閉集合

同義語:closed set

概要

閉集合(closed set)とは、位相空間の部分集合で、その補集合が開集合となるものである。距離空間では、集合内の点列が周囲の空間内で収束するとき、その極限をすべて含むことと同値である。一般の位相空間では点列の条件だけでは閉性を判定できない。閉集合は任意の共通部分と有限の和集合に保たれ、閉包や連続写像を扱う基礎となる。

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前提知識: 開集合, 位相空間

定義

位相空間 $(X,\mathcal O)$ では、$\emptyset$ と $X$ を含み、任意の和集合と有限の共通部分に閉じた部分集合族 $\mathcal O$ を指定する。その元が $X$ の開集合である。

閉集合

位相空間 $X$ の部分集合 $F$ が閉集合(closed set)であるとは、補集合 $X\setminus F$ が $X$ の開集合であることをいう。

閉であるかどうかは、集合だけでなく周囲の空間とその位相にも依存する。「開でない」と「閉である」は同じ意味ではない。定義と基本性質は CapriottiTopology19 §3.3 に対応する。

直感と例

実数直線の通常の位相では、閉区間は端点を含む。しかし「端を含む」という図形的な印象だけで一般の閉集合を定義することはできない。距離空間では、後述のように、その集合内の点列が空間内で収束したときの極限をすべて含むことと閉性が同値になる。

実数直線の閉区間

$\mathbb R$ に通常の位相を入れる。実数 $a\le b$ に対し、$[a,b]$ は閉集合である。補集合が二つの開集合 $(-\infty,a)$ と $(b,\infty)$ の和だからである。$a=b$ の場合も含む。

距離空間の一点集合

距離空間 $(X,d)$ の点 $x$ に対し、$\{x\}$ は閉集合である。実際、$y\ne x$ なら開球 $B(y,d(x,y)/2)$ は $x$ を含まず、$X\setminus\{x\}$ は開集合になる。ここで $B(y,r)=\{z\in X:d(y,z)< r\}$($r>0$)である。

離散位相と密着位相

すべての部分集合を開とする離散位相では、補集合も開なので、すべての部分集合が閉でもある。これに対し、二点集合 $X=\{0,1\}$ に $\mathcal O=\{\emptyset,X\}$ だけを開とする密着位相を入れると、閉集合も $\emptyset,X$ だけである。したがって一般の位相空間では一点集合が閉とは限らない。

反例:「閉」と「開でない」は違う

$\mathbb R$ の $\emptyset$ と $\mathbb R$ は開かつ閉である。一方、$[0,1)$ は開でも閉でもない。$0$ のどんな開区間近傍も負の実数を含むため開ではなく、補集合に属する $1$ のどんな開区間近傍も $[0,1)$ と交わるため閉ではない。
また、$(0,1)$ は閉ではない。点列 $a_n=1/n$ を $n\ge2$ として取れば、すべての項が $(0,1)$ に属するが、極限 $0$ は属さない。これは後述の点列判定でも確認できる。

閉集合の基本性質

共通部分と有限和

任意の位相空間 $X$ について、$X$ と $\emptyset$ は閉集合である。任意の閉集合族の共通部分、および有限個の閉集合の和集合は閉集合である。空の族の共通部分は $X$、空の族の和集合は $\emptyset$ と約束する。CapriottiTopology19 命題3.3.2を参照。

ド・モルガンの法則による証明

$X$ と $\emptyset$ の補集合はそれぞれ $\emptyset$ と $X$ であり、どちらも開である。閉集合 $F_i$ に対して
$$X\setminus\bigcap_{i\in I}F_i=\bigcup_{i\in I}(X\setminus F_i)$$
は開集合の和なので開である。同様に、有限個の閉集合 $F_1,\ldots,F_m$ の和の補集合は $\bigcap_{j=1}^m(X\setminus F_j)$ であり、開集合の有限共通部分だから開である。

無限和には拡張できない

$\mathbb R$ の閉集合 $F_n=[1/n,1-1/n]$($n\ge3$)について、$\bigcup_{n\ge3}F_n=(0,1)$ であり、和は閉ではない。実際、$0< t<1$ なら $1/n<\min(t,1-t)$ となる $n\ge3$ を取れて $t\in F_n$ となり、逆の包含は各区間の端点から分かる。

閉包・集積点・境界による特徴づけ

部分集合 $A\subseteq X$ の閉包 $\overline A$ は、$A$ を含むすべての閉集合の共通部分である。この族は $X$ を含むため空ではなく、前節の性質により $\overline A$ は $A$ を含む最小の閉集合になる。したがって $A$ が閉であることと $A=\overline A$ は同値である。CapriottiTopology19 §3.4を参照。
点 $x$ を含む開集合を $x$ の開近傍という。$x\in\overline A$ は、$x$ のすべての開近傍が $A$ と交わることと同値である。実際、$x\notin\overline A$ なら $X\setminus\overline A$ が $A$ と交わらない開近傍となり、逆にそのような開近傍 $U$ があれば $X\setminus U$ は $A$ を含む閉集合なので $x\notin\overline A$ となる。

集積点と境界

$x$ のすべての開近傍が $A\setminus\{x\}$ と交わるとき、$x$ を $A$ の集積点と呼び、その全体を $A'$ と書く。また、すべての開近傍が $A$ と $X\setminus A$ の両方に交わる点の集合を境界 $\partial A$ と呼ぶ。任意の位相空間で
$$\overline A=A\cup A',\qquad \partial A=\overline A\cap\overline{X\setminus A}$$
が成り立ち、$A$ が閉であること、$A'\subseteq A$、$\partial A\subseteq A$ は同値である。集積点をこの開近傍の条件で定義することに注意する。McMullenTopology13 §3の境界の説明と定理3.5を参照。

二つの特徴づけの証明

$A$ の点は必ず $\overline A$ に属する。$x\notin A$ では $A\setminus\{x\}=A$ だから、閉包の開近傍判定は集積点の条件そのものである。よって $\overline A=A\cup A'$ となり、$A=\overline A$ と $A'\subseteq A$ が同値になる。
境界の等式も閉包の開近傍判定から従う。$A$ が閉なら $\partial A\subseteq\overline A=A$ である。逆に $\partial A\subseteq A$ とし、$x\in\overline A\setminus A$ があると仮定すると、$x\in X\setminus A\subseteq\overline{X\setminus A}$ なので $x\in\partial A$ となり矛盾する。

距離空間での点列判定とその限界

点列 $x_n$ が $x$ に収束するとは、$x$ の各開近傍 $U$ に対して、ある番号以降のすべての $x_n$ が $U$ に入ることをいう。距離空間では $d(x_n,x)\to0$ と同値である。

距離空間での閉性の判定

距離空間 $X$ の部分集合 $F$ が閉であることと、$F$ 内の任意の点列が $X$ 内で収束するならその極限も $F$ に属することは同値である。収束自体の存在を要求する条件ではない。CapriottiTopology19 命題4.1.4を参照。

点列判定の証明

$F$ が閉で、$x_n\in F$ が $x\in X$ に収束するとする。もし $x\notin F$ なら、開近傍 $X\setminus F$ に点列が最終的に入ることになり矛盾する。この方向は任意の位相空間で成立する。
逆に $F$ が閉でないなら、$x\in\overline F\setminus F$ を取れる。距離空間では各 $n\ge1$ について $B(x,1/n)\cap F\ne\emptyset$ なので、そこから $x_n$ を一つずつ選ぶと $d(x_n,x)<1/n$ となる。従って $x_n\to x\notin F$ であり、点列に関する条件が破れる。

一般の位相空間では逆向きが破れる

$\mathbb R$ 上で、空集合と「補集合が高々可算である集合」を開とする補可算位相を考える。閉集合は $\mathbb R$ 自身と高々可算な部分集合だけなので、$(0,1)$ は閉ではない。
一方、この位相で $x_n\to x$ なら、$C=\{x_n:x_n\ne x\}$ は高々可算で、$\mathbb R\setminus C$ は $x$ の開近傍である。したがってある番号以降は $x_n=x$ となる。そのため任意の部分集合は、その中の収束点列の極限をすべて含む。$(0,1)$ は点列の条件を満たすのに閉ではない例である。位相の構成と点列の性質について CapriottiTopology19 命題4.1.5を参照。

周囲の空間と連続写像

部分空間 $Y\subseteq X$ には、$Y\cap U$($U$ は $X$ の開集合)を開集合とする相対位相を入れる。$F\subseteq Y$ が $Y$ で閉であることは、ある $X$ の閉集合 $C$ により $F=Y\cap C$ と書けることと同値である。実際、$Y\setminus F=Y\cap U$ の両辺の $Y$ 内での補集合を取ればよい。例えば $(0,1)$ は自分自身を周囲の空間とすれば閉であるが、通常の $\mathbb R$ の部分集合としては閉ではない。McMullenTopology13 §3の部分空間位相を参照。
写像 $f:X\to Y$ が連続であるとは、$Y$ の任意の開集合の逆像が $X$ で開であることをいう。これは $Y$ の任意の閉集合の逆像が $X$ で閉であることと同値である。$f^{-1}(Y\setminus C)=X\setminus f^{-1}(C)$ と補集合の定義から両方向が従う。この判定は閉集合の像が閉になるという主張ではない。CapriottiTopology19 命題3.3.5を参照。例えば包含写像 $(0,1)\hookrightarrow\mathbb R$ は連続だが、定義域全体 $(0,1)$ はその空間で閉である一方、その像は通常の $\mathbb R$ では閉でない。

関連項目

参考文献

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