Droz-Farnyの直線定理(Droz-Farny line theorem)とは、直角三角形でない三角形 $ABC$ の垂心 $H$ を通り互いに垂直な 2 直線を、どちらも頂点を通らないようにとると、2 直線が 3 辺を含む直線からそれぞれ切り取る 3 本の線分の中点が一直線上にある、という定理である。垂心を原点にとると $\vec a\cdot\vec b=\vec b\cdot\vec c=\vec c\cdot\vec a=k$ で、辺 $BC$ を含む直線は $\vec a\cdot\vec x=k$ と書け、3 つの中点は方向 $(a_2b_2c_2,-a_1b_1c_1)$ の直線の上に並ぶ(2 直線を座標軸にとる)。中点の代わりに 3 本の線分を同じ比に分ける点でも一直線上にある。2 直線が直交しない場合や、垂心の代わりに外心・重心を通る場合には、一般には成り立たない。
前提知識: 三角形の垂心, ベクトルの内積, 直線の方程式と点と直線の距離, 2直線のなす角
三角形 $ABC$ の 3 本の垂線は 1 点で交わり、その点を垂心 $H$ という(三角形の垂心)。この垂心を通り、互いに垂直な 2 本の直線を引いてみる。2 本の直線は、3 つの辺(またはその延長)のそれぞれと 1 点ずつで交わるので、辺ごとに 2 つの交点ができる。その 2 点を結ぶ線分の中点を、3 つの辺についてとる。3 つの中点はどう並ぶだろうか。
垂心を原点にとり、2 本の直線を座標軸にとると、計算がとても簡単になる。まず具体的な三角形で試す。
$A(1,3)$、$B(-2,-1)$、$C(4,-3)$ とする。3 つの角はおよそ $63.4^\circ$、$71.6^\circ$、$45.0^\circ$ で、鋭角三角形である。
(1) 垂心は原点 $H(0,0)$ である。実際、$\overrightarrow{HA}=(1,3)$ と $\overrightarrow{BC}=(6,-2)$ の内積は $6-6=0$、$\overrightarrow{HB}=(-2,-1)$ と $\overrightarrow{CA}=(-3,6)$ の内積は $6-6=0$ なので、$H$ は $A$ からの垂線と $B$ からの垂線の上にある(ベクトルの内積)。
(2) 3 辺を含む直線の方程式は次のとおりである(直線の方程式と点と直線の距離)。
$$
BC:\ x+3y=-5,\qquad CA:\ 2x+y=5,\qquad AB:\ 4x-3y=-5
$$
(3) $H$ を通る直交 2 直線として、$x$ 軸と $y$ 軸をとる。各直線と 2 本の軸の交点、その中点は次のとおりである。
$A(-2,1)$、$B(-3,3)$、$C(-6,-3)$ とする。$\angle A$ はおよそ $108.4^\circ$ で、鈍角三角形である。原点を $H(0,0)$ とすると、$\overrightarrow{HA}\cdot\overrightarrow{BC}=(-2)(-3)+1\cdot(-6)=0$、$\overrightarrow{HB}\cdot\overrightarrow{CA}=(-3)\cdot4+3\cdot4=0$ なので、垂心は原点 $H$ で、三角形の外にある。
ex-dfl-start と同じく $x$ 軸・$y$ 軸をとると、3 つの中点は $M_A\left(-\dfrac94,\dfrac92\right)$、$M_B\left(-\dfrac32,\dfrac32\right)$、$M_C\left(-\dfrac34,-\dfrac32\right)$ で、直線 $8x+2y+9=0$ の上に並ぶ。
3 辺を含む直線は $BC:\ -2x+y=9$、$CA:\ -x+y=3$、$AB:\ 2x+y=-3$ である。$BC$ は $x$ 軸と $\left(-\dfrac92,0\right)$、$y$ 軸と $(0,9)$ で交わり、$CA$ は $(-3,0)$ と $(0,3)$、$AB$ は $\left(-\dfrac32,0\right)$ と $(0,-3)$ で交わる。中点は上の 3 点で、$\overrightarrow{M_AM_B}=\left(\dfrac34,-3\right)$、$\overrightarrow{M_BM_C}=\left(\dfrac34,-3\right)$ が等しいので、3 点は一直線上にある。
鋭角三角形の垂心 H を通る 2 本の座標軸が 3 辺の直線から切り取る 3 本の線分と、その中点を通る青い直線
鈍角三角形では垂心 H が三角形の外にあるが、3 本の線分の中点はやはり青い直線の上に並ぶ
図 1 は ex-dfl-start、図 2 は ex-dfl-obtuse である。どちらの三角形でも 3 つの中点は一直線上にあった。これは偶然ではない。この記事では次の問いに答える。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学数学での見方 |
|---|---|---|
| 垂心を原点、2 直線を座標軸にとる | 座標のとり方 | 合同変換で位置をそろえる |
| $\overrightarrow{HA}\perp\overrightarrow{BC}$ などの内積 | $\vec a\cdot\vec b=\vec b\cdot\vec c=\vec c\cdot\vec a$ | 垂心の条件の対称な形 |
| 3 辺の直線の方程式 | $\vec a\cdot\vec x=k$ など | 法線ベクトルが頂点の位置ベクトル |
| 中点が一直線上 | Droz-Farny の直線 | 5 本の直線に接する放物線の接線 |
以下、点 $P$ の位置ベクトルを $\vec p$ のように小文字で書き、原点を垂心 $H$ にとる。内積は ベクトルの内積 のものである。
三角形 $ABC$ の頂点の位置ベクトルを $\vec a,\vec b,\vec c$ とする。原点 $H$ が三角形 $ABC$ の垂心であることは
$$
\vec a\cdot\vec b=\vec b\cdot\vec c=\vec c\cdot\vec a
$$
と同値である。
原点 $H$ が頂点 $A$ から辺 $BC$ への垂線の上にあることは、$\overrightarrow{HA}=\vec a$ が $\overrightarrow{BC}=\vec c-\vec b$ に垂直なこと、つまり
$$
\vec a\cdot(\vec c-\vec b)=0\iff \vec a\cdot\vec b=\vec c\cdot\vec a
$$
と同値である($H=A$ のときも、$\vec a=\vec 0$ で両辺が $0$ になり成り立つ)。同じく、$H$ が $B$ からの垂線の上にあることは $\vec b\cdot(\vec a-\vec c)=0$、つまり $\vec a\cdot\vec b=\vec b\cdot\vec c$ と同値である。
垂心は 3 本の垂線の交点であり、3 本の垂線は 1 点で交わる(三角形の垂心)ので、$H$ が垂心であることは、$H$ が $A$ からの垂線と $B$ からの垂線の両方の上にあることと同値である(この 2 本は平行でないので交点はただ 1 つで、それが垂心である)。よって $H$ が垂心であることは、$\vec a\cdot\vec b=\vec c\cdot\vec a$ かつ $\vec a\cdot\vec b=\vec b\cdot\vec c$、つまり 3 つの内積が等しいことと同値である。$\square$
ex-dfl-start では $\vec a\cdot\vec b=1\cdot(-2)+3\cdot(-1)=-5$、$\vec b\cdot\vec c=-8+3=-5$、$\vec c\cdot\vec a=4-9=-5$ で、3 つとも $-5$ である。ex-dfl-obtuse では $\vec a\cdot\vec b=6+3=9$、$\vec b\cdot\vec c=18-9=9$、$\vec c\cdot\vec a=12-3=9$ で、3 つとも $9$ である。この共通の値を $k$ と書く。
$k$ を使うと、3 辺を含む直線の方程式がきれいに書ける。
三角形 $ABC$ は直角三角形でないとし、垂心 $H$ を原点にとる。lem-dfl-origin の共通の値を $k=\vec a\cdot\vec b=\vec b\cdot\vec c=\vec c\cdot\vec a$ とする。このとき次が成り立つ。
(1) $\vec a,\vec b,\vec c$ はどれも $\vec 0$ でなく($H$ は頂点でない)、$k\ne0$ である。
(2) 辺 $BC$、$CA$、$AB$ を含む直線は、それぞれ
$$
\vec a\cdot\vec x=k,\qquad \vec b\cdot\vec x=k,\qquad \vec c\cdot\vec x=k
$$
を満たす点 $X$(位置ベクトル $\vec x$)全体である。
要点:$H$ が頂点なら直角三角形になるので $\vec a,\vec b,\vec c\ne\vec 0$ である。$k=0$ なら $\vec b$、$\vec c$ がどちらも $\vec a$ に垂直で平行になり、$\vec b\cdot\vec c\ne0$ と矛盾する。$\vec a\ne\vec 0$ なので $\vec a\cdot\vec x=k$ は 1 本の直線で、$B$、$C$ を通るから直線 $BC$ である。
段 1($H$ は頂点でない)。たとえば $H=A$ とすると、$B$ からの垂線が $A$ を通るので $BA\perp CA$、つまり $\angle A=90^\circ$ になる。三角形は直角三角形でないので $H\ne A$ である。$B$、$C$ でも同じなので、$\vec a,\vec b,\vec c$ はどれも $\vec 0$ でない。
段 2($k\ne0$)。$k=0$ と仮定する。$\vec a\cdot\vec b=0$、$\vec c\cdot\vec a=0$ なので、$\vec b$ と $\vec c$ はどちらも $\vec 0$ でないベクトル $\vec a$ に垂直である。平面で同じベクトルに垂直な 2 つのベクトルは平行なので、$\vec c=t\vec b$($t\ne0$)と書ける。すると $\vec b\cdot\vec c=t\lvert\vec b\rvert^2\ne0$ となり、$\vec b\cdot\vec c=k=0$ に反する。よって $k\ne0$ である。
段 3(直線の方程式)。$\vec a\ne\vec 0$ なので、$\vec a\cdot\vec x=k$ を満たす点全体は、$\vec a$ を法線ベクトルとする 1 本の直線である(成分で書くと $a_1x+a_2y=k$、$(a_1,a_2)\ne(0,0)$。直線の方程式と点と直線の距離)。$\vec a\cdot\vec b=k$、$\vec a\cdot\vec c=k$ なので、$B$ と $C$ はこの直線の上にある。異なる 2 点を通る直線はただ 1 つなので、この直線は直線 $BC$ である。$CA$、$AB$ も同じである。$\square$
ex-dfl-start の $k=-5$ では、$\vec a=(1,3)$ から直線 $BC$ は $x+3y=-5$、$\vec b=(-2,-1)$ から直線 $CA$ は $-2x-y=-5$(つまり $2x+y=5$)、$\vec c=(4,-3)$ から直線 $AB$ は $4x-3y=-5$ で、ex-dfl-start の (2) と一致する。直線 $BC$ の法線ベクトルが $\vec a=\overrightarrow{HA}$ になるのは、$HA$ が $BC$ への垂線だからである。
直角三角形を除いたのは、次の例のように、直角の頂点が垂心になって話が退化するからである。
$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(0,3)$ とする。$\angle A=90^\circ$ で、垂心は $H=A$ である。$H$ を通る直交 2 直線として $y=x$ と $y=-x$ をとる。直線 $BC:\ 3x+4y=12$ との交点は $\left(\dfrac{12}7,\dfrac{12}7\right)$ と $(-12,12)$ で、中点は $\left(-\dfrac{36}7,\dfrac{48}7\right)$ である。一方、直線 $AB$ と直線 $CA$ はどちらも $H$ を通るので、2 本の直線と交わる点はどちらも $A$ で、「線分」は 1 点 $A$ につぶれ、中点も $A$ である。3 つの中点のうち 2 つが同じ点 $A$ なので、一直線上にあることは何も言っていない。
垂心を通る直線が頂点を通ると、その直線は垂線そのものになり、もう 1 本の直線は向かいの辺と平行になって交わらない。そこで、2 本とも頂点を通らないとする。
三角形 $ABC$ は直角三角形でないとし、垂心を $H$ とする。$H$ を通り互いに垂直な 2 直線 $\ell$、$m$ を、どちらも頂点を通らないようにとる。このとき $\ell$、$m$ は、辺 $BC$ を含む直線とそれぞれ 1 点 $P_A$、$Q_A$ で交わる。辺 $CA$、$AB$ についても同じように $P_B$、$Q_B$ と $P_C$、$Q_C$ を定める($P$ は $\ell$ の上、$Q$ は $m$ の上の点)。線分 $P_AQ_A$、$P_BQ_B$、$P_CQ_C$ の中点を $M_A$、$M_B$、$M_C$ とすると、3 点 $M_A$、$M_B$、$M_C$ は一直線上にある。
方針:$H$ を原点、$\ell$ を $x$ 軸、$m$ を $y$ 軸にとる座標で、中点の座標を lem-dfl-side から求める。$\overrightarrow{M_AM_B}$ と $\overrightarrow{M_AM_C}$ が同じベクトル $\vec v$ の実数倍であることを示す。
段 1(座標のとり方)。平面を回転・平行移動しても、長さ・角・中点・一直線上にあることは変わらない。そこで $H$ を原点、$\ell$ を $x$ 軸、$m$ を $y$ 軸にとる。頂点を $A(a_1,a_2)$、$B(b_1,b_2)$、$C(c_1,c_2)$ とする。$\ell$ は $A$ を通らないので $a_2\ne0$、$m$ は $A$ を通らないので $a_1\ne0$ である。$B$、$C$ についても同じで、6 つの成分はどれも $0$ でない。
段 2(交点と中点)。lem-dfl-side により、直線 $BC$ は $a_1x+a_2y=k$($k\ne0$)である。$y=0$ とおくと $x=\dfrac k{a_1}$、$x=0$ とおくと $y=\dfrac k{a_2}$ なので、$\ell$、$m$ はそれぞれ 1 点
$$
P_A\left(\frac k{a_1},0\right),\qquad Q_A\left(0,\frac k{a_2}\right)
$$
で直線 $BC$ と交わる。中点は
$$
M_A\left(\frac k{2a_1},\frac k{2a_2}\right)
$$
である。同じく $M_B\left(\dfrac k{2b_1},\dfrac k{2b_2}\right)$、$M_C\left(\dfrac k{2c_1},\dfrac k{2c_2}\right)$ である。
段 3(差のベクトル)。
$$
\overrightarrow{M_AM_B}=\frac k2\left(\frac1{b_1}-\frac1{a_1},\ \frac1{b_2}-\frac1{a_2}\right)=\frac k2\left(\frac{a_1-b_1}{a_1b_1},\ \frac{a_2-b_2}{a_2b_2}\right)
$$
である。ここで
$$
\vec v=(a_2b_2c_2,\ -a_1b_1c_1)
$$
とおく。6 つの成分はどれも $0$ でないので $\vec v\ne\vec 0$ である。
段 4(平行の判定)。2 つのベクトル $(p,q)$、$(r,s)$ について、$(r,s)\ne\vec 0$ かつ $ps-qr=0$ なら、$(p,q)$ は $(r,s)$ の実数倍である($r\ne0$ なら $t=\dfrac pr$ として $q=\dfrac{ps}{r}=ts$、$r=0$ なら $s\ne0$ で $p=0$ となり $t=\dfrac qs$)。$\overrightarrow{M_AM_B}$ の括弧の中のベクトルと $\vec v$ でこの式を計算すると
$$
\frac{a_1-b_1}{a_1b_1}\cdot(-a_1b_1c_1)-\frac{a_2-b_2}{a_2b_2}\cdot a_2b_2c_2=-c_1(a_1-b_1)-c_2(a_2-b_2)=-\bigl(\underbrace{\vec c\cdot\vec a}_{k}-\underbrace{\vec c\cdot\vec b}_{k}\bigr)=0
$$
である(最後に lem-dfl-origin を使った)。よって $\overrightarrow{M_AM_B}$ は $\vec v$ の実数倍である。
段 5(もう 1 組)。同じく
$$
\overrightarrow{M_AM_C}=\frac k2\left(\frac{a_1-c_1}{a_1c_1},\ \frac{a_2-c_2}{a_2c_2}\right)
$$
で、段 4 の式は
$$
\frac{a_1-c_1}{a_1c_1}\cdot(-a_1b_1c_1)-\frac{a_2-c_2}{a_2c_2}\cdot a_2b_2c_2=-b_1(a_1-c_1)-b_2(a_2-c_2)=-(\vec b\cdot\vec a-\vec b\cdot\vec c)=0
$$
となる。よって $\overrightarrow{M_AM_C}$ も $\vec v$ の実数倍である。
段 6(結論)。$M_B$ と $M_C$ はどちらも、$M_A$ を通り方向 $\vec v$ の直線の上にある。よって 3 点 $M_A$、$M_B$、$M_C$ は一直線上にある。$\square$
thm-dfl-main の 3 点 $M_A$、$M_B$、$M_C$ を通る直線を、直交 2 直線 $\ell$、$m$ に対する Droz-Farny の直線 という。
証明の段 3 から、Droz-Farny の直線の方向は $\vec v=(a_2b_2c_2,\ -a_1b_1c_1)$ である。ex-dfl-start では $\vec a=(1,3)$、$\vec b=(-2,-1)$、$\vec c=(4,-3)$ なので
$$
\vec v=\bigl(3\cdot(-1)\cdot(-3),\ -1\cdot(-2)\cdot4\bigr)=(9,8)
$$
で、ex-dfl-start の (4) で見た方向と一致する。ex-dfl-obtuse では $\vec v=\bigl(1\cdot3\cdot(-3),\ -(-2)(-3)(-6)\bigr)=(-9,36)$ で、$\overrightarrow{M_AM_B}=\left(\dfrac34,-3\right)=-\dfrac1{12}(-9,36)$ と合っている。証明の中で鋭角か鈍角かを使っていないので、鈍角三角形でも同じ証明がそのまま通る。
2 本の直交する直線は、$H$ のまわりに回して自由に選べる。回すたびに Droz-Farny の直線も動く。
ex-dfl-start の三角形で、$H$ を通る直交 2 直線として $y=x$ と $y=-x$ をとる。3 本の線分の中点は $\left(\dfrac58,-\dfrac{15}8\right)$、$\left(\dfrac{10}3,-\dfrac53\right)$、$\left(-\dfrac{20}7,-\dfrac{15}7\right)$ である。
直線 $BC:\ x+3y=-5$ との交点は、$y=x$ から $\left(-\dfrac54,-\dfrac54\right)$、$y=-x$ から $\left(\dfrac52,-\dfrac52\right)$ で、中点は $\left(\dfrac58,-\dfrac{15}8\right)$ である。直線 $CA:\ 2x+y=5$ との交点は $\left(\dfrac53,\dfrac53\right)$ と $(5,-5)$ で、中点は $\left(\dfrac{10}3,-\dfrac53\right)$ である。直線 $AB:\ 4x-3y=-5$ との交点は $(-5,-5)$ と $\left(-\dfrac57,\dfrac57\right)$ で、中点は $\left(-\dfrac{20}7,-\dfrac{15}7\right)$ である。
最初の鋭角三角形で、垂心 H を通る直交 2 直線を 45 度回すと、3 つの中点を通る青い直線も向きを変える
証明の段 4 で効いていたのは、中点の座標の $\dfrac12$ という数ではなく、「$x$ 座標が $\dfrac k{a_1}$ に比例し、$y$ 座標が $\dfrac k{a_2}$ に比例する」という形だった。そこで、中点の代わりに、3 本の線分を同じ比に分ける点をとっても同じことが言える。
thm-dfl-main の記号で、$0< t<1$ とする。線分 $P_AQ_A$、$P_BQ_B$、$P_CQ_C$ を、$P$ の側から $t:(1-t)$ に内分する点を $T_A$、$T_B$、$T_C$ とすると、3 点 $T_A$、$T_B$、$T_C$ は一直線上にある。
prf-dfl-main と同じ座標をとる。$T_A=(1-t)P_A+tQ_A$ なので
$$
T_A\left(\frac{(1-t)k}{a_1},\ \frac{tk}{a_2}\right)
$$
で、$T_B$、$T_C$ も同じ形である。
$$
\overrightarrow{T_AT_B}=k\left(\frac{(1-t)(a_1-b_1)}{a_1b_1},\ \frac{t(a_2-b_2)}{a_2b_2}\right)
$$
と $\vec v_t=\bigl((1-t)a_2b_2c_2,\ -t\,a_1b_1c_1\bigr)$($0< t<1$ なので $\vec v_t\ne\vec 0$)について、prf-dfl-main の段 4 の式を計算すると
$$
\frac{(1-t)(a_1-b_1)}{a_1b_1}\cdot(-t\,a_1b_1c_1)-\frac{t(a_2-b_2)}{a_2b_2}\cdot(1-t)a_2b_2c_2=-t(1-t)\bigl(\vec c\cdot\vec a-\vec c\cdot\vec b\bigr)=0
$$
である。$\overrightarrow{T_AT_C}$ でも、$\vec b$ の内積の差 $\vec b\cdot\vec a-\vec b\cdot\vec c=0$ が出て同じになる。よって $\overrightarrow{T_AT_B}$、$\overrightarrow{T_AT_C}$ はどちらも $\vec v_t$ の実数倍で、3 点は一直線上にある。$\square$
ex-dfl-start で $t=\dfrac13$ とする。$k=-5$ なので
$$
T_A\left(\frac23\cdot(-5),\ \frac13\cdot\left(-\frac53\right)\right)=\left(-\frac{10}3,-\frac59\right),\qquad T_B\left(\frac53,\frac53\right),\qquad T_C\left(-\frac56,\frac59\right)
$$
である。$\overrightarrow{T_AT_B}=\left(5,\dfrac{20}9\right)=\dfrac59(9,4)$、$\overrightarrow{T_AT_C}=\left(\dfrac52,\dfrac{10}9\right)=\dfrac5{18}(9,4)$ なので、3 点は方向 $(9,4)$ の直線の上にある。公式 $\vec v_t=\left(\dfrac23\cdot9,\ -\dfrac13\cdot(-8)\right)=\left(6,\dfrac83\right)=\dfrac23(9,4)$ とも一致する。
座標軸の組で、3 本の線分の中点を通る青い直線と、線分を 1:2 に分ける点を通る水色の直線
中点のときと、比 $t$ のときを並べる。
| 中点($t=\frac12$) | 比 $t:(1-t)$ の点 | |
|---|---|---|
| 辺 $BC$ の上の点 | $\left(\dfrac k{2a_1},\dfrac k{2a_2}\right)$ | $\left(\dfrac{(1-t)k}{a_1},\dfrac{tk}{a_2}\right)$ |
| 並ぶ直線の方向 | $(a_2b_2c_2,\ -a_1b_1c_1)$ | $\bigl((1-t)a_2b_2c_2,\ -t\,a_1b_1c_1\bigr)$ |
| ex-dfl-start での方向 | $(9,8)$ | $t=\frac13$ で $(9,4)$ |
| 使った性質 | $\vec c\cdot\vec a=\vec c\cdot\vec b$ など | 同じ |
$t$ を $0$ に近づけると $T_A$、$T_B$、$T_C$ は $\ell$ の上の点 $P_A$、$P_B$、$P_C$ に近づき、並ぶ直線は $\ell$ 自身に近づく。$t$ を $1$ に近づけると $m$ に近づく。
thm-dfl-main の仮定を 1 つずつ外すと何が崩れるかを並べる。三角形はどれも ex-dfl-start の $A(1,3)$、$B(-2,-1)$、$C(4,-3)$ である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 2 直線が直交する | 垂心を通る $x$ 軸と直線 $y=x$ | 3 つの中点が一直線上にある |
| 2 直線が垂心を通る | 外心 $O\left(\frac32,-\frac12\right)$ を通る直交 2 直線 | 3 つの中点が一直線上にある |
| 2 直線が垂心を通る | 重心 $G\left(1,-\frac13\right)$ を通る直交 2 直線 | 3 つの中点が一直線上にある |
| 2 直線が頂点を通らない | 直線 $HA$ とそれに垂直な直線 | 2 直線がどれも辺の直線と 1 点で交わる |
垂心 $H(0,0)$ を通る $x$ 軸と直線 $y=x$ をとる(なす角は $45^\circ$)。直線 $BC:\ x+3y=-5$ との交点は $(-5,0)$ と $\left(-\dfrac54,-\dfrac54\right)$ で、中点は $\left(-\dfrac{25}8,-\dfrac58\right)$ である。直線 $CA:\ 2x+y=5$ との交点は $\left(\dfrac52,0\right)$ と $\left(\dfrac53,\dfrac53\right)$ で、中点は $\left(\dfrac{25}{12},\dfrac56\right)$ である。直線 $AB:\ 4x-3y=-5$ との交点は $\left(-\dfrac54,0\right)$ と $(-5,-5)$ で、中点は $\left(-\dfrac{25}8,-\dfrac52\right)$ である。
1 つ目と 3 つ目の中点は $x$ 座標がどちらも $-\dfrac{25}8$ なので、この 2 点を通る直線は $x=-\dfrac{25}8$ である。2 つ目の中点の $x$ 座標は $\dfrac{25}{12}\ne-\dfrac{25}8$ なので、3 つの中点は一直線上にない。
証明のどこが崩れるかというと、prf-dfl-main の段 1 で 2 直線を $x$ 軸と $y$ 軸にとれなくなる。斜めの座標軸で成分を書くと、内積の式 $\vec a\cdot\vec x=a_1x+a_2y$ が使えなくなり、lem-dfl-side の形の方程式にならない。
3 本の線分の中点は $\left(-\dfrac32,-\dfrac76\right)$、$\left(\dfrac{11}6,\dfrac43\right)$、$\left(-\dfrac14,\dfrac43\right)$ である。2 つ目と 3 つ目は $y$ 座標がどちらも $\dfrac43$ なので、この 2 点を通る直線は $y=\dfrac43$ で、1 つ目の点は乗らない。
垂心を通るが直交しない 2 直線では、3 つの中点を結ぶ点線は三角形になり、一直線にならない
外心 O を通る直交 2 直線では、3 つの中点を結ぶ点線は三角形になり、一直線にならない
表の最後の行は、定理の仮定「頂点を通らない」が要る理由である。直線 $HA$ は方向 $(1,3)$ の直線で、それに垂直な $H$ を通る直線は方向 $(-3,1)$ をもつ。直線 $BC$ の方向は $\overrightarrow{BC}=(6,-2)=-2(-3,1)$ なので、この直線は $BC$ と平行で交わらず、$P_A$ または $Q_A$ が決まらない。
MathWorld の「Droz-Farny Theorem」の頁(Wei26)は、次のことを述べている。直交 2 直線 $\ell$、$m$、3 辺を含む 3 本の直線、Droz-Farny の直線は、すべて同じ 1 つの放物線に接する。さらに、比 $t$ の点が並ぶ直線(cor-dfl-ratio)も、同じ放物線に接する。この記事では一般の場合を証明しないが、ex-dfl-start で確かめる。
ex-dfl-start の三角形と座標軸の組について、曲線
$$
(8x+9y)^2+400x-450y+625=0
$$
を考える。2 次の部分が $(8x+9y)^2$ という 1 次式の 2 乗なので、この曲線は放物線である($x^2$、$xy$、$y^2$ の係数 $64$、$144$、$81$ について $144^2-4\cdot64\cdot81=0$)。
(1) $y=0$ を代入すると $64x^2+400x+625=(8x+25)^2=0$ で、重解 $x=-\dfrac{25}8$ をもつ。放物線は $x$ 軸に点 $\left(-\dfrac{25}8,0\right)$ で接する。$x=0$ を代入すると $81y^2-450y+625=(9y-25)^2=0$ で、$y$ 軸に点 $\left(0,\dfrac{25}9\right)$ で接する。
(2) 3 辺を含む直線の式を代入しても、どれも重解をもつ。放物線は直線 $BC$ に点 $(-8,1)$、直線 $CA$ に点 $(-2,9)$、直線 $AB$ に点 $\left(-\dfrac12,1\right)$ で接する(計算は下の折りたたみ)。
(3) Droz-Farny の直線 $16x-18y+25=0$、つまり $y=\dfrac{16x+25}{18}$ を代入すると、$8x+9y=16x+\dfrac{25}2$ なので
$$
\left(16x+\frac{25}2\right)^2+400x-25(16x+25)+625=256x^2+400x+\frac{625}4=\left(16x+\frac{25}2\right)^2
$$
となり、重解 $x=-\dfrac{25}{32}$ をもつ。放物線は Droz-Farny の直線に点 $\left(-\dfrac{25}{32},\dfrac{25}{36}\right)$ で接する。
直線 $BC$:$x=-3y-5$ を代入すると $8x+9y=-15y-40$ で、$(15y+40)^2+400(-3y-5)-450y+625=225y^2-450y+225=225(y-1)^2$。接点は $(-8,1)$ である。
直線 $CA$:$y=5-2x$ を代入すると $8x+9y=45-10x$ で、$(45-10x)^2+400x-450(5-2x)+625=100x^2+400x+400=100(x+2)^2$。接点は $(-2,9)$ である。
直線 $AB$:$y=\dfrac{4x+5}3$ を代入すると $8x+9y=20x+15$ で、$(20x+15)^2+400x-150(4x+5)+625=400x^2+400x+100=100(2x+1)^2$。接点は $\left(-\dfrac12,1\right)$ である。
比 $t=\dfrac13$ の直線(ex-dfl-ratio)は、$T_A\left(-\dfrac{10}3,-\dfrac59\right)$ を通り方向 $(9,4)$ なので $4x-9y+\dfrac{25}3=0$、つまり $y=\dfrac{12x+25}{27}$ である。代入すると $8x+9y=12x+\dfrac{25}3$ で、$\left(12x+\dfrac{25}3\right)^2+400x-\dfrac{50}3(12x+25)+625=144x^2+400x+\dfrac{2500}9=\left(12x+\dfrac{50}3\right)^2$。重解 $x=-\dfrac{25}{18}$ をもち、点 $\left(-\dfrac{25}{18},\dfrac{25}{81}\right)$ で接する。
放物線(茶色)は 2 本の座標軸、3 辺を含む直線、中点を通る青い直線、比 1:2 と 1:3 の点を通る水色の直線のすべてに接する。星印は接点
射影幾何学では、2 次曲線とその接線をまとめて扱い、放物線は「無限遠直線に接する 2 次曲線」と見なす(この記事では証明しない)。この見方では、Droz-Farny の定理は「5 本の直線 $\ell$、$m$、3 辺に接する放物線があり、中点の直線もその接線である」という接線についての定理に言いかえられる。射影幾何学の入口は 射影変換と複比 にある。
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