Lagrange補間(Lagrange interpolation)とは、体 $F$ の相異なる $n$ 個の元 $x_i$ と任意の値 $y_i$ に対し、$p(x_i)=y_i$ を満たす次数 $n$ 未満の多項式がただ 1 つあることと、それを $p=\sum_iy_iL_i$($L_i=\prod_{j\ne i}\frac{x-x_j}{x_i-x_j}$)と書く公式である。線形代数では評価写像 $F[x]_{<n}\to F^n$ が同型であること(Vandermonde 行列式が $0$ でないこと)、環論では中国剰余定理 $F[x]/(\prod_i(x-x_i))\cong F^n$ にあたり、有限体の上ではすべての写像が多項式で書けることを導く。点が重なる場合や、係数が体でなく差 $x_i-x_j$ が可逆でない場合には、存在や一意性が崩れうる。
相異なる $n$ 個の点で値を指定すると、その値をとる次数 $n$ 未満の多項式がちょうど 1 つ決まる。これが Lagrange 補間であり、「$n$ 個の値」と「次数 $n$ 未満の多項式」が過不足なく対応するという主張である。この対応は、線形代数では評価写像が同型であること(Vandermonde 行列式が $0$ でないこと)として、環論では多項式環に対する中国剰余定理 $F[x]/\bigl(\prod_i(x-x_i)\bigr)\cong F^n$ として現れ、有限体の上では「あらゆる関数が多項式で書ける」ことを導く。数値計算で関数を近似する道具としての使い方と誤差の見積もりは Lagrange補間(高校数学) で扱っており、ここでは任意の体の上での代数的な構造を中心に述べる。
以下、$F$ を体とし、$F[x]$ を $F$ 係数の 1 変数多項式環、$F[x]_{< n}$ を次数 $n$ 未満の多項式($0$ を含む)全体のなす $n$ 次元の $F$ ベクトル空間とする。$F[x]_{< n}$ の基底として $1,x,\dots,x^{n-1}$ がとれる。
$n\ge1$ とし、$x_1,\dots,x_n\in F$ を相異なる元(補間点)、$y_1,\dots,y_n\in F$ を任意の元とする。$p(x_i)=y_i$($i=1,\dots,n$)を満たす $p\in F[x]_{< n}$ を、データ $(x_i,y_i)$ の 補間多項式 という。また
$$
L_i(x):=\prod_{j\ne i}\frac{x-x_j}{x_i-x_j}\qquad(i=1,\dots,n)
$$
を補間点 $x_1,\dots,x_n$ に対する Lagrange の基本多項式 といい、
$$
p(x)=\sum_{i=1}^ny_iL_i(x)
$$
を Lagrange の補間公式 という($n=1$ のときは $L_1=1$ と読む)。
$L_i$ は次数 $n-1$ の多項式で、分母 $\prod_{j\ne i}(x_i-x_j)$ は補間点が相異なるので $0$ でない。$L_i(x_i)=1$ であり、$j\ne i$ なら $L_i$ は因子 $x-x_j$ をもつので $L_i(x_j)=0$ である。すなわち
$$
L_i(x_j)=\delta_{ij}
$$
($i=j$ なら $1$、$i\ne j$ なら $0$)が成り立つ。補間公式が補間多項式を与えることはこの式からすぐに分かる(thm-lagint-main)。
補間点を $x_0,\dots,x_n$ の $n+1$ 個とし、次数 $n$ 以下の多項式で補間する書き方も広く使われる(Lagrange補間(高校数学) はこの書き方である)。以下では点の個数を $n$ とし、次数の上限を「$n$ 未満」と書く。
$\mathbb{Q}$ の上で、補間点 $-1,1,2$ に値 $2,0,5$ を与える。基本多項式は
$$
L_1=\frac{(x-1)(x-2)}{(-2)(-3)}=\frac{(x-1)(x-2)}6,\quad L_2=\frac{(x+1)(x-2)}{2\cdot(-1)}=-\frac{(x+1)(x-2)}2,\quad L_3=\frac{(x+1)(x-1)}{3\cdot1}=\frac{x^2-1}3
$$
であり、$p=2L_1+0\cdot L_2+5L_3=\frac{x^2-3x+2}3+\frac{5x^2-5}3=2x^2-x-1$ となる。実際 $p(-1)=2$、$p(1)=0$、$p(2)=5$ である。
$p(1)=1$、$p(2)=2$、$p(3)=4$、$p(4)=8$ を満たす次数 $4$ 未満の多項式は
$$
p(n)=\frac{n^3-3n^2+8n}6=1+\binom{n-1}1+\binom{n-1}2+\binom{n-1}3
$$
ただ 1 つであり、$p(5)=15$、$p(6)=26$ である。一方、次数の制限を外すと、たとえば $q(n)=p(n)+(n-1)(n-2)(n-3)(n-4)$ も最初の 4 項が $1,2,4,8$ で、$q(5)=39$ である。$2^{n-1}$ も最初の 4 項が同じである。したがって、有限個の項だけから数列の一般項は決まらない(数列の一般項の推定と帰納法 の例「同じ数項から違う続きを作る」と注意「大学数学で見ると:差分による補間」で述べていることの、多項式による裏づけ)。次数を $4$ 未満に制限してはじめて、4 個の値から多項式がただ 1 つに決まる。
$F$ を体、$x_1,\dots,x_n\in F$ を相異なる元、$y_1,\dots,y_n\in F$ を任意の元とする。$p(x_i)=y_i$($i=1,\dots,n$)を満たす次数 $n$ 未満の多項式 $p\in F[x]$ はただ 1 つ存在し、それは $p=\sum_{i=1}^ny_iL_i$ である。
存在:$p:=\sum_iy_iL_i$ は次数 $n-1$ 以下の多項式の和なので $F[x]_{< n}$ に属する。$x_j$ を代入すると $L_i(x_j)=\delta_{ij}$ より $p(x_j)=\sum_iy_i\delta_{ij}=y_j$ である。
一意性:$p,q\in F[x]_{< n}$ がともに $p(x_i)=q(x_i)=y_i$ を満たすとする。$r:=p-q$ は次数 $n$ 未満で、相異なる $n$ 個の元 $x_1,\dots,x_n$ を根にもつ。体上の多項式で $0$ でないものは次数より多くの根をもたない(多項式環 の定理「根の個数」)ので、$r=0$、すなわち $p=q$ である。$\square$
一意性の証明が使ったのは「$0$ でない次数 $d$ の多項式の根は高々 $d$ 個」だけであり、存在の証明が使ったのは「差 $x_i-x_j$($i\ne j$)で割れる」ことだけである。したがって体でなくても、次が成り立つ(Sho08 Theorem 7.15 とその直後の注意)。
$R$ を可換環($1\ne0$)とし、$x_1,\dots,x_n\in R$ は $i\ne j$ のとき $x_i-x_j$ が $R$ の単元であるとする。このとき任意の $y_1,\dots,y_n\in R$ に対し、$p(x_i)=y_i$ を満たす次数 $n$ 未満の $p\in R[x]$ はただ 1 つあり、$p=\sum_iy_iL_i$ である。
要点:存在は thm-lagint-main の証明と同じである($L_i$ の分母が単元なので $L_i\in R[x]$)。一意性は、$x_1,\dots,x_n$ で $0$ になる $r$ がモニックな $f=\prod_i(x-x_i)$ で割り切れることを示し、次数を比べる。
$r\in R[x]$ が次数 $n$ 未満で $r(x_1)=\cdots=r(x_n)=0$ を満たすとし、$k=1,\dots,n$ について $r=(x-x_1)\cdots(x-x_k)\,s_k$($s_k\in R[x]$)と書けることを $k$ についての帰納法で示す。$k=1$ は因数定理(モニックな $x-x_1$ による割り算の余りが $r(x_1)=0$)による。$k-1$ で成り立つとすると、$0=r(x_k)=\prod_{j< k}(x_k-x_j)\cdot s_{k-1}(x_k)$ で、$\prod_{j< k}(x_k-x_j)$ は単元だから $s_{k-1}(x_k)=0$、因数定理により $s_{k-1}=(x-x_k)s_k$ と書ける。$k=n$ とすると、$r$ はモニックな次数 $n$ の多項式 $f=\prod_i(x-x_i)$ の倍数 $fs_n$ である。$s_n\ne0$ なら、$s_n$ の最高次の係数 $c\ne0$ は $fs_n$ の $x^{n+\deg s_n}$ の係数でもあるので $\deg r\ge n$ となり矛盾する。よって $s_n=0$、$r=0$ である。$\square$
体の場合はすべての $x_i-x_j\ne0$ が単元なので、prop-lagint-ring は thm-lagint-main を含む。次の表は、仮定を 1 つずつ外すと結論が崩れることを示す(確認は表の下の例)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 補間点が相異なる | 補間点 $x_1=x_2=0$、値 $y_1=0$、$y_2=1$ | 存在 |
| 次数が $n$ 未満 | $p$ と $p+c\prod_i(x-x_i)$($c\ne0$) | 一意性 |
| 差 $x_i-x_j$ が単元(係数が体) | $\mathbb{Z}/8\mathbb{Z}$ 上で、補間点 $1,3$ に値 $0,1$ | 存在 |
| 差 $x_i-x_j$ が単元(係数が体) | $\mathbb{Z}/8\mathbb{Z}$ 上で、補間点 $1,3,5$ に値 $0,0,0$ | 一意性 |
1 行目:$p(0)$ は 1 つの値しかとらないので、$p(0)=0$ と $p(0)=1$ を同時に満たす $p$ はない。補間点が相異ならないと、データそのものが矛盾しうる(値が一致していれば矛盾はないが、今度は条件が $n$ 個より少なくなり、次数 $n$ 未満では一意性が崩れる)。
2 行目:$\prod_i(x-x_i)$ は各 $x_i$ で $0$ になるので、$p+c\prod_i(x-x_i)$ も同じ値をとる。次数は $n$ になるので、「次数 $n$ 未満」という制限を外すと補間多項式は無数にある。補間の条件を満たす多項式全体は、ちょうど $p+\bigl(\prod_i(x-x_i)\bigr)$(イデアルによる剰余類)である。
3 行目:$R=\mathbb{Z}/8\mathbb{Z}$ で $p=a+bx$ が $p(1)=0$、$p(3)=1$ を満たすとすると、引いて $2b=1$ となるが、$2b$ は $R$ の中で $0,2,4,6$ のどれかなので $1$ にならない。差 $3-1=2$ が $R$ の単元でないことが原因である。
4 行目:$x^2-1$ は $x=1,3,5$ でそれぞれ $0,8,24$ をとり、どれも $\mathbb{Z}/8\mathbb{Z}$ で $0$ である。したがって次数 $3$ 未満の多項式 $0$ と $x^2-1$ はどちらも値 $0,0,0$ を補間し、一意性が崩れる。$x^2-1$ は $\mathbb{Z}/8\mathbb{Z}$ の中に $1,3,5,7$ の 4 個の根をもち、「次数より多くの根をもたない」ことが体でない環では成り立たない。
補間点 $x_1,\dots,x_n$ を固定し、評価写像
$$
\operatorname{ev}\colon F[x]_{< n}\to F^n,\qquad p\mapsto\bigl(p(x_1),\dots,p(x_n)\bigr)
$$
を考える。$(p+q)(a)=p(a)+q(a)$、$(cp)(a)=cp(a)$ なので $\operatorname{ev}$ は $F$ 上の線形写像であり、thm-lagint-main は「$\operatorname{ev}$ が全単射である」と言い換えられる。
$F[x]_{< n}$ の基底 $1,x,\dots,x^{n-1}$ と $F^n$ の標準基底 $e_1,\dots,e_n$ に関する $\operatorname{ev}$ の表現行列は、$(i,j)$ 成分が $x_i^{\,j-1}$ の Vandermonde 行列
$$
V=V(x_1,\dots,x_n)=\begin{pmatrix}1&x_1&\cdots&x_1^{n-1}\\ \vdots&\vdots&&\vdots\\ 1&x_n&\cdots&x_n^{n-1}\end{pmatrix}
$$
である。補間点が相異なれば $\operatorname{ev}$ は線形同型で、$\operatorname{ev}^{-1}(e_i)=L_i$ である。したがって $V$ は正則であり、$V^{-1}$ の第 $i$ 列は $L_i$ の係数($1,x,\dots,x^{n-1}$ の係数を並べたもの)である。
$p=\sum_{j=1}^nc_jx^{j-1}$ に対し $p(x_i)=\sum_jx_i^{\,j-1}c_j$ なので、係数の列ベクトル $c=(c_1,\dots,c_n)^{\top}$ に対して $\operatorname{ev}(p)=Vc$ である。thm-lagint-main により $\operatorname{ev}$ は全単射なので $V$ は正則である。$L_i(x_j)=\delta_{ij}$ は $\operatorname{ev}(L_i)=e_i$ を意味するので、$L_i$ の係数の列を $\ell_i$ と書けば $V\ell_i=e_i$、すなわち $\ell_i=V^{-1}e_i$ は $V^{-1}$ の第 $i$ 列である。$\square$
双対空間の言葉では、点での値をとる線形汎関数 $\operatorname{ev}_{x_i}\colon p\mapsto p(x_i)$ の組 $\operatorname{ev}_{x_1},\dots,\operatorname{ev}_{x_n}$ は、基底 $L_1,\dots,L_n$ の双対基底である($\operatorname{ev}_{x_j}(L_i)=\delta_{ij}$)。補間公式 $p=\sum_ip(x_i)L_i$ は、「基底 $L_i$ に関する $p$ の座標は双対基底の値 $\operatorname{ev}_{x_i}(p)$ である」という一般的な事実の特別な場合である(双対空間(線形代数) の例「多項式の空間と点での値」、命題「双対基底の性質」)。
prop-lagint-ev は $V$ の行列式が $0$ でないことを、行列式を計算せずに示した。逆に、補間の考え方を使うと行列式そのものが求まる。
任意の体 $F$ と $x_1,\dots,x_n\in F$($n\ge2$)に対し
$$
\det V(x_1,\dots,x_n)=\prod_{1\le i< j\le n}(x_j-x_i)
$$
である。特に $\det V\ne0$ となるのは、$x_1,\dots,x_n$ が相異なるときであり、そのときに限る。
要点:$n$ についての帰納法による。最後の行の $x_n$ を変数 $t$ に置き換えた行列式 $D(t)$ は、$t$ の次数 $n-1$ 以下の多項式で、$t^{n-1}$ の係数が $\det V(x_1,\dots,x_{n-1})$、根が $x_1,\dots,x_{n-1}$ なので、$D(t)=\det V(x_1,\dots,x_{n-1})\prod_{i< n}(t-x_i)$ となる。$t=x_n$ を代入すればよい。
$n=2$ では $\det\begin{pmatrix}1&x_1\\1&x_2\end{pmatrix}=x_2-x_1$ である。$n\ge3$ とし、$n-1$ で成り立つとする。$V$ の最後の行を $(1,t,\dots,t^{n-1})$ に置き換えた行列の行列式を $D(t)$ とおく。最後の行について余因子展開すると(行列式 の定理「行と列に関する余因子展開」)、$D(t)$ は $t$ の次数 $n-1$ 以下の多項式で、$t^{n-1}$ の係数は左上の $(n-1)$ 次の小行列式 $c:=\det V(x_1,\dots,x_{n-1})$ である。$i\le n-1$ について $D(x_i)$ は 2 つの行が等しい行列の行列式なので $0$ である(同記事の定理「多重線形性と交代性」)。
$x_1,\dots,x_{n-1}$ が相異なるとき:$D(t)-c\prod_{i< n}(t-x_i)$ は $t^{n-1}$ の係数が打ち消しあうので次数 $n-1$ 未満で、相異なる $n-1$ 個の根 $x_1,\dots,x_{n-1}$ をもつから $0$ である(thm-lagint-main の一意性と同じ議論)。よって $D(t)=c\prod_{i< n}(t-x_i)$ である。
$x_1,\dots,x_{n-1}$ の中に等しいものがあるとき:$D(t)$ は 2 つの行が等しい行列の行列式なので恒等的に $0$ であり、帰納法の仮定から $c$ は $0$ を因子にもつ積なので $c=0$ である。この場合も $D(t)=c\prod_{i< n}(t-x_i)$ が成り立つ。
いずれの場合も $t=x_n$ を代入し、帰納法の仮定 $c=\prod_{1\le i< j\le n-1}(x_j-x_i)$ を使うと $$\det V(x_1,\dots,x_n)=D(x_n)=\prod_{1\le i< j\le n-1}(x_j-x_i)\cdot\prod_{i=1}^{n-1}(x_n-x_i)=\prod_{1\le i< j\le n}(x_j-x_i)$$ を得る。後半は、体では積が $0$ になることと因子のどれかが $0$ になることが同値であることによる。$\square$
$n=3$ では $\det V=(x_2-x_1)(x_3-x_1)(x_3-x_2)$ であり、行列式 の例「Vandermondeの行列式」の Sarrus の規則による計算と一致する(Axl24 9.67 も参照)。thm-lagint-vandermonde と 行列式 の定理「正則性の判定」を合わせると、$V$ の正則性、したがって thm-lagint-main の別証明が得られる。
補間多項式の求め方は、$F[x]_{< n}$ のどの基底で書くかの違いとして整理できる。Newton の形 は基底 $1,\ (x-x_1),\ (x-x_1)(x-x_2),\ \dots,\ \prod_{j< n}(x-x_j)$ を使うもので、これらは次数が $0,1,\dots,n-1$ の多項式なので基底になる。$k$ 番目の基底は $x_1,\dots,x_{k-1}$ で $0$ になるので、$\operatorname{ev}$ の表現行列は下三角で、対角成分 $\prod_{j< k}(x_k-x_j)$ は $0$ でない。係数は上から順に 1 つずつ決まり、補間点を 1 つ加えても前の係数は変わらない(この係数を差分商という)。
| 基底 | $\operatorname{ev}$ の表現行列 | 係数の求め方 | 点を 1 つ加えると |
|---|---|---|---|
| $1,x,\dots,x^{n-1}$ | Vandermonde 行列 $V$ | 連立 1 次方程式 $Vc=y$ を解く | すべて解き直す |
| $L_1,\dots,L_n$(Lagrange) | 単位行列 | 係数は値 $y_i$ そのもの | 基底がすべて変わる |
| $\prod_{j< k}(x-x_j)$(Newton) | 下三角行列 | 上から順に代入して解く | 係数が 1 つ増えるだけ |
ex-lagint-parabola のデータ($-1\mapsto2$、$1\mapsto0$、$2\mapsto5$)を $p=c_1+c_2(x+1)+c_3(x+1)(x-1)$ と書く。$x=-1$ で $c_1=2$、$x=1$ で $2+2c_2=0$ より $c_2=-1$、$x=2$ で $2-3+3c_3=5$ より $c_3=2$ となり、$p=2-(x+1)+2(x^2-1)=2x^2-x-1$ で ex-lagint-parabola と一致する。
評価写像を $F[x]$ 全体に広げた $\varepsilon\colon F[x]\to F^n$、$p\mapsto(p(x_1),\dots,p(x_n))$ は、和と積と $1$ を保つ環準同型($F^n$ は成分ごとの演算による直積環)である。$f:=\prod_{i=1}^n(x-x_i)$ とおくと、$p(x_i)=0$ は $(x-x_i)\mid p$ と同じ(因数定理)なので、$\ker\varepsilon$ は $(x-x_1),\dots,(x-x_n)$ の共通部分であり、補間点が相異なれば prop-lagint-ring の証明と同じ議論によりそれは $(f)$ に等しい。thm-lagint-main は $\varepsilon$ が全射であることも述べているので、$\varepsilon$ は環の同型 $\overline{\varepsilon}\colon F[x]/(f)\to F^n$ を引き起こす。
$$
\xymatrix{
F[x] \ar[r]^{\varepsilon} \ar@{->>}[d]_{\pi} & F^n \\
F[x]/(f) \ar[ur]_{\overline{\varepsilon}}^{\cong} &
}
$$
すなわち $\varepsilon=\overline{\varepsilon}\circ\pi$($\pi$ は商写像)である。$F[x]/(x-x_i)\cong F$(剰余類 $p+(x-x_i)$ に値 $p(x_i)$ を対応させる)なので、この同型は $F[x]/(f)\cong\prod_iF[x]/(x-x_i)$ という形の中国剰余定理にほかならない。$i\ne j$ のとき $(x-x_i)-(x-x_j)=x_j-x_i$ は $0$ でない定数なので、イデアル $(x-x_i)$ は対ごとに互いに素である。Lagrange の基本多項式 $L_i$ は、「$x-x_i$ を法として $1$、ほかの $x-x_j$ を法として $0$」となる元、すなわち直積環の冪等元 $e_i$ に対応する元である(中国剰余定理 の例「多項式の補間」、Sho08 §16.4)。また、各剰余類 $p+(f)$ は $f$ による割り算の余りとして次数 $n$ 未満の代表元をただ 1 つもつので、$F[x]_{< n}\to F[x]/(f)$ は線形同型であり、その上で $\overline{\varepsilon}$ は prop-lagint-ev の $\operatorname{ev}$ と一致する。
この見方をとると、各点で値だけでなく「高次の接し方」を指定する補間が同じ議論で得られる。
$F$ を体、$a_1,\dots,a_k\in F$ を相異なる元、$m_1,\dots,m_k\ge1$ を整数とし、$N:=m_1+\cdots+m_k$ とおく。次数 $m_i$ 未満の多項式 $r_i\in F[x]$($i=1,\dots,k$)を任意に与えると、
$$
p\equiv r_i\pmod{(x-a_i)^{m_i}}\qquad(i=1,\dots,k)
$$
を満たす次数 $N$ 未満の $p\in F[x]$ がただ 1 つある。
$I_i:=((x-a_i)^{m_i})$ とおく。まず $i\ne j$ のとき $I_i+I_j=F[x]$ を示す。$u:=(x-a_i)/(a_j-a_i)$、$v:=(x-a_j)/(a_i-a_j)$ とおくと $u+v=1$ である。$M:=m_i+m_j-1$ として $1=(u+v)^M=\sum_{s=0}^M\binom Msu^sv^{M-s}$ と展開すると、各項は $s\ge m_i$ なら $u^{m_i}$ の倍数($I_i$ の元)、$s< m_i$ なら $M-s\ge m_j$ なので $v^{m_j}$ の倍数($I_j$ の元)である。よって $1\in I_i+I_j$ である。
したがって 中国剰余定理 の定理「可換環における中国剰余定理」により、$f:=\prod_i(x-a_i)^{m_i}$(次数 $N$)について $I_1\cdots I_k=(f)$ であり、$F[x]/(f)\to\prod_iF[x]/I_i$ は同型である。全射性から、すべての $i$ で $q\equiv r_i\pmod{(x-a_i)^{m_i}}$ となる $q\in F[x]$ があり、そのような $q$ 全体は $q+(f)$ である。$q$ を $f$ で割った余りを $p$ とすれば、$p$ は次数 $N$ 未満で同じ合同式を満たす。一意性:$p,p'$ がともに次数 $N$ 未満で条件を満たせば、単射性から $p-p'\in(f)$ であり、次数 $N$ 未満の $f$ の倍数は $0$ だけなので $p=p'$ である。$\square$
すべての $m_i=1$ のとき、$x-a_i$ を法とする $r_i$ は定数 $p(a_i)$ で、thm-lagint-main に戻る。$(x-a)^m$ を法とする余りの意味は次のとおりである。$p$ を $x-a$ の冪で $p=\sum_kc_k(x-a)^k$ と展開すると、$p$ を $(x-a)^m$ で割った余りは $\sum_{k< m}c_k(x-a)^k$ である。標数 $0$ の体($\mathbb{Q}$、$\mathbb{R}$、$\mathbb{C}$ など)では、形式微分を $k$ 回して $x=a$ を代入すると $p^{(k)}(a)=k!\,c_k$ なので、余りを指定することは $p(a),p'(a),\dots,p^{(m-1)}(a)$ を指定することと同じである。
$\mathbb{Q}$ の上で $a_1=0$、$a_2=1$、$m_1=m_2=2$($N=4$)とし、$p(0)=0$、$p'(0)=1$、$p(1)=1$、$p'(1)=0$ を指定する。$p=c_0+c_1x+c_2x^2+c_3x^3$ とおくと、条件は $c_0=0$、$c_1=1$、$c_1+c_2+c_3=1$、$c_1+2c_2+3c_3=0$ で、$c_2=1$、$c_3=-1$ となる。よって $p=-x^3+x^2+x$ がただ 1 つの解である。$p'(x)=-3x^2+2x+1$ から $p'(0)=1$、$p'(1)=0$ も確かめられる。
有限体 $\mathbb{F}_q$($q$ 個の元からなる体)の上では、補間点として体のすべての元をとることができる。その結果、写像と多項式の関係が完全に分かる。
$F$ を $q$ 個の元からなる有限体とし、$\operatorname{Map}(F,F)$ を $F$ から $F$ への写像全体(値ごとの和と積による環)とする。多項式に多項式関数を対応させる環準同型 $\Phi\colon F[x]\to\operatorname{Map}(F,F)$ は全射で、核は $(x^q-x)$ である。したがって
$$
F[x]/(x^q-x)\cong\operatorname{Map}(F,F)
$$
であり、$F$ から $F$ への写像は次数 $q$ 未満の多項式でただ 1 通りに表せる。
全射:写像 $g\colon F\to F$ を与える。$F$ の $q$ 個の元すべてを補間点とし、値 $g(a)$ を与えると、thm-lagint-main により $p(a)=g(a)$(すべての $a\in F$)となる次数 $q$ 未満の $p$ がただ 1 つある。よって $\Phi(p)=g$ である。
核:$x^q-x$ はすべての $a\in F$ で $a^q-a=0$ となる(有限体 の系「有限体における $x^q=x$」)ので $\ker\Phi$ に属する。逆に $\Phi(p)=0$ とし、$p=(x^q-x)h+r$($\deg r< q$)と割ると、$r$ は $F$ の $q$ 個の元すべてで $0$ になるので、thm-lagint-main の一意性(値がすべて $0$ の補間多項式は $0$)により $r=0$ である。よって $\ker\Phi=(x^q-x)$ である。
最後の主張は、剰余類 $p+(x^q-x)$ が次数 $q$ 未満の代表元(割り算の余り)をただ 1 つもつことによる。$\square$
両辺の元の個数はどちらも $q^q$ である(次数 $q$ 未満の多項式は係数 $q$ 個の組、写像は $q$ 個の元それぞれの行き先の組)。$0$ でない多項式 $x^q-x$ が零関数を定めることは、多項式と多項式関数を区別しなければならない理由であり(多項式環 の例「多項式と多項式関数の違い」)、thm-lagint-finite-field はその違いがちょうどイデアル $(x^q-x)$ の分であることを述べている。
$F$ のすべての元を補間点とするとき、$a$ に対する基本多項式は
$$
L_a(x)=\prod_{b\ne a}\frac{x-b}{a-b}=1-(x-a)^{q-1}
$$
と書ける。右辺は次数 $q-1$ で、$x=a$ で $1$、$b\ne a$ では $(b-a)^{q-1}=1$ なので $0$ になるから、一意性により左辺と一致する。たとえば $\mathbb{F}_2$ から $\mathbb{F}_2$ への写像 $4$ 個は $0$、$1$、$x$、$x+1$ であり、$\mathbb{F}_3$ で $0$ だけで $1$ をとる写像は $1-x^2$ である。
秘密の数 $s\in\mathbb{F}_p$ を、$m$ 人のうち任意の $k$ 人が集まれば復元でき、$k-1$ 人以下では何も分からないように配る方法がある。ここでは秘密を定数項に置く形で述べる(Sho08 Example 8.28 は、秘密を最高次の係数に置く同じ仕組みを Lagrange 補間で説明している)。$a_1,\dots,a_{k-1}\in\mathbb{F}_p$ を無作為に選んで $g(x)=s+a_1x+\cdots+a_{k-1}x^{k-1}$ とし、$j$ 番目の人に $g(j)$ を配る($1\le j\le m< p$)。
$k$ 人の値がそろえば、thm-lagint-main により次数 $k$ 未満の $g$ が復元でき、$s=g(0)=\sum_jg(t_j)L_j(0)$ である($t_j$ はその $k$ 人の番号)。一方、$k-1$ 人の値だけでは、$s$ の候補 $s'\in\mathbb{F}_p$ のどれについても、$0$ で値 $s'$、その $k-1$ 点で配られた値をとる次数 $k$ 未満の多項式が、補間点 $k$ 個に対する thm-lagint-main によりちょうど 1 つある。すなわち、どの $s'$ も同じ数(1 個)の多項式と両立し、$k-1$ 人の値は $s$ を絞り込まない。
数値例:$p=11$、$k=3$、$s=7$、$g(x)=7+3x+5x^2$ とすると、$g(1),\dots,g(5)$ は $4,0,6,0,4$ で、番号 $2,4,5$ の 3 人の値から $s=7$ が復元される。
番号 $2,4,5$ の 3 人の値 $0,0,4$ から、$L_2(0)=\frac{(0-4)(0-5)}{(2-4)(2-5)}=\frac{10}3=7$、$L_4(0)=\frac{(0-2)(0-5)}{(4-2)(4-5)}=-5=6$、$L_5(0)=\frac{(0-2)(0-4)}{(5-2)(5-4)}=\frac83=10$(いずれも $\mathbb{F}_{11}$ で計算。$3^{-1}=4$)となり、$s=0\cdot7+0\cdot6+4\cdot10=40=7$ が復元される。
$F=\mathbb{R}$ のとき、補間多項式は関数の近似に使われる。関数 $f$ の補間点での値を補間した多項式を $p$ とすると、$f$ が十分なめらかなら誤差は次のように表せる。
$I$ を区間、$x_1,\dots,x_n\in I$ を相異なる点とし、$f\colon I\to\mathbb{R}$ は $n$ 回微分可能とする。$p$ を値 $f(x_1),\dots,f(x_n)$ の補間多項式(次数 $n$ 未満)とすると、各 $x\in I$ に対し、$x,x_1,\dots,x_n$ をすべて含む最小の閉区間の中に
$$
f(x)-p(x)=\frac{f^{(n)}(\xi)}{n!}\prod_{i=1}^n(x-x_i)
$$
を満たす $\xi$ がある。
要点:$x$ でも $0$ になるように補間の誤差から $\prod_i(t-x_i)$ の定数倍を引いた関数は $n+1$ 個の零点をもつので、Rolleの定理を $n$ 回使うと $n$ 階導関数が零点をもち、その零点が $\xi$ になる。
$x$ が補間点のどれかなら両辺は $0$ で、$\xi$ は何でもよい。そうでないとき $w(t):=\prod_i(t-x_i)$ とおくと $w(x)\ne0$ なので、$K:=(f(x)-p(x))/w(x)$ とおき、$g(t):=f(t)-p(t)-Kw(t)$ を考える。$g$ は $x_1,\dots,x_n$ と $x$ の相異なる $n+1$ 点で $0$ になる。隣り合う零点の間に Rolle の定理を使うと $g'$ は $n$ 個の相異なる零点をもち、これを繰り返すと $g^{(n)}$ は上の閉区間の中に零点 $\xi$ をもつ。$p$ の次数は $n$ 未満なので $p^{(n)}=0$、$w$ はモニックな $n$ 次式なので $w^{(n)}=n!$ である。よって $0=g^{(n)}(\xi)=f^{(n)}(\xi)-Kn!$、すなわち $K=f^{(n)}(\xi)/n!$ で、これが求める式である。
点を $n+1$ 個とって次数 $n$ 以下で書いた形と、誤差を上から見積もる使い方は Lagrange補間(高校数学) の定理「補間の誤差の式」・系「補間の誤差の上界」にある。
誤差の式には $f^{(n)}$ が入っているので、補間点を増やせば補間多項式が $f$ に近づくとは限らない。$f(x)=1/(1+25x^2)$ を $[-1,1]$ の等間隔の点で補間すると、次数 $5,10,20$(点の数 $6,11,21$)で $[-1,1]$ での最大誤差はおよそ $0.43$、$1.9$、$60$ と増えていき、区間の両端の近くで補間多項式が大きく振動する(Runge の現象。数値と図は Lagrange補間(高校数学) の例「Runge の現象」)。同じ次数で、点の数を $N$ として補間点を $\cos\frac{(2i-1)\pi}{2N}$($i=1,\dots,N$。Chebyshev 点)にとると、最大誤差はおよそ $0.56$、$0.11$、$0.015$ となり、この関数では次数を上げると誤差が減っていく(数値計算による)。閉区間上の連続関数は多項式で一様に近似できる(Weierstrass の近似定理。この記事では証明しない。Leb26b Theorem 11.7.1)が、それを実現する多項式は等間隔の点での補間多項式とは限らない。
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