合同数(高校数学)

同義語:congruent number (high school mathematics)

概要

合同数(congruent number)とは、3 辺の長さがすべて有理数の直角三角形の面積になる正の整数である。$6$(3 辺 $3,4,5$)、$5$(3 辺 $\frac32,\frac{20}3,\frac{41}6$)、$7$(3 辺 $\frac{24}5,\frac{35}{12},\frac{337}{60}$)は合同数である。正の整数 $n$ が合同数であることは、有理数 $x$ で $x^2-n$ と $x^2+n$ がともに有理数の 2 乗になるものがあることと同値で、斜辺の半分を $x$ にとればよい。$x^4-y^4=z^2$ に正の整数解がないことを無限降下法で示すと、$1$ は合同数でないこと、つまり 3 辺が有理数の直角三角形の面積は有理数の 2 乗にならないことが分かる。合同数の問題は楕円曲線 $y^2=x^3-n^2x$ の有理点の問題につながる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ピタゴラス数と円の有理点, 数学的帰納法と整列性, 等差数列と等比数列

高校での出発点:面積が整数の直角三角形

3 辺が $3,4,5$ の直角三角形の面積は $\dfrac{3\cdot4}2=6$ である。3 辺が整数の直角三角形の面積を小さい順に並べると $6,24,30,54,60,84,96,\dots$ となり、$5$ や $7$ は出てこない。ところが、3 辺を有理数(分数)まで広げると、面積が $5$ や $7$ の直角三角形が見つかる。

面積 $5$ と $7$ の直角三角形
  1. 直角をはさむ 2 辺が $\dfrac32$ と $\dfrac{20}3$ の直角三角形。斜辺の 2 乗は
    $$ \left(\frac32\right)^2+\left(\frac{20}3\right)^2=\frac94+\frac{400}9=\frac{81+1600}{36}=\frac{1681}{36}=\left(\frac{41}6\right)^2 $$
    で、斜辺は $\dfrac{41}6$ である。面積は $\dfrac12\cdot\dfrac32\cdot\dfrac{20}3=5$ である。
  2. 直角をはさむ 2 辺が $\dfrac{24}5$ と $\dfrac{35}{12}$ の直角三角形。
    $$ \left(\frac{24}5\right)^2+\left(\frac{35}{12}\right)^2=\frac{576}{25}+\frac{1225}{144}=\frac{82944+30625}{3600}=\frac{113569}{3600}=\left(\frac{337}{60}\right)^2 $$
    で、斜辺は $\dfrac{337}{60}$ である。面積は $\dfrac12\cdot\dfrac{24}5\cdot\dfrac{35}{12}=7$ である。

面積 5、6、7 の直角三角形を同じ縮尺で並べる。3 辺はどれも有理数である 面積 5、6、7 の直角三角形を同じ縮尺で並べる。3 辺はどれも有理数である
図 1 は、面積 $5,6,7$ の直角三角形を同じ縮尺で並べたものである。では、面積 $1$ の直角三角形で 3 辺がすべて有理数のものはあるだろうか。直角をはさむ 2 辺を $1$ と $2$ にすれば面積は $1$ だが、斜辺は $\sqrt5$ で有理数でない。この記事では次の問いに答える。

  1. 面積 $n$ の有理数の直角三角形があることを、1 つの有理数 $x$ の性質で言い換えられるか。→ thm-cgn-ap
  2. 面積 $1$ の有理数の直角三角形はあるか。→ thm-cgn-one
  3. 直角三角形の条件や有理数の条件を外すとどうなるか。→ ex-cgn-cx-integer、ex-cgn-cx-heron、ex-cgn-cx-real
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    直角三角形の面積 $\dfrac{ab}2$合同数楕円曲線 $y^2=x^3-n^2x$ の有理点
    等差数列 $x^2-n,\ x^2,\ x^2+n$平方数の 3 項等差数列同じ曲線の点の座標
    背理法と「より小さい解」無限降下法楕円曲線の有理点の構造

言葉の準備:合同数

合同数

3 辺の長さがすべて有理数の直角三角形を 有理数の直角三角形 という。正の整数 $n$ が、ある有理数の直角三角形の面積に等しいとき、$n$ を 合同数 という。

「合同数」の「合同」は、合同式 $a\equiv b\pmod m$ の「合同」とは別の意味の言葉である。

合同数の例
  1. $6$ は合同数である($3,4,5$ の直角三角形)。
  2. $5$ と $7$ は合同数である(ex-cgn-start)。
  3. $24$ は合同数である。$3,4,5$ を $2$ 倍した $6,8,10$ の面積は $24$ である。

ex-cgn-def の (3) のように、有理数の直角三角形の 3 辺を $k$ 倍すると面積は $k^2$ 倍になる。逆に $\dfrac1k$ 倍すると面積は $\dfrac1{k^2}$ 倍になる。したがって次が成り立つ。

平方数倍しても合同数かどうかは変わらない

正の整数 $n,k$ について、$n$ が合同数であることと、$nk^2$ が合同数であることは同値である。

$n$ が合同数なら、面積 $n$ の有理数の直角三角形がある。その 3 辺を $k$ 倍した三角形は 3 辺が有理数の直角三角形で、面積は $nk^2$ である。逆に、面積 $nk^2$ の有理数の直角三角形の 3 辺を $\dfrac1k$ 倍すると、面積 $n$ の有理数の直角三角形になる。$\square$

たとえば $6$ が合同数なので $24=6\cdot2^2$、$54=6\cdot3^2$ も合同数である。どの正の整数も、同じ素因数を 2 つ以上含まない数と平方数の積に書ける(例:$24=6\cdot2^2$、$8=2\cdot2^2$、$9=1\cdot3^2$)。したがって、合同数かどうかは、同じ素因数を 2 つ以上含まない数($1,2,3,5,6,7,10,\dots$)について調べれば十分である。

主定理 1:平方数の 3 項等差数列

ex-cgn-start の面積 $5$ の三角形で、斜辺の半分 $x=\dfrac{41}{12}$ をとると、
$$ x^2-5=\frac{1681-720}{144}=\frac{961}{144}=\left(\frac{31}{12}\right)^2,\qquad x^2+5=\frac{1681+720}{144}=\frac{2401}{144}=\left(\frac{49}{12}\right)^2 $$
で、$x^2-5$、$x^2$、$x^2+5$ はすべて有理数の 2 乗になる。3 つは公差 $5$ の等差数列である(等差数列と等比数列)。これは偶然ではない。

合同数と平方数の等差数列

正の整数 $n$ について、次の 2 つは同値である。
(R1) $n$ は合同数である。
(R2) 有理数 $x$ で、$x^2-n$ と $x^2+n$ がともに有理数の 2 乗になるものがある。
さらに、(i) の直角三角形の直角をはさむ 2 辺を $a,b$、斜辺を $c$ とすると、$x=\dfrac c2$ が (ii) を満たし、$x^2\pm n=\left(\dfrac{a\pm b}2\right)^2$ である(複号同順)。

方針:直角三角形の 3 辺と面積の関係 $a^2+b^2=c^2$、$ab=2n$ から、$(a\pm b)^2=c^2\pm4n$ を作る。逆向きは、この式を逆にたどって $a,b$ を作る。
段 1((i) から (ii))。有理数の直角三角形の直角をはさむ 2 辺を $a,b$、斜辺を $c$、面積を $n$ とすると、三平方の定理から $a^2+b^2=c^2$、面積から $ab=2n$ である。よって
$$ (a+b)^2=a^2+b^2+2ab=c^2+4n,\qquad (a-b)^2=a^2+b^2-2ab=c^2-4n $$
である。両辺を $4$ で割ると、$x=\dfrac c2$ について
$$ x^2+n=\left(\frac{a+b}2\right)^2,\qquad x^2-n=\left(\frac{a-b}2\right)^2 $$
となる。$a,b,c$ は有理数なので、$x$ と $\dfrac{a\pm b}2$ も有理数である。
段 2((ii) から (i))。有理数 $x,s,t$ が $x^2-n=s^2$、$x^2+n=t^2$ を満たすとする。$s,t$ の符号を取りかえてもこの 2 式は変わらないので、$s\ge0$、$t\ge0$ としてよい。2 式の差から $t^2-s^2=2n>0$ なので $t>s$ である。
まず $s>0$ を示す。$s=0$ なら $x^2=n$ で、$t^2=x^2+n=2x^2$ となる。$x\ne0$($x^2=n>0$)なので $\left(\dfrac tx\right)^2=2$ となり、$\sqrt2$ が有理数になってしまう。$\sqrt2$ は無理数なので $s>0$ である。
そこで $a=t+s$、$b=t-s$ とおく。$t>s>0$ なので $a>0$、$b>0$ で、どちらも有理数である。
$$ a^2+b^2=(t+s)^2+(t-s)^2=2(t^2+s^2)=2\bigl((x^2+n)+(x^2-n)\bigr)=4x^2=(2\lvert x\rvert)^2 $$
なので、$a,b$ を直角をはさむ 2 辺とする直角三角形の斜辺は有理数 $2\lvert x\rvert$ である。面積は
$$ \frac{ab}2=\frac{(t+s)(t-s)}2=\frac{t^2-s^2}2=\frac{2n}2=n $$
である。よって $n$ は合同数である。$\square$

面積 $6$ と $7$ の三角形から $x$ を作る
  1. $n=6$:$3,4,5$ から $x=\dfrac52$ で、$x^2-6=\dfrac{25-24}4=\left(\dfrac12\right)^2$、$x^2+6=\dfrac{25+24}4=\left(\dfrac72\right)^2$ である。$\dfrac14,\dfrac{25}4,\dfrac{49}4$ は公差 $6$ の等差数列で、どれも平方数である。
  2. $n=7$:斜辺 $\dfrac{337}{60}$ から $x=\dfrac{337}{120}$ で、
    $$ x^2-7=\frac{113569-100800}{14400}=\frac{12769}{14400}=\left(\frac{113}{120}\right)^2,\qquad x^2+7=\frac{113569+100800}{14400}=\frac{214369}{14400}=\left(\frac{463}{120}\right)^2 $$
    である。$\dfrac{463}{120}=\dfrac12\left(\dfrac{24}5+\dfrac{35}{12}\right)$、$\dfrac{113}{120}=\dfrac12\left(\dfrac{24}5-\dfrac{35}{12}\right)$ になっている。
$x$ から三角形にもどす

$n=5$、$x=\dfrac{41}{12}$ では $s=\dfrac{31}{12}$、$t=\dfrac{49}{12}$ である。$a=t+s=\dfrac{80}{12}=\dfrac{20}3$、$b=t-s=\dfrac{18}{12}=\dfrac32$ で、ex-cgn-start の (1) の三角形にもどる。斜辺は $2x=\dfrac{41}6$ である。

面積 5 の場合、31/12 の 2 乗、41/12 の 2 乗、49/12 の 2 乗が数直線の上で等しい間隔 5 で並ぶ 面積 5 の場合、31/12 の 2 乗、41/12 の 2 乗、49/12 の 2 乗が数直線の上で等しい間隔 5 で並ぶ
図 2 は、$n=5$ のときの 3 つの平方数 $\left(\dfrac{31}{12}\right)^2$、$\left(\dfrac{41}{12}\right)^2$、$\left(\dfrac{49}{12}\right)^2$ が、間隔 $5$ で並ぶ様子である。thm-cgn-ap により、「$n$ が合同数か」という図形の問いは、「公差 $n$ で並ぶ 3 つの有理数の平方があるか」という数の問いと同じになる。Dic05b の第 XVI 章(p. 459 から)は、$x^2+k$ と $x^2-k$ がともに平方数になる $k$ として合同数を扱い、$3,4,5$ から $5^2\pm24$ が平方数になる例($49=7^2$、$1=1^2$)が 972 年より前に書かれたアラビア語の写本にあることを記録している。

主定理 2:$1$ は合同数でない

面積 $1$ の有理数の直角三角形がないことを示す。thm-cgn-ap により、$x^2-1$ と $x^2+1$ がともに有理数の 2 乗になる $x$ がないことを示せばよい。2 つを掛けると $x^4-1$ になるので、4 乗の差が平方数になるかという問題に行き着く。

使う道具:ピタゴラス数の分類

ピタゴラス数と円の有理点 で証明されている次の 3 つの事実を使う。$x^2+y^2=z^2$ を満たす正の整数の組 $(x,y,z)$ を ピタゴラス数 といい、3 数の最大公約数が $1$ のものを 原始的 という。

使う 3 つの事実
  1. 補題「原始的なピタゴラス数の偶奇」:$(a,b,c)$ が原始的なピタゴラス数ならば、$a,b,c$ のどの 2 つも互いに素で、$c$ は奇数、$a,b$ のちょうど一方が偶数である。
  2. 補題「互いに素な数の積が平方数なら」:正の整数 $u,v$ が互いに素で $uv$ が平方数ならば、$u,v$ はともに平方数である。
  3. 定理「原始的なピタゴラス数の分類」:$b$ が偶数の原始的なピタゴラス数 $(a,b,c)$ は、互いに素で偶奇の異なる整数 $m>n>0$ を用いて $a=m^2-n^2$、$b=2mn$、$c=m^2+n^2$ と書ける。

証明は ピタゴラス数と円の有理点 の節「主定理と証明」にある。

無限降下法

4 乗の差は平方数にならない

$x^4-y^4=z^2$ を満たす正の整数 $x,y,z$ は存在しない。

方針:正の整数解があると仮定し、$x$ が最小の解をとる。ピタゴラス数の分類を使って、$x$ より小さい正の整数の解を作り、最小性に矛盾させる(無限降下法)。$y$ が奇数の場合と偶数の場合に分ける。
段 1($x,y$ は互いに素)。正の整数解のうち $x$ が最小のものを $(x,y,z)$ とする(正の整数の空でない集合には最小のものがある。数学的帰納法と整列性)。素数 $p$ が $x$ と $y$ を割るとすると、$p^4$ が $x^4-y^4=z^2$ を割る。素因数分解で $z^2$ の $p$ の指数は $4$ 以上の偶数なので、$z$ の $p$ の指数は $2$ 以上で、$p^2$ が $z$ を割る。すると $\left(\dfrac xp,\dfrac yp,\dfrac z{p^2}\right)$ も正の整数解で、$\dfrac xp< x$ となり最小性に反する。よって $x,y$ は互いに素である。
段 2(ピタゴラス数を作る)。式を $(y^2)^2+z^2=(x^2)^2$ と書くと、$(y^2,z,x^2)$ はピタゴラス数である。$x,y$ が互いに素なので $x^2,y^2$ も互いに素で、このピタゴラス数は原始的である。rem-cgn-tools の (1) により $x^2$ は奇数で、$y^2$ と $z$ のちょうど一方が偶数である。
段 3($y$ が奇数の場合)。$y^2$ が奇数なので $z$ が偶数である。rem-cgn-tools の (3) を $(a,b,c)=(y^2,z,x^2)$ に使うと、互いに素な $m>n>0$ で
$$ y^2=m^2-n^2,\qquad z=2mn,\qquad x^2=m^2+n^2 $$
と書ける。すると
$$ m^4-n^4=(m^2-n^2)(m^2+n^2)=y^2x^2=(xy)^2 $$
なので、$(m,n,xy)$ は正の整数解である。$n>0$ なので $m^2< m^2+n^2=x^2$、つまり $m< x$ であり、$x$ の最小性に反する。
段 4($y$ が偶数の場合)。$y^2$ が偶数なので、rem-cgn-tools の (3) を $(a,b,c)=(z,y^2,x^2)$ に使うと、互いに素で偶奇の異なる $m>n>0$ で
$$ z=m^2-n^2,\qquad y^2=2mn,\qquad x^2=m^2+n^2 $$
と書ける。$m,n$ のうち偶数の方を $e$、奇数の方を $o$ とする。

  • $y=2k$ とおくと $4k^2=2eo$ で、$e=2e'$ とおくと $e'o=k^2$ である。$e'$ と $o$ の公約数は $e$ と $o$ を割るので、$e'$ と $o$ は互いに素である。rem-cgn-tools の (2) により、正の整数 $\alpha,\beta$ で $o=\alpha^2$、$e'=\beta^2$、つまり $e=2\beta^2$ と書ける。
  • $o^2+e^2=m^2+n^2=x^2$ で、$o,e$ は互いに素なので、$(o,e,x)$ は $e$ が偶数の原始的なピタゴラス数である。rem-cgn-tools の (3) により、互いに素な $r>s>0$ で $o=r^2-s^2$、$e=2rs$、$x=r^2+s^2$ と書ける。
  • $2rs=e=2\beta^2$ より $rs=\beta^2$ で、$r,s$ は互いに素なので、rem-cgn-tools の (2) により $r=\rho^2$、$s=\sigma^2$($\rho,\sigma$ は正の整数)と書ける。
    すると
    $$ \rho^4-\sigma^4=r^2-s^2=o=\alpha^2 $$
    なので、$(\rho,\sigma,\alpha)$ は正の整数解である。$\rho\le\rho^2=r\le r^2< r^2+s^2=x$ なので $\rho< x$ であり、$x$ の最小性に反する。
    段 3・段 4 のどちらでも矛盾が出たので、正の整数解は存在しない。$\square$

ピタゴラス数と円の有理点 の定理「$x^4+y^4=z^2$ の正の整数解」も、分類を 2 回使う無限降下法で証明されている。lem-cgn-descent の段 4 はそれと同じ形で、分類を 2 回使って小さい解を作る。段 3 はそれより短く、1 回の分類で得た $m,n$ の 4 乗の差がそのまま平方数になる。

小さい数での確かめ
  1. $x=2$、$y=1$:$16-1=15$ は平方数でない。$x=3$:$81-1=80$、$81-16=65$ は平方数でない。
  2. $x=5$、$y=4$:$625-256=369$ で、$19^2=361<369<400=20^2$ なので平方数でない。$x=5$、$y=3$:$625-81=544$ で、$23^2=529<544<576=24^2$ である。
  3. 計算機で $2\le x<300$、$1\le y< x$ のすべての組を調べても、$x^4-y^4$ が平方数になる組はない。lem-cgn-descent はこれがどこまで行っても続くことを保証している。

$1$ は合同数でない

$1$ は合同数でない

3 辺がすべて有理数で、面積が $1$ の直角三角形は存在しない。つまり $1$ は合同数でない。

面積 $1$ の有理数の直角三角形があったとする。thm-cgn-ap により、有理数 $X,s,t$ で $X^2-1=s^2$、$X^2+1=t^2$ を満たすものがある。$X$ を $-X$ に替えても式は変わらないので $X>0$ としてよい。
段 1($s\ne0$ と $X>1$)。$s=0$ なら $X^2=1$ で $t^2=2$ となり、$\sqrt2$ が有理数になって矛盾する。よって $s^2>0$ で、$X^2=1+s^2>1$ から $X>1$ である。
段 2(整数の式にする)。2 式を掛けると
$$ X^4-1=(X^2-1)(X^2+1)=(st)^2 $$
である。$X=\dfrac pq$($p,q$ は正の整数)と書いて両辺に $q^4$ を掛けると
$$ p^4-q^4=(stq^2)^2 $$
となる。$Z=\lvert st\rvert q^2$ とおくと、$Z$ は正の有理数で($s\ne0$、また $t^2=X^2+1>0$ より $t\ne0$)、$Z^2=p^4-q^4$ は整数である。2 乗が整数の有理数は整数なので、$Z$ は正の整数である。$X>1$ より $p>q$ である。
段 3(矛盾)。$(p,q,Z)$ は $x^4-y^4=z^2$ の正の整数解になり、lem-cgn-descent に反する。$\square$

段 2 で使った「2 乗が整数の有理数は整数」は、既約分数 $\dfrac uv$($v>1$)の 2 乗 $\dfrac{u^2}{v^2}$ が既約で整数にならないことからわかる(Heron三角形 の定理「整数の Heron 三角形の周と面積」の証明にも同じ議論がある)。

平方数は合同数でない
  1. 平方数 $k^2$($k$ は正の整数)は合同数でない。
  2. 有理数の直角三角形の面積は、有理数の 2 乗にならない。
  1. prop-cgn-square で $n=1$ とすると、$1$ が合同数であることと $k^2$ が合同数であることは同値である。thm-cgn-one により $1$ は合同数でないので、$k^2$ も合同数でない。
  2. 有理数の直角三角形の面積が $r^2$($r$ は正の有理数)だったとする。3 辺を $\dfrac1r$ 倍すると、3 辺が有理数で面積が $1$ の直角三角形になり、thm-cgn-one に反する。$\square$

Dic05b の序文(p. xiii)と第 XVI 章(p. 462)には、平方数が合同数にならないことを Leonardo Pisano が 1225 年の本で述べたが、完全には証明しなかったこと、そしてこの主張から「有理数の直角三角形の面積は平方数にならない」「2 つの 4 乗の差は平方数にならない」が導かれることが記されている。

$1$ から $10$ までの判定

この記事で判定できるものを表にする。$2,3,8,10$ はこの記事の方法では判定できないので、表に入れていない($8=2\cdot2^2$ は、prop-cgn-square により $2$ と同じ判定になる)。

$n$合同数か根拠
$1$でない主定理 2
$4$でない$4=2^2$ は平方数(系)
$5$である3 辺 $\frac32,\frac{20}3,\frac{41}6$、$x=\frac{41}{12}$
$6$である3 辺 $3,4,5$、$x=\frac52$
$7$である3 辺 $\frac{24}5,\frac{35}{12},\frac{337}{60}$、$x=\frac{337}{120}$
$9$でない$9=3^2$ は平方数(系)

合同数である $n$ には、それを示す三角形を 1 つ見せればよい。合同数でない $n$ には「どんな三角形もない」ことを示す必要があり、そのために無限降下法のような議論が要る。

例と反例

外す条件反例成り立たなくなること
3 辺が有理数(整数に強める)面積 $5$面積 $5$ の三角形がある
$x^2-n$ と $x^2+n$ の両方が平方$n=1$、$x=\frac34$ と $x=\frac54$$n$ が合同数
直角三角形3 辺 $\frac32,\frac53,\frac{17}6$面積 $1$ にならない
3 辺が有理数3 辺 $1,2,\sqrt5$面積 $1$ にならない
反例:辺を整数に限ると $5$ は面積にならない

3 辺が整数の直角三角形の直角をはさむ 2 辺を $a,b$ とする。Eulerの直方体 の補題「ピタゴラス数の直角をはさむ辺」により、$a,b$ の一方は $3$ の倍数、一方は $4$ の倍数なので、$ab$ は $12$ の倍数で、面積 $\dfrac{ab}2$ は $6$ の倍数である(Heron三角形 の定理「整数の Heron 三角形の周と面積」からも分かる)。したがって面積 $5$ や $7$ の整数の直角三角形はない。$5$ が合同数になるのは、辺を有理数まで広げたからである。

反例:片方だけ平方数でも合同数とは言えない

$n=1$ とする。$x=\dfrac34$ では $x^2+1=\dfrac{25}{16}=\left(\dfrac54\right)^2$ は平方数だが、$x^2-1=-\dfrac7{16}$ は負で平方数でない。$x=\dfrac54$ では $x^2-1=\dfrac9{16}=\left(\dfrac34\right)^2$ は平方数だが、$x^2+1=\dfrac{41}{16}$ は、$41$ が平方数でないので有理数の 2 乗でない。片方だけならこのように簡単に見つかるが、thm-cgn-one により両方を同時に平方数にする $x$ はない。thm-cgn-ap の (ii) は「両方」でなければならない。

反例:直角三角形でなければ面積 $1$ にできる

3 辺が $9,10,17$ の三角形は、Heron の公式で $s=18$、面積 $\sqrt{18\cdot9\cdot8\cdot1}=\sqrt{1296}=36=6^2$ の Heron 三角形である(Heron三角形)。3 辺を $\dfrac16$ 倍すると、3 辺が $\dfrac32,\dfrac53,\dfrac{17}6$ で面積 $\dfrac{36}{36}=1$ の三角形になる。3 辺が有理数で面積 $1$ の三角形はあるが、直角三角形ではない($\left(\dfrac32\right)^2+\left(\dfrac53\right)^2=\dfrac{181}{36}\ne\dfrac{289}{36}=\left(\dfrac{17}6\right)^2$)。thm-cgn-one は直角三角形であることを本質的に使っている。

3 辺が 3/2、5/3、17/6 の三角形は面積 1 で、最も長い辺への垂線で 2 つの有理数の直角三角形に分かれる 3 辺が 3/2、5/3、17/6 の三角形は面積 1 で、最も長い辺への垂線で 2 つの有理数の直角三角形に分かれる
図 3 は ex-cgn-cx-heron の三角形である。最も長い辺 $\dfrac{17}6$ への高さは $\dfrac{12}{17}$ で、辺は $\dfrac{77}{51}$ と $\dfrac{45}{34}$ に分かれる。面積 $1$ の三角形が、面積 $1$ でない 2 つの有理数の直角三角形の貼り合わせになっている。

反例:辺が無理数なら面積 $1$ の直角三角形はある

直角をはさむ 2 辺が $1$ と $2$ の直角三角形は面積 $1$ だが、斜辺は $\sqrt5$ で有理数でない。直角をはさむ 2 辺が $\sqrt2$ と $\sqrt2$ の直角三角形も面積 $1$ で、斜辺は $2$ だが、直角をはさむ辺が無理数である。thm-cgn-one は 3 辺すべてが有理数であることを使っている。

大学数学で見る:曲線 $y^2=x^3-n^2x$ の点

thm-cgn-ap の $x,s,t$ から、ある 3 次曲線の上の有理数の座標の点が作れる。

合同数から曲線の点を作る

正の整数 $n$ と有理数 $x,s,t$ が $x^2-n=s^2$、$x^2+n=t^2$ を満たすならば、点 $(X,Y)=(x^2,\ xst)$ は曲線
$$ E_n:\ Y^2=X^3-n^2X $$
の上にあり、$Y\ne0$ である。

$Y^2=x^2s^2t^2=x^2(x^2-n)(x^2+n)=x^2(x^4-n^2)=(x^2)^3-n^2x^2=X^3-n^2X$ である。thm-cgn-ap の証明の段 2 と同じく $s\ne0$、$t\ne0$ で、$x^2=s^2+n>0$ から $x\ne0$ なので、$Y\ne0$ である。$\square$

直角三角形・平方数の等差数列・曲線の点の関係を図式にまとめる。
$$ \xymatrix{ \text{面積 } n \text{ の有理数の直角三角形 } (a,b,c) \ar@<0.6ex>[r]^-{x=c/2} & \text{有理数 } x \text{(} x^2\pm n \text{ が平方)} \ar@<0.6ex>[l]^-{(t+s,\ t-s)} \ar[r]^-{} & \text{曲線 } E_n \text{ の点 } (x^2,\ xst) } $$
左の 2 本の矢印は thm-cgn-ap の段 1 と段 2 で、$x=\dfrac c2$、$a=t+s$、$b=t-s$ である。右の矢印は prop-cgn-curve で、$(X,Y)=(x^2,xst)$ である。

曲線の点の例
  1. $n=6$:$x=\dfrac52$、$s=\dfrac12$、$t=\dfrac72$ から $(X,Y)=\left(\dfrac{25}4,\dfrac{35}8\right)$ である。実際 $\left(\dfrac{25}4\right)^3-36\cdot\dfrac{25}4=\dfrac{15625}{64}-\dfrac{14400}{64}=\dfrac{1225}{64}=\left(\dfrac{35}8\right)^2$ である。
  2. $n=5$:$x=\dfrac{41}{12}$、$s=\dfrac{31}{12}$、$t=\dfrac{49}{12}$ から $(X,Y)=\left(\dfrac{1681}{144},\dfrac{62279}{1728}\right)$ である。

曲線 $E_n$ は 楕円曲線 とよばれる曲線の例である(楕円曲線)。MathWorld の頁 Wei26 には、$n$ が合同数であることと、$E_n$ が「位数が無限の有理点」をもつことが同値であると書かれている。楕円曲線の有理点どうしには足し算が定まり、何倍しても $(X,Y)$ が無限遠の点(足し算の $0$ にあたる点)にもどらない点を位数が無限の点という。この同値性はこの記事では証明しない。この記事の thm-cgn-one は、曲線を使わずに、ピタゴラス数の分類と無限降下法だけで $n=1$ の場合を示したものである。

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  • 不定方程式で解が無限に多くある例として、Pell方程式(高校数学) がある。そこでは 1 つの解から次の解を作る。合同数でも、1 つの三角形から別の三角形を作る方法がある(楕円曲線の点の足し算)が、この記事では扱わない。
  • 余りだけでは解がないことを示せないときに無限降下法を使う例は 不定方程式の解法 にもある。無限降下法が正しい理由は 数学的帰納法と整列性 で扱う。
  • 3 辺と面積が有理数の三角形は Heron三角形、3 辺と面の対角線が整数の直方体は Eulerの直方体 で扱った。どれも、ピタゴラス数の分類を部品にして組み立てる問題である。

関連項目

参考文献

[1]
Leonard Eugene Dickson, History of the Theory of Numbers, Vol. II: Diophantine Analysis, Dover Publications, 2005, Preface, p. xiii(Leonardo Pisano が平方数は合同数でないと述べ、完全には証明しなかったこと)、Chapter XVI, p. 459(x^2+k と x^2-k がともに平方数になる k としての合同数、972 年より前の写本の 5^2±24 の例)、p. 462(平方数が合同数でないことから導かれる 2 つの主張)

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