算術幾何平均と積分(arithmetic-geometric mean and integrals)とは、正の数 $a,b$ について $\int_0^{\pi/2}\frac{d\theta}{\sqrt{a^2\cos^2\theta+b^2\sin^2\theta}}=\frac{\pi}{2M(a,b)}$ ($M(a,b)$ は相加平均と相乗平均を繰り返した共通の極限)が成り立つという関係である。置換 $t=\frac12\left(x-\frac{ab}x\right)$ により左辺は $a,b$ を相加平均と相乗平均に置き換えても変わらず、繰り返した先で $\frac{\pi}{2a_n}$ と $\frac{\pi}{2b_n}$ で挟めば得られる。系は $\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}}=\frac{\pi}{2M(1,\sqrt2)}$。
前提知識: 算術幾何平均(高校数学), 置換積分の使い方, Gauss積分(高校数学), 積分の評価
正の数 $a,b$ に対して、積分
$$
I(a,b)=\int_0^{\pi/2}\frac{d\theta}{\sqrt{a^2\cos^2\theta+b^2\sin^2\theta}}
$$
を考える。被積分関数は $\theta=0$ で $\frac1a$、$\theta=\frac\pi2$ で $\frac1b$ をとる、なめらかな正の関数である。$a=2$、$b=1$ のときと、$a=1.5$、$b=\sqrt2$ のときでは、グラフの形はまるで違う(図1の左)。ところが数値積分すると、どちらも $1.0782578\ldots$ になる。$1.5$ と $\sqrt2$ は、$2$ と $1$ の相加平均と相乗平均である。
$a=b$ なら被積分関数は定数 $\frac1a$ で、$I(a,a)=\frac\pi{2a}$ である。
$(a,b)=(2,1)$ では、被積分関数は $\theta=0$ で $\frac12$、$\theta=\frac\pi2$ で $1$ をとり、大きく変わる。$(a,b)=(1.5,\sqrt2)$ では、$\frac1{1.5}=0.666\ldots$ から $\frac1{\sqrt2}=0.707\ldots$ までしか変わらない。数値積分すると
$$
I(2,1)=1.0782578237\ldots,\qquad I(1.5,\sqrt2)=1.0782578237\ldots
$$
で、少なくとも表示した桁まで一致する。
算術幾何平均(高校数学) で見たように、$a,b$ から相加平均と相乗平均をとる操作を繰り返すと、2つの数は算術幾何平均 $M(a,b)$ に近づく。もし積分 $I$ の値がこの操作で変わらないなら、繰り返した先では $a_n$ と $b_n$ がほとんど等しく、$I(a_n,b_n)$ は $\frac{\pi}{2M(a,b)}$ に近いはずである。この記事では、この筋道を置換積分で証明する。
左は3組の a、b について被積分関数を重ねた図で、形は違うが面積は等しい。右は置換 t=(x−ab/x)/2 のグラフで、正の x 全体が実数全体に移る
この記事の問いは次の2つである。
| 高校の道具 | この記事での役割 |
|---|---|
| 置換積分 $t=b\tan\theta$ | 区間 $\left[0,\frac\pi2\right]$ の積分を実数全体の積分に直す |
| 置換積分 $t=\frac12\left(x-\frac{ab}x\right)$ | 相加平均と相乗平均への置き換えで値が変わらないことを示す |
| はさみうち | $\frac{\pi}{2a_n}\le I\le\frac{\pi}{2b_n}$ から極限を求める |
$a,b>0$ のとき、実数全体の積分
$$
J(a,b)=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dt}{\sqrt{(a^2+t^2)(b^2+t^2)}}
$$
は収束し、$J(a,b)=2I(a,b)$ である。また被積分関数は偶関数なので $J(a,b)=2\displaystyle\int_0^\infty\frac{dt}{\sqrt{(a^2+t^2)(b^2+t^2)}}$ である。
方針:$t=b\tan\theta$ と置換し、$\theta$ が $\pm\frac\pi2$ に近づくと $t$ が $\pm\infty$ に近づくことを使う。
段1(被積分関数の変形)。$-\frac\pi2<\theta<\frac\pi2$ で $t=b\tan\theta$ とおくと、$dt=\frac{b}{\cos^2\theta}d\theta$ である。また
$$
a^2+t^2=a^2+\frac{b^2\sin^2\theta}{\cos^2\theta}=\frac{a^2\cos^2\theta+b^2\sin^2\theta}{\cos^2\theta},\qquad b^2+t^2=\frac{b^2}{\cos^2\theta}
$$
なので、$\cos\theta>0$ に注意して
$$
\sqrt{(a^2+t^2)(b^2+t^2)}=\frac{b\sqrt{a^2\cos^2\theta+b^2\sin^2\theta}}{\cos^2\theta}.
$$
よって
$$
\frac{dt}{\sqrt{(a^2+t^2)(b^2+t^2)}}=\frac{b}{\cos^2\theta}\cdot\frac{\cos^2\theta}{b\sqrt{a^2\cos^2\theta+b^2\sin^2\theta}}\,d\theta=\frac{d\theta}{\sqrt{a^2\cos^2\theta+b^2\sin^2\theta}}.
$$
段2(有限の区間で置換する)。$0<\alpha<\frac\pi2$、$0<\beta<\frac\pi2$ とする。$t=b\tan\theta$ は $\left[-\alpha,\beta\right]$ で増加し、$\left[-b\tan\alpha,\,b\tan\beta\right]$ に移るので、置換積分により
$$
\int_{-b\tan\alpha}^{b\tan\beta}\frac{dt}{\sqrt{(a^2+t^2)(b^2+t^2)}}=\int_{-\alpha}^{\beta}\frac{d\theta}{\sqrt{a^2\cos^2\theta+b^2\sin^2\theta}}.
$$
段3(極限をとる)。左端 $-A$ と右端 $B$($A,B>0$)は $\alpha=\arctan\frac Ab$、$\beta=\arctan\frac Bb$ と対応するので、$A\to\infty$ と $B\to\infty$ を互いに独立にとることは、$\alpha\to\frac\pi2$ と $\beta\to\frac\pi2$ を互いに独立にとることと同じである。このとき右辺は $\displaystyle\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\frac{d\theta}{\sqrt{a^2\cos^2\theta+b^2\sin^2\theta}}$ に近づく。右辺の被積分関数は $\theta$ について偶関数なので、この値は $2I(a,b)$ である。したがって左辺の極限、すなわち $J(a,b)$ が存在し、$2I(a,b)$ に等しい。左辺の被積分関数は $t$ について偶関数なので、$J(a,b)=2\displaystyle\int_0^\infty$ も成り立つ。$\square$
無限区間の積分(広義積分)は、有限の区間の積分の極限として定める。Gauss積分(高校数学) でも同じ扱いをしている。収束は被積分関数の大きさからも確かめられる。$a\ge b$ なら $\sqrt{(a^2+t^2)(b^2+t^2)}\ge b^2+t^2$ なので、被積分関数は $\frac1{b^2+t^2}$ 以下で、その実数全体の積分は $\frac\pi b$ である。
$a=2$、$b=1$ なら $J(2,1)=\displaystyle\int_{-\infty}^\infty\frac{dt}{\sqrt{(4+t^2)(1+t^2)}}$ で、数値積分すると $2.1565156\ldots$ であり、その半分 $1.0782578\ldots$ は ex-agi-start の $I(2,1)$ と一致する。上の評価では $J(2,1)\le\frac\pi1=3.14\ldots$ である。
$a,b>0$ のとき
$$
I\!\left(\frac{a+b}2,\ \sqrt{ab}\right)=I(a,b)
$$
である。
方針:lem-agi-line により $J$ で示せばよい。$a_1=\frac{a+b}2$、$b_1=\sqrt{ab}$ とおき、$J(a_1,b_1)$ に $t=\frac12\left(x-\frac{ab}x\right)$($x>0$)を代入して $J(a,b)$ に変える。
段1(置換の性質)。$t(x)=\frac12\left(x-\frac{ab}x\right)$ は $x>0$ で $t'(x)=\frac12\left(1+\frac{ab}{x^2}\right)=\frac{x^2+ab}{2x^2}>0$ なので増加する。$x\to0^+$ で $t\to-\infty$、$x\to\infty$ で $t\to\infty$ である(図1の右)。
段2($b_1^2+t^2$ の計算)。$b_1^2=ab$ なので
$$
ab+t^2=ab+\frac14\left(x^2-2ab+\frac{a^2b^2}{x^2}\right)=\frac14\left(x^2+2ab+\frac{a^2b^2}{x^2}\right)=\frac14\left(x+\frac{ab}x\right)^2=\frac{(x^2+ab)^2}{4x^2}.
$$
段3($a_1^2+t^2$ の計算)。$a_1^2=\frac{(a+b)^2}4=\frac{a^2+2ab+b^2}4$ なので
$$
a_1^2+t^2=\frac14\left(a^2+2ab+b^2+x^2-2ab+\frac{a^2b^2}{x^2}\right)=\frac14\left(x^2+a^2+b^2+\frac{a^2b^2}{x^2}\right).
$$
一方 $(x^2+a^2)(x^2+b^2)=x^4+(a^2+b^2)x^2+a^2b^2$ なので、これを $x^2$ で割ると括弧の中に等しい。よって
$$
a_1^2+t^2=\frac{(x^2+a^2)(x^2+b^2)}{4x^2}.
$$
段4(被積分関数の変形)。段2・段3を掛けて平方根をとると($x>0$、$x^2+ab>0$ に注意して)
$$
\sqrt{(a_1^2+t^2)(b_1^2+t^2)}=\frac{(x^2+ab)\sqrt{(x^2+a^2)(x^2+b^2)}}{4x^2}.
$$
段1の $dt=\frac{x^2+ab}{2x^2}dx$ と合わせると
$$
\frac{dt}{\sqrt{(a_1^2+t^2)(b_1^2+t^2)}}=\frac{x^2+ab}{2x^2}\cdot\frac{4x^2}{(x^2+ab)\sqrt{(x^2+a^2)(x^2+b^2)}}\,dx=\frac{2\,dx}{\sqrt{(x^2+a^2)(x^2+b^2)}}.
$$
段5(有限の区間で置換して極限をとる)。$0< p< q$ とすると、置換積分により
$$
\int_{t(p)}^{t(q)}\frac{dt}{\sqrt{(a_1^2+t^2)(b_1^2+t^2)}}=2\int_p^q\frac{dx}{\sqrt{(x^2+a^2)(x^2+b^2)}}.
$$
$p\to0^+$、$q\to\infty$ とすると、段1により $t(p)\to-\infty$、$t(q)\to\infty$ なので、左辺は $J(a_1,b_1)$ に近づく(lem-agi-line により収束する)。右辺は lem-agi-line の最後の式により $J(a,b)$ に近づく。よって $J(a_1,b_1)=J(a,b)$ で、両辺を2で割ると $I(a_1,b_1)=I(a,b)$ である。$\square$
$$
\underbrace{\left(\left(\tfrac{a+b}2\right)^2+t^2\right)}_{\frac{(x^2+a^2)(x^2+b^2)}{4x^2}}\ \underbrace{\left(ab+t^2\right)}_{\frac{(x^2+ab)^2}{4x^2}}
$$
段3で $(a+b)^2$ の $2ab$ と、$t^2$ の展開の $-2ab$ が打ち消し合うことが、この置換の要である。$a_1$ が相加平均、$b_1$ が相乗平均でなければ、このようにきれいには因数分解できない。
$a=2$、$b=1$、$x=1$ とすると $t=\frac12(1-2)=-\frac12$ である。左辺側では $a_1^2+t^2=2.25+0.25=2.5$、$b_1^2+t^2=2+0.25=2.25$ である。右辺側では $\frac{(1+4)(1+1)}{4}=2.5$、$\frac{(1+2)^2}{4}=2.25$ で、段2・段3の式と一致する。
$a,b>0$ のとき
$$
\int_0^{\pi/2}\frac{d\theta}{\sqrt{a^2\cos^2\theta+b^2\sin^2\theta}}=\frac{\pi}{2M(a,b)}
$$
である。
方針:lem-agi-invariant を繰り返して $I(a,b)=I(a_n,b_n)$ とし、$I(a_n,b_n)$ を $a_n,b_n$ で挟んで $n\to\infty$ とする。
段1($a=b$ の場合と、$a,b$ の入れかえ)。$a=b$ なら $I(a,a)=\frac{\pi}{2a}$、$M(a,a)=a$ で成り立つ。また $\theta=\frac\pi2-\varphi$ と置換すると $\cos\theta=\sin\varphi$、$\sin\theta=\cos\varphi$ となり、$I(a,b)=I(b,a)$ である。$M(a,b)=M(b,a)$ なので、以下 $a>b$ としてよい。
段2(反復しても変わらない)。$a_0=a$、$b_0=b$、$a_{n+1}=\frac{a_n+b_n}2$、$b_{n+1}=\sqrt{a_nb_n}$ とする。lem-agi-invariant を $(a_n,b_n)$ に使うと $I(a_{n+1},b_{n+1})=I(a_n,b_n)$ なので、帰納法により、すべての $n$ で $I(a_n,b_n)=I(a,b)$ である。
段3(挟む)。算術幾何平均(高校数学) の主定理により $a_n\ge b_n>0$ である。$\cos^2\theta+\sin^2\theta=1$ より
$$
b_n^2=b_n^2(\cos^2\theta+\sin^2\theta)\le a_n^2\cos^2\theta+b_n^2\sin^2\theta\le a_n^2(\cos^2\theta+\sin^2\theta)=a_n^2.
$$
逆数をとって $0$ から $\frac\pi2$ まで積分すると(積分の評価)
$$
\frac{\pi}{2a_n}\le I(a_n,b_n)\le\frac{\pi}{2b_n}.
$$
段4(極限)。段2により真ん中は $n$ によらず $I(a,b)$ である。算術幾何平均(高校数学) の主定理により $a_n\to M(a,b)$、$b_n\to M(a,b)$ なので、両端はどちらも $\frac{\pi}{2M(a,b)}$ に近づく。はさみうちの原理により $I(a,b)=\frac{\pi}{2M(a,b)}$ である。$\square$
$a=2$、$b=1$ で段3の両端を計算すると次のようになる。
| $n$ | $\frac{\pi}{2a_n}$ | $\frac{\pi}{2b_n}$ |
|---|---|---|
| $0$ | $0.785398\ldots$ | $1.570796\ldots$ |
| $1$ | $1.047197\ldots$ | $1.110720\ldots$ |
| $2$ | $1.078024\ldots$ | $1.078491\ldots$ |
| $3$ | $1.0782578110\ldots$ | $1.0782578364\ldots$ |
真ん中の $I(2,1)=1.0782578237\ldots$ はどの行でも両端の間にあり、$n=3$ で小数第7位まで決まる。$M(2,1)=1.4567910310\ldots$ なので、$\frac{\pi}{2M(2,1)}=1.0782578237\ldots$ である。$a=3$、$b=1$ なら $M(3,1)=1.8636167832\ldots$ で、$I(3,1)=\frac{\pi}{2M(3,1)}=0.8428751774\ldots$ となり、数値積分の値と一致する。
$$ I(a,b)=I(a_1,b_1)=I(a_2,b_2)=\cdots=\lim_{n\to\infty}I(a_n,b_n)=\frac{\pi}{2M(a,b)} $$
$$
\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}}=\frac{\pi}{2M(1,\sqrt2)}=1.3110287771\ldots
$$
である。
方針:$t=\cos\varphi$ と置換して $I(\sqrt2,1)$ の形にする。
段1(置換)。$1-t^4=(1-t^2)(1+t^2)$ である。$0< s< 1$ とし、$t=\cos\varphi$($\arccos s\le\varphi\le\frac\pi2$)とおくと、$dt=-\sin\varphi\,d\varphi$、$\sqrt{1-t^2}=\sin\varphi$($\sin\varphi>0$)なので
$$
\int_0^s\frac{dt}{\sqrt{(1-t^2)(1+t^2)}}=\int_{\arccos s}^{\pi/2}\frac{\sin\varphi\,d\varphi}{\sin\varphi\sqrt{1+\cos^2\varphi}}=\int_{\arccos s}^{\pi/2}\frac{d\varphi}{\sqrt{1+\cos^2\varphi}}.
$$
段2(極限)。$s\to1^-$ で $\arccos s\to0$ なので、右辺は $\displaystyle\int_0^{\pi/2}\frac{d\varphi}{\sqrt{1+\cos^2\varphi}}$ に近づく。よって左辺の広義積分は収束し、この値に等しい。
段3(主定理を使う)。$1+\cos^2\varphi=2\cos^2\varphi+\sin^2\varphi$ なので、右辺は $I(\sqrt2,1)$ である。thm-agi-main により $I(\sqrt2,1)=\frac{\pi}{2M(\sqrt2,1)}=\frac{\pi}{2M(1,\sqrt2)}$ である。$\square$
Wei26 は、Gauss の定数 $\frac1{M(1,\sqrt2)}=0.8346268\ldots$ が $\frac2\pi\displaystyle\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}}$ に等しいことを Gauss が知っていたと述べている。この系はちょうどその等式である。
レムニスケート の定理「レムニスケートの全長」によれば、$r^2=a^2\cos2\theta$ の全長は $4a\displaystyle\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}}$ である。系を使うと
$$
4a\cdot\frac{\pi}{2M(1,\sqrt2)}=\frac{2\pi a}{M(1,\sqrt2)}=\frac{2\pi a}{1.1981402347\ldots}=5.2441151\ldots\times a
$$
となる。$M(1,\sqrt2)$ は 算術幾何平均(高校数学) で見たように数回の反復で高い精度で求まるので、この長さも速く計算できる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 被積分関数の平方根 | $\int_0^{\pi/2}\frac{d\theta}{a^2\cos^2\theta+b^2\sin^2\theta}=\frac{\pi}{2ab}$ | $(2,1)$ で $0.785\ldots$、$(1.5,\sqrt2)$ で $0.740\ldots$ となり、反復で値が変わる |
| 分母の形 $\frac1{\sqrt{\cdots}}$(第2種と取り違える) | 楕円の周の長さ $4\int_0^{\pi/2}\sqrt{a^2\sin^2\theta+b^2\cos^2\theta}\,d\theta$ | $a=3$、$b=2$ で $15.865\ldots$。主定理のような式は当てはまらない(たとえば $2\pi M(3,2)=15.548\ldots$ と一致しない) |
| 置換の範囲 $x>0$ | $x$ を $0$ 以外の実数全体に広げる | $t$ が実数全体を2回動き、右辺が2倍になる |
平方根を外した積分は、$t=\tan\theta$ と置換すると $\displaystyle\int_0^\infty\frac{dt}{a^2+b^2t^2}=\frac{1}{ab}\cdot\frac\pi2$ と計算できる。値は積 $ab$ だけで決まる。$(2,1)$ では $ab=2$、$(1.5,\sqrt2)$ では $ab=1.5\sqrt2=2.121\ldots$ で、積が変わるので値も変わる。相加平均と相乗平均の反復で変わらないのは、平方根のついた $I$ のほうである。
楕円 $\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1$ の周の長さは、平方根が分子にある別の形の積分で、楕円の周の長さ で扱っている。$a=3$、$b=2$ では数値積分で $15.8654\ldots$ だが、$2\pi M(3,2)=15.5488\ldots$ とは一致しない。この記事の主定理は、周の長さの積分には使えない。
置換 $t=\frac12\left(x-\frac{ab}x\right)$ を $x< 0$ でも使うと、$x$ が $-\infty$ から $0^-$ まで動く間にも $t$ が $-\infty$ から $\infty$ まで動く。$x>0$ と合わせると $t$ の実数全体を2回たどるので、右辺の積分は $2J(a,b)$ になり、等式が崩れる。
2つ目の反例は、$2\pi M(3,2)$ という1つの式と比べただけである。周の長さが算術幾何平均を使ってどう表せるかという問題は、この記事では扱わない。言えるのは、この記事の方法(反復で変わらない積分)が周の長さの積分にはそのまま当てはまらない、ということである。
$I(a,b)$ の形の積分は、大学数学では 第1種の完全楕円積分 と呼ばれる積分を書き直したものである。Wei26 は、算術幾何平均が第1種の完全楕円積分で表されることを述べており、この記事の主定理はその式を $\theta$ の積分の形で書いたものに当たる。楕円積分の一般論、原始関数が初等関数で書けないことなどは、この記事では扱わない(原始関数が初等関数で書けない積分の例は 初等関数で表せない原始関数 にある)。
$\int_0^1\frac{dt}{\sqrt{1-t^4}}$ はレムニスケートの弧の長さとして現れた。曲線そのものの性質、直角双曲線の反転として得られることなどは レムニスケート で扱う。
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