Steinerの円鎖

同義語:シュタイナーの円鎖SteinerのポリズムSteiner chain

概要

Steinerの円鎖(Steiner chain)とは、一方が他方の内部にあって共有点をもたない 2 つの円の間に、外側の円に内接し内側の円に外接する円を、隣どうしが外接するように順に並べた列である。Steiner のポリズムによれば、ある円から始めた円鎖が $n$ 個で閉じるなら、最初の円をどこにとっても $n$ 個で閉じる。証明では、2 円の中心を結ぶ直線の上のある点を中心とする反転で 2 円を同心円に移し、同心円の間では円鎖の円が回転で移り合うことを使う。半径 $R$、$\rho$($R>\rho$)の同心円の間の円鎖が $n$ 個でちょうど 1 周して閉じる条件は $\sin\dfrac{180^\circ}{n}=\dfrac{R-\rho}{R+\rho}$ である。円鎖の円の中心は、2 円の中心を焦点とする楕円の上にある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 円に関する反転, 2円の位置関係と共通接線, 解と係数の関係

高校での出発点:同心円の間に円を並べる

中心が同じ 2 つの円(同心円)の間に、両方の円に接する円を 1 つ置く。その隣に、2 つの円にも最初の円にも接する円を置き、さらにその隣に…と円を順に並べていく。1 周してきたとき、最後の円は最初の円にぴったり接するだろうか。

半径 3 と 1 の同心円

中心 $O$、半径 $3$ と $1$ の同心円の間に円を並べる。
(1) 間に入る円の大きさ。両方に接する円の半径を $t$、中心を $X$ とする。外側の円に内側から接するので $OX=3-t$、内側の円に外側から接するので $OX=1+t$ である(2円の位置関係と共通接線)。$3-t=1+t$ から $t=1$、$OX=2$ である。どの円も半径 $1$ で、中心は $O$ を中心とする半径 $2$ の円の上にある。
(2) 隣どうしの円。半径 $1$ の 2 つの円が外接するとき、中心の間の距離は $1+1=2$ である。隣り合う 2 つの円の中心を $X$、$Y$ とすると、$OX=OY=XY=2$ で、三角形 $OXY$ は正三角形、$\angle XOY=60^\circ$ である。
(3) 1 周。円を 1 つ並べるごとに、中心は $O$ のまわりを $60^\circ$ ずつ進む。$6\times60^\circ=360^\circ$ なので、6 つ目の円は最初の円にちょうど接し、7 つ目は最初の円と一致する。

半径 2 と 1 の同心円

中心 $O$、半径 $2$ と $1$ の同心円では、ex-stc-start と同じ計算で $2-t=1+t$ から $t=\dfrac12$、$OX=\dfrac32$ である。隣り合う円の中心の距離は $1$ なので、三角形 $OXY$ は $OX=OY=\dfrac32$、$XY=1$ の二等辺三角形である。$O$ から $XY$ に垂線を下ろすと、$\angle XOY$ の半分を $\dfrac\varphi2$ として
$$ \sin\frac\varphi2=\frac{XY/2}{OX}=\frac{1/2}{3/2}=\frac13 $$
で、$\varphi\approx38.94^\circ$ である。$9\varphi\approx350.5^\circ$、$10\varphi\approx389.4^\circ$ なので、9 つ並べると 1 周に少し足りず、10 個目は最初の円に重なってしまう。

半径 3 と 1 の同心円の間には、半径 1 の円がちょうど 6 つ並んで輪が閉じる 半径 3 と 1 の同心円の間には、半径 1 の円がちょうど 6 つ並んで輪が閉じる
半径 2 と 1 の同心円の間に円を並べると、赤で示した 10 個目が最初の円に重なり、輪が閉じない 半径 2 と 1 の同心円の間に円を並べると、赤で示した 10 個目が最初の円に重なり、輪が閉じない

同心円なら、どの円から並べ始めても図を回転しただけなので、閉じるかどうかは最初の円によらない。では、2 つの円が同心でないとき(一方が他方の内部にあるが中心がずれているとき)はどうか。このとき並べる円の大きさはまちまちになる(図 4)。それでも「ある円から始めて $n$ 個で閉じれば、どの円から始めても $n$ 個で閉じる」ことが知られている。これを示すのがこの記事の目標である。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 同心円のとき、何個で閉じるかは何で決まるか。→ prop-stc-concentric
  2. 同心でない 2 つの円を、反転で同心円に移せるか。→ thm-stc-concentric
  3. 同心でない 2 つの円の間でも、閉じるかどうかは最初の円によらないか。→ thm-stc-porism
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    二等辺三角形と正弦閉じる条件 $\sin\dfrac{180^\circ}n=\dfrac{R-\rho}{R+\rho}$回転の群
    反転の式と 2 次方程式2 つの円を同心円に移す反転1 次分数変換(Möbius 変換)による共役
    2 円が接する条件円鎖の円の中心は楕円の上ポリズム(Poncelet の閉形定理)

言葉の準備:円鎖

円鎖

円 $K_2$ が円 $K_1$ の内部にあり、2 つの円は共有点をもたないとする。$K_1$ の内部かつ $K_2$ の外部にあって、$K_1$ に内接し $K_2$ に外接する円を、この 2 円の間の円 という。
2 円の間の円の列 $\omega_1,\omega_2,\omega_3,\dots$ が次を満たすとき、円鎖(Steiner の円鎖)という。
(R1) $\omega_{j+1}$ は $\omega_j$ に外接する($j=1,2,\dots$)。
(R1) $\omega_{j+1}\ne\omega_{j-1}$($j=2,3,\dots$)。つまり、来た方向に戻らない。
$\omega_1$ に外接する 2 円の間の円は 2 つあり(prop-stc-concentric・thm-stc-porism の証明で分かる)、$\omega_2$ はそのどちらかを選ぶ。$\omega_{n+1}=\omega_1$ となるとき、円鎖は $n$ 個で閉じる という。

条件 (ii) により、$\omega_1$ と $\omega_2$ を決めると円鎖は 1 通りに決まる(各 $\omega_j$ に外接する 2 円の間の円は 2 つで、その一方が $\omega_{j-1}$ だから)。

同心円の場合

同心円の間の円鎖

中心 $O$、半径 $R$ と $\rho$($R>\rho>0$)の同心円を $K_1$、$K_2$ とする。

  1. 2 円の間の円は、半径 $\dfrac{R-\rho}2$ で、中心が $O$ を中心とする半径 $\dfrac{R+\rho}2$ の円の上にある円である。逆に、そのような円はすべて 2 円の間の円である。
  2. $\sin\dfrac\varphi2=\dfrac{R-\rho}{R+\rho}$ を満たす角 $\varphi$($0^\circ<\varphi<180^\circ$)をとる。2 円の間の 2 つの円が外接するのは、中心どうしが $O$ から見て角 $\varphi$ だけ離れているときに限る。
  3. 円鎖の円は、$O$ のまわりの角 $\varphi$ の回転で順に移り合う(回転の向きは $\omega_1$ から $\omega_2$ への向き)。したがって、円鎖が $n$ 個で閉じるのは $n\varphi$ が $360^\circ$ の倍数のときで、これは $\omega_1$ のとり方によらない。とくに、$n$ 個でちょうど 1 周して閉じる条件は
    $$ \sin\frac{180^\circ}n=\frac{R-\rho}{R+\rho} $$
    である。
中心の距離と二等辺三角形

要点:2 円の間の円の中心を $X$、半径を $t$ とすると、$OX=R-t=\rho+t$ から 1 が出る。そのような 2 つの円の中心 $X$、$Y$ は $OX=OY=\dfrac{R+\rho}2$ の二等辺三角形をなし、外接する条件 $XY=R-\rho$ は $(R+\rho)\sin\dfrac{\angle XOY}2=R-\rho$ と同じなので 2 が出る。円鎖では「来た方向に戻らない」ので、中心の向きは毎回同じ向きに $\varphi$ ずつ進み、3 が出る。

詳しい証明(段 1〜4)を開く

段 1(1 の証明)。円 $\omega$ の中心を $X$、半径を $t$ とする。$\omega$ が $K_1$ に内接し $K_2$ に外接するのは、$OX=R-t$ かつ $OX=\rho+t$ のときである(2円の位置関係と共通接線)。2 式から $t=\dfrac{R-\rho}2$、$OX=\dfrac{R+\rho}2$ である。逆に、この半径と中心の条件を満たす円は、中心の間の距離が半径の差・和に等しいので、$K_1$ に内接し $K_2$ に外接する。

段 2(2 の証明)。2 円の間の 2 つの円の中心を $X$、$Y$ とし、$\angle XOY=\psi$($0^\circ<\psi\le180^\circ$)とする。2 つの円はどちらも半径 $\dfrac{R-\rho}2$ なので、外接するのは $XY=R-\rho$ のときである。三角形 $OXY$ は $OX=OY=\dfrac{R+\rho}2$ の二等辺三角形なので、$O$ から $XY$ に下ろした垂線は $XY$ を 2 等分し、$\angle XOY$ も 2 等分する。よって$$XY=2\cdot\frac{R+\rho}2\sin\frac\psi2=(R+\rho)\sin\frac\psi2$$である。$XY=R-\rho$ は $\sin\dfrac\psi2=\dfrac{R-\rho}{R+\rho}$ と同じで、$0^\circ<\dfrac\psi2\le90^\circ$ の範囲で正弦は増加するので $\psi=\varphi$ である。$0<\dfrac{R-\rho}{R+\rho}<1$ なので、このような $\varphi$ はただ 1 つあり $\varphi<180^\circ$ である。

段 3(3 の証明)。$\omega_j$ の中心の、$O$ のまわりの向き($x$ 軸の正の向きから測った角)を $\theta_j$ とする。段 2 から、$\omega_j$ に外接する 2 円の間の円は、中心の向きが $\theta_j+\varphi$ と $\theta_j-\varphi$ の 2 つである。$\theta_2=\theta_1+\varphi$ となるように向きを決める(逆向きなら図を折り返して考える)。$\theta_{j}=\theta_{j-1}+\varphi$ が成り立つとき、$\omega_{j+1}$ の向きは $\theta_j+\varphi$ か $\theta_j-\varphi=\theta_{j-1}$ で、後者は $\omega_{j-1}$ なので条件 (ii) から除かれる。よって帰納法により $\theta_{j}=\theta_1+(j-1)\varphi$ で、$\omega_{j+1}$ は $\omega_j$ を $O$ のまわりに $\varphi$ だけ回転した円である。

段 4(閉じる条件)。$\omega_{n+1}=\omega_1$ は、向き $\theta_1+n\varphi$ と $\theta_1$ が同じ、つまり $n\varphi$ が $360^\circ$ の倍数であることと同じである。これは $\theta_1$ によらない。ちょうど 1 周($n\varphi=360^\circ$)なら $\dfrac\varphi2=\dfrac{180^\circ}n$ で、段 2 の式から閉じる条件の式を得る。$\square$

何個で閉じるかと半径の比

1 周で閉じる条件 $\sin\dfrac{180^\circ}n=\dfrac{R-\rho}{R+\rho}$ を $\dfrac\rho R$ について解くと、$\dfrac\rho R=\dfrac{1-\sin(180^\circ/n)}{1+\sin(180^\circ/n)}$ である。
(1) $n=6$:$\sin30^\circ=\dfrac12$ で、$\dfrac\rho R=\dfrac{1/2}{3/2}=\dfrac13$。ex-stc-start の半径 $3$ と $1$ である。

$n=4$ と $n=3$ の値を開く

(2) $n=4$:$\sin45^\circ=\dfrac{\sqrt2}2$ で、$\dfrac\rho R=\dfrac{2-\sqrt2}{2+\sqrt2}=\dfrac{(2-\sqrt2)^2}{(2+\sqrt2)(2-\sqrt2)}=\dfrac{6-4\sqrt2}{2}=3-2\sqrt2\approx0.172$。

(3) $n=3$:$\sin60^\circ=\dfrac{\sqrt3}2$ で、$\dfrac\rho R=\dfrac{2-\sqrt3}{2+\sqrt3}=(2-\sqrt3)^2=7-4\sqrt3\approx0.072$。


$n$ が大きいほど $\sin\dfrac{180^\circ}n$ は小さく、$\dfrac\rho R$ は大きくなる(内側の円が外側の円に近い大きさになる)。ex-stc-start2 の $\dfrac\rho R=\dfrac12$ は、$n=9$ の値 $\dfrac{1-\sin20^\circ}{1+\sin20^\circ}\approx0.490$ と $n=10$ の値 $\dfrac{1-\sin18^\circ}{1+\sin18^\circ}\approx0.528$ の間にあり、どの $n$ の値とも等しくない。だから 1 周では閉じず、9 個では少し足りず 10 個では重なった。

反転で 2 つの円を同心円に移す

同心でない 2 つの円を、反転で同心円に移す。反転の定義と基本的な性質は 円に関する反転 で扱った。中心 $P$、半径 $r$ の円に関する反転は、$P$ を原点とする座標で、点 $(x,y)\ne P$ を
$$ \left(\frac{r^2x}{x^2+y^2},\ \frac{r^2y}{x^2+y^2}\right) $$
に移し、2 回続けるともとに戻る。以下、この反転を $\iota$ と書く。まず、円がどんな円に移るかを、中心と半径まで具体的に求める。

反転した円の中心と半径

$P$ を原点とし、中心 $(a,b)$、半径 $s$ の円 $\omega$ は $P$ を通らないとする。$N=a^2+b^2-s^2$ とおく($N\ne0$。$N$ は $P$ の $\omega$ に関する方べきで、$P$ が $\omega$ の外部にあれば正、内部にあれば負。根軸と根心)。

  1. $\iota$ は $\omega$ を、中心 $\left(\dfrac{r^2a}N,\ \dfrac{r^2b}N\right)$、半径 $\dfrac{r^2s}{\lvert N\rvert}$ の円 $\omega'$ に移す。
  2. $N>0$ なら、$\omega$ の内部の点は $\omega'$ の内部に、外部の点($P$ 以外)は $\omega'$ の外部に移る。$N<0$ なら、$\omega$ の内部の点($P$ 以外)は $\omega'$ の外部に、外部の点は $\omega'$ の内部に移る。
  3. $P$ が $\omega'$ の内部にあるのは、$P$ が $\omega$ の内部にあるときに限る。
座標を代入する

要点:点 $(x,y)\ne P$ の像を $(X,Y)$、主張の中心を $(a',b')$、半径を $s'$ とすると、恒等式
$$ (x-a)^2+(y-b)^2-s^2=\frac{N}{X^2+Y^2}\Bigl((X-a')^2+(Y-b')^2-s'^2\Bigr) $$
が成り立つ。左辺は $(x,y)$ が $\omega$ の上・内部・外部で $0$・負・正、右辺の大きな括弧は $(X,Y)$ が $\omega'$ の上・内部・外部で $0$・負・正なので、両辺の符号を比べると 1・2 が出る。

詳しい証明を開く

段 1(恒等式)。反転は 2 回でもとに戻るので $(x,y)=\left(\dfrac{r^2X}{X^2+Y^2},\dfrac{r^2Y}{X^2+Y^2}\right)$ で、$x^2+y^2=\dfrac{r^4}{X^2+Y^2}$ である。よって$$(x-a)^2+(y-b)^2-s^2=x^2+y^2-2(ax+by)+N=\frac{r^4-2r^2(aX+bY)+N(X^2+Y^2)}{X^2+Y^2}$$である。分子を $N$ でくくって平方完成すると、$a'=\dfrac{r^2a}N$、$b'=\dfrac{r^2b}N$ として$$N\Bigl((X-a')^2+(Y-b')^2-a'^2-b'^2+\frac{r^4}N\Bigr)$$となり、$a'^2+b'^2-\dfrac{r^4}N=\dfrac{r^4(a^2+b^2)-r^4N}{N^2}=\dfrac{r^4s^2}{N^2}=s'^2$ なので、分子は $N\bigl((X-a')^2+(Y-b')^2-s'^2\bigr)$ である。

段 2(1 と 2)。$X^2+Y^2>0$ なので、右辺の符号は $N$ と大きな括弧の符号の積である。左辺が $0$ になるのは大きな括弧が $0$ になるときに限るので、$\omega$ の点は $\omega'$ の点に移る。逆に $\omega'$ の点は $P$ ではなく($P=(0,0)$ で括弧の値は $a'^2+b'^2-s'^2=\dfrac{r^4}N\ne0$)、その像は $\omega$ の点で、2 回の反転でもとに戻るので、$\omega'$ 全体が $\omega$ の像である。$N>0$ なら左辺と括弧は同じ符号、$N<0$ なら逆の符号なので 2 が成り立つ。

段 3(3)。$P$ が $\omega'$ の内部にあるのは、括弧の $P$ での値 $\dfrac{r^4}N$ が負、つまり $N<0$ のときで、これは $P$ が $\omega$ の内部にあることと同じである。$\square$

2 つの円を同心円に移す反転

円 $K_1$ は中心 $(0,0)$、半径 $R_1$、円 $K_2$ は中心 $(d,0)$、半径 $R_2$ で、$d\ne0$、$\lvert d\rvert+R_2< R_1$ とする($K_2$ は $K_1$ の内部にあり、共有点がない)。$p$ の 2 次方程式
$$ d\,p^2-\left(R_1^2+d^2-R_2^2\right)p+dR_1^2=0 $$
は異なる 2 つの実数解をもち、そのうちちょうど 1 つが $\lvert p-d\rvert< R_2$ を満たす。この解 $p$ について、点 $P=(p,0)$ を中心とする反転(半径 $r$ は何でもよい)は、$K_1$、$K_2$ を同心円 $K_1'$、$K_2'$ に移す。$P$ は $K_1'$、$K_2'$ の内部にあり、$K_1'$ が内側、$K_2'$ が外側の円である。

同心になる条件を 2 次方程式にする

要点:$P=(p,0)$ を原点とする座標で lem-stc-image の 1 を使うと、2 つの像の中心は $\left(\dfrac{-r^2p}{p^2-R_1^2},0\right)$ と $\left(\dfrac{r^2(d-p)}{(d-p)^2-R_2^2},0\right)$ で、これが一致する条件を分母を払って整理すると、主張の 2 次方程式になる。判別式は $\bigl((R_1-d)^2-R_2^2\bigr)\bigl((R_1+d)^2-R_2^2\bigr)>0$、解と係数の関係から 2 つの解 $p$、$q$ は $(p-d)(q-d)=R_2^2$ を満たすので、ちょうど一方が $K_2$ の内部にある。内側と外側は lem-stc-image の 2・3 から決まる。

詳しい証明(段 1〜5)を開く

段 1(像の中心)。$P=(p,0)$ を原点とする座標では、$K_1$ の中心は $(-p,0)$、$K_2$ の中心は $(d-p,0)$ である。$N_1=p^2-R_1^2$、$N_2=(d-p)^2-R_2^2$ とおく。$N_1\ne0$、$N_2\ne0$ なら、lem-stc-image の 1 により、像の中心は $\left(\dfrac{-r^2p}{N_1},0\right)$ と $\left(\dfrac{r^2(d-p)}{N_2},0\right)$ である。2 つが一致する(同心円になる)のは$$-pN_2=(d-p)N_1$$のときである。

段 2(展開)。左辺は $-p\left(d^2-2dp+p^2-R_2^2\right)=-d^2p+2dp^2-p^3+R_2^2p$、右辺は $(d-p)\left(p^2-R_1^2\right)=dp^2-dR_1^2-p^3+R_1^2p$ である。左辺から右辺を引くと$$dp^2-\left(R_1^2+d^2-R_2^2\right)p+dR_1^2$$となる。よって、$N_1,N_2\ne0$ のもとで、同心円になることは $p$ が主張の 2 次方程式の解であることと同じである。

段 3(解は 2 つ)。判別式は$$\left(R_1^2+d^2-R_2^2\right)^2-4d^2R_1^2=\left(R_1^2+d^2-R_2^2-2dR_1\right)\left(R_1^2+d^2-R_2^2+2dR_1\right)=\bigl((R_1-d)^2-R_2^2\bigr)\bigl((R_1+d)^2-R_2^2\bigr)$$である。$\lvert d\rvert+R_2< R_1$ から $R_1-d>R_2>0$、$R_1+d>R_2>0$ なので、2 つの因数はどちらも正である。よって異なる 2 つの実数解 $p$、$q$ がある。解と係数の関係(解と係数の関係)から $p+q=\dfrac{R_1^2+d^2-R_2^2}{d}$、$pq=R_1^2$ である。

段 4($K_2$ の内部の解)。$$(p-d)(q-d)=pq-d(p+q)+d^2=R_1^2-\left(R_1^2+d^2-R_2^2\right)+d^2=R_2^2$$である。$\lvert p-d\rvert$ と $\lvert q-d\rvert$ の積は $R_2^2$ で、$p\ne q$ だから 2 つは等しくない(等しければ $p-d=q-d$)。両方が $R_2$ 未満なら積は $R_2^2$ 未満、両方が $R_2$ 以上なら積は $R_2^2$ より大きい(等号は両方 $R_2$ のときだけ)ので、ちょうど一方だけが $R_2$ 未満である。それを改めて $p$ とする。$P=(p,0)$ と $K_2$ の中心の距離は $\lvert p-d\rvert< R_2$ なので、$P$ は $K_2$ の内部にあり、$K_2$ は $K_1$ の内部にあるので $P$ は $K_1$ の内部にもある。よって $N_1<0$、$N_2<0$ で、段 1・段 2 から $K_1'$、$K_2'$ は同心円である。

段 5(内側と外側)。lem-stc-image の 3 により、$P$ は $K_1'$、$K_2'$ の内部にある。同じ補題の 2 により($N_1<0$、$N_2<0$)、$K_1$ の内部で $K_2$ の外部にある点は、$K_1'$ の外部で $K_2'$ の内部にある点に移る。そのような点があるので、同心円 $K_1'$ は $K_2'$ より小さい。$\square$

2 次方程式の 2 つの解 $p$、$q$ は $pq=R_1^2$、$(p-d)(q-d)=R_2^2$ を満たす(証明の要点のとおり、解と係数の関係から出る)。これは、2 点 $(p,0)$、$(q,0)$ が $K_1$ に関しても $K_2$ に関しても互いに反転した位置にある(両方の円に関して対称な 2 点である)ことを表す。共有点をもたない 2 つの円にこのような 2 点があることは Hit18 の Theorem 3.2.16 にもあり、反転が対称な 2 点を対称な 2 点に移すこと(同 Theorem 3.2.12)を使うと、その一方を中心とする反転で 2 円が同心円に移ることも示せる。この記事では座標の計算で示した。

半径 30 と 9 の円

$K_1$:中心 $(0,0)$、半径 $30$、$K_2$:中心 $(-9,0)$、半径 $9$ とする($\lvert d\rvert+R_2=18<30$)。2 次方程式は $-9p^2-(900+81-81)p-9\cdot900=0$、両辺を $-9$ で割って $p^2+100p+900=0$、$(p+10)(p+90)=0$ である。解は $-10$ と $-90$ で、$\lvert-10-(-9)\rvert=1<9$ なので $P=(-10,0)$ をとる($pq=900=R_1^2$、$(p-d)(q-d)=(-1)(-81)=81=R_2^2$ も確かめられる)。
半径の 2 乗 $r^2=80$ の反転を使う。$P$ を原点とする座標では $K_1$ の中心は $(10,0)$、$N_1=100-900=-800$ で、像の中心は $\left(\dfrac{80\cdot10}{-800},0\right)=(-1,0)$、半径は $\dfrac{80\cdot30}{800}=3$ である。$K_2$ の中心は $(1,0)$、$N_2=1-81=-80$ で、像の中心は $\left(\dfrac{80\cdot1}{-80},0\right)=(-1,0)$、半径は $\dfrac{80\cdot9}{80}=9$ である。もとの座標に戻すと、どちらも中心 $(-11,0)$ で、半径 $3$($K_1'$、内側)と $9$($K_2'$、外側)の同心円になる。半径の比 $\dfrac93=3$ は ex-stc-start と同じなので、prop-stc-concentric から、この同心円の間の円鎖は 6 個で閉じる。

主定理:Steiner のポリズム

Steiner のポリズム

円 $K_2$ が円 $K_1$ の内部にあり、2 つの円は共有点をもたないとする。$K_1$ と $K_2$ の間のある円鎖が $n$ 個で閉じるならば、$K_1$ と $K_2$ の間のどの円鎖も(最初の円 $\omega_1$ と、$\omega_2$ を置く向きをどうとっても)$n$ 個で閉じる。

同心円に移して回転で見る

方針:thm-stc-concentric の反転 $\iota$ で $K_1$、$K_2$ を同心円に移し、円鎖が円鎖に移ることを確かめて、prop-stc-concentric に帰着する。
段 1(同心円に移す)。$K_1$ と $K_2$ が同心なら、prop-stc-concentric の 3 から結論が出る。同心でないときは、$K_1$ の中心を原点、$K_2$ の中心を $x$ 軸の上の点 $(d,0)$($d\ne0$)にとり、thm-stc-concentric の点 $P$ を中心とする反転 $\iota$ を考える。$K_1$、$K_2$ は同心円 $K_1'$(内側)、$K_2'$(外側)に移り、$P$ は $K_1$、$K_2$、$K_1'$、$K_2'$ のすべての内部にある。
段 2(2 円の間の円は 2 円の間の円に移る)。$\omega$ を $K_1$ と $K_2$ の間の円とする。$\omega$ は $K_2$ の外部にあり、$P$ は $K_2$ の内部にあるので、$P$ は $\omega$ の外部にある。よって lem-stc-image の 1 により、$\omega$ は円 $\omega'$ に移る。$\omega$ と $K_1$ の共有点はちょうど 1 つである。$\iota$ は $P$ 以外の点を 1 対 1 に移し、$\omega$、$K_1$ はどちらも $P$ を通らないので、$\omega'$ と $K_1'$ の共有点もちょうど 1 つで、2 つの円は接する(共有点が 1 つだけの 2 つの円は接する。2円の位置関係と共通接線)。$K_2'$ についても同じである。さらに、$\omega$ の内部の点は $K_1$ の内部かつ $K_2$ の外部にあるので、lem-stc-image の 2 により、$\omega'$ の内部の点で、$K_1'$ の外部かつ $K_2'$ の内部にある。よって $\omega'$ は $K_1'$ と $K_2'$ の間にあって両方に接する、つまり $K_1'$ と $K_2'$ の間の円である。$\iota$ を 2 回続けるともとに戻り、$P$ は $K_1'$、$K_2'$ の内部にあるので、同じ議論を $K_1'$、$K_2'$ に使うと、逆に $K_1'$ と $K_2'$ の間の円は $K_1$ と $K_2$ の間の円に移る。
段 3(円鎖は円鎖に移る)。$\omega_j$ と $\omega_{j+1}$ が外接するとき、段 2 と同じく $\omega_j'$ と $\omega_{j+1}'$ の共有点はちょうど 1 つで、2 つは接する。$P$ はどちらの円の外部にもあるので、lem-stc-image の 2 により内部は内部に移る。$\omega_j$ と $\omega_{j+1}$ の内部は重ならないので $\omega_j'$ と $\omega_{j+1}'$ の内部も重ならず、2 つは外接する。$\iota$ は 1 対 1 なので $\omega_{j+1}\ne\omega_{j-1}$ なら $\omega_{j+1}'\ne\omega_{j-1}'$ である。よって $\omega_1,\omega_2,\dots$ が円鎖なら $\omega_1',\omega_2',\dots$ も円鎖で、逆も同じである。
段 4(閉じる条件を比べる)。$\iota$ は 1 対 1 なので、$\omega_{n+1}=\omega_1$ と $\omega_{n+1}'=\omega_1'$ は同じことである。仮定から、ある円鎖が $n$ 個で閉じるので、その像の円鎖も $n$ 個で閉じる。prop-stc-concentric の 3 により、$n\varphi$ は $360^\circ$ の倍数で、$K_1'$ と $K_2'$ の間のどの円鎖も $n$ 個で閉じる。$K_1$ と $K_2$ の間の任意の円鎖は、段 3 によりその像が $K_1'$ と $K_2'$ の間の円鎖なので、像が $n$ 個で閉じ、したがってもとの円鎖も $n$ 個で閉じる。$\square$

証明の要点を図式で書いておく。同心円の中心のまわりの角 $\varphi$ の回転を $\sigma$ とし、もとの図で円鎖の 1 つの円から次の円へ進む操作を $T$ とする。
$$ \xymatrix{ \omega_j \ar[r]^{\iota} \ar[d]_{T} & \omega_j' \ar[d]^{\sigma} \\ \omega_{j+1} \ar[r]_{\iota} & \omega_{j+1}' } $$
図式が可換とは $\iota\circ T=\sigma\circ\iota$ ということで、$\iota$ を 2 回続けるともとに戻るので $T=\iota\circ\sigma\circ\iota$ と書ける。$n$ 回続けると $T^n=\iota\circ\sigma^n\circ\iota$ で、$\sigma^n$ は角 $n\varphi$ の回転である。$n\varphi$ が $360^\circ$ の倍数なら $\sigma^n$ は何も動かさず、$T^n$ もどの円も動かさない。「どこから始めても閉じる」は、この式の言い換えである。

半径 3 と 9 の同心円の間の円鎖は 6 個で閉じる。赤い点 P が反転の中心 半径 3 と 9 の同心円の間の円鎖は 6 個で閉じる。赤い点 P が反転の中心
P を中心とする反転で左の図を移すと、半径 30 と 9 の同心でない 2 円の間の円鎖になる。番号は左の図の円と対応し、6 個で閉じる P を中心とする反転で左の図を移すと、半径 30 と 9 の同心でない 2 円の間の円鎖になる。番号は左の図の円と対応し、6 個で閉じる

半径 30 と 9 の円の間の円鎖

ex-stc-concentric の反転(中心 $P=(-10,0)$、$r^2=80$)で、同心円の間の円鎖を移す。同心円(中心 $(-11,0)$、半径 $3$ と $9$)の間の円は半径 $3$ で、中心は $(-11,0)$ から距離 $6$ の円の上にある。中心 $(-5,0)$ の円から始め、$60^\circ$ ずつ回した 6 つの円を考える(図 3)。
(1) 1 つ目。中心 $(-5,0)$、半径 $3$ の円は、$P$ を原点とする座標で中心 $(5,0)$、$N=25-9=16$ なので、lem-stc-image から、像は中心 $\left(\dfrac{80\cdot5}{16},0\right)=(25,0)$、半径 $\dfrac{80\cdot3}{16}=15$ の円である。もとの座標では中心 $(15,0)$、半径 $15$ で、$K_1$ の中心 $(0,0)$ まで $15=30-15$、$K_2$ の中心 $(-9,0)$ まで $24=9+15$ なので、$K_1$ に内接し $K_2$ に外接している。
(2) 6 つの円。同じ計算で、6 つの円(図 4 の番号順)は次のとおりである。

番号中心半径
1$(15,0)$$15$
2$\left(-\dfrac{30}{11},\ \dfrac{120\sqrt3}{11}\right)$$\dfrac{120}{11}$
3$\left(-\dfrac{330}{17},\ \dfrac{120\sqrt3}{17}\right)$$\dfrac{120}{17}$
4$(-24,0)$$6$
5$\left(-\dfrac{330}{17},\ -\dfrac{120\sqrt3}{17}\right)$$\dfrac{120}{17}$
6$\left(-\dfrac{30}{11},\ -\dfrac{120\sqrt3}{11}\right)$$\dfrac{120}{11}$
  1. 隣どうしが外接し、6 と 1 も外接するので、この円鎖は 6 個で閉じる。
    1 と 2 が外接することの確認を開く

    1 と 2 の中心の距離の 2 乗は $\left(15+\dfrac{30}{11}\right)^2+\left(\dfrac{120\sqrt3}{11}\right)^2=\dfrac{38025+43200}{121}=\dfrac{81225}{121}$ で、距離 $\dfrac{285}{11}=15+\dfrac{120}{11}$ は半径の和である。ほかの組も同じく確かめられる(2 と 3 は距離 $\dfrac{3360}{187}$、3 と 4 は $\dfrac{222}{17}$)。

thm-stc-porism により、最初の円を 1 からずらしても、やはり 6 個で閉じる(図 5 の橙の円鎖)。

円鎖の円の中心は楕円の上にある

同心円の場合、円鎖の円の中心は 1 つの円の上にあった(prop-stc-concentric の 1)。一般の場合には、円の代わりに楕円が現れる。

中心の軌跡

$K_1$(中心 $O_1$、半径 $R_1$)と $K_2$(中心 $O_2$、半径 $R_2$)の間の円の中心は、$O_1$、$O_2$ を焦点とし、焦点からの距離の和が $R_1+R_2$ の楕円の上にある。

距離の和が一定

$K_1$ と $K_2$ の間の円の中心を $X$、半径を $t$ とする。$K_1$ に内接するので $O_1X=R_1-t$、$K_2$ に外接するので $O_2X=R_2+t$ である(2円の位置関係と共通接線)。足すと $O_1X+O_2X=R_1+R_2$ で、$t$ によらない。2 点からの距離の和が一定の点は、その 2 点を焦点とする楕円の上にある(2次曲線の焦点と準線)。$\square$

半径 30 と 9 の場合の楕円

ex-stc-porism では $O_1=(0,0)$、$O_2=(-9,0)$、$R_1+R_2=39$ である。1 つ目の円の中心 $(15,0)$ では $O_1X+O_2X=15+24=39$、2 つ目の円の中心では $O_1X=30-\dfrac{120}{11}=\dfrac{210}{11}$、$O_2X=9+\dfrac{120}{11}=\dfrac{219}{11}$ で、和は $\dfrac{429}{11}=39$ である。楕円の中心は焦点の中点 $\left(-\dfrac92,0\right)$、長軸の半分は $\dfrac{39}2$、焦点までの距離は $\dfrac92$ なので、短軸の半分 $b$ は $b^2=\left(\dfrac{39}2\right)^2-\left(\dfrac92\right)^2=\dfrac{1521-81}{4}=360$、$b=6\sqrt{10}$ である。

半径 30 と 9 の 2 円の間の、最初の円が異なる 2 つの円鎖(青と橙)。どちらも 6 個で閉じ、円の中心(点)はすべて緑の破線の楕円の上にある 半径 30 と 9 の 2 円の間の、最初の円が異なる 2 つの円鎖(青と橙)。どちらも 6 個で閉じ、円の中心(点)はすべて緑の破線の楕円の上にある
同心円の場合と一般の場合をまとめる。

同心円の場合一般の場合($K_2$ が $K_1$ の内部)
円鎖の円の半径すべて $\dfrac{R-\rho}2$円ごとに違う
円鎖の円の中心半径 $\dfrac{R+\rho}2$ の円の上$O_1$、$O_2$ を焦点とする楕円の上(prop-stc-ellipse)
次の円への進み方角 $\varphi$ の回転 $\sigma$$T=\iota\circ\sigma\circ\iota$
$n$ 個で 1 周して閉じる条件$\sin\dfrac{180^\circ}n=\dfrac{R-\rho}{R+\rho}$$(R_1-R_2)^2-d^2=4R_1R_2\tan^2\dfrac{180^\circ}n$(下の rem-stc-formula)
閉じるかどうか最初の円によらない最初の円によらない(thm-stc-porism)
閉じる条件を 2 円の半径と中心の距離で書く

$K_1$、$K_2$ の半径を $R_1$、$R_2$、中心の距離を $d$ とすると、円鎖が $n$ 個で 1 周して閉じる条件は
$$ (R_1-R_2)^2-d^2=4R_1R_2\tan^2\frac{180^\circ}n $$
で表せることが知られている(Steiner の公式)。この記事では証明しない。$d=0$ のときは prop-stc-concentric の条件と一致する。ex-stc-porism では $(30-9)^2-9^2=441-81=360$、$4\cdot30\cdot9\cdot\tan^230^\circ=1080\cdot\dfrac13=360$ で、$n=6$ の式が成り立っている。

$d=0$ のときの確認を開く

$d=0$、$R_1=R$、$R_2=\rho$ とすると $\dfrac{(R-\rho)^2}{4R\rho}=\tan^2\dfrac{180^\circ}n$ である。両辺に $1$ を足すと $\dfrac{(R+\rho)^2}{4R\rho}=\dfrac1{\cos^2(180^\circ/n)}$ で、2 式の比をとると $\left(\dfrac{R-\rho}{R+\rho}\right)^2=\sin^2\dfrac{180^\circ}n$ となる。

例と反例

外す条件反例成り立たなくなること
2 つの円が共有点をもたない中心 $(0,0)$ 半径 $5$ と、中心 $(4,0)$ 半径 $3$ の 2 円(2 点で交わる)反転で同心円に移せる(thm-stc-concentric)
閉じる条件の式を満たす半径の比半径 $2$ と $1$ の同心円円鎖が閉じる(何周しても閉じない)
2 つの円が接しない半径 $3$ の円に、半径 $2$ の円が 1 点で内接する反転で同心円に移せる(平行な 2 直線に移る)
反例:交わる 2 つの円

$K_1$:中心 $(0,0)$、半径 $5$、$K_2$:中心 $(4,0)$、半径 $3$ とする。$x^2+y^2=25$ と $(x-4)^2+y^2=9$ を引くと $8x-16=16$、$x=4$ で、$y=\pm3$ なので、2 円は $(4,3)$、$(4,-3)$ で交わる。thm-stc-concentric の 2 次方程式の判別式は $\bigl((5-4)^2-9\bigr)\bigl((5+4)^2-9\bigr)=(-8)\cdot72=-576<0$ で、実数の解がない。
実は、どの点を中心に反転しても同心円には移せない。反転の中心が交点でなければ、2 つの交点の像は 2 つの像(円か直線)の共有点になる。直線は円ではなく、異なる同心円は共有点をもたないので、2 つの像は同心円にならない。反転の中心が交点の一方なら、2 つの円はその点を通るので、どちらも直線に移る(円に関する反転 の定理「直線と円の移り方」の 3)。

反例:何周しても閉じない比

ex-stc-start2 の半径 $2$ と $1$ の同心円では、$\sin\dfrac\varphi2=\dfrac13$ から $\cos\varphi=1-2\sin^2\dfrac\varphi2=\dfrac79$ である。円鎖が $n$ 個で閉じるのは $n\varphi$ が $360^\circ$ の倍数、つまり $\cos n\varphi=1$ のときである(prop-stc-concentric の 3)。ところが $\cos n\varphi=1$ となる $n\ge1$ はない。したがって、この同心円の間の円鎖は何周しても閉じず、thm-stc-porism によれば、反転でこれに移る同心でない 2 円の間の円鎖も、どこから始めても閉じない。

$\cos n\varphi\ne1$ の証明を開く

$\cos n\varphi$ は $\cos\varphi$ の多項式 $T_n(\cos\varphi)$ で表せ、$T_n$ は整数係数で最高次の係数が $2^{n-1}$ の $n$ 次多項式である(n倍角の公式)。$T_n(x)=2^{n-1}x^n+c_{n-1}x^{n-1}+\dots+c_0$ に $x=\dfrac79$ を代入して $9^n$ 倍すると $9^nT_n\left(\dfrac79\right)=2^{n-1}7^n+9\bigl(c_{n-1}7^{n-1}+9c_{n-2}7^{n-2}+\dots+9^{n-1}c_0\bigr)$ である。右辺の第 1 項 $2^{n-1}7^n$ は $3$ で割り切れず、第 2 項は $3$ で割り切れるので、右辺は $3$ で割り切れない。一方 $\cos n\varphi=1$ なら左辺は $9^n$ で、$3$ で割り切れる。よって $\cos n\varphi\ne1$ である。

注意:2 周して閉じる円鎖

閉じる条件は「$n\varphi$ が $360^\circ$ の倍数」で、1 周とは限らない。$n\varphi=360^\circ\times k$ のとき、$\dfrac\varphi2=\dfrac{180^\circ k}n$ なので、条件は
$$ \sin\frac{180^\circ k}{n}=\frac{R-\rho}{R+\rho} $$
である。たとえば $n=7$、$k=2$ として、$\dfrac\rho R=\dfrac{1-\sin(360^\circ/7)}{1+\sin(360^\circ/7)}\approx0.122$ の同心円をとると、$\varphi=\dfrac{720^\circ}7\approx102.86^\circ$ で、円鎖は 2 周して 7 個で閉じる(図 6)。隣どうしでない円は重なり合うが、def-stc-chain の条件は満たしている。

内側の円と外側の円の半径の比を約 0.122 にとると、隣どうしが接する 7 つの円が 2 周して閉じる。番号は並べた順 内側の円と外側の円の半径の比を約 0.122 にとると、隣どうしが接する 7 つの円が 2 周して閉じる。番号は並べた順

反例:接する 2 つの円

$K_1$:中心 $(0,0)$、半径 $3$、$K_2$:中心 $(-1,0)$、半径 $2$ とする。中心の距離 $1=3-2$ なので、$K_2$ は $K_1$ に点 $(-3,0)$ で内接する(アルベロス の 2 つの半円 $\Gamma$、$\gamma_1$ と同じ形)。thm-stc-concentric の 2 次方程式は $d=-1$ で $-p^2-6p-9=0$、つまり $(p+3)^2=0$ で、解は接点 $p=-3$ だけである。接点を中心に反転すると、2 つの円はどちらも中心を通るので直線に移り、共有点が接点だけなので、2 直線は共有点をもたず平行になる。同心円には移らない。平行な 2 直線の間に同じ大きさの円を並べた列は閉じないので、この 2 円の間の円の列(Pappus の円鎖)も閉じない(円に関する反転 の Pappus の円鎖の節)。

大学数学で見る

1 次分数変換で見る

複素数平面で、原点を中心とする半径 $r$ の円に関する反転は $z\mapsto\dfrac{r^2}{\bar z}$ で、共役 $\bar z$ をとる操作と合わせると 1 次分数変換 $z\mapsto\dfrac{az+b}{cz+d}$ の形になる(1次分数変換(高校数学))。円鎖を 1 つ進める操作 $T=\iota\circ\sigma\circ\iota$ は、反転を 2 回含むので共役が打ち消し合い、1 次分数変換(Möbius 変換)になる。

回転との共役の話を開く

thm-stc-porism の証明は、「$T$ は回転 $\sigma$ と共役である」という事実を使っている。回転と共役な Möbius 変換は楕円型と呼ばれ、$T^n$ が恒等変換になるのは $\sigma^n$ が恒等変換になるときに限る。

ポリズムという型

「ある 1 か所から始めて閉じれば、どこから始めても閉じる」という型の定理を ポリズム という。

Poncelet の閉形定理の話を開く

代表例は Poncelet の閉形定理である:2 つの 2 次曲線の一方に内接し他方に外接する多角形を、1 つの頂点から順にたどって $n$ 角形で閉じれば、どの頂点から始めても $n$ 角形で閉じる。三角形の外接円と内接円の場合は、中心の距離 $d$ と半径 $R$、$r$ の関係 $d^2=R(R-2r)$ が閉じる条件で、これは Eulerの三角形の定理 で扱う。一般の Poncelet の閉形定理には、楕円曲線を使う見通しのよい証明が知られている(この記事では扱わない)。

さらに先へ

  • thm-stc-concentric の 2 点 $(p,0)$、$(q,0)$ は $K_1$ に関しても $K_2$ に関しても互いに反転した位置にあった。このような 2 点をもつ円は、その 2 点に関する Apolloniusの円 になることが知られている(この記事では証明しない)。
  • Descartesの円定理 は互いに接する 4 つの円の関係だったが、円鎖では $K_1$ と $K_2$ が接しないので、そのままは使えない。円鎖の円の大きさの変化は、反転と lem-stc-image の半径の式で調べられる。
  • 三角形の九点円が内接円・傍接円に接するという定理(Feuerbachの定理)も、反転で円を直線に移して証明できる。
  • 反転と 1 次分数変換の一般論は Möbius変換 で扱う。

関連項目

参考文献

[1]
Michael P. Hitchman, Geometry with an Introduction to Cosmic Topology (2018 Edition), Michael P. Hitchman (CC BY-SA 4.0, https://mphitchman.com), 2018, Theorem 3.2.16(交わらない 2 つの円には両方に関して対称な 2 点がある、PDF p.56)、Theorem 3.2.12(反転は対称な 2 点を対称な 2 点に移す、PDF p.54)

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