数列の一般項の推定と帰納法

同義語:guessing general terms of sequences

概要

数列の一般項の推定と帰納法(guessing general terms of sequences)とは、漸化式などで決まる数列の最初の数項を計算して一般項 $g(n)$ を推定し、数学的帰納法で正しさを示す方法である。最初の $m$ 項と、$a_{n+1}$ を $a_1,\dots,a_n$ から決める漸化式が与えられたとき、$g(1),\dots,g(m)$ が初めの $m$ 項と一致し、$g(n+1)$ が $g(1),\dots,g(n)$ について同じ漸化式を満たせば、すべての $n$ で $a_n=g(n)$ である。数項の一致だけでは足りない。有限個の値を通り次の値が自由な多項式が必ずあり、円周上の $n$ 点を結ぶ弦による領域の個数は $1,2,4,8,16$ の次が $31$ になる。一般項が $d$ 次以下の多項式と分かっていれば、$d+1$ 個の値で決まる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 数列, 数学的帰納法, 漸化式, 多項式

高校での出発点:数項を計算して規則を見つける

漸化式や和の条件で決まる数列の一般項は、いつも公式で求まるとは限らない。そのとき使うのが「最初の数項を計算して一般項を推定し、数学的帰納法で証明する」という方法である。まず 3 つの例を見る。

例 1:分数の漸化式

$a_1=1$、$a_{n+1}=\dfrac{a_n}{1+a_n}$ とする。項を計算すると
$$ a_2=\frac{1}{1+1}=\frac12,\qquad a_3=\frac{1/2}{1+1/2}=\frac{1/2}{3/2}=\frac13,\qquad a_4=\frac{1/3}{1+1/3}=\frac{1/3}{4/3}=\frac14 $$
となる。$a_n=\dfrac1n$ と推定できる。
推定を帰納法で確かめる。$n=1$ では $a_1=1=\frac11$ である。$a_k=\frac1k$ と仮定すると
$$ a_{k+1}=\frac{1/k}{1+1/k}=\frac{1/k}{(k+1)/k}=\frac1{k+1} $$
である(分子と分母に $k$ を掛けた)。よってすべての $n\ge1$ で $a_n=\frac1n$ である。

例 2:和と項の関係

数列 $\{a_n\}$ が $a_1=1$ と、すべての $n\ge1$ で
$$ a_1+a_2+\dots+a_n=n^2a_n $$
を満たすとする。$n=2$ では $1+a_2=4a_2$ から $a_2=\frac13$ である。$n=3$ では $1+\frac13+a_3=9a_3$ から $8a_3=\frac43$、$a_3=\frac16$ である。$n=4$ では $1+\frac13+\frac16+a_4=16a_4$ から $15a_4=\frac32$、$a_4=\frac1{10}$ である。
$1,\frac13,\frac16,\frac1{10}$ の分母 $1,3,6,10$ は $\frac{n(n+1)}2$($1$ から $n$ までの和)なので、$a_n=\dfrac{2}{n(n+1)}$ と推定できる。この推定の証明には、1 つ前の項だけでなく、それまでのすべての項を使う(ex-ggt-sum-proof)。

例 3:規則が途中で破れる

円周上に $n$ 個の点をとり、すべての 2 点を線分(弦)で結ぶ。どの 3 本の弦も円の内部の同じ 1 点を通らないように点を置くとき、円の内部がいくつの部分(領域)に分かれるかを数える。点が $1,2,3,4,5$ 個のとき、領域は
$$ 1,\ 2,\ 4,\ 8,\ 16 $$
個である(図1)。$2^{n-1}$ と推定したくなるが、$6$ 個の点では $32$ ではなく $31$ 個になる。

円周上の !FORMULA[39][38042][0] 個の点(!FORMULA[40][1408178050][0])を、どの 3 本の弦も内部の 1 点で交わらないように置き、すべて弦で結んだ図。領域の個数は !FORMULA[41][1853191642][0] と倍々に増えるが、6 点では !FORMULA[42][1123042][0] になることを見る図。 円周上の $n$ 個の点($n=1,\dots,6$)を、どの 3 本の弦も内部の 1 点で交わらないように置き、すべて弦で結んだ図。領域の個数は $1,2,4,8,16$ と倍々に増えるが、6 点では $31$ になることを見る図。
例 1・例 2 では推定が正しく、帰納法で証明できた。例 3 では、5 項まで合っていた推定が 6 項目で外れた。この記事では次の問いに答える。

  1. 推定した式が正しいことは、何を確かめれば言えるか。→ thm-ggt-unique
  2. 最初の何項かが合っていることは、どこまで当てになるか。→ prop-ggt-interpolation、prop-ggt-poly-unique
  3. 例 3 の正しい一般項は何か。なぜ 5 項まで $2^{n-1}$ と一致したのか。→ prop-ggt-circle、ex-ggt-circle-binomial
  4. 推定の手がかりには、どんなものがあるか。→ 節「推定の手がかり」
    高校の手順この記事での見方ボックス
    数項を計算して一般項を推定する候補の式を作る(まだ証明ではない)ex-ggt-first
    $n=1$ を確かめ、$n=k$ から $n=k+1$ を示す同じ初項・同じ漸化式を満たす数列は 1 つしかないthm-ggt-unique
    それまでのすべての項を仮定する強い帰納法(前の項をまとめて使う)thm-ggt-unique、ex-ggt-sum-proof
    数項が合っても安心できない有限個の値を通る多項式はいくらでもあるprop-ggt-interpolation
    多項式と分かっていれば数項で決まる次数 $d$ 以下の多項式は $d+1$ 個の値で決まるprop-ggt-poly-unique

漸化式は数列を 1 つに決める

帰納法による証明が「推定の正しさ」を示す仕組みを、はっきりさせておく。

漸化式で定まる数列

$m\ge1$ とし、最初の $m$ 項 $a_1,\dots,a_m$ の値を与える。$n\ge m$ について、$a_{n+1}$ を $n$ と $a_1,\dots,a_n$ から決める規則
$$ a_{n+1}=F_n(a_1,a_2,\dots,a_n) $$
($F_n$ は $n$ 個の数に 1 つの数を対応させる規則)を与える。これを漸化式という。$F_n$ が $a_n$ だけを使うとき、つまり $a_{n+1}=F_n(a_n)$ の形のとき、1 つ前の項だけで決まる漸化式という。

漸化式の形
  1. 例 1 は $m=1$、$F_n(a_n)=\frac{a_n}{1+a_n}$ で、1 つ前の項だけで決まる。
  2. $a_1=1$、$a_{n+1}=a_n+2n+1$ は $m=1$、$F_n(a_n)=a_n+2n+1$ で、規則が $n$ にもよる。項は $1,4,9,16,25$ である。
  3. 例 2 は、$n+1$ の式 $a_1+\dots+a_{n+1}=(n+1)^2a_{n+1}$ から $a_{n+1}$ を解くと $\bigl((n+1)^2-1\bigr)a_{n+1}=a_1+\dots+a_n$、すなわち
    $$ a_{n+1}=\frac{a_1+a_2+\dots+a_n}{n(n+2)} $$
    で、それまでのすべての項を使う($(n+1)^2-1=n(n+2)$ を使った)。
  4. $a_1=1$、$a_2=2$、$a_{n+2}=2a_{n+1}-a_n+2$ は $m=2$ で、2 つ前までの項を使う。項は $1,2,5,10,17$ である。
推定した式の正しさの確かめ方

数列 $\{a_n\}$ が def-ggt-recurrence の最初の $m$ 項と漸化式 $a_{n+1}=F_n(a_1,\dots,a_n)$($n\ge m$)を満たすとする。$n\ge1$ で定まる式 $g(n)$ が、次の 2 つを満たすとする。

  • (出発点)$g(1)=a_1,\ g(2)=a_2,\ \dots,\ g(m)=a_m$。
  • (進み方)すべての $n\ge m$ で $g(n+1)=F_n\bigl(g(1),g(2),\dots,g(n)\bigr)$。
    このとき、すべての $n\ge1$ で $a_n=g(n)$ である。特に、1 つ前の項だけで決まる漸化式 $a_{n+1}=F_n(a_n)$($m=1$)では、$g(1)=a_1$ と「すべての $n\ge1$ で $g(n+1)=F_n(g(n))$」を確かめればよい。
それまでの全部が一致することを帰納法で示す

方針:「$k=1,2,\dots,n$ のすべてで $a_k=g(k)$」という主張を $P(n)$ とし、$n\ge m$ についての帰納法で示す。前の項をまとめて主張に入れておくので、漸化式がそれまでのすべての項を使っても、普通の帰納法で進める(数学的帰納法と整列性 の強い帰納法と同じ考え方である)。
段 1(出発点 $P(m)$)。仮定の(出発点)から、$k=1,\dots,m$ で $a_k=g(k)$ である。
段 2($P(n)$ から $P(n+1)$)。$n\ge m$ で $P(n)$ が成り立つとする。つまり $a_1=g(1),\dots,a_n=g(n)$ である。漸化式と(進み方)から
$$ a_{n+1}=F_n(a_1,\dots,a_n)=F_n\bigl(g(1),\dots,g(n)\bigr)=g(n+1) $$
である。2 つ目の等号で $P(n)$ を使い、3 つ目の等号で(進み方)を使った。$P(n)$ と合わせて $P(n+1)$ が成り立つ。
段 3(まとめ)。段 1・段 2 から、すべての $n\ge m$ で $P(n)$ が成り立つ。どの $k\ge1$ についても、$n\ge\max(k,m)$ となる $n$ で $P(n)$ を見ると $a_k=g(k)$ である。$\square$

証明を見ると、推定の正しさに必要なのは「出発点の一致」と「進み方の一致」の 2 つだけで、最初に計算した数項は証明に使っていない。数項の計算は、$g(n)$ の候補を見つけるための手段である。どちらか一方だけでは足りないことは、ex-ggt-no-base、ex-ggt-few-bases で見る。

定理を当てはめる
  1. $a_1=1$、$a_{n+1}=a_n+2n+1$:項 $1,4,9,16,25$ から $g(n)=n^2$ と推定する。$g(1)=1$ で、$g(n)+2n+1=n^2+2n+1=(n+1)^2=g(n+1)$ なので、thm-ggt-unique から $a_n=n^2$ である。
  2. $a_1=1$、$a_2=2$、$a_{n+2}=2a_{n+1}-a_n+2$:項 $1,2,5,10,17$ は平方数に $1$ を足したもの $0+1,\ 1+1,\ 4+1,\ 9+1,\ 16+1$ なので、$g(n)=(n-1)^2+1$ と推定する。出発点は $g(1)=1$、$g(2)=2$ である。進み方は、$n\ge1$ について
    $$ 2g(n+1)-g(n)+2=2(n^2+1)-\bigl((n-1)^2+1\bigr)+2=n^2+2n+2=g(n+2) $$
    である($g(n+2)=(n+1)^2+1=n^2+2n+2$)。よって $a_n=(n-1)^2+1$ である。
例 2 の推定を証明する

例 2 の漸化式 $a_{n+1}=\dfrac{a_1+\dots+a_n}{n(n+2)}$($m=1$、$a_1=1$)に対して、$g(n)=\dfrac2{n(n+1)}$ が(進み方)を満たすことを確かめる。
段 1(和の計算)。$\dfrac2{k(k+1)}=2\Bigl(\dfrac1k-\dfrac1{k+1}\Bigr)$ なので、$k=1$ から $n$ まで足すと中の項が打ち消し合い
$$ g(1)+g(2)+\dots+g(n)=2\Bigl(1-\frac1{n+1}\Bigr)=\frac{2n}{n+1} $$
である(この和の求め方は 数列の和と差分 で扱う)。
段 2(進み方)。段 1 から
$$ F_n\bigl(g(1),\dots,g(n)\bigr)=\frac{2n/(n+1)}{n(n+2)}=\frac2{(n+1)(n+2)}=g(n+1) $$
である。$g(1)=\frac2{2}=1=a_1$ なので、thm-ggt-unique から $a_n=\dfrac2{n(n+1)}$ である。このとき和は $a_1+\dots+a_n=\frac{2n}{n+1}$ で、実際 $n^2a_n=\frac{2n}{n+1}$ と一致する。

有限個の項からは一般項は決まらない

例 3 のように、数項が合っていても推定が外れることがある。これは運が悪かったのではなく、有限個の値だけからは一般項がまったく決まらないことの表れである。

有限個の値を通る多項式

$m\ge1$ とし、数 $c_1,c_2,\dots,c_m$ と $d$ を自由に与える。このとき、$n$ の多項式 $g(n)$ で、次数が $m$ 以下で
$$ g(1)=c_1,\ g(2)=c_2,\ \dots,\ g(m)=c_m,\qquad g(m+1)=d $$
となるものがある。つまり、最初の $m$ 項がどうであっても、次の項を好きな値にする「一般項らしい式」が作れる。

1 点ずつ条件を足していく

方針:$c_{m+1}:=d$ とおく。$j=1,2,\dots,m+1$ について、「次数 $j-1$ 以下で、$k=1,\dots,j$ で $P_j(k)=c_k$ となる多項式 $P_j$」を $j$ についての帰納法で作る。$P_{m+1}$ が求める $g$ である。このような多項式があることは 恒等式と未定係数法 の Lagrange の補間公式からも分かる(点を $1,2,\dots,m+1$ にとった特別な場合)。ここでは 1 点ずつ条件を足す別の作り方(Newton の形)で示す。鍵は、$(n-1)(n-2)\cdots(n-j)$ が $n=1,\dots,j$ で $0$ になることである。
段 1($j=1$)。定数 $P_1(n):=c_1$ は次数 $0$ で、$P_1(1)=c_1$ である。
段 2($P_j$ から $P_{j+1}$ を作る)。$P_j$ ができたとし、
$$ P_{j+1}(n):=P_j(n)+t\,(n-1)(n-2)\cdots(n-j) $$
とおく($t$ は後で決める数)。$k=1,\dots,j$ では、積 $(k-1)(k-2)\cdots(k-j)$ の中に $k-k=0$ が現れるので積は $0$ で、$P_{j+1}(k)=P_j(k)=c_k$ である。
段 3($t$ を決める)。$n=j+1$ では積は $j\cdot(j-1)\cdots1=j!$ なので、$P_{j+1}(j+1)=P_j(j+1)+t\cdot j!$ である。そこで
$$ t:=\frac{c_{j+1}-P_j(j+1)}{j!} $$
とすると、$P_{j+1}(j+1)=c_{j+1}$ となる。$P_j$ の次数は $j-1$ 以下、足した項の次数は $j$ 以下なので、$P_{j+1}$ の次数は $j$ 以下である。
段 1〜段 3 から $P_{m+1}$ が作れ、これが求める $g$ である。$\square$

同じ数項から違う続きを作る
  1. $1,2,3$ の次:$g(n)=n+(n-1)(n-2)(n-3)$ は $n=1,2,3$ で $1,2,3$ だが、$g(4)=4+3\cdot2\cdot1=10$、$g(5)=5+4\cdot3\cdot2=29$ である。「$1,2,3$ の次は $4$」は、$g(n)=n$ という推定を選んだときの答えにすぎない。
  2. $1,2,4,8$ の次:証明の手順どおりに作る。$P_1=1$。$P_2=1+t(n-1)$ で $P_2(2)=1+t=2$ から $t=1$、$P_2=n$。$P_3=n+t(n-1)(n-2)$ で $P_3(3)=3+2t=4$ から $t=\frac12$。$P_3(4)=4+\frac12\cdot3\cdot2=7$ なので、$P_4=P_3+t(n-1)(n-2)(n-3)$ で $7+6t=8$ から $t=\frac16$ である。できた 3 次式
    $$ P_4(n)=n+\frac{(n-1)(n-2)}2+\frac{(n-1)(n-2)(n-3)}6 $$
    は $n=1,2,3,4$ で $1,2,4,8$ となり、$P_4(5)=5+6+4=15$ である。$1,2,4,8$ の次は $16$($2^{n-1}$)とも $15$(この 3 次式)とも言える。

逆に、一般項が「次数 $d$ 以下の多項式」だと前もって分かっていれば、$d+1$ 個の項で決まる。

多項式なら有限個の値で決まる

$g(n)$、$h(n)$ を次数 $d$ 以下の多項式とする。$n=1,2,\dots,d+1$ で $g(n)=h(n)$ ならば、$g$ と $h$ は多項式として等しく、すべての $n$ で $g(n)=h(n)$ である。

差の根の個数を数える

方針:差 $g-h$ が $d+1$ 個の根をもつことから、差が $0$ であることを導く。使う事実は「$0$ でない次数 $d$ 以下の多項式の根は $d$ 個以下である」で、証明は 恒等式と未定係数法 にある。この命題そのものも、同じ記事の多項式の一致の定理(異なる $d+1$ 個の点で値が一致すれば多項式として等しい)で、点を $1,2,\dots,d+1$ にとった特別な場合である。
段 1。$u(n):=g(n)-h(n)$ は次数 $d$ 以下の多項式で、仮定から $u(1)=u(2)=\dots=u(d+1)=0$ である。つまり $u$ は $d+1$ 個の異なる根 $1,2,\dots,d+1$ をもつ。
段 2。もし $u$ が $0$ でない多項式なら、根は $d$ 個以下のはずで、段 1 に反する。よって $u$ は $0$ の多項式で、$g=h$ である。$\square$

多項式と分かっているときの推定
  1. $S_n=1^2+2^2+\dots+n^2$ は $n$ の 3 次式で表せることが分かっている(数列の和と差分)。$S_1,S_2,S_3,S_4=1,5,14,30$ と、$\frac{n(n+1)(2n+1)}6$ の $n=1,2,3,4$ での値 $\frac{1\cdot2\cdot3}6=1$、$\frac{2\cdot3\cdot5}6=5$、$\frac{3\cdot4\cdot7}6=14$、$\frac{4\cdot5\cdot9}6=30$ が一致するので、prop-ggt-poly-unique($d=3$)により、すべての $n$ で $S_n=\frac{n(n+1)(2n+1)}6$ である。
  2. ex-ggt-interpolation の 2 の 3 次式 $P_4$ と $2^{n-1}$ は、$n=1,2,3,4$ で一致するが $n=5$ で異なる。$2^{n-1}$ は 3 次以下の多項式ではない。もしそうなら、$2^{n-1}$ と $P_4$ はどちらも 3 次以下の多項式で、$n=1,2,3,4$ で一致するので、prop-ggt-poly-unique($d=3$)によりすべての $n$ で一致するはずだが、$n=5$ で $2^4=16\ne15=P_4(5)$ となって矛盾する。したがって、4 つの値が一致していても prop-ggt-poly-unique は使えない(3 次以下の多項式どうしでないと結論は出ない)。

円を弦で分ける問題

例 3 の正しい一般項を求め、なぜ 5 項まで $2^{n-1}$ と一致したのかを見る。

円の内部の領域の個数

円周上に $n$ 個($n\ge1$)の点を、どの 3 本の弦も円の内部の同じ 1 点を通らないようにとり、すべての 2 点を弦で結ぶ。このとき、円の内部は
$$ R(n)=\binom n4+\binom n2+1 $$
個の領域に分かれる($n<4$ では $\binom n4=0$、$n<2$ では $\binom n2=0$ とする)。

弦を 1 本ずつ引いて数える

方針:弦がない状態(領域 $1$ 個)から始め、弦を 1 本ずつ引いて、そのたびに領域がいくつ増えるかを数える。増える数は、その弦がすでに引いた弦と交わる回数で決まる。最後に、交点の総数を 4 点の組の個数として数える。なお、段 1 の「円に内接する四角形の 2 本の対角線は内部で交わり、向かい合う辺どうしは内部で交わらない」と、段 2 の「弦の 1 片は、それが通る領域を 2 つに分ける」は、図形的な事実として使い、ここでは証明しない。
段 1(交点の個数)。円の内部の 2 本の弦の交点を考える。2 本の弦が端点を共有すると、交わるのはその端点(円周上)だけなので、内部の交点は端点が 4 つとも異なる 2 本の弦からできる。4 点を円周上の順に $P,Q,R,S$ とすると、円に内接する四角形 $PQRS$ の 2 本の対角線 $PR$、$QS$ は内部で交わり、残りの組(辺どうし $PQ$ と $RS$、$PS$ と $QR$)は内部で交わらない。よって、4 点の組 1 つにつき内部の交点がちょうど 1 つできる。3 本の弦が同じ点を通らないので、異なる 4 点の組からできる交点は異なる。したがって、内部の交点は全部で $\binom n4$ 個ある。
段 2(1 本引くと増える数)。弦を 1 本ずつ引く。ある弦を引くとき、それがすでに引いた弦と内部で $j$ 回交わるとする。3 本が 1 点を通らないので、$j$ 個の交点は異なり、弦は $j+1$ 個の片に分かれる。各片は、それが通る領域を 2 つに分ける。よって領域は $j+1$ 個増える。
段 3(合計する)。弦は全部で $\binom n2$ 本ある。$i$ 本目の弦を引くときの交わる回数を $j_i$ とすると、最後の領域の個数は
$$ 1+\sum_{i}(j_i+1)=1+\binom n2+\sum_i j_i $$
である。各交点は、そこを通る 2 本の弦のうち後から引いたほうを引くときに、ちょうど 1 回数えられる。よって $\sum_i j_i$ は内部の交点の総数で、段 1 から $\binom n4$ である。したがって領域は $\binom n4+\binom n2+1$ 個である。$\square$

領域の個数と 2 の冪
  1. 値を計算すると、$R(1),\dots,R(8)$ は
    $$ 1,\ 2,\ 4,\ 8,\ 16,\ 31,\ 57,\ 99 $$
    である。たとえば $R(6)=\binom64+\binom62+1=15+15+1=31$、$R(7)=35+21+1=57$ である。
  2. Pascal の三角形の関係 $\binom n4=\binom{n-1}4+\binom{n-1}3$、$\binom n2=\binom{n-1}2+\binom{n-1}1$ と $1=\binom{n-1}0$ を使うと
    $$ R(n)=\binom{n-1}0+\binom{n-1}1+\binom{n-1}2+\binom{n-1}3+\binom{n-1}4 $$
    と書き直せる。一方、二項定理から $2^{n-1}=\binom{n-1}0+\binom{n-1}1+\dots+\binom{n-1}{n-1}$ である(二項定理と組合せの恒等式)。$n\le5$ では $n-1\le4$ なので、2 つの和は同じ項からなり、$R(n)=2^{n-1}$ である。$n=6$ では $2^5$ の和にある最後の項 $\binom55=1$ が $R(6)$ にはないので、$R(6)=32-1=31$ である(図2)。

!FORMULA[337][1747684174][0](橙)と領域の個数 !FORMULA[338][-1328279655][0](青)を、縦軸を対数目盛にして並べた図。!FORMULA[339][827880858][0] では一致し、!FORMULA[340][36584097][0] から !FORMULA[341][1107676815][0] が小さくなって差が広がることを見る図。 $2^{n-1}$(橙)と領域の個数 $R(n)=\binom n4+\binom n2+1$(青)を、縦軸を対数目盛にして並べた図。$n\le5$ では一致し、$n=6$ から $R(n)$ が小さくなって差が広がることを見る図。
$R(n)$ は $n$ の 4 次式なので、prop-ggt-poly-unique により、4 次以下の多項式で $1,2,4,8,16$ を通るものは $R(n)$ だけである。「5 項まで $2^{n-1}$ と一致した」のは、4 次式 $R(n)$ の最初の 5 つの値が、二項係数の和として $2^{n-1}$ と同じ形になっていたからである(ex-ggt-circle-binomial)。

推定の手がかり

一般項の候補を見つけるための、よく使う手がかりを例で見る。どれも候補を作る手段で、正しさは thm-ggt-unique で確かめる。

手がかり 1:差をとる

$a_1=3$、$a_{n+1}=2a_n-n$ とする。項は $3,5,8,13,22,39,\dots$ で、形が見えにくい。隣り合う項の差(階差)をとると $2,3,5,9,17$、さらにその差をとると $1,2,4,8$ で、$2$ の冪が現れる。そこで $a_n$ から $2^{n-1}$ を引いてみると、$3-1,\ 5-2,\ 8-4,\ 13-8,\ 22-16$ はそれぞれ $2,3,4,5,6$ となり、$n+1$ である。候補は $g(n)=2^{n-1}+n+1$ である。
確かめる。$g(1)=1+1+1=3=a_1$ である。進み方は
$$ 2g(n)-n=2\bigl(2^{n-1}+n+1\bigr)-n=2^n+n+2=g(n+1) $$
である($g(n+1)=2^{n}+(n+1)+1$)。thm-ggt-unique から $a_n=2^{n-1}+n+1$ である。差をとる方法は 数列の和と差分 で詳しく扱う。

手がかり 2:分数の形をそろえる・比をとる
  1. 例 2 の $1,\frac13,\frac16,\frac1{10}$ は、分子を $2$ にそろえると $\frac22,\frac26,\frac2{12},\frac2{20}$ となる。分母 $2,6,12,20$ は $1\cdot2,\ 2\cdot3,\ 3\cdot4,\ 4\cdot5$ なので、$\frac2{n(n+1)}$ が見える。
  2. 同じ数列で、隣り合う項の比 $\frac{a_{n}}{a_{n-1}}$ をとると $\frac13,\ \frac12,\ \frac35$ で、$\frac12=\frac24$ と書き直して $\frac13,\ \frac24,\ \frac35$ と並べると $\frac{n-1}{n+1}$($n=2,3,4$)と読める。実際、例 2 の条件で $n$ の式から $n-1$ の式を引くと $a_n=n^2a_n-(n-1)^2a_{n-1}$、すなわち $(n^2-1)a_n=(n-1)^2a_{n-1}$ で、$n\ge2$ で両辺を $(n-1)(n+1)$ で割ると $a_n=\frac{n-1}{n+1}a_{n-1}$ となる。この 1 つ前の項だけの漸化式からも、thm-ggt-unique で同じ結論が得られる。
手がかり 3:変換してから推定する

例 1 の $1,\frac12,\frac13,\frac14$ は、逆数をとると $1,2,3,4$ になる。実際、漸化式の逆数をとると $\frac1{a_{n+1}}=\frac1{a_n}+1$ で、逆数は公差 $1$ の等差数列である。このように、うまく変換すると推定を経ずに一般項が求まることがある。分数の形の漸化式を変換で解く方法は 分数型の漸化式と1次分数変換 で扱う。

例と反例

推定と帰納法で、手順の一部を省くと結論が崩れる。

省いたこと崩れる主張ボックス
(進み方)の確認数項が合えば一般項が正しいex-ggt-circle-intro、ex-ggt-euler
(出発点)の確認漸化式を満たせば一般項が正しいex-ggt-no-base
出発点を $m$ 個とも確かめる1 項目が合えば十分ex-ggt-few-bases
一般項が多項式であること$d+1$ 個の値で一般項が決まる(prop-ggt-poly-unique)ex-ggt-poly の 2
反例:40 個続けて素数でも次は素数とは限らない

$f(n)=n^2+n+41$ は、$n=0,1,2,\dots,39$ の 40 個の値 $41,43,47,53,\dots,1601$ がすべて素数である。しかし $n=40$ では $f(40)=1600+40+41=1681=41^2$ で素数ではない。$n=41$ でも $f(41)=41\cdot43$ である。この例は Euler による(Cri24 §6.1.2)。
満たす性質:最初の 40 個で「素数である」が成り立つ。満たさない性質:$n$ から $n+1$ へ性質が受け継がれることの証明(進み方)。破る主張:「数項で成り立てば、すべての $n$ で成り立つ」。

反例:出発点を確かめない

例 1 の漸化式 $a_{n+1}=\frac{a_n}{1+a_n}$($a_1=1$)に対して、$h(n)=\frac1{n+1}$ も進み方を満たす:$\frac{h(n)}{1+h(n)}=\frac{1/(n+1)}{(n+2)/(n+1)}=\frac1{n+2}=h(n+1)$。しかし $h(1)=\frac12\ne a_1$ で、$h(n)$ は $a_n=\frac1n$ と一致しない($h$ は $a_1=\frac12$ から始めた数列である)。
満たす性質:thm-ggt-unique の(進み方)。満たさない性質:(出発点)。破る主張:thm-ggt-unique の結論 $a_n=h(n)$。崩れるのは証明の段 1 である。

反例:出発点が足りない

$a_1=1$、$a_2=2$、$a_{n+2}=2a_{n+1}-a_n+2$($m=2$)に対して、$h(n)=n^2$ も進み方を満たす:$2(n+1)^2-n^2+2=n^2+4n+4=(n+2)^2$。$h(1)=1=a_1$ も合っている。しかし $h(2)=4\ne a_2=2$ で、実際の $a_n=(n-1)^2+1$(ex-ggt-apply の 2)とは $n\ge2$ で一致しない。
満たす性質:(進み方)と、1 項目の一致。満たさない性質:2 項目の一致。破る主張:thm-ggt-unique の結論。漸化式が 2 つ前までの項を使うなら、出発点も 2 つ確かめる必要がある(数学的帰納法と整列性 の、出発点が足りない強い帰納法の反例と同じ)。

大学数学で見る:再帰的定義と差分による補間

大学数学で見ると:漸化式による定義

thm-ggt-unique は、漸化式を満たす数列が「高々 1 つ」であることを言っている。逆に、漸化式を満たす数列が「少なくとも 1 つ」あること(前の項から次の項を順に決めていけば、すべての $n$ で値の決まった数列ができること)は、高校では当たり前として使っている。大学では、この 2 つをまとめて「再帰的定義の定理」と呼び、自然数の性質(帰納法)から証明する(再帰的定義)。例 2 のように「和と項の関係」で数列を与えるときは、ex-ggt-recurrence-forms の 3 のように $a_{n+1}$ について解ける($n(n+2)\ne0$)ことを確かめて、はじめて漸化式による定義になる。

大学数学で見ると:差分による補間

prop-ggt-interpolation の証明で作った多項式は、Newton の補間公式と呼ばれる形をしている。差をとる操作 $(\Delta a)_n:=a_{n+1}-a_n$ を使うと、どんな数列 $a_1,a_2,\dots$ も
$$ a_n=\sum_{j=0}^{n-1}(\Delta^ja)_1\binom{n-1}{j} $$
と書ける($\Delta^j$ は差を $j$ 回とる操作。この公式の証明は 数列の和と差分 の定理「Newton の前進差分公式」にある。そこでは番号を $0$ から始めて $a_n=\sum_{k=0}^n\binom nk(\Delta^ka)_0$ と書いている)。数列が $d$ 次以下の多項式なら、$j>d$ の $(\Delta^ja)_1$ は $0$ になる。例 3 の $R(n)$ では、差を何回かとった数列の初項 $(\Delta^ja)_1$ が $j=0,1,2,3,4$ ですべて $1$、$j\ge5$ で $0$ になる。$R(1),R(2),\dots$ と、その差の数列の初項を並べると
$$ \begin{aligned} &1,\ 2,\ 4,\ 8,\ 16,\ 31,\ \dots\\ &1,\ 2,\ 4,\ 8,\ 15,\ \dots\\ &1,\ 2,\ 4,\ 7,\ \dots\\ &1,\ 2,\ 3,\ \dots\\ &1,\ 1,\ \dots \end{aligned} $$
で、各行の初項が $1$ である。これが ex-ggt-circle-binomial の $R(n)=\sum_{j=0}^4\binom{n-1}j$ である。$2^{n-1}$ は差をとっても $2^{n-1}$ のままで、差の初項がいつまでも $1$ なので、和 $\sum_{j=0}^{n-1}\binom{n-1}j$ の項がすべて残る。差分の計算は 数列の和と差分 で扱う。
線形代数の言葉では、次数 $d$ 以下の多項式全体は $d+1$ 次元のベクトル空間で、$n=1,\dots,d+1$ での値を並べる対応はその空間から $d+1$ 個の数の組への 1 対 1 の対応である(prop-ggt-poly-unique が 1 対 1 であること、prop-ggt-interpolation がすべての組に届くことにあたる)。一方、数列全体は無限次元で、有限個の値を決めても残りの自由度は無限にある。これが「有限個の項からは一般項は決まらない」の大学での言い方である(Lagrange補間、ベクトル空間)。

数学オリンピックの問題は、この記事の主題(推定と帰納法による一般項の決定)に直接合うものを選べなかったので入れていない。

さらに先へ

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する