一般Hodge予想

同義語:一般ホッジ予想Grothendieckの一般Hodge予想generalized Hodge conjecture

概要

一般Hodge予想(generalized Hodge conjecture)とは、複素数体上の滑らかな射影多様体 $X$ の有理コホモロジー $H^i(X,\mathbb{Q})$ において、余次元 $p$ 以上の閉集合の外で $0$ になる類のなす部分空間 $N^pH^i$ が、複素化が Hodge フィルトレーションの $F^p$ に含まれる有理 Hodge 部分構造のうち最大のものに等しいという予想である。$i=2p$ の場合は Hodge 予想になる。Grothendieck は当初、右辺を $F^p$ とその複素共役の共通部分の有理部分とする形で述べたが、この形は一般の $i,p$ では成り立たず、1968 年の追記で自ら修正した。原形の反例として、周期 $\tau$ が $\tau^3=2$ を満たす楕円曲線 $E$ の積 $E\times E\times E$ がある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Hodge理論, Hodge構造, 余次元フィルトレーション, 特異コホモロジー

動機

複素射影多様体 $X$ の有理コホモロジーのうち、どの類が代数的な部分多様体から来るかを、Hodge 分解だけで判定できるか。次数 $2p$ についてのこの問いが Hodge予想 である。
一般Hodge予想は、この問いをすべての次数 $i$ に広げたものである。次数 $2p$ でない類は部分多様体そのものの類ではないが、「余次元 $p$ 以上の部分多様体の外で消える」という性質は意味をもつ。この性質で定まる部分空間が 余次元フィルトレーション $N^pH^i$ である。一般Hodge予想は、$N^pH^i$ を Hodge 分解の言葉で特徴づけようとする。
Grothendieck は、有限体上で余次元フィルトレーションを Frobenius の固有値で特徴づける予想(一般化された Tate予想)を述べ、その複素数体上の類似としてこの予想を定式化した Gro68。ただし最初に述べた形は誤りで、著者自身がのちに修正した(下の「原形とその反例」の節)。

設定

この記事では、$X$ は複素数体上の滑らかな射影多様体、$m=\dim X$、$H^i=H^i(X(\mathbb C),\mathbb Q)$ は通常の位相での有理係数の 特異コホモロジー とする。
Hodge 分解(Hodge理論 の基本定理として引用する):
$$ H^i\otimes\mathbb C=\bigoplus_{r+s=i}H^{r,s},\qquad\overline{H^{r,s}}=H^{s,r} $$
であり、Hodge フィルトレーションは $F^pH^i=\bigoplus_{r\geq p}H^{r,s}$ である。上線は $H^i\otimes\mathbb C$ の複素共役($H^i$ の元を固定する)を表す。
余次元フィルトレーション:$Z$ が $X$ の余次元 $p$ 以上の Zariski 閉集合を走るとき
$$ N^pH^i=\bigcup_Z\operatorname{Ker}\bigl(H^i\to H^i(X(\mathbb C)\setminus Z(\mathbb C),\mathbb Q)\bigr) $$
と定める(余次元フィルトレーション。定義はエタールコホモロジーの場合と同じ式である)。

有理Hodge部分構造

$\mathbb Q$ 部分空間 $W\subset H^i$ が
$$ W_{\mathbb C}=\bigoplus_{r+s=i}\bigl(W_{\mathbb C}\cap H^{r,s}\bigr)\qquad(W_{\mathbb C}=W\otimes\mathbb C) $$
を満たすとき、$W$ を $H^i$ の有理 Hodge 部分構造という。このとき $W^{r,s}=W_{\mathbb C}\cap H^{r,s}$ と書く。

最大の部分構造と言い換え

$p\geq0$ とする。

  1. $F^pH^i\cap\overline{F^pH^i}=\bigoplus_{r\geq p,\ s\geq p}H^{r,s}$ である。
  2. 有理 Hodge 部分構造 $W$ について、次は同値である。(a) $W_{\mathbb C}\subset F^pH^i$。(b) $W_{\mathbb C}\subset F^pH^i\cap\overline{F^pH^i}$。(c) $W^{r,s}\neq0$ ならば $r\geq p$ かつ $s\geq p$。
  3. 有理 Hodge 部分構造の和は有理 Hodge 部分構造である。したがって、(a) を満たす有理 Hodge 部分構造のうち最大のものがただ一つ存在する。これを $N^p_{\mathrm{Hdg}}H^i$ と書く。
証明
  1. $F^p=\bigoplus_{r\geq p}H^{r,s}$ であり、共役は $H^{r,s}$ を $H^{s,r}$ に写すので $\overline{F^p}=\bigoplus_{s\geq p}H^{r,s}$ である。一つの直和分解の部分和どうしの共通部分は、共通の添字の部分和である。
  2. (b)⇒(a) は明らかである。(a)⇒(b):$W$ は $\mathbb Q$ 上定義されているので $\overline{W_{\mathbb C}}=W_{\mathbb C}$ であり、$W_{\mathbb C}\subset F^p$ から $W_{\mathbb C}=\overline{W_{\mathbb C}}\subset\overline{F^p}$ を得る。(b)⇔(c):$W_{\mathbb C}=\bigoplus W^{r,s}$ なので、1 によりどちらも「$W^{r,s}\neq0$ となる $(r,s)$ はすべて $r,s\geq p$ を満たす」ことと同じである。
  3. $W_1,W_2$ を有理 Hodge 部分構造とすると
    $$ (W_1+W_2)_{\mathbb C}=\bigoplus_{r,s}W_1^{r,s}+\bigoplus_{r,s}W_2^{r,s}\subset\bigoplus_{r,s}\bigl((W_1+W_2)_{\mathbb C}\cap H^{r,s}\bigr)\subset(W_1+W_2)_{\mathbb C} $$
    なので等号が成り立つ。(a) を満たすものどうしの和も (a) を満たす。$H^i$ は有限次元なので、(a) を満たす有理 Hodge 部分構造の和全体は、そのうちの有限個の和であり、最大のものになる。

2 の (c) により、$N^p_{\mathrm{Hdg}}H^i$ は「$(r,s)$ 型の成分が $r,s\geq p$ のものだけからなる有理 Hodge 部分構造」のうち最大のもの、と言っても同じである。

予想の主張

一般Hodge予想

複素数体上の滑らかな射影多様体 $X$ と整数 $i,p\geq0$ について
$$ N^pH^i(X(\mathbb C),\mathbb Q)=N^p_{\mathrm{Hdg}}H^i(X(\mathbb C),\mathbb Q) $$
が成り立つ。すなわち、余次元 $p$ 以上の閉集合の外で消える有理類の全体は、複素化が $F^p$ に含まれる有理 Hodge 部分構造のうち最大のものに等しい。

予想の二つの向き. 包含 $N^pH^i\subset N^p_{\mathrm{Hdg}}H^i$、すなわち「$N^pH^i$ は有理 Hodge 部分構造であり、その複素化は $F^p$ に含まれる」ことは、Deligne の混合Hodge理論から従うことが知られている(Del71。この記事では証明せず、出典の該当箇所も未確認の引用として扱う)。前半は、制限写像 $H^i(X)\to H^i(U)$ が 混合Hodge構造 の射であり、その核が $H^i$ の有理 Hodge 部分構造になることによるとされる。したがって予想の実質は逆の包含
$$ N^p_{\mathrm{Hdg}}H^i\subset N^pH^i $$
である。言い換えれば、「Hodge 分解の上で余次元 $p$ 以上に見える有理部分構造は、実際に余次元 $p$ 以上の閉集合に台をもつ」という主張である。

i = 2p の場合と Hodge予想

次数 2p での形

次数 $2p$ では
$$ N^p_{\mathrm{Hdg}}H^{2p}=H^{2p}\cap H^{p,p} $$
である。右辺は $(p,p)$ 型の有理類の空間(Hodge 類の空間)である。

証明

$r+s=2p$ かつ $r,s\geq p$ なら $r=s=p$ である。補題の 2 により、$N^p_{\mathrm{Hdg}}H^{2p}$ の複素化は $H^{p,p}$ に含まれ、したがって $N^p_{\mathrm{Hdg}}H^{2p}\subset H^{2p}\cap H^{p,p}$ である。逆に $V=H^{2p}\cap H^{p,p}$ と置くと $V_{\mathbb C}\subset H^{p,p}$ なので、$V_{\mathbb C}=V_{\mathbb C}\cap H^{p,p}$ かつ他の $(r,s)$ では $V_{\mathbb C}\cap H^{r,s}=0$ であり、$V$ は有理 Hodge 部分構造で補題の (a) を満たす。最大性により $V\subset N^p_{\mathrm{Hdg}}H^{2p}$ である。

一方、$N^pH^{2p}$ は余次元 $p$ の部分多様体のコホモロジー類(代数的サイクルの類)で張られる $\mathbb Q$ 部分空間に等しいことが知られている。この記事ではこれを引用として扱う(エタールコホモロジーでの同じ型の主張は、余次元フィルトレーション で外部の結果を仮定して証明している。特異コホモロジー版の出典は未確認)。この事実を認めると、一般Hodge予想の $i=2p$ の場合は

$(p,p)$ 型の有理類は、代数的サイクルの類の $\mathbb Q$ 係数の和である
という主張、すなわち Hodge予想 そのものになる。
原形との一致. 下で述べる原形の右辺は $F^p\cap\overline{F^p}\cap H^i$ であり、$i=2p$ では補題の 1 により $H^{p,p}\cap H^{2p}$ に等しい。したがって $i=2p$ では、原形と修正後の形は同じ主張になる。下の反例は奇数次の Hodge 構造の性質を使うので、$i=2p$ の場合には効かない。偽であることが示されるのは、すべての $i,p$ について等号を主張する原形であって、$i=2p$ の場合(Hodge予想)ではない。

原形とその反例

歴史. Grothendieck は Le groupe de Brauer III(1968 年刊の論文集 Dix exposés sur la cohomologie des schémas 所収)の小節 10.4 で、包含
$$ N^pH^i\subset F^pH^i\cap\overline{F^pH^i}\cap H^i $$
を述べたうえで、有限体上の予想の類似として、これがすべての $i,p$ について等号であると予想した Gro68。同じ巻の刊行時に 1968 年 10 月付けの追記脚注が加えられ、著者はそこで、この形の予想は本質的に自明な理由で偽であると述べ、右辺を「右辺の $\mathbb Q$ 部分空間のうち、複素化が Hodge 分解について安定になる最大のもの」に取り替えるよう修正した。修正後の形が上の予想の主張である(補題の 2 により、この言い方は $N^p_{\mathrm{Hdg}}H^i$ と一致する)。脚注は、$m=\dim X$ について $i\leq m$ の仮定を書き落としたという補足も含むが、$i>m$ の場合の扱いはこの記事では述べない。
Grothendieck は翌 1969 年に、題名が「Hodge の一般予想は自明な理由で偽である」という趣旨の短い論文を発表している Gro69。この記事はその論文を参照しておらず、そこで用いられた論法や例が下の反例と同じかどうかは未確認である。
なぜ原形が成り立たないか. 原形の右辺 $R=F^p\cap\overline{F^p}\cap H^i$ は、$\mathbb Q$ 部分空間ではあるが、有理 Hodge 部分構造になるとは限らない。一方、左辺 $N^pH^i$ は(引用した Deligne の結果により)つねに有理 Hodge 部分構造である。したがって $R$ が有理 Hodge 部分構造でない例があれば、原形の等号は成り立たない。奇数次では、有理 Hodge 部分構造の次元は偶数でなければならないので、$R$ の次元が奇数になる例を作ればよい。

反例:一般Hodge予想の原形

$\tau=2^{1/3}e^{2\pi i/3}$ と置き、$E=\mathbb C/(\mathbb Z+\mathbb Z\tau)$、$X=E\times E\times E$、$i=3$、$p=1$ とする。$\operatorname{Im}\tau=2^{1/3}\cdot\frac{\sqrt3}{2}>0$ である。

  • 満たす条件:$X$ は複素数体上の滑らかな射影多様体で、$m=\dim X=3$、$i=3\leq m$ である。
  • 破る主張:原形の等号 $N^1H^3=F^1\cap\overline{F^1}\cap H^3$。
    実際、次の二つが成り立つ。
  1. $F^1\cap\overline{F^1}\cap H^3(X(\mathbb C),\mathbb Q)$ は $\mathbb Q$ 上 17 次元である。
  2. $N^1H^3(X(\mathbb C),\mathbb Q)$ は $\mathbb Q$ 上偶数次元である。
    したがって両者は等しくない。
証明

次の標準的な事実を使う(いずれも出典の該当箇所は未確認の引用)。(i) $E$ は Weierstrass の $\wp$ 関数により射影平面の滑らかな 3 次曲線と双正則であり(楕円曲線)、$dz$ は $E$ 上の正則 1 形式である。したがって $X$ は滑らかな射影多様体で、$X(\mathbb C)$ は 複素トーラス $\mathbb C^3/(\mathbb Z+\mathbb Z\tau)^3$ である。(ii) 複素トーラスのコホモロジーは $H^1$ の外積代数であり、ホモロジーは 1 輪体の積サイクルで張られ、積サイクル上での $dz_{1}\wedge dz_{2}\wedge dz_{3}$ の積分は各因子の積分の積である(Künneth の公式と Fubini の定理)。(iii) Hodge 分解と Poincaré 双対。(iv) 上で引用した Deligne の結果:各開集合 $U$ について、制限写像 $H^3\to H^3(U(\mathbb C),\mathbb Q)$ の核は有理 Hodge 部分構造である。
(a) 次元. $H^1(X,\mathbb Q)$ は 6 次元なので、$H^3=\bigwedge^3H^1$ は $\binom63=20$ 次元である。$H^{3,0}$ は $\omega=dz_1\wedge dz_2\wedge dz_3$ の類で張られる 1 次元の空間である。
(b) $F^1$ の特徴づけ. 杯積と積分 $\langle v,w\rangle=\int_Xv\wedge w$ は $H^3\otimes\mathbb C$ 上の非退化な双線形形式であり、$H^{r,s}$ と $H^{r',s'}$ の積は $(r+r',s+s')=(3,3)$ のときしか 0 でない。$F^1=\bigoplus_{r\geq1}H^{r,s}$ の元と $H^{3,0}$ の元の積は $r+3\geq4$ の型なので 0 であり、$F^1\subset(H^{3,0})^{\perp}$ である。両辺の次元はともに $20-1=19$ なので $F^1=(H^{3,0})^{\perp}$ である。
有理類 $v\in H^3$ は共役で不変なので、$v\in F^1$ ならば $v=\bar v\in\overline{F^1}$ でもある。よって
$$ F^1\cap\overline{F^1}\cap H^3=\{v\in H^3:\ \textstyle\int_Xv\wedge\omega=0\} $$
である。Poincaré 双対 $H^3(X,\mathbb Q)\cong H_3(X,\mathbb Q)$ により $\int_Xv\wedge\omega$ は(符号を除いて)$v$ に対応する 3 輪体 $\gamma$ 上の積分 $\int_\gamma\omega$ に等しい。したがってこの空間は、$\mathbb Q$ 線形写像
$$ \Pi:H_3(X,\mathbb Q)\to\mathbb C,\qquad\gamma\mapsto\int_\gamma\omega $$
の核と同じ次元をもつ。
(c) 周期の計算. $E$ の 1 輪体の基底 $a,b$ を $\int_a dz=1$、$\int_b dz=\tau$ となるようにとる。Künneth の公式により、$H_3(X,\mathbb Z)$ は次の 20 個の積サイクルを基底にもつ。

  • 各因子から 1 輪体を一つずつ選んだ $c_1\times c_2\times c_3$($c_j\in\{a,b\}$):8 個。$\int\omega=\prod_j\int_{c_j}dz_j=\tau^k$ であり、$k$ は $b$ を選んだ因子の個数である。$k=0,1,2,3$ のすべてが現れる。
  • ある因子の全体 $E$、別の因子の 1 輪体、残りの因子の 1 点の積:因子の役割の割り当てが 6 通り、1 輪体の選び方が 2 通りで 12 個。1 点の因子では $dz_j$ の制限が 0 なので $\int\omega=0$ である。
    $8+12=20$ は $H_3$ の階数に一致する。したがって $\Pi$ の像は $\mathbb Q+\mathbb Q\tau+\mathbb Q\tau^2+\mathbb Q\tau^3$ である。ここで $\tau^3=2\cdot e^{2\pi i}=2\in\mathbb Q$ であり、$\tau$ は Eisenstein の判定法で既約な多項式 $T^3-2$ の根なので $[\mathbb Q(\tau):\mathbb Q]=3$、すなわち $1,\tau,\tau^2$ は $\mathbb Q$ 上一次独立である。よって像は 3 次元で、核は $20-3=17$ 次元である。これで 1 が示された。

(d) 偶奇. $W=N^1H^3$ と置く。$W$ は、条件を満たす開集合 $U$ についての核の有向な合併であり、$H^3$ は有限次元なので、ある一つの $U$ についての核に等しい。引用 (iv) により $W$ は有理 Hodge 部分構造であり、$W_{\mathbb C}=\bigoplus_{r+s=3}W^{r,s}$ となる。$W$ は $\mathbb Q$ 上定義されているので共役は $W^{r,s}$ と $W^{s,r}$ を入れ替え、$r+s=3$ は奇数なので $r\neq s$ である。よって
$$ \dim_{\mathbb Q}W=\dim_{\mathbb C}W_{\mathbb C}=2\bigl(\dim W^{3,0}+\dim W^{2,1}\bigr) $$
は偶数である。これで 2 が示された。
(e) 結論. 原形の等号が成り立てば $W$ は 17 次元になり、2 に反する。

反例の読み方. 証明の (a)〜(c) は、原形の右辺 $R$ が奇数次元であること、したがって $R$ 自身が有理 Hodge 部分構造でないことを示している。(d) で使ったのは「$N^1H^3$ は有理 Hodge 部分構造である」という一般的な事実だけで、$N^1H^3$ が具体的に何であるかは計算していない。修正後の予想は、まさにこの $R$ を「$R$ に含まれる最大の有理 Hodge 部分構造」に取り替えたものである。
使った結果の時期. (d) で使った Deligne の結果は 1971 年のもので、原論文(1968 年刊)より後である。原論文の時点の道具だけでこの反例を完成させる方法は、この記事では与えていない。また、反例は $i=3=m$ の場合であり、追記脚注が補った次数の範囲の条件($i\leq m$)を満たしている。

有限体上の類似

原論文の小節 10.2・10.3 は、有限体 $\mathbb F_q$ 上の固有・滑らかな $X$ について、$H^i(X_{\bar{\mathbb F}_q},\mathbb Q_\ell)$ の余次元フィルトレーションを、Frobenius の固有値 $\alpha$ のうち $\alpha/q^p$ が代数的整数となるものの一般固有空間の和(算術的フィルトレーション)と比べる。原論文は、前者が後者に含まれることと、さらに両者が等しいことを予想し、等号の $i=2p$ の場合が Tate予想 に当たると述べる。この比較は Frobenius の固有値が代数的数であることを前提にしており、それは原論文の時点では Weil予想 の一部であった。滑らかな射影多様体の場合には、のちに Deligne が Weil予想を証明した Del74。この記事は、有限体上の一般化された予想の当否を扱わない。一般Hodge予想は、この予想の複素数体上の類似として定式化された。

現況

一般Hodge予想は $i=2p$ の場合として Hodge予想 を含む。Hodge予想は Clay 数学研究所が 2000 年に発表したミレニアム懸賞問題の一つであり、この記事では未解決の予想として扱う。したがって一般Hodge予想も、全体としては予想である。特別な場合に知られている結果と最新の状況は、出典を確認していないのでこの記事では述べない。

原論文との対応

原論文の箇所内容この記事
小節 10.4 の (10.11)〜(10.13)de Rham コホモロジーの Hodge フィルトレーションと Hodge 分解設定
(10.14)$F^p\cap\overline{F^p}$ の明示と包含補題の 1、既知の向き
(10.15)有理係数での包含既知の向き
小節 10.4 の下線を引いた予想すべての $i,p$ での等号原形(反例で偽)
1968 年 10 月の追記脚注原形の誤りの承認と修正予想の主張、歴史
小節 10.4 の末尾$i=2p$ の場合の Hodge予想i = 2p の場合と Hodge予想
小節 10.2・10.3有限体上の算術的フィルトレーションと予想有限体上の類似

原論文は小節 10.4 を代数的 de Rham コホモロジーの上で述べ、比較定理によって有理係数の特異コホモロジーの形に言い換えている。この記事は初めから特異コホモロジーの上で述べた。

関連項目

参考文献

[1]
Alexander Grothendieck, Le groupe de Brauer III: exemples et compléments, North-Holland / Masson, Dix exposés sur la cohomologie des schémas, 1968, §10 (pp. 164–170), including the footnote added in October 1968

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