交換する:$H^n(X,\varinjlim_i\mathcal{F}_i)\cong\varinjlim_iH^n(X,\mathcal{F}_i)$(Har77 III 2.9)。この事実は、たとえば有効因子 $D$ に沿って極をもつ切断の空間 $\Gamma(X\setminus D,\mathcal{F})=\varinjlim_n\Gamma(X,\mathcal{F}(nD))$($X$ が Noether スキーム、$D$ が有効 Cartier因子、$\mathcal{F}$ が準連接層のとき。Har77 II 補題 5.14 と同じ内容)のコホモロジーを計算するときに用いられ、代数的 de Rham コホモロジーの比較定理(de Rhamコホモロジー)などの基礎になる。エタール位相など Grothendieck位相の上でも、準コンパクト準分離なスキームの上では層のコホモロジーは帰納極限と交換する(Stacks Étale Cohomology 章の Colimits の節)。

関連項目

参考文献

[1]
Michael F. Atiyah, Ian G. Macdonald, Introduction to Commutative Algebra, Addison-Wesley(Westview Press 版), 1969, Chapter 2, Exercises 14–20(帰納極限の構成・完全性・テンソル積との交換)
[2]
Saunders Mac Lane, Categories for the Working Mathematician, Springer, 1998, III.3(余極限)、IX.1(フィルター極限)、IX.2(極限の交換)
[3]
Charles A. Weibel, An Introduction to Homological Algebra, Cambridge University Press, 1994, §2.6(フィルター余極限の完全性、Theorem 2.6.15)、Appendix A.5
[4]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer, 1977, II.1(茎、演習 1.11)、II 補題 5.14、III 命題 2.9(Noether 空間上のコホモロジーと帰納極限の交換)
[5]
The Stacks Project Authors, The Stacks Project, The Stacks Project Authors, 閲覧日 2026年9月22日

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