微分積分学の基本定理

同義語:微積分学の基本定理微積分の基本定理fundamental theorem of calculus

概要

微分積分学の基本定理(fundamental theorem of calculus)とは、微分と積分が互いに逆の操作であることを述べる定理である。有界閉区間 $[a,b]$ 上で Riemann 積分可能な $f$ について $F(x)=\int_a^xf(t)\,dt$ は連続で、$f$ が連続な点 $c$ では $F'(c)=f(c)$ となる。また、$[a,b]$ 上で連続かつ $(a,b)$ 上で微分可能な $F$ の導関数 $F'$ が Riemann 積分可能な $f$ に $(a,b)$ 上で一致するならば $\int_a^bf=F(b)-F(a)$ が成り立つ。これにより積分の計算は原始関数を見つける問題に帰着し、部分積分や置換積分の公式が導かれる。導関数が積分可能でない場合や、導関数の一致が非可算個の点で成り立たない場合(Cantor 関数)には、この等式は使えない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Riemann積分, 導関数, 平均値の定理, 連鎖律, 連続写像

動機と具体例

Riemann積分 は面積を「細かく分けた長方形の和の極限」として定める。たとえば $\int_0^1x^2\,dx=\frac13$ は、$n$ 等分の上限和 $\frac{(n+1)(2n+1)}{6n^2}$ と下限和 $\frac{(n-1)(2n-1)}{6n^2}$ がともに $\frac13$ に近づくことから求まる。同じ計算を $[0,x]$ で行うと $F(x):=\int_0^xt^2\,dt=\frac{x^3}{3}$ となり、これを微分すると $F'(x)=x^2$、すなわち被積分関数に戻る。
逆に、微分して $\sin x$ になる関数 $-\cos x$ が分かっていれば、
$$ \int_0^\pi\sin x\,dx=(-\cos\pi)-(-\cos0)=1+1=2 $$
と、Riemann 和の極限を計算せずに積分の値が求まる。
この 2 つの事実、すなわち「積分してから微分すると元の関数に戻る」と「微分したものを積分すると両端の値の差になる」をまとめたものが微分積分学の基本定理(fundamental theorem of calculus)であり、微積分学の基本定理とも呼ばれる。面積の問題(積分)と接線の問題(微分)という別々の起源をもつ 2 つの操作が互いに逆であることを示し、積分の計算を原始関数を見つける問題に置き換える。どちらの主張を「第 1 部」と呼ぶかは文献によって逆になるので、本記事では番号を使わず内容で呼ぶ(Leb §5.3、p. 200 は原始関数の差で積分を計算する主張を first form、積分を微分する主張を second form と呼ぶ)。
関数 $F$ が区間 $I$ 上で微分可能で $F'=f$ を満たすとき、$F$ を $f$ の $I$ 上の原始関数という。$F(b)-F(a)$ を $\bigl[F(x)\bigr]_a^b$ とも書く。

定理

積分と微分の関係は、積分の上端を動かした関数を考えると見える。

積分の上端についての微分

$a< b$ とし、$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ を Riemann 積分可能、$|f(x)|\leq K$($x\in[a,b]$)とする。
$$ F(x):=\int_a^xf(t)\,dt\qquad(x\in[a,b]) $$
とおくと、次が成り立つ。

  1. すべての $x,y\in[a,b]$ で $|F(x)-F(y)|\leq K|x-y|$ であり、特に $F$ は $[a,b]$ 上で連続である。
  2. $f$ が点 $c\in[a,b]$ で連続ならば、$F$ は $c$ で微分可能で $F'(c)=f(c)$ である($c$ が端点なら片側の微分係数)。
小区間上の積分を $f(c)$ で挟む

Riemann積分 の記事の定理「区間についての加法性」(と $\int_y^x=-\int_x^y$ の約束)により、$x,y\in[a,b]$ について $F(x)-F(y)=\int_y^xf$ である。$y< x$ なら、同記事の命題「積分の単調性と絶対値の評価」の 2 により $\bigl|\int_y^xf\bigr|\leq K(x-y)$ であり、$x< y$ の場合も同様なので 1 を得る。
2:$\varepsilon>0$ に対し、$t\in[a,b]$、$|t-c|<\delta$ なら $|f(t)-f(c)|<\varepsilon$ となる $\delta>0$ をとる。$x\in[a,b]$、$0<|x-c|<\delta$ とする。$x>c$ なら $[c,x]$ 上で $f(c)-\varepsilon\leq f(t)\leq f(c)+\varepsilon$ なので、同じ評価により
$$ \bigl(f(c)-\varepsilon\bigr)(x-c)\leq\int_c^xf\leq\bigl(f(c)+\varepsilon\bigr)(x-c) $$
である。$x< c$ なら $[x,c]$ 上で同じ評価をして $\bigl(f(c)-\varepsilon\bigr)(c-x)\leq\int_x^cf\leq\bigl(f(c)+\varepsilon\bigr)(c-x)$ である。どちらの場合も $\frac{F(x)-F(c)}{x-c}=\frac{\int_c^xf}{x-c}$($x< c$ では $=\frac{\int_x^cf}{c-x}$)なので
$$ \left|\frac{F(x)-F(c)}{x-c}-f(c)\right|\leq\varepsilon $$
となる。$\varepsilon$ は任意なので $F'(c)=f(c)$ である。

この言明と証明は Leb Theorem 5.3.3(p. 202)と同じである。連続関数については、次のように原始関数の存在と一意性が得られる。

連続関数の原始関数

$I$ を 2 点以上を含む区間、$f\colon I\to\mathbb{R}$ を連続関数、$d\in I$ とする。$F(x):=\int_d^xf(t)\,dt$($x\in I$)は $f$ の $I$ 上の原始関数である。また、$f$ の $I$ 上の原始関数は、$F$ に定数を加えたものに限る。

有界閉区間に制限する

$x\in I$ を任意にとり、$d$ と $x$ を含み $I$ に含まれる有界閉区間 $[\alpha,\beta]$($\alpha<\beta$)をとる($x$ が $I$ の内点なら $x$ が $[\alpha,\beta]$ の内点になるようにとる)。$f$ は $[\alpha,\beta]$ 上で連続なので積分可能であり(Riemann積分 の記事の定理「連続関数の可積分性」)、$y\in[\alpha,\beta]$ について $F(y)=\int_\alpha^yf-\int_\alpha^df$ である。右辺の第 1 項に thm-ftc-derivative-of-integral を使うと、$F$ は $x$ で微分可能で $F'(x)=f(x)$ である。後半:$G$ も原始関数なら $(G-F)'=0$ が $I$ 上で成り立ち、平均値の定理 の記事の系「導関数が0なら定数」により $G-F$ は定数である。

次の主張は、原始関数が分かれば積分が計算できることを述べる。被積分関数の連続性は仮定しない。

原始関数による積分の計算

$a< b$ とし、$F\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ は $[a,b]$ 上で連続、$(a,b)$ 上で微分可能とする。$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ が Riemann 積分可能で、すべての $x\in(a,b)$ で $F'(x)=f(x)$ ならば、
$$ \int_a^bf(x)\,dx=F(b)-F(a) $$
が成り立つ。

各小区間で平均値の定理を使う

$P=\{x_0,\dots,x_n\}$ を $[a,b]$ の任意の分割とする。$F$ は各 $[x_{i-1},x_i]$ 上で連続、$(x_{i-1},x_i)$ 上で微分可能なので、平均値の定理 により $F(x_i)-F(x_{i-1})=F'(c_i)\,\Delta x_i=f(c_i)\,\Delta x_i$ となる $c_i\in(x_{i-1},x_i)$ がある。$m_i\leq f(c_i)\leq M_i$(記号は Riemann積分 の記事の上限和・下限和の定義による)なので
$$ L(P,f)\leq\sum_{i=1}^{n}\bigl(F(x_i)-F(x_{i-1})\bigr)=F(b)-F(a)\leq U(P,f) $$
である(中央の和は打ち消し合う)。$P$ について下限和の上限と上限和の下限をとると、$\underline{\int_a^b}f\leq F(b)-F(a)\leq\overline{\int_a^b}f$ となり、$f$ は積分可能なので両端はともに $\int_a^bf$ に等しい。

この言明と証明は Leb Theorem 5.3.1(pp. 200–201)と同じである。同書は Exercise 5.3.3(p. 205)で、$F'=f$ が有限個の点で成り立たなくても($F$ が連続なら)同じ結論が成り立つことを演習にしている。
$f$ が $[a,b]$ 上で連続なら、thm-ftc-evaluation は cor-ftc-antiderivative からも得られる。$G(x):=\int_a^xf$ と $F$ はともに $(a,b)$ 上の $f$ の原始関数なので $F-G$ は $(a,b)$ 上で定数であり、$F$ と $G$ は $[a,b]$ 上で連続なので $F-G$ は $[a,b]$ 上でも定数である。よって $F(b)-F(a)=G(b)-G(a)=\int_a^bf$ となる。thm-ftc-evaluation の意義は、$f$ が連続でなくても積分可能でありさえすれば使える点にある。

例と反例

原始関数による計算

$(-\cos x)'=\sin x$ なので $\int_0^\pi\sin x\,dx=\bigl[-\cos x\bigr]_0^\pi=2$ である。$\bigl(\frac{x^3}3\bigr)'=x^2$ なので $\int_0^1x^2\,dx=\frac13$ であり、Riemann 和から求めた値と一致する。$x>0$ で $(\log x)'=\frac1x$(連鎖律 の記事の例「対数関数と一般の冪」)なので、$x>0$ について $\int_1^x\frac{dt}{t}=\log x$ である。

上端が関数の場合

$\Phi(y):=\int_0^y\sin(t^2)\,dt$ は、cor-ftc-antiderivative により $\Phi'(y)=\sin(y^2)$ を満たす。$h(x):=\int_0^{x^2}\sin(t^2)\,dt=\Phi(x^2)$ は 連鎖律 により微分可能で
$$ h'(x)=\Phi'(x^2)\cdot2x=2x\sin(x^4) $$
である。$\sin(t^2)$ の原始関数を式で書き下さなくても、$h'$ はこのように計算できる(Leb Exercise 5.3.2、p. 205 と同じ型の計算)。

反例:被積分関数に跳びがある場合

$[-1,1]$ 上で $f(x)=-1$($x<0$)、$f(x)=1$($x\geq0$)とすると、$f$ は積分可能で $F(x):=\int_0^xf=|x|$ である。$F$ は $x=0$ で微分可能でない。$f$ は $0$ で連続であるという性質を満たさず、thm-ftc-derivative-of-integral の 2 の結論が $c=0$ で成り立たない。
また、$g(x)=0$($x\ne0$)、$g(0)=1$ とすると $G(x):=\int_0^xg=0$ がすべての $x$ で成り立ち、$G$ は $0$ で微分可能だが $G'(0)=0\ne1=g(0)$ である。不連続点では、$F$ が微分可能でない場合も、微分可能でも $F'(c)=f(c)$ とならない場合もある(Leb p. 203)。

反例:導関数が積分可能でない場合

$F(x):=x^2\sin(1/x^2)$($0< x\leq1$)、$F(0):=0$ とする。$\bigl|\frac{F(x)-F(0)}{x}\bigr|\leq|x|$ なので $F'(0)=0$ であり、$x>0$ では
$$ F'(x)=2x\sin\frac1{x^2}-\frac2x\cos\frac1{x^2} $$
である。したがって $F$ は $[0,1]$ 上で微分可能である。しかし $x_k:=1/\sqrt{2k\pi}$($k=1,2,\dots$)では $F'(x_k)=-2\sqrt{2k\pi}$ であり、$F'$ は $[0,1]$ 上で有界でないので Riemann 積分可能でない。$F'$ は Riemann 積分可能であるという性質を満たさず、thm-ftc-evaluation の等式 $\int_0^1F'=F(1)-F(0)=\sin1$ は、Riemann 積分としては左辺が意味をもたない。どこでも微分可能な関数の導関数であっても、積分できるとは限らない。なお $0<\varepsilon<1$ について $\int_\varepsilon^1F'=F(1)-F(\varepsilon)\to\sin1$ なので、広義積分 としては等式が成り立つ。

反例:導関数が至るところにはない単調連続関数

Cantor集合 $C\subset[0,1]$ に付随する Cantor 関数 $\overline F\colon[0,1]\to[0,1]$ は、連続かつ単調非減少で、$\overline F(0)=0$、$\overline F(1)=1$ を満たし、$[0,1]\setminus C$ の各点で微分可能で微分係数は $0$ である(Cantor集合 の記事の命題「Cantor関数の構成」)。$f:=0$ とおけば $f$ は積分可能で、$\overline F'=f$ が $[0,1]\setminus C$ で成り立つが、$\int_0^1f=0\ne1=\overline F(1)-\overline F(0)$ である。
thm-ftc-evaluation の「すべての $x\in(0,1)$ で $\overline F'(x)=f(x)$」という仮定が破れている。実際、もし $(0,1)$ のすべての点で $\overline F'=0$ なら、平均値の定理 の記事の系「導関数が0なら定数」により $\overline F$ は定数となって $\overline F(1)\ne\overline F(0)$ に反するので、$C$ のある点では $\overline F$ は微分可能でないか、微分係数が $0$ でない。実際には $C$ のどの点でも $\overline F$ は(有限の値で)微分可能でない:$x\in C$ をとり、$x$ を含む、Cantor 集合の構成の第 $n$ 段に現れる長さ $3^{-n}$ の区間を $[\alpha_n,\beta_n]$ とする。以下の記号 $I_a$、$t_a$ は Cantor集合 の記事の定義「Cantor集合の構成」の直前の式、$\varphi$ は同記事の定理「3進表示による特徴づけ」の直前の式、$F$ は同記事の命題「Cantor関数の構成」のものである。$[\alpha_n,\beta_n]=I_a=[t_a,t_a+3^{-n}]$、$a=(2r_0,\dots,2r_{n-1})$($r_k\in\{0,1\}$)とすると、$\alpha_n=t_a=\varphi(r_0,\dots,r_{n-1},0,0,\dots)$、$\beta_n=t_a+3^{-n}=\varphi(r_0,\dots,r_{n-1},1,1,\dots)$(残りの桁の和は $\sum_{k\geq n}2\cdot3^{-(k+1)}=3^{-n}$)であり、同記事の定理「3進表示による特徴づけ」により $\varphi$ は $\{0,1\}^{\mathbb{N}}$ から $C$ への全単射なので、$\alpha_n,\beta_n$ はともに $C$ の点である。$C$ 上で $\overline F=F$ なので、$F$ の定義から
$$\overline F(\beta_n)-\overline F(\alpha_n)=\sum_{k\geq n}\frac1{2^{k+1}}=2^{-n}$$
であり、$\overline F$ はこの区間の上で $2^{-n}$ だけ増える。$(x-\alpha_n)+(\beta_n-x)=3^{-n}$ かつ $\bigl(\overline F(x)-\overline F(\alpha_n)\bigr)+\bigl(\overline F(\beta_n)-\overline F(x)\bigr)=2^{-n}$ なので、2 つの差分商 $\bigl(\overline F(x)-\overline F(\alpha_n)\bigr)/(x-\alpha_n)$、$\bigl(\overline F(\beta_n)-\overline F(x)\bigr)/(\beta_n-x)$(定義できる方)の少なくとも一方は $(3/2)^n$ 以上であり、その差分商をとる点は $x$ から距離 $3^{-n}$ 以下の $C$ の点である。$n\to\infty$ で $(3/2)^n\to\infty$ なので、$x$ にいくらでも近い点との差分商が有界でなく、$\overline F$ は $x$ で有限の微分係数をもたない。例外が有限個なら結論は保たれる(Leb Exercise 5.3.3)が、$C$ は非可算集合であり、このように例外がすべての点で生じると結論は成り立たない(Cantor集合 の記事の注意「反例:微積分の基本定理が成り立たない単調連続関数」も参照)。

積分の計算法則

基本定理と微分の公式を組み合わせると、積分の計算法則が得られる。以下、区間上で微分可能で導関数が連続な関数を $C^1$ 級という。

部分積分の公式

$F,G\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ が $C^1$ 級ならば、
$$ \int_a^bF(x)G'(x)\,dx=\bigl[F(x)G(x)\bigr]_a^b-\int_a^bF'(x)G(x)\,dx $$
が成り立つ。

積の微分を積分する

積の微分法により $(FG)'=F'G+FG'$ であり、右辺は連続なので積分可能である。thm-ftc-evaluation により $\int_a^b(F'G+FG')=F(b)G(b)-F(a)G(a)$ であり、Riemann積分 の記事の定理「積分の線形性」で左辺を 2 つに分ければよい。

たとえば $F(x)=x$、$G(x)=e^x$ とすると $\int_0^1xe^x\,dx=\bigl[xe^x\bigr]_0^1-\int_0^1e^x\,dx=e-(e-1)=1$ である。部分積分は Taylorの定理 の積分形の剰余項の証明にも使われる(Leb Exercise 5.3.5、p. 205)。

置換積分の公式

$g\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ を $C^1$ 級とし、$J$ を $g([a,b])\subset J$ を満たす 2 点以上を含む区間、$f\colon J\to\mathbb{R}$ を連続関数とする。このとき
$$ \int_a^bf\bigl(g(x)\bigr)\,g'(x)\,dx=\int_{g(a)}^{g(b)}f(u)\,du $$
が成り立つ。

原始関数に連鎖律を使う

$H(y):=\int_{g(a)}^yf(u)\,du$($y\in J$)とおくと、cor-ftc-antiderivative により $H$ は $J$ 上で微分可能で $H'=f$ である。連鎖律 により $H\circ g$ は $[a,b]$ 上で微分可能で、$(H\circ g)'(x)=f(g(x))\,g'(x)$ であり、これは連続なので積分可能である。thm-ftc-evaluation により
$$ \int_a^bf\bigl(g(x)\bigr)g'(x)\,dx=H\bigl(g(b)\bigr)-H\bigl(g(a)\bigr)=\int_{g(a)}^{g(b)}f(u)\,du $$
となる。

この言明と証明は Leb Theorem 5.3.5(p. 204)と同じである。$g$ が単調であることや単射であることは要らない。

置換積分の例と仮定の役割

$g(x)=x^2$ とすると $\int_0^{\sqrt\pi}x\cos(x^2)\,dx=\frac12\int_0^{\sqrt\pi}\cos(x^2)\cdot2x\,dx=\frac12\int_0^\pi\cos u\,du=\frac12(\sin\pi-\sin0)=0$ である(Leb Example 5.3.6、p. 204)。
反例として $\int_{-1}^1\frac{\log|x|}{x}\,dx$ に $g(x)=\log|x|$、$g'(x)=1/x$ を形式的に当てはめると $\int_{g(-1)}^{g(1)}u\,du=\int_0^0u\,du=0$ となるが、これは誤りである。$g$ は $[-1,1]$ 上で $C^1$ 級であるという性質を満たさず($x=0$ で定義されない)、被積分関数は $0$ の近くで有界でないので、左辺は Riemann 積分として意味をもたない(Leb Example 5.3.7、p. 204)。公式は仮定を確かめてから使う必要がある。

補足

Stokesの定理への一般化

thm-ftc-evaluation は「区間上での $F'$ の積分は、区間の境界(両端)での $F$ の値で決まる」と読める。この形を多変数に広げたものが、平面の Green の定理(Leb2 §10.6、p. 128)や、微分形式 についての Stokesの定理 $\int_Md\omega=\int_{\partial M}\omega$ である。区間 $[a,b]$ に $b$ で $+$、$a$ で $-$ の向きをつけ、$0$ 次の微分形式 $F$ について $\int_{[a,b]}dF=F(b)-F(a)$ とみたものが、ちょうどこの定理になる(微分形式 の記事の説明による)。

Lebesgue積分での形

ex-ftc-cantor が示すように、「ほとんどいたるところで $F'=f$」だけでは $\int_a^bf=F(b)-F(a)$ は従わない。Lebesgue積分 の枠組みでこの等式を扱うには、$F$ についての追加の条件が要る。Cantor集合 の記事の注意「反例:微積分の基本定理が成り立たない単調連続関数」は、Cantor 関数が満たさない性質として絶対連続性(絶対連続関数)を挙げている。

関連項目

参考文献

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