Steiner線

同義語:シュタイナー線Steiner line

概要

Steiner線(Steiner line)とは、三角形 $ABC$ の外接円の上の頂点でない点 $P$ を、3 辺 $BC$、$CA$、$AB$ を含む直線で折り返した 3 点が並ぶ直線である。3 点が一直線に並ぶのは、垂線の足は $P$ と折り返した点の中点なので、Steiner 線が $P$ の Simson 線を $P$ を中心に 2 倍に広げた直線になるからである。主定理は、Steiner 線がいつも三角形の垂心 $H$ を通ることである。証明には、外接円を辺で折り返した円が $H$ を通ること(垂心の辺についての折り返しが外接円の上にあることと同じ)と、有向角による円周角の等式を使う。系として、Simson 線は線分 $PH$ の中点を通り、その中点は九点円の上にある。$P$ が外接円を 1 周すると、Steiner 線は $H$ のまわりを半回転する。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Simson線, 九点円, 三角形の垂心, 相似変換と相似の中心

高校での出発点:Simson 線を 2 倍に広げる

Simson線 では、三角形 $ABC$ の外接円の上の点 $P$ から 3 辺を含む直線に下ろした垂線の足 $D$、$E$、$F$ が一直線上に並ぶことを示した。垂線の足は、$P$ とその辺で折り返した点を結ぶ線分の中点である。そこで足の代わりに、$P$ を 3 辺で折り返した点を考える。3 点はやはり一直線に並び、しかもその直線は三角形の垂心を通る。まず座標で確かめる。

折り返した 3 点と垂心

Simson線 と同じ三角形 $A(-3,4)$、$B(-4,-3)$、$C(4,-3)$ と、外接円 $x^2+y^2=25$ の上の点 $P(0,-5)$ を使う。足は $D(0,-3)$、$E(3,-2)$、$F\left(-\dfrac{21}5,-\dfrac{22}5\right)$ だった。
(1) 折り返した点。$P$ を直線 $BC$、$CA$、$AB$ で折り返した点を $P_a$、$P_b$、$P_c$ とする。足は線分 $PP_a$ などの中点なので、$P_a=2D-P$ などと計算できる(座標ごとに $2\times$ 足 $-$ $P$)。
$$ P_a=(0,-1),\qquad P_b=(6,1),\qquad P_c=\left(-\frac{42}5,-\frac{19}5\right) $$
(2) 一直線上にあること。直線 $P_aP_b$ の傾きは $\dfrac{1-(-1)}{6-0}=\dfrac13$、直線 $P_aP_c$ の傾きは
$$ \frac{-\frac{19}5-(-1)}{-\frac{42}5-0}=\frac{-\frac{14}5}{-\frac{42}5}=\frac13 $$
で等しい。3 点は直線 $y=\dfrac13x-1$ の上にある。これは Simson 線 $y=\dfrac13x-3$ と平行である。
(3) 垂心。$A$ から $BC$($x$ 軸に平行)への垂線は $x=-3$ である。直線 $CA$ の向きは $(-7,7)$ なので、$B$ から $CA$ への垂線は向き $(1,1)$ で、$y+3=x+4$ である。$x=-3$ を代入して $y=-2$ なので、垂心は $H(-3,-2)$ である。$\dfrac13\cdot(-3)-1=-2$ なので、$H$ は (2) の直線の上にある。

赤は P の Simson 線、青は P を 3 辺で折り返した Pa、Pb、Pc を通る直線で、垂心 H を通る。線分 PH の中点 N は Simson 線と九点円(オレンジ)の上にある 赤は P の Simson 線、青は P を 3 辺で折り返した Pa、Pb、Pc を通る直線で、垂心 H を通る。線分 PH の中点 N は Simson 線と九点円(オレンジ)の上にある
図 1 の青い直線は、赤い Simson 線を $P$ を中心に 2 倍に広げたものに見える。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 外接円の上のどの点でも、3 辺で折り返した 3 点は一直線に並ぶか。→ thm-stnr-main (1)
  2. その直線はいつも垂心 $H$ を通るか。→ thm-stnr-main (2)
  3. Simson 線と垂心や九点円の関係は何か。→ cor-stnr-midpoint
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    足は $P$ と折り返した点の中点比 $2$ の相似拡大相似変換で直線は直線に移る
    垂心を辺で折り返すと外接円の上折り返した円は $H$ を通る鏡映で円周角の向きが反転する
    3 点の傾きが等しく、$H$ も乗るSteiner 線$H$ を通る直線の族

言葉の準備:相似拡大と折り返し

相似拡大

点 $P$ と $0$ でない実数 $k$ について、点 $X$ を、$\overrightarrow{PX'}=k\,\overrightarrow{PX}$ を満たす点 $X'$ に移す変換を、$P$ を中心とする比 $k$ の 相似拡大 といい、$\varphi_{P,k}$ と書く。

相似拡大は直線をそれと平行な直線に移し、同じ直線の上の点は同じ直線の上の点に移る(相似変換と相似の中心)。たとえば $\varphi_{P,2}$ で直線 $\ell$ の上の 2 点 $X$、$Y$ の像を $X'$、$Y'$ とすると、$\overrightarrow{X'Y'}=\overrightarrow{PY'}-\overrightarrow{PX'}=2\overrightarrow{XY}$ なので、直線 $X'Y'$ は $\ell$ と平行である。
点 $P$ を直線 $BC$ で折り返した点 $P_a$ は、$P$ から $BC$ に下ろした垂線の足 $D$ について、線分 $PP_a$ の中点が $D$ になる点である($P$ が直線 $BC$ の上にあるときは $P_a=P=D$)。つまり
$$ \overrightarrow{PP_a}=2\,\overrightarrow{PD},\qquad P_a=\varphi_{P,2}(D) $$
である。「$P$ を折り返す」ことは「足をとってから $P$ を中心に 2 倍に広げる」ことと同じである。直線 $BC$ に関する折り返しを $\sigma_{BC}$、足をとる写像を $\pi_{BC}$ と書くと、次の図式が成り立つ。
$$ \xymatrix{ P \ar[r]^{\pi_{BC}} \ar[dr]_{\sigma_{BC}} & D \ar[d]^{\varphi_{P,2}} \\ & P_a } $$
図式が可換とは、$\sigma_{BC}(P)=\varphi_{P,2}\bigl(\pi_{BC}(P)\bigr)$、つまり $P_a=2D-P$(位置ベクトルで)ということである。ただし $\varphi_{P,2}$ の中心は点 $P$ そのものなので、この等式は点ごとの関係として読む。
有向角(Simson線 の有向角の定義。直線が $x$ 軸となす角の差を $180^\circ$ を法として測ったもの)は、折り返しで符号が変わる。

折り返しは有向角の符号を変える

直線 $m$ に関する折り返しを $\sigma$ とする。どの 2 本の直線 $\ell$、$\ell'$ についても
$$ \measuredangle\bigl(\sigma(\ell),\sigma(\ell')\bigr)=-\measuredangle(\ell,\ell') $$
である。とくに $\measuredangle\bigl(m,\sigma(\ell)\bigr)=-\measuredangle(m,\ell)$ である。

$m$ を $x$ 軸にとる

座標軸を回しても、2 本の直線が $x$ 軸となす角はどちらも同じだけずれるので、差である有向角は変わらない。そこで $m$ を $x$ 軸にとる。$x$ 軸に関する折り返しは $(x,y)$ を $(x,-y)$ に移すので、$x$ 軸と角 $\theta$ をなす直線を、角 $-\theta$ をなす直線に移す。よって
$$ \measuredangle\bigl(\sigma(\ell),\sigma(\ell')\bigr)=(-\theta_{\ell'})-(-\theta_\ell)=-(\theta_{\ell'}-\theta_\ell)=-\measuredangle(\ell,\ell') $$
である。$\sigma(m)=m$ なので、$\ell=m$ とすれば後半を得る。$\square$

主定理:折り返した 3 点は垂心を通る直線の上にある

以下、三角形 $ABC$ の外接円を $\Gamma$、垂心を $H$ とする。$P$ は $\Gamma$ の上の頂点でない点で、$P$ を直線 $BC$、$CA$、$AB$ で折り返した点を $P_a$、$P_b$、$P_c$、足を $D$、$E$、$F$、Simson 線を $s_P$ とする。

垂心を通る 3 つの円

証明の鍵は、外接円を辺で折り返した円が垂心を通ることである。

折り返した外接円は垂心を通る

外接円 $\Gamma$ を直線 $BC$、$CA$、$AB$ で折り返した円を $\Gamma_a$、$\Gamma_b$、$\Gamma_c$ とする。3 つの円はどれも垂心 $H$ を通る。また、$\Gamma_a$ は $B$、$C$、$P_a$ を、$\Gamma_b$ は $C$、$A$、$P_b$ を、$\Gamma_c$ は $A$、$B$、$P_c$ を通る。

垂心の折り返しが外接円の上にあることから

九点円 の命題(外接円を九点円に移す 2 つの相似拡大)の 3 により、$H$ を直線 $BC$ で折り返した点 $H_a$ は $\Gamma$ の上にある。折り返し $\sigma_{BC}$ は $\Gamma$ を $\Gamma_a$ に移すので、$H_a$ の像 $\sigma_{BC}(H_a)=H$ は $\Gamma_a$ の上にある(折り返しを 2 回続けるともとにもどる)。$B$、$C$ は直線 $BC$ の上にあって折り返しで動かないので、$\Gamma_a$ の上にある。$P$ は $\Gamma$ の上にあるので、その像 $P_a$ は $\Gamma_a$ の上にある。$\Gamma_b$、$\Gamma_c$ も同じである。$\square$

折り返した円を座標で確かめる

ex-stnr-start の三角形で、$\Gamma$ の中心 $O(0,0)$ を直線 $BC$($y=-3$)で折り返すと $(0,-6)$ なので、$\Gamma_a$ は中心 $(0,-6)$、半径 $5$ の円である。$H(-3,-2)$ は $(-3)^2+(-2+6)^2=9+16=25$、$P_a(0,-1)$ は $0^2+(-1+6)^2=25$ で、どちらも $\Gamma_a$ の上にある。同じく $O$ を直線 $CA$、$AB$ で折り返した点は $(1,1)$、$(-7,1)$ で、$H$ からの距離の 2 乗は $(-4)^2+(-3)^2=25$、$4^2+(-3)^2=25$ である。

外接円を BC、CA で折り返した円(紫と黄緑の破線)はどちらも垂心 H を通り、それぞれ Pa、Pb を通る 外接円を BC、CA で折り返した円(紫と黄緑の破線)はどちらも垂心 H を通り、それぞれ Pa、Pb を通る

主定理と証明

Steiner 線の定理

三角形 $ABC$ の外接円 $\Gamma$ の上の、頂点でない点 $P$ について、次が成り立つ。
(1) $P$ を直線 $BC$、$CA$、$AB$ で折り返した 3 点 $P_a$、$P_b$、$P_c$ は、互いに異なり、一直線上にある。その直線は、Simson 線 $s_P$ を相似拡大 $\varphi_{P,2}$ で移した直線で、$s_P$ と平行である。
(2) (1) の直線は、三角形 $ABC$ の垂心 $H$ を通る。

Steiner 線

thm-stnr-main の直線を、$P$ の Steiner 線(シュタイナー線)という。

相似拡大と、折り返した円の円周角

方針:(1) は Simson 線を 2 倍に広げるだけで得られる。(2) は、$H$ から $P_a$ と $P_b$ を見た向きが等しいことを、lem-stnr-circle の 2 つの円と外接円 $\Gamma$ の円周角で示す。
段 1((1))。Simson線 の定理により、$D$、$E$、$F$ は Simson 線 $s_P$ の上にあり、互いに異なる($P$ は頂点でない外接円の上の点なので、3 辺を含む直線の上にない)。$P_a=\varphi_{P,2}(D)$、$P_b=\varphi_{P,2}(E)$、$P_c=\varphi_{P,2}(F)$ で、相似拡大は異なる点を異なる点に、同じ直線の上の点を同じ直線の上の点に移すので、$P_a$、$P_b$、$P_c$ は互いに異なり、$s_P$ の像である 1 本の直線の上にある。この直線は $s_P$ と平行である。
段 2(頂点の名前の付け方)。$H$ が頂点に一致するのは直角三角形で直角の頂点のときだけで($H=C$ なら $C$ は $A$ からの垂線の上にあり、$AC\perp BC$)、直角は 1 つしかない。そこで、名前を付けかえて $H\ne C$ としてよい。また、$H=P_a$ または $H=P_b$ なら、$H$ は (1) の直線の上にあり (2) が成り立つ。以下 $H\ne P_a$、$H\ne P_b$ とする。
段 3(円 $\Gamma_a$ で角を移す)。lem-stnr-circle により、$H$、$B$、$C$、$P_a$ は円 $\Gamma_a$ の上にある。$P_a\ne B$、$P_a\ne C$ である(折り返しは 1 対 1 で、$B$、$C$ を動かさず、$P\ne B$、$P\ne C$)。$H=B$ でなければ、$H$、$B$ は円 $\Gamma_a$ の上で $P_a$、$C$ と異なる点なので直線 $P_aC$ の上になく(円の上の異なる 3 点は一直線上にない)、Simson線 の有向角による共円の判定により
$$ \measuredangle P_aHC=\measuredangle P_aBC $$
である。$H=B$ のときは両辺が同じ角なので、この式はそのまま成り立つ。右辺は、直線 $BP$ と直線 $BC$ を $\sigma_{BC}$ で移した 2 本の間の角なので、lem-stnr-mirror により
$$ \measuredangle P_aBC=-\measuredangle PBC=\measuredangle CBP $$
である。
段 4(円 $\Gamma_b$ で角を移す)。同じく、$H$、$A$、$C$、$P_b$ は円 $\Gamma_b$ の上にあり、段 3 と同じ理由で
$$ \measuredangle P_bHC=\measuredangle P_bAC=-\measuredangle PAC=\measuredangle CAP $$
である。
段 5(外接円の円周角)。$A$、$B$、$C$、$P$ は $\Gamma$ の上の異なる 4 点なので、$A$、$B$ は直線 $CP$ の上になく、有向角による共円の判定により $\measuredangle CBP=\measuredangle CAP$ である。段 3・4 と合わせて
$$ \measuredangle P_aHC=\measuredangle P_bHC $$
である。
段 6(結論)。段 5 の式は $\measuredangle(HP_a,HC)=\measuredangle(HP_b,HC)$ ということで、両辺の符号を変えると $\measuredangle(HC,HP_a)=\measuredangle(HC,HP_b)$ である(Simson線 の有向角の性質 (ii))。2 本の直線 $HP_a$、$HP_b$ はどちらも $H$ を通るので、性質 (iii) により一致する。よって $H$ は直線 $P_aP_b$、つまり (1) の直線の上にある。$\square$

段 2 で $H=P_a$ となる場合は実際に起こる。$P$ が $H_a$($H$ を $BC$ で折り返した点)に一致するときである。ex-stnr-obtuse の (2) がその例である。

Simson 線は $PH$ の中点を通る

Simson 線と九点円

外接円の上の頂点でない点 $P$ の Simson 線 $s_P$ は、線分 $PH$ の中点 $N_P$ を通る。$N_P$ は三角形 $ABC$ の九点円の上にある。

比 $\frac12$ の 2 つの相似拡大

$\varphi_{P,\frac12}$ は $\varphi_{P,2}$ の逆の変換なので、Steiner 線を $s_P$ に移す。thm-stnr-main (2) により $H$ は Steiner 線の上にあるので、その像 $\varphi_{P,\frac12}(H)=N_P$ は $s_P$ の上にある。一方、九点円 の命題(2 つの相似拡大)の 2 により、$H$ を中心とする比 $\frac12$ の相似拡大は外接円 $\Gamma$ を九点円に移す。$P$ は $\Gamma$ の上にあるので、その像である $HP$ の中点 $N_P$ は九点円の上にある。$\square$

ex-stnr-start では、$PH$ の中点は $\left(\dfrac{0-3}2,\dfrac{-5-2}2\right)=\left(-\dfrac32,-\dfrac72\right)$ で、Simson 線 $y=\dfrac13x-3$ の上にある($-\dfrac12-3=-\dfrac72$)。九点円の中心は $OH$ の中点 $\left(-\dfrac32,-1\right)$、半径は $\dfrac52$ で、中心から $N_P$ までの距離は $\sqrt{0^2+\left(-\dfrac52\right)^2}=\dfrac52$ である。

例:鈍角三角形と特別な点

鈍角三角形の Steiner 線

Simson線 の鈍角三角形 $A(0,5)$、$B(-5,0)$、$C(4,3)$ を使う。外接円は $x^2+y^2=25$ で、中心が原点なので垂心は $H=A+B+C=(-1,8)$ である(三角形の垂心)。$\angle A$ が鈍角なので、$H$ は三角形の外にある。
(1) $P(-3,-4)$。足は $D\left(-\dfrac{22}5,\dfrac15\right)$、$E\left(\dfrac65,\dfrac{22}5\right)$、$F(-6,-1)$ で、折り返した点は
$$ P_a=\left(-\frac{29}5,\frac{22}5\right),\qquad P_b=\left(\frac{27}5,\frac{64}5\right),\qquad P_c=(-9,2) $$
である。$P_c$ から見た傾きは、$P_a$ へ $\dfrac{\frac{22}5-2}{-\frac{29}5+9}=\dfrac{\frac{12}5}{\frac{16}5}=\dfrac34$、$P_b$ へ $\dfrac{\frac{64}5-2}{\frac{27}5+9}=\dfrac{\frac{54}5}{\frac{72}5}=\dfrac34$、$H$ へ $\dfrac{8-2}{-1+9}=\dfrac34$ で、4 点は 1 本の直線の上にある。
(2) $P(3,-4)$。足は $D(1,2)$、$E(6,2)$、$F(-3,2)$ で、折り返した点は $P_a=(-1,8)$、$P_b=(9,8)$、$P_c=(-9,8)$ である。Steiner 線は $y=8$ で、$H(-1,8)$ を通る。ここでは $P_a=H$ で、prf-stnr-main の段 2 の場合にあたる。$H$ を $BC$ で折り返すと $P$ にもどる(折り返しを 2 回続けるともとにもどる)ので、$P$ は垂心の折り返し $H_a$ そのものである。

鈍角三角形で P(-3,-4) の Steiner 線(青)は、三角形の外にある垂心 H を通る。赤は Simson 線 鈍角三角形で P(-3,-4) の Steiner 線(青)は、三角形の外にある垂心 H を通る。赤は Simson 線
P(3,-4) では Pa が垂心 H に一致し、Steiner 線は直線 y=8 になる P(3,-4) では Pa が垂心 H に一致し、Steiner 線は直線 y=8 になる
頂点と、頂点の反対側の点

ex-stnr-start の鋭角三角形で考える。
(1) $P=A^*(3,-4)$($AA^*$ は外接円の直径)。Simson線 で見たとおり、Simson 線は直線 $BC$($y=-3$)である。折り返した点は $P_a=(3,-2)$、$P_b=(5,-2)$、$P_c=(-11,-2)$ で、Steiner 線は $y=-2$ である。$P$ を中心に直線 $y=-3$ を 2 倍に広げると、$y$ 座標は $-4+2(-3+4)=-2$ になり、一致する。$H(-3,-2)$ はこの直線の上にある。辺 $BC$ の中点 $M_a(0,-3)$ は線分 $HA^*$ の中点であり($\left(\dfrac{-3+3}2,\dfrac{-2-4}2\right)=(0,-3)$)、これは 九点円 で示された「$H$ を $M_a$ について点対称に移した点は $A^*$」と同じことである。
(2) $P=A$(thm-stnr-main は頂点を除いたが、ここでも同じことが起こる)。$A$ は直線 $CA$、$AB$ の上にあるので $P_b=P_c=A$ で、$P_a$ は $A$ を $BC$ で折り返した点 $(-3,-10)$ である。2 点を通る直線は $x=-3$、つまり $A$ からの垂線で、$H$ を通る。Simson 線も同じ直線である。

Simson 線 $s_P$Steiner 線
作り方3 辺への垂線の足を通る3 辺で折り返した点を通る
通る特別な点$PH$ の中点(九点円の上)垂心 $H$
互いの関係Steiner 線を $\varphi_{P,\frac12}$ で移したもの$s_P$ を $\varphi_{P,2}$ で移したもの
$P(0,-5)$$y=\dfrac13x-3$$y=\dfrac13x-1$
$P=A^*(3,-4)$$y=-3$(直線 $BC$)$y=-2$
$P=A$$x=-3$($A$ からの垂線)$x=-3$(同じ直線)

例と反例

thm-stnr-main の条件を外すと何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
$P$ が外接円の上にある外接円の中心 $O$ を折り返す3 点が一直線上にある
通る点は垂心 $H$外心 $O$ や重心 $G$ に取りかえるSteiner 線がその点を通る
辺を含む直線で折り返す辺の中点について点対称に移す3 点が一直線上にある
反例:外接円の上にない点

ex-stnr-start の三角形で、$O(0,0)$ を直線 $BC$、$CA$、$AB$ で折り返すと $(0,-6)$、$(1,1)$、$(-7,1)$ になる(ex-stnr-circle の円の中心)。$(1,1)$ と $(-7,1)$ は直線 $y=1$ の上にあるが、$(0,-6)$ はない。3 点は三角形を作る。外心が原点なので、$O$ を $BC$ で折り返した点は辺 $BC$ の中点の 2 倍 $B+C$ で、3 点は $H-A$、$H-B$、$H-C$ と書ける($H=A+B+C$)。この三角形は三角形 $ABC$ を $180^\circ$ 回して平行移動したもので、辺の長さは $\sqrt{50}$、$8$、$\sqrt{98}$、面積は $28$ と、もとの三角形と等しい。

外接円の中心 O を 3 辺で折り返した 3 点は、一直線上に並ばず三角形を作る 外接円の中心 O を 3 辺で折り返した 3 点は、一直線上に並ばず三角形を作る

反例:垂心を外心・重心に取りかえる

ex-stnr-start の Steiner 線 $y=\dfrac13x-1$ は、$x=0$ で $y=-1$ なので外心 $O(0,0)$ を通らない。重心 $G\left(-1,-\dfrac23\right)$ では $\dfrac13\cdot(-1)-1=-\dfrac43\ne-\dfrac23$ で、$G$ も通らない。Steiner 線がいつも通る点は垂心であって、ほかの中心ではない。

反例:辺の中点について点対称に移す

ex-stnr-start の $P(0,-5)$ を、辺 $BC$、$CA$、$AB$ の中点 $(0,-3)$、$\left(\dfrac12,\dfrac12\right)$、$\left(-\dfrac72,\dfrac12\right)$ について点対称に移すと、$(0,-1)$、$(1,6)$、$(-7,6)$ になる($2\times$ 中点 $-P$)。後の 2 点は直線 $y=6$ の上にあるが、$(0,-1)$ はないので、3 点は一直線上にない。外心が原点なので、中点 $M_a$ についての点対称な点は $2M_a-P=B+C-P$ で、3 点は $-A-P+(A+B+C)$ などと書ける。3 点は三角形 $ABC$ を $180^\circ$ 回して平行移動した三角形の頂点であり、決して一直線には並ばない。

大学数学で見る:垂心を通る直線の族と変換の合成

Steiner 線の族

$P$ を外接円の上で動かすと、Steiner 線はすべて垂心 $H$ を通る。Simson線 の命題(Simson 線の向き)により、頂点でない 2 点 $P\ne Q$ の Simson 線のなす有向角は $\measuredangle QBP$ で、$B$、$P$、$Q$ は円の上の異なる 3 点なので一直線上になく、この角は $0$ でない。Steiner 線は Simson 線と平行なので、異なる点の Steiner 線は異なる向きをもつ。さらに $P$ が外接円を 1 周すると、Simson 線と同じく Steiner 線の向きは $180^\circ$ 回る。

外接円と、垂心を通る直線の対応

外接円の上の点 $P$ に、$P$ の Steiner 線を対応させると、$P$ が 1 周するあいだに、$H$ を通る直線が $H$ のまわりを半回転する。異なる点は異なる直線に移る。$H$ を通る直線の全体は向き($180^\circ$ を法とする角)で表せるので、円の上の点と $H$ を通る直線が、向きの角を通して結びついている。大学では、$H$ を通る直線の全体を 1 本の射影直線とみなし、この対応を円から射影直線への写像として調べる。

外接円の上の 12 点(同じ色の点)の Steiner 線は、すべて垂心 H を通る 外接円の上の 12 点(同じ色の点)の Steiner 線は、すべて垂心 H を通る

2 つの折り返しの合成

折り返しの合成は回転

$P_b$ は $P_a$ を直線 $BC$ で折り返してもとの $P$ にもどし、それを直線 $CA$ で折り返した点である。2 本の直線 $BC$、$CA$ は $C$ で交わるので、2 つの折り返しの合成 $\sigma_{CA}\circ\sigma_{BC}$ は $C$ を中心とする回転で、回転角は $2\measuredangle(BC,CA)$ である(平面の合同変換の分類)。とくに $CP_a=CP=CP_b$ である。ex-stnr-start では
$$ CP^2=(0-4)^2+(-5+3)^2=20,\quad CP_a^2=(0-4)^2+(-1+3)^2=20,\quad CP_b^2=(6-4)^2+(1+3)^2=20 $$
で、3 点は $C$ を中心とする半径 $\sqrt{20}$ の円の上にある。Steiner 線の定理は、相似拡大 $\varphi_{P,2}$・$\varphi_{P,\frac12}$、折り返し、回転という、相似変換の群(相似変換と相似の中心)の元を組み合わせて理解できる。

複素数による別証

単位円と複素数で (2) を示す別証を開く

外接円を単位円にとり、$A$、$B$、$C$、$P$ を複素数 $a$、$b$、$c$、$p$ で表す(絶対値はすべて $1$)。外心が原点なので垂心は $h=a+b+c$ である(三角形の垂心。複素数平面と図形 も参照)。Simson線 の複素数による別証の段 1 により、$P$ を直線 $BC$ で折り返した点は $b+c-bc\,\overline p$ で、$\overline p=\dfrac1p$ なので $p_a=b+c-\dfrac{bc}p$ である。同じく $p_b=c+a-\dfrac{ca}p$ である。

$$p_a-h=-a-\frac{bc}p=-\frac{ap+bc}p,\qquad p_b-h=-\frac{bp+ca}p$$

なので、$p_b\ne h$ のとき $\dfrac{p_a-h}{p_b-h}=\dfrac{ap+bc}{bp+ca}$ である。共役をとると、$\overline a=\dfrac1a$ などを使って

$$\overline{\left(\frac{ap+bc}{bp+ca}\right)}=\frac{\frac1{ap}+\frac1{bc}}{\frac1{bp}+\frac1{ca}}=\frac{\frac{bc+ap}{abcp}}{\frac{ca+bp}{abcp}}=\frac{ap+bc}{bp+ca}$$

となり、比は自分自身の共役に等しいので実数である。よって $h$、$p_a$、$p_b$ は一直線上にある。$p_b=h$ なら、$H$ は $P_b$ として直線の上にある。$\square$

さらに先へ

  • 4 本の直線から 3 本ずつ選んでできる 4 つの三角形では、外接円が 1 点 $P$(Miquel 点)を共有し、$P$ の Simson 線と Steiner 線は 4 つの三角形で共通になる。したがって 4 つの三角形の垂心は一直線上に並ぶ。これが次の記事 Miquelの定理 である。
  • Simson 線が線分 $PH$ を二等分することは Wei26 にも記されている。垂心・九点円の中心・外心・重心の並びは Euler線 で扱う。
  • 等角共役 の反例(直角三角形の外接円の上の点を 3 辺で折り返すと一直線に並ぶ)は、この記事の Steiner 線の例になっている。

関連項目

参考文献

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