Brahmaguptaの定理(直交対角線)(Brahmagupta's theorem)とは、円に内接する四角形 $ABCD$ の対角線 $AC$ と $BD$ が点 $E$ で直交するとき、$E$ から辺 $BC$ に下ろした垂線を延ばすと、向かいの辺 $AD$ の中点を通るという定理である。4 つの辺のどれについても成り立つ。証明は、同じ弧に対する円周角で角を移し、垂線と $AD$ の交点 $M$ について $MA=ME=MD$ を示す。系として、外接円の半径を $R$ とすると $AB^2+CD^2=BC^2+DA^2=4R^2$ であり、外接円の中心から辺 $AD$ までの距離は $BC$ の半分である。対角線が直交しない場合や、円に内接しない場合には、垂線は対辺の中点を通らない。円に内接する四角形の面積の公式(Brahmaguptaの公式)とは別の定理である。
前提知識: 弧・弦・中心角, 円周角の定理(高校数学), 円に内接する四角形, 直径に対する円周角
円の中に、互いに直交する 2 本の弦 $AC$、$BD$ を引く。4 つの端点を円周に沿って $A$、$B$、$C$、$D$ の順に結ぶと、対角線が直交する、円に内接する四角形ができる。2 本の弦の交点を $E$ とし、$E$ から 1 つの辺 $BC$ に垂線を下ろして、反対側へ延ばしてみる。延ばした線は、向かいの辺 $AD$ のどこを通るだろうか。
この記事の定理は Brahmagupta の定理 と呼ばれる(Wei26a)。同じ名前の Brahmaguptaの公式(円に内接する四角形の面積を 4 辺で表す式)とは別の定理である。
原点 $O$ を中心とする半径 $5$ の円 $x^2+y^2=25$ の上に、$A(-5,0)$、$B(3,4)$、$C(5,0)$、$D(3,-4)$ をとる。対角線 $AC$ は $x$ 軸、対角線 $BD$ は直線 $x=3$ で、2 本は点 $E(3,0)$ で直交する。
(1) $E$ から辺 $BC$ に下ろした垂線。$\overrightarrow{BC}=(5-3,\,0-4)=(2,-4)$ である。これに垂直な向きは $(2,1)$ である(内積が $2\cdot2+(-4)\cdot1=0$)。したがって、$E$ を通り $BC$ に垂直な直線は
$$
(x,y)=(3,0)+t(2,1)\qquad(t\text{ は実数})
$$
である。
(2) 辺 $AD$ の中点。$A(-5,0)$ と $D(3,-4)$ の中点は $\left(\dfrac{-5+3}2,\dfrac{0-4}2\right)=(-1,-2)$ である。これは (1) の直線で $t=-2$ とおいた点 $(3-4,\,0-2)=(-1,-2)$ に一致する。
(3) この中点を $M(-1,-2)$ とすると、
$$
MA^2=(-5+1)^2+(0+2)^2=20,\qquad ME^2=(3+1)^2+(0+2)^2=20,\qquad MD^2=(3+1)^2+(-4+2)^2=20
$$
で、$M$ は $A$、$E$、$D$ から等しい距離 $2\sqrt5$ にある。
半径 $25$ の円 $x^2+y^2=625$ の上に、$A(-24,7)$、$B(15,20)$、$C(24,7)$、$D(15,-20)$ をとる(どれも $x^2+y^2=625$ を満たす。例えば $24^2+7^2=576+49=625$)。対角線 $AC$ は直線 $y=7$、$BD$ は直線 $x=15$ で、点 $E(15,7)$ で直交する。$E$ は原点ではないので、どちらの対角線も直径ではない。
$\overrightarrow{BC}=(9,-13)$ に垂直な向きは $(13,9)$ なので、$E$ を通り $BC$ に垂直な直線は $(x,y)=(15,7)+t(13,9)$ である。辺 $AD$ の中点は $\left(\dfrac{-24+15}2,\dfrac{7-20}2\right)=\left(-\dfrac92,-\dfrac{13}2\right)$ で、これは $t=-\dfrac32$ の点
$$
\left(15-\frac{39}2,\ 7-\frac{27}2\right)=\left(-\frac92,-\frac{13}2\right)
$$
に一致する。ここでも、$E$ から $BC$ への垂線を延ばすと、辺 $AD$ の中点を通る。
対角線が E で直交する、円に内接する四角形 ABCD。E から辺 BC への垂線 EH を延ばすと、辺 AD の中点 M を通る。同じ色の印の角は等しい
図 1 は ex-bto-start-general の四角形である。2 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 垂直な向きを内積で求める | 交点から辺への垂線 | 直交する 2 本の弦 |
| 同じ弧に対する円周角 | 角を移して二等辺三角形を 2 つ作る | 円周角の定理 |
| 三平方の定理と $2R\sin$ | 中心から辺までの距離は対辺の半分 | 交点の方べきと 2 次方程式の解 |
この記事では、次の 2 つの事実を認めて使う。どちらも 円に内接する四角形 と 円周角の定理(高校数学) で扱っている。
ex-bto-start-general の四角形で、$\angle DAC$ と $\angle DBC$ の正接を求める。
$\angle DAC$ は、$A(-24,7)$ から見た $D(15,-20)$ と $C(24,7)$ の間の角である。$AC$ は $x$ 軸に平行で、$\overrightarrow{AD}=(39,-27)$ なので、$\tan\angle DAC=\dfrac{27}{39}=\dfrac9{13}$ である。
$\angle DBC$ は、$B(15,20)$ から見た $D$ と $C$ の間の角である。$BD$ は $y$ 軸に平行で、直角三角形 $EBC$($E$ で直角)で $EB=20-7=13$、$EC=24-15=9$ なので、$\tan\angle DBC=\tan\angle EBC=\dfrac{EC}{EB}=\dfrac9{13}$ である。
2 つの角は正接が等しく、どちらも $90^\circ$ より小さいので等しい。
円に内接する四角形 $ABCD$ の対角線 $AC$ と $BD$ が点 $E$ で直交するとする。$E$ から辺 $BC$ に下ろした垂線の足を $H$ とすると、直線 $HE$ は辺 $AD$ の中点を通る。
証明の方針は、直線 $HE$ と辺 $AD$ の交点を $M$ とし、三角形 $MAE$ と $MED$ がどちらも二等辺三角形であることを示すことである。そうすれば $MA=ME=MD$ となり、$M$ は $AD$ の中点である。ex-bto-start の (3) で $MA=ME=MD$ となっていたのは、このためである。
段 0(点 $M$ をとる)。三角形 $EBC$ は $E$ で直角なので、$\angle EBC$ と $\angle ECB$ はどちらも $90^\circ$ より小さい。したがって、直角の頂点 $E$ から斜辺 $BC$ に下ろした垂線の足 $H$ は、線分 $BC$ の内部にある。半直線 $EH$ は角 $\angle BEC$ の内部を通るので、その反対向きの半直線は、角 $\angle BEC$ の対頂角 $\angle AED$ の内部を通る。角 $\angle AED$ の内部を通る半直線は線分 $AD$ と交わるので、その交点を $M$ とする。$M$ は線分 $AD$ の上にあり、$A$、$D$ とは異なる。
段 1($MA=ME$)。半直線 $EM$ と $EH$、半直線 $EA$ と $EC$ はそれぞれ反対向きなので、$\angle MEA$ と $\angle HEC$ は対頂角で等しい。直角三角形 $EHC$($H$ で直角)の内角の和より
$$
\angle HEC=90^\circ-\angle ECH=90^\circ-\angle ECB
$$
である。直角三角形 $EBC$($E$ で直角)の内角の和より
$$
\angle EBC=90^\circ-\angle ECB
$$
である。よって $\angle MEA=\angle HEC=\angle EBC$ である。$E$ は線分 $BD$ の上にあるので $\angle EBC=\angle DBC$ で、同じ弧 $CD$ に対する円周角として $\angle DBC=\angle DAC$ である。$M$ は線分 $AD$ の上、$E$ は線分 $AC$ の上にあるので $\angle DAC=\angle MAE$ である。以上をつなぐと
$$
\angle MEA=\angle HEC=\angle EBC=\angle DBC=\angle DAC=\angle MAE
$$
となる。三角形 $MAE$ で 2 つの角 $\angle MEA$ と $\angle MAE$ が等しいので、その向かいの辺も等しく、$MA=ME$ である。
段 2($MD=ME$)。半直線 $EM$ は角 $\angle AED=90^\circ$ の内部を通るので、$\angle MED=90^\circ-\angle MEA$ である。直角三角形 $AED$($E$ で直角)の内角の和より $\angle ADE=90^\circ-\angle DAE$ で、$\angle MDE=\angle ADE$、$\angle DAE=\angle MAE$ である。段 1 の $\angle MEA=\angle MAE$ を使うと
$$
\angle MDE=90^\circ-\angle MAE=90^\circ-\angle MEA=\angle MED
$$
となる。三角形 $MED$ で 2 つの角が等しいので、$MD=ME$ である。
段 3(まとめ)。段 1、段 2 より $MA=ME=MD$ である。$M$ は線分 $AD$ の上にあって $A$ と $D$ から等しい距離にあるので、$AD$ の中点である。直線 $HE$ は $M$ を通るので、辺 $AD$ の中点を通る。
段 1 で使った「同じ弧に対する円周角は等しい」が、円に内接することを使う唯一の場所である。段 1 と段 2 で「$90^\circ$ から引く」操作を使ったのは、対角線が直交すること(三角形 $EBC$ と $AED$ が $E$ で直角)による。
ex-bto-start-general の四角形で、証明の段 1・段 2 に出てくる角の正接を求める。$E(15,7)$、$EA=39$、$EB=13$、$EC=9$、$ED=27$ である。
段 1:$\tan\angle EBC=\dfrac{EC}{EB}=\dfrac9{13}$、$\tan\angle MAE=\tan\angle DAE=\dfrac{ED}{EA}=\dfrac{27}{39}=\dfrac9{13}$ である(ex-bto-inscribed)。$\angle MEA$ は半直線 $EA$(向き $(-1,0)$)と $EM$(向き $(-13,-9)$)の間の角なので、$\tan\angle MEA=\dfrac9{13}$ である。3 つの角の正接はどれも $\dfrac9{13}$ で、段 1 のとおり等しい。
段 2:$\tan\angle MDE=\dfrac{EA}{ED}=\dfrac{39}{27}=\dfrac{13}9$ で、$\angle MED=90^\circ-\angle MEA$ の正接も $\dfrac{1}{\tan\angle MEA}=\dfrac{13}9$ である。
実際、$M\left(-\dfrac92,-\dfrac{13}2\right)$ から $A$、$E$、$D$ までの距離の 2 乗は
$$
\left(\frac{39}2\right)^2+\left(\frac{27}2\right)^2=\frac{1521+729}4=\frac{2250}4
$$
で等しい($A$ と $D$ は $M$ から向きが反対で同じ長さ、$E$ は $M$ から $\left(\dfrac{39}2,\dfrac{27}2\right)$ の向き)。つまり $MA=ME=MD=\dfrac{15\sqrt{10}}2$ である。
thm-bto-main は頂点の名前をずらしても同じなので、4 つの辺のどれについても成り立つ。つまり、$E$ から $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ に下ろした垂線を延ばすと、それぞれ $CD$、$DA$、$AB$、$BC$ の中点を通る。
主定理で見つけた中点 $M$ を、外接円の中心 $O$ と結びつける。そのために、まず辺の長さの関係を示す。
円に内接する四角形 $ABCD$ の対角線が直交し、外接円の半径が $R$ のとき
$$
AB^2+CD^2=BC^2+DA^2=4R^2
$$
である。
段 1($AB^2+CD^2=BC^2+DA^2$)。対角線の交点を $E$ とすると、三角形 $EAB$、$EBC$、$ECD$、$EDA$ はどれも $E$ で直角である。三平方の定理より
$$
AB^2+CD^2=(EA^2+EB^2)+(EC^2+ED^2),\qquad BC^2+DA^2=(EB^2+EC^2)+(ED^2+EA^2)
$$
で、右辺はどちらも $EA^2+EB^2+EC^2+ED^2$ である。
段 2($BC^2+DA^2=4R^2$)。弦 $AD$ に対する円周角 $\angle ABD$ を $\varphi$ とする。直角三角形 $ABE$ の角なので $0^\circ<\varphi<90^\circ$ である。円周角の定理より、$B$ を含まない方の弧 $AD$ の中心角は $2\varphi<180^\circ$ で、この弧は劣弧である。弧・弦・中心角 の弦の長さの式より
$$
AD=2R\sin\frac{2\varphi}2=2R\sin\varphi
$$
である。同じく、弦 $BC$ に対する円周角 $\angle BAC$ は直角三角形 $ABE$ の角で、$90^\circ$ より小さいので、$BC=2R\sin\angle BAC$ である。直角三角形 $ABE$ の内角の和より $\angle BAC=\angle BAE=90^\circ-\angle ABE=90^\circ-\varphi$ なので、$BC=2R\sin(90^\circ-\varphi)=2R\cos\varphi$ である。よって
$$
BC^2+DA^2=4R^2\cos^2\varphi+4R^2\sin^2\varphi=4R^2
$$
である。段 1 と合わせて結論を得る。
段 1 は、円に内接することを使っていない。対角線が四角形の内部で直交すれば、どんな四角形でも $AB^2+CD^2=BC^2+DA^2$ である。逆に、この等式が成り立てば対角線は直交することを、Bretschneiderの公式 で示す。
円に内接する四角形 $ABCD$ の対角線が直交するとき、外接円の中心 $O$ から辺 $AD$ までの距離は $\dfrac12BC$ である。さらに、$O$ から辺 $AD$ に下ろした垂線の足は、thm-bto-main の点 $M$(辺 $AD$ の中点)である。
cor-bto-sum より $AD^2=4R^2-BC^2<4R^2$ なので $AD<2R$ で、弦 $AD$ は直径ではなく、中心 $O$ を通らない。弧・弦・中心角 の系「垂線は弧も 2 等分する」より、$O$ から弦 $AD$ に下ろした垂線の足は $AD$ の中点 $M$ で、
$$
OM^2=R^2-\left(\frac{AD}2\right)^2=\frac{4R^2-AD^2}4=\frac{BC^2}4
$$
である(最後の等号で cor-bto-sum を使った)。よって $OM=\dfrac12BC$ である。
$\dfrac12BC$ は、直角三角形 $EBC$ の斜辺の中点 $N$ と $E$ の距離でもある(直角三角形の外心は斜辺の中点。直径に対する円周角)。図 2 のように、$OM$ と $EN$ は同じ長さになる。
中心 O から辺 AD に下ろした垂線 OM の長さは、辺 BC の長さの半分に等しい。N は BC の中点
ex-bto-start-general の四角形($R=25$)で確かめる。
(1) 2 乗の和。$AB^2=39^2+13^2=1521+169=1690$、$CD^2=9^2+27^2=81+729=810$ で、$AB^2+CD^2=2500$ である。$BC^2=9^2+13^2=250$、$DA^2=39^2+27^2=1521+729=2250$ で、$BC^2+DA^2=2500$ である。どちらも $4R^2=4\cdot625=2500$ に等しい。
(2) 距離。直線 $AD$ は $A(-24,7)$ を通り向き $(39,-27)$、つまり $(13,-9)$ なので、法線の向きは $(9,13)$ で、方程式は $9x+13y=9\cdot(-24)+13\cdot7=-125$ である。原点からの距離は
$$
\frac{\lvert-125\rvert}{\sqrt{9^2+13^2}}=\frac{125}{\sqrt{250}}=\frac{125}{5\sqrt{10}}=\frac{5\sqrt{10}}2
$$
で、$\dfrac12BC=\dfrac12\sqrt{250}=\dfrac{5\sqrt{10}}2$ に等しい。また $\overrightarrow{OM}=\left(-\dfrac92,-\dfrac{13}2\right)$ は $(9,13)$ の向きで、$OM\perp AD$ である。
主定理と 2 つの系を、使う条件ごとにまとめる。
| 事実 | 式 | 証明の道具 | 対角線の直交だけでよいか | 円に内接だけでよいか |
|---|---|---|---|---|
| 垂線が対辺の中点を通る | $MA=MD$ | 円周角、二等辺三角形 | ×(ex-bto-cx-not-cyclic) | ×(ex-bto-cx-not-perp) |
| 向かい合う辺の 2 乗の和が等しい | $AB^2+CD^2=BC^2+DA^2$ | 三平方の定理 | ○ | ×(ex-bto-cx-not-perp) |
| 2 乗の和が直径の 2 乗 | $AB^2+CD^2=4R^2$ | 弦の長さ $2R\sin\varphi$ | 外接円がない | × |
| 中心から辺までの距離 | $OM=\dfrac12BC$ | 中心から弦までの距離 | 外接円がない | × |
thm-bto-main の 2 つの仮定のどちらかを外すと、垂線は対辺の中点を通らなくなる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 対角線が直交する | 円に内接する $A(-5,0)$、$B(0,5)$、$C(4,3)$、$D(0,-5)$ | 垂線と $AD$ の交点は $\left(-\dfrac{20}9,-\dfrac{25}9\right)$ で、中点 $\left(-\dfrac52,-\dfrac52\right)$ でない |
| 円に内接する | 対角線が直交するたこ形 $A(-2,0)$、$B(0,1)$、$C(4,0)$、$D(0,-1)$ | 垂線と $AD$ の交点は $\left(-\dfrac29,-\dfrac89\right)$ で、中点 $\left(-1,-\dfrac12\right)$ でない |
円に内接するが対角線が直交しない四角形。E から BC への垂線(赤)は、AD の中点(青の四角)を通らない
対角線が直交するが円に内接しないたこ形。E から BC への垂線(赤)は、AD の中点(青の四角)を通らない
半径 $5$ の円の上に $A(-5,0)$、$B(0,5)$、$C(4,3)$、$D(0,-5)$ をとる(図 3)。4 点は円周上に $A$、$B$、$C$、$D$ の順に並ぶ。$\overrightarrow{AC}=(9,3)$、$\overrightarrow{BD}=(0,-10)$ で、内積は $-30\ne0$ なので、対角線は直交しない。
対角線 $BD$ は $y$ 軸で、$AC$ は $A$ を通り傾き $\dfrac13$ の直線 $y=\dfrac13(x+5)$ なので、交点は $E\left(0,\dfrac53\right)$ である。$\overrightarrow{BC}=(4,-2)$ に垂直な向きは $(1,2)$ なので、$E$ を通り $BC$ に垂直な直線は $(x,y)=\left(t,\ \dfrac53+2t\right)$ である。辺 $AD$ は直線 $x+y=-5$ なので、$t+\dfrac53+2t=-5$ より $t=-\dfrac{20}9$ で、交点は $\left(-\dfrac{20}9,-\dfrac{25}9\right)$ である。$AD$ の中点 $\left(-\dfrac52,-\dfrac52\right)$ とは異なる。
prf-bto-main の段 1 の $\angle HEC=90^\circ-\angle ECB$ と $\angle EBC=90^\circ-\angle ECB$ のうち、後者は三角形 $EBC$ が $E$ で直角であることを使っていた。ここではそれが成り立たない。cor-bto-sum も崩れていて、$AB^2+CD^2=50+80=130$、$BC^2+DA^2=20+50=70$ である。
$A(-2,0)$、$B(0,1)$、$C(4,0)$、$D(0,-1)$ を結ぶたこ形をとる(図 4)。対角線は $x$ 軸と $y$ 軸で、原点 $E$ で直交する。
この四角形は円に内接しない。交わる 2 本の弦について、交点で分けた長さの積は等しい(方べきの定理(高校数学))が、ここでは $EA\cdot EC=2\cdot4=8$、$EB\cdot ED=1\cdot1=1$ で等しくないからである。
$\overrightarrow{BC}=(4,-1)$ に垂直な向きは $(1,4)$ なので、$E$ を通り $BC$ に垂直な直線は $(x,y)=(t,4t)$ である。辺 $AD$ は直線 $x+2y=-2$ なので、$t+8t=-2$ より $t=-\dfrac29$ で、交点は $\left(-\dfrac29,-\dfrac89\right)$ である。$AD$ の中点 $\left(-1,-\dfrac12\right)$ とは異なる。prf-bto-main の段 1 の「同じ弧に対する円周角」$\angle DBC=\angle DAC$ が成り立たないため($\tan\angle DBC=\dfrac41=4$、$\tan\angle DAC=\dfrac12$)、二等辺三角形ができない。
cor-bto-sum の段 1 で出てきた $EA^2+EB^2+EC^2+ED^2$ は、それ自体が $4R^2$ に等しい。これは、交点 $E$ を通る直交する 2 本の弦についての性質として、ベクトルで直接示せる。
中心 $O$、半径 $R$ の円の 2 本の弦 $AC$、$BD$ が、円の内部の点 $E$ で直交するとき
$$
EA^2+EB^2+EC^2+ED^2=4R^2
$$
である。
$O$ を原点とし、$\vec e=\overrightarrow{OE}$、弦 $AC$ の向きの単位ベクトルを $\vec u$、弦 $BD$ の向きの単位ベクトルを $\vec v$ とする($\vec u\cdot\vec v=0$)。弦 $AC$ の上の点は $\vec e+s\vec u$($s$ は実数)と書け、それが円周上にある条件は
$$
\lvert\vec e+s\vec u\rvert^2=R^2,\qquad\text{つまり}\qquad s^2+2(\vec e\cdot\vec u)s+\lvert\vec e\rvert^2-R^2=0
$$
である。この 2 次方程式の 2 つの解を $s_1$、$s_2$ とすると、$A$、$C$ は $\vec e+s_1\vec u$、$\vec e+s_2\vec u$ で、$EA^2+EC^2=s_1^2+s_2^2$ である。解と係数の関係 $s_1+s_2=-2\vec e\cdot\vec u$、$s_1s_2=\lvert\vec e\rvert^2-R^2$ より
$$
EA^2+EC^2=(s_1+s_2)^2-2s_1s_2=4(\vec e\cdot\vec u)^2-2\lvert\vec e\rvert^2+2R^2
$$
である。$BD$ についても同じく $EB^2+ED^2=4(\vec e\cdot\vec v)^2-2\lvert\vec e\rvert^2+2R^2$ である。$\vec u$、$\vec v$ は直交する単位ベクトルなので、$\vec e=(\vec e\cdot\vec u)\vec u+(\vec e\cdot\vec v)\vec v$ と分解でき、$(\vec e\cdot\vec u)^2+(\vec e\cdot\vec v)^2=\lvert\vec e\rvert^2$ である。足すと
$$
EA^2+EB^2+EC^2+ED^2=4\lvert\vec e\rvert^2-4\lvert\vec e\rvert^2+4R^2=4R^2
$$
となる。
証明の中の $s_1s_2=\lvert\vec e\rvert^2-R^2$ は、$-EA\cdot EC=OE^2-R^2$、つまり点 $E$ の 方べき である(方べきの定理(高校数学))。ex-bto-start-general の四角形では $EA^2+EB^2+EC^2+ED^2=39^2+13^2+9^2+27^2=1521+169+81+729=2500=4\cdot25^2$ である。
四角形の 1 辺の中点を通り、向かいの辺に垂直な直線を、その四角形の maltitude という。thm-bto-main は、「対角線が直交する円に内接する四角形では、辺 $AD$ の中点を通る maltitude が対角線の交点 $E$ を通る」と言いかえられる(rem-bto-four-sides により 4 本とも $E$ を通る)。一般の円に内接する四角形でも 4 本の maltitude は 1 点で交わり、その点は anticenter と呼ばれる(Wei26b。この記事では証明しない)。対角線が直交するときは、anticenter は対角線の交点である。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する