順序数

概要

順序数(Ordinal number)とは、集合論において要素の「並び順」や「階層」を一般化した概念であり、自然数を無限の彼方まで拡張したものである。要素の「個数」を表す基数(Cardinal number)とは異なり、順序数は順序構造を区別するため、同じ無限個の要素を持つ集合であっても、並べ方が異なれば異なる順序数が対応する。現代数学ではJohn von Neumannによる構成法(ある順序数はそれより小さいすべての順序数の集合である)が標準的な定義として採用されており、超限帰納法の基盤として不可欠な役割を果たしている。

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定義

順序数は、整列集合の「順序型(order type)」を代表する標準的な集合として定義される。現代集合論では、John von Neumannによる以下の定義が最も一般的である。

von Neumannの順序数の定義

集合 $\alpha$順序数(Ordinal)であるとは、以下の2条件を満たすことをいう。

  1. 推移的集合である:
    $\alpha$ の任意の要素は、また $\alpha$ の部分集合である。
    $$\forall x \in \alpha, \quad x \subseteq \alpha$$
  2. $\in$ によって整列されている:
    $\alpha$ は包含関係 $\in$ に関して整列集合である(すなわち、$\alpha$ の任意の空でない部分集合は $\in$ に関する最小元を持つ)。

この定義によれば、順序数は「自分より小さいすべての順序数を集めた集合」として構成される。
例えば、順序数 $\alpha$ の順序関係 $<$ は、帰属関係 $\in$ によって定義される($\beta < \alpha \iff \beta \in \alpha$)。

具体的な構成と直観

順序数は $0$ から始まり、次々と「次の数」を作ることで生成される。

有限順序数(自然数)
  • $0 := \emptyset$
  • $1 := \{0\} = \{ \emptyset \}$
  • $2 := \{0, 1\} = \{ \emptyset, \{ \emptyset \} \}$
  • $3 := \{0, 1, 2\}$
  • ...
  • $n+1 := n \cup \{n\}$
    このように、自然数は有限の順序数とみなされる。

自然数をすべて集めると、最初の無限順序数が現れる。

超限順序数
  • $\omega$ (オメガ):
    最小の無限順序数。自然数全体の集合に相当する。
    $$\omega := \{0, 1, 2, \dots \}$$
  • $\omega + 1$:
    $\omega$ の次にくる順序数。
    $$\omega + 1 := \omega \cup \{\omega\} = \{0, 1, 2, \dots, \omega\}$$
    直感的には、「$0, 1, 2, \dots$」という列の後ろにもう一つ要素を置いた並び順に対応する。
  • さらに $\omega + 2, \dots, \omega \cdot 2, \dots, \omega^2, \dots$ と無限に続いていく。

基数との決定的違い

「基数(濃度)」と「順序数」は、有限の世界では一致するが、無限の世界では明確に区別される。

順序数 vs 基数
  • 基数 (Cardinals): 「大きさ」を測る。全単射があれば同じとみなす。
  • 順序数 (Ordinals): 「並び方」を測る。順序同型でなければ区別する。
    例として、$\omega$$\omega + 1$ を考える。
  • 基数としては等しい: $|\omega| = |\omega + 1| = \aleph_0$ (可算無限)。
    (無限ホテルに1人客が増えても部屋数は足りるのと同じ理屈)
  • 順序数としては異なる: $\omega \neq \omega + 1$
    $\omega$ には最大元がないが、$\omega + 1$ には最大元($\omega$)があるため、順序構造として別物である。

順序数の演算

順序数の足し算や掛け算は、通常の数とは異なり非可換(順序を入れ替えると結果が変わる)である。これは順序構造(並べる順番)が結果に影響するためである。

演算の非可換性
  1. 加法:
    $1 + \omega = \omega$:
    「1個の点の後ろに無限列を置く」 $\to$ 最初の一点は無限列に吸収され、順序型は単なる無限列 ($\omega$) と変わらない。
    $\omega + 1 \neq \omega$:
    「無限列の後ろに1個の点を置く」 $\to$ 最大元ができるため、元の無限列とは構造が異なる。
  2. 乗法:
    $2 \cdot \omega = \omega$:
    「長さ2の列」を $\omega$ 回並べる $\to$ 結局は一直線の無限列になる。
    $\omega \cdot 2 = \omega + \omega \neq \omega$:
    「長さ $\omega$ の列」を 2回並べる $\to$ $0, 1, \dots$ の後ろにまた $0', 1', \dots$ が続く形になり、$\omega$ より長い。

超限帰納法

順序数の最も重要な応用は、数学的帰納法を無限の順序数に対して拡張した**超限帰納法**(Transfinite Induction)である。

(超限帰納法)

順序数全体のクラス $\mathbf{ON}$ 上の述語 $P(\alpha)$ について、以下の3ステップを示せば、すべての順序数 $\alpha$ について $P(\alpha)$ が真となる。

  1. 零元: $P(0)$ が成り立つ。
  2. 後続順序数: $P(\alpha)$ ならば $P(\alpha + 1)$ が成り立つ。
  3. 極限順序数: 極限順序数 $\lambda$ に対し、すべての $\beta < \lambda$$P(\beta)$ が成り立つならば、$P(\lambda)$ も成り立つ。

これにより、Zornの補題の証明や、ボレル集合族の階層構造の解析など、可算無限ステップでは終わらない構成が可能になる。

重要な性質

順序数全体は非常に整然とした構造を持っているが、それ自体は集合にはなれない。

Burali-Fortiのパラドックス

順序数全体の集まり $\mathbf{ON}$ は、順序数と同様の性質(整列性など)を持つが、もしこれが集合であると仮定すると、$\mathbf{ON}$ 自身が順序数となり、自分自身より大きい順序数($\mathbf{ON} \in \mathbf{ON}$)という矛盾が生じる。
したがって、$\mathbf{ON}$ は集合ではなく真のクラスである。

関連項目