Newton–Gauss線(Newton–Gauss line)とは、完全四辺形(どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらない 4 本の直線)の 3 本の対角線の中点を通る直線である。四角形 $ABCD$ の 4 辺の直線が完全四辺形をつくるとき、直線 $AB$ と $CD$ の交点を $E$、直線 $AD$ と $BC$ の交点を $F$ とすると、対角線 $AC$、$BD$、$EF$ の中点は一直線上にある。点 $P$ に対する符号つき面積の差 $S(PAB)+S(PCD)-S(PBC)-S(PDA)$ が $P$ の座標の 1 次式で、3 つの中点で $0$ になることから示せる。Varignon の平行四辺形の中心もこの直線の上にある。ひし形でない円に外接する四角形では、2 本の対角線の中点と内接円の中心が一直線上にある(Newton の定理)。
前提知識: Eulerの四辺形定理, Menelausの定理(高校数学), 三角形の面積比, 靴ひも公式
平面に 4 本の直線を引く。どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらないようにすると、交点は $\binom42=6$ 個できる。この図形を完全四辺形という。ふつうの四角形の対角線は 2 本だが、完全四辺形には対角線が 3 本ある。3 本の対角線の中点を座標で求めてみる。
4 本の直線 $y=0$、$x=0$、$x+y=8$、$x-y=-4$ を考える。
(1) 交点を求める。$y=0$ と $x=0$ の交点は $A(0,0)$、$y=0$ と $x+y=8$ の交点は $B(8,0)$、$x+y=8$ と $x-y=-4$ の交点は、2 式を足して $2x=4$ より $C(2,6)$、$x-y=-4$ と $x=0$ の交点は $D(0,4)$ である。残りの 2 つは、$y=0$ と $x-y=-4$ の交点 $E(-4,0)$、$x=0$ と $x+y=8$ の交点 $F(0,8)$ である。
(2) 四角形 $ABCD$ は凸四角形で、その 4 辺を延ばした直線が、上の 4 本である。辺 $AB$ と $CD$ を延ばすと $E$ で、辺 $AD$ と $BC$ を延ばすと $F$ で交わる。
(3) 3 本の対角線 $AC$、$BD$、$EF$ の中点は
$$
M=\left(\frac{0+2}2,\frac{0+6}2\right)=(1,3),\qquad N=\left(\frac{8+0}2,\frac{0+4}2\right)=(4,2),\qquad L=\left(\frac{-4+0}2,\frac{0+8}2\right)=(-2,4)
$$
である。
(4) 3 点はどれも直線 $x+3y=10$ の上にある。実際、$M$ では $1+9=10$、$N$ では $4+6=10$、$L$ では $-2+12=10$ である。
4 本の直線がつくる完全四辺形の 3 本の対角線 AC、BD、EF の中点 M、N、L は、赤い直線の上に並ぶ
3 つの中点が一直線上に並んだ。この直線を Newton–Gauss 線(Newton 線)という。この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 三角形の面積を座標で書く | 符号つき面積 $S(PXY)$ は $P$ の座標の 1 次式(lem-ngl-linear) | アフィン関数 |
| 1 次式 $\alpha x+\beta y+\gamma=0$ は直線 | 面積の差 $\sigma(P)=0$ の点の集まり(thm-ngl-main) | アフィン関数の零点集合 |
| 中点での値は両端の値の平均 | $\sigma(L)=\dfrac{\sigma(E)+\sigma(F)}2$ | 1 次式は内分を保つ |
| 円の外の点から引いた接線の長さ | 外接四角形の対辺の和(lem-ngl-pitot) | — |
平面の 4 本の直線で、どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらないものを 完全四辺形 という。2 本ずつの交点 6 個を完全四辺形の頂点という。6 個の頂点のうち、同じ直線の上にない 2 つを結ぶ線分を 対角線 という。対角線は 3 本ある。
四角形 $ABCD$ の 4 辺を延ばした 4 本の直線が完全四辺形になるとき、頂点は $A$、$B$、$C$、$D$ と、直線 $AB$、$CD$ の交点 $E$、直線 $AD$、$BC$ の交点 $F$ の 6 個である。$A$ と $C$ は共通の直線の上にないので $AC$ は対角線であり、同じく $BD$、$EF$ が対角線である($A$ と $B$ は直線 $AB$ の上にあるので、$AB$ は対角線ではない)。ex-ngl-start の 3 本の対角線はこれである。
次に、三角形の面積に向きの符号を付ける。
点 $P(x,y)$、$X(x_1,y_1)$、$Y(x_2,y_2)$ について
$$
S(PXY)=\frac12\bigl\{(x_1-x)(y_2-y)-(x_2-x)(y_1-y)\bigr\}
$$
を三角形 $PXY$ の 符号つき面積 という。$P\to X\to Y$ が反時計回りなら三角形 $PXY$ の面積に等しく、時計回りなら面積に $-1$ を掛けたものになり、3 点が一直線上にあれば $0$ である(靴ひも公式)。
四角形 $ABCD$ と点 $P$ について
$$
\sigma(P)=S(PAB)+S(PCD)-S(PBC)-S(PDA)
$$
を、$P$ から見た 向かい合う辺の面積の差 とよぶ(この記事だけの呼び名)。
凸四角形 $ABCD$ の頂点が反時計回りに並び、$P$ が四角形の内部にあるとき、4 つの三角形 $PAB$、$PBC$、$PCD$、$PDA$ はどれも反時計回りなので、符号つき面積はふつうの面積である。このとき $\sigma(P)=0$ は「向かい合う辺 $AB$、$CD$ を底辺とする 2 つの三角形の面積の和」と「向かい合う辺 $BC$、$DA$ を底辺とする 2 つの三角形の面積の和」が等しいことを表す。
(i) 定義の式を展開すると
$$
(x_1-x)(y_2-y)-(x_2-x)(y_1-y)=x_1y_2-x_1y-xy_2+xy-x_2y_1+x_2y+xy_1-xy
$$
で、$xy$ と $-xy$ が打ち消し合う。残りを $x$、$y$ について整理すると $(x_1y_2-x_2y_1)+(y_1-y_2)x+(x_2-x_1)y$ である。$\sigma(P)$ は 1 次式 4 つの和と差なので、1 次式である。
(ii) (i) の式を 4 つ足す。定数項の和は
$$
\frac12\bigl\{(x_Ay_B-x_By_A)+(x_By_C-x_Cy_B)+(x_Cy_D-x_Dy_C)+(x_Dy_A-x_Ay_D)\bigr\}=S(ABCD)
$$
である(靴ひも公式)。$x$ の係数の和は $\dfrac12\{(y_A-y_B)+(y_B-y_C)+(y_C-y_D)+(y_D-y_A)\}=0$、$y$ の係数の和も同じく $\dfrac12\{(x_B-x_A)+(x_C-x_B)+(x_D-x_C)+(x_A-x_D)\}=0$ である。
(iii) $K\left(\dfrac{x_P+x_Q}2,\dfrac{y_P+y_Q}2\right)$ を代入すると $f(K)=\dfrac{(\alpha x_P+\beta y_P+\gamma)+(\alpha x_Q+\beta y_Q+\gamma)}2$ となる。$\square$
ex-ngl-start の四角形 $A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(2,6)$、$D(0,4)$ で、$P(x,y)$ とする。
(1) lem-ngl-linear の式で $X=B(8,0)$、$Y=C(2,6)$ とすると
$$
S(PBC)=\frac12\bigl\{(8\cdot6-2\cdot0)+(0-6)x+(2-8)y\bigr\}=\frac12(48-6x-6y)=24-3x-3y
$$
である。同じように計算すると
$$
S(PAB)=4y,\qquad S(PCD)=x-y+4,\qquad S(PDA)=2x
$$
である。
(2) 4 つの和は $4y+(24-3x-3y)+(x-y+4)+2x=28$ で、$x$、$y$ が消える。四角形の面積は 靴ひも公式 で $\dfrac12(0+48+8+0)=28$ で、lem-ngl-linear の (ii) のとおりである。
(3) 面積の差は
$$
\sigma(P)=4y+(x-y+4)-(24-3x-3y)-2x=2x+6y-20=2(x+3y-10)
$$
である。$\sigma(P)=0$ は、ex-ngl-start の (4) の直線 $x+3y=10$ そのものである。
四角形 $ABCD$ の 4 辺を延ばした 4 本の直線が完全四辺形をつくるとし、直線 $AB$ と $CD$ の交点を $E$、直線 $AD$ と $BC$ の交点を $F$ とする。3 本の対角線 $AC$、$BD$、$EF$ の中点を $M$、$N$、$L$ とすると、$M$、$N$、$L$ は一直線上にある。その直線は、面積の差が $0$ になる点の集まり $\{P\mid\sigma(P)=0\}$ である。
4 本の直線を $\ell_1,\ell_2,\ell_3,\ell_4$ とし、$A=\ell_1\cap\ell_2$、$B=\ell_2\cap\ell_3$、$C=\ell_3\cap\ell_4$、$D=\ell_4\cap\ell_1$ とすれば、どの完全四辺形も四角形 $ABCD$ の 4 辺の直線として表せる(どの 3 本も 1 点で交わらないので、$A$、$B$、$C$、$D$ のどの 3 点も一直線上にない)。したがって、どの完全四辺形でも 3 本の対角線の中点は一直線上にある。
方針:$\sigma$ は 1 次式なので、$\sigma(P)=0$ を満たす点の集まりは直線である。$M$、$N$、$L$ で $\sigma$ の値が $0$ になることを確かめる。符号つき面積は、3 点の順を巡回させても($S(PXY)=S(XYP)=S(YPX)$)変わらない(たどる向きが変わらないから)ことを使う。
段 1($M$ での値)。lem-ngl-linear の (iii) より $\sigma(M)=\dfrac{\sigma(A)+\sigma(C)}2$ である。同じ点を 2 つ含む三角形の符号つき面積は $0$ なので
$$
\sigma(A)=\underbrace{S(AAB)}_{0}+S(ACD)-S(ABC)-\underbrace{S(ADA)}_{0}=S(ACD)-S(ABC)
$$
$$
\sigma(C)=S(CAB)+\underbrace{S(CCD)}_{0}-\underbrace{S(CBC)}_{0}-S(CDA)=S(ABC)-S(ACD)
$$
である(巡回させて $S(CAB)=S(ABC)$、$S(CDA)=S(ACD)$)。$\sigma(C)=-\sigma(A)$ なので $\sigma(M)=0$ である。
段 2($N$ での値)。同じく $\sigma(B)=S(BCD)-S(BDA)$、$\sigma(D)=S(DAB)-S(DBC)=S(BDA)-S(BCD)$ なので、$\sigma(N)=\dfrac{\sigma(B)+\sigma(D)}2=0$ である。
段 3($E$、$F$ での値)。$E$ は直線 $AB$ と直線 $CD$ の上にあるので $S(EAB)=S(ECD)=0$ である。lem-ngl-linear の (ii) より $S(EBC)+S(EDA)=S(ABCD)$ なので
$$
\sigma(E)=0+0-\bigl(S(EBC)+S(EDA)\bigr)=-S(ABCD)
$$
である。$F$ は直線 $BC$ と直線 $DA$ の上にあるので $S(FBC)=S(FDA)=0$ で、同じように $\sigma(F)=S(FAB)+S(FCD)=S(ABCD)$ である。
段 4($L$ での値)。$L$ は線分 $EF$ の中点なので、lem-ngl-linear の (iii) より
$$
\sigma(L)=\frac{\sigma(E)+\sigma(F)}2=\frac{-S(ABCD)+S(ABCD)}2=0
$$
である。
段 5(直線であること)。lem-ngl-linear の (i) の式で $\sigma(P)=\alpha x+\beta y+\gamma$ の係数を集めると $\alpha=(y_A+y_C)-(y_B+y_D)=2(y_M-y_N)$、$\beta=(x_B+x_D)-(x_A+x_C)=2(x_N-x_M)$ である。もし $M=N$ なら、点 $A$、$B$、$C$、$D$ の位置ベクトルを $\vec a$、$\vec b$、$\vec c$、$\vec d$ として $\vec a+\vec c=\vec b+\vec d$ から $\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$ となり、直線 $AB$ と直線 $CD$ が平行になって、どの 2 本も平行でないという仮定に反する。よって $M\ne N$ で、$(\alpha,\beta)\ne(0,0)$ である。したがって $\sigma(P)=0$ を満たす点の集まりは直線で、段 1・2・4 より $M$、$N$、$L$ はその上にある。$\square$
ex-ngl-start では $\sigma(P)=2x+6y-20$ で、$\sigma(E)=-8-20=-28$、$\sigma(F)=48-20=28$ と、面積 $28$ の符号違いになっている。その平均が $\sigma(L)=0$ である。
三角形 $EBC$ と、3 点 $A$、$D$、$F$ を通る直線(直線 $AD$)を考える。$A$ は直線 $EB$ の上、$D$ は直線 $EC$ の上、$F$ は直線 $BC$ の上にあるので、符号つきの比による Menelaus の定理(Menelausの定理(高校数学))から
$$\frac{\overline{EA}}{\overline{AB}}\cdot\frac{\overline{BF}}{\overline{FC}}\cdot\frac{\overline{CD}}{\overline{DE}}=-1$$
である。辺 $EB$、$EC$、$BC$ の中点を $K_1$、$K_2$、$K_3$ とする。$E$ を中心に $\dfrac12$ 倍に縮めると、直線 $BC$ は直線 $K_1K_2$ に移り、$F$ は $EF$ の中点 $L$ に移る。この縮小は同じ直線の上の符号つきの比を変えないので $\dfrac{\overline{K_1L}}{\overline{LK_2}}=\dfrac{\overline{BF}}{\overline{FC}}$ である。同じく $C$ を中心に縮めると $E\to K_2$、$B\to K_3$、$A\to M$ なので $\dfrac{\overline{K_2M}}{\overline{MK_3}}=\dfrac{\overline{EA}}{\overline{AB}}$、$B$ を中心に縮めると $C\to K_3$、$E\to K_1$、$D\to N$ なので $\dfrac{\overline{K_3N}}{\overline{NK_1}}=\dfrac{\overline{CD}}{\overline{DE}}$ である。3 つを掛けると、三角形 $K_1K_2K_3$ の辺の直線の上の 3 点 $L$、$M$、$N$ について比の積が $-1$ になる。符号つきの比による Menelaus の定理の逆から、$L$、$M$、$N$ は一直線上にある。
凸四角形の内部で Newton–Gauss 線の上にある点 P では、向かい合う辺を底辺とする三角形の面積の和が、どちらも四角形の面積の半分になる
thm-ngl-main の四角形 $ABCD$ について、次が成り立つ。
(R1) 線分 $MN$ の中点は Newton–Gauss 線の上にある。対角線 $AC$、$BD$ が平行でなければ、この点は Varignonの定理 の平行四辺形の中心である。
(R2) $ABCD$ が凸四角形で、$P$ がその内部の点のとき、$P$ が Newton–Gauss 線の上にあることは、面積について
$$
\triangle PAB+\triangle PCD=\triangle PBC+\triangle PDA
$$
が成り立つことと同値である。このとき両辺はどちらも四角形 $ABCD$ の面積の半分である。
(i) lem-ngl-linear の (iii) より、線分 $MN$ の中点での $\sigma$ の値は $\dfrac{\sigma(M)+\sigma(N)}2=0$ である。対角線 $AC$、$BD$ が平行でなければ、Varignon の平行四辺形の中心は線分 $MN$ の中点である(Varignonの定理 の系)。
(ii) 頂点が反時計回りに並ぶように名前を付けると、内部の点 $P$ について 4 つの符号つき面積はふつうの面積である(時計回りなら全部の符号が変わるだけで、以下は同じ)。$\sigma(P)=0$ は与えられた等式そのものである。そのとき lem-ngl-linear の (ii) より 4 つの和が四角形の面積なので、両辺はその半分である。$\square$
ex-ngl-start の四角形で、Varignon の平行四辺形の中心は $M(1,3)$ と $N(4,2)$ の中点 $P\left(\dfrac52,\dfrac52\right)$ で、$\dfrac52+3\cdot\dfrac52=10$ なので直線 $x+3y=10$ の上にある。ex-ngl-sigma の式で
$$
\triangle PAB=4\cdot\frac52=10,\qquad\triangle PCD=\frac52-\frac52+4=4,\qquad\triangle PBC=24-\frac{15}2-\frac{15}2=9,\qquad\triangle PDA=2\cdot\frac52=5
$$
で、$\triangle PAB+\triangle PCD=14=\triangle PBC+\triangle PDA$ である。$14$ は面積 $28$ の半分である。
4 つの辺がすべて 1 つの円に接する四角形を、円に外接する四角形という。その円(内接円)の中心も Newton–Gauss 線の上にある。まず、辺の長さの関係を示す。
円に外接する凸四角形 $ABCD$ では
$$
AB+CD=BC+DA
$$
が成り立つ。
内接円が辺 $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ に接する点を $T_1$、$T_2$、$T_3$、$T_4$ とする。円の外の点から円に引いた 2 本の接線の長さは等しい(中心と結んでできる 2 つの直角三角形が、斜辺と他の 1 辺が等しいので合同になる)。頂点 $A$ から引いた 2 本の接線の長さを $t_A=AT_1=AT_4$ とし、$t_B=BT_1=BT_2$、$t_C=CT_2=CT_3$、$t_D=DT_3=DT_4$ とする。接点は辺の上にあるので
$$
AB+CD=(t_A+t_B)+(t_C+t_D),\qquad BC+DA=(t_B+t_C)+(t_D+t_A)
$$
で、どちらも $t_A+t_B+t_C+t_D$ に等しい。$\square$
円に外接する凸四角形 $ABCD$ がひし形でないとき、2 本の対角線 $AC$、$BD$ の中点 $M$、$N$ と、内接円の中心 $I$ は一直線上にある。とくに、4 辺を延ばした直線が完全四辺形をつくるときは、$I$ は Newton–Gauss 線の上にある。
方針:thm-ngl-main と同じ 1 次式 $\sigma$ を使い、$\sigma(I)=0$ を示す。頂点は反時計回りに並ぶように名前を付ける。
段 1($\sigma(I)=0$)。内接円の半径を $r$ とする。$I$ は四角形の内部にあり、4 辺までの距離がどれも $r$ なので、4 つの三角形の面積は
$$
\triangle IAB=\frac12r\cdot AB,\quad\triangle IBC=\frac12r\cdot BC,\quad\triangle ICD=\frac12r\cdot CD,\quad\triangle IDA=\frac12r\cdot DA
$$
である。lem-ngl-pitot より
$$
\triangle IAB+\triangle ICD=\frac r2(AB+CD)=\frac r2(BC+DA)=\triangle IBC+\triangle IDA
$$
で、符号つき面積もふつうの面積なので $\sigma(I)=0$ である。
段 2($\sigma(M)=\sigma(N)=0$)。thm-ngl-main の証明の段 1・段 2 は $E$、$F$ を使っていないので、そのまま $\sigma(M)=\sigma(N)=0$ である。
段 3($\sigma$ は定数でない)。平行四辺形は向かい合う辺の長さが等しいので、円に外接する平行四辺形では lem-ngl-pitot から $2AB=2BC$ となり、ひし形になる。$ABCD$ はひし形でないので平行四辺形でなく、直線 $AB$ と $CD$、直線 $AD$ と $BC$ の少なくとも一方の組は平行でない。直線 $AD$ と $BC$ が点 $F$ で交わるなら、thm-ngl-main の証明の段 3 と同じく $\sigma(F)=S(ABCD)\ne0$ である。直線 $AB$ と $CD$ が点 $E$ で交わるなら $\sigma(E)=-S(ABCD)\ne0$ である。どちらでも $\sigma$ は定数でない。
段 4(結論)。段 3 より $\sigma(P)=0$ を満たす点の集まりは直線で、段 1・段 2 より $I$、$M$、$N$ はその上にある。4 辺を延ばした直線が完全四辺形をつくるときは、thm-ngl-main よりこれが Newton–Gauss 線である。$\square$
ひし形では $M$、$N$、$I$ はすべて対角線の交点に一致するので、3 点が一直線上にあることに意味がない。これが「ひし形でない」という仮定を置いた理由である。
$A(0,0)$、$B(12,0)$、$C(20,6)$、$D(8,15)$ の四角形と、中心 $I(10,6)$、半径 $6$ の円を考える。
(1) 4 辺の直線は $y=0$、$3x-4y=36$、$3x+4y=84$、$15x-8y=0$ である。$I$ からの距離は、点と直線の距離の公式で
$$
6,\qquad\frac{\lvert30-24-36\rvert}5=6,\qquad\frac{\lvert30+24-84\rvert}5=6,\qquad\frac{\lvert150-48\rvert}{17}=6
$$
で、4 辺とも円に接する。辺の長さは $AB=12$、$BC=10$、$CD=15$、$DA=17$ で、$AB+CD=27=BC+DA$ である(lem-ngl-pitot)。
(2) 4 つの三角形の面積は $\triangle IAB=\dfrac12\cdot6\cdot12=36$、$\triangle IBC=30$、$\triangle ICD=45$、$\triangle IDA=51$ で、$36+45=81=30+51$ である。
(3) 対角線の中点は $M=(10,3)$、$N=\left(10,\dfrac{15}2\right)$ で、$I(10,6)$ と同じ直線 $x=10$ の上にある。さらに $E=(28,0)$(直線 $AB$ と $CD$ の交点)、$F=(-8,-15)$(直線 $AD$ と $BC$ の交点)の中点 $L=\left(10,-\dfrac{15}2\right)$ も $x=10$ の上にある。
円に外接する四角形では、対角線の中点 M、N と内接円の中心 I が一直線上に並ぶ
AB と DC が平行な台形では E ができず、M と N を通る直線は底辺に平行になる
ここまでに出てきた点をまとめる。
| 点 | 直線の上にある理由 |
|---|---|
| 対角線 $AC$、$BD$ の中点 $M$、$N$ | thm-ngl-main($\sigma(M)=\sigma(N)=0$) |
| 3 本目の対角線 $EF$ の中点 $L$ | thm-ngl-main($\sigma(E)$ と $\sigma(F)$ が符号違い) |
| Varignon の平行四辺形の中心 | prop-ngl-anne($M$、$N$ の中点) |
| 凸四角形の内部で、向かい合う辺を底辺とする三角形の面積の和が等しい点 | prop-ngl-anne |
| 円に外接する四角形の内接円の中心 $I$ | thm-ngl-newton |
thm-ngl-main の証明の中心は、「$\sigma$ は座標の 1 次式なので、$\sigma=0$ の点の集まりは直線」という事実だった。座標の 1 次式 $\alpha x+\beta y+\gamma$ で表される関数を アフィン関数 という。アフィン関数は内分点での値を内分するので(lem-ngl-linear の (iii))、零点の集まりの上の 2 点の中点も零点になる。不等式 $\alpha x+\beta y+\gamma>0$ が直線で区切られた半平面を表すことは 不等式の表す領域と線形計画法 で扱った。同じ考え方で、Menelaus の定理も 1 次式の値の比として読める(Menelausの定理(高校数学))。
完全四辺形は射影幾何の基本的な図形で、4 本の直線の役割はどれも対等である。4 本から 2 本ずつの組を 3 通りに選ぶと、それぞれの組の交点を結ぶ線分が 3 本の対角線になる。thm-ngl-main は四角形 $ABCD$ の名前を使って述べたが、3 本の対角線はどの組の選び方でも同じ 3 本なので、主張は 4 本の直線だけで決まっている。ただし「中点」は無限遠直線に関する概念なので、Newton–Gauss 線は射影変換では保たれない(アフィン変換では保たれる)。
さらに次の定理が知られている(この記事では証明しない。証明は 完全四辺形 で扱う)。Gauss–Bodenmiller の定理:完全四辺形の 3 本の対角線をそれぞれ直径とする 3 つの円は、共通の根軸をもつ。4 本の直線から 3 本を選んでできる 4 つの三角形の垂心は、すべてこの根軸の上にある(根軸と根心、三角形の垂心)。3 つの円の中心 $M$、$N$、$L$ は Newton–Gauss 線の上にあるので、この根軸は Newton–Gauss 線に垂直である。ex-ngl-start の完全四辺形では、$A$ と $C$ の角が直角なので、4 つの三角形の垂心は直角の頂点 $A(0,0)$ と $C(2,6)$ に 2 つずつ重なり、直線 $y=3x$ の上にある。$y=3x$ は $x+3y=10$ に垂直である。4 つの三角形の垂心が一直線上にあることは、Miquelの定理 でも別の道から現れる。
thm-ngl-main と thm-ngl-newton の仮定を外したときに崩れることを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 4 本のどの 2 本も平行でない | 台形(ex-ngl-cx-trapezoid) | 3 本目の対角線 $EF$ ができない |
| 四角形が円に外接する | ex-ngl-start の四角形(ex-ngl-cx-tangential) | 内接円の中心がそもそもない。$A$ と $B$ の角の二等分線の交点は直線の上にない |
| 面積に向きの符号を付ける | ex-ngl-start の四角形の外の点(ex-ngl-cx-unsigned) | 「向かい合う三角形の面積の和が等しい点」の集まりが Newton–Gauss 線になる |
$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(4,3)$、$D(1,3)$ の台形では、直線 $AB$ と $CD$ が平行なので交点 $E$ がなく、完全四辺形にならない。直線 $AD$ と $BC$ の交点は $F(2,6)$ である。
対角線の中点は $M\left(2,\dfrac32\right)$、$N\left(\dfrac72,\dfrac32\right)$ で、2 点を通る直線は $y=\dfrac32$、つまり底辺に平行である。面積の差は $\sigma(P)=3y-\dfrac92$ で、$\sigma(F)=18-\dfrac92=\dfrac{27}2$ は四角形の面積 $\dfrac{27}2$ に等しい。平行な 2 本の直線を「無限に遠い点で交わる」と考えると、3 本目の対角線の中点も無限に遠くへ行き、直線 $MN$ がその方向(底辺の方向)を向いていることと合う。
ex-ngl-start の四角形では $AB+CD=8+2\sqrt2\approx10.83$、$BC+DA=6\sqrt2+4\approx12.49$ で、lem-ngl-pitot の等式が成り立たないので、円に外接しない。
内接円があれば、その中心は $A$ と $B$ の角の二等分線の上にある。$A$ の角は直角なので二等分線は $y=x$ で、$B$ の角の二等分線との交点は $X\left(8-4\sqrt2,\ 8-4\sqrt2\right)\approx(2.34,2.34)$ である。$X$ から辺 $AB$、$BC$、$DA$ までの距離はどれも $8-4\sqrt2\approx2.34$ であるが、辺 $CD$ までの距離は $2\sqrt2\approx2.83$ で、4 辺に接する円の中心にはならない。$\sigma(X)=8(8-4\sqrt2)-20=44-32\sqrt2\approx-1.25\ne0$ で、$X$ は Newton–Gauss 線 $x+3y=10$ の上にない。
ex-ngl-start の四角形で、面積の等式を符号なしの面積(絶対値)で立てると、四角形の外の点 $P(-5,6)$ で、ex-ngl-sigma の式に $x=-5$、$y=6$ を代入すると $S(PAB)=24$、$S(PBC)=21$、$S(PCD)=-7$、$S(PDA)=-10$ なので
$$
\lvert S(PAB)\rvert+\lvert S(PCD)\rvert=24+7=31,\qquad\lvert S(PBC)\rvert+\lvert S(PDA)\rvert=21+10=31
$$
と等しくなる。しかし $-5+3\cdot6=13\ne10$ で、$P$ は Newton–Gauss 線の上にない(符号つきでは $\sigma(P)=24-7-21+10=6\ne0$)。符号なしの面積の等式を満たす点の集まりは 1 本の直線にならず、$P$ の近くでは直線 $x+2y=7$ の一部になっている。prop-ngl-anne で内部の点に限ったのはこのためである。
$A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(4,2)$、$D(2,8)$ の凹四角形(頂点 $C$ の内角が $180^\circ$ より大きい)について、(1) $S(PAB)$、$S(PBC)$、$S(PCD)$、$S(PDA)$ と $\sigma(P)$ を $P(x,y)$ の式で求めよ。(2) $E$、$F$ と 3 つの中点 $M$、$N$、$L$ を求め、どれも $\sigma(P)=0$ の直線の上にあることを確かめよ。
(1) lem-ngl-linear の式で $S(PAB)=4y$、$S(PBC)=8-x-2y$、$S(PCD)=14-3x-y$、$S(PDA)=4x-y$ である。4 つの和は $22$ で、靴ひも公式 による面積 $\dfrac12(0+16+28+0)=22$ に等しい。$\sigma(P)=4y+(14-3x-y)-(8-x-2y)-(4x-y)=-6x+6y+6$ で、$\sigma(P)=0$ は直線 $y=x-1$ である。
(2) 直線 $CD$ は $y=-3x+14$ なので $E\left(\dfrac{14}3,0\right)$、直線 $AD$ は $y=4x$、直線 $BC$ は $y=-\dfrac12x+4$ なので $F\left(\dfrac89,\dfrac{32}9\right)$ である。中点は $M(2,1)$、$N(5,4)$、$L\left(\dfrac{25}9,\dfrac{16}9\right)$ で、どれも $y=x-1$ を満たす($1=2-1$、$4=5-1$、$\dfrac{16}9=\dfrac{25}9-1$)。また $\sigma(E)=-28+6=-22$、$\sigma(F)=-\dfrac{16}3+\dfrac{64}3+6=22$ で、面積 $22$ の符号違いである。
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