三項間漸化式の特性方程式(characteristic equation of a linear recurrence)とは、定数係数の漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$($q\ne0$)に対する 2 次方程式 $t^2=pt+q$ である。等比数列 $\lambda^n$ が漸化式を満たすのは、$\lambda$ が特性方程式の解のときに限る。特性方程式が異なる 2 解 $\alpha,\beta$ をもてば一般項は $A\alpha^n+B\beta^n$、重解 $\alpha$ をもてば $(A+Bn)\alpha^n$ と書け、定数 $A,B$ は初期値 $a_0,a_1$ で決まる。解が虚数でも同じ式が使え、周期的な数列が現れることがある。
前提知識: 数列, 等比数列, 等差数列, 2次方程式, 解と係数の関係, 複素数
$a_{n+1}=3a_n$ のように、1 つ前の項の定数倍で次の項が決まる数列は等比数列であり、一般項は $a_n=3^na_0$ と書ける。では、2 つ前までの項から次の項が決まる数列はどうだろうか。
1 つ前の項だけで決まる漸化式 $x_{n+1}=cx_n+d$ が確率の問題に現れる例は 確率漸化式と定常分布 で扱う。
$a_0=0$、$a_1=4$、$a_{n+2}=2a_{n+1}+3a_n$ で決まる数列の項を、順に計算する。
$$
\begin{aligned}
a_2&=2a_1+3a_0=2\cdot4+3\cdot0=8,\\
a_3&=2a_2+3a_1=2\cdot8+3\cdot4=28,\\
a_4&=2a_3+3a_2=2\cdot28+3\cdot8=80,\\
a_5&=2a_4+3a_3=2\cdot80+3\cdot28=244.
\end{aligned}
$$
$3$ の冪 $1,3,9,27,81,243$ と見比べると、$a_n$ は $3^n$ より $1$ 小さいか $1$ 大きく、$a_n=3^n-(-1)^n$ ではないかと推測できる。
この記事では、この推測を証明する方法を、高校で習う道具(等比数列・等差数列・解と係数の関係)だけで組み立てる。鍵になるのが特性方程式である。次の問いに順に答える。
| 問い | 答えるボックス |
|---|---|
| 等比数列 $\lambda^n$ が漸化式を満たすのはいつか | prop-cer-geometric |
| 特性方程式が異なる 2 解をもつとき、一般項はどう書けるか | thm-cer-distinct |
| 特性方程式の解が虚数のときはどうなるか | ex-cer-period-six |
| 特性方程式が重解をもつとき、何が変わるか | thm-cer-double |
| 係数が $n$ によって変わるときはどうか | ex-cer-nonconstant |
以下、数と言えば複素数とする(実数も複素数の一部である)。
複素数の定数 $p,q$($q\ne0$)について、
$$
a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n\qquad(n=0,1,2,\dots)
$$
を定数係数の三項間漸化式という。すべての $n\ge0$ でこの式が成り立つ数列 $(a_n)_{n\ge0}$ を、この漸化式の解という。
$q=0$ のときは $a_{n+2}=pa_{n+1}$ となり、$a_1$ から先は 1 つ前の項だけで決まる(二項間漸化式)。この場合を除くために $q\ne0$ を仮定する。$q\ne0$ が本当に必要になる場面は ex-cer-q-zero で見る。
解は、最初の 2 項 $a_0,a_1$(初期値)を決めると 1 通りに決まる。
$(a_n)$ と $(b_n)$ がどちらも同じ漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ の解で、$a_0=b_0$、$a_1=b_1$ ならば、すべての $n\ge0$ で $a_n=b_n$ である。
「$a_n=b_n$ かつ $a_{n+1}=b_{n+1}$」という主張を $P(n)$ とし、すべての $n\ge0$ で $P(n)$ が成り立つことを数学的帰納法で示す。
$n=0$ のとき:仮定 $a_0=b_0$、$a_1=b_1$ そのものである。
$P(n)$ が成り立つとする。$a_{n+1}=b_{n+1}$ は $P(n)$ に含まれている。さらに、どちらの数列も漸化式を満たすので
$$
a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n=pb_{n+1}+qb_n=b_{n+2}
$$
である(真ん中の等号で $P(n)$ を使った)。よって $P(n+1)$ も成り立つ。$\square$
漸化式 $a_{n+2}=2a_{n+1}+3a_n$ で、初期値だけを変えた 3 つの数列を比べる。
漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ に対し、$t$ の 2 次方程式
$$
t^2=pt+q\qquad\text{すなわち}\qquad t^2-pt-q=0
$$
をこの漸化式の特性方程式という。
特性方程式は、漸化式の $a_{n+2},a_{n+1},a_n$ をそれぞれ $t^2,t,1$ に置き換えたものである。特性方程式は、重解を 2 つと数えてちょうど 2 つの解をもつ。$p,q$ が実数のときは、2次方程式の解の公式から分かる(判別式が負なら 2 つの虚数解)。$p,q$ が虚数のときも、複素数の範囲で 2 つの解がある(複素数。本記事の例では $p,q$ はすべて実数である)。$q\ne0$ なので $t=0$ は解ではない。
$c\ne0$、$\lambda\ne0$ とする。等比数列 $a_n=c\lambda^n$ が漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ の解であるための必要十分条件は、$\lambda$ が特性方程式の解であること、すなわち $\lambda^2=p\lambda+q$ である。
(仮定 $\lambda\ne0$ は証明では使わない。$\lambda=0$ のときの $0^0$ の扱いを避けるために置いた。$q\ne0$ なので特性方程式の解は $0$ でなく、以下で使う $\lambda$ はいつもこの仮定を満たす。)
$a_n=c\lambda^n$ を漸化式に代入すると、各 $n$ について
$$
c\lambda^{n+2}=pc\lambda^{n+1}+qc\lambda^n\qquad\cdots(*)
$$
が成り立つかどうかが問題になる。
必要性:解ならば、$(*)$ は $n=0$ でも成り立つ。$n=0$ の $(*)$ は $c\lambda^2=pc\lambda+qc$ であり、両辺を $c\ne0$ で割ると $\lambda^2=p\lambda+q$ を得る。
十分性:$\lambda^2=p\lambda+q$ とする。両辺に $c\lambda^n$ を掛けると、どの $n$ についても
$$
c\lambda^n\cdot\lambda^2=c\lambda^n\cdot(p\lambda+q),\qquad\text{すなわち}\qquad c\lambda^{n+2}=pc\lambda^{n+1}+qc\lambda^n
$$
となり、$(*)$ が成り立つ。$\square$
漸化式 $a_{n+2}=2a_{n+1}+3a_n$(特性方程式の解は $3,-1$)で確かめる。
$(x_n)$ と $(y_n)$ が漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ の解ならば、どんな定数 $A,B$ についても $a_n:=Ax_n+By_n$ は解である。
$x_{n+2}=px_{n+1}+qx_n$ と $y_{n+2}=py_{n+1}+qy_n$ を使うと、
$$
\begin{aligned}
a_{n+2}&=Ax_{n+2}+By_{n+2}\\
&=A(px_{n+1}+qx_n)+B(py_{n+1}+qy_n)\\
&=p(Ax_{n+1}+By_{n+1})+q(Ax_n+By_n)\\
&=pa_{n+1}+qa_n
\end{aligned}
$$
である(3 行目は項を並べ替えて $p$ と $q$ でくくった)。$\square$
2 つの命題を合わせると、冒頭の推測がもう証明できる。
ex-cer-first-terms の数列 $a_0=0$、$a_1=4$、$a_{n+2}=2a_{n+1}+3a_n$ について、$a_n=3^n-(-1)^n$ を示す。
$b_n:=3^n-(-1)^n$ とおく。ex-cer-geometric-check で $3^n$ と $(-1)^n$ は解だったので、prop-cer-superposition($A=1$、$B=-1$)により $(b_n)$ も解である。さらに
$$
b_0=1-1=0=a_0,\qquad b_1=3-(-1)=4=a_1
$$
なので、prop-cer-unique によりすべての $n$ で $a_n=b_n=3^n-(-1)^n$ である。
この方法は「答えの形を推測できれば」使える。次の節では、推測なしに一般項を導く。
高校の教科書の方法の出発点は、漸化式を「等比数列の形」に書き直すことである。
特性方程式 $t^2-pt-q=0$ の 2 つの解を $\alpha,\beta$ とする(重解のときは $\alpha=\beta$)。漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ の解 $(a_n)$ は、すべての $n\ge0$ で
$$
a_{n+2}-\beta a_{n+1}=\alpha\,(a_{n+1}-\beta a_n),\qquad a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta\,(a_{n+1}-\alpha a_n)
$$
を満たす。
段 1($p,q$ を $\alpha,\beta$ で表す):$\alpha,\beta$ は $t^2-pt-q=0$ の 2 つの解なので、解と係数の関係により
$$
\alpha+\beta=p,\qquad \alpha\beta=-q
$$
である。
段 2(1 つ目の式):漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ に段 1 を代入して左辺を計算する。
$$
\begin{aligned}
a_{n+2}-\beta a_{n+1}&=pa_{n+1}+qa_n-\beta a_{n+1}\\
&=(\alpha+\beta)a_{n+1}-\alpha\beta a_n-\beta a_{n+1}\\
&=\alpha a_{n+1}-\alpha\beta a_n\\
&=\alpha\,(a_{n+1}-\beta a_n).
\end{aligned}
$$
段 3(2 つ目の式):段 2 の計算で $\alpha$ と $\beta$ の役割を入れ替えればよい。段 1 の 2 つの式は $\alpha$ と $\beta$ を入れ替えても変わらないので、同じ計算がそのまま成り立つ。$\square$
補題が言っているのは、数列 $b_n:=a_{n+1}-\beta a_n$ は公比 $\alpha$ の等比数列であり、数列 $c_n:=a_{n+1}-\alpha a_n$ は公比 $\beta$ の等比数列であるということである。
$a_0=1$、$a_1=4$、$a_{n+2}=5a_{n+1}-6a_n$ とする。項は $1,4,14,46,146,454,\dots$ である(たとえば $a_2=5\cdot4-6\cdot1=14$、$a_3=5\cdot14-6\cdot4=46$)。特性方程式 $t^2-5t+6=(t-2)(t-3)=0$ の解は $2,3$ である。
特性方程式 $t^2=pt+q$($q\ne0$)が異なる 2 解 $\alpha,\beta$ をもつとする。漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ の解 $(a_n)$ は、すべての $n\ge0$ で
$$
a_n=\frac{(a_1-\beta a_0)\,\alpha^n-(a_1-\alpha a_0)\,\beta^n}{\alpha-\beta}
$$
を満たす。特に、解は定数 $A,B$ を用いて $a_n=A\alpha^n+B\beta^n$ と書ける。逆に、どんな定数 $A,B$ についても $A\alpha^n+B\beta^n$ は解である。
方針:lem-cer-rewrite の 2 つの等比数列の一般項を求め、引き算して $a_{n+1}$ を消す。
段 1:$b_n:=a_{n+1}-\beta a_n$ とおく。lem-cer-rewrite の 1 つ目の式は $b_{n+1}=\alpha b_n$ と書ける。よって $(b_n)$ は初項 $b_0=a_1-\beta a_0$、公比 $\alpha$ の等比数列で、
$$
a_{n+1}-\beta a_n=b_n=\alpha^n(a_1-\beta a_0)\qquad\cdots(1)
$$
である。
段 2:同じく $c_n:=a_{n+1}-\alpha a_n$ は $c_{n+1}=\beta c_n$ を満たすので、
$$
a_{n+1}-\alpha a_n=c_n=\beta^n(a_1-\alpha a_0)\qquad\cdots(2)
$$
である。
段 3:$(1)-(2)$ を計算する。左辺は
$$
(a_{n+1}-\beta a_n)-(a_{n+1}-\alpha a_n)=(\alpha-\beta)\,a_n
$$
となり、$a_{n+1}$ が消える。右辺は $\alpha^n(a_1-\beta a_0)-\beta^n(a_1-\alpha a_0)$ である。$\alpha\ne\beta$ なので両辺を $\alpha-\beta$ で割って、主張の式を得る。
段 4:$A:=\dfrac{a_1-\beta a_0}{\alpha-\beta}$、$B:=-\dfrac{a_1-\alpha a_0}{\alpha-\beta}$ とおけば $a_n=A\alpha^n+B\beta^n$ である。
段 5(逆):$\alpha,\beta$ は特性方程式の解で、$q\ne0$ から $0$ でない。prop-cer-geometric($c=1$)により $\alpha^n$ と $\beta^n$ は解であり、prop-cer-superposition により $A\alpha^n+B\beta^n$ も解である。$\square$
$a_0=0$、$a_1=4$、$a_{n+2}=2a_{n+1}+3a_n$ では $\alpha=3$、$\beta=-1$ とおける。
$$
a_1-\beta a_0=4+0=4,\qquad a_1-\alpha a_0=4-0=4,\qquad \alpha-\beta=4
$$
なので、$a_n=\dfrac{4\cdot3^n-4\cdot(-1)^n}{4}=3^n-(-1)^n$ である。ex-cer-first-proof と同じ答えが、推測なしに出た。
ex-cer-rewrite-numbers の $a_0=1$、$a_1=4$、$a_{n+2}=5a_{n+1}-6a_n$ で $\alpha=3$、$\beta=2$ とおく。
$$
a_1-\beta a_0=4-2=2,\qquad a_1-\alpha a_0=4-3=1,\qquad \alpha-\beta=1
$$
なので $a_n=2\cdot3^n-2^n$ である。確かめ:$n=2$ で $18-4=14$、$n=3$ で $54-8=46$、$n=4$ で $162-16=146$ で、ex-cer-rewrite-numbers の値と一致する。
同じ一般項を母関数の部分分数分解から求める方法は Fibonacci数の母関数 で扱う。
thm-cer-distinct は $\alpha,\beta$ が虚数でも成り立つ(証明で使ったのは足し算・掛け算・割り算だけで、これらは複素数でも同じ規則に従う)。$p,q$ と初期値が実数なら、途中で虚数を通っても最後の $a_n$ は実数になる。
$a_0=0$、$a_1=1$、$a_{n+2}=a_{n+1}-a_n$ とする。順に計算すると
$$
0,\ 1,\ 1,\ 0,\ -1,\ -1,\ 0,\ 1,\ 1,\ 0,\ \dots
$$
となり、6 項ごとに同じ値がくり返す。特性方程式 $t^2-t+1=0$ の解は $\alpha=\dfrac{1+\sqrt3\,i}2$、$\beta=\dfrac{1-\sqrt3\,i}2$ で、$\alpha-\beta=\sqrt3\,i$ である。$a_0=0$、$a_1=1$ なので thm-cer-distinct の式は
$$
a_n=\frac{\alpha^n-\beta^n}{\sqrt3\,i}
$$
となる。$\alpha=\cos\frac\pi3+i\sin\frac\pi3$、$\beta=\cos\frac\pi3-i\sin\frac\pi3$ と書けるので、de Moivre の定理(複素数の極形式)により $\alpha^n=\cos\frac{n\pi}3+i\sin\frac{n\pi}3$、$\beta^n=\cos\frac{n\pi}3-i\sin\frac{n\pi}3$ である。引き算すると $\alpha^n-\beta^n=2i\sin\frac{n\pi}3$ なので、
$$
a_n=\frac{2}{\sqrt3}\sin\frac{n\pi}3
$$
である。$n=1$ で $\frac2{\sqrt3}\cdot\frac{\sqrt3}2=1$、$n=4$ で $\frac2{\sqrt3}\cdot\bigl(-\frac{\sqrt3}2\bigr)=-1$ となり、上の値と一致する。
図1:前の例の数列(赤い点)は正弦曲線の上に並び、6 項ごとに同じ値に戻る
図 1 の赤い点が $a_n$、青い曲線が $y=\frac2{\sqrt3}\sin\frac{\pi x}3$ である。周期 6 は、解 $\alpha$ の性質からも分かる。
$\alpha$ は特性方程式の解なので $\alpha^2=\alpha-1$ である。両辺に $\alpha$ を掛けて、もう一度 $\alpha^2=\alpha-1$ を使うと
$$
\alpha^3=\alpha^2-\alpha=(\alpha-1)-\alpha=-1
$$
となる。よって $\alpha^6=(\alpha^3)^2=1$ である。$\beta$ も同じ方程式の解なので $\beta^6=1$ である。したがって $\alpha^{n+6}=\alpha^n$、$\beta^{n+6}=\beta^n$ であり、ex-cer-period-six の式から $a_{n+6}=a_n$ が従う。
特性方程式が重解 $\alpha$ をもつと、lem-cer-rewrite の 2 つの式は同じ式になり、thm-cer-distinct の証明の段 3 で $\alpha-\beta=0$ で割ることになってしまう。そこで別の工夫をする。
特性方程式 $t^2=pt+q$($q\ne0$)が重解 $\alpha$ をもつとする($p^2+4q=0$、$\alpha=\frac p2$)。このとき $\alpha\ne0$ であり、漸化式 $a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_n$ の解 $(a_n)$ は、すべての $n\ge0$ で
$$
a_n=\Bigl(a_0+n\cdot\frac{a_1-\alpha a_0}{\alpha}\Bigr)\alpha^n
$$
を満たす。特に、解は定数 $A,B$ を用いて $a_n=(A+Bn)\alpha^n$ と書ける。逆に、どんな定数 $A,B$ についても $(A+Bn)\alpha^n$ は解である。
方針:lem-cer-rewrite の等比数列を $\alpha^{n+1}$ で割り、等差数列を作る。
段 1(準備):重解なので $t^2-pt-q=(t-\alpha)^2=t^2-2\alpha t+\alpha^2$ であり、係数を比べて $p=2\alpha$、$q=-\alpha^2$ である。$q\ne0$ なので $\alpha\ne0$ である。
段 2:lem-cer-rewrite で $\beta=\alpha$ とすると $a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\alpha\,(a_{n+1}-\alpha a_n)$ である。よって $a_{n+1}-\alpha a_n$ は初項 $a_1-\alpha a_0$、公比 $\alpha$ の等比数列で、
$$
a_{n+1}-\alpha a_n=\alpha^n(a_1-\alpha a_0)
$$
である。
段 3:段 2 の式の両辺を $\alpha^{n+1}$($\ne0$)で割ると
$$
\frac{a_{n+1}}{\alpha^{n+1}}-\frac{a_n}{\alpha^n}=\frac{a_1-\alpha a_0}{\alpha}
$$
となる。右辺を $B$ とおく。$B$ は $n$ によらない定数である。
段 4:$d_n:=\dfrac{a_n}{\alpha^n}$ とおくと、段 3 は $d_{n+1}-d_n=B$ を意味する。よって $(d_n)$ は初項 $d_0=a_0$、公差 $B$ の等差数列で、$d_n=a_0+nB$ である。両辺に $\alpha^n$ を掛けて主張の式を得る。$A:=a_0$ とおけば $a_n=(A+Bn)\alpha^n$ である。
段 5(逆):$\alpha^n$ は prop-cer-geometric により解である。$x_n:=n\alpha^n$ も解であることを、段 1 の $p=2\alpha$、$q=-\alpha^2$ を使って確かめる。
$$
\begin{aligned}
px_{n+1}+qx_n&=2\alpha\cdot(n+1)\alpha^{n+1}-\alpha^2\cdot n\alpha^n\\
&=(2n+2)\alpha^{n+2}-n\alpha^{n+2}\\
&=(n+2)\alpha^{n+2}=x_{n+2}.
\end{aligned}
$$
prop-cer-superposition により $A\alpha^n+Bn\alpha^n=(A+Bn)\alpha^n$ も解である。$\square$
$a_0=1$、$a_1=4$、$a_{n+2}=4a_{n+1}-4a_n$ とする。特性方程式 $(t-2)^2=0$ の重解は $\alpha=2$ で、
$$
B=\frac{a_1-\alpha a_0}{\alpha}=\frac{4-2}{2}=1
$$
なので $a_n=(1+n)\,2^n$ である。順に計算した値 $a_2=4\cdot4-4\cdot1=12$、$a_3=4\cdot12-4\cdot4=32$、$a_4=4\cdot32-4\cdot12=80$ は、式の値 $3\cdot4=12$、$4\cdot8=32$、$5\cdot16=80$ と一致する。証明の段 4 の $d_n=a_n/2^n$ は $1,2,3,4,5,\dots$ である(図 2)。
図2:重解 2 の例で a を 2 の冪で割った値は、公差 1 の等差数列になり直線上に並ぶ
図 2 の各点の横の分数は $a_n/2^n$ の値である。$a_n$ そのものは $2^n$ より速く増えるが、$2^n$ で割ると 1 次式 $n+1$ になる。これが一般項に $n$ が掛かる理由である。
$a_0=1$、$a_1=1$、$a_{n+2}=-2a_{n+1}-a_n$ とする。特性方程式 $t^2+2t+1=(t+1)^2=0$ の重解は $\alpha=-1$ で、
$$
B=\frac{a_1-\alpha a_0}{\alpha}=\frac{1+1}{-1}=-2
$$
なので $a_n=(1-2n)(-1)^n$ である。順に計算すると $a_2=-2\cdot1-1=-3$、$a_3=-2\cdot(-3)-1=5$、$a_4=-2\cdot5-(-3)=-7$ で、式の値 $(1-4)\cdot1=-3$、$(1-6)\cdot(-1)=5$、$(1-8)\cdot1=-7$ と一致する。
定理の仮定を 1 つ外すと、どの結論が崩れるかをまとめる。
| 外した仮定 | 崩れる結論 | ボックス |
|---|---|---|
| 特性方程式が異なる 2 解をもつ | 解が $A\alpha^n+B\beta^n$ と書ける | ex-cer-double-counter |
| 係数 $p,q$ が定数 | 等比数列の解がある | ex-cer-nonconstant |
| $q\ne0$ | 重解のとき解が $(A+Bn)\alpha^n$ と書ける | ex-cer-q-zero |
$a_0=1$、$a_1=4$、$a_{n+2}=4a_{n+1}-4a_n$ は、thm-cer-distinct の仮定のうち「特性方程式が異なる 2 解をもつ」だけを満たさない(重解 $2$)。このとき「解は特性方程式の解の冪の 1 次結合で書ける」という結論が破れる。使える冪は $2^n$ だけなので $a_n=A\cdot2^n$ としてみると、$a_0=1$ から $A=1$ となり、すると $a_1=2\ne4$ である。正しい一般項は ex-cer-double-1 の $(n+1)2^n$ で、欠けていたのは $n2^n$ の項である。
$a_0=a_1=1$、$a_{n+2}=a_{n+1}+(n+1)a_n$ は 3 つの項の間の 1 次の関係だが、「係数が定数」という仮定を満たさない。値は $1,1,2,4,10,26,76,232,\dots$ である($a_2=1+1\cdot1=2$、$a_3=2+2\cdot1=4$、$a_4=4+3\cdot2=10$)。
この漸化式を満たす等比数列 $a_n=cr^n$($c\ne0$)は存在しない。$r=0$ なら $a_1=a_2=0$ のはずだが、漸化式から $a_2=a_1+1\cdot a_0=c\ne0$ となり矛盾する。$r\ne0$ なら、漸化式を $cr^n$ で割ると $r^2=r+(n+1)$ がすべての $n$ で成り立つことになるが、$n=0$ では $r^2=r+1$、$n=1$ では $r^2=r+2$ で、両立しない。係数が変わると「特性方程式」が $n$ ごとに変わってしまい、1 つに決まらない。
$p=q=0$、すなわち $a_{n+2}=0$ とし、$a_0=5$、$a_1=7$ とする。数列は $5,7,0,0,0,\dots$ である。特性方程式 $t^2=0$ は重解 $0$ をもつが、$(A+Bn)\cdot0^n$($0^0=1$ とする)は $n\ge1$ で $0$ なので、$a_1=7$ にならない。thm-cer-double の証明の段 3 で $\alpha^{n+1}$ で割る所が、$\alpha=0$ では使えない。$q\ne0$ の仮定はここで効いている。
漸化式そのものは 2 乗を含む(線形でない)が、答えの指数に、この記事で扱った一般項が現れる問題である。
数列 $\{u_n\}$ を $u_0=2$、$u_1=\frac52$、$u_{n+1}=u_n(u_{n-1}^2-2)-u_1$($n=1,2,\dots$)で定める。正の整数 $n$ について
$$
[u_n]=2^{\frac{2^n-(-1)^n}3}
$$
を示せ。ここで $[x]$ は $x$ 以下の最大の整数を表す。
出典:国際数学オリンピック(1976 年)第 6 問(Oly76)。和訳は本記事による。
$u_2=u_1(u_0^2-2)-u_1=\frac52\cdot2-\frac52=\frac52$、$u_3=u_2(u_1^2-2)-u_1=\frac52\cdot\frac{17}4-\frac52=\frac{85}8-\frac{20}8=\frac{65}8=8.125$ である。一方、指数 $\frac{2^n-(-1)^n}3$ は $n=1,2,3$ で $\frac{2+1}3=1$、$\frac{4-1}3=1$、$\frac{8+1}3=3$ なので、右辺は $2,2,8$ である。左辺 $[u_1]=[2.5]=2$、$[u_2]=2$、$[u_3]=8$ と一致する。さらに $u_3=8+\frac18=2^3+2^{-3}$ となっていることに注目する。
方針:$u_n=2^{a_n}+2^{-a_n}$ の形であることを帰納法で示す。指数 $a_n$ が三項間漸化式を満たすことが鍵になる。
段 1(指数の数列):$a_n:=\frac{2^n-(-1)^n}3$ とおく。$a_n$ は、漸化式 $a_{n+1}=a_n+2a_{n-1}$($n\ge1$)、$a_0=0$、$a_1=1$ の解である。この漸化式は、添字を 1 つずらして $a_{n+2}=a_{n+1}+2a_n$($n\ge0$)と書けば、def-cer-recurrence で $p=1$、$q=2$ としたものと同じである。特性方程式 $t^2=t+2$ の解は $2,-1$ で、thm-cer-distinct の式に $\alpha=2$、$\beta=-1$、$a_0=0$、$a_1=1$ を入れると $\frac{2^n-(-1)^n}{3}$ になる。
次の 2 つを確かめておく(段 4 で使う)。
$(x+x^{-1})(y+y^{-1})=xy+(xy)^{-1}+xy^{-1}+(xy^{-1})^{-1}$ なので、$x+x^{-1}$ の形の数の掛け算は、指数の和と差になる。これで 2 乗を含む漸化式が、指数についての線形な漸化式 $a_{n+1}=a_n+2a_{n-1}$ に帰着した。証明の鍵の $a_n-2a_{n-1}=(-1)^{n+1}$ は、lem-cer-rewrite の等比数列 $a_{n+1}-\beta a_n$(ここでは $\beta=2$、公比 $\alpha=-1$)そのものである。大きく育つ $2^n$ の成分が消え、絶対値が一定の $(-1)^n$ の成分だけが残るので、余分な項は毎回同じ $u_1$ になる。行列の言葉では、この操作は固有値 $-1$ の成分を取り出すことにあたる(漸化式の行列表示)。
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