コホモロジー環(cohomology ring)とは、空間 $X$ の係数 $R$ のコホモロジー群の直和 $H^*(X;R)=\bigoplus_nH^n(X;R)$ にカップ積を積として入れた次数付き可換 $R$ 代数である。連続写像は環準同型を誘導し、ホモトピー同値な空間の環は同型なので、コホモロジー群が同じ空間を積で区別でき、写像の存在も制限される。たとえば $\mathbb{RP}^n$ の $\mathbb Z/2$ 係数の環が $\alpha^{n+1}=0$ で切れていることから、$m>n$ なら奇写像 $S^m\to S^n$ がないこと、さらに Borsuk–Ulam の定理が出る。Hopf 不変量はカップ積の平方で定まり、奇数次元では次数付き可換性により $0$ になる。
空間 $X$ の各次数のコホモロジー群 $H^n(X;R)$ を、カップ積で掛け合わせられるものとしてまとめたものが コホモロジー環(cohomology ring)$H^*(X;R)$ である。コホモロジー群だけを見ていると同じに見える空間が、積を見ると区別できる。連続写像は環準同型を誘導するので、「環準同型として存在できるか」という代数の問いが、写像の存在を制限する。たとえば実射影空間のコホモロジー環から、球面の間の奇写像の非存在、さらに Borsuk–Ulam の定理が出る。
カップ積の定義と、積が双線形・結合的・次数付き可換であることの証明は カップ積 にある。この記事では、コホモロジー環を代数的な対象として定義し、代表的な空間の環を表にまとめ、環の構造を使う議論を 3 つ完全に証明する。実射影空間の間の写像の制限(とその帰結としての Borsuk–Ulam の定理)、Hopf 不変量の奇数次元での消滅、$\mathbb{RP}^3$ と $\mathbb{RP}^2\vee S^3$ の区別である。代数幾何学の Chow環 は、部分多様体の交わりを積とするコホモロジー環の類似物である。
以下、$R$ は単位元をもつ可換環とし、$H^n(X;R)$ は $R$ 係数の特異コホモロジーを表す。
$R$ 加群の直和 $A=\bigoplus_{n\ge0}A^n$ に、結合的で単位元 $1\in A^0$ をもつ $R$ 双線形な積が入っていて、$A^kA^\ell\subset A^{k+\ell}$ をみたすとき、$A$ を次数付き $R$ 代数という。$A^n$ の元を次数 $n$ の斉次元といい、次数を $|a|$ と書く。さらに斉次元について
$$
ab=(-1)^{|a||b|}\,ba
$$
が成り立つとき、$A$ を次数付き可換(graded commutative)という。
次数付き可換性は「可換」とは違う。次数が奇数の元どうしは反可換であり、とくに $|a|$ が奇数なら $2a^2=0$ である。$R$ で $2$ が可逆なら $a^2=0$ となるが、$R=\mathbb Z/2$ では符号が意味をもたず、次数付き可換は可換と同じことになる。
位相空間 $X$ について、$R$ 加群の直和
$$
H^*(X;R):=\bigoplus_{n\ge0}H^n(X;R)
$$
にカップ積 $\smile$ を積として入れた次数付き $R$ 代数を、$X$ の $R$ 係数のコホモロジー環という。連続写像 $f\colon X\to Y$ は引き戻し $f^*\colon H^*(Y;R)\to H^*(X;R)$ を誘導する。
積の空間のコホモロジー環は、各因子の環から作れることが多い。射影を $p_1\colon X\times Y\to X$、$p_2\colon X\times Y\to Y$ とし、$a\in H^*(X;R)$、$b\in H^*(Y;R)$ についてクロス積を
$$
a\times b:=p_1^*a\smile p_2^*b\in H^*(X\times Y;R)
$$
で定める。次数付き代数のテンソル積 $A\otimes_RB$ には、斉次元について $(a\otimes b)(c\otimes d):=(-1)^{|b||c|}ac\otimes bd$ で積を入れる。
$X,Y$ を CW複体とし、すべての $k$ について $H^k(Y;R)$ が有限生成自由 $R$ 加群であるとする。このとき $a\otimes b\mapsto a\times b$ は次数付き $R$ 代数の同型
$$
H^*(X;R)\otimes_RH^*(Y;R)\xrightarrow{\ \cong\ }H^*(X\times Y;R)
$$
を与える(Hat02 Theorem 3.15, p. 216。この記事では証明しない。Künnethの公式 も参照)。
有限生成自由という仮定は外せない(ex-cr-counterexamples の 1)。
| 空間 | 係数 | コホモロジー環 | 所在 |
|---|---|---|---|
| 球面 $S^n$($n\ge1$) | $R$ | $R[u]/(u^2)$、$\lvert u\rvert=n$ | カップ積 の例「代表的なコホモロジー環」 |
| トーラス $T^n$ | $R$ | 外積代数 $\Lambda_R[\alpha_1,\dots,\alpha_n]$、$\lvert\alpha_i\rvert=1$ | Hat02 Example 3.16, p. 216 |
| 種数 $g$ の向き付け可能な閉曲面 $M_g$ | $\mathbb Z$ | $1$、$\alpha_i,\beta_i$(次数 $1$)、$\omega$(次数 $2$)を基底とし、$\alpha_i\beta_i=\omega=-\beta_i\alpha_i$、ほかの次数 $1$ どうしの積は $0$ | Hat02 Example 3.7, pp. 207–208 |
| 実射影空間 $\mathbb{RP}^n$ | $\mathbb Z/2$ | $(\mathbb Z/2)[\alpha]/(\alpha^{n+1})$、$\lvert\alpha\rvert=1$ | Hat02 Theorem 3.19, p. 220 |
| 複素射影空間 $\mathbb{CP}^n$ | $\mathbb Z$ | $\mathbb Z[\alpha]/(\alpha^{n+1})$、$\lvert\alpha\rvert=2$ | Hat02 Theorem 3.19, p. 220 |
| 四元数射影空間 $\mathbb{HP}^n$ | $\mathbb Z$ | $\mathbb Z[\alpha]/(\alpha^{n+1})$、$\lvert\alpha\rvert=4$ | Hat02 p. 222 |
| 八元数射影平面 $\mathbb{OP}^2$ | $\mathbb Z$ | $\mathbb Z[\alpha]/(\alpha^3)$、$\lvert\alpha\rvert=8$ | Hat02 §4.B, p. 427 |
| $S^k\times S^\ell$($k,\ell\ge1$) | $R$ | $1,a,b,ab$ を基底とし $a^2=b^2=0$、$\lvert a\rvert=k$、$\lvert b\rvert=\ell$ | thm-cr-kunneth と球面の行 |
$\mathbb{RP}^n$ の係数を $\mathbb Z/2$ にするのは、次数 $1$ の元 $\alpha$ の平方が $0$ でないためで、$\mathbb Z$ 係数の多項式環では次数付き可換性と両立しない。$n\ge3$ の $\mathbb{OP}^n$ は射影空間と同じ方法では作れず(Hat02 p. 379)、整数係数のコホモロジー環が $\mathbb Z[\alpha]/(\alpha^{n+1})$($\lvert\alpha\rvert=8$、$n\ge3$)となる空間も存在しない(同 p. 498)。表の最後の行で、$ab=(-1)^{k\ell}ba$ である。
コホモロジー環の構造は、写像の存在を制限する。$\mathbb{RP}^n$ の $\mathbb Z/2$ 係数のコホモロジー環は $\alpha^{n+1}=0$ で切れているので、$\alpha^{n+1}\neq0$ となる高い次元の射影空間から、次数 $1$ で $0$ でない写像は作れない。
$m>n\ge1$ とする。任意の連続写像 $g\colon\mathbb{RP}^m\to\mathbb{RP}^n$ について、$g^*\colon H^1(\mathbb{RP}^n;\mathbb Z/2)\to H^1(\mathbb{RP}^m;\mathbb Z/2)$ は零写像である。
$H^1(\mathbb{RP}^n;\mathbb Z/2)$、$H^1(\mathbb{RP}^m;\mathbb Z/2)$ の生成元をそれぞれ $\beta$、$\alpha$ とする(表の行から、どちらも $\mathbb Z/2$ である)。$g^*\beta=c\alpha$($c\in\mathbb Z/2$)と書く。$\beta^{n+1}\in H^{n+1}(\mathbb{RP}^n;\mathbb Z/2)=0$ であり、$g^*$ は環準同型なので
$$
0=g^*(\beta^{n+1})=(g^*\beta)^{n+1}=c^{n+1}\alpha^{n+1}=c\,\alpha^{n+1}
$$
である($\mathbb Z/2$ では $c^{n+1}=c$)。$n+1\le m$ なので、$H^*(\mathbb{RP}^m;\mathbb Z/2)=(\mathbb Z/2)[\alpha]/(\alpha^{m+1})$ において $\alpha^{n+1}\neq0$ である。よって $c=0$、すなわち $g^*\beta=0$ である。$\blacksquare$
球面 $S^m\subset\mathbb R^{m+1}$ の上の写像 $f\colon S^m\to S^n$ が $f(-x)=-f(x)$ をみたすとき、$f$ を奇写像という。$p_m\colon S^m\to\mathbb{RP}^m$ を対蹠点を同一視する 2 重被覆とする(実射影空間、被覆空間)。
$m>n\ge1$ なら、連続な奇写像 $S^m\to S^n$ は存在しない。
連続な奇写像 $f\colon S^m\to S^n$ があったとする。$f$ は対蹠点の組を対蹠点の組に移すので、$g\circ p_m=p_n\circ f$ をみたす写像 $g\colon\mathbb{RP}^m\to\mathbb{RP}^n$ が定まり、商位相の性質から連続である。
点 $x\in S^m$ を固定し、$y:=f(x)\in S^n$、$\bar y:=p_n(y)$ とおく。$\bar y$ を基点とする $\mathbb{RP}^n$ の閉路 $\delta$ に対して、$y$ から出る持ち上げ $\tilde\delta$($p_n\circ\tilde\delta=\delta$ をみたす道。$p_n$ が被覆写像なのでただ 1 つある)の終点は $y$ か $-y$ である。終点が $y$ なら $\varphi(\delta):=0$、$-y$ なら $\varphi(\delta):=1\in\mathbb Z/2$ とおく。持ち上げは閉路のホモトピーについて不変なので(Hat02 Proposition 1.30, p. 60)、$\varphi$ は $\pi_1(\mathbb{RP}^n,\bar y)$ 上の写像である。対蹠写像 $x\mapsto-x$ は $p_n$ と可換なので、$-y$ から出る持ち上げは $y$ から出る持ち上げの対蹠である。したがって閉路の積 $\delta_1\cdot\delta_2$ の $y$ から出る持ち上げは、$\delta_1$ の持ち上げで $\pm y$ に着いたあと $\delta_2$ の持ち上げ(またはその対蹠)をたどり、$\varphi(\delta_1\cdot\delta_2)=\varphi(\delta_1)+\varphi(\delta_2)$ となる。よって $\varphi$ は群準同型 $\pi_1(\mathbb{RP}^n,\bar y)\to\mathbb Z/2$ である。$\mathbb Z/2$ は可換なので、$\varphi$ は $H_1(\mathbb{RP}^n;\mathbb Z)=\pi_1(\mathbb{RP}^n)^{\mathrm{ab}}$ からの準同型 $\bar\varphi$ を誘導する(Hat02 Theorem 2A.1, p. 166)。普遍係数定理により、評価写像 $H^1(Z;\mathbb Z/2)\to\operatorname{Hom}(H_1(Z;\mathbb Z),\mathbb Z/2)$ は弧状連結な空間 $Z$ について同型であり、連続写像と可換である(普遍係数定理、Hat02 Theorem 3.2, p. 195。$H_0(Z;\mathbb Z)$ は自由なので Ext の項は消える)。$\bar\varphi$ に対応する類を $w\in H^1(\mathbb{RP}^n;\mathbb Z/2)$ とする。
$S^m$ の中の $x$ から $-x$ への道 $\sigma$ を選ぶ($m\ge1$ なので $S^m$ は弧状連結)。$\gamma:=p_m\circ\sigma$ は $\mathbb{RP}^m$ の閉路で、$g\circ\gamma=p_n\circ(f\circ\sigma)$ である。$f\circ\sigma$ は $y$ から $f(-x)=-y$ への道なので、$g\circ\gamma$ の $y$ から出る持ち上げの終点は $-y$ であり、$\varphi(g\circ\gamma)=1$ となる。評価写像が連続写像と可換であることから、$g^*w$ は $[\gamma]\in H_1(\mathbb{RP}^m;\mathbb Z)$ で値 $\bar\varphi(g_*[\gamma])=\varphi(g\circ\gamma)=1$ をとる。よって $g^*w\neq0$ であり、thm-cr-rp-maps に反する。$\blacksquare$
$n\ge1$ とする。任意の連続写像 $h\colon S^n\to\mathbb R^n$ について、$h(x)=h(-x)$ をみたす $x\in S^n$ が存在する。
すべての $x$ で $h(x)\neq h(-x)$ と仮定し、$k(x):=\bigl(h(x)-h(-x)\bigr)/\lvert h(x)-h(-x)\rvert$ とおく。$k\colon S^n\to S^{n-1}$ は連続な奇写像である。$n\ge2$ なら、$m=n>n-1\ge1$ なので cor-cr-odd-maps に反する。$n=1$ なら $S^0=\{\pm1\}$ は離散で $S^1$ は連結なので $k$ は定値であり、$k(-x)=-k(x)$ に反する。$\blacksquare$
Borsuk–Ulamの定理 の記事は $n=1,2$ を初等的に証明し、一般の $n$ を引用している。上の証明は一般の $n$ を、$\mathbb{RP}^m$ のコホモロジー環の構造だけから導く。
$n\ge2$ とし、連続写像 $f\colon S^{2n-1}\to S^n$ に沿って $S^n$ に $2n$ 次元の胞体を貼った空間を $C_f:=S^n\cup_fD^{2n}$ とする。$C_f$ は次元 $0,n,2n$ に 1 つずつ胞体をもつ CW複体で、$n\ge2$ なら隣り合う次元に胞体がないので、胞体コホモロジーの余境界はすべて $0$ である。よって $H^n(C_f;\mathbb Z)\cong\mathbb Z$、$H^{2n}(C_f;\mathbb Z)\cong\mathbb Z$ であり、ほかの正の次数は $0$ である。
上の状況で $H^n(C_f;\mathbb Z)$、$H^{2n}(C_f;\mathbb Z)$ の生成元 $a$、$b$ をとると、ある整数 $H(f)$ によって
$$
a\smile a=H(f)\,b
$$
と書ける。$H(f)$ を $f$ の Hopf 不変量(Hopf invariant)という。$a$ を $-a$ に替えても $a\smile a$ は変わらないので、$H(f)$ は $b$ の選び方による符号を除いて決まる。
$C_f$ のホモトピー型は $f$ のホモトピー類だけで決まるので、$H(f)$(の絶対値)は $f$ のホモトピー類の不変量である(Hat02 §4.B, p. 427)。
$n\ge3$ が奇数なら、任意の $f\colon S^{2n-1}\to S^n$ について $H(f)=0$ である。
$|a|=n$ は奇数なので、thm-cr-basic の 1(次数付き可換性)により $a\smile a=(-1)^{n\cdot n}a\smile a=-a\smile a$、すなわち $2(a\smile a)=0$ である。$a\smile a$ は捩れのない群 $H^{2n}(C_f;\mathbb Z)\cong\mathbb Z$ の元なので $a\smile a=0$ であり、$H(f)=0$ である。$\blacksquare$
カップ積 の系「コホモロジー群が同じで環が異なる空間」は、トーラスと $S^1\vee S^1\vee S^2$、$\mathbb{CP}^2$ と $S^2\vee S^4$ を整数係数の環で区別した。係数を $\mathbb Z/2$ にとると、次数 $1$ の元の冪も使える。
$\mathbb{RP}^3$ と $W:=\mathbb{RP}^2\vee S^3$ は、$\mathbb Z/2$ 係数のコホモロジー群が各次数で同型だが、ホモトピー同値でない。
係数はすべて $\mathbb Z/2$ とする。表により $H^k(\mathbb{RP}^3)\cong\mathbb Z/2$($0\le k\le3$)である。$W$ は CW 複体 $\mathbb{RP}^2$ と $S^3$ の 0 胞体での一点和なので、カップ積 の命題「一点和のカップ積」により、正の次数 $k$ で $H^k(W)\cong H^k(\mathbb{RP}^2)\oplus H^k(S^3)$ であり、積は成分ごとに計算される。よって $H^k(W)\cong\mathbb Z/2$($0\le k\le3$)で、群は同型である。
$H^1(W)$ の $0$ でない元 $w$ は、$\mathbb{RP}^2$ への制限が生成元 $\alpha_2$、$S^3$ への制限が $0$ である。$w^3$ の制限は $\alpha_2^3\in H^3(\mathbb{RP}^2)=0$ と $0$ なので、$w^3=0$ である。一方 $H^1(\mathbb{RP}^3)$ の生成元 $\alpha$ は $\alpha^3\neq0$ をみたす。ホモトピー同値 $h\colon W\to\mathbb{RP}^3$ があれば、$h^*$ は環同型で(thm-cr-basic の 3)、$H^1$ の $0$ でない元どうしを対応させるので $h^*\alpha=w$ であり、$h^*(\alpha^3)=w^3=0$ となって $h^*$ の単射性に反する。$\blacksquare$
整数係数の環から $\mathbb Z/m$ 係数の環が決まるのは、ホモロジー群に捩れがない場合である。係数の準同型 $\mathbb Z\to\mathbb Z/m$ は余鎖の写像 $C^*(X;\mathbb Z)\to C^*(X;\mathbb Z/m)$ を誘導し、カップ積は単体の前後の面での値の積なので、この写像は余鎖のレベルでカップ積を保つ。よってコホモロジーに環準同型 $H^*(X;\mathbb Z)\to H^*(X;\mathbb Z/m)$ が誘導され、像は $m$ 倍で消えるので、環準同型
$$
\rho\colon H^*(X;\mathbb Z)\otimes\mathbb Z/m\longrightarrow H^*(X;\mathbb Z/m)
$$
を得る(左辺は環 $H^*(X;\mathbb Z)/mH^*(X;\mathbb Z)$ と同じである)。
$m\ge2$ とし、すべての $n$ について $H_n(X;\mathbb Z)$ が自由アーベル群であるとする。このとき $\rho$ は次数付き環の同型である。
アーベル群 $G$ について、評価写像 $H^n(X;G)\to\operatorname{Hom}(H_n(X;\mathbb Z),G)$ は、$H_{n-1}(X;\mathbb Z)$ が自由なので普遍係数定理の Ext の項が消えて同型であり(Hat02 Theorem 3.2, p. 195)、係数の準同型と可換である。$H_n(X;\mathbb Z)$ の基底を $(c_s)_{s\in S}$ とすると、$\operatorname{Hom}(H_n(X;\mathbb Z),G)\cong\prod_{s\in S}G$ である。したがって $\rho$ の次数 $n$ の部分は、成分ごとの還元が誘導する写像
$$
\Bigl(\prod_{s\in S}\mathbb Z\Bigr)\Big/m\Bigl(\prod_{s\in S}\mathbb Z\Bigr)\longrightarrow\prod_{s\in S}\mathbb Z/m
$$
と同一視される。$m\prod_s\mathbb Z=\prod_sm\mathbb Z$ なので、これは同型である。$\rho$ は環準同型なので、次数付き環の同型である。$\blacksquare$
たとえば $\mathbb{CP}^n$ のホモロジー群は自由なので、$H^*(\mathbb{CP}^n;\mathbb Z/m)\cong(\mathbb Z/m)[\alpha]/(\alpha^{n+1})$ である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $H^k(Y;R)$ が有限生成自由であること(thm-cr-kunneth) | 可算無限個の点からなる離散空間 $X=Y=\mathbb N$、$R=\mathbb Z$ | クロス積 $H^*(X)\otimes H^*(Y)\to H^*(X\times Y)$ が同型であること |
| $H_n(X;\mathbb Z)$ が自由であること(prop-cr-coefficients) | $X=\mathbb{RP}^2$、$m=2$ | $\rho\colon H^*(X;\mathbb Z)\otimes\mathbb Z/2\to H^*(X;\mathbb Z/2)$ が同型であること |
| 空間の単連結性(Whiteheadの定理 のホモロジー版) | 非輪状な 2 次元 CW 複体 $X$ から 1 点への写像 | ホモロジーの同型(したがって任意の係数のコホモロジー環の同型)を誘導する写像がホモトピー同値であること |
可微分多様体 $M$ の de Rham コホモロジーは、微分形式の外積で次数付き可換環になり、de Rhamの定理 により $H^*(M;\mathbb R)$ と次数付き環として同型である(de Rhamコホモロジー)。代数多様体の Chow環 は、サイクルを一般の位置に動かして交わらせる積をもち、複素数体上ではサイクル類写像が Chow 環の積とカップ積を両立させる(Chow環 の記事の直感の節)。特性類の関係式も、旗多様体 の定理「旗多様体のコホモロジー環」のように、コホモロジー環の中の等式として述べられる。コホモロジー環が同型な空間をさらに区別するには、Steenrod平方 のようなコホモロジー作用素を使う。
コホモロジー環の基本性質は Hat02 §3.2(Proposition 3.10・Theorem 3.11, p. 210)、Künneth の定理は Theorem 3.15(p. 216)、射影空間の環は Theorem 3.19(p. 220)、Hopf 不変量と Adams の定理は §4.B(p. 427)にある。thm-cr-rp-maps・cor-cr-odd-maps・thm-cr-rp3・prop-cr-coefficients と ex-cr-counterexamples の 1 の証明は、この記事で組み立てたものである。
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