Apolloniusの円

同義語:アポロニウスの円circle of Apollonius

概要

Apolloniusの円(circle of Apollonius)とは、異なる 2 点 $A$、$B$ と $1$ でない正の数 $k$ について、$PA:PB=k:1$ を満たす点 $P$ 全体がなす円である($k=1$ なら線分 $AB$ の垂直二等分線)。直径の両端は $AB$ を $k:1$ に内分する点と外分する点で、角の二等分線の定理とその逆から座標なしで示せる。円の中心を $O$、半径を $r$ とすると $OA\cdot OB=r^2$ で、$A$、$B$ は円に関して反転の位置にある。$k$ を動かした円は互いに交わらず、$A$、$B$ を通るどの円とも直交する。複素数平面では 1 次分数変換 $T(z)=\frac{z-\alpha}{z-\beta}$ で原点中心の同心円に移り、$\alpha$、$\beta$ を動かさない 1 次分数変換は円の族を族のまま移す。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 角の二等分線の定理, 軌跡の求め方, 方べきの定理(高校数学), 複素数平面と図形

高校での出発点:距離の比が一定の点

2 点 $A$、$B$ からの距離の比が一定の点 $P$ はどこにあるか。比が $1:1$ なら、答えは線分 $AB$ の垂直二等分線である。比が $1:1$ でなければ、答えは円になる。この円を Apollonius の円 という。
軌跡を座標で求める手順は 軌跡の求め方 で、複素数で求める手順は 複素数平面と図形 で扱った。この記事では、同じ円を 角の二等分線の定理 から座標なしで導き、さらに「2 点を決めたときの Apollonius の円の全体」がもつ性質を調べる。まず 1 つ計算してみる。

比 3:1 の点の集まり

$A(-1,0)$、$B(1,0)$ とし、$PA:PB=3:1$ を満たす点 $P(x,y)$ を求める。条件は $PA=3PB$ で、両辺が $0$ 以上なので $PA^2=9PB^2$ と同値である。
$$ (x+1)^2+y^2=9\bigl\{(x-1)^2+y^2\bigr\} $$
展開して整理すると $8x^2+8y^2-20x+8=0$、両辺を $8$ で割って $x^2+y^2-\dfrac52x+1=0$ である。平方完成すると
$$ \left(x-\frac54\right)^2+y^2=\frac{25}{16}-1=\frac9{16} $$
で、中心 $\left(\dfrac54,0\right)$、半径 $\dfrac34$ の円である。
この円と $x$ 軸の交点は $\dfrac54\pm\dfrac34$、つまり $\dfrac12$ と $2$ である。$D\left(\dfrac12,0\right)$ は線分 $AB$ を $3:1$ に内分する点($\dfrac{1\cdot(-1)+3\cdot1}{3+1}=\dfrac12$)、$E(2,0)$ は $3:1$ に外分する点($\dfrac{-1\cdot(-1)+3\cdot1}{3-1}=2$)である。

円の上の点で比を確かめる

ex-apo-start の円のいちばん上の点 $P\left(\dfrac54,\dfrac34\right)$ で距離を計算すると
$$ PA=\sqrt{\left(\frac94\right)^2+\left(\frac34\right)^2}=\frac{\sqrt{90}}4=\frac{3\sqrt{10}}4,\qquad PB=\sqrt{\left(\frac14\right)^2+\left(\frac34\right)^2}=\frac{\sqrt{10}}4 $$
で、$PA:PB=3:1$ である。円の中心 $O\left(\dfrac54,0\right)$ から $A$、$B$ までの距離は $OA=\dfrac94$、$OB=\dfrac14$ で、$OA\cdot OB=\dfrac9{16}$ は半径の 2 乗に等しい。この一致は偶然ではない(prop-apo-center)。

この記事で答える問いは次の 4 つである。

  1. 距離の比が一定の点が円になることを、座標を使わずに示せるか。→ thm-apo-main
  2. 円の中心と半径は、$A$、$B$ とどんな位置関係にあるか。→ prop-apo-center、cor-apo-inverse
  3. 比を動かしたときの円の全体は、どんな形に並ぶか。→ prop-apo-family、thm-apo-orthogonal
  4. 複素数平面の 1 次分数変換は、この円の全体をどう動かすか。→ prop-apo-mobius-image、thm-apo-mobius
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    $PA^2=k^2PB^2$ を平方完成Apollonius の円1 次分数変換 $\dfrac{z-\alpha}{z-\beta}$ の絶対値の等高線
    内分点 $D$ と外分点 $E$ が直径の両端角の二等分線の定理$D$、$E$ は $A$、$B$ に関して調和共役
    $OA\cdot OB=r^2$$A$、$B$ は円に関して反転の位置円に関する対称点
    比を変えた円どうしは交わらないApollonius の円の族交わらない円の束、極限点 $A$、$B$
    $A$、$B$ を通る円と直交する2 つの族の直交同心円と原点を通る直線の像

Apollonius の円の定義

2 点に関する Apollonius の円

異なる 2 点 $A$、$B$ と、$1$ でない正の数 $k$ をとる。
$$ \Gamma_k=\{P\mid PA=k\cdot PB\} $$
($PA:PB=k:1$ を満たす点 $P$ 全体)を、$A$、$B$ に関する比 $k$ の Apollonius の円 という。$k=1$ のときの $\Gamma_1$ は線分 $AB$ の垂直二等分線である。
以下、線分 $AB$ を $k:1$ に内分する点を $D$、外分する点を $E$ とする($k\ne1$ なので $E$ はある。内分点・外分点の座標)。

名前は $\Gamma_k$ が円であることを先取りしている。これを次の節で証明する。$PA=kPB$ は $PB=\dfrac1k\,PA$ と同じなので、$\Gamma_k$ は $A$ と $B$ を入れ替えた比 $\dfrac1k$ の Apollonius の円でもある。

高校数学で解く:角の二等分線で示す

中心と半径

先に、$D$、$E$ を直径の両端とする円の中心と半径を、$A$、$B$ との位置関係とともに求めておく。

直径 $DE$ の円の中心と半径

$DE$ の中点を $O$、$r=\dfrac12DE$ とする。このとき $O$ は直線 $AB$ の上で線分 $AB$ の外にあり、
$$ OA=k\,r,\qquad OB=\frac rk,\qquad OA\cdot OB=r^2 $$
である。$k>1$ なら $O$ は $B$ の側にあり、$B$ は円の内部、$A$ は円の外部にある。$k<1$ なら $A$ と $B$ の役目が入れ替わる。

直線 $AB$ に数直線を入れる

方針:直線 $AB$ を数直線とみて、$A=0$、$B=b$($b>0$)とし、$D$、$E$、$O$、$r$ を $k$ と $b$ で書く。
段 1($D$ と $E$)。内分点・外分点の公式(内分点・外分点の座標)により
$$ D=\frac{1\cdot0+k\cdot b}{k+1}=\frac{kb}{k+1},\qquad E=\frac{-1\cdot0+k\cdot b}{k-1}=\frac{kb}{k-1} $$
である。
段 2($O$ と $r$)。
$$ O=\frac{D+E}2=\frac{kb}2\left(\frac1{k+1}+\frac1{k-1}\right)=\frac{kb}2\cdot\frac{2k}{k^2-1}=\frac{k^2b}{k^2-1} $$
$$ r=\frac{|E-D|}2=\frac{kb}2\left|\frac1{k-1}-\frac1{k+1}\right|=\frac{kb}2\cdot\frac{2}{|k^2-1|}=\frac{kb}{|k^2-1|} $$
である。
段 3($OA$ と $OB$)。$OA=|O-0|=\dfrac{k^2b}{|k^2-1|}=k\,r$ である。また $O-b=\dfrac{k^2b-(k^2-1)b}{k^2-1}=\dfrac b{k^2-1}$ なので $OB=\dfrac b{|k^2-1|}=\dfrac rk$ である。掛けると $OA\cdot OB=k\,r\cdot\dfrac rk=r^2$ である。
段 4(位置)。$O-0=\dfrac{k^2b}{k^2-1}$ と $O-b=\dfrac b{k^2-1}$ は同じ符号($k^2-1$ の符号)をもつので、$A$ と $B$ は $O$ から見て同じ向きにあり、$O$ は線分 $AB$ の外にある。$k>1$ なら $O>b>0$ で $O$ は $B$ の側にあり、$OB=\dfrac rk< r$ なので $B$ は円の内部、$OA=kr>r$ なので $A$ は円の外部にある。$k<1$ なら不等号が逆になる。$\square$

$OA\cdot OB=r^2$ で、$A$、$B$ が $O$ から見て同じ向きにあることは、$B$ が $A$ を円に関して反転した点であることを意味する(円に関する反転)。

2 点は円に関して反転の位置

$A$、$B$ は、直径 $DE$ の円に関して互いに反転の位置にある。

反転の定義にあてはめる

方針:反転の定義「$O$ を端とする半直線の上で $OA\cdot OB=r^2$」を確かめる。
prop-apo-center により、$A$、$B$ は $O$ を端とする同じ半直線の上にあり、$OA\cdot OB=r^2$ である。これは、中心 $O$、半径 $r$ の円に関する反転(円に関する反転)で $A$ が $B$ に移ることの定義そのものである。$\square$

主定理

Apollonius の円の定理

$\Gamma_k$($k\ne1$)は、$D$、$E$ を直径の両端とする円である。

証明は、$\Gamma_k$ の点が円の上にあること(段 2)と、円の点が $\Gamma_k$ に入ること(段 3)の 2 つの向きに分ける(集合の等式を 2 つの包含で示すことは 軌跡の求め方 で扱った)。

二等分線の定理と相似で 2 つの向きを示す

方針:$\Gamma_k$ の点 $P$ が直線 $AB$ の外にあれば、$PD$、$PE$ は角 $APB$ の内角・外角の二等分線になり、$\angle DPE=90^\circ$ となる。逆向きは prop-apo-center の $OA:OP=OP:OB$ から相似な三角形を作る。$\Gamma$ で直径 $DE$ の円を表す。
段 1(直線 $AB$ の上の点)。$P$ が直線 $AB$ の上にあって $PA=kPB$ を満たすとする。$P=B$ なら $PA=AB>0$、$PB=0$ で成り立たないので $P\ne B$ であり、$P$ は線分 $AB$ を $k:1$ に内分または外分する。内分点・外分点はただ 1 つなので $P=D$ または $P=E$ である。逆に $D$、$E$ は $\Gamma_k$ の点で、$\Gamma$ の直径の両端なので $\Gamma$ の上にもある。直線 $AB$ は $\Gamma$ の中心 $O$ を通るので、$\Gamma$ と直線 $AB$ の共有点は $D$、$E$ だけである。よって、直線 $AB$ の上では $\Gamma_k$ と $\Gamma$ は一致する。
段 2($\Gamma_k$ の点は $\Gamma$ の上)。$P$ が直線 $AB$ の外にあって $PA=kPB$ を満たすとする。三角形 $PAB$ で、$D$ は辺 $AB$ の上にあって $AD:DB=k:1=PA:PB$ を満たす。角の二等分線の定理 の逆により、$PD$ は角 $APB$ の内角の二等分線である。$E$ は直線 $AB$ の上で線分 $AB$ の外にあって $AE:EB=k:1=PA:PB$ を満たすので、同じ記事の外角の二等分線の定理の逆により、$PE$ は角 $APB$ の外角の二等分線である。内角の二等分線と外角の二等分線は垂直なので $\angle DPE=90^\circ$ であり、直径に対する円周角の逆(直径に対する円周角)により $P$ は $DE$ を直径とする円 $\Gamma$ の上にある。
段 3($\Gamma$ の点は $\Gamma_k$ に入る)。$P$ が $\Gamma$ の上にあって $D$、$E$ と異なるとする。段 1 より $P$ は直線 $AB$ の上にない。$OP=r$ なので、prop-apo-center から
$$ \frac{OA}{OP}=\frac{kr}r=k,\qquad \frac{OP}{OB}=\frac r{r/k}=k $$
である。$A$、$B$ は $O$ から見て同じ向きにあるので $\angle AOP=\angle POB$ である。よって三角形 $OAP$ と三角形 $OPB$ は、2 組の辺の比 $OA:OP=OP:OB=k:1$ とその間の角が等しいので相似で、相似比は $k$ である($O\leftrightarrow O$、$A\leftrightarrow P$、$P\leftrightarrow B$ が対応する)。対応する辺 $AP$ と $PB$ について $AP=k\cdot PB$ であり、$P$ は $\Gamma_k$ に入る。
段 4(まとめ)。段 1〜3 により $\Gamma_k=\Gamma$ である。$\square$

A(−1,0)、B(1,0)、比 3:1 の Apollonius の円(中心 O(5/4,0)、半径 3/4)。円の上の点 P で、PD と PE が角 APB の内角・外角の二等分線になり、角 DPE が直角になることを見る図 A(−1,0)、B(1,0)、比 3:1 の Apollonius の円(中心 O(5/4,0)、半径 3/4)。円の上の点 P で、PD と PE が角 APB の内角・外角の二等分線になり、角 DPE が直角になることを見る図

証明の各段を数値で確かめる

ex-apo-start の $A(-1,0)$、$B(1,0)$、$k=3$ では $D\left(\dfrac12,0\right)$、$E(2,0)$、$O\left(\dfrac54,0\right)$、$r=\dfrac34$ である。prop-apo-center の式は $OA=\dfrac94=3\cdot\dfrac34=kr$、$OB=\dfrac14=\dfrac{3/4}3=\dfrac rk$ で成り立つ。
段 3 の相似を $P\left(\dfrac54,\dfrac34\right)$ で確かめると、$OA:OP=\dfrac94:\dfrac34=3:1$、$OP:OB=\dfrac34:\dfrac14=3:1$ で、$\angle AOP=\angle POB=90^\circ$ である。相似比 $3$ から $PA=3PB$ で、ex-apo-start-check の $PA=\dfrac{3\sqrt{10}}4$、$PB=\dfrac{\sqrt{10}}4$ と合う。

直径の両端は調和共役

$D$ と $E$ は線分 $AB$ を同じ比 $k:1$ に内分・外分する点なので、$A$、$B$ に関して調和共役である(符号つきの比が $k$ と $-k$。角の二等分線の定理 の記事の調和共役の命題、内分点・外分点の座標)。逆に、$A$、$B$ に関して調和共役な 2 点をとる。2 点の符号つきの比は $0$ でなく、絶対値が等しく符号が反対なので、一方の符号つきの比は正、もう一方は負である。正の方を $D'$、負の方を $E'$ とし、$D'$ の符号つきの比を $k$($k>0$)とすると、$E'$ の符号つきの比は $-k$ である。符号つきの比が $-1$ になる点はない($\overrightarrow{AX}=-\overrightarrow{XB}$ なら $A=B$ になる)ので、$k\ne1$ である。したがって $D'$、$E'$ は線分 $AB$ を $k:1$ に内分・外分する点で、$D'E'$ を直径とする円は $\Gamma_k$ である。つまり Apollonius の円とは「$A$、$B$ の調和共役な点の組を直径の両端とする円」のことである。

段 3 の議論は、$D$、$E$ を使わずに「$A$、$B$ が円に関して反転の位置にある」ことだけを使っている。したがって逆も成り立つ。

反転の位置にある 2 点から見た円

中心 $O$、半径 $r$ の円 $\Gamma$ に関して、2 点 $A$、$B$ が反転の位置にあり($O$ を端とする同じ半直線の上で $OA\cdot OB=r^2$)、$A\ne B$ ならば、$\Gamma$ は $A$、$B$ に関する比 $\dfrac{OA}r$ の Apollonius の円である。

段 3 をそのまま使う

方針:prf-apo-main の段 3 は、$OA:OP=OP:OB$ と $A$、$B$ が同じ向きにあることしか使っていない。
$k=\dfrac{OA}r$ とおく。$OA\cdot OB=r^2$ から $\dfrac{OP}{OB}=\dfrac r{OB}=\dfrac{OA}r=k$ である($P$ は $\Gamma$ の点で $OP=r$)。$P$ が直線 $OA$ の上になければ、prf-apo-main の段 3 と同じく三角形 $OAP$ と $OPB$ が相似比 $k$ で相似になり、$PA=kPB$ である。$P$ が直線 $OA$ の上にあるとき(2 点)は、$O$ を $0$、$A$ を $a>0$ とする数直線で $B=\dfrac{r^2}a$、$P=\pm r$ として直接計算すると $\dfrac{|a\mp r|}{|r^2/a\mp r|}=\dfrac{a|a\mp r|}{r|r\mp a|}=\dfrac ar=k$ である。$A\ne B$ なので $a\ne r$ で、分母は $0$ にならない。
以上で $\Gamma$ の点はすべて $\Gamma_k$ に入る。$a\ne r$ より $k\ne1$ なので、thm-apo-main により $\Gamma_k$ も円である。円 $\Gamma_k$ が円 $\Gamma$ の 3 点を含めば、3 点を通る円はただ 1 つなので $\Gamma_k=\Gamma$ である。$\square$

2 点で決まる Apollonius の円の族

$A$、$B$ を固定して比 $k$ を動かすと、Apollonius の円がたくさんできる。以下、計算しやすいように $A(-1,0)$、$B(1,0)$ とする(どんな 2 点も、平行移動・回転・拡大でこの位置に移せ、距離の比は変わらない)。

Apollonius の円の族

$A(-1,0)$、$B(1,0)$ とし、$k>0$、$k\ne1$ に対して $c_k=\dfrac{k^2+1}{k^2-1}$ とおく。

  1. $\Gamma_k$ は方程式 $x^2+y^2-2c_kx+1=0$ で表され、中心 $(c_k,0)$、半径 $\rho_k=\dfrac{2k}{|k^2-1|}$ の円である。$c_k^2-\rho_k^2=1$ が成り立つ。
  2. $A$、$B$ と異なる点は、$\Gamma_k$($k\ne1$)と垂直二等分線 $\Gamma_1$($y$ 軸)のうち、ちょうど 1 つの上にある。特に、比の違う 2 つの Apollonius の円は交わらない。
  3. 逆に、中心 $(c,0)$、半径 $\rho>0$ の円で $c^2-\rho^2=1$ を満たすものは、ある $k$ の $\Gamma_k$ である。
  4. どの 2 つの $\Gamma_k$、$\Gamma_m$($k\ne m$)も、根軸は $y$ 軸である。
方程式を係数で比べる

方針:ex-apo-start の計算を一般の $k$ で行う。2 と 4 は方程式の形から、3 は $c$ から $k$ を逆に求めて示す。
段 1(1)。$PA^2=k^2PB^2$ は $(x+1)^2+y^2=k^2\{(x-1)^2+y^2\}$ で、展開して移項すると
$$ (1-k^2)(x^2+y^2)+2(1+k^2)x+(1-k^2)=0 $$
である。$1-k^2\ne0$ で割ると $x^2+y^2-2c_kx+1=0$ となる。平方完成すると $(x-c_k)^2+y^2=c_k^2-1$ で、
$$ c_k^2-1=\frac{(k^2+1)^2-(k^2-1)^2}{(k^2-1)^2}=\frac{4k^2}{(k^2-1)^2}=\rho_k^2 $$
である。
段 2(2)。$P$ が $A$、$B$ と異なれば $PB>0$ で、$k=\dfrac{PA}{PB}$ はただ 1 つに決まり、$P$ はその $\Gamma_k$ の上にあり、ほかの $\Gamma_m$ の上にはない($PA=mPB$ なら $m=k$)。$k=1$ のときは $\Gamma_1$ の上にある。よって比の違う 2 つの円は共有点をもたない。
段 3(3)。$c^2=1+\rho^2>1$ なので $|c|>1$ で、$\dfrac{c+1}{c-1}>0$ である。$k=\sqrt{\dfrac{c+1}{c-1}}$ とおくと $k>0$、$k\ne1$ で、$k^2(c-1)=c+1$ から $c=\dfrac{k^2+1}{k^2-1}=c_k$ である。1 により $\Gamma_k$ は中心 $(c_k,0)$、半径 $\sqrt{c_k^2-1}=\sqrt{c^2-1}=\rho$ の円で、与えられた円と一致する。
段 4(4)。2 つの円 $x^2+y^2-2c_kx+1=0$、$x^2+y^2-2c_mx+1=0$ の方程式を引くと $-2(c_k-c_m)x=0$ である。$k\ne m$ なら $c_k\ne c_m$ である($c_k=1+\dfrac2{k^2-1}$ は、$k<1$ なら $-1$ より小さく、$k>1$ なら $1$ より大きく、どちらの範囲でも $k$ が増えると減る)。よって、根軸は $x=0$、つまり $y$ 軸である(根軸と根心)。$\square$

Apollonius の円の族の表

prop-apo-family の 1 で中心と半径を求めると次のようになる。

$k$中心 $c_k$半径 $\rho_k$$c_k^2-\rho_k^2$
$5$$\dfrac{13}{12}$$\dfrac5{12}$$\dfrac{169-25}{144}=1$
$3$$\dfrac54$$\dfrac34$$\dfrac{25-9}{16}=1$
$2$$\dfrac53$$\dfrac43$$\dfrac{25-16}9=1$
$\dfrac32$$\dfrac{13}5$$\dfrac{12}5$$\dfrac{169-144}{25}=1$
$\dfrac12$$-\dfrac53$$\dfrac43$$1$

$k$ が大きくなるほど、円は $B$ のまわりで小さくなる。$k$ が $1$ に近づくと円は大きくなり、$y$ 軸に近づく。$k<1$ の円は、$k$ を $\dfrac1k$ に替えた円を $y$ 軸で折り返したものである($c_{1/k}=-c_k$、$\rho_{1/k}=\rho_k$)。$k=\dfrac12$ の円は 複素数平面と図形 の例 $|z-1|=2|z+1|$ と同じ円である。

prop-apo-family の 4 から、Apollonius の円の全体(と $y$ 軸)は、根軸と根心 で扱った「交わらない 2 つの円が定める円の束」になっている。円は $A$、$B$ に向かって縮んでいき、$A$、$B$ はこの束の極限点である。

$A$、$B$ を通る円との直交

$A$、$B$ を通る円の全体は、もう 1 つの円の族をつくる。2 つの族は、どの 2 つの円をとっても直角に交わる(図 2)。
A、B に関する Apollonius の円(青の破線)と、A、B を通る円(赤の実線)。青と赤の円はどれも直角に交わることを見る図 A、B に関する Apollonius の円(青の破線)と、A、B を通る円(赤の実線)。青と赤の円はどれも直角に交わることを見る図
2 つの円が 直交する とは、交わる点で 2 つの円の接線が垂直であることをいう。接線は半径に垂直なので、これは交点での 2 本の半径が垂直であることと同じである。

$A$、$B$ を通る円と Apollonius の円の直交

$A$、$B$ を通る円 $C$ と Apollonius の円 $\Gamma_k$($k\ne1$)は 2 点で交わり、その交点で直交する。

方べきで中心の距離を求める

方針:$\Gamma_k$ の中心 $O$ の、円 $C$ に関する方べきを 2 通りに計算し、中心間の距離の 2 乗が 2 つの半径の 2 乗の和になることを示す。三平方の定理の逆で、交点での 2 本の半径が垂直になる。
段 1(記号)。$\Gamma_k$ の中心を $O$、半径を $r$、円 $C$ の中心を $Q$、半径を $\rho$ とする。
段 2(方べき)。prop-apo-center により $O$ は直線 $AB$ の上で線分 $AB$ の外にあり、$O\ne A$、$O\ne B$ である。直線 $AB$ と円 $C$ の共有点は $A$、$B$ だけで、直線上の円 $C$ の内部の点は線分 $AB$ の内部の点なので、$O$ は円 $C$ の外にある。方べきの定理(方べきの定理(高校数学))により $OA\cdot OB=OQ^2-\rho^2$ である。
段 3(中心の距離)。prop-apo-center により $OA\cdot OB=r^2$ なので、段 2 と合わせて
$$ OQ^2=r^2+\rho^2 $$
である。
段 4(2 点で交わる)。$r,\rho>0$ なので $(r-\rho)^2< r^2+\rho^2<(r+\rho)^2$、つまり $|r-\rho|< OQ< r+\rho$ である。2 つの円の中心間の距離が半径の差より大きく和より小さいので、2 つの円は 2 点で交わる(中心間の距離による 2 円の位置関係の判定。高校で習う事実として使い、証明しない)。
段 5(直交)。交点を $X$ とすると $OX=r$、$QX=\rho$ なので、$OX^2+QX^2=r^2+\rho^2=OQ^2$ である。三平方の定理の逆により $\angle OXQ=90^\circ$ で、2 本の半径 $OX$、$QX$ は垂直である。よって 2 つの円は $X$ で直交する。$\square$

直交を数値で確かめる

$A(-1,0)$、$B(1,0)$ を通る円 $C$ として、中心 $Q(0,1)$、半径 $\rho=\sqrt2$ の円 $x^2+(y-1)^2=2$ をとる($A$、$B$ は $1+1=2$ を満たす)。$\Gamma_3$ は中心 $O\left(\dfrac54,0\right)$、半径 $r=\dfrac34$ である。
段 2 の方べきは $OQ^2-\rho^2=\dfrac{25}{16}+1-2=\dfrac9{16}$ で、$OA\cdot OB=\dfrac94\cdot\dfrac14=\dfrac9{16}$ と一致する。段 3 の $OQ^2=\dfrac{41}{16}$ は $r^2+\rho^2=\dfrac9{16}+2=\dfrac{41}{16}$ に等しい。
2 つの円の方程式 $x^2+y^2-2y-1=0$ と $x^2+y^2-\dfrac52x+1=0$ を引くと $y=\dfrac54x-1$ で、代入して解くと交点の 1 つは
$$ X\left(\frac{40+12\sqrt2}{41},\ \frac{9+15\sqrt2}{41}\right)\approx(1.390,\ 0.737) $$
である。$\overrightarrow{XO}\cdot\overrightarrow{XQ}$ を計算すると $0$ になり、半径 $OX$ と $QX$ は垂直である(図 3)。

A、B を通る円 C(中心 Q(0,1)、半径 √2)と Apollonius の円 Γ3(中心 O(5/4,0)、半径 3/4)。交点 X で半径 OX と QX が直角をなすことを見る図 A、B を通る円 C(中心 Q(0,1)、半径 √2)と Apollonius の円 Γ3(中心 O(5/4,0)、半径 3/4)。交点 X で半径 OX と QX が直角をなすことを見る図
直線 $AB$ も「$A$、$B$ を通る円」の仲間とみなせる。直線 $AB$ はすべての $\Gamma_k$ の中心を通るので、$D$、$E$ で $\Gamma_k$ に垂直に交わる。

大学数学で見る:1 次分数変換で保たれる円の族

複素数平面で考える。$A$、$B$ を複素数 $\alpha$、$\beta$($\alpha\ne\beta$)で表す。2 点 $z$、$w$ の距離は $|z-w|$ である(複素数平面と図形)。

同心円と、原点を通る直線の像

1 次分数変換で見た Apollonius の円

$T(z)=\dfrac{z-\alpha}{z-\beta}$($z\ne\beta$)とおく。$z\ne\beta$ について
$$ z\in\Gamma_k\iff|T(z)|=k $$
である。つまり $T$ は、$\alpha$、$\beta$ に関する Apollonius の円 $\Gamma_k$ を、原点を中心とする半径 $k$ の円 $|w|=k$ に移す(垂直二等分線 $\Gamma_1$ は単位円 $|w|=1$ に移る)。

絶対値の性質だけを使う

方針:商の絶対値は絶対値の商であることを使う。
$z\ne\beta$ なら $|z-\beta|>0$ で、$|T(z)|=\dfrac{|z-\alpha|}{|z-\beta|}$ である。よって $|T(z)|=k$ は $|z-\alpha|=k|z-\beta|$、つまり $z$ と $\alpha$ の距離が $z$ と $\beta$ の距離の $k$ 倍であることと同値である。これは $z\in\Gamma_k$ の定義そのものである。$\square$

$T$ のように $\dfrac{az+b}{cz+d}$($ad-bc\ne0$)の形の写像を 1 次分数変換(Möbius 変換)という(w=1/z による図形の変換 の最後の注意、Möbius変換)。$T$ は $a=1$、$b=-\alpha$、$c=1$、$d=-\beta$ の場合で、$ad-bc=\alpha-\beta\ne0$ である。
$A$、$B$ を通る円のほうは、$T$ で原点を通る直線に移る。$T(z)$ の偏角 $\arg\dfrac{z-\alpha}{z-\beta}$ は、点 $z$ から $\beta$ と $\alpha$ を見込む向きのついた角である(複素数平面と図形)。見込む角が一定の点は $\alpha$、$\beta$ を通る 1 つの円弧の上にあり(円周角の定理(高校数学))、偏角が一定の点の像は原点から出る半直線の上にある。ここでは数値の例で確かめるにとどめる。

同心円と直線への移り方を計算する

$\alpha=-1$、$\beta=1$ で $T(z)=\dfrac{z+1}{z-1}$ とする。
(1) $\Gamma_3$ の点 $z=\dfrac54+\dfrac34i$(ex-apo-start-check の $P$)では
$$ T(z)=\frac{\frac94+\frac34i}{\frac14+\frac34i}=\frac{9+3i}{1+3i}=\frac{(9+3i)(1-3i)}{10}=\frac{18-24i}{10}=\frac95-\frac{12}5i $$
で、$|T(z)|=\dfrac{\sqrt{81+144}}5=\dfrac{15}5=3$ である。
(2) $A$、$B$ を通る円 $|z-i|=\sqrt2$ の上の点 $z=1+2i$($|1+i|=\sqrt2$)と $z=-1+2i$($|-1+i|=\sqrt2$)では
$$ T(1+2i)=\frac{2+2i}{2i}=1-i,\qquad T(-1+2i)=\frac{2i}{-2+2i}=\frac{2i(-2-2i)}8=\frac{1-i}2 $$
で、どちらも偏角は $-\dfrac\pi4$ である。2 つの像は原点を通る直線 $\arg w=-\dfrac\pi4$ の上にある。

左は α=−1、β=1 に関する Apollonius の円(青の破線)と −1、1 を通る円(赤の実線)。T(z)=(z+1)/(z−1) で、左の図は右の図(原点を中心とする同心円と、原点を通る直線)に移ることを見る図 左は α=−1、β=1 に関する Apollonius の円(青の破線)と −1、1 を通る円(赤の実線)。T(z)=(z+1)/(z−1) で、左の図は右の図(原点を中心とする同心円と、原点を通る直線)に移ることを見る図
原点を通る直線は、同心円の半径の向きに進むので、交点で同心円の接線に垂直である。つまり右の図の 2 つの族は直交している。1 次分数変換は交わる角の大きさを保つ(円に関する反転 の主定理 3 と、$w=\dfrac1z$ が反転と鏡映の合成であることから分かる。本記事では一般の場合を証明しない)。この見方をすると、thm-apo-orthogonal は「同心円と原点を通る直線が直交する」ことを $T$ で引き戻したものになる。

$A$、$B$ を動かさない 1 次分数変換

$\alpha$、$\beta$ を動かさない 1 次分数変換は、Apollonius の円の族を族のまま移す。

$A$、$B$ を固定する 1 次分数変換と円の族

$S(z)=\dfrac{az+b}{cz+d}$($ad-bc\ne0$)が $S(\alpha)=\alpha$、$S(\beta)=\beta$ を満たすとする($c\alpha+d\ne0$、$c\beta+d\ne0$)。$\lambda=\dfrac{c\beta+d}{c\alpha+d}$ とおくと、$cz+d\ne0$、$z\ne\beta$ を満たす $z$ について
$$ \frac{S(z)-\alpha}{S(z)-\beta}=\lambda\cdot\frac{z-\alpha}{z-\beta} $$
である。したがって $S$ は $\Gamma_k$ の点を $\Gamma_{|\lambda|k}$ の点に移す($|\lambda|k=1$ なら垂直二等分線の点に移す)。

差の公式を 2 回使う

方針:1 次分数変換の差 $S(z)-S(w)$ を分数の引き算で計算し、$w=\alpha$、$w=\beta$ を入れて割る。
段 1(差の公式)。$cz+d\ne0$、$cw+d\ne0$ のとき
$$ S(z)-S(w)=\frac{(az+b)(cw+d)-(aw+b)(cz+d)}{(cz+d)(cw+d)} $$
で、分子を展開すると
$$ aczw+adz+bcw+bd-aczw-bcz-adw-bd=(ad-bc)(z-w) $$
である。よって $S(z)-S(w)=\dfrac{(ad-bc)(z-w)}{(cz+d)(cw+d)}$ である。
段 2($w=\alpha$、$w=\beta$)。$S(\alpha)=\alpha$、$S(\beta)=\beta$ なので
$$ S(z)-\alpha=\frac{(ad-bc)(z-\alpha)}{(cz+d)(c\alpha+d)},\qquad S(z)-\beta=\frac{(ad-bc)(z-\beta)}{(cz+d)(c\beta+d)} $$
である。$ad-bc\ne0$、$z\ne\beta$ なので $S(z)-\beta\ne0$ である。
段 3(割る)。段 2 の 2 つの式を割ると $(ad-bc)$ と $(cz+d)$ が約分されて
$$ \frac{S(z)-\alpha}{S(z)-\beta}=\frac{c\beta+d}{c\alpha+d}\cdot\frac{z-\alpha}{z-\beta}=\lambda\cdot\frac{z-\alpha}{z-\beta} $$
である。
段 4(円の行き先)。$z\in\Gamma_k$ なら、prop-apo-mobius-image により $\left|\dfrac{z-\alpha}{z-\beta}\right|=k$ なので、段 3 から $\left|\dfrac{S(z)-\alpha}{S(z)-\beta}\right|=|\lambda|k$ である。再び prop-apo-mobius-image により $S(z)\in\Gamma_{|\lambda|k}$ である。$\square$

2 点を固定する変換で円を送る

$\alpha=-1$、$\beta=1$ と $S(z)=\dfrac{2z+1}{z+2}$($a=2$、$b=1$、$c=1$、$d=2$、$ad-bc=3$)を考える。$S(1)=\dfrac33=1$、$S(-1)=\dfrac{-1}1=-1$ なので $S$ は $\pm1$ を動かさない。$\lambda=\dfrac{1+2}{-1+2}=3$ である。
thm-apo-mobius によれば、$S$ は垂直二等分線 $\Gamma_1$(虚軸)の点を $\Gamma_3$ の点に移す。虚軸の点 $z=i$ で確かめると
$$ S(i)=\frac{1+2i}{2+i}=\frac{(1+2i)(2-i)}5=\frac{4+3i}5 $$
である。$\Gamma_3$ の中心 $\dfrac54$ との距離は $\left|\dfrac45-\dfrac54+\dfrac35i\right|=\left|-\dfrac9{20}+\dfrac{12}{20}i\right|=\dfrac{15}{20}=\dfrac34$ で、確かに $\Gamma_3$ の上にある。同じ $S$ をもう一度使うと $\Gamma_3$ の点は $\Gamma_9$ の点に移る。$S$ をくり返すと、点は Apollonius の円を 1 つずつ渡って $B=1$ に近づいていく。

1 次分数変換の分類と円の族

thm-apo-mobius の $\lambda$ によって、2 点を固定する 1 次分数変換は分けられる。$\lambda=1$ なら、$\dfrac{S(z)-\alpha}{S(z)-\beta}=\dfrac{z-\alpha}{z-\beta}$ で、$w=\dfrac{z-\alpha}{z-\beta}$ から $z$ がただ 1 つに決まるので $S(z)=z$、つまり $S$ は恒等写像であり、どの円も動かない。$\lambda\ne1$ の場合は次のとおりである。$\lambda$ が正の実数($\ne1$)なら、$S$ は各 Apollonius の円を別の Apollonius の円へ送り、$\alpha$、$\beta$ を通る各円はそれ自身に移る(偏角 $\arg$ が変わらないため)。$|\lambda|=1$、$\lambda\ne1$ なら、逆に各 Apollonius の円はそれ自身に移り、$\alpha$、$\beta$ を通る円は偏角が $\arg\lambda$ だけずれて、$\alpha$、$\beta$ を通る別の円に移る($\lambda=-1$ のときだけは、各円の 2 つの弧が入れ替わってそれ自身に移る)。$\lambda$ が正の実数でも絶対値 $1$ でもないなら、$|\lambda|\ne1$ なので Apollonius の円は $\Gamma_k$ から $\Gamma_{|\lambda|k}$ へ別の円に移り、$\alpha$、$\beta$ を通る円も($\lambda$ が負の実数でなければ)別の円に移る。大学の複素関数論では、この 3 つを順に双曲型、楕円型、斜航型と呼ぶ(本記事では、1 次分数変換全体のこの分類は証明しない。Möbius変換)。どの場合も、2 つの直交する円の族は族として保たれる(Apollonius の円については thm-apo-mobius の式から分かる。$\alpha$、$\beta$ を通る円については、$T$ で原点を通る直線に移ることを認めれば、$T$ の像が $\lambda$ 倍されることから分かる)。$A$、$B$ に関する「type II の円」(Apollonius の円)と「type I の円」($A$、$B$ を通る円)として、この 2 つの族は Hit18 の §3.5 でも扱われている。

双曲幾何の円

Poincaré の円板の中の円

単位円の内部を平面とみなす双曲幾何のモデル(Poincaré の円板モデル)では、点 $p$($p\ne0$)を中心とする「双曲幾何の円」は、$p$ と、$p$ を単位円に関して反転した点 $p^\ast$ に関する Apollonius の円(のうち単位円の内部にあるもの)として定義され、その上の点はどれも $p$ から双曲幾何の距離で等距離にある(Hit18 の Definition 5.2.9 と Corollary 5.3.8。本記事では証明しない)。$p=0$ のときは反転した点が有限の点にならないので、この説明は使えない。原点を中心とする双曲幾何の円は、原点を中心とする普通の円(単位円の内部にあるもの)である(これも本記事では証明しない)。cor-apo-converse により、単位円そのものも $p$ と $p^\ast$ に関する Apollonius の円である。双曲幾何の円は、ユークリッド幾何の目で見ると円だが、その「中心」$p$ はユークリッド幾何の中心とずれている(ex-apo-start で $\Gamma_3$ の中心 $\dfrac54$ と $B=1$ がずれていたのと同じである)。双曲幾何については 双曲幾何学 で扱う。

等高線としての Apollonius の円

関数 $f(P)=\log\dfrac{PA}{PB}$($P\ne A,B$)の等高線 $f=\log k$ は $\Gamma_k$ である。複素数で書くと $f(z)=\log|T(z)|=\log|z-\alpha|-\log|z-\beta|$ で、これは 2 変数の調和関数(Laplace 方程式の解)の典型例である。平面の静電気学では、平行な 2 本の直線に正と負の電荷を一様に置いたときの電位がこの形になり、等電位線が Apollonius の円、電気力線が $A$、$B$ を通る円になる(物理の事実として紹介するだけで、本記事では扱わない)。

例と反例

どの仮定を外すと何が崩れるかを一覧にする。

外した仮定崩れる主張ボックス
$k\ne1$軌跡が円になるex-apo-cx-k1
距離の「比」が一定軌跡が円になるex-apo-cx-sum
変換が $A$、$B$ を動かさない円の族が族のまま移るex-apo-cx-translate

注意(よくある取り違え):$\Gamma_k$ の中心は内分点 $D$ ではなく、$D$ と外分点 $E$ を結ぶ線分 $DE$ の中点である(ex-apo-cx-center)。

反例:比が 1 なら直線

$A(-1,0)$、$B(1,0)$ で $PA=PB$ とすると、$(x+1)^2+y^2=(x-1)^2+y^2$ から $4x=0$、つまり $y$ 軸(線分 $AB$ の垂直二等分線)である。prf-apo-family の段 1 で $1-k^2=0$ となり、$x^2+y^2$ の項が消えて円にならない。外分点 $E$ も存在しない(内分点・外分点の座標)。

反例:距離の和が一定なら楕円

$A(-1,0)$、$B(1,0)$ で $PA+PB=4$ を満たす点を調べる。$(2,0)$ では $3+1=4$、$(0,\sqrt3)$ では $2+2=4$、$(1,\tfrac32)$ では $\tfrac52+\tfrac32=4$ で、どれも条件を満たす。条件は $x\mapsto-x$、$y\mapsto-y$ で変わらないので、この集まりがもし円なら中心は原点である。ところが原点から $(2,0)$ までの距離は $2$、$(0,\sqrt3)$ までの距離は $\sqrt3$ で等しくないので、円ではない(実際は楕円 $\dfrac{x^2}4+\dfrac{y^2}3=1$ である。2次曲線の焦点と準線)。「比」が一定という仮定が本質的である。

反例:中心は内分点ではない

ex-apo-start では、線分 $AB$ を $3:1$ に内分する点は $D\left(\dfrac12,0\right)$ だが、$\Gamma_3$ の中心は $\left(\dfrac54,0\right)$ である。中心は $D$ と外分点 $E(2,0)$ の中点で、$D$ ではない。中心 $D$、半径 $DB=\dfrac12$ の円の上の点 $(0,0)$ では $PA:PB=1:1$ となり、比 $3:1$ にならない。

反例:$A$、$B$ を動かす変換では族が保たれない

平行移動 $S(z)=z+1$($a=1$、$b=1$、$c=0$、$d=1$ の 1 次分数変換)は $\pm1$ を動かす。$\Gamma_3$(中心 $\dfrac54$、半径 $\dfrac34$)は中心 $\dfrac94$、半径 $\dfrac34$ の円に移る。$c^2-\rho^2=\dfrac{81}{16}-\dfrac9{16}=\dfrac92\ne1$ なので、prop-apo-family の 3 の形にならず、$\pm1$ に関する Apollonius の円ではない。実際、移った円の上の点 $\dfrac32$ と $3$ では $\dfrac{|z+1|}{|z-1|}$ が $5$ と $2$ で、一定でない。thm-apo-mobius の仮定 $S(\alpha)=\alpha$、$S(\beta)=\beta$ が外れている。

さらに先へ

  • $k=e^t$ とおくと、prop-apo-family の中心と半径は $c_k=\dfrac{e^{2t}+1}{e^{2t}-1}=\dfrac{\cosh t}{\sinh t}$、$\rho_k=\dfrac{1}{|\sinh t|}$ と 双曲線関数 で書ける。Apollonius の円の族と $A$、$B$ を通る円の族を座標の線とみるのが 双極座標 である。
  • Riemann 球面(Riemann球面)に移すと、$T$ で $\alpha$、$\beta$ を $0$、$\infty$ に送った後の同心円と原点を通る直線は、球面の緯線と経線になる。2 つの円の族は、球面の緯線と経線を 1 次分数変換で平面に写したものである(本記事では証明しない)。高校数学の範囲の 1 次分数変換は w=1/z による図形の変換 と 1次分数変換(高校数学) で扱う。
  • 「3 つの円に接する円を求める」Apollonius の問題 は名前が同じだが別の問題である。
  • 名前は古代ギリシアの数学者、ペルガの Apollonius による。Pappus は Apollonius の著作の 1 つとして『平面軌跡』(2 巻)を挙げている(OR99)。Apollonius の円の定理は Hit18 の Theorem 3.2.14 でも、反転を使った別の証明とともに述べられている。

関連項目

参考文献

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