射影定理(Hilbert空間)(Hilbert projection theorem)とは、Hilbert 空間 $H$ の空でない閉凸集合 $C$ と $x\in H$ に対して、$C$ の中に $x$ に最も近い点 $P_Cx$ がただ 1 つ存在し、それがすべての $y\in C$ についての不等式 $\operatorname{Re}\langle x-P_Cx,y-P_Cx\rangle\le0$ で特徴づけられるという定理である。$C$ が閉部分空間 $U$ なら、$x-P_Ux$ が $U$ と直交することが特徴づけになり、直交分解 $H=U\oplus U^\perp$ が得られる。射影 $P_C$ は距離を縮める。空間の完備性、集合の閉性と凸性、ノルムが内積から来ることのどれを外しても、最も近い点の存在か一意性が成り立たなくなる。
射影定理(Hilbert projection theorem)は、Hilbert空間 $H$ の空でない閉じた凸集合 $C$ と点 $x\in H$ に対して、$C$ の中に $x$ に最も近い点 $P_Cx$ がただ 1 つ存在し、その点が不等式
$$
\operatorname{Re}\langle x-P_Cx,\,y-P_Cx\rangle\le0\qquad(y\in C)
$$
で特徴づけられることを述べる定理である。$C$ が閉部分空間 $U$ なら、不等式は $x-P_Ux$ が $U$ と直交するという等式になり、$H=U\oplus U^\perp$ という直交分解が得られる。
平面で点から直線に垂線を下ろすと、垂線の足が最も近い点になる。射影定理はこれを無限次元に広げたものであり、Riesz の表現定理、Lax–Milgram の定理、条件付き期待値、最小 2 乗法など、Hilbert 空間を使う多くの議論の出発点になる。最も近い点がとれることには空間の完備性・集合の閉性と凸性・ノルムが内積から来ることがそれぞれ効いており、どれを外しても成り立たない。この記事では定理と変分不等式による特徴づけを証明し、射影の非拡大性、距離関数の微分、具体的な集合への射影の公式を調べる。
三角形の辺を他の 2 辺の正射影の和で表す 三角形の射影定理、半代数的集合の像についての 半代数的集合の射影定理 は別の結果である。
以下、$H$ は $\mathbb K=\mathbb R$ または $\mathbb C$ 上の Hilbert 空間で、内積 $\langle\cdot,\cdot\rangle$ は第 1 変数について線形、$\|x\|=\langle x,x\rangle^{1/2}$ とする。部分集合 $C\subset H$ について $d_C(x):=\inf_{y\in C}\|x-y\|$ と書く。展開の式
$$
\|u+v\|^2=\|u\|^2+2\operatorname{Re}\langle u,v\rangle+\|v\|^2
$$
と平行四辺形の等式 $\|u+v\|^2+\|u-v\|^2=2\|u\|^2+2\|v\|^2$ を断らずに使う。
$C\subset H$ を空でない閉凸集合とし、$x\in H$ とする。
1:$\delta:=d_C(x)$ とおく。$y,z\in C$ について、平行四辺形の等式を $x-y$ と $x-z$ に使うと
$$
\|y-z\|^2=2\|x-y\|^2+2\|x-z\|^2-4\Bigl\|x-\frac{y+z}2\Bigr\|^2\le2\|x-y\|^2+2\|x-z\|^2-4\delta^2
$$
である。最後の不等号は、$C$ が凸なので $\frac{y+z}2\in C$ であることによる。$\|x-y_n\|\to\delta$ となる $y_n\in C$ をとると、この不等式から $\|y_n-y_m\|^2\to0$($n,m\to\infty$)なので $(y_n)$ は Cauchy 列であり、$H$ の完備性から極限 $p$ をもつ。$C$ は閉なので $p\in C$ で、$\|x-p\|=\lim_n\|x-y_n\|=\delta$ である。$p,q\in C$ がともに距離 $\delta$ を実現すれば、同じ不等式から $\|p-q\|^2\le4\delta^2-4\delta^2=0$ である。
2:$y\in C$、$0< t\le1$ とすると、凸性から $p+t(y-p)\in C$ であり、
$$
\|x-p-t(y-p)\|^2=\|x-p\|^2-2t\operatorname{Re}\langle x-p,y-p\rangle+t^2\|y-p\|^2 .
$$
$\|x-p\|=\delta$ なら左辺は $\|x-p\|^2$ 以上なので、$2\operatorname{Re}\langle x-p,y-p\rangle\le t\|y-p\|^2$ であり、$t\downarrow0$ として不等式を得る。逆に不等式が成り立てば、$t=1$ の式から $\|x-y\|^2\ge\|x-p\|^2+\|y-p\|^2\ge\|x-p\|^2$ がすべての $y\in C$ で成り立ち、$\|x-p\|=\delta$ である。$\square$
1 の点 $p$ を $P_Cx$ と書き、$P_C\colon H\to C$ を $C$ への射影(最近点写像、距離射影)という。$x\in C$ なら $P_Cx=x$ なので $P_C\circ P_C=P_C$ である。2 は、$x$ から $P_Cx$ へ戻るベクトル $x-P_Cx$ と、$P_Cx$ から $C$ の点へ向かうベクトル $y-P_Cx$ のなす角が直角以上であることを表す。このような不等式を変分不等式という。
2 の後半の証明から、$\|x-y\|^2\ge d_C(x)^2+\|y-P_Cx\|^2$($y\in C$)が分かる。とくに、$\|x-y_n\|\to d_C(x)$ となる $C$ の点列は $P_Cx$ に収束する。最小化する列が勝手に収束することは、Hilbert 空間の最適化の議論でよく使われる。
この定理と証明は Axl26 8.28(p. 226)、変分不等式による特徴づけは Bre11 Theorem 5.2(p. 132)にある。
閉部分空間 $U$ は閉凸集合なので、射影 $P_U$ が定まる。$y$ が $U$ を動くとき $y-p$ も $U$ 全体を動くので、変分不等式は直交性に変わる。
$U\subset H$ を閉部分空間とする。
1:$p\in U$ とする。$u\in U$ と $c\in\mathbb K$ について $y=p+cu\in U$ なので、変分不等式は $\operatorname{Re}\bigl(\overline c\langle x-p,u\rangle\bigr)\le0$ がすべての $c$ で成り立つことと同じであり、$c=\langle x-p,u\rangle$ ととれば $\langle x-p,u\rangle=0$ と同値である。
2:$x-P_Ux$ と $y-P_Uy$ は $U^\perp$ に属するので、$a,b\in\mathbb K$ について $(ax+by)-(aP_Ux+bP_Uy)\in U^\perp$ であり、1 から $P_U(ax+by)=aP_Ux+bP_Uy$ である。$\langle P_Ux,y\rangle=\langle P_Ux,P_Uy\rangle+\langle P_Ux,y-P_Uy\rangle=\langle P_Ux,P_Uy\rangle$ で、同様に $\langle x,P_Uy\rangle=\langle P_Ux,P_Uy\rangle$ である。$\|x\|^2=\|P_Ux\|^2+\|x-P_Ux\|^2$ から $\|P_Ux\|\le\|x\|$ を得る。
3:分解の存在は 1 による。$u+v=u'+v'$($u,u'\in U$、$v,v'\in U^\perp$)なら $u-u'=v'-v\in U\cap U^\perp=\{0\}$ である。$x-(x-P_Ux)=P_Ux\in U\subset(U^\perp)^\perp$ なので、1 を閉部分空間 $U^\perp$ に当てて $P_{U^\perp}x=x-P_Ux$ を得る。
4:$d_U(x)^2=\|x-P_Ux\|^2=\|x\|^2-\|P_Ux\|^2$ である。
5:$\overline M$ は閉部分空間で、内積の連続性から $M^\perp=\overline M^{\,\perp}$ である。$x\in(M^\perp)^\perp$ とし、$U:=\overline M$ とおく。$x-P_Ux\in U^\perp=M^\perp$ であり、$x$ と $P_Ux$ はどちらも $M^\perp$ と直交するので $x-P_Ux$ も $M^\perp$ と直交する。自分自身と直交するので $x-P_Ux=0$、$x\in\overline M$ である。逆の包含は内積の連続性から明らかである。後半は $\{0\}^\perp=H$ による。$\square$
1 と 2 の線形性は Axl26 8.37(p. 228)と Bre11 Corollary 5.4(p. 134)、3 は Axl26 8.43(p. 231)、5 は Axl26 8.41・8.42(p. 230)にある。2 の 3 つの性質(線形・冪等・自己共役)で $P_U$ は特徴づけられ、そのような作用素の性質は 直交射影 の記事が詳しく扱う。
$U$ が有限次元なら、正規直交基底 $e_1,\dots,e_m$ によって $P_Ux=\sum_{k=1}^m\langle x,e_k\rangle e_k$ である(右辺を $p$ とおくと $\langle x-p,e_j\rangle=0$ なので 1 による)。このときは $H$ が完備でなくても、有限次元の $U$ が完備なので結論が成り立つ(内積空間 の記事の定理「直交分解と最良近似」)。
閉部分空間への射影は線形でノルム $1$ 以下だった。一般の閉凸集合への射影は線形でないが、距離を縮めない。
$C\subset H$ を空でない閉凸集合、$P=P_C$ とする。すべての $x,y\in H$ について
1:thm-hpt-main の 2 を、点 $x$ と $Py\in C$、点 $y$ と $Px\in C$ に当てると $\operatorname{Re}\langle x-Px,Py-Px\rangle\le0$、$\operatorname{Re}\langle y-Py,Px-Py\rangle\le0$ である。2 式を足すと $\operatorname{Re}\langle(x-y)-(Px-Py),Py-Px\rangle\le0$、すなわち $\|Px-Py\|^2\le\operatorname{Re}\langle x-y,Px-Py\rangle$ である。
2:$a:=Px-Py$、$b:=(x-y)-a$ とおくと、$\|x-y\|^2=\|a\|^2+\|b\|^2+2\operatorname{Re}\langle a,b\rangle$ で、1 から $\operatorname{Re}\langle a,b\rangle=\operatorname{Re}\langle a,x-y\rangle-\|a\|^2\ge0$ である。最後の主張は 1 と Cauchy–Schwarz の不等式による。$\square$
1 の形の不等式を満たす写像を強非拡大(firmly nonexpansive)という。$\|Px-Py\|\le\|x-y\|$ は Bre11 Proposition 5.3(p. 134)にある。この性質は、射影と縮小写像を組み合わせて Stampacchiaの定理 を証明するとき(同書 Theorem 5.6、p. 138)や、射影を繰り返す反復法の収束を調べるときに使われる。
距離関数 $d_C$ は一般の集合でも $|d_C(x)-d_C(y)|\le\|x-y\|$ を満たすが、閉凸集合では 2 乗が滑らかになる。
$C\subset H$ を空でない閉凸集合とする。すべての $x,h\in H$ について
$$
\bigl|d_C(x+h)^2-d_C(x)^2-2\operatorname{Re}\langle x-P_Cx,h\rangle\bigr|\le\|h\|^2
$$
である。すなわち $d_C^2$ は($H$ を実 Hilbert 空間 $(H,\operatorname{Re}\langle\cdot,\cdot\rangle)$ とみて)Fréchet 微分可能で、勾配は $2(x-P_Cx)$ である。
$P=P_C$ とする。$Px\in C$ なので $d_C(x+h)^2\le\|x+h-Px\|^2=d_C(x)^2+2\operatorname{Re}\langle x-Px,h\rangle+\|h\|^2$ である。逆に $P(x+h)\in C$ なので
$$
d_C(x)^2\le\|x-P(x+h)\|^2=d_C(x+h)^2-2\operatorname{Re}\langle x+h-P(x+h),h\rangle+\|h\|^2
$$
である。$\Delta:=P(x+h)-Px$ とおくと $\operatorname{Re}\langle x+h-P(x+h),h\rangle=\operatorname{Re}\langle x-Px,h\rangle+\|h\|^2-\operatorname{Re}\langle\Delta,h\rangle$ で、prop-hpt-firm から $\|\Delta\|\le\|h\|$ なので $\operatorname{Re}\langle\Delta,h\rangle\le\|h\|^2$ である。したがって $d_C(x+h)^2-d_C(x)^2\ge2\operatorname{Re}\langle x-Px,h\rangle-\|h\|^2$ であり、2 つの評価を合わせて結論を得る。$\square$
$C=\{0\}$ なら $d_C(x)^2=\|x\|^2$ で勾配は $2x$ である。凸でない集合では $d_C^2$ が微分できない点がある。$\mathbb R$ の 2 点集合 $C=\{-1,1\}$ では、$d_C(x)^2=(|x|-1)^2$ は $x=0$ で左右の微分係数が $2$ と $-2$ になり、ちょうど最も近い点が 2 つある点で微分できない。
$C=\{y\in H\mid\|y\|\le1\}$ なら、$\|x\|\le1$ のとき $P_Cx=x$、$\|x\|>1$ のとき $P_Cx=x/\|x\|$ である(Axl26 8.35、p. 227)。実際、$\|x\|>1$、$p=x/\|x\|$ とすると $x-p=(\|x\|-1)p$ で、$\|y\|\le1$ なら $\operatorname{Re}\langle x-p,y-p\rangle=(\|x\|-1)\bigl(\operatorname{Re}\langle y,p\rangle-1\bigr)\le(\|x\|-1)(\|y\|-1)\le0$ である。$d_C(x)=\max(\|x\|-1,0)$ となる。
$a\in H$、$a\ne0$、$\beta\in\mathbb R$ とし、$C=\{y\mid\operatorname{Re}\langle y,a\rangle\le\beta\}$ とする。$C$ は閉凸集合で、
$$
P_Cx=x-\frac{\max(\operatorname{Re}\langle x,a\rangle-\beta,\,0)}{\|a\|^2}\,a,\qquad d_C(x)=\frac{\max(\operatorname{Re}\langle x,a\rangle-\beta,\,0)}{\|a\|}
$$
である。$x\notin C$ のとき $c:=(\operatorname{Re}\langle x,a\rangle-\beta)/\|a\|^2>0$、$p:=x-ca$ とおくと $\operatorname{Re}\langle p,a\rangle=\beta$ なので $p\in C$ であり、$y\in C$ について $\operatorname{Re}\langle x-p,y-p\rangle=c\bigl(\operatorname{Re}\langle y,a\rangle-\beta\bigr)\le0$ である。$\mathbb K=\mathbb R$ で $\le$ を $=$ に替えた閉超平面 $\{\langle y,a\rangle=\beta\}$ では、$\max(\cdot,0)$ を外した式が射影になる。
$(X,\mu)$ を測度空間とし、実数値の $L^2(\mu)$ で $C=\{g\mid\text{ほとんどいたるところ }g\ge0\}$ とする。$C$ は閉凸集合($L^2$ で収束する列はほとんどいたるところ収束する部分列をもつ)で、$f^+:=\max(f,0)$、$f^-:=\max(-f,0)$ とおくと
$$
P_Cf=f^+,\qquad d_C(f)=\|f^-\|
$$
である。実際 $f-f^+=-f^-$ と $f^-f^+=0$ から、$g\in C$ について $\langle f-f^+,g-f^+\rangle=-\int f^-g\,d\mu\le0$ である。
実数値の $L^2([0,1])$ で、$x(t)=t^2$ の部分空間 $U=\{a+bt\}$ への射影を求める。cor-hpt-subspace の 1 により、$p=a+bt$ は $\langle t^2-p,1\rangle=0$、$\langle t^2-p,t\rangle=0$、すなわち
$$
\frac13-a-\frac b2=0,\qquad\frac14-\frac a2-\frac b3=0
$$
で決まり、$b=1$、$a=-\frac16$ である。よって $P_Ux=t-\frac16$ で、cor-hpt-subspace の 4 から $d_U(x)^2=\frac15-\int_0^1\bigl(t-\frac16\bigr)^2dt=\frac15-\frac7{36}=\frac1{180}$ となる。$\int_0^1(t^2-a-bt)^2dt$ を最小にする $a,b$ を求める最小二乗法の問題であり、2 つの式は正規方程式である。
確率空間 $(\Omega,\mathcal F,P)$ の上で、2 乗可積分な確率変数の空間 $L^2(\mathcal F)$ から、部分 σ-加法族 $\mathcal G$ について可測なものの閉部分空間 $L^2(\mathcal G)$ への射影が、条件付き期待値 $E[X\mid\mathcal G]$ である。$\mathcal G$ が確率正の有限個の事象 $A_1,\dots,A_m$ への分割で生成されるときは、$L^2(\mathcal G)$ は直交する $\mathbf 1_{A_i}$ で張られ、射影は $\sum_iE[X\mathbf 1_{A_i}]P(A_i)^{-1}\mathbf 1_{A_i}$、すなわち各事象の上での平均である。
射影定理の最も基本的な応用は、有界線形汎関数の表現である。$\varphi\colon H\to\mathbb K$ を $0$ でない有界線形汎関数とする。$U:=\ker\varphi$ は $H$ と異なる閉部分空間なので、cor-hpt-subspace の 3 により $U^\perp\ne\{0\}$ であり、$0$ でない $z\in U^\perp$ がとれる。$x\in H$ について $\varphi(x)z-\varphi(z)x\in U$ なので $\langle\varphi(x)z-\varphi(z)x,z\rangle=0$、すなわち
$$
\varphi(x)=\Bigl\langle x,\ \frac{\overline{\varphi(z)}}{\|z\|^2}z\Bigr\rangle
$$
である。こうして $\varphi$ はある元との内積で表される(Rieszの表現定理、Axl26 8.47、p. 233)。同じ考え方で、Lax–Milgramの定理 と Stampacchiaの定理 は、射影と Banachの不動点定理 を組み合わせて証明される(Bre11 Theorem 5.6・Corollary 5.8、pp. 138–140)。
thm-hpt-main の条件を 1 つずつ外すと、最も近い点が存在しないか、ただ 1 つでなくなる。各行は左の列の条件だけを破っている。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 空間の完備性 | $\ell^2$ の内積を入れた $c_{00}$、$U=\{x\mid\sum_nx_n/n=0\}$、点 $e_1$ | 最も近い点の存在 |
| 集合が閉 | $\mathbb R^2$ の中心 $0$、半径 $1$ の開円板、点 $(2,0)$ | 最も近い点の存在 |
| 集合が凸 | $\mathbb R^2$ の中心 $0$、半径 $1$ の円周、点 $0$ | 最も近い点の一意性 |
| 集合が凸 | $\ell^2$ の集合 $\{(1+\frac1n)e_n\mid n\ge1\}$、点 $0$ | 最も近い点の存在 |
| ノルムが内積から来る | 上限ノルムの $C([0,1])$、$U=\{g\mid\int_0^1g=0,\ g(1)=0\}$、点 $1-t$ | 最も近い点の存在 |
| ノルムが内積から来る | 最大値ノルム $\max(\lvert y_1\rvert,\lvert y_2\rvert)$ の $\mathbb R^2$、$C=\{(t,0)\}$、点 $(0,1)$ | 最も近い点の一意性 |
1 行目では $e_1$ に最も近い点が $\ell^2$ の中にしかない。2 行目では距離 $1$ に近い点はあるが、境界の点 $(1,0)$ が集合に入っていない。3 行目では円周上のすべての点が最も近い。4 行目では距離 $1$ に近づく点はあるが、どの点も距離が $1$ より大きい。5 行目は Axl26 Example 8.27(p. 225)である。6 行目では $-1\le t\le1$ のすべての $(t,0)$ が距離 $1$ を実現する。
1 行目:$c_{00}$ は有限個以外の項が $0$ の数列の空間で、完備でない(Hilbert空間 の例「反例:完備でない内積空間 $c_{00}$」)。$u:=(1,\frac12,\frac13,\dots)\in\ell^2$ とおくと $U=c_{00}\cap u^\perp$ で、$\langle\cdot,u\rangle$ は連続なので $U$ は $c_{00}$ の閉部分空間であり、凸である。$W:=u^\perp\subset\ell^2$ とする。$y\in W$ について $y^{(m)}:=(y_1,\dots,y_m,0,\dots)$、$\varepsilon_m:=\langle y^{(m)},u\rangle$ とおくと $\varepsilon_m\to\langle y,u\rangle=0$ で、$y^{(m)}-\varepsilon_me_1\in U$ は $y$ に収束する。よって $U$ は $W$ で稠密であり、$d_U(e_1)=d_W(e_1)$ である。cor-hpt-subspace の 3 を $\ell^2$ と $\operatorname{span}\{u\}$ に当てると、$W$ の中で $e_1$ に最も近い点は $q:=e_1-u/\|u\|^2$ だけであり、$q$ の第 $n$ 項($n\ge2$)は $0$ でないので $q\notin c_{00}$ である。$p\in U$ が $\|e_1-p\|=d_U(e_1)$ を満たせば、$p\in W$ は $W$ の中でも距離を実現するので $p=q$ となり、矛盾する。
2 行目:$\|(2,0)-y\|\ge2-\|y\|>1$ で、$y=(1-\frac1n,0)$ とすれば距離は $1+\frac1n\to1$ である。
3 行目:円周上のすべての $y$ で $\|0-y\|=1$ である。
4 行目:点どうしの距離は $\sqrt2$ より大きいので、収束する点列は途中から一定であり、集合は閉である。$\|(1+\frac1n)e_n\|=1+\frac1n>1$ で下限は $1$ である。
5 行目:$g\in U$ なら $\int_0^1(f-g)=\frac12$、$(f-g)(1)=0$($f(t)=1-t$)である。$\|f-g\|\le\frac12$ なら $\frac12-(f-g)\ge0$ は連続で積分が $0$ なので恒等的に $0$ となり、$(f-g)(1)=0$ に反する。よって $\|f-g\|>\frac12$ である。$g_k(t):=\frac12-t+\frac{t^k}2+\frac{t-1}{k+1}$ は $\int_0^1g_k=0$、$g_k(1)=0$ を満たし、$f-g_k=\frac12-\frac{t^k}2+\frac{1-t}{k+1}$ は $0$ 以上 $\frac12+\frac1{k+1}$ 以下なので、$d_U(f)=\frac12$ だが実現されない。
6 行目:$\|(0,1)-(t,0)\|=\max(|t|,1)\ge1$ で、等号は $|t|\le1$ のときである。
ノルムが内積から来ない Banach 空間でも、一様凸Banach空間 なら閉凸集合への最も近い点はただ 1 つ存在する(同記事の命題「閉凸集合への最近点の一意存在」、Bre11 Remark 2、p. 134)。ただし、部分空間への最近点写像が線形になるとは限らない。次元 $3$ 以上の実ノルム空間では、すべての 2 次元部分空間にノルム $1$ の線形な射影があることは、ノルムが内積から来ることと同値である(角谷の定理(内積空間))。
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