正多角形の作図可能性(constructibility of regular polygons)とは、正 $n$ 角形($n\ge3$)が目盛りのない定規とコンパスで作図できるかという問題であり、その答えは Gauss–Wantzel の定理「作図できるのは $n=2^kp_1\cdots p_s$($p_i$ は相異なる Fermat 素数 $2^{2^j}+1$)の形のときに限る」である。作図できることは $\cos\frac{2\pi}n$ が有理数から四則と平方根で書けることと同値で、正十七角形では頂点を組に分けた余弦の和が 2 次方程式を 3 回解くことで求まる。一方、正七角形・正九角形・正十三角形では余弦やその和が有理数の根をもたない 3 次方程式を満たし、作図できない。
前提知識: 定規とコンパスによる作図, 3大作図問題の不可能性, 正五角形と黄金比, 加法定理から2倍角・半角・3倍角の公式を導く
目盛りのない定規とコンパスで、正三角形・正方形・正六角形は中学校でも作図した。正五角形も作図できる(正五角形と黄金比)。一方、正九角形は作図できない(3大作図問題の不可能性)。では、正何角形なら作図できるのか。この記事はこの問いに答える。
まず、作図できることが分かっている正多角形について、中心角の余弦 $\cos\dfrac{2\pi}{n}$ を並べてみる(角は弧度法で測り、$\dfrac{2\pi}{n}$ は $\dfrac{360^\circ}{n}$ のことである)。
単位円に内接する正 $n$ 角形の、隣り合う 2 頂点を中心から見込む角は $\dfrac{2\pi}n$ である。
| $n$ | 中心角 | $\cos\dfrac{2\pi}n$ |
|---|---|---|
| $3$ | $120^\circ$ | $-\dfrac12$ |
| $4$ | $90^\circ$ | $0$ |
| $5$ | $72^\circ$ | $\dfrac{\sqrt5-1}4=0.3090\ldots$ |
| $6$ | $60^\circ$ | $\dfrac12$ |
| $8$ | $45^\circ$ | $\dfrac{\sqrt2}2=0.7071\ldots$ |
$n=5$ の値は 正五角形と黄金比 の系「36° と 72° の余弦」で求めたものである。どの値も、有理数から四則と平方根だけで書けている。定規とコンパスによる作図 の主定理「作図できる数の特徴づけ」によれば、これはちょうど作図できる数の形である。
$n=7$ では、$y=2\cos\dfrac{2\pi}7=1.2469\ldots$ が 3 次方程式
$$
y^3+y^2-2y-1=0
$$
を満たす(この記事の ex-crp-seven-cubic で導く。Chebyshev多項式 の例「周期 3 の軌道と 7 等分の角」にも同じ方程式がある)。$y=1.2469\ldots$ を代入すると、$1.9390\ldots+1.5549\ldots-2.4939\ldots-1=0.0000\ldots$ となる。この方程式の根は平方根だけでは書けないことが示せ、正七角形は作図できない(ex-crp-seven-not)。
2 つの例から、次の見通しが立つ。正 $n$ 角形が作図できるかどうかは、$\cos\dfrac{2\pi}n$ が平方根の組み合わせで書けるかどうかで決まり、それは $n$ の素因数によって決まる。この記事では次の問いに答える。
定規とコンパスによる作図 と同じく、原点 $O(0,0)$ と $E(1,0)$ だけが最初に与えられているとし、そこで証明した次の 2 つを使う。
$n\ge3$ とする。原点を中心とする半径 $1$ の円(単位円)の上の $n$ 個の点
$$
P_k=\left(\cos\frac{2\pi k}n,\ \sin\frac{2\pi k}n\right)\qquad(k=0,1,\dots,n-1)
$$
がすべて作図できる点であるとき、正 $n$ 角形が作図できる という。$P_0=E(1,0)$ である。
原点のまわりの角 $\dfrac{2\pi}n$ の回転は $P_0\to P_1\to\cdots\to P_{n-1}\to P_0$ と点を入れかえ、長さと角を変えないので、$P_0P_1\cdots P_{n-1}$ は正 $n$ 角形である。これは 3大作図問題の不可能性 の正九角形の例や、正五角形と黄金比 の作図と同じ約束である。
角ごとに考えるために、次の言葉を用意する。
実数 $\theta$ について、$\cos\theta$ と $\sin\theta$ がともに作図できる数であるとき、$\theta$ を 作図できる角 という。点と座標の関係により、これは単位円の上の点 $(\cos\theta,\sin\theta)$ が作図できることと同じである。
方針:$\cos$ と $\sin$ の値を、加法定理と半角の公式で四則と平方根の式に書き、四則と平方根の作図を使う。
段 1(1 の証明)。$\sin^2\theta=1-\cos^2\theta\ge0$ である。$1-\cos^2\theta$ は作図できる数の積と差なので作図できる。$1-\cos^2\theta>0$ なら $\sqrt{1-\cos^2\theta}$ が作図でき、$\sin\theta$ はこれか、その符号を変えた数である($a$ が作図できれば $-a=0-a$ も作図できる)。$1-\cos^2\theta=0$ なら $\sin\theta=0$ で、これも作図できる。
段 2(2 の証明)。加法定理(加法定理から2倍角・半角・3倍角の公式を導く)により
$$
\cos(\theta\pm\varphi)=\cos\theta\cos\varphi\mp\sin\theta\sin\varphi,\qquad \sin(\theta\pm\varphi)=\sin\theta\cos\varphi\pm\cos\theta\sin\varphi
$$
である(複号同順)。右辺は作図できる数の積と和・差なので作図できる。$k\ge1$ のとき $k\theta=(k-1)\theta+\theta$ なので、$k$ についての帰納法で $k\theta$ は作図できる角である。$0\cdot\theta=0$ は $\cos0=1$、$\sin0=0$ なので作図できる角であり、$k<0$ のときは $k\theta=0-(-k)\theta$ である。
段 3(3 の証明)。半角の公式(同じ記事)により
$$
\cos^2\frac\theta2=\frac{1+\cos\theta}2,\qquad \sin^2\frac\theta2=\frac{1-\cos\theta}2
$$
である。右辺は作図できる数で、$0$ 以上である。段 1 と同じく、$\cos\dfrac\theta2$ は $\sqrt{\dfrac{1+\cos\theta}2}$ かその符号を変えた数(右辺が $0$ なら $0$)なので作図でき、$\sin\dfrac\theta2$ も同じである。$\square$
$n\ge3$ について、次の 3 つは同値である。
方針:1 ⇒ 3 は頂点 $P_1$ の $x$ 座標を見る。3 ⇒ 2 ⇒ 1 は lem-crp-angle を使う。
段 1(1 ⇒ 3)。正 $n$ 角形が作図できれば $P_1=\left(\cos\dfrac{2\pi}n,\sin\dfrac{2\pi}n\right)$ は作図できる点なので、点と座標の関係により $\cos\dfrac{2\pi}n$ は作図できる数である。
段 2(3 ⇒ 2)。lem-crp-angle の 1 による。
段 3(2 ⇒ 1)。lem-crp-angle の 2 により、$k=0,1,\dots,n-1$ について $k\cdot\dfrac{2\pi}n$ は作図できる角である。つまり $P_k=\left(\cos\dfrac{2\pi k}n,\sin\dfrac{2\pi k}n\right)$ は作図できる点である。$\square$
方針:lem-crp-cos により、「正 $n$ 角形が作図できる」は「$\dfrac{2\pi}n$ が作図できる角」と同じである。この角を lem-crp-angle で計算する。
段 1(1 の証明)。$\dfrac{2\pi}{2n}$ は $\dfrac{2\pi}n$ の半分なので、lem-crp-angle の 3 により作図できる角である。
段 2(2 の証明)。$n=de$($e$ は正の整数)と書くと
$$
\frac{2\pi}d=\frac{2\pi e}{n}=e\cdot\frac{2\pi}n
$$
なので、lem-crp-angle の 2 により作図できる角である。
段 3(3 の証明)。$m$ と $n$ は互いに素なので、整数の割り算と互除法 の Bézout の等式により、$am+bn=1$ となる整数 $a$、$b$ がある。両辺に $\dfrac{2\pi}{mn}$ を掛けると
$$
\frac{2\pi}{mn}=a\cdot\frac{2\pi}n+b\cdot\frac{2\pi}m
$$
である。右辺は作図できる角の整数倍の和なので、lem-crp-angle の 2 により作図できる角である。$\square$
$m=3$、$n=5$ とする。$2\cdot3+(-1)\cdot5=1$ なので $a=2$、$b=-1$ であり、
$$
\frac{2\pi}{15}=2\cdot\frac{2\pi}5-\frac{2\pi}3,\qquad\text{度で書くと}\qquad 24^\circ=144^\circ-120^\circ
$$
である。正五角形と黄金比 の値 $\cos36^\circ=\dfrac{1+\sqrt5}4$ から、$\cos144^\circ=-\cos36^\circ=-\dfrac{1+\sqrt5}4$、$\sin144^\circ=\sin36^\circ=\sqrt{1-\dfrac{6+2\sqrt5}{16}}=\dfrac{\sqrt{10-2\sqrt5}}4$ である。加法定理で
$$
\cos24^\circ=\cos144^\circ\cos120^\circ+\sin144^\circ\sin120^\circ=\frac{1+\sqrt5}8+\frac{\sqrt{10-2\sqrt5}}4\cdot\frac{\sqrt3}2=\frac{1+\sqrt5+\sqrt{30-6\sqrt5}}8
$$
となる。数値では $\dfrac{1+2.2360\ldots+4.0721\ldots}8=0.9135\ldots$ で、$\cos24^\circ=0.9135\ldots$ と一致する。平方根だけで書けているので、正十五角形は作図できる。Euclid『原論』第 IV 巻 命題 16 は、同じ円に内接する正三角形の 1 辺が張る弧(円周の $\dfrac13=\dfrac5{15}$)と正五角形の 1 辺が張る弧($\dfrac15=\dfrac3{15}$)の差 $\dfrac2{15}$ を 2 等分して、正十五角形を作図している(Hea08b)。
prop-crp-build の 1 をくり返すと、正三角形から正六角形・正十二角形・正二十四角形…が、正方形から正八角形・正十六角形…が、正五角形から正十角形・正二十角形…が作図できる。
一般に、$n\ge3$ を $n=2^km$($m$ は奇数)と書く。$m=1$ なら $n=2^k$($k\ge2$)で、正方形から 1 をくり返して作図できる。$m\ge3$ なら、正 $n$ 角形が作図できることと正 $m$ 角形が作図できることは同値である(2 で $n$ から $m$ へ、1 で $m$ から $n$ へ)。さらに $m=p_1^{e_1}\cdots p_s^{e_s}$ と素因数分解すると、$p_i^{e_i}$ たちは互いに素なので、2 と 3 により、正 $m$ 角形が作図できることは、すべての $i$ について正 $p_i^{e_i}$ 角形が作図できることと同値である。したがって、残る問題は $n$ が奇数の素数の冪 $p^e$ のときである。
$n$ を $3$ 以上の整数として固定し、整数 $k$ について
$$
x_k:=2\cos\frac{2\pi k}n
$$
とおく。$\cos$ は周期 $2\pi$ の偶関数なので、$x_{k+n}=x_k$、$x_{-k}=x_k$ であり、$x_0=2$ である。したがって $x_{n-k}=x_k$ でもある。
$n\ge2$ について
$$
\sum_{k=1}^{n-1}\cos\frac{2\pi k}n=-1
$$
である。とくに $n=2h+1$($h\ge1$)が奇数なら
$$
x_1+x_2+\cdots+x_h=-1
$$
である。
方針:各項に $2\sin\dfrac\theta2$ を掛けて正弦の差に直し、和をとると間の項が打ち消し合うようにする。
段 1(差に直す)。$\theta=\dfrac{2\pi}n$ とおく。加法定理 $\sin(A+B)-\sin(A-B)=2\cos A\sin B$ で $A=k\theta$、$B=\dfrac\theta2$ とすると
$$
2\sin\frac\theta2\cos k\theta=\sin\left(k+\frac12\right)\theta-\sin\left(k-\frac12\right)\theta
$$
である。
段 2(和をとる)。$k=1,2,\dots,n-1$ について足すと、右辺は隣どうしが打ち消し合い、
$$
2\sin\frac\theta2\sum_{k=1}^{n-1}\cos k\theta=\sin\left(n-\frac12\right)\theta-\sin\frac\theta2
$$
となる。$\left(n-\dfrac12\right)\theta=2\pi-\dfrac\theta2$ なので $\sin\left(n-\dfrac12\right)\theta=-\sin\dfrac\theta2$ であり、右辺は $-2\sin\dfrac\theta2$ である。
段 3(割る)。$0<\dfrac\theta2=\dfrac\pi n\le\dfrac\pi2$ なので $\sin\dfrac\theta2>0$ である。両辺を $2\sin\dfrac\theta2$ で割って、和は $-1$ である。
段 4(奇数の場合)。$n=2h+1$ のとき、$k$ と $n-k$ の項は等しい($x_{n-k}=x_k$)。$k=1,\dots,n-1$ は、$k=1,\dots,h$ と $n-k=h+1,\dots,n-1$ に分かれるので
$$
-1=\sum_{k=1}^{n-1}\cos\frac{2\pi k}n=2\sum_{k=1}^{h}\cos\frac{2\pi k}n=\sum_{k=1}^hx_k
$$
である。$\square$
整数 $a$、$b$ について
$$
x_ax_b=x_{a+b}+x_{a-b}
$$
である。
加法定理の $\cos(A+B)=\cos A\cos B-\sin A\sin B$ と $\cos(A-B)=\cos A\cos B+\sin A\sin B$ を足すと $2\cos A\cos B=\cos(A+B)+\cos(A-B)$ である。$A=\dfrac{2\pi a}n$、$B=\dfrac{2\pi b}n$ とおいて両辺を $2$ 倍すると、$x_ax_b=x_{a+b}+x_{a-b}$ となる。$\square$
この 2 つの補題だけで、余弦の和の和と積が計算できる。$n=7$ で試す。
$n=7$ とし、$x_1,x_2,x_3$ を考える($x_4=x_3$、$x_5=x_2$、$x_6=x_1$)。
(1) 和:lem-crp-sum で $h=3$ として $x_1+x_2+x_3=-1$ である。
(2) 2 つずつの積の和:lem-crp-product により
$$
x_1x_2=x_3+x_{-1}=x_3+x_1,\qquad x_1x_3=x_4+x_{-2}=x_3+x_2,\qquad x_2x_3=x_5+x_{-1}=x_2+x_1
$$
である。足すと $2(x_1+x_2+x_3)=-2$ である。
(3) 3 つの積:$x_3^2=x_6+x_0=x_1+2$ なので
$$
x_1x_2x_3=(x_3+x_1)x_3=x_3^2+x_1x_3=(x_1+2)+(x_3+x_2)=-1+2=1
$$
である。
n次方程式の解と係数の関係 により、$x_1,x_2,x_3$ は
$$
(y-x_1)(y-x_2)(y-x_3)=y^3+y^2-2y-1=0
$$
の 3 つの根である($y^2$ の係数は和の $-1$ 倍、$y$ の係数は 2 つずつの積の和、定数項は積の $-1$ 倍)。数値では $x_1=1.2469\ldots$、$x_2=-0.4450\ldots$、$x_3=-1.8019\ldots$ である。
$n=17$ とすると、lem-crp-sum により $x_1+x_2+\cdots+x_8=-1$ である。Gauss は、8 つの値 $x_1,\dots,x_8$ を半分ずつの組に分け、組の和を求めることをくり返した。組の分け方は図 1 のとおりである。
正十七角形の頂点の番号 k(点 P_k)。左は x_1, x_2, x_4, x_8 に対応する 8 頂点(青)と、x_3, x_5, x_6, x_7 に対応する 8 頂点(赤)。右はそれぞれをさらに 2 組に分けたもの
$n=17$、$x_k=2\cos\dfrac{2\pi k}{17}$ とし、
$$
y_1=x_1+x_2+x_4+x_8,\qquad y_2=x_3+x_5+x_6+x_7,
$$
$$
z_1=x_1+x_4,\qquad z_2=x_2+x_8,\qquad z_3=x_3+x_5,\qquad z_4=x_6+x_7
$$
とおく。次が成り立つ。
証明の前に、1 の積 $y_1y_2$ に現れる 16 個の積を表にしておく。lem-crp-product により $x_ax_b=x_{a+b}+x_{a-b}$ で、添字は $x_{17-k}=x_k$、$x_{-k}=x_k$ を使って $1$ 以上 $8$ 以下に直す(たとえば $x_2x_7=x_9+x_{-5}=x_8+x_5$)。
| $x_ax_b$ | $b=3$ | $b=5$ | $b=6$ | $b=7$ |
|---|---|---|---|---|
| $a=1$ | $x_4+x_2$ | $x_6+x_4$ | $x_7+x_5$ | $x_8+x_6$ |
| $a=2$ | $x_5+x_1$ | $x_7+x_3$ | $x_8+x_4$ | $x_8+x_5$ |
| $a=4$ | $x_7+x_1$ | $x_8+x_1$ | $x_7+x_2$ | $x_6+x_3$ |
| $a=8$ | $x_6+x_5$ | $x_4+x_3$ | $x_3+x_2$ | $x_2+x_1$ |
表の 32 個の項を数えると、$x_1$ から $x_8$ までがどれもちょうど 4 回ずつ現れる(たとえば $x_1$ は $(a,b)=(2,3),(4,3),(4,5),(8,7)$ の 4 か所)。
方針:各段で、2 つの数の和と積を lem-crp-sum と lem-crp-product で求め、解と係数の関係からそれらを 2 根とする 2 次方程式を作る。2 根のどちらがどちらかは、符号で見分ける。
段 1($y_1,y_2$)。$y_1+y_2=x_1+\cdots+x_8=-1$ である(lem-crp-sum)。$y_1y_2$ を展開すると、上の表の 16 個の積の和になり、表の数え上げにより
$$
y_1y_2=4(x_1+x_2+\cdots+x_8)=-4
$$
である。よって $y_1$、$y_2$ は $t^2+t-4=0$ の根で、解の公式により $\dfrac{-1\pm\sqrt{17}}2$ である。どちらが $y_1$ かを決める。$\dfrac{2\pi}{17}$ は $\dfrac{360^\circ}{17}=21.1\ldots^\circ$ で、$30^\circ$ より小さいので $x_1>2\cos30^\circ=\sqrt3>1.7$ である。同じように $x_2=2\cos42.3\ldots^\circ>2\cos45^\circ=\sqrt2>1.4$、$x_4=2\cos84.7\ldots^\circ>0$、$x_8>-2$ なので、$y_1>1.7+1.4+0-2>0$ である。$y_1y_2=-4<0$ なので $y_2<0$ であり、$y_1=\dfrac{-1+\sqrt{17}}2$、$y_2=\dfrac{-1-\sqrt{17}}2$ である。
段 2($z_1,z_2$)。$z_1+z_2=x_1+x_4+x_2+x_8=y_1$ である。積は
$$
z_1z_2=x_1x_2+x_1x_8+x_4x_2+x_4x_8=(x_3+x_1)+(x_9+x_7)+(x_6+x_2)+(x_{12}+x_4)
$$
で、$x_9=x_8$、$x_{12}=x_5$ なので $x_1+\cdots+x_8=-1$ に等しい。よって $z_1$、$z_2$ は $t^2-y_1t-1=0$ の根である。$x_1>0$、$x_4>0$ なので $z_1>0$ で、$z_1z_2=-1$ から $z_2<0$ である。この方程式の正の根は $\dfrac{y_1+\sqrt{y_1^2+4}}2$ なので、これが $z_1$ である。
段 3($z_3,z_4$)。$z_3+z_4=x_3+x_5+x_6+x_7=y_2$ である。積は
$$
z_3z_4=x_3x_6+x_3x_7+x_5x_6+x_5x_7=(x_9+x_3)+(x_{10}+x_4)+(x_{11}+x_1)+(x_{12}+x_2)
$$
で、$x_9=x_8$、$x_{10}=x_7$、$x_{11}=x_6$、$x_{12}=x_5$ なので、これも $x_1+\cdots+x_8=-1$ である。よって $z_3$、$z_4$ は $t^2-y_2t-1=0$ の根である。$x_6=2\cos127.0\ldots^\circ<0$、$x_7=2\cos148.2\ldots^\circ<0$ なので $z_4<0$ で、$z_3z_4=-1$ から $z_3>0$ である。正の根をとって $z_3=\dfrac{y_2+\sqrt{y_2^2+4}}2$ である。
段 4($x_1,x_4$)。$x_1+x_4=z_1$、$x_1x_4=x_5+x_{-3}=x_5+x_3=z_3$ なので、$x_1$、$x_4$ は $t^2-z_1t+z_3=0$ の根である。$\cos$ は $0$ から $\pi$ までで減少し、$\dfrac{2\pi}{17}<\dfrac{8\pi}{17}$ なので $x_1>x_4$ である。よって $x_1$ は大きいほうの根 $\dfrac{z_1+\sqrt{z_1^2-4z_3}}2$ である(2 根が異なる実数なので $z_1^2-4z_3>0$)。
段 5(作図できること)。$\sqrt{17}$ は作図でき、$y_1$、$y_2$ は四則で作れる。$y_1^2+4>0$、$y_2^2+4>0$ なので $z_1$、$z_3$ も四則と平方根で作れ、$z_1^2-4z_3>0$ なので $x_1$ も作れる。四則と平方根の作図により $x_1$ は作図できる数であり、$\cos\dfrac{2\pi}{17}=\dfrac{x_1}2$ も作図できる。lem-crp-cos により正十七角形は作図できる。$\square$
$\sqrt{17}=4.1231\ldots$ から順に計算すると
$$
y_1=1.5615\ldots,\quad y_2=-2.5615\ldots,\quad z_1=2.0494\ldots,\quad z_2=-0.4879\ldots,\quad z_3=0.3441\ldots,\quad z_4=-2.9057\ldots
$$
となり、最後に
$$
x_1=\frac{2.0494\ldots+\sqrt{4.2003\ldots-1.3766\ldots}}2=\frac{2.0494\ldots+1.6804\ldots}2=1.8649\ldots
$$
である。$2\cos\dfrac{2\pi}{17}=2\cos21.176\ldots^\circ=1.8649\ldots$ と一致する。途中の 2 乗の値は、$y_1^2+4=\dfrac{17-\sqrt{17}}2$、$y_2^2+4=\dfrac{17+\sqrt{17}}2$ と書ける($y_1^2=\dfrac{18-2\sqrt{17}}4$ より)。
thm-crp-17 の式の平方根を開いて整理すると
$$
\cos\frac{2\pi}{17}=-\frac1{16}+\frac{\sqrt{17}}{16}+\frac{\sqrt{34-2\sqrt{17}}}{16}+\frac18\sqrt{17+3\sqrt{17}-\sqrt{34-2\sqrt{17}}-2\sqrt{34+2\sqrt{17}}}
$$
となる(数値は $0.9324722\ldots$ で一致する)。Gauss はこの式を『整数論(Disquisitiones Arithmeticae)』(1801 年)の最後の章の第 365 条に載せ、同じ条で、$n$ が素数なら、$n-1$ が $2$ の冪のとき正 $n$ 角形が作図できること、そのような素数は $2^{2^\nu}+1$ の形に限ることを述べている(Gau01)。thm-crp-17 の証明の組の分け方は、Gauss の方法を高校の積和の公式で書き直したものである。
正三角形・正五角形・正十七角形の $3,5,17$ は、どれも $2^m+1$ の形の素数である。この形の素数には強い制限がある。
$m\ge1$ とする。$2^m+1$ が素数ならば、$m$ は $2$ の冪である($m=2^j$、$j\ge0$)。
方針:対偶を示す。$m$ が $3$ 以上の奇数の約数をもてば、$2^m+1$ が因数分解できることを示す。
段 1(因数分解の式)。$q$ が奇数のとき、
$$
(X+1)(X^{q-1}-X^{q-2}+X^{q-3}-\cdots-X+1)=X^q+1
$$
である。左辺を展開すると、$X$ を掛けた項と $1$ を掛けた項が $X^{q-1},\dots,X$ で打ち消し合い、$X^q$ と $1$ だけが残る($q$ が奇数なので、2 つ目の因数は $+X^{q-1}$ で始まり $+1$ で終わる)。
段 2(対偶)。$m$ が $2$ の冪でないとすると、$m$ は $3$ 以上の奇数 $q$ を約数にもち、$m=uq$ と書ける。$X=2^u$ とおくと $2^m+1=X^q+1$ で、段 1 により $X+1=2^u+1$ で割り切れる。$u\ge1$ なので $X+1\ge3$、$q\ge3$ なので $X+1< X^q+1$ であり、$2^m+1$ は $1$ と自分自身以外の約数 $2^u+1$ をもつ。よって $2^m+1$ は素数でない。$\square$
$2^{2^j}+1$($j\ge0$)の形の素数を Fermat 素数 という。$3,5,17,257,65537$ は Fermat 素数であり、これ以外の Fermat 素数は知られていない(Fermat数)。
次の定理が、正多角形の作図の問題への完全な答えである。
$n\ge3$ について、次の 2 つは同値である。
条件 2 の「相異なる」が肝心で、$n=9=3^2$ のように同じ Fermat 素数を 2 回以上含む $n$ は作図できない。$n=7,11,13$ は Fermat 素数でも $2$ の冪でもないので作図できない。一方 $n=15=3\cdot5$ や $n=17$ は条件 2 を満たすので作図できる。条件 2 を満たす $n$ は、既知の Fermat 素数 $3,5,17,257,65537$ からいくらでも作れる。
3 から 100 までの n のうち、正 n 角形が定規とコンパスで作図できるもの(色つき)。3, 4, 5, 6, 8, 10, 12, 15, 16, 17, 20, 24, 30, 32, 34, 40, 48, 51, 60, 64, 68, 80, 85, 96 の 24 個
2 ⇒ 1(十分性)は、prop-crp-build の後に述べたことから、Fermat 素数 $p$ について正 $p$ 角形が作図できることに帰着する。$p=3,5,17$ はこの記事で示した(ex-crp-known、thm-crp-17)。$p=257$、$65537$ も同じように「組の和」を 2 次方程式でくり返し求めて作図できるが、その一般の証明には Galois理論 を使うので、この記事では証明しない(Mil22 Corollary 3.26。Gauss による。Gau01 第 365 条)。
1 ⇒ 2(必要性)が、この節の主題である。次の 2 つの事実を使う。
どちらも高校数学の範囲を超えるので、この記事では証明しない。1 は Mil22 Corollary 1.38 で、定規とコンパスによる作図 の「大学数学で見る」でも紹介されている。2 は、$\zeta=\cos\dfrac{2\pi}n+i\sin\dfrac{2\pi}n$ を根にもつ円分多項式が次数 $\varphi(n)$ の既約な多項式であること(Mil22 Theorem 5.10。$n$ が素数の場合は Lemma 1.42)と、$\zeta$ が $2\cos\dfrac{2\pi}n=\zeta+\zeta^{-1}$ の上の 2 次方程式 $\zeta^2-2\cos\dfrac{2\pi}n\cdot\zeta+1=0$ の根であることから導かれる($n$ が素数の場合の計算が Mil22 Lemma 1.42 の直後にある)。高校の範囲で同じ結論を出せる場合は、ex-crp-seven-not と prf-ex-crp-13 で扱う。
方針:prop-crp-build の 2 で、$n$ の奇数の素因数 $p$ について正 $p$ 角形または正 $p^2$ 角形に移る。そこで thm-crp-degree の 2 つの次数を比べる。
段 1(奇数の素因数 $p$ は $2^m+1$ の形)。正 $n$ 角形が作図できるとし、$p$ を $n$ の奇数の素因数とする。$p\ge3$ は $n$ の約数なので、prop-crp-build の 2 により正 $p$ 角形が作図できる。lem-crp-cos により $\cos\dfrac{2\pi}p$ が作図でき、その $2$ 倍 $2\cos\dfrac{2\pi}p$ も作図できる数である。thm-crp-degree の 1 と 2 により、$\dfrac{\varphi(p)}2=\dfrac{p-1}2$ は $2$ の冪である。よって $p-1$ も $2$ の冪で、$p=2^m+1$($m\ge1$)と書ける。
段 2($p$ は Fermat 素数)。段 1 の $p=2^m+1$ は素数なので、lem-crp-fermat により $m$ は $2$ の冪であり、$p$ は Fermat 素数である。
段 3($p$ は 1 回しか現れない)。$p^2$ が $n$ を割り切るとすると、prop-crp-build の 2 により正 $p^2$ 角形が作図でき、段 1 と同じく $2\cos\dfrac{2\pi}{p^2}$ が作図できる。thm-crp-degree により $\dfrac{\varphi(p^2)}2=\dfrac{p(p-1)}2$ は $2$ の冪でなければならない。ところがこの数は奇数 $p\ge3$ で割り切れるので、$2$ の冪ではない。矛盾するので、$p^2$ は $n$ を割り切らない。
段 4(まとめ)。$n$ を素因数分解すると、$2$ 以外の素因数はすべて Fermat 素数(段 2)で、どれも 1 回ずつしか現れない(段 3)。これは 2 の形である。$\square$
必要性は、Gauss が『整数論』で述べながら証明を残さなかった部分で、Wantzel が 1837 年に証明した(Wan37 pp. 369–370)。
thm-crp-degree を使わずに、高校の範囲で示す。ex-crp-seven-cubic により $x_1=2\cos\dfrac{2\pi}7$ は $f(y)=y^3+y^2-2y-1=0$ の根である。有理数の根があれば、定数項 $-1$ の約数 $\pm1$ のどちらかである(3大作図問題の不可能性 の補題「有理数の根の候補」)。ところが $f(1)=-1$、$f(-1)=1$ でどちらも $0$ でない。よって $f$ は有理数の根をもたず、同じ記事の定理「有理数の根をもたない 3 次方程式」により、$x_1$ は作図できない。$\cos\dfrac{2\pi}7=\dfrac{x_1}2$ が作図できれば $x_1$ も作図できるはずなので、$\cos\dfrac{2\pi}7$ は作図できず、lem-crp-cos により正七角形は作図できない。
正九角形も、$2\cos40^\circ$ が $y^3-3y+1=0$ を満たすことから同じ方法で作図できないと分かる(3大作図問題の不可能性 の例「正九角形の作図」)。
正七角形では余弦そのものが 3 次方程式を満たした。正十三角形では $\cos\dfrac{2\pi}{13}$ の次数は $\dfrac{\varphi(13)}2=6$ で、3 次方程式はすぐには出てこない。そこで正十七角形と同じく「組の和」を使う。
正十三角形は定規とコンパスで作図できるか。thm-crp-degree を使わずに判定せよ。
方針:$x_1,\dots,x_6$($n=13$)を 2 つずつ 3 組に分け、組の和が有理数の根をもたない 3 次方程式を満たすことを示す。
段 1(組の和)。$n=13$、$x_k=2\cos\dfrac{2\pi k}{13}$ とし($x_{13-k}=x_k$)、
$$
u_1=x_1+x_5,\qquad u_2=x_2+x_3,\qquad u_3=x_4+x_6
$$
とおく。lem-crp-sum により $u_1+u_2+u_3=x_1+\cdots+x_6=-1$ である。
段 2(2 つずつの積)。lem-crp-product と $x_7=x_6$、$x_8=x_5$、$x_9=x_4$、$x_{11}=x_2$ により
$$
u_1u_2=x_1x_2+x_1x_3+x_5x_2+x_5x_3=(x_3+x_1)+(x_4+x_2)+(x_7+x_3)+(x_8+x_2)=(x_1+\cdots+x_6)+x_2+x_3=-1+u_2,
$$
$$
u_1u_3=x_1x_4+x_1x_6+x_5x_4+x_5x_6=(x_5+x_3)+(x_7+x_5)+(x_9+x_1)+(x_{11}+x_1)=-1+u_1,
$$
$$
u_2u_3=x_2x_4+x_2x_6+x_3x_4+x_3x_6=(x_6+x_2)+(x_8+x_4)+(x_7+x_1)+(x_9+x_3)=-1+u_3
$$
である(2 行目の括弧の中は $x_5+x_3+x_6+x_5+x_4+x_1+x_2+x_1$、3 行目は $x_6+x_2+x_5+x_4+x_6+x_1+x_4+x_3$ で、どちらも $x_1+\cdots+x_6$ に $u_1$ または $u_3$ を足したもの)。足すと $u_1u_2+u_1u_3+u_2u_3=-3+(u_1+u_2+u_3)=-4$ である。
段 3(3 つの積)。$u_1u_2u_3=(-1+u_2)u_3=-u_3+u_2u_3=-u_3+(-1+u_3)=-1$ である。
段 4(3 次方程式)。解と係数の関係により、$u_1,u_2,u_3$ は
$$
g(t)=t^3+t^2-4t+1=0
$$
の 3 つの根である。有理数の根の候補は $\pm1$ で、$g(1)=-1$、$g(-1)=5$ なので、$g$ は有理数の根をもたない。3大作図問題の不可能性 の定理「有理数の根をもたない 3 次方程式」により、$u_1$ は作図できない。
段 5(結論)。正十三角形が作図できるとすると、lem-crp-cos により $\dfrac{2\pi}{13}$ は作図できる角で、lem-crp-angle の 2 により $5\cdot\dfrac{2\pi}{13}$ も作図できる角である。よって $x_1$ と $x_5$ は作図でき、その和 $u_1$ も作図できるが、これは段 4 に反する。したがって正十三角形は作図できない。$\square$
$u_1=2\cos27.69\ldots^\circ+2\cos138.46\ldots^\circ=1.7709\ldots-1.4970\ldots=0.2738\ldots$、$u_2=1.3772\ldots$、$u_3=-2.6510\ldots$ である。和は $-1.0000\ldots$、積は $0.2738\ldots\times1.3772\ldots\times(-2.6510\ldots)=-1.0000\ldots$ で、$g(0.2738\ldots)=0.0205\ldots+0.0750\ldots-1.0955\ldots+1=0.0000\ldots$ となる。
番号 $k$ を $13$ で割った余りの世界で見る。$2$ の累乗を $13$ で割った余りは
$$
1,\ 2,\ 4,\ 8,\ 3,\ 6,\ 12,\ 11,\ 9,\ 5,\ 10,\ 7
$$
と、$1$ から $12$ までを 1 回ずつ通る($2$ は $13$ の原始根である)。つまり、$13$ と互いに素な余りの掛け算の群 $(\mathbb{Z}/13\mathbb{Z})^\times$ は位数 $12$ の巡回群である。$u_1=x_1+x_5$ は、$x_k=\zeta^k+\zeta^{-k}$($\zeta=\cos\dfrac{2\pi}{13}+i\sin\dfrac{2\pi}{13}$)と書くと $\zeta^1+\zeta^5+\zeta^8+\zeta^{12}$ で、指数の $\{1,5,8,12\}$ は $2^0,2^3,2^6,2^9$、つまり位数 $4$ の部分群である。$u_2$、$u_3$ はこの部分群を $2$ 倍、$4$ 倍した組(剰余類)にわたる和である。$\zeta$ を $\zeta^2$ に取りかえると $u_1\to u_2\to u_3\to u_1$ と回るので、$u_i$ たちは 3 次方程式で結ばれる。部分群の指数が $3$ なので 3 次が現れた。
正十七角形では、$3$ が $17$ の原始根で、$(\mathbb{Z}/17\mathbb{Z})^\times$ は位数 $16=2^4$ の巡回群である。その部分群の列
$$
\{\text{全体}\}\supset\{1,2,4,8,9,13,15,16\}\supset\{1,4,13,16\}\supset\{1,16\}\supset\{1\}
$$
は各段の指数が $2$ で、thm-crp-17 の $y$、$z$、$x$ は、それぞれ 2 番目、3 番目、4 番目の部分群の剰余類にわたる $\zeta^k$ の和である($\{1,16\}=\{\pm1\}$ なので $\zeta^k+\zeta^{-k}=x_k$)。指数が $2$ だから、各段で 2 次方程式を解けばよかった。一般に素数 $p$ について、この群の位数 $p-1$ が $2$ の冪のときに限り指数 $2$ の部分群の列がとれる。これが Galois理論 による Gauss–Wantzel の定理の見方で、作図可能数 の記事で証明されている。
thm-crp-gauss-wantzel のどの仮定を外すと、どの主張が崩れるかを表にする。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| Fermat 素数 $p_1,\dots,p_s$ は相異なる | (2 ⇒ 1)正 $n$ 角形は作図できる | ex-crp-square |
| $p_i$ は素数である($2^{2^j}+1$ の形の数なら何でもよいとする) | (2 ⇒ 1)正 $n$ 角形は作図できる | ex-crp-f5 |
| 道具は定規とコンパスだけ | (1 ⇒ 2)正七角形は作図できない | ex-crp-trisector |
| 作図は正確に一致する | (1 ⇒ 2)正七角形は作図できない | ex-crp-approx |
$n=9=3\cdot3$ と $n=25=5\cdot5$ は、Fermat 素数だけの積だが、同じ素数を 2 回使っている。
(1) 正九角形は作図できない(ex-crp-seven-not の後に述べたとおり)。
(2) 正二十五角形:thm-crp-degree により $2\cos\dfrac{2\pi}{25}$ の次数は $\dfrac{\varphi(25)}2=10$ で、$2$ の冪でないので作図できない。
満たす性質:$n$ の奇数の素因数はすべて Fermat 素数である。満たさない性質:それらが相異なる。破る含意:「奇数の素因数がすべて Fermat 素数なら正 $n$ 角形は作図できる」。prop-crp-build の 3 で組み合わせられるのは互いに素な角数だけで、$3$ と $3$ は互いに素でない。
$N=2^{2^5}+1=2^{32}+1=4294967297$ は $2^{2^j}+1$ の形だが、$641\cdot6700417$ と分解される(ex-crp-fermat-small の (4))。正 $N$ 角形が作図できたとすると、$641$ は $N$ の約数なので、prop-crp-build の 2 により正 $641$ 角形が作図でき、thm-crp-gauss-wantzel の 1 ⇒ 2 により $641$ は Fermat 素数でなければならない。ところが $641-1=640=2^7\cdot5$ は $2$ の冪でないので、prf-thm-crp-gauss-wantzel の段 1 に反する。よって正 $N$ 角形は作図できない。
満たす性質:$N$ は $2^{2^j}+1$ の形である。満たさない性質:$N$ は素数である。破る含意:「$2^{2^j}+1$ の形の $n$ なら正 $n$ 角形は作図できる」。Fermat 数であることより、素数であることが効いている。
定規とコンパスのほかに、任意の作図できる角を 3 等分する道具(3大作図問題の不可能性 の例「反例:目盛り付き定規なら角を 3 等分できる」の目盛り付き定規や、折り紙による作図 の折り方)を使ってよいとする。
ex-crp-seven-cubic の方程式 $y^3+y^2-2y-1=0$ に $y=z-\dfrac13$ を代入すると、$z^3-\dfrac73z-\dfrac7{27}=0$ となる。さらに $z=\dfrac{2\sqrt7}3\cos\phi$ とおくと、$z^3-\dfrac73z=\dfrac{14\sqrt7}{27}(4\cos^3\phi-3\cos\phi)=\dfrac{14\sqrt7}{27}\cos3\phi$ なので(3 倍角の公式)、方程式は
$$
\cos3\phi=\frac{7}{27}\cdot\frac{27}{14\sqrt7}=\frac{1}{2\sqrt7}=\frac{\sqrt7}{14}
$$
となる。$\cos\alpha=\dfrac{\sqrt7}{14}$ となる角 $\alpha=79.10\ldots^\circ$ は作図でき(lem-crp-angle の 1)、それを 3 等分した $\phi=\dfrac\alpha3=26.36\ldots^\circ$ から
$$
x_1=\frac{2\sqrt7}3\cos\phi-\frac13=1.7638\ldots\times0.8959\ldots-0.3333\ldots=1.2469\ldots
$$
が得られる。これは $2\cos\dfrac{2\pi}7$ に一致する。正十三角形も、prf-ex-crp-13 の $u_1$ を同じ方法で求め、$x_1$、$x_5$ を $t^2-u_1t+u_3=0$($x_1x_5=x_6+x_4=u_3$)から求めれば作図できる。
満たす性質:作図は有限回の操作である。満たさない性質:道具は定規とコンパスだけ。破る含意:「正七角形は作図できない」。角の 3 等分は 3 次方程式を解くことにあたり、平方根だけという制約が外れる。
単位円に内接する正三角形の 1 辺は $\sqrt3$ で、その半分 $\dfrac{\sqrt3}2=0.86602\ldots$ は、正七角形の 1 辺 $2\sin\dfrac\pi7=0.86776\ldots$ に近い(差は $0.0017\ldots$)。単位円の上で、長さ $\dfrac{\sqrt3}2$ の弦で円周を 7 回区切ると、1 回に進む中心角は $2\arcsin\dfrac{\sqrt3}4=51.317\ldots^\circ$ で、7 回で $359.22\ldots^\circ$ となり、$360^\circ$ に $0.78^\circ$ ほど足りない(図 3)。
満たす性質:定規とコンパスの有限回の操作で描ける。満たさない性質:頂点が正確に閉じる。破る含意:「正七角形は作図できない」は「どんな近似も描けない」という意味ではない。作図の不可能性は正確な一致についての主張である。
正七角形(青)と、単位円を長さ √3/2 の弦で 7 回区切った折れ線(赤の破線)。√3/2 は内接正三角形(緑)の 1 辺の半分で、図ではほとんど重なるが、最後の頂点は出発点に 0.78° ほど届かない
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する