等質空間(homogeneous space)とは、群が推移的に作用する空間のことであり、どの点も群の元で任意の点に移せるので、空間がどの点から見ても同じ形をしている。Lie 群 $G$ の閉部分群 $H$ による剰余類空間 $G/H$ には、射影が沈め込みになる多様体の構造がただ 1 つ入る。逆に Lie 群が多様体に滑らかかつ推移的に作用すれば、多様体は固定部分群による剰余類多様体と同変に微分同相になる。球面・Grassmann 多様体・旗多様体・双曲空間・上半平面はこの形で記述され、等質な Riemann 多様体は測地的に完備である。
等質空間(homogeneous space)とは、群が推移的に作用する空間のこと、つまり群の元で任意の点を任意の点に移せる空間のことである。どの点から見ても空間が同じ形をしているので、1 点で調べたことが全体に通用する。球面は回転群の、Euclid 空間は合同変換群の、双曲空間 は Lorentz 群の等質空間であり、射影空間・Grassmann 多様体・旗多様体 も行列の群の等質空間として現れる。
群 $G$ が集合 $X$ に推移的に作用すると、点 $p$ の固定部分群 $H=G_p$ について $X$ は剰余類の集合 $G/H$ と同一視される(群の作用 の系「推移的な作用と剰余類」)。$G$ が Lie 群で $X$ が多様体のとき、この同一視が多様体としての微分同相になること、そのために $G/H$ に多様体の構造が入ることが、この記事の 2 つの主定理である。後者には閉部分群定理を引用し、残りは記事内で証明する。作用が自由でもある場合(主等質空間)は トーサー、等長変換群が推移的に作用する Riemann 多様体の幾何は Riemann幾何学 が扱う。
群 $G$ が集合 $X$ に推移的に作用するとき、$X$ を $G$ の 等質空間($G$ 等質空間)という。位相空間・多様体の場合は次のようにいう。
$G$ を位相群、$H$ を部分群とする。左剰余類の集合 $G/H=\{aH\mid a\in G\}$ に、射影 $\pi\colon G\to G/H$、$\pi(a)=aH$ による商位相を入れたものを 剰余類空間 という。$G$ は $G/H$ に $g\cdot(aH):=(ga)H$ で作用し、この作用は推移的である。
剰余類空間 $G/H$ では点 $eH$ の固定部分群が $H$ であり、点 $aH$ の固定部分群は $aHa^{-1}$ である。
$G$ を位相群、$H$ を部分群とする。
1.$U\subset G$ が開集合なら $\pi^{-1}(\pi(U))=UH=\bigcup_{h\in H}Uh$ は右移動(同相写像)による開集合の像の和なので開集合で、商位相の定義から $\pi(U)$ は開集合である。$\mathrm{id}\times\pi\colon G\times G\to G\times G/H$ は連続な開写像の積なので連続な開全射であり、したがって商写像である。作用を $\alpha$、積を $m$ とすると $\alpha\circ(\mathrm{id}\times\pi)=\pi\circ m$ は連続なので、$\alpha$ は連続である。
2.$G/H$ が Hausdorff なら 1 点 $\{eH\}$ は閉集合で、$H=\pi^{-1}(eH)$ は閉集合である。逆に $H$ が閉集合で $aH\ne bH$ とすると $a^{-1}b\notin H$ であり、$(x,y)\mapsto x^{-1}y$ の連続性から、$a$、$b$ の開近傍 $A$、$B$ で $A^{-1}B\cap H=\emptyset$ となるものがある。1 から $\pi(A)$、$\pi(B)$ は開集合で、$xH=yH$($x\in A$、$y\in B$)なら $x^{-1}y\in H$ となり矛盾するので、$\pi(A)\cap\pi(B)=\emptyset$ である。
3.$G$ の可算な開基 $\{U_i\}$ について、$\{\pi(U_i)\}$ は開集合の族で、$G/H$ の開集合 $V$ と点 $aH\in V$ に対し $a\in U_i\subset\pi^{-1}(V)$ となる $U_i$ をとれば $aH\in\pi(U_i)\subset V$ なので、開基をなす。$\square$
$H$ が閉でないと $G/H$ は Hausdorff でなく、多様体にならない(ex-hom-counterexamples の 1 行目)。
以下、Lie 群 $G$ の Lie 環を $\mathfrak{g}=T_eG$、指数写像を $\exp\colon\mathfrak{g}\to G$ と書く。$\exp$ は滑らかで、$0$ での微分は恒等写像である(Lee13 Proposition 20.8、p. 519)。閉部分群 $H$ について次を使う。
$G$ を Lie 群、$H$ を閉部分群とする。剰余類空間 $G/H$ には、$\pi\colon G\to G/H$ が滑らかな沈め込みになる滑らかな多様体の構造がただ 1 つあり、$\dim G/H=\dim G-\dim H$ である。この構造について $G$ の $G/H$ への作用は滑らかで、$G/H$ は $G$ の等質空間である。さらに、$G/H$ の各点のまわりで $\pi$ の滑らかな局所切断がとれる。
証明の考え方は、$\mathfrak{h}$ の補空間 $\mathfrak{m}$ の $0$ の近くの元 $X$ を $\exp(X)H$ に送る写像が $eH$ のまわりの座標になることを示し、これを左移動で各点に運ぶことである。
$\mathfrak{g}=\mathfrak{m}\oplus\mathfrak{h}$ となる部分空間 $\mathfrak{m}$ を 1 つとり、$\Phi\colon\mathfrak{m}\times H\to G$、$\Phi(X,h):=\exp(X)h$ とおく。$H$ は埋め込まれた部分多様体なので $\Phi$ は滑らかである。
段 1(局所微分同相). $\Phi(X,e)=\exp X$、$\Phi(0,h)=h$ なので、$d\Phi_{(0,e)}(X,Y)=X+Y$($X\in\mathfrak{m}$、$Y\in\mathfrak{h}$)であり、$\mathfrak{g}=\mathfrak{m}\oplus\mathfrak{h}$ から同型である。$k\in H$ の右移動を $R_k$ と書くと $\Phi(X,hk)=R_k\Phi(X,h)$ なので、$d\Phi_{(X,k)}\circ(\mathrm{id}\times dR_k)=dR_k\circ d\Phi_{(X,e)}$ であり、$d\Phi_{(X,k)}$ が同型であることと $d\Phi_{(X,e)}$ が同型であることは同値である。後者は $X$ について開条件(行列式が $0$ でない)で $X=0$ で成り立つので、$0$ の開近傍 $W_0\subset\mathfrak{m}$ があって、$\Phi$ は $W_0\times H$ の各点で局所微分同相である。
段 2(単射性). $\Psi\colon\mathfrak{m}\times\mathfrak{h}\to G$、$\Psi(X,Y):=\exp(X)\exp(Y)$ も $0$ での微分が $(X,Y)\mapsto X+Y$ なので、逆写像定理により $0$ の開近傍 $W_1\subset\mathfrak{m}$、$U_1\subset\mathfrak{h}$ があって $\Psi$ は $W_1\times U_1$ から $e$ の開近傍 $V$ への微分同相である。$\exp|_{\mathfrak{h}}$ は $H$ に値をとる滑らかな写像で、$0$ での微分は $\mathfrak{h}=T_eH$ の恒等写像なので、$U_1$ を小さくとり直せば $\exp(U_1)$ は $H$ の開集合である。$H$ は相対位相をもつので、$G$ の開集合 $O$ で $H\cap O=\exp(U_1)$ となるものがある。$\exp$ と積の連続性から、$0$ の開近傍 $W\subset W_0\cap W_1$ を、$X,X'\in W$ なら $\exp X\in V$ かつ $\exp(-X')\exp(X)\in O$ となるようにとる。
$X,X'\in W$、$h,h'\in H$ で $\exp(X)h=\exp(X')h'$ とすると、$k:=\exp(-X')\exp(X)=h'h^{-1}$ は $H\cap O=\exp(U_1)$ に属するので $k=\exp Y$($Y\in U_1$)と書ける。すると $\Psi(X,0)=\exp X=\exp(X')\exp(Y)=\Psi(X',Y)$ で、$\Psi$ は $W_1\times U_1$ の上で単射なので $X=X'$、$Y=0$ であり、$k=e$ から $h=h'$ である。よって $\Phi$ は $W\times H$ の上で単射である。
段 3(座標). 段 1・2 から、$\Omega:=\Phi(W\times H)=\exp(W)H$ は $G$ の開集合で、$\Phi\colon W\times H\to\Omega$ は微分同相である。$\sigma\colon W\to G/H$、$\sigma(X):=\exp(X)H$ とおく。$\sigma(X)=\sigma(X')$ なら $\exp X'=\exp(X)h$ となる $h\in H$ があり、$\Phi(X',e)=\Phi(X,h)$ から $X=X'$ なので、$\sigma$ は単射である。$W$ の開集合 $W'$ について $\pi^{-1}(\sigma(W'))=\Phi(W'\times H)$ は開集合なので $\sigma(W')$ は開集合であり、$\sigma$ は連続($\pi\circ\exp$)で開な単射、つまり開集合 $\sigma(W)$ の上への同相写像である。$a\in G$ の左移動 $\tau_a(bH):=abH$ は $G/H$ の同相写像なので(prop-hom-quotient-topology の 1)、$\sigma_a:=\tau_a\circ\sigma$ も開集合 $a\sigma(W)$ の上への同相写像で、これらの像は $G/H$ を覆う。
座標変換を調べる。$\sigma_a(X)=\sigma_b(X')$ は $b^{-1}a\exp(X)\in\exp(X')H$、すなわち $\Phi^{-1}\bigl(b^{-1}a\exp X\bigr)=(X',h)$(ある $h\in H$)と同値である。したがって $\sigma_b^{-1}\circ\sigma_a$ は $X\mapsto\mathrm{pr}_1\Phi^{-1}(b^{-1}a\exp X)$ であり、滑らかな写像の合成なので滑らかである。prop-hom-quotient-topology の 2・3 から $G/H$ は Hausdorff かつ第 2 可算なので、$\{(a\sigma(W),\sigma_a^{-1})\}$ を座標近傍系として $G/H$ は $\dim\mathfrak{m}=\dim G-\dim H$ 次元の滑らかな多様体になる。
段 4(沈め込み・切断・作用). $\pi^{-1}(a\sigma(W))=a\Omega$ の上で、$\sigma_a^{-1}\circ\pi\bigl(a\Phi(X,h)\bigr)=X$ である。座標 $a\Phi(X,h)\leftrightarrow(X,h)$ で見ると $\pi$ は射影 $(X,h)\mapsto X$ なので、$\pi$ は滑らかな沈め込みである。$s_a(\sigma_a(X)):=a\exp X$ は $a\sigma(W)$ の上の滑らかな局所切断である。作用については、$(g,\sigma_a(X))$ を $g\cdot\sigma_a(X)=\sigma_{ga}(X)$ に送る写像を $b\sigma(W)$ の座標で書くと $(g,X)\mapsto\mathrm{pr}_1\Phi^{-1}(b^{-1}ga\exp X)$ で、$(g,X)$ について滑らかである。
段 5(一意性). 写像 $F\colon G/H\to N$ について、$F\circ\pi$ が滑らかなら、局所切断を使って局所的に $F=(F\circ\pi)\circ s_a$ と書けるので $F$ は滑らかである。$G/H$ の別の滑らかな構造で $\pi$ が滑らかな沈め込みになるものがあれば、その構造についても沈め込みの局所切断がある(Lee13 Theorem 4.26、p. 88)。恒等写像に両方向からこの議論を当てはめると、2 つの構造の間の恒等写像は両方向に滑らかである。$\square$
Lie 群 $G$ が多様体 $M$ に滑らかかつ推移的に作用しているとし、$p\in M$、$H:=G_p$(固定部分群)とする。このとき $H$ は $G$ の閉部分群であり、
$$
F\colon G/H\to M,\qquad F(gH):=g\cdot p
$$
は $G$ 同変な微分同相写像である。とくに $\dim M=\dim G-\dim G_p$ である。
段 1($H$ は閉). 軌道写像 $\theta_p\colon G\to M$、$\theta_p(g):=g\cdot p$ は連続で、$M$ は Hausdorff なので 1 点 $\{p\}$ は閉集合である。$H=\theta_p^{-1}(p)$ は閉集合である。thm-hom-coset-manifold により $G/H$ は多様体である。
段 2(同変な全単射). $F$ が well-defined で $F(g'gH)=g'\cdot F(gH)$ をみたす全単射であることは、群の作用 の系「推移的な作用と剰余類」である。
段 3(滑らかさ). $F\circ\pi=\theta_p$ は滑らかである。thm-hom-coset-manifold の局所切断 $s$ を使えば局所的に $F=\theta_p\circ s$ なので、$F$ は滑らかである。
段 4(階数は一定). $g\in G$ の $G/H$ への作用を $\tau_g$、$M$ への作用を $\ell_g$ とすると、どちらも微分同相写像で、$F\circ\tau_g=\ell_g\circ F$ である。$eH$ で微分すると $dF_{gH}\circ(d\tau_g)_{eH}=(d\ell_g)_p\circ dF_{eH}$ で、$(d\tau_g)_{eH}$、$(d\ell_g)_p$ は同型なので、$dF_{gH}$ の階数は $dF_{eH}$ の階数 $r$ に等しい。
段 5(はめ込み). $m:=\dim G/H$ とする。階数一定の写像の標準形(Lee13 Theorem 4.12、p. 81)により、各点のまわりの座標で $F$ は $(x^1,\dots,x^m)\mapsto(x^1,\dots,x^r,0,\dots,0)$ と書ける。$r< m$ なら $x^m$ だけが異なる 2 点の像が一致して $F$ の単射性に反するので、$r=m$ であり、$F$ ははめ込みで、$m\le\dim M$ である。
段 6(次元の一致). $m<\dim M$ なら、$G/H$ は第 2 可算な多様体なので $F(G/H)$ は $M$ の測度 $0$ の集合である(Lee13 Corollary 6.11、p. 131)。ところが $F$ は全射で、$M$ は測度 $0$ でないので矛盾する。よって $m=\dim M$ で、$dF$ は各点で同型である。逆写像定理から $F$ は局所微分同相で、全単射なので逆写像も滑らかであり、$F$ は微分同相写像である。$\square$
$G/H$ は点 $eH$ を特別扱いしているように見えるが、$p$ を $q=g\cdot p$ に替えると $G_q=gG_pg^{-1}$ で、$G/G_q$ と $G/G_p$ は $aG_q\mapsto ag G_p$ で同変に微分同相になり、どの点を基点にしても同じ空間が得られる。段 6 で第 2 可算性を使ったことに注意する。$G$ が第 2 可算でないと結論は成り立たない(ex-hom-counterexamples の 3 行目)。同じ定理は Lee13 Theorem 21.17・21.18(pp. 551–552)に、等質空間の構成定理と特徴づけ定理として述べられている。
以下の作用はどれも行列の積から定まり滑らかで、thm-hom-identification により微分同相が得られる。
$\mathbb{H}:=\{z\in\mathbb{C}\mid\operatorname{Im}z>0\}$ に $SL_2(\mathbb{R})$ を
$$
\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}\cdot z:=\frac{az+b}{cz+d}
$$
で作用させる。$z\in\mathbb{H}$ なら $cz+d\ne0$ で、$\operatorname{Im}\dfrac{az+b}{cz+d}=\dfrac{\operatorname{Im}z}{|cz+d|^2}>0$ なので値は $\mathbb{H}$ に入り、成分の有理式なので作用は滑らかである。推移性:$z=x+iy$ に対し $\begin{pmatrix}\sqrt y&x/\sqrt y\\0&1/\sqrt y\end{pmatrix}\cdot i=x+iy$ である。固定部分群:$\dfrac{ai+b}{ci+d}=i$ は $ai+b=-c+di$、すなわち $a=d$、$b=-c$ と同値で、$ad-bc=a^2+b^2=1$ と合わせて固定部分群は回転行列の群 $\mathrm{SO}(2)$ である。よって $\mathbb{H}\cong SL_2(\mathbb{R})/\mathrm{SO}(2)$ である。$-I$ はすべての点を動かさないので、作用は $PSL_2(\mathbb{R})=SL_2(\mathbb{R})/\{\pm I\}$ の作用を経由する。
等質空間では、$G$ で不変な量は 1 点での値で決まる。Riemann 計量では次のようになる。
$(M,g)$ を等質 Riemann 多様体とする。
1.等長写像 $\varphi$ は Levi-Civita 接続を保つ(Lee18 Proposition 5.13、p. 125)。曲率テンソルとスカラー曲率は Levi-Civita 接続と計量から作られるので、$\varphi$ はこれらも保つ。よってスカラー曲率 $S$ について $S\circ\varphi=S$ である。等長写像は任意の点を任意の点に移すので $S$ は定数である。
2.$p\in M$ を固定する。指数写像の定義域 $\mathcal{E}$ は $TM$ の開集合で零切断を含む(Lee18 Proposition 5.19、p. 128)ので、$\varepsilon>0$ を、$|v|<\varepsilon$ の $v\in T_pM$ がすべて $\mathcal{E}$ に入るようにとれる。$v$ を単位ベクトルとすると、$p$ から速度 $v$ で出る測地線 $\gamma_v$ は $\gamma_v(t)=\gamma_{tv}(1)$ なので $|t|<\varepsilon$ で定義される。点 $q$ に対し $\varphi(p)=q$ となる等長写像 $\varphi$ をとると、$\varphi$ は測地線を測地線に移し(Lee18 Proposition 5.20、p. 130)、$d\varphi_p$ は単位ベクトルを単位ベクトルに移すので、$q$ から出る単位速さの測地線もすべて $|t|<\varepsilon$ で定義される。単位速さの極大な測地線 $\gamma\colon(a,b)\to M$ で $b<\infty$ のものがあったとすると、$t_0:=b-\varepsilon/2$ での位置と速度から出る測地線は $|t|<\varepsilon$ で定義され、一意性により $\gamma(t_0+t)$ と一致するので、$\gamma$ は $b+\varepsilon/2$ まで延長でき、極大性に反する。$a>-\infty$ の場合も同様である。速さ $c>0$ の測地線は単位速さの測地線を $t\mapsto ct$ で径数変換したものであり、速さ $0$ の測地線は定値写像なので、すべての測地線が $\mathbb{R}$ 全体に延長できる。$\square$
2 の証明は、等長写像が接ベクトルの長さ $|v|$ を保つことを使っている。擬リーマン計量(擬リーマン多様体)では $|v|$ に当たるノルムがないので、この議論はそのままでは使えない。また、Lie 群 $G$ が $M$ に推移的に作用し、固定部分群がコンパクトなら、$G$ で不変な Riemann 計量が $M$ にある(Lee18 Theorem 3.17、p. 73、Corollary 3.18、p. 74。この記事では証明しない)。球面・Grassmann 多様体・双曲空間の標準的な計量はこうして得られる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $H$ が閉部分群 | $G=T^2$、$H$ は無理数の傾きの直線 | $G/H$ が Hausdorff であること(多様体になること) |
| 作用が推移的 | $\mathbb{R}$ が $T^2$ に無理数の傾きの直線に沿って作用 | $F\colon G/G_p\to M$ が微分同相であること |
| $G$ が第 2 可算 | 離散位相の $\mathbb{R}$ が $\mathbb{R}$ に平行移動で作用 | $F\colon G/G_p\to M$ が同相であること |
1 行目:$H$ は単射な準同型 $t\mapsto(e(t),e(\alpha t))$($\alpha$ は無理数)の像で、$T^2$ で稠密だが $T^2$ 全体ではない(Lie群 の例「反例:像が閉でない 1 径数部分群」)。各剰余類 $gH$ も稠密である。$G/H$ の空でない開集合 $V$ について、$\pi^{-1}(V)$ は空でない開集合で剰余類の和なので、稠密な剰余類はどれも $\pi^{-1}(V)$ と交わり、したがって含まれる。よって $V=G/H$ で、$G/H$ の開集合は $\emptyset$ と全体だけである。$H\ne G$ なので $G/H$ は 2 点以上をもち、Hausdorff でない。
2 行目:$t\cdot(z,w):=(e(t)z,e(\alpha t)w)$ は滑らかな作用で、点 $p=(1,1)$ の固定部分群は自明である。$F\colon\mathbb{R}\to T^2$、$t\mapsto t\cdot p$ は単射なはめ込みだが、像は 1 行目の $H$ で $T^2$ 全体でないので、$F$ は全射でない。$\dim\mathbb{R}=1<2=\dim T^2$ であり、thm-hom-identification の段 6 で全射性を使う箇所が働かない。
3 行目:離散位相の $\mathbb{R}$ は 0 次元の多様体の条件のうち第 2 可算性を欠く(非可算個の点からなる)。作用 $(t,x)\mapsto t+x$ は推移的で固定部分群は自明であり、$F$ は恒等写像 $\mathbb{R}_{\text{離散}}\to\mathbb{R}$ で連続な全単射だが、1 点は離散位相では開集合で $\mathbb{R}$ では開集合でないので、同相でない。この場合、段 6 の測度 $0$ の議論で、$F$ の定義域が可算個の座標近傍で覆えないことが効いている。
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