三項間漸化式の特性方程式

概要

三項間漸化式の特性方程式(characteristic equation of a linear recurrence)とは、定数係数の漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$($q\ne0$)に対する 2 次方程式 $t^2=pt+q$ である。等比数列 $\lambda^n$ が漸化式を満たすのは、$\lambda$ が特性方程式の解のときに限る。特性方程式が異なる 2 解 $\alpha,\beta$ をもてば一般項は $A\alpha^n+B\beta^n$、重解 $\alpha$ をもてば $(A+Bn)\alpha^n$ と書け、定数 $A,B$ は初期値 $a_0,a_1$ で決まる。解が虚数でも同じ式が使え、周期的な数列が現れることがある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 数列, 等比数列, 等差数列, 2次方程式, 解と係数の関係, 複素数

この記事で考えること

$a_{n+1}=3a_n$ のように、1 つ前の項の定数倍で次の項が決まる数列は等比数列であり、一般項は $a_n=3^na_0$ と書ける。では、2 つ前までの項から次の項が決まる数列はどうだろうか。
1 つ前の項だけで決まる漸化式 $x_{n+1}=cx_n+d$ が確率の問題に現れる例は 確率漸化式と定常分布 で扱う。

項を順に計算してみる

$a_0=0$、$a_1=4$、$a_{n+2}=2a_{n+1}+3a_n$ で決まる数列の項を、順に計算する。
$$ \begin{aligned} a_2&=2a_1+3a_0=2\cdot4+3\cdot0=8,\\ a_3&=2a_2+3a_1=2\cdot8+3\cdot4=28,\\ a_4&=2a_3+3a_2=2\cdot28+3\cdot8=80,\\ a_5&=2a_4+3a_3=2\cdot80+3\cdot28=244. \end{aligned} $$
$3$ の冪 $1,3,9,27,81,243$ と見比べると、$a_n$ は $3^n$ より $1$ 小さいか $1$ 大きく、$a_n=3^n-(-1)^n$ ではないかと推測できる。

この記事では、この推測を証明する方法を、高校で習う道具(等比数列・等差数列・解と係数の関係)だけで組み立てる。鍵になるのが特性方程式である。次の問いに順に答える。

問い答えるボックス
等比数列 $\lambda^n$ が漸化式を満たすのはいつかprop-cer-geometric
特性方程式が異なる 2 解をもつとき、一般項はどう書けるかthm-cer-distinct
特性方程式の解が虚数のときはどうなるかex-cer-period-six
特性方程式が重解をもつとき、何が変わるかthm-cer-double
係数が $n$ によって変わるときはどうかex-cer-nonconstant

漸化式と特性方程式

以下、数と言えば複素数とする(実数も複素数の一部である)。

定数係数の三項間漸化式

複素数の定数 $p,q$($q\ne0$)について、
$$ a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n\qquad(n=0,1,2,\dots) $$
を定数係数の三項間漸化式という。すべての $n\ge0$ でこの式が成り立つ数列 $(a_n)_{n\ge0}$ を、この漸化式の解という。

$q=0$ のときは $a_{n+2}=pa_{n+1}$ となり、$a_1$ から先は 1 つ前の項だけで決まる(二項間漸化式)。この場合を除くために $q\ne0$ を仮定する。$q\ne0$ が本当に必要になる場面は ex-cer-q-zero で見る。
解は、最初の 2 項 $a_0,a_1$(初期値)を決めると 1 通りに決まる。

初期値で解が決まる

$(a_n)$ と $(b_n)$ がどちらも同じ漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ の解で、$a_0=b_0$、$a_1=b_1$ ならば、すべての $n\ge0$ で $a_n=b_n$ である。

2 項ずつ進む帰納法

「$a_n=b_n$ かつ $a_{n+1}=b_{n+1}$」という主張を $P(n)$ とし、すべての $n\ge0$ で $P(n)$ が成り立つことを数学的帰納法で示す。
$n=0$ のとき:仮定 $a_0=b_0$、$a_1=b_1$ そのものである。
$P(n)$ が成り立つとする。$a_{n+1}=b_{n+1}$ は $P(n)$ に含まれている。さらに、どちらの数列も漸化式を満たすので
$$ a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n=pb_{n+1}+qb_n=b_{n+2} $$
である(真ん中の等号で $P(n)$ を使った)。よって $P(n+1)$ も成り立つ。$\square$

初期値を変えると数列が変わる

漸化式 $a_{n+2}=2a_{n+1}+3a_n$ で、初期値だけを変えた 3 つの数列を比べる。

  1. $a_0=0$、$a_1=4$:$0,\ 4,\ 8,\ 28,\ 80,\ 244,\ \dots$
  2. $a_0=0$、$a_1=5$:$0,\ 5,\ 10,\ 35,\ 100,\ 305,\ \dots$($a_2=2\cdot5+3\cdot0=10$)
  3. $a_0=1$、$a_1=4$:$1,\ 4,\ 11,\ 34,\ 101,\ 304,\ \dots$($a_2=2\cdot4+3\cdot1=11$)
    1 と 2 は $a_0$ が同じでも $a_1$ が違い、$a_1$ から先の項はどれも違う。1 と 3 は $a_1$ が同じでも $a_0$ が違うので、$a_2$ から先も違ってくる。初期値を 2 つとも決めて、はじめて数列が 1 つに決まる。同じ初期値 $0,4$ から計算すれば、誰が計算しても 1 の数列になる。これが prop-cer-unique の内容である。
三項間漸化式の特性方程式

漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ に対し、$t$ の 2 次方程式
$$ t^2=pt+q\qquad\text{すなわち}\qquad t^2-pt-q=0 $$
をこの漸化式の特性方程式という。

特性方程式は、漸化式の $a_{n+2},a_{n+1},a_n$ をそれぞれ $t^2,t,1$ に置き換えたものである。特性方程式は、重解を 2 つと数えてちょうど 2 つの解をもつ。$p,q$ が実数のときは、2次方程式の解の公式から分かる(判別式が負なら 2 つの虚数解)。$p,q$ が虚数のときも、複素数の範囲で 2 つの解がある(複素数。本記事の例では $p,q$ はすべて実数である)。$q\ne0$ なので $t=0$ は解ではない。

特性方程式を作って解く
  1. $a_{n+2}=2a_{n+1}+3a_n$:特性方程式は $t^2-2t-3=0$。$t^2-2t-3=(t-3)(t+1)$ なので、解は $3$ と $-1$(異なる 2 解)。
  2. $a_{n+2}=4a_{n+1}-4a_n$:特性方程式は $t^2-4t+4=0$。$t^2-4t+4=(t-2)^2$ なので、解は $2$ だけ(重解)。
  3. $a_{n+2}=a_{n+1}-a_n$:特性方程式は $t^2-t+1=0$。判別式は $(-1)^2-4\cdot1\cdot1=-3<0$ なので、解は虚数 $\dfrac{1\pm\sqrt3\,i}2$(異なる 2 解)。

等比数列が解になる条件

等比数列が解になる条件

$c\ne0$、$\lambda\ne0$ とする。等比数列 $a_n=c\lambda^n$ が漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ の解であるための必要十分条件は、$\lambda$ が特性方程式の解であること、すなわち $\lambda^2=p\lambda+q$ である。

代入して c λ^n で割る

(仮定 $\lambda\ne0$ は証明では使わない。$\lambda=0$ のときの $0^0$ の扱いを避けるために置いた。$q\ne0$ なので特性方程式の解は $0$ でなく、以下で使う $\lambda$ はいつもこの仮定を満たす。)
$a_n=c\lambda^n$ を漸化式に代入すると、各 $n$ について
$$ c\lambda^{n+2}=pc\lambda^{n+1}+qc\lambda^n\qquad\cdots(*) $$
が成り立つかどうかが問題になる。
必要性:解ならば、$(*)$ は $n=0$ でも成り立つ。$n=0$ の $(*)$ は $c\lambda^2=pc\lambda+qc$ であり、両辺を $c\ne0$ で割ると $\lambda^2=p\lambda+q$ を得る。
十分性:$\lambda^2=p\lambda+q$ とする。両辺に $c\lambda^n$ を掛けると、どの $n$ についても
$$ c\lambda^n\cdot\lambda^2=c\lambda^n\cdot(p\lambda+q),\qquad\text{すなわち}\qquad c\lambda^{n+2}=pc\lambda^{n+1}+qc\lambda^n $$
となり、$(*)$ が成り立つ。$\square$

等比数列を代入してみる

漸化式 $a_{n+2}=2a_{n+1}+3a_n$(特性方程式の解は $3,-1$)で確かめる。

  1. $a_n=3^n$:左辺 $3^{n+2}=9\cdot3^n$、右辺 $2\cdot3^{n+1}+3\cdot3^n=6\cdot3^n+3\cdot3^n=9\cdot3^n$。等しいので解である。
  2. $a_n=(-1)^n$:左辺 $(-1)^{n+2}=(-1)^n$、右辺 $2(-1)^{n+1}+3(-1)^n=-2(-1)^n+3(-1)^n=(-1)^n$。等しいので解である。
  3. $a_n=2^n$:左辺 $2^{n+2}=4\cdot2^n$、右辺 $2\cdot2^{n+1}+3\cdot2^n=7\cdot2^n$。等しくないので解ではない。実際 $2^2=4\ne2\cdot2+3=7$ で、$2$ は特性方程式の解でない。

解を足し合わせる

解の重ね合わせ

$(x_n)$ と $(y_n)$ が漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ の解ならば、どんな定数 $A,B$ についても $a_n:=Ax_n+By_n$ は解である。

定義に代入する

$x_{n+2}=px_{n+1}+qx_n$ と $y_{n+2}=py_{n+1}+qy_n$ を使うと、
$$ \begin{aligned} a_{n+2}&=Ax_{n+2}+By_{n+2}\\ &=A(px_{n+1}+qx_n)+B(py_{n+1}+qy_n)\\ &=p(Ax_{n+1}+By_{n+1})+q(Ax_n+By_n)\\ &=pa_{n+1}+qa_n \end{aligned} $$
である(3 行目は項を並べ替えて $p$ と $q$ でくくった)。$\square$

2 つの命題を合わせると、冒頭の推測がもう証明できる。

推測を証明する

ex-cer-first-terms の数列 $a_0=0$、$a_1=4$、$a_{n+2}=2a_{n+1}+3a_n$ について、$a_n=3^n-(-1)^n$ を示す。
$b_n:=3^n-(-1)^n$ とおく。ex-cer-geometric-check で $3^n$ と $(-1)^n$ は解だったので、prop-cer-superposition($A=1$、$B=-1$)により $(b_n)$ も解である。さらに
$$ b_0=1-1=0=a_0,\qquad b_1=3-(-1)=4=a_1 $$
なので、prop-cer-unique によりすべての $n$ で $a_n=b_n=3^n-(-1)^n$ である。

この方法は「答えの形を推測できれば」使える。次の節では、推測なしに一般項を導く。

異なる 2 解をもつ場合

2 通りの書き直し

高校の教科書の方法の出発点は、漸化式を「等比数列の形」に書き直すことである。

漸化式の 2 通りの書き直し

特性方程式 $t^2-pt-q=0$ の 2 つの解を $\alpha,\beta$ とする(重解のときは $\alpha=\beta$)。漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ の解 $(a_n)$ は、すべての $n\ge0$ で
$$ a_{n+2}-\beta a_{n+1}=\alpha\,(a_{n+1}-\beta a_n),\qquad a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta\,(a_{n+1}-\alpha a_n) $$
を満たす。

解と係数の関係で p, q を書き換える

段 1($p,q$ を $\alpha,\beta$ で表す):$\alpha,\beta$ は $t^2-pt-q=0$ の 2 つの解なので、解と係数の関係により
$$ \alpha+\beta=p,\qquad \alpha\beta=-q $$
である。
段 2(1 つ目の式):漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ に段 1 を代入して左辺を計算する。
$$ \begin{aligned} a_{n+2}-\beta a_{n+1}&=pa_{n+1}+qa_n-\beta a_{n+1}\\ &=(\alpha+\beta)a_{n+1}-\alpha\beta a_n-\beta a_{n+1}\\ &=\alpha a_{n+1}-\alpha\beta a_n\\ &=\alpha\,(a_{n+1}-\beta a_n). \end{aligned} $$
段 3(2 つ目の式):段 2 の計算で $\alpha$ と $\beta$ の役割を入れ替えればよい。段 1 の 2 つの式は $\alpha$ と $\beta$ を入れ替えても変わらないので、同じ計算がそのまま成り立つ。$\square$

補題が言っているのは、数列 $b_n:=a_{n+1}-\beta a_n$ は公比 $\alpha$ の等比数列であり、数列 $c_n:=a_{n+1}-\alpha a_n$ は公比 $\beta$ の等比数列であるということである。

書き直しを数値で見る

$a_0=1$、$a_1=4$、$a_{n+2}=5a_{n+1}-6a_n$ とする。項は $1,4,14,46,146,454,\dots$ である(たとえば $a_2=5\cdot4-6\cdot1=14$、$a_3=5\cdot14-6\cdot4=46$)。特性方程式 $t^2-5t+6=(t-2)(t-3)=0$ の解は $2,3$ である。

  • $a_{n+1}-2a_n$ を計算すると $4-2=2$、$14-8=6$、$46-28=18$、$146-92=54$。公比 $3$ の等比数列である。
  • $a_{n+1}-3a_n$ を計算すると $4-3=1$、$14-12=2$、$46-42=4$、$146-138=8$。公比 $2$ の等比数列である。

一般項の公式

異なる 2 解のときの一般項

特性方程式 $t^2=pt+q$($q\ne0$)が異なる 2 解 $\alpha,\beta$ をもつとする。漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ の解 $(a_n)$ は、すべての $n\ge0$ で
$$ a_n=\frac{(a_1-\beta a_0)\,\alpha^n-(a_1-\alpha a_0)\,\beta^n}{\alpha-\beta} $$
を満たす。特に、解は定数 $A,B$ を用いて $a_n=A\alpha^n+B\beta^n$ と書ける。逆に、どんな定数 $A,B$ についても $A\alpha^n+B\beta^n$ は解である。

2 つの等比数列を引き算する

方針:lem-cer-rewrite の 2 つの等比数列の一般項を求め、引き算して $a_{n+1}$ を消す。
段 1:$b_n:=a_{n+1}-\beta a_n$ とおく。lem-cer-rewrite の 1 つ目の式は $b_{n+1}=\alpha b_n$ と書ける。よって $(b_n)$ は初項 $b_0=a_1-\beta a_0$、公比 $\alpha$ の等比数列で、
$$ a_{n+1}-\beta a_n=b_n=\alpha^n(a_1-\beta a_0)\qquad\cdots(1) $$
である。
段 2:同じく $c_n:=a_{n+1}-\alpha a_n$ は $c_{n+1}=\beta c_n$ を満たすので、
$$ a_{n+1}-\alpha a_n=c_n=\beta^n(a_1-\alpha a_0)\qquad\cdots(2) $$
である。
段 3:$(1)-(2)$ を計算する。左辺は
$$ (a_{n+1}-\beta a_n)-(a_{n+1}-\alpha a_n)=(\alpha-\beta)\,a_n $$
となり、$a_{n+1}$ が消える。右辺は $\alpha^n(a_1-\beta a_0)-\beta^n(a_1-\alpha a_0)$ である。$\alpha\ne\beta$ なので両辺を $\alpha-\beta$ で割って、主張の式を得る。
段 4:$A:=\dfrac{a_1-\beta a_0}{\alpha-\beta}$、$B:=-\dfrac{a_1-\alpha a_0}{\alpha-\beta}$ とおけば $a_n=A\alpha^n+B\beta^n$ である。
段 5(逆):$\alpha,\beta$ は特性方程式の解で、$q\ne0$ から $0$ でない。prop-cer-geometric($c=1$)により $\alpha^n$ と $\beta^n$ は解であり、prop-cer-superposition により $A\alpha^n+B\beta^n$ も解である。$\square$

公式を使う(1)[ex-cer-distinct-1]

$a_0=0$、$a_1=4$、$a_{n+2}=2a_{n+1}+3a_n$ では $\alpha=3$、$\beta=-1$ とおける。
$$ a_1-\beta a_0=4+0=4,\qquad a_1-\alpha a_0=4-0=4,\qquad \alpha-\beta=4 $$
なので、$a_n=\dfrac{4\cdot3^n-4\cdot(-1)^n}{4}=3^n-(-1)^n$ である。ex-cer-first-proof と同じ答えが、推測なしに出た。

公式を使う(2)[ex-cer-distinct-2]

ex-cer-rewrite-numbers の $a_0=1$、$a_1=4$、$a_{n+2}=5a_{n+1}-6a_n$ で $\alpha=3$、$\beta=2$ とおく。
$$ a_1-\beta a_0=4-2=2,\qquad a_1-\alpha a_0=4-3=1,\qquad \alpha-\beta=1 $$
なので $a_n=2\cdot3^n-2^n$ である。確かめ:$n=2$ で $18-4=14$、$n=3$ で $54-8=46$、$n=4$ で $162-16=146$ で、ex-cer-rewrite-numbers の値と一致する。

同じ一般項を母関数の部分分数分解から求める方法は Fibonacci数の母関数 で扱う。

解が虚数のとき

thm-cer-distinct は $\alpha,\beta$ が虚数でも成り立つ(証明で使ったのは足し算・掛け算・割り算だけで、これらは複素数でも同じ規則に従う)。$p,q$ と初期値が実数なら、途中で虚数を通っても最後の $a_n$ は実数になる。

虚数の解と周期 6

$a_0=0$、$a_1=1$、$a_{n+2}=a_{n+1}-a_n$ とする。順に計算すると
$$ 0,\ 1,\ 1,\ 0,\ -1,\ -1,\ 0,\ 1,\ 1,\ 0,\ \dots $$
となり、6 項ごとに同じ値がくり返す。特性方程式 $t^2-t+1=0$ の解は $\alpha=\dfrac{1+\sqrt3\,i}2$、$\beta=\dfrac{1-\sqrt3\,i}2$ で、$\alpha-\beta=\sqrt3\,i$ である。$a_0=0$、$a_1=1$ なので thm-cer-distinct の式は
$$ a_n=\frac{\alpha^n-\beta^n}{\sqrt3\,i} $$
となる。$\alpha=\cos\frac\pi3+i\sin\frac\pi3$、$\beta=\cos\frac\pi3-i\sin\frac\pi3$ と書けるので、de Moivre の定理(複素数の極形式)により $\alpha^n=\cos\frac{n\pi}3+i\sin\frac{n\pi}3$、$\beta^n=\cos\frac{n\pi}3-i\sin\frac{n\pi}3$ である。引き算すると $\alpha^n-\beta^n=2i\sin\frac{n\pi}3$ なので、
$$ a_n=\frac{2}{\sqrt3}\sin\frac{n\pi}3 $$
である。$n=1$ で $\frac2{\sqrt3}\cdot\frac{\sqrt3}2=1$、$n=4$ で $\frac2{\sqrt3}\cdot\bigl(-\frac{\sqrt3}2\bigr)=-1$ となり、上の値と一致する。

図1:前の例の数列(赤い点)は正弦曲線の上に並び、6 項ごとに同じ値に戻る 図1:前の例の数列(赤い点)は正弦曲線の上に並び、6 項ごとに同じ値に戻る
図 1 の赤い点が $a_n$、青い曲線が $y=\frac2{\sqrt3}\sin\frac{\pi x}3$ である。周期 6 は、解 $\alpha$ の性質からも分かる。

周期 6 を解の性質から見る

$\alpha$ は特性方程式の解なので $\alpha^2=\alpha-1$ である。両辺に $\alpha$ を掛けて、もう一度 $\alpha^2=\alpha-1$ を使うと
$$ \alpha^3=\alpha^2-\alpha=(\alpha-1)-\alpha=-1 $$
となる。よって $\alpha^6=(\alpha^3)^2=1$ である。$\beta$ も同じ方程式の解なので $\beta^6=1$ である。したがって $\alpha^{n+6}=\alpha^n$、$\beta^{n+6}=\beta^n$ であり、ex-cer-period-six の式から $a_{n+6}=a_n$ が従う。

重解をもつ場合

特性方程式が重解 $\alpha$ をもつと、lem-cer-rewrite の 2 つの式は同じ式になり、thm-cer-distinct の証明の段 3 で $\alpha-\beta=0$ で割ることになってしまう。そこで別の工夫をする。

重解のときの一般項

特性方程式 $t^2=pt+q$($q\ne0$)が重解 $\alpha$ をもつとする($p^2+4q=0$、$\alpha=\frac p2$)。このとき $\alpha\ne0$ であり、漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ の解 $(a_n)$ は、すべての $n\ge0$ で
$$ a_n=\Bigl(a_0+n\cdot\frac{a_1-\alpha a_0}{\alpha}\Bigr)\alpha^n $$
を満たす。特に、解は定数 $A,B$ を用いて $a_n=(A+Bn)\alpha^n$ と書ける。逆に、どんな定数 $A,B$ についても $(A+Bn)\alpha^n$ は解である。

α^n で割ると等差数列になる

方針:lem-cer-rewrite の等比数列を $\alpha^{n+1}$ で割り、等差数列を作る。
段 1(準備):重解なので $t^2-pt-q=(t-\alpha)^2=t^2-2\alpha t+\alpha^2$ であり、係数を比べて $p=2\alpha$、$q=-\alpha^2$ である。$q\ne0$ なので $\alpha\ne0$ である。
段 2:lem-cer-rewrite で $\beta=\alpha$ とすると $a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\alpha\,(a_{n+1}-\alpha a_n)$ である。よって $a_{n+1}-\alpha a_n$ は初項 $a_1-\alpha a_0$、公比 $\alpha$ の等比数列で、
$$ a_{n+1}-\alpha a_n=\alpha^n(a_1-\alpha a_0) $$
である。
段 3:段 2 の式の両辺を $\alpha^{n+1}$($\ne0$)で割ると
$$ \frac{a_{n+1}}{\alpha^{n+1}}-\frac{a_n}{\alpha^n}=\frac{a_1-\alpha a_0}{\alpha} $$
となる。右辺を $B$ とおく。$B$ は $n$ によらない定数である。
段 4:$d_n:=\dfrac{a_n}{\alpha^n}$ とおくと、段 3 は $d_{n+1}-d_n=B$ を意味する。よって $(d_n)$ は初項 $d_0=a_0$、公差 $B$ の等差数列で、$d_n=a_0+nB$ である。両辺に $\alpha^n$ を掛けて主張の式を得る。$A:=a_0$ とおけば $a_n=(A+Bn)\alpha^n$ である。
段 5(逆):$\alpha^n$ は prop-cer-geometric により解である。$x_n:=n\alpha^n$ も解であることを、段 1 の $p=2\alpha$、$q=-\alpha^2$ を使って確かめる。
$$ \begin{aligned} px_{n+1}+qx_n&=2\alpha\cdot(n+1)\alpha^{n+1}-\alpha^2\cdot n\alpha^n\\ &=(2n+2)\alpha^{n+2}-n\alpha^{n+2}\\ &=(n+2)\alpha^{n+2}=x_{n+2}. \end{aligned} $$
prop-cer-superposition により $A\alpha^n+Bn\alpha^n=(A+Bn)\alpha^n$ も解である。$\square$

重解の例(1)[ex-cer-double-1]

$a_0=1$、$a_1=4$、$a_{n+2}=4a_{n+1}-4a_n$ とする。特性方程式 $(t-2)^2=0$ の重解は $\alpha=2$ で、
$$ B=\frac{a_1-\alpha a_0}{\alpha}=\frac{4-2}{2}=1 $$
なので $a_n=(1+n)\,2^n$ である。順に計算した値 $a_2=4\cdot4-4\cdot1=12$、$a_3=4\cdot12-4\cdot4=32$、$a_4=4\cdot32-4\cdot12=80$ は、式の値 $3\cdot4=12$、$4\cdot8=32$、$5\cdot16=80$ と一致する。証明の段 4 の $d_n=a_n/2^n$ は $1,2,3,4,5,\dots$ である(図 2)。

図2:重解 2 の例で a を 2 の冪で割った値は、公差 1 の等差数列になり直線上に並ぶ 図2:重解 2 の例で a を 2 の冪で割った値は、公差 1 の等差数列になり直線上に並ぶ
図 2 の各点の横の分数は $a_n/2^n$ の値である。$a_n$ そのものは $2^n$ より速く増えるが、$2^n$ で割ると 1 次式 $n+1$ になる。これが一般項に $n$ が掛かる理由である。

重解の例(2):負の重解

$a_0=1$、$a_1=1$、$a_{n+2}=-2a_{n+1}-a_n$ とする。特性方程式 $t^2+2t+1=(t+1)^2=0$ の重解は $\alpha=-1$ で、
$$ B=\frac{a_1-\alpha a_0}{\alpha}=\frac{1+1}{-1}=-2 $$
なので $a_n=(1-2n)(-1)^n$ である。順に計算すると $a_2=-2\cdot1-1=-3$、$a_3=-2\cdot(-3)-1=5$、$a_4=-2\cdot5-(-3)=-7$ で、式の値 $(1-4)\cdot1=-3$、$(1-6)\cdot(-1)=5$、$(1-8)\cdot1=-7$ と一致する。

例と反例

定理の仮定を 1 つ外すと、どの結論が崩れるかをまとめる。

外した仮定崩れる結論ボックス
特性方程式が異なる 2 解をもつ解が $A\alpha^n+B\beta^n$ と書けるex-cer-double-counter
係数 $p,q$ が定数等比数列の解があるex-cer-nonconstant
$q\ne0$重解のとき解が $(A+Bn)\alpha^n$ と書けるex-cer-q-zero
反例:重解では等比数列 2 つが作れない

$a_0=1$、$a_1=4$、$a_{n+2}=4a_{n+1}-4a_n$ は、thm-cer-distinct の仮定のうち「特性方程式が異なる 2 解をもつ」だけを満たさない(重解 $2$)。このとき「解は特性方程式の解の冪の 1 次結合で書ける」という結論が破れる。使える冪は $2^n$ だけなので $a_n=A\cdot2^n$ としてみると、$a_0=1$ から $A=1$ となり、すると $a_1=2\ne4$ である。正しい一般項は ex-cer-double-1 の $(n+1)2^n$ で、欠けていたのは $n2^n$ の項である。

反例:係数が n によると等比数列の解がない

$a_0=a_1=1$、$a_{n+2}=a_{n+1}+(n+1)a_n$ は 3 つの項の間の 1 次の関係だが、「係数が定数」という仮定を満たさない。値は $1,1,2,4,10,26,76,232,\dots$ である($a_2=1+1\cdot1=2$、$a_3=2+2\cdot1=4$、$a_4=4+3\cdot2=10$)。
この漸化式を満たす等比数列 $a_n=cr^n$($c\ne0$)は存在しない。$r=0$ なら $a_1=a_2=0$ のはずだが、漸化式から $a_2=a_1+1\cdot a_0=c\ne0$ となり矛盾する。$r\ne0$ なら、漸化式を $cr^n$ で割ると $r^2=r+(n+1)$ がすべての $n$ で成り立つことになるが、$n=0$ では $r^2=r+1$、$n=1$ では $r^2=r+2$ で、両立しない。係数が変わると「特性方程式」が $n$ ごとに変わってしまい、1 つに決まらない。

反例:q = 0 の重解

$p=q=0$、すなわち $a_{n+2}=0$ とし、$a_0=5$、$a_1=7$ とする。数列は $5,7,0,0,0,\dots$ である。特性方程式 $t^2=0$ は重解 $0$ をもつが、$(A+Bn)\cdot0^n$($0^0=1$ とする)は $n\ge1$ で $0$ なので、$a_1=7$ にならない。thm-cer-double の証明の段 3 で $\alpha^{n+1}$ で割る所が、$\alpha=0$ では使えない。$q\ne0$ の仮定はここで効いている。

数学オリンピックの問題から

1976 年第 6 問:指数に隠れた三項間漸化式

漸化式そのものは 2 乗を含む(線形でない)が、答えの指数に、この記事で扱った一般項が現れる問題である。

国際数学オリンピック(1976 年)第 6 問

数列 $\{u_n\}$ を $u_0=2$、$u_1=\frac52$、$u_{n+1}=u_n(u_{n-1}^2-2)-u_1$($n=1,2,\dots$)で定める。正の整数 $n$ について
$$ [u_n]=2^{\frac{2^n-(-1)^n}3} $$
を示せ。ここで $[x]$ は $x$ 以下の最大の整数を表す。
出典:国際数学オリンピック(1976 年)第 6 問(Oly76)。和訳は本記事による。

小さい n で確かめる

$u_2=u_1(u_0^2-2)-u_1=\frac52\cdot2-\frac52=\frac52$、$u_3=u_2(u_1^2-2)-u_1=\frac52\cdot\frac{17}4-\frac52=\frac{85}8-\frac{20}8=\frac{65}8=8.125$ である。一方、指数 $\frac{2^n-(-1)^n}3$ は $n=1,2,3$ で $\frac{2+1}3=1$、$\frac{4-1}3=1$、$\frac{8+1}3=3$ なので、右辺は $2,2,8$ である。左辺 $[u_1]=[2.5]=2$、$[u_2]=2$、$[u_3]=8$ と一致する。さらに $u_3=8+\frac18=2^3+2^{-3}$ となっていることに注目する。

高校数学で解く

方針:$u_n=2^{a_n}+2^{-a_n}$ の形であることを帰納法で示す。指数 $a_n$ が三項間漸化式を満たすことが鍵になる。
段 1(指数の数列):$a_n:=\frac{2^n-(-1)^n}3$ とおく。$a_n$ は、漸化式 $a_{n+1}=a_n+2a_{n-1}$($n\ge1$)、$a_0=0$、$a_1=1$ の解である。この漸化式は、添字を 1 つずらして $a_{n+2}=a_{n+1}+2a_n$($n\ge0$)と書けば、def-cer-recurrence で $p=1$、$q=2$ としたものと同じである。特性方程式 $t^2=t+2$ の解は $2,-1$ で、thm-cer-distinct の式に $\alpha=2$、$\beta=-1$、$a_0=0$、$a_1=1$ を入れると $\frac{2^n-(-1)^n}{3}$ になる。
次の 2 つを確かめておく(段 4 で使う)。

  • $a_n$ はすべて整数である:$a_0=0$、$a_1=1$ は整数で、$a_{n+1}=a_n+2a_{n-1}$ は整数の和なので、数学的帰納法(2 つ前まで仮定する形)によりすべて整数である。
  • $n\ge1$ で $a_n\ge1$ である:前の項目と同じ帰納法で、すべての $a_n$ は $0$ 以上である($0$ 以上の数の和だから)。$a_1=1$、$a_2=a_1+2a_0=1$ であり、$n\ge2$ では $a_{n+1}=a_n+2a_{n-1}\ge a_n$($a_{n-1}\ge0$ だから)なので、$a_2\le a_3\le a_4\le\cdots$ となり、$n\ge1$ で $a_n\ge1$ である。値は $0,1,1,3,5,11,21,43,\dots$ と続く。
    段 2(差の性質):$n\ge1$ について
    $$ a_n-2a_{n-1}=\frac{2^n-(-1)^n-2\cdot2^{n-1}+2(-1)^{n-1}}3=\frac{-(-1)^n-2(-1)^n}3=(-1)^{n+1} $$
    である($2(-1)^{n-1}=-2(-1)^n$ を使った)。つまり $a_n-2a_{n-1}$ は $1$ か $-1$ である。
    段 3(帰納法):すべての $n\ge0$ で $u_n=2^{a_n}+2^{-a_n}$ を示す。$n=0$ では $2^0+2^0=2=u_0$、$n=1$ では $2+\frac12=\frac52=u_1$ で正しい。$n-1$ と $n$($n\ge1$)で正しいとする。まず
    $$ u_{n-1}^2-2=\bigl(2^{a_{n-1}}+2^{-a_{n-1}}\bigr)^2-2=2^{2a_{n-1}}+2^{-2a_{n-1}} $$
    である。これに $u_n=2^{a_n}+2^{-a_n}$ を掛けて展開すると
    $$ u_n(u_{n-1}^2-2)=2^{a_n+2a_{n-1}}+2^{-(a_n+2a_{n-1})}+2^{a_n-2a_{n-1}}+2^{-(a_n-2a_{n-1})} $$
    である。段 1 の漸化式から $a_n+2a_{n-1}=a_{n+1}$ であり、段 2 から $a_n-2a_{n-1}=\pm1$ なので、後ろの 2 項の和は $2+\frac12=u_1$ である。よって $u_{n+1}=u_n(u_{n-1}^2-2)-u_1=2^{a_{n+1}}+2^{-a_{n+1}}$ となり、$n+1$ でも正しい。
    段 4(整数部分):$n\ge1$ では $a_n\ge1$ なので $0<2^{-a_n}\le\frac12<1$ である。$2^{a_n}$ は整数なので $[u_n]=2^{a_n}$ である。$\square$
大学数学で見ると

$(x+x^{-1})(y+y^{-1})=xy+(xy)^{-1}+xy^{-1}+(xy^{-1})^{-1}$ なので、$x+x^{-1}$ の形の数の掛け算は、指数の和と差になる。これで 2 乗を含む漸化式が、指数についての線形な漸化式 $a_{n+1}=a_n+2a_{n-1}$ に帰着した。証明の鍵の $a_n-2a_{n-1}=(-1)^{n+1}$ は、lem-cer-rewrite の等比数列 $a_{n+1}-\beta a_n$(ここでは $\beta=2$、公比 $\alpha=-1$)そのものである。大きく育つ $2^n$ の成分が消え、絶対値が一定の $(-1)^n$ の成分だけが残るので、余分な項は毎回同じ $u_1$ になる。行列の言葉では、この操作は固有値 $-1$ の成分を取り出すことにあたる(漸化式の行列表示)。

さらに先へ

  • 漸化式を行列の掛け算 $v_{n+1}=Cv_n$ と書くと、特性方程式は行列 $C$ の固有値の方程式になる(漸化式の行列表示)。重解で $n\alpha^n$ が現れる理由は、行列の言葉では「対角化できない」ことである(重解とJordan細胞)。
  • 微分方程式 $y''=py'+qy$ も同じ特性方程式をもち、$e^{\alpha x}$ が等比数列 $\alpha^n$ の役をする(微分方程式としての指数関数・三角関数)。
  • $k$ 項前までを使う漸化式 $a_{n+k}=c_1a_{n+k-1}+\cdots+c_ka_n$($c_k\ne0$)でも、特性方程式 $t^k=c_1t^{k-1}+\cdots+c_k$ の解から一般項が作れる。$m$ 重の解 $\alpha$ からは $\alpha^n,n\alpha^n,\dots,n^{m-1}\alpha^n$ が現れる(本記事では証明しない。漸化式、KT17 Theorem 9.21 と Lemma 9.22)。

関連項目

参考文献

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