正多角形の作図可能性

同義語:constructibility of regular polygons

概要

正多角形の作図可能性(constructibility of regular polygons)とは、正 $n$ 角形($n\ge3$)が目盛りのない定規とコンパスで作図できるかという問題であり、その答えは Gauss–Wantzel の定理「作図できるのは $n=2^kp_1\cdots p_s$($p_i$ は相異なる Fermat 素数 $2^{2^j}+1$)の形のときに限る」である。作図できることは $\cos\frac{2\pi}n$ が有理数から四則と平方根で書けることと同値で、正十七角形では頂点を組に分けた余弦の和が 2 次方程式を 3 回解くことで求まる。一方、正七角形・正九角形・正十三角形では余弦やその和が有理数の根をもたない 3 次方程式を満たし、作図できない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 定規とコンパスによる作図, 3大作図問題の不可能性, 正五角形と黄金比, 加法定理から2倍角・半角・3倍角の公式を導く

高校での出発点:作図できる正多角形とできない正多角形

目盛りのない定規とコンパスで、正三角形・正方形・正六角形は中学校でも作図した。正五角形も作図できる(正五角形と黄金比)。一方、正九角形は作図できない(3大作図問題の不可能性)。では、正何角形なら作図できるのか。この記事はこの問いに答える。
まず、作図できることが分かっている正多角形について、中心角の余弦 $\cos\dfrac{2\pi}{n}$ を並べてみる(角は弧度法で測り、$\dfrac{2\pi}{n}$ は $\dfrac{360^\circ}{n}$ のことである)。

作図できる正多角形の中心角の余弦

単位円に内接する正 $n$ 角形の、隣り合う 2 頂点を中心から見込む角は $\dfrac{2\pi}n$ である。

$n$中心角$\cos\dfrac{2\pi}n$
$3$$120^\circ$$-\dfrac12$
$4$$90^\circ$$0$
$5$$72^\circ$$\dfrac{\sqrt5-1}4=0.3090\ldots$
$6$$60^\circ$$\dfrac12$
$8$$45^\circ$$\dfrac{\sqrt2}2=0.7071\ldots$

$n=5$ の値は 正五角形と黄金比 の系「36° と 72° の余弦」で求めたものである。どの値も、有理数から四則と平方根だけで書けている。定規とコンパスによる作図 の主定理「作図できる数の特徴づけ」によれば、これはちょうど作図できる数の形である。

正七角形で現れる 3 次方程式

$n=7$ では、$y=2\cos\dfrac{2\pi}7=1.2469\ldots$ が 3 次方程式
$$ y^3+y^2-2y-1=0 $$
を満たす(この記事の ex-crp-seven-cubic で導く。Chebyshev多項式 の例「周期 3 の軌道と 7 等分の角」にも同じ方程式がある)。$y=1.2469\ldots$ を代入すると、$1.9390\ldots+1.5549\ldots-2.4939\ldots-1=0.0000\ldots$ となる。この方程式の根は平方根だけでは書けないことが示せ、正七角形は作図できない(ex-crp-seven-not)。

2 つの例から、次の見通しが立つ。正 $n$ 角形が作図できるかどうかは、$\cos\dfrac{2\pi}n$ が平方根の組み合わせで書けるかどうかで決まり、それは $n$ の素因数によって決まる。この記事では次の問いに答える。

  1. 正多角形の作図を、数の作図の言葉に直せるか。→ $\cos\dfrac{2\pi}n$ が作図できるかどうかで決まる(lem-crp-cos)
  2. 作図できる正多角形から、別の作図できる正多角形を作れるか。→ 角数の 2 倍・約数・互いに素な数の積(prop-crp-build)
  3. 正十七角形はなぜ作図できるのか。→ 頂点を組に分けて余弦の和をとると、2 次方程式を 3 回解くだけで $\cos\dfrac{2\pi}{17}$ が求まる(thm-crp-17)
  4. 作図できる正多角形をすべて言い当てられるか。→ $n=2^kp_1\cdots p_s$($p_i$ は相異なる Fermat 素数)の形のときに限る(thm-crp-gauss-wantzel)
  5. 正七角形・正十三角形は、なぜ作図できないのか。→ 余弦の和が有理数の根をもたない 3 次方程式を満たす(ex-crp-seven-not、prf-ex-crp-13)
    高校で習う計算と、この記事の言葉と、大学の言葉は次のように対応する。
    高校の計算・定理この記事の言葉大学の言葉
    加法定理、半角の公式作図できる角の和・差・半分作図できる数の体、平方根で閉じること
    互除法、$am+bn=1$互いに素な角数の組み合わせBézoutの等式、中国剰余定理
    積和の公式 $2\cos A\cdot2\cos B=2\cos(A+B)+2\cos(A-B)$余弦の和の積の計算Gauss 周期、1の冪根
    解と係数の関係和と積から 2 次方程式を作る部分群の列と 2 次拡大の列(Galois理論)
    $2^m+1$ の因数分解Fermat 素数Fermat数
    3 次方程式に有理数の根がない正七角形・正十三角形は作図できない拡大次数 が $2$ の冪でない

正多角形の作図を数の作図に直す

定規とコンパスによる作図 と同じく、原点 $O(0,0)$ と $E(1,0)$ だけが最初に与えられているとし、そこで証明した次の 2 つを使う。

  • (四則と平方根)$a$、$b$ が作図できる数ならば、$a\pm b$、$ab$、$\dfrac ab$($b\ne0$)、$\sqrt a$($a>0$)も作図できる数である(同じ記事の主定理「四則と平方根の作図」)。
  • (点と座標)点 $(x,y)$ が作図できることと、$x$、$y$ がともに作図できる数であることは同値である(同じ記事の補題「点と座標」)。
正 $n$ 角形が作図できること

$n\ge3$ とする。原点を中心とする半径 $1$ の円(単位円)の上の $n$ 個の点
$$ P_k=\left(\cos\frac{2\pi k}n,\ \sin\frac{2\pi k}n\right)\qquad(k=0,1,\dots,n-1) $$
がすべて作図できる点であるとき、正 $n$ 角形が作図できる という。$P_0=E(1,0)$ である。

原点のまわりの角 $\dfrac{2\pi}n$ の回転は $P_0\to P_1\to\cdots\to P_{n-1}\to P_0$ と点を入れかえ、長さと角を変えないので、$P_0P_1\cdots P_{n-1}$ は正 $n$ 角形である。これは 3大作図問題の不可能性 の正九角形の例や、正五角形と黄金比 の作図と同じ約束である。
角ごとに考えるために、次の言葉を用意する。

作図できる角

実数 $\theta$ について、$\cos\theta$ と $\sin\theta$ がともに作図できる数であるとき、$\theta$ を 作図できる角 という。点と座標の関係により、これは単位円の上の点 $(\cos\theta,\sin\theta)$ が作図できることと同じである。

作図できる角の計算
  1. $\cos\theta$ が作図できる数ならば、$\sin\theta$ も作図できる数であり、$\theta$ は作図できる角である。
  2. $\theta$、$\varphi$ が作図できる角ならば、$\theta+\varphi$、$\theta-\varphi$ と、整数 $k$ についての $k\theta$ も作図できる角である。
  3. $\theta$ が作図できる角ならば、$\dfrac\theta2$ も作図できる角である。
加法定理と半角の公式

方針:$\cos$ と $\sin$ の値を、加法定理と半角の公式で四則と平方根の式に書き、四則と平方根の作図を使う。
段 1(1 の証明)。$\sin^2\theta=1-\cos^2\theta\ge0$ である。$1-\cos^2\theta$ は作図できる数の積と差なので作図できる。$1-\cos^2\theta>0$ なら $\sqrt{1-\cos^2\theta}$ が作図でき、$\sin\theta$ はこれか、その符号を変えた数である($a$ が作図できれば $-a=0-a$ も作図できる)。$1-\cos^2\theta=0$ なら $\sin\theta=0$ で、これも作図できる。
段 2(2 の証明)。加法定理(加法定理から2倍角・半角・3倍角の公式を導く)により
$$ \cos(\theta\pm\varphi)=\cos\theta\cos\varphi\mp\sin\theta\sin\varphi,\qquad \sin(\theta\pm\varphi)=\sin\theta\cos\varphi\pm\cos\theta\sin\varphi $$
である(複号同順)。右辺は作図できる数の積と和・差なので作図できる。$k\ge1$ のとき $k\theta=(k-1)\theta+\theta$ なので、$k$ についての帰納法で $k\theta$ は作図できる角である。$0\cdot\theta=0$ は $\cos0=1$、$\sin0=0$ なので作図できる角であり、$k<0$ のときは $k\theta=0-(-k)\theta$ である。
段 3(3 の証明)。半角の公式(同じ記事)により
$$ \cos^2\frac\theta2=\frac{1+\cos\theta}2,\qquad \sin^2\frac\theta2=\frac{1-\cos\theta}2 $$
である。右辺は作図できる数で、$0$ 以上である。段 1 と同じく、$\cos\dfrac\theta2$ は $\sqrt{\dfrac{1+\cos\theta}2}$ かその符号を変えた数(右辺が $0$ なら $0$)なので作図でき、$\sin\dfrac\theta2$ も同じである。$\square$

正多角形と余弦

$n\ge3$ について、次の 3 つは同値である。

  1. 正 $n$ 角形が作図できる。
  2. $\dfrac{2\pi}n$ は作図できる角である。
  3. $\cos\dfrac{2\pi}n$ は作図できる数である。
1 つ目の頂点から順に回す

方針:1 ⇒ 3 は頂点 $P_1$ の $x$ 座標を見る。3 ⇒ 2 ⇒ 1 は lem-crp-angle を使う。
段 1(1 ⇒ 3)。正 $n$ 角形が作図できれば $P_1=\left(\cos\dfrac{2\pi}n,\sin\dfrac{2\pi}n\right)$ は作図できる点なので、点と座標の関係により $\cos\dfrac{2\pi}n$ は作図できる数である。
段 2(3 ⇒ 2)。lem-crp-angle の 1 による。
段 3(2 ⇒ 1)。lem-crp-angle の 2 により、$k=0,1,\dots,n-1$ について $k\cdot\dfrac{2\pi}n$ は作図できる角である。つまり $P_k=\left(\cos\dfrac{2\pi k}n,\sin\dfrac{2\pi k}n\right)$ は作図できる点である。$\square$

余弦から頂点を作る
  1. $n=8$:$\cos\dfrac{2\pi}8=\dfrac{\sqrt2}2$ なので、lem-crp-angle の 1 により $\sin\dfrac{2\pi}8=\sqrt{1-\dfrac12}=\dfrac{\sqrt2}2$ で、$P_1=\left(\dfrac{\sqrt2}2,\dfrac{\sqrt2}2\right)$ である。$P_2$ は加法定理で $\cos\dfrac{4\pi}8=\dfrac{\sqrt2}2\cdot\dfrac{\sqrt2}2-\dfrac{\sqrt2}2\cdot\dfrac{\sqrt2}2=0$、$\sin\dfrac{4\pi}8=2\cdot\dfrac{\sqrt2}2\cdot\dfrac{\sqrt2}2=1$ より $P_2=(0,1)$ となる。
  2. $n=12$:$\dfrac{2\pi}{12}$ は $\dfrac{2\pi}6$ の半分である。lem-crp-angle の 3 の式で $\cos\dfrac{2\pi}6=\dfrac12$ とおくと
    $$ \cos^2\frac{2\pi}{12}=\frac{1+\frac12}2=\frac34,\qquad \cos\frac{2\pi}{12}=\frac{\sqrt3}2=0.8660\ldots $$
    である($\dfrac{2\pi}{12}=30^\circ$ で、$\cos30^\circ>0$ なので正の平方根をとる)。

作図できる正多角形から次を作る

作図できる正多角形の組み立て
  1. 正 $n$ 角形が作図できれば、正 $2n$ 角形も作図できる。
  2. 正 $n$ 角形が作図でき、$d$ が $n$ の約数で $d\ge3$ ならば、正 $d$ 角形も作図できる。
  3. $m,n\ge3$ が互いに素で、正 $m$ 角形と正 $n$ 角形がともに作図できれば、正 $mn$ 角形も作図できる。
角を半分にし、整数倍し、組み合わせる

方針:lem-crp-cos により、「正 $n$ 角形が作図できる」は「$\dfrac{2\pi}n$ が作図できる角」と同じである。この角を lem-crp-angle で計算する。
段 1(1 の証明)。$\dfrac{2\pi}{2n}$ は $\dfrac{2\pi}n$ の半分なので、lem-crp-angle の 3 により作図できる角である。
段 2(2 の証明)。$n=de$($e$ は正の整数)と書くと
$$ \frac{2\pi}d=\frac{2\pi e}{n}=e\cdot\frac{2\pi}n $$
なので、lem-crp-angle の 2 により作図できる角である。
段 3(3 の証明)。$m$ と $n$ は互いに素なので、整数の割り算と互除法 の Bézout の等式により、$am+bn=1$ となる整数 $a$、$b$ がある。両辺に $\dfrac{2\pi}{mn}$ を掛けると
$$ \frac{2\pi}{mn}=a\cdot\frac{2\pi}n+b\cdot\frac{2\pi}m $$
である。右辺は作図できる角の整数倍の和なので、lem-crp-angle の 2 により作図できる角である。$\square$

正十五角形

$m=3$、$n=5$ とする。$2\cdot3+(-1)\cdot5=1$ なので $a=2$、$b=-1$ であり、
$$ \frac{2\pi}{15}=2\cdot\frac{2\pi}5-\frac{2\pi}3,\qquad\text{度で書くと}\qquad 24^\circ=144^\circ-120^\circ $$
である。正五角形と黄金比 の値 $\cos36^\circ=\dfrac{1+\sqrt5}4$ から、$\cos144^\circ=-\cos36^\circ=-\dfrac{1+\sqrt5}4$、$\sin144^\circ=\sin36^\circ=\sqrt{1-\dfrac{6+2\sqrt5}{16}}=\dfrac{\sqrt{10-2\sqrt5}}4$ である。加法定理で
$$ \cos24^\circ=\cos144^\circ\cos120^\circ+\sin144^\circ\sin120^\circ=\frac{1+\sqrt5}8+\frac{\sqrt{10-2\sqrt5}}4\cdot\frac{\sqrt3}2=\frac{1+\sqrt5+\sqrt{30-6\sqrt5}}8 $$
となる。数値では $\dfrac{1+2.2360\ldots+4.0721\ldots}8=0.9135\ldots$ で、$\cos24^\circ=0.9135\ldots$ と一致する。平方根だけで書けているので、正十五角形は作図できる。Euclid『原論』第 IV 巻 命題 16 は、同じ円に内接する正三角形の 1 辺が張る弧(円周の $\dfrac13=\dfrac5{15}$)と正五角形の 1 辺が張る弧($\dfrac15=\dfrac3{15}$)の差 $\dfrac2{15}$ を 2 等分して、正十五角形を作図している(Hea08b)。

prop-crp-build の 1 をくり返すと、正三角形から正六角形・正十二角形・正二十四角形…が、正方形から正八角形・正十六角形…が、正五角形から正十角形・正二十角形…が作図できる。
一般に、$n\ge3$ を $n=2^km$($m$ は奇数)と書く。$m=1$ なら $n=2^k$($k\ge2$)で、正方形から 1 をくり返して作図できる。$m\ge3$ なら、正 $n$ 角形が作図できることと正 $m$ 角形が作図できることは同値である(2 で $n$ から $m$ へ、1 で $m$ から $n$ へ)。さらに $m=p_1^{e_1}\cdots p_s^{e_s}$ と素因数分解すると、$p_i^{e_i}$ たちは互いに素なので、2 と 3 により、正 $m$ 角形が作図できることは、すべての $i$ について正 $p_i^{e_i}$ 角形が作図できることと同値である。したがって、残る問題は $n$ が奇数の素数の冪 $p^e$ のときである。

余弦の和と積を計算する道具

$n$ を $3$ 以上の整数として固定し、整数 $k$ について
$$ x_k:=2\cos\frac{2\pi k}n $$
とおく。$\cos$ は周期 $2\pi$ の偶関数なので、$x_{k+n}=x_k$、$x_{-k}=x_k$ であり、$x_0=2$ である。したがって $x_{n-k}=x_k$ でもある。

余弦の和

$n\ge2$ について
$$ \sum_{k=1}^{n-1}\cos\frac{2\pi k}n=-1 $$
である。とくに $n=2h+1$($h\ge1$)が奇数なら
$$ x_1+x_2+\cdots+x_h=-1 $$
である。

積和の公式で隣どうしを消す

方針:各項に $2\sin\dfrac\theta2$ を掛けて正弦の差に直し、和をとると間の項が打ち消し合うようにする。
段 1(差に直す)。$\theta=\dfrac{2\pi}n$ とおく。加法定理 $\sin(A+B)-\sin(A-B)=2\cos A\sin B$ で $A=k\theta$、$B=\dfrac\theta2$ とすると
$$ 2\sin\frac\theta2\cos k\theta=\sin\left(k+\frac12\right)\theta-\sin\left(k-\frac12\right)\theta $$
である。
段 2(和をとる)。$k=1,2,\dots,n-1$ について足すと、右辺は隣どうしが打ち消し合い、
$$ 2\sin\frac\theta2\sum_{k=1}^{n-1}\cos k\theta=\sin\left(n-\frac12\right)\theta-\sin\frac\theta2 $$
となる。$\left(n-\dfrac12\right)\theta=2\pi-\dfrac\theta2$ なので $\sin\left(n-\dfrac12\right)\theta=-\sin\dfrac\theta2$ であり、右辺は $-2\sin\dfrac\theta2$ である。
段 3(割る)。$0<\dfrac\theta2=\dfrac\pi n\le\dfrac\pi2$ なので $\sin\dfrac\theta2>0$ である。両辺を $2\sin\dfrac\theta2$ で割って、和は $-1$ である。
段 4(奇数の場合)。$n=2h+1$ のとき、$k$ と $n-k$ の項は等しい($x_{n-k}=x_k$)。$k=1,\dots,n-1$ は、$k=1,\dots,h$ と $n-k=h+1,\dots,n-1$ に分かれるので
$$ -1=\sum_{k=1}^{n-1}\cos\frac{2\pi k}n=2\sum_{k=1}^{h}\cos\frac{2\pi k}n=\sum_{k=1}^hx_k $$
である。$\square$

余弦の積

整数 $a$、$b$ について
$$ x_ax_b=x_{a+b}+x_{a-b} $$
である。

積和の公式

加法定理の $\cos(A+B)=\cos A\cos B-\sin A\sin B$ と $\cos(A-B)=\cos A\cos B+\sin A\sin B$ を足すと $2\cos A\cos B=\cos(A+B)+\cos(A-B)$ である。$A=\dfrac{2\pi a}n$、$B=\dfrac{2\pi b}n$ とおいて両辺を $2$ 倍すると、$x_ax_b=x_{a+b}+x_{a-b}$ となる。$\square$

この 2 つの補題だけで、余弦の和の和と積が計算できる。$n=7$ で試す。

正七角形の余弦が満たす 3 次方程式

$n=7$ とし、$x_1,x_2,x_3$ を考える($x_4=x_3$、$x_5=x_2$、$x_6=x_1$)。
(1) 和:lem-crp-sum で $h=3$ として $x_1+x_2+x_3=-1$ である。
(2) 2 つずつの積の和:lem-crp-product により
$$ x_1x_2=x_3+x_{-1}=x_3+x_1,\qquad x_1x_3=x_4+x_{-2}=x_3+x_2,\qquad x_2x_3=x_5+x_{-1}=x_2+x_1 $$
である。足すと $2(x_1+x_2+x_3)=-2$ である。
(3) 3 つの積:$x_3^2=x_6+x_0=x_1+2$ なので
$$ x_1x_2x_3=(x_3+x_1)x_3=x_3^2+x_1x_3=(x_1+2)+(x_3+x_2)=-1+2=1 $$
である。
n次方程式の解と係数の関係 により、$x_1,x_2,x_3$ は
$$ (y-x_1)(y-x_2)(y-x_3)=y^3+y^2-2y-1=0 $$
の 3 つの根である($y^2$ の係数は和の $-1$ 倍、$y$ の係数は 2 つずつの積の和、定数項は積の $-1$ 倍)。数値では $x_1=1.2469\ldots$、$x_2=-0.4450\ldots$、$x_3=-1.8019\ldots$ である。

主定理 1:正十七角形は作図できる

$n=17$ とすると、lem-crp-sum により $x_1+x_2+\cdots+x_8=-1$ である。Gauss は、8 つの値 $x_1,\dots,x_8$ を半分ずつの組に分け、組の和を求めることをくり返した。組の分け方は図 1 のとおりである。
正十七角形の頂点の番号 k(点 P_k)。左は x_1, x_2, x_4, x_8 に対応する 8 頂点(青)と、x_3, x_5, x_6, x_7 に対応する 8 頂点(赤)。右はそれぞれをさらに 2 組に分けたもの 正十七角形の頂点の番号 k(点 P_k)。左は x_1, x_2, x_4, x_8 に対応する 8 頂点(青)と、x_3, x_5, x_6, x_7 に対応する 8 頂点(赤)。右はそれぞれをさらに 2 組に分けたもの

正十七角形の余弦

$n=17$、$x_k=2\cos\dfrac{2\pi k}{17}$ とし、
$$ y_1=x_1+x_2+x_4+x_8,\qquad y_2=x_3+x_5+x_6+x_7, $$
$$ z_1=x_1+x_4,\qquad z_2=x_2+x_8,\qquad z_3=x_3+x_5,\qquad z_4=x_6+x_7 $$
とおく。次が成り立つ。

  1. $y_1$、$y_2$ は $t^2+t-4=0$ の 2 つの根で、$y_1=\dfrac{-1+\sqrt{17}}2$、$y_2=\dfrac{-1-\sqrt{17}}2$ である。
  2. $z_1$、$z_2$ は $t^2-y_1t-1=0$ の根で $z_1>0>z_2$、$z_3$、$z_4$ は $t^2-y_2t-1=0$ の根で $z_3>0>z_4$ である。
  3. $x_1$、$x_4$ は $t^2-z_1t+z_3=0$ の根で、$x_1>x_4$ である。
    したがって
    $$ z_1=\frac{y_1+\sqrt{y_1^2+4}}2,\qquad z_3=\frac{y_2+\sqrt{y_2^2+4}}2,\qquad 2\cos\frac{2\pi}{17}=x_1=\frac{z_1+\sqrt{z_1^2-4z_3}}2 $$
    であり、正十七角形は定規とコンパスで作図できる。

証明の前に、1 の積 $y_1y_2$ に現れる 16 個の積を表にしておく。lem-crp-product により $x_ax_b=x_{a+b}+x_{a-b}$ で、添字は $x_{17-k}=x_k$、$x_{-k}=x_k$ を使って $1$ 以上 $8$ 以下に直す(たとえば $x_2x_7=x_9+x_{-5}=x_8+x_5$)。

$x_ax_b$$b=3$$b=5$$b=6$$b=7$
$a=1$$x_4+x_2$$x_6+x_4$$x_7+x_5$$x_8+x_6$
$a=2$$x_5+x_1$$x_7+x_3$$x_8+x_4$$x_8+x_5$
$a=4$$x_7+x_1$$x_8+x_1$$x_7+x_2$$x_6+x_3$
$a=8$$x_6+x_5$$x_4+x_3$$x_3+x_2$$x_2+x_1$

表の 32 個の項を数えると、$x_1$ から $x_8$ までがどれもちょうど 4 回ずつ現れる(たとえば $x_1$ は $(a,b)=(2,3),(4,3),(4,5),(8,7)$ の 4 か所)。

和と積から 2 次方程式を作る

方針:各段で、2 つの数の和と積を lem-crp-sum と lem-crp-product で求め、解と係数の関係からそれらを 2 根とする 2 次方程式を作る。2 根のどちらがどちらかは、符号で見分ける。
段 1($y_1,y_2$)。$y_1+y_2=x_1+\cdots+x_8=-1$ である(lem-crp-sum)。$y_1y_2$ を展開すると、上の表の 16 個の積の和になり、表の数え上げにより
$$ y_1y_2=4(x_1+x_2+\cdots+x_8)=-4 $$
である。よって $y_1$、$y_2$ は $t^2+t-4=0$ の根で、解の公式により $\dfrac{-1\pm\sqrt{17}}2$ である。どちらが $y_1$ かを決める。$\dfrac{2\pi}{17}$ は $\dfrac{360^\circ}{17}=21.1\ldots^\circ$ で、$30^\circ$ より小さいので $x_1>2\cos30^\circ=\sqrt3>1.7$ である。同じように $x_2=2\cos42.3\ldots^\circ>2\cos45^\circ=\sqrt2>1.4$、$x_4=2\cos84.7\ldots^\circ>0$、$x_8>-2$ なので、$y_1>1.7+1.4+0-2>0$ である。$y_1y_2=-4<0$ なので $y_2<0$ であり、$y_1=\dfrac{-1+\sqrt{17}}2$、$y_2=\dfrac{-1-\sqrt{17}}2$ である。
段 2($z_1,z_2$)。$z_1+z_2=x_1+x_4+x_2+x_8=y_1$ である。積は
$$ z_1z_2=x_1x_2+x_1x_8+x_4x_2+x_4x_8=(x_3+x_1)+(x_9+x_7)+(x_6+x_2)+(x_{12}+x_4) $$
で、$x_9=x_8$、$x_{12}=x_5$ なので $x_1+\cdots+x_8=-1$ に等しい。よって $z_1$、$z_2$ は $t^2-y_1t-1=0$ の根である。$x_1>0$、$x_4>0$ なので $z_1>0$ で、$z_1z_2=-1$ から $z_2<0$ である。この方程式の正の根は $\dfrac{y_1+\sqrt{y_1^2+4}}2$ なので、これが $z_1$ である。
段 3($z_3,z_4$)。$z_3+z_4=x_3+x_5+x_6+x_7=y_2$ である。積は
$$ z_3z_4=x_3x_6+x_3x_7+x_5x_6+x_5x_7=(x_9+x_3)+(x_{10}+x_4)+(x_{11}+x_1)+(x_{12}+x_2) $$
で、$x_9=x_8$、$x_{10}=x_7$、$x_{11}=x_6$、$x_{12}=x_5$ なので、これも $x_1+\cdots+x_8=-1$ である。よって $z_3$、$z_4$ は $t^2-y_2t-1=0$ の根である。$x_6=2\cos127.0\ldots^\circ<0$、$x_7=2\cos148.2\ldots^\circ<0$ なので $z_4<0$ で、$z_3z_4=-1$ から $z_3>0$ である。正の根をとって $z_3=\dfrac{y_2+\sqrt{y_2^2+4}}2$ である。
段 4($x_1,x_4$)。$x_1+x_4=z_1$、$x_1x_4=x_5+x_{-3}=x_5+x_3=z_3$ なので、$x_1$、$x_4$ は $t^2-z_1t+z_3=0$ の根である。$\cos$ は $0$ から $\pi$ までで減少し、$\dfrac{2\pi}{17}<\dfrac{8\pi}{17}$ なので $x_1>x_4$ である。よって $x_1$ は大きいほうの根 $\dfrac{z_1+\sqrt{z_1^2-4z_3}}2$ である(2 根が異なる実数なので $z_1^2-4z_3>0$)。
段 5(作図できること)。$\sqrt{17}$ は作図でき、$y_1$、$y_2$ は四則で作れる。$y_1^2+4>0$、$y_2^2+4>0$ なので $z_1$、$z_3$ も四則と平方根で作れ、$z_1^2-4z_3>0$ なので $x_1$ も作れる。四則と平方根の作図により $x_1$ は作図できる数であり、$\cos\dfrac{2\pi}{17}=\dfrac{x_1}2$ も作図できる。lem-crp-cos により正十七角形は作図できる。$\square$

数値で追う

$\sqrt{17}=4.1231\ldots$ から順に計算すると
$$ y_1=1.5615\ldots,\quad y_2=-2.5615\ldots,\quad z_1=2.0494\ldots,\quad z_2=-0.4879\ldots,\quad z_3=0.3441\ldots,\quad z_4=-2.9057\ldots $$
となり、最後に
$$ x_1=\frac{2.0494\ldots+\sqrt{4.2003\ldots-1.3766\ldots}}2=\frac{2.0494\ldots+1.6804\ldots}2=1.8649\ldots $$
である。$2\cos\dfrac{2\pi}{17}=2\cos21.176\ldots^\circ=1.8649\ldots$ と一致する。途中の 2 乗の値は、$y_1^2+4=\dfrac{17-\sqrt{17}}2$、$y_2^2+4=\dfrac{17+\sqrt{17}}2$ と書ける($y_1^2=\dfrac{18-2\sqrt{17}}4$ より)。

Gauss の公式と、その出典

thm-crp-17 の式の平方根を開いて整理すると
$$ \cos\frac{2\pi}{17}=-\frac1{16}+\frac{\sqrt{17}}{16}+\frac{\sqrt{34-2\sqrt{17}}}{16}+\frac18\sqrt{17+3\sqrt{17}-\sqrt{34-2\sqrt{17}}-2\sqrt{34+2\sqrt{17}}} $$
となる(数値は $0.9324722\ldots$ で一致する)。Gauss はこの式を『整数論(Disquisitiones Arithmeticae)』(1801 年)の最後の章の第 365 条に載せ、同じ条で、$n$ が素数なら、$n-1$ が $2$ の冪のとき正 $n$ 角形が作図できること、そのような素数は $2^{2^\nu}+1$ の形に限ることを述べている(Gau01)。thm-crp-17 の証明の組の分け方は、Gauss の方法を高校の積和の公式で書き直したものである。

主定理 2:作図できる正多角形の決定

正三角形・正五角形・正十七角形の $3,5,17$ は、どれも $2^m+1$ の形の素数である。この形の素数には強い制限がある。

2 の冪に 1 を足した素数

$m\ge1$ とする。$2^m+1$ が素数ならば、$m$ は $2$ の冪である($m=2^j$、$j\ge0$)。

奇数の約数があれば因数分解できる

方針:対偶を示す。$m$ が $3$ 以上の奇数の約数をもてば、$2^m+1$ が因数分解できることを示す。
段 1(因数分解の式)。$q$ が奇数のとき、
$$ (X+1)(X^{q-1}-X^{q-2}+X^{q-3}-\cdots-X+1)=X^q+1 $$
である。左辺を展開すると、$X$ を掛けた項と $1$ を掛けた項が $X^{q-1},\dots,X$ で打ち消し合い、$X^q$ と $1$ だけが残る($q$ が奇数なので、2 つ目の因数は $+X^{q-1}$ で始まり $+1$ で終わる)。
段 2(対偶)。$m$ が $2$ の冪でないとすると、$m$ は $3$ 以上の奇数 $q$ を約数にもち、$m=uq$ と書ける。$X=2^u$ とおくと $2^m+1=X^q+1$ で、段 1 により $X+1=2^u+1$ で割り切れる。$u\ge1$ なので $X+1\ge3$、$q\ge3$ なので $X+1< X^q+1$ であり、$2^m+1$ は $1$ と自分自身以外の約数 $2^u+1$ をもつ。よって $2^m+1$ は素数でない。$\square$

$2^m+1$ を調べる
  1. $m=6=2\cdot3$:$X=2^2=4$、$q=3$ として $2^6+1=65=(4+1)(16-4+1)=5\cdot13$ である。
  2. $m=3$:$2^3+1=9=3\cdot3$ で、素数でない($u=1$、$X=2$ で $X+1=3$)。
  3. $m=1,2,4,8,16$:$2^m+1=3,5,17,257,65537$ はどれも素数である。
  4. $m=32$:$2^{32}+1=4294967297=641\cdot6700417$ で、$m$ が $2$ の冪でも素数とは限らない(Euler による。Fermat数)。lem-crp-fermat は「素数なら $m$ は $2$ の冪」を述べていて、逆は述べていない。
Fermat素数の定義

$2^{2^j}+1$($j\ge0$)の形の素数を Fermat 素数 という。$3,5,17,257,65537$ は Fermat 素数であり、これ以外の Fermat 素数は知られていない(Fermat数)。

次の定理が、正多角形の作図の問題への完全な答えである。

Gauss–Wantzel の定理

$n\ge3$ について、次の 2 つは同値である。

  1. 正 $n$ 角形が定規とコンパスで作図できる。
  2. $n=2^kp_1p_2\cdots p_s$($k\ge0$、$s\ge0$)と書け、$p_1,\dots,p_s$ は相異なる Fermat 素数である。
定理の使いどころ

条件 2 の「相異なる」が肝心で、$n=9=3^2$ のように同じ Fermat 素数を 2 回以上含む $n$ は作図できない。$n=7,11,13$ は Fermat 素数でも $2$ の冪でもないので作図できない。一方 $n=15=3\cdot5$ や $n=17$ は条件 2 を満たすので作図できる。条件 2 を満たす $n$ は、既知の Fermat 素数 $3,5,17,257,65537$ からいくらでも作れる。

3 から 100 までの n のうち、正 n 角形が定規とコンパスで作図できるもの(色つき)。3, 4, 5, 6, 8, 10, 12, 15, 16, 17, 20, 24, 30, 32, 34, 40, 48, 51, 60, 64, 68, 80, 85, 96 の 24 個 3 から 100 までの n のうち、正 n 角形が定規とコンパスで作図できるもの(色つき)。3, 4, 5, 6, 8, 10, 12, 15, 16, 17, 20, 24, 30, 32, 34, 40, 48, 51, 60, 64, 68, 80, 85, 96 の 24 個
2 ⇒ 1(十分性)は、prop-crp-build の後に述べたことから、Fermat 素数 $p$ について正 $p$ 角形が作図できることに帰着する。$p=3,5,17$ はこの記事で示した(ex-crp-known、thm-crp-17)。$p=257$、$65537$ も同じように「組の和」を 2 次方程式でくり返し求めて作図できるが、その一般の証明には Galois理論 を使うので、この記事では証明しない(Mil22 Corollary 3.26。Gauss による。Gau01 第 365 条)。
1 ⇒ 2(必要性)が、この節の主題である。次の 2 つの事実を使う。

次数についての 2 つの事実
  1. 作図できる数 $a$ を根にもつ $0$ でない有理数係数の多項式のうち、次数が最小のものの次数は $2$ の冪である。
  2. $n\ge3$ について、$2\cos\dfrac{2\pi}n$ を根にもつ $0$ でない有理数係数の多項式のうち、次数が最小のものの次数は $\dfrac{\varphi(n)}2$ である。ここで $\varphi(n)$ は、$1$ 以上 $n$ 以下で $n$ と互いに素な整数の個数(Euler関数)である。
2 つの事実の出典

どちらも高校数学の範囲を超えるので、この記事では証明しない。1 は Mil22 Corollary 1.38 で、定規とコンパスによる作図 の「大学数学で見る」でも紹介されている。2 は、$\zeta=\cos\dfrac{2\pi}n+i\sin\dfrac{2\pi}n$ を根にもつ円分多項式が次数 $\varphi(n)$ の既約な多項式であること(Mil22 Theorem 5.10。$n$ が素数の場合は Lemma 1.42)と、$\zeta$ が $2\cos\dfrac{2\pi}n=\zeta+\zeta^{-1}$ の上の 2 次方程式 $\zeta^2-2\cos\dfrac{2\pi}n\cdot\zeta+1=0$ の根であることから導かれる($n$ が素数の場合の計算が Mil22 Lemma 1.42 の直後にある)。高校の範囲で同じ結論を出せる場合は、ex-crp-seven-not と prf-ex-crp-13 で扱う。

$\varphi(n)$ の小さな値
  1. $p$ が素数なら、$1,\dots,p-1$ はすべて $p$ と互いに素で、$p$ は互いに素でないので $\varphi(p)=p-1$ である。たとえば $\varphi(7)=6$、$\varphi(17)=16$。
  2. $p^2$ と互いに素でない $1$ 以上 $p^2$ 以下の整数は、$p$ の倍数 $p,2p,\dots,p\cdot p$ の $p$ 個なので $\varphi(p^2)=p^2-p=p(p-1)$ である。たとえば $\varphi(9)=6$、$\varphi(25)=20$。
  3. thm-crp-degree の 2 の次数 $\dfrac{\varphi(n)}2$ は、$n=5$ で $2$($2\cos72^\circ$ は $y^2+y-1=0$ の根)、$n=7$ で $3$(ex-crp-seven-cubic)、$n=17$ で $8$ である。
1 ⇒ 2:素数の冪に分けて次数を比べる

方針:prop-crp-build の 2 で、$n$ の奇数の素因数 $p$ について正 $p$ 角形または正 $p^2$ 角形に移る。そこで thm-crp-degree の 2 つの次数を比べる。
段 1(奇数の素因数 $p$ は $2^m+1$ の形)。正 $n$ 角形が作図できるとし、$p$ を $n$ の奇数の素因数とする。$p\ge3$ は $n$ の約数なので、prop-crp-build の 2 により正 $p$ 角形が作図できる。lem-crp-cos により $\cos\dfrac{2\pi}p$ が作図でき、その $2$ 倍 $2\cos\dfrac{2\pi}p$ も作図できる数である。thm-crp-degree の 1 と 2 により、$\dfrac{\varphi(p)}2=\dfrac{p-1}2$ は $2$ の冪である。よって $p-1$ も $2$ の冪で、$p=2^m+1$($m\ge1$)と書ける。
段 2($p$ は Fermat 素数)。段 1 の $p=2^m+1$ は素数なので、lem-crp-fermat により $m$ は $2$ の冪であり、$p$ は Fermat 素数である。
段 3($p$ は 1 回しか現れない)。$p^2$ が $n$ を割り切るとすると、prop-crp-build の 2 により正 $p^2$ 角形が作図でき、段 1 と同じく $2\cos\dfrac{2\pi}{p^2}$ が作図できる。thm-crp-degree により $\dfrac{\varphi(p^2)}2=\dfrac{p(p-1)}2$ は $2$ の冪でなければならない。ところがこの数は奇数 $p\ge3$ で割り切れるので、$2$ の冪ではない。矛盾するので、$p^2$ は $n$ を割り切らない。
段 4(まとめ)。$n$ を素因数分解すると、$2$ 以外の素因数はすべて Fermat 素数(段 2)で、どれも 1 回ずつしか現れない(段 3)。これは 2 の形である。$\square$

必要性は、Gauss が『整数論』で述べながら証明を残さなかった部分で、Wantzel が 1837 年に証明した(Wan37 pp. 369–370)。

定理を当てはめる
  1. $n=51=3\cdot17$:相異なる Fermat 素数の積なので作図できる。prop-crp-build の 3 の証明の式は、$6\cdot3+(-1)\cdot17=1$ から $\dfrac{2\pi}{51}=6\cdot\dfrac{2\pi}{17}-\dfrac{2\pi}3$ となる($\dfrac6{17}-\dfrac13=\dfrac{18-17}{51}$)。
  2. $n=11$:$11$ は素数だが $11-1=10$ は $2$ の冪でないので、作図できない。
  3. $n=45=3^2\cdot5$:$3$ が 2 回現れるので作図できない。
  4. $n=96=2^5\cdot3$:作図できる(正三角形から 2 等分を 5 回)。
  5. 奇数の $n$ で作図できると分かっているものは、$3,5,17,257,65537$ から 1 つ以上を選んで掛けた数で、$2^5-1=31$ 個ある。これで全部かどうかは、$65537$ より大きい Fermat 素数があるかどうかという未解決の問題による。
正七角形は作図できない

thm-crp-degree を使わずに、高校の範囲で示す。ex-crp-seven-cubic により $x_1=2\cos\dfrac{2\pi}7$ は $f(y)=y^3+y^2-2y-1=0$ の根である。有理数の根があれば、定数項 $-1$ の約数 $\pm1$ のどちらかである(3大作図問題の不可能性 の補題「有理数の根の候補」)。ところが $f(1)=-1$、$f(-1)=1$ でどちらも $0$ でない。よって $f$ は有理数の根をもたず、同じ記事の定理「有理数の根をもたない 3 次方程式」により、$x_1$ は作図できない。$\cos\dfrac{2\pi}7=\dfrac{x_1}2$ が作図できれば $x_1$ も作図できるはずなので、$\cos\dfrac{2\pi}7$ は作図できず、lem-crp-cos により正七角形は作図できない。
正九角形も、$2\cos40^\circ$ が $y^3-3y+1=0$ を満たすことから同じ方法で作図できないと分かる(3大作図問題の不可能性 の例「正九角形の作図」)。

高校数学で解く・大学数学で見る

正七角形では余弦そのものが 3 次方程式を満たした。正十三角形では $\cos\dfrac{2\pi}{13}$ の次数は $\dfrac{\varphi(13)}2=6$ で、3 次方程式はすぐには出てこない。そこで正十七角形と同じく「組の和」を使う。

正十三角形の作図

正十三角形は定規とコンパスで作図できるか。thm-crp-degree を使わずに判定せよ。

高校数学で解く

方針:$x_1,\dots,x_6$($n=13$)を 2 つずつ 3 組に分け、組の和が有理数の根をもたない 3 次方程式を満たすことを示す。
段 1(組の和)。$n=13$、$x_k=2\cos\dfrac{2\pi k}{13}$ とし($x_{13-k}=x_k$)、
$$ u_1=x_1+x_5,\qquad u_2=x_2+x_3,\qquad u_3=x_4+x_6 $$
とおく。lem-crp-sum により $u_1+u_2+u_3=x_1+\cdots+x_6=-1$ である。
段 2(2 つずつの積)。lem-crp-product と $x_7=x_6$、$x_8=x_5$、$x_9=x_4$、$x_{11}=x_2$ により
$$ u_1u_2=x_1x_2+x_1x_3+x_5x_2+x_5x_3=(x_3+x_1)+(x_4+x_2)+(x_7+x_3)+(x_8+x_2)=(x_1+\cdots+x_6)+x_2+x_3=-1+u_2, $$
$$ u_1u_3=x_1x_4+x_1x_6+x_5x_4+x_5x_6=(x_5+x_3)+(x_7+x_5)+(x_9+x_1)+(x_{11}+x_1)=-1+u_1, $$
$$ u_2u_3=x_2x_4+x_2x_6+x_3x_4+x_3x_6=(x_6+x_2)+(x_8+x_4)+(x_7+x_1)+(x_9+x_3)=-1+u_3 $$
である(2 行目の括弧の中は $x_5+x_3+x_6+x_5+x_4+x_1+x_2+x_1$、3 行目は $x_6+x_2+x_5+x_4+x_6+x_1+x_4+x_3$ で、どちらも $x_1+\cdots+x_6$ に $u_1$ または $u_3$ を足したもの)。足すと $u_1u_2+u_1u_3+u_2u_3=-3+(u_1+u_2+u_3)=-4$ である。
段 3(3 つの積)。$u_1u_2u_3=(-1+u_2)u_3=-u_3+u_2u_3=-u_3+(-1+u_3)=-1$ である。
段 4(3 次方程式)。解と係数の関係により、$u_1,u_2,u_3$ は
$$ g(t)=t^3+t^2-4t+1=0 $$
の 3 つの根である。有理数の根の候補は $\pm1$ で、$g(1)=-1$、$g(-1)=5$ なので、$g$ は有理数の根をもたない。3大作図問題の不可能性 の定理「有理数の根をもたない 3 次方程式」により、$u_1$ は作図できない。
段 5(結論)。正十三角形が作図できるとすると、lem-crp-cos により $\dfrac{2\pi}{13}$ は作図できる角で、lem-crp-angle の 2 により $5\cdot\dfrac{2\pi}{13}$ も作図できる角である。よって $x_1$ と $x_5$ は作図でき、その和 $u_1$ も作図できるが、これは段 4 に反する。したがって正十三角形は作図できない。$\square$

数値で確かめる

$u_1=2\cos27.69\ldots^\circ+2\cos138.46\ldots^\circ=1.7709\ldots-1.4970\ldots=0.2738\ldots$、$u_2=1.3772\ldots$、$u_3=-2.6510\ldots$ である。和は $-1.0000\ldots$、積は $0.2738\ldots\times1.3772\ldots\times(-2.6510\ldots)=-1.0000\ldots$ で、$g(0.2738\ldots)=0.0205\ldots+0.0750\ldots-1.0955\ldots+1=0.0000\ldots$ となる。

大学数学で見る:巡回群と部分群の列

番号 $k$ を $13$ で割った余りの世界で見る。$2$ の累乗を $13$ で割った余りは
$$ 1,\ 2,\ 4,\ 8,\ 3,\ 6,\ 12,\ 11,\ 9,\ 5,\ 10,\ 7 $$
と、$1$ から $12$ までを 1 回ずつ通る($2$ は $13$ の原始根である)。つまり、$13$ と互いに素な余りの掛け算の群 $(\mathbb{Z}/13\mathbb{Z})^\times$ は位数 $12$ の巡回群である。$u_1=x_1+x_5$ は、$x_k=\zeta^k+\zeta^{-k}$($\zeta=\cos\dfrac{2\pi}{13}+i\sin\dfrac{2\pi}{13}$)と書くと $\zeta^1+\zeta^5+\zeta^8+\zeta^{12}$ で、指数の $\{1,5,8,12\}$ は $2^0,2^3,2^6,2^9$、つまり位数 $4$ の部分群である。$u_2$、$u_3$ はこの部分群を $2$ 倍、$4$ 倍した組(剰余類)にわたる和である。$\zeta$ を $\zeta^2$ に取りかえると $u_1\to u_2\to u_3\to u_1$ と回るので、$u_i$ たちは 3 次方程式で結ばれる。部分群の指数が $3$ なので 3 次が現れた。
正十七角形では、$3$ が $17$ の原始根で、$(\mathbb{Z}/17\mathbb{Z})^\times$ は位数 $16=2^4$ の巡回群である。その部分群の列
$$ \{\text{全体}\}\supset\{1,2,4,8,9,13,15,16\}\supset\{1,4,13,16\}\supset\{1,16\}\supset\{1\} $$
は各段の指数が $2$ で、thm-crp-17 の $y$、$z$、$x$ は、それぞれ 2 番目、3 番目、4 番目の部分群の剰余類にわたる $\zeta^k$ の和である($\{1,16\}=\{\pm1\}$ なので $\zeta^k+\zeta^{-k}=x_k$)。指数が $2$ だから、各段で 2 次方程式を解けばよかった。一般に素数 $p$ について、この群の位数 $p-1$ が $2$ の冪のときに限り指数 $2$ の部分群の列がとれる。これが Galois理論 による Gauss–Wantzel の定理の見方で、作図可能数 の記事で証明されている。

例と反例

thm-crp-gauss-wantzel のどの仮定を外すと、どの主張が崩れるかを表にする。

外した仮定崩れる主張ボックス
Fermat 素数 $p_1,\dots,p_s$ は相異なる(2 ⇒ 1)正 $n$ 角形は作図できるex-crp-square
$p_i$ は素数である($2^{2^j}+1$ の形の数なら何でもよいとする)(2 ⇒ 1)正 $n$ 角形は作図できるex-crp-f5
道具は定規とコンパスだけ(1 ⇒ 2)正七角形は作図できないex-crp-trisector
作図は正確に一致する(1 ⇒ 2)正七角形は作図できないex-crp-approx
反例:同じ Fermat 素数を 2 回使う

$n=9=3\cdot3$ と $n=25=5\cdot5$ は、Fermat 素数だけの積だが、同じ素数を 2 回使っている。
(1) 正九角形は作図できない(ex-crp-seven-not の後に述べたとおり)。
(2) 正二十五角形:thm-crp-degree により $2\cos\dfrac{2\pi}{25}$ の次数は $\dfrac{\varphi(25)}2=10$ で、$2$ の冪でないので作図できない。
満たす性質:$n$ の奇数の素因数はすべて Fermat 素数である。満たさない性質:それらが相異なる。破る含意:「奇数の素因数がすべて Fermat 素数なら正 $n$ 角形は作図できる」。prop-crp-build の 3 で組み合わせられるのは互いに素な角数だけで、$3$ と $3$ は互いに素でない。

反例:$2^{32}+1$ 角形

$N=2^{2^5}+1=2^{32}+1=4294967297$ は $2^{2^j}+1$ の形だが、$641\cdot6700417$ と分解される(ex-crp-fermat-small の (4))。正 $N$ 角形が作図できたとすると、$641$ は $N$ の約数なので、prop-crp-build の 2 により正 $641$ 角形が作図でき、thm-crp-gauss-wantzel の 1 ⇒ 2 により $641$ は Fermat 素数でなければならない。ところが $641-1=640=2^7\cdot5$ は $2$ の冪でないので、prf-thm-crp-gauss-wantzel の段 1 に反する。よって正 $N$ 角形は作図できない。
満たす性質:$N$ は $2^{2^j}+1$ の形である。満たさない性質:$N$ は素数である。破る含意:「$2^{2^j}+1$ の形の $n$ なら正 $n$ 角形は作図できる」。Fermat 数であることより、素数であることが効いている。

反例:角の 3 等分ができる道具があれば正七角形が作図できる

定規とコンパスのほかに、任意の作図できる角を 3 等分する道具(3大作図問題の不可能性 の例「反例:目盛り付き定規なら角を 3 等分できる」の目盛り付き定規や、折り紙による作図 の折り方)を使ってよいとする。
ex-crp-seven-cubic の方程式 $y^3+y^2-2y-1=0$ に $y=z-\dfrac13$ を代入すると、$z^3-\dfrac73z-\dfrac7{27}=0$ となる。さらに $z=\dfrac{2\sqrt7}3\cos\phi$ とおくと、$z^3-\dfrac73z=\dfrac{14\sqrt7}{27}(4\cos^3\phi-3\cos\phi)=\dfrac{14\sqrt7}{27}\cos3\phi$ なので(3 倍角の公式)、方程式は
$$ \cos3\phi=\frac{7}{27}\cdot\frac{27}{14\sqrt7}=\frac{1}{2\sqrt7}=\frac{\sqrt7}{14} $$
となる。$\cos\alpha=\dfrac{\sqrt7}{14}$ となる角 $\alpha=79.10\ldots^\circ$ は作図でき(lem-crp-angle の 1)、それを 3 等分した $\phi=\dfrac\alpha3=26.36\ldots^\circ$ から
$$ x_1=\frac{2\sqrt7}3\cos\phi-\frac13=1.7638\ldots\times0.8959\ldots-0.3333\ldots=1.2469\ldots $$
が得られる。これは $2\cos\dfrac{2\pi}7$ に一致する。正十三角形も、prf-ex-crp-13 の $u_1$ を同じ方法で求め、$x_1$、$x_5$ を $t^2-u_1t+u_3=0$($x_1x_5=x_6+x_4=u_3$)から求めれば作図できる。
満たす性質:作図は有限回の操作である。満たさない性質:道具は定規とコンパスだけ。破る含意:「正七角形は作図できない」。角の 3 等分は 3 次方程式を解くことにあたり、平方根だけという制約が外れる。

反例:近似でよければ正七角形が描ける

単位円に内接する正三角形の 1 辺は $\sqrt3$ で、その半分 $\dfrac{\sqrt3}2=0.86602\ldots$ は、正七角形の 1 辺 $2\sin\dfrac\pi7=0.86776\ldots$ に近い(差は $0.0017\ldots$)。単位円の上で、長さ $\dfrac{\sqrt3}2$ の弦で円周を 7 回区切ると、1 回に進む中心角は $2\arcsin\dfrac{\sqrt3}4=51.317\ldots^\circ$ で、7 回で $359.22\ldots^\circ$ となり、$360^\circ$ に $0.78^\circ$ ほど足りない(図 3)。
満たす性質:定規とコンパスの有限回の操作で描ける。満たさない性質:頂点が正確に閉じる。破る含意:「正七角形は作図できない」は「どんな近似も描けない」という意味ではない。作図の不可能性は正確な一致についての主張である。

正七角形(青)と、単位円を長さ √3/2 の弦で 7 回区切った折れ線(赤の破線)。√3/2 は内接正三角形(緑)の 1 辺の半分で、図ではほとんど重なるが、最後の頂点は出発点に 0.78° ほど届かない 正七角形(青)と、単位円を長さ √3/2 の弦で 7 回区切った折れ線(赤の破線)。√3/2 は内接正三角形(緑)の 1 辺の半分で、図ではほとんど重なるが、最後の頂点は出発点に 0.78° ほど届かない

さらに先へ

関連項目

参考文献

[4]
Pierre Laurent Wantzel, Recherches sur les moyens de reconnaître si un Problème de Géométrie peut se résoudre avec la règle et le compas, Journal de Mathématiques Pures et Appliquées (1re série), 1837, pp. 366–372(Numdam: JMPA_1837_1_2__366_0)。円周の等分は pp. 369–370

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する