Kolmogorovの0-1法則

同義語:コルモゴロフの0-1法則Kolmogorovの零一法則Kolmogorov's zero-one lawKolmogorov 0-1 law

概要

Kolmogorovの0-1法則(Kolmogorov's zero-one law)とは、独立な σ-代数の列(たとえば互いに独立な確率変数の列)について、どの $n$ についても $n$ 番目以降だけで決まる事象(末尾事象)の確率は $0$ か $1$ であるという定理である。末尾事象は最初の有限個の項のどれとも独立で、したがって自分自身と独立になることから従う。帰結として、末尾σ-代数について可測な量(部分和を $a_n\to\infty$ で割った上極限、乱数係数の冪級数の収束半径など)はほとんど確実に定数であり、級数が収束する確率は $0$ か $1$ である(どちらの値かは別の議論で決める)。独立性や末尾性を外すと成り立たない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 確率空間, σ-代数, 独立性(確率論), Dynkinのπ-λ定理

Kolmogorov の 0-1 法則(Kolmogorov's zero-one law)は、互いに独立な確率変数の列について、「有限個の項を変えても起こるかどうかが変わらない事象」の確率は $0$ か $1$ しかない、という定理である。たとえば級数 $\sum_nX_n$ が収束するという事象、$X_n\in B_n$ が無限回起こるという事象、$\limsup_n(X_1+\cdots+X_n)/n>0$ という事象はどれもこの形で、確率は $0$ か $1$ に決まる。
このような事象の全体を末尾σ-代数(tail σ-algebra)という。定理の内容は、独立な列の末尾σ-代数は確率の上で自明である、ということである。証明の要は、末尾の事象が「最初の有限個の項」のどれとも独立であり、したがって列全体から決まる事象、とくに自分自身と独立になることにある。$P(A)=P(A\cap A)=P(A)^2$ から $P(A)\in\{0,1\}$ が従う。
定理は確率が $0$ と $1$ のどちらであるかは教えない。どちらかを決めるには、Borel–Cantelliの補題 や大数の法則のような別の議論が要る。この記事では、末尾σ-代数を定義して定理を証明し、帰結として末尾σ-代数について可測な量がほとんど確実に定数であることを示す。応用として、独立な事象の列、級数の収束、乱数を係数とする冪級数の収束半径、独立な列のずらしのエルゴード性を扱い、最後に独立性や末尾性を外すと結論が成り立たない例と、同じ分布の列についての Hewitt–Savage の 0-1 法則を述べる。
以下、$(\Omega,\mathcal F,P)$ は確率空間とする。族 $\mathcal G$ の生成する σ-代数を $\sigma(\mathcal G)$ と書き、σ-代数の族 $(\mathcal F_i)_{i\in I}$ については $\sigma(\mathcal F_i:i\in I):=\sigma\bigl(\bigcup_{i\in I}\mathcal F_i\bigr)$ とする。実数値の確率変数 $X$ の生成する σ-代数を $\sigma(X):=\{X^{-1}(B)\mid B\text{ は Borel 集合}\}$ と書く。可測空間 $(E,\mathcal E)$ に値をとる $X$ についても $\sigma(X):=\{X^{-1}(B)\mid B\in\mathcal E\}$ とする。

末尾σ-代数

独立なσ-代数の族

$\mathcal F$ に含まれる σ-代数の族 $(\mathcal F_i)_{i\in I}$ が独立であるとは、相異なる有限個の添字 $i_1,\dots,i_m\in I$ と $A_k\in\mathcal F_{i_k}$ のすべてについて
$$ P(A_1\cap\cdots\cap A_m)=P(A_1)\cdots P(A_m) $$
が成り立つことをいう。確率変数の族 $(X_i)_{i\in I}$ が独立であるとは、$(\sigma(X_i))_{i\in I}$ が独立であることをいう。

事象の族 $(A_i)_{i\in I}$ が 独立性(確率論) の定義「事象の族の独立性」の意味で互いに独立であることは、$\sigma(\{A_i\})=\{\emptyset,A_i,\Omega\setminus A_i,\Omega\}$ の族が独立であることと同値である(同じ記事の定理「補事象に取り替えても独立」)。

末尾σ-代数

$\mathcal F_1,\mathcal F_2,\dots$ を $\mathcal F$ に含まれる σ-代数の列とし、$\mathcal T_n:=\sigma(\mathcal F_m:m\ge n)$ とおく。
$$ \mathcal T:=\bigcap_{n\ge1}\mathcal T_n $$
を列 $(\mathcal F_n)$ の末尾σ-代数といい、$\mathcal T$ の元を末尾事象(tail event)という。確率変数の列 $(X_n)$ については $\mathcal F_n:=\sigma(X_n)$ とする。

$\mathcal T_1\supset\mathcal T_2\supset\cdots$ であり、σ-代数の共通部分は σ-代数なので(σ-代数 の命題「σ-代数の共通部分」)、$\mathcal T$ は σ-代数である。$A\in\mathcal T$ は、どの $n$ についても「$n$ 番目以降の項だけで決まる」事象である。$(X_n)$ の場合、$A$ が起こるかどうかは有限個の $X_1,\dots,X_{n-1}$ の値を変えても変わらない、と読める。

末尾事象と末尾σ-代数について可測な量

$X_1,X_2,\dots$ を実数値の確率変数とし、$S_n:=X_1+\cdots+X_n$ とおく。

  1. Borel 集合 $B_n$ について、事象 $\{X_n\in B_n\text{ が無限個の }n\text{ で成り立つ}\}=\bigcap_{N\ge1}\bigcup_{n\ge N}\{X_n\in B_n\}$ は末尾事象である。$N$ について減少する集合の共通部分なので、$N\ge k$ だけの共通部分としても同じ集合であり、それは $\mathcal T_k$ に属する。
  2. $\{\sum_nX_n\text{ が収束する}\}$ は末尾事象である。Cauchy の判定法により、この事象は各 $k$ について
    $$ \bigcap_{r\ge1}\bigcup_{N> k}\bigcap_{m,n\ge N}\Bigl\{\Bigl|\sum_{j=m+1}^{n}X_j\Bigr|<\frac1r\Bigr\}\qquad(m< n) $$
    と書け、$X_{k+1},X_{k+2},\dots$ だけで決まるので $\mathcal T_{k+1}$ に属する。
  3. $a_n>0$、$a_n\to\infty$ とする。$[-\infty,\infty]$ に値をとる $Y:=\limsup_nS_n/a_n$ は $\mathcal T$-可測である。実際、各 $k$ について $S_k/a_n\to0$($n\to\infty$)なので $Y=\limsup_n(S_n-S_k)/a_n$ であり、右辺は $X_{k+1},X_{k+2},\dots$ だけで決まるので $\mathcal T_{k+1}$-可測である。同じ理由で $\liminf_nS_n/a_n$ も $\mathcal T$-可測であり、$\{\lim_nS_n/n\text{ が存在する}\}$ は末尾事象である。
  4. $\{X_1=1\}$ や $\{S_n>0\text{ が無限個の }n\text{ で成り立つ}\}$ は、一般には末尾事象でない(下の節「反例:条件を外すと成り立たない」の表の 2・3 行目)。級数の和 $\sum_nX_n$ も、収束するという事象は末尾事象だが、和の値は $X_1$ を変えると変わるので一般には $\mathcal T$-可測でない。

主定理

前の有限個と後ろの独立性

σ-代数の列 $\mathcal F_1,\mathcal F_2,\dots$ が独立ならば、各 $k\ge1$ について $\mathcal G_k:=\sigma(\mathcal F_1,\dots,\mathcal F_k)$ と $\mathcal T_{k+1}=\sigma(\mathcal F_m:m>k)$ は独立である。

共通部分の π 系で確かめる

$\mathcal P:=\{A_1\cap\cdots\cap A_k\mid A_i\in\mathcal F_i\}$、$\mathcal Q:=\{B_{k+1}\cap\cdots\cap B_{k+j}\mid j\ge1,\ B_m\in\mathcal F_m\}$ とおく。
$\mathcal P$ は共通部分で閉じている(π 系である)。$\mathcal Q$ の 2 つの元は、短いほうに $B_m:=\Omega$ を補えば同じ長さ $j$ で書けるので、その共通部分は各 $m$ ごとの共通部分 $B_m\cap B_m'\in\mathcal F_m$ をとった $\mathcal Q$ の元であり、$\mathcal Q$ も π 系である。$A_i$ を 1 つ以外 $\Omega$ にとれば $\mathcal F_i\subset\mathcal P$ であり、$\mathcal P\subset\mathcal G_k$ なので $\sigma(\mathcal P)=\mathcal G_k$ である。同様に $\sigma(\mathcal Q)=\mathcal T_{k+1}$ である。
$A=A_1\cap\cdots\cap A_k\in\mathcal P$、$B=B_{k+1}\cap\cdots\cap B_{k+j}\in\mathcal Q$ について、相異なる添字 $1,\dots,k+j$ に def-kz-independent を使うと
$$ P(A\cap B)=\prod_{i=1}^kP(A_i)\prod_{m=k+1}^{k+j}P(B_m)=P(A)\,P(B) $$
である(2 つ目の等号も同じ定義による)。よって π 系 $\mathcal P,\mathcal Q$ は独立であり、Dynkinのπ-λ定理 の命題「π系の独立性はσ-代数に広がる」($m=2$ の場合)により $\sigma(\mathcal P)=\mathcal G_k$ と $\sigma(\mathcal Q)=\mathcal T_{k+1}$ は独立である。$\square$

Kolmogorov の 0-1 法則

σ-代数の列 $\mathcal F_1,\mathcal F_2,\dots$ が独立ならば、その末尾σ-代数 $\mathcal T$ のすべての元 $A$ について $P(A)=0$ または $P(A)=1$ である。とくに、独立な確率変数の列 $X_1,X_2,\dots$ の末尾事象の確率は $0$ か $1$ である。

末尾事象は自分自身と独立

$A\in\mathcal T$ とする。各 $k$ について $A\in\mathcal T_{k+1}$ なので、lem-kz-blocks により、すべての $C\in\mathcal G_k$ について $P(A\cap C)=P(A)P(C)$ である。
$\mathcal C:=\bigcup_{k\ge1}\mathcal G_k$ とおく。$\mathcal G_1\subset\mathcal G_2\subset\cdots$ なので、$\mathcal C$ の 2 つの元は共通の $\mathcal G_k$ に入り、その共通部分も $\mathcal G_k\subset\mathcal C$ に入る。よって $\mathcal C$ は π 系で、$\sigma(\mathcal C)=\sigma(\mathcal F_m:m\ge1)=\mathcal T_1$ である。1 元の族 $\{A\}$ も π 系であり、$\{A\}$ と $\mathcal C$ は独立である。Dynkinのπ-λ定理 の命題「π系の独立性はσ-代数に広がる」により、$\sigma(\{A\})$ と $\mathcal T_1$ は独立である。
$A\in\mathcal T\subset\mathcal T_1$ なので、$A$ は自分自身と独立であり、$P(A)=P(A\cap A)=P(A)^2$ である。$x=x^2$ を満たす実数は $0$ と $1$ だけなので、$P(A)\in\{0,1\}$ である。$\square$

末尾σ-代数について可測な量は定数

thm-kz-main の仮定のもとで、$Y\colon\Omega\to[-\infty,\infty]$ が $\mathcal T$-可測ならば、ある $c\in[-\infty,\infty]$ について $P(Y=c)=1$ である。

分布関数が 0 か 1 しかとらない

$t\in\mathbb R$ について $\{Y\le t\}\in\mathcal T$ なので、$F(t):=P(Y\le t)$ は $0$ か $1$ であり、$t$ について単調に増加する。$c:=\sup\{t\in\mathbb R\mid F(t)=0\}$(集合が空なら $c:=-\infty$)とおく。

  • $c\in\mathbb R$ のとき:$t< c$ なら $F(t')=0$ となる $t'>t$ があるので $F(t)=0$、$t>c$ なら $F(t)=1$ である。確率の連続性(確率空間 の命題「確率の連続性」)により $P(Y< c)=\lim_nF(c-\frac1n)=0$、$P(Y\le c)=\lim_nF(c+\frac1n)=1$ なので、$P(Y=c)=1$ である。
  • $c=-\infty$ のとき:すべての $t$ で $F(t)=1$ なので、$P(Y=-\infty)=\lim_nF(-n)=1$ である。
  • $c=+\infty$ のとき:すべての $t$ で $F(t)=0$ なので、$P(Y<\infty)=\lim_nF(n)=0$、すなわち $P(Y=+\infty)=1$ である。$\square$

ex-kz-tail-events の 3 と合わせると、独立な確率変数の列について、$a_n\to\infty$ なら $\limsup_nS_n/a_n$ と $\liminf_nS_n/a_n$ はほとんど確実に定数($\pm\infty$ を含む)である。

帰結と例

独立な事象の列と級数

事象 $A_1,A_2,\dots$ が互いに独立なら、$\mathcal F_n:=\{\emptyset,A_n,\Omega\setminus A_n,\Omega\}$ は独立で、$\{A_n\text{ が無限回起こる}\}$ は末尾事象である(ex-kz-tail-events の 1 で $X_n:=1_{A_n}$、$B_n:=\{1\}$)。したがってその確率は $0$ か $1$ である。どちらであるかは $\sum_nP(A_n)$ が有限か無限かで決まる(Borel–Cantelliの補題 の系「独立な事象の列の 0-1 法則」)。
独立な確率変数の列について、$\sum_nX_n$ が収束する確率も $0$ か $1$ である(ex-kz-tail-events の 2)。たとえば $\varepsilon_1,\varepsilon_2,\dots$ が互いに独立で確率 $\frac12$ ずつ $\pm1$ をとるとき、符号をでたらめに付けた調和級数 $\sum_n\varepsilon_n/n$ は、$\sum_n\operatorname{Var}(\varepsilon_n/n)=\sum_n1/n^2<\infty$ からほとんど確実に収束する(Dur19 Theorem 2.5.6(p. 84)。この記事では証明しない)。0-1 法則だけからは、確率が $1$ であることは分からない。
同じく、独立な列の部分和 $S_n$ について $\{\lim_nS_n/n\text{ が存在する}\}$ の確率は $0$ か $1$ であり、極限は存在すればほとんど確実に定数である。同じ分布に従う可積分な列ではこの確率が $1$ で、極限は $E[X_1]$ である(強大数の法則 の定理「強大数の法則」)。

乱数を係数とする冪級数

乱数を係数とする冪級数の収束半径

$X_1,X_2,\dots$ を互いに独立な実数値の確率変数とし、冪級数 $\sum_{n\ge1}X_nz^n$ の収束半径を $R$ とする。収束半径 の定理「Cauchy–Hadamardの公式」により $1/R=\limsup_n|X_n|^{1/n}$ であり、右辺は各 $k$ について $n\ge k$ の項だけで決まるので $\mathcal T$-可測である。cor-kz-constant により、$R$ はほとんど確実に定数である。
$X_n$ が同じ分布に従い、$E[|X_1|]<\infty$ かつ $P(X_1\ne0)>0$ ならば、ほとんど確実に $R=1$ である。

詳細

上からの評価:$\varepsilon>0$ とする。Chebyshevの不等式 の定理「Markov の不等式」により $P(|X_n|>e^{\varepsilon n})\le E[|X_1|]e^{-\varepsilon n}$ で、右辺の和は有限である。Borel–Cantelliの補題 の第 1 の補題により、ほとんど確実に有限個を除くすべての $n$ で $|X_n|\le e^{\varepsilon n}$ となり、$\limsup_n|X_n|^{1/n}\le e^{\varepsilon}$ である。$\varepsilon=1/r$($r=1,2,\dots$)についての可算個の事象の共通部分をとれば、ほとんど確実に $\limsup_n|X_n|^{1/n}\le1$ である。

下からの評価:$P(|X_1|\ge\delta)\to P(X_1\ne0)>0$($\delta\downarrow0$)なので、$p:=P(|X_1|\ge\delta)>0$ となる $\delta>0$ がある。事象 $\{|X_n|\ge\delta\}$ は互いに独立で確率の和は $\sum_np=\infty$ だから、第 2 の補題によりほとんど確実に無限個の $n$ で $|X_n|\ge\delta$ となる。そのような $n$ では $|X_n|^{1/n}\ge\delta^{1/n}\to1$ なので、$\limsup_n|X_n|^{1/n}\ge1$ である。


0-1 法則は「$R$ が定数である」ことを先に教え、Borel–Cantelli の補題がその値を決める、という役割分担になっている。

2 進展開の桁

$[0,1)$ 上の Lebesgue 測度 $\lambda$ を確率とし、$d_n(x)$ を $x$ の 2 進展開の第 $n$ 桁とする。$d_1,d_2,\dots$ は互いに独立で、確率 $\frac12$ ずつ $0,1$ をとる(確率論 の命題「2 進展開の桁は独立な公平な硬貨投げ」)。したがって、$(d_n)$ の末尾事象 $A$ について $\lambda(A)$ は $0$ か $1$ である。末尾事象は、有限個の桁を変えても属するかどうかが変わらない Borel 集合である。たとえば $\{x\mid(d_1(x)+\cdots+d_n(x))/n\to\frac12\}$ は末尾事象で(ex-kz-tail-events の 3 と同じ理由)、その測度は $1$ である(確率論 の系「2 進展開の桁の割合」)。$\{x\mid d_{2j-1}(x)=d_{2j}(x)=1\text{ が無限個の }j\text{ で成り立つ}\}$ も末尾事象で、互いに独立な事象 $\{d_{2j-1}=d_{2j}=1\}$(確率 $\frac14$)に第 2 の Borel–Cantelli の補題を使えば測度は $1$ である。

ずらしのエルゴード性

独立な列のずらしで不変な事象

$(E,\mathcal E)$ を可測空間、$\Omega:=E^{\{0,1,2,\dots\}}$ とし、座標 $X_n(\omega):=\omega_n$ の生成する σ-代数 $\mathcal F:=\sigma(X_n:n\ge0)$ の上の確率 $P$ について $X_0,X_1,\dots$ が互いに独立であるとする。ずらし $T(\omega_0,\omega_1,\dots):=(\omega_1,\omega_2,\dots)$ について $T^{-1}A=A$ となる $A\in\mathcal F$ は、$P(A)\in\{0,1\}$ を満たす。とくに $X_n$ が同じ分布に従うなら、$T$ は $P$ を保ち、エルゴード定理 の意味でエルゴード的である。

不変な事象は末尾事象

$X_m\circ T^n=X_{m+n}$ なので、生成系の逆像 $(T^n)^{-1}(X_m^{-1}(B))=X_{m+n}^{-1}(B)$ は $\sigma(X_j:j\ge n)$ に属する。σ-代数 の定理「逆像と生成系」により、$T^n$ は $(\Omega,\sigma(X_j:j\ge n))$ から $(\Omega,\mathcal F)$ への可測写像である。$T^{-1}A=A$ から $A=(T^n)^{-1}(A)\in\sigma(X_j:j\ge n)$ がすべての $n$ で成り立つので、$A$ は末尾事象であり、thm-kz-main により $P(A)\in\{0,1\}$ である。
同じ分布の場合:有限個の座標の値を指定した事象 $\{X_0\in B_0,\dots,X_m\in B_m\}$ の全体は π 系で $\mathcal F$ を生成し、その上で $P\circ T^{-1}$ と $P$ はどちらも $\prod_{j=0}^mP(X_0\in B_j)$ を与える。Dynkinのπ-λ定理 の定理「π系の上で一致する測度の一意性」により $P\circ T^{-1}=P$ である。$\square$

このような $P$ が存在することは、$E$ が Polish 空間(たとえば $\mathbb R$)なら Kolmogorovの拡張定理 による。エルゴード定理 と組み合わせると、同じ分布に従う独立な列 $(X_n)$ と可積分な $f(X_0,X_1,\dots)$ について、時間平均 $\frac1n\sum_{m=0}^{n-1}f(X_m,X_{m+1},\dots)$ はほとんど確実に $E[f(X_0,X_1,\dots)]$ に収束する。

反例:条件を外すと成り立たない

thm-kz-main の仮定は「σ-代数の列が独立」と「事象が末尾σ-代数に属する」の 2 つである。最後の行は、次の節の Hewitt–Savage の 0-1 法則の仮定「同じ分布」を外したものである。

外す条件反例成り立たなくなること
列の独立性$X_1$ は確率 $\frac12$ ずつ $0,1$、$X_n:=X_1$($n\ge2$)末尾事象 $\{X_n=1\text{ が無限回}\}=\{X_1=1\}$ の確率が $\frac12$
事象が末尾事象であること$X_1,X_2,\dots$ は互いに独立で確率 $\frac12$ ずつ $0,1$、$A:=\{X_1=1\}$$P(A)=\frac12$
同じ分布(Hewitt–Savage)$X_1$ は確率 $\frac12$ ずつ $\pm1$、$X_n:=0$($n\ge2$)可換な事象 $\{S_n>0\text{ が無限回}\}=\{X_1=1\}$ の確率が $\frac12$
反例:表の各行の確かめ

各行は左の列の条件だけを破っている。

確かめを開く

1 行目:どの $X_n$ も同じ分布に従うが、$P(X_1=1,X_2=0)=0\ne\frac14$ なので独立でない。どの $n$ でも $\{X_m=1\text{ が無限回}\}=\{X_1=1\}$ は $X_n,X_{n+1},\dots$ で書けるので $\mathcal T_n$ に属し、末尾事象である。

2 行目:列は独立である。$\mathcal T_2=\sigma(X_m:m\ge2)$ は lem-kz-blocks により $\sigma(X_1)$ と独立なので、$A\in\mathcal T_2$ なら $P(A)=P(A\cap A)=P(A)^2$ となって $P(A)=\frac12$ に反する。よって $A\notin\mathcal T$ であり、0-1 法則と矛盾しない。

3 行目:定数の確率変数はどの確率変数とも独立なので、列は独立である。$n\ge2$ で $\sigma(X_n)=\{\emptyset,\Omega\}$ なので $\mathcal T=\{\emptyset,\Omega\}$ であり、$\{S_n>0\text{ が無限回}\}=\{X_1=1\}$ は末尾事象でない。一方、有限個の項の並べ替えで $S_n$ は大きな $n$ で変わらないので、この事象は次の節の意味で可換である。$X_1$ と $X_2$ は分布が違う。

1 行目と同じ型の例として、$Y$ を確率 $\frac12$ ずつ $0,1$ をとる確率変数、$\xi_1,\xi_2,\dots$ を $Y$ と独立で互いに独立な確率 $\frac12$ ずつ $\pm1$ をとる確率変数とし、$X_n:=Y+\xi_n$ とおくと、確率論 の定理「有界な独立確率変数の大数の強法則」により $S_n/n\to Y$ がほとんど確実に成り立つ。$\mathcal T$-可測な $\lim_nS_n/n$ が定数でないので、$(X_n)$ は独立でない。どの $X_n$ も同じ分布に従い、どの 2 つも同じ相関をもつので、見かけの上では独立な列と区別しにくい。

Hewitt–Savage の 0-1 法則

有限個の添字の置換 $\pi$(有限個を除く $i$ で $\pi(i)=i$ となる $\{1,2,\dots\}$ の全単射)について、列 $(X_n)$ を $(X_{\pi(n)})$ に並べ替えても起こるかどうかが変わらない事象を可換な事象(exchangeable event)という。正確には、$A=\{(X_1,X_2,\dots)\in\tilde A\}$($\tilde A$ は $\mathbb R^{\{1,2,\dots\}}$ の積σ-代数の元)で、すべての有限な置換 $\pi$ について $\{(X_{\pi(1)},X_{\pi(2)},\dots)\in\tilde A\}=A$ となるものである。末尾事象は可換である($A\in\sigma(X_m:m>n)$ は $X_1,\dots,X_n$ の並べ替えで変わらない)が、逆は成り立たない。たとえば $\{S_n>0\text{ が無限回}\}$ は、大きな $n$ では $S_n$ が並べ替えで変わらないので可換である。

Hewitt–Savage の 0-1 法則

$X_1,X_2,\dots$ が互いに独立で同じ分布に従うならば、可換な事象の確率は $0$ か $1$ である。

この記事では証明しない。Dur19 Theorem 2.5.4(p. 82)にある。証明は、可換な事象 $A$ を $X_1,\dots,X_n$ で決まる事象 $A_n$ で近似し、最初の $n$ 個と次の $n$ 個を入れ替える置換で $A_n$ を $X_{n+1},\dots,X_{2n}$ で決まる事象 $A_n'$ に移して、$A_n$ と $A_n'$ の独立性から $P(A)=P(A)^2$ を導く。たとえば単純ランダムウォーク $S_n$ について、$\{S_n=0\text{ が無限回}\}$ は可換である($X_1$ の符号を変えると $S_n$ が $2$ ずれるので、末尾事象とは限らない)。その確率が $0$ か $1$ であることはこの定理から従う(値が $1$ であることは ランダムウォーク の定理「再帰性の判定」・定理「Pólya の定理」(1 次元の単純ランダムウォークは再帰的である)と系「原点に戻る回数」による)。表の 3 行目のとおり、同じ分布の仮定は外せない。

補足

別の証明と一般化

条件付き期待値を使うと、Lévy の 0-1 法則「$\mathcal F_n\uparrow\mathcal F_\infty$ で $A\in\mathcal F_\infty$ なら $E[1_A\mid\mathcal F_n]\to1_A$(ほとんど確実に)」から、末尾事象 $A$ について $E[1_A\mid\mathcal G_n]=P(A)$ が $1_A$ に収束することになり、$P(A)\in\{0,1\}$ が従う(Dur19 Theorem 4.6.9(p. 247)とその後の議論)。また thm-kz-main の証明は列の順序を使っていないので、可算個とは限らない添字の族 $(\mathcal F_i)_{i\in I}$ についても、「どの有限集合 $J\subset I$ についても $\sigma(\mathcal F_i:i\notin J)$ に属する事象」の確率は $0$ か $1$ になる($\mathcal G_k$ の代わりに有限個の $\mathcal F_i$ の生成する σ-代数の全体を使う)。

有限モデル理論 の定理「グラフの 0-1 法則」は、名前は似ているが内容が違う。そこでは頂点数 $n$ のグラフ全体から一様に選んだランダムグラフ(二項ランダムグラフ $G(n,\frac12)$。Erdős–Rényiのランダムグラフ)で一階の文が成り立つ確率の $n\to\infty$ での極限が $0$ か $1$ になることを述べ、無限列の末尾事象は現れない。

関連項目

参考文献

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