相反方程式(reciprocal equation)とは、多項式 $P(x)=a_nx^n+\cdots+a_0$($a_n\ne0$)の係数が $a_k=a_{n-k}$ と左右対称な方程式 $P(x)=0$ である。$x\ne0$ で $x^nP(\frac1x)=P(x)$ となり、$\alpha$ が解なら $\frac1\alpha$ も解である。$x^k+x^{-k}$ は $t=x+\frac1x$ の $k$ 次式なので、$n=2m$ のとき $P(x)=x^mQ(x+\frac1x)$ となる $m$ 次式 $Q$ があり、$Q(t)=0$ と $x^2-tx+1=0$ を順に解く。実数 $t$ から実数の $x$ が出るのは $\lvert t\rvert\ge2$ のときだけである。奇数次なら $x=-1$ を解にもち、$x+1$ で割ると偶数次の相反方程式になる。
前提知識: 剰余の定理と因数定理, 複素数と方程式:代数学の基本定理, 対称式・交代式と差積
4 次方程式は、一般には解くのがたいへんである。しかし係数が左右対称に並んでいると、2 次方程式を 2 回解くだけで済む。
$2x^4-9x^3+14x^2-9x+2=0$ を解く。係数は $2,-9,14,-9,2$ で、真ん中の $14$ について左右対称である。
段 1($x^2$ で割る)。$x=0$ は解でない(左辺が $2$ になる)ので、両辺を $x^2$ で割ってよい。
$$
2x^2-9x+14-\frac9x+\frac2{x^2}=0
$$
対称な位置の項をまとめると
$$
2\Bigl(x^2+\frac1{x^2}\Bigr)-9\Bigl(x+\frac1x\Bigr)+14=0
$$
である。
段 2($t=x+\frac1x$ とおく)。$t^2=x^2+2+\dfrac1{x^2}$ なので $x^2+\dfrac1{x^2}=t^2-2$ である。代入すると
$$
2(t^2-2)-9t+14=0,\qquad\text{つまり}\qquad 2t^2-9t+10=0
$$
で、$(t-2)(2t-5)=0$ から $t=2$ または $t=\dfrac52$ である。
段 3($x$ にもどす)。$x+\dfrac1x=t$ の両辺に $x$ を掛けると $x^2-tx+1=0$ である。
解が $2$ と $\dfrac12$、$1$ と $1$($1$ の逆数は $1$)のように、逆数どうしの組になっている。これは偶然ではない。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| $x^2$ で割り、$t=x+\frac1x$ とおく | 相反多項式は $x^mQ(t)$ | $x\mapsto\frac1x$ で不変な多項式 |
| $x^2+\frac1{x^2}=t^2-2$ | $x^k+x^{-k}$ は $t$ の多項式 | Chebyshev 多項式 |
| 解が $\alpha$ と $\frac1\alpha$ の組 | 相反方程式の解の対称性 | 単位円に関する反転と共役 |
| $x^4+x^3+x^2+x+1=0$ | 1 の 5 乗根 | 円分多項式 |
$n\ge1$ とし、$n$ 次の多項式
$$
P(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1x+a_0\qquad(a_n\ne0)
$$
の係数が、両端から数えて等しいこと、つまり
$$
a_k=a_{n-k}\qquad(k=0,1,\ldots,n)
$$
が成り立つとき、$P(x)$ を 相反多項式 といい、方程式 $P(x)=0$ を 相反方程式 という。このとき $a_0=a_n\ne0$ である。便宜上、$0$ でない定数も $0$ 次の相反多項式とみなす。
係数が対称であることは、$x$ を $\dfrac1x$ に替える操作で言いかえられる。
$n$ 次の多項式 $P(x)$ について、次の 2 つは同じことである。
(R1) $P(x)$ は相反多項式である。
(R1) $x^nP\bigl(\frac1x\bigr)=P(x)$ が、$0$ でないすべての $x$ で成り立つ。
$x\ne0$ のとき
$$
x^nP\Bigl(\frac1x\Bigr)=x^n\sum_{k=0}^{n}a_kx^{-k}=\sum_{k=0}^{n}a_kx^{n-k}=\sum_{j=0}^{n}a_{n-j}x^{j}
$$
である(最後は $j=n-k$ とおいた)。つまり $x^nP\bigl(\frac1x\bigr)$ は、係数の並びを逆にした多項式 $a_0x^n+a_1x^{n-1}+\cdots+a_n$ である。
(i) ならば $a_{n-j}=a_j$ なので、これは $P(x)$ に等しく (ii) が成り立つ。逆に (ii) が成り立てば、2 つの多項式 $\sum a_{n-j}x^j$ と $\sum a_jx^j$ が $0$ でないすべての $x$(無数の値)で等しいので、係数がすべて等しい(恒等式と未定係数法 の一致の定理)。よって $a_{n-j}=a_j$ で (i) が成り立つ。$\square$
$P(x)$ が相反多項式で $P(\alpha)=0$ なら、$\alpha\ne0$ であり、$P\bigl(\frac1\alpha\bigr)=0$ である。
$P(0)=a_0\ne0$ なので $\alpha\ne0$ である。lem-req-flip の (ii) で $x=\alpha$ とすると $\alpha^nP\bigl(\frac1\alpha\bigr)=P(\alpha)=0$ で、$\alpha^n\ne0$ なので $P\bigl(\frac1\alpha\bigr)=0$ である。$\square$
ex-req-start の解 $2$ と $\dfrac12$、ex-req-examples (1) の解 $2$ と $\dfrac12$ は、この命題の例である。$1$ と $-1$ は自分自身が逆数なので、組の相手がいない解になりうる。
ex-req-start の段 2 では、$x^2+\dfrac1{x^2}$ を $t$ で書いた。もっと高い次数でも同じことができる。
$t=x+\dfrac1x$($x\ne0$)とおく。$t$ の多項式 $C_k(t)$ を
$$
C_0(t)=2,\qquad C_1(t)=t,\qquad C_{k+1}(t)=t\,C_k(t)-C_{k-1}(t)\quad(k\ge1)
$$
で定めると、$k\ge0$ について
$$
x^k+\frac1{x^k}=C_k(t)
$$
である。$k\ge1$ のとき $C_k(t)$ は整数係数の $k$ 次式で、最高次の係数は $1$ である。
段 1($k=0,1$)。$x^0+x^0=2=C_0$、$x+\dfrac1x=t=C_1$ である。
段 2($k-1,k$ から $k+1$ へ)。$k\ge1$ とし、$x^{k-1}+x^{-(k-1)}=C_{k-1}(t)$、$x^k+x^{-k}=C_k(t)$ が成り立つとする。
$$
\Bigl(x+\frac1x\Bigr)\Bigl(x^k+\frac1{x^k}\Bigr)=x^{k+1}+\frac{1}{x^{k-1}}+x^{k-1}+\frac1{x^{k+1}}
$$
なので(展開して $x\cdot x^{-k}=x^{-(k-1)}$、$x^{-1}\cdot x^k=x^{k-1}$ を使った)
$$
x^{k+1}+\frac1{x^{k+1}}=t\Bigl(x^k+\frac1{x^k}\Bigr)-\Bigl(x^{k-1}+\frac1{x^{k-1}}\Bigr)=t\,C_k(t)-C_{k-1}(t)=C_{k+1}(t)
$$
である。数学的帰納法により、すべての $k\ge0$ で成り立つ。
段 3(次数と係数)。$C_1=t$、$C_2=t\cdot t-2=t^2-2$ は整数係数で、次数は $1,2$、最高次の係数は $1$ である。$C_k$ と $C_{k-1}$ がそうなら、$tC_k$ は整数係数の $k+1$ 次式で最高次の係数 $1$、$C_{k-1}$ は次数 $k-1$($k=1$ のときは定数 $2$)なので、差 $C_{k+1}$ も整数係数の $k+1$ 次式で、最高次の係数は $1$ である。$\square$
| $k$ | $C_k(t)=x^k+x^{-k}$ |
|---|---|
| $1$ | $t$ |
| $2$ | $t^2-2$ |
| $3$ | $t^3-3t$ |
| $4$ | $t^4-4t^2+2$ |
| $5$ | $t^5-5t^3+5t$ |
漸化式では $C_3=t\,C_2-C_1=t(t^2-2)-t=t^3-3t$ である。直接の計算では、$t^3=\Bigl(x+\dfrac1x\Bigr)^3=x^3+3x+\dfrac3x+\dfrac1{x^3}$ なので $x^3+\dfrac1{x^3}=t^3-3\Bigl(x+\dfrac1x\Bigr)=t^3-3t$ で、一致する。$x=2$ で確かめると、$t=\dfrac52$、$x^3+\dfrac1{x^3}=8+\dfrac18=\dfrac{65}8$、$t^3-3t=\dfrac{125}8-\dfrac{60}8=\dfrac{65}8$ である。
$x=\cos\theta+i\sin\theta$ とすると $\dfrac1x=\cos\theta-i\sin\theta$ で、$t=2\cos\theta$、$x^k+x^{-k}=2\cos k\theta$ となる。つまり $C_k(2\cos\theta)=2\cos k\theta$ で、$C_k$ は $k$ 倍角の公式の多項式である。この見方は Chebyshev多項式 で詳しく扱う(同記事の正規化した Chebyshev 多項式 $C_n$ が、ここの $C_k$ と同じものである)。
$P(x)$ を $2m$ 次の相反多項式($m\ge1$)とする。このとき $m$ 次の多項式 $Q(t)$ で、$0$ でないすべての $x$ について
$$
P(x)=x^m\,Q\Bigl(x+\frac1x\Bigr)
$$
となるものがある。$Q$ の最高次の係数は $P$ の最高次の係数 $a_{2m}$ に等しい。
方針:$x^m$ で割ると、真ん中の項 $a_mx^m$ から等しい距離にある 2 つの項が $x^k+x^{-k}$ の形にまとまる。lem-req-power でそれを $t$ で書く。
段 1($x^m$ で割る)。$x\ne0$ とする。$P(x)=\displaystyle\sum_{j=0}^{2m}a_jx^j$ を $x^m$ で割ると $\dfrac{P(x)}{x^m}=\displaystyle\sum_{j=0}^{2m}a_jx^{j-m}$ である。$j=m$ の項は $a_m$ である。$k=1,\ldots,m$ について、$j=m+k$ の項 $a_{m+k}x^{k}$ と $j=m-k$ の項 $a_{m-k}x^{-k}$ を組にする。相反多項式なので $a_{m+k}=a_{2m-(m+k)}=a_{m-k}$ であり、組の和は $a_{m-k}\bigl(x^k+x^{-k}\bigr)$ になる。よって
$$
\frac{P(x)}{x^m}=a_m+\sum_{k=1}^{m}a_{m-k}\Bigl(x^k+\frac1{x^k}\Bigr)
$$
である。
段 2($t$ で書く)。lem-req-power により $x^k+x^{-k}=C_k(t)$ なので
$$
Q(t)=a_m+\sum_{k=1}^{m}a_{m-k}\,C_k(t)
$$
とおけば $\dfrac{P(x)}{x^m}=Q\Bigl(x+\dfrac1x\Bigr)$ である。両辺に $x^m$ を掛けて結論の式を得る。
段 3($Q$ の次数)。$C_k$ は $k$ 次で最高次の係数 $1$ なので、$Q$ の中で $t^m$ を含むのは $k=m$ の項 $a_0C_m(t)$ だけであり、$t^m$ の係数は $a_0$ である。$a_0=a_{2m}\ne0$ なので、$Q$ は $m$ 次で最高次の係数は $a_{2m}$ である。$\square$
ex-req-start では $m=2$、$a_2=14$、$a_1=-9$、$a_0=2$ で、$Q(t)=14+(-9)C_1(t)+2C_2(t)=14-9t+2(t^2-2)=2t^2-9t+10$ となり、ex-req-start の段 2 の計算と一致する。
定理から、相反方程式 $P(x)=0$ の解き方は次の手順になる。$x=0$ は解でない(prop-req-inverse)ので、$P(x)=0$ は $Q\bigl(x+\frac1x\bigr)=0$ と同じである。
(R1) $m$ 次方程式 $Q(t)=0$ を解いて、解 $t_1,\ldots,t_m$ を求める。
(R1) 各 $t_i$ について、2 次方程式 $x^2-t_ix+1=0$ を解く($x+\frac1x=t_i$ の両辺に $x$ を掛けた)。
2 次方程式 $x^2-t_ix+1=0$ の 2 つの解の積は $1$ なので、得られる解は $\alpha$ と $\dfrac1\alpha$ の組である。これが prop-req-inverse の別の見方である。
$x^4+x^3+x^2+x+1=0$ を解く。$m=2$、$a_2=a_1=a_0=1$ なので $Q(t)=1+C_1(t)+C_2(t)=1+t+t^2-2=t^2+t-1$ である。$t^2+t-1=0$ から
$$
t=\frac{-1+\sqrt5}2=0.618\ldots,\qquad t=\frac{-1-\sqrt5}2=-1.618\ldots
$$
である。それぞれ $x^2-tx+1=0$ を解くと、判別式 $t^2-4$ はどちらも負($0.381\ldots-4$、$2.618\ldots-4$)なので、4 つの解はどれも実数でない。
$x^5-1=(x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1)$ なので、4 つの解は $1$ 以外の 1 の 5 乗根である。$x=\cos72^\circ+i\sin72^\circ$ のとき $t=2\cos72^\circ$ なので、$2\cos72^\circ=\dfrac{-1+\sqrt5}2$ が分かる($72^\circ$ の余弦は正なので、正の方の $t$ である)。この値と黄金比の関係は 正五角形と黄金比 で扱う。
ex-req-five では、$t$ は実数なのに $x$ は実数にならなかった。$t$ の値と $x$ の関係を調べる。
$t$ を実数とし、2 次方程式 $x^2-tx+1=0$ の解を考える。
(R1) $\lvert t\rvert>2$ なら、異なる 2 つの実数の解をもち、2 つは同符号で互いに逆数である。
(R1) $t=2$ なら $x=1$(重解)、$t=-2$ なら $x=-1$(重解)である。
(R1) $\lvert t\rvert<2$ なら、互いに共役な 2 つの虚数の解をもち、どちらも絶対値が $1$ である。
判別式は $t^2-4$、解の積は $1$、和は $t$ である(根と係数の関係と対称式)。
(i):$t^2-4>0$ なので異なる 2 つの実数の解をもつ。積が $1>0$ なので同符号で、積が $1$ なので互いに逆数である。
(ii):$t=2$ なら $x^2-2x+1=(x-1)^2$、$t=-2$ なら $x^2+2x+1=(x+1)^2$ である。
(iii):$t^2-4<0$ なので、解は互いに共役な虚数 $\alpha$、$\bar\alpha$ である(実数係数の 2 次方程式の性質)。積は $\alpha\bar\alpha=\lvert\alpha\rvert^2$ で、これが $1$ に等しいので $\lvert\alpha\rvert=\lvert\bar\alpha\rvert=1$ である。$\square$
y = x + 1/x のグラフ。x が正なら値は 2 以上、x が負なら値は -2 以下で、-2 と 2 の間の値はとらない。値 5/2 には x = 1/2 と x = 2 の 2 点が対応する
図 1 は $y=x+\dfrac1x$ のグラフである。$x>0$ では $x+\dfrac1x\ge2$(相加平均と相乗平均の不等式。等号は $x=1$)、$x<0$ では $x+\dfrac1x\le-2$ で、$-2< y<2$ の値はとらない。$\lvert t\rvert>2$ の水平線はグラフと 2 点で交わり、その 2 点の $x$ 座標が $\alpha$ と $\dfrac1\alpha$ である。ex-req-start の $t=\dfrac52$ では $x=\dfrac12$ と $x=2$ である。
thm-req-main は偶数次の場合だった。奇数次では、まず決まった解を 1 つ取り除く。
$P(x)$ を $2m+1$ 次の相反多項式($m\ge0$)とする。このとき $P(-1)=0$ であり、$P(x)=(x+1)R(x)$ となる $2m$ 次の多項式 $R(x)$ は相反多項式である。
段 1($P(-1)=0$)。$n=2m+1$ とする。$k$ 次の項と $n-k$ 次の項を組にする($n$ が奇数なので $k\ne n-k$ で、すべての項がちょうど 1 回ずつ組に入る)。$x=-1$ を代入すると、組の和は
$$
a_k(-1)^k+a_{n-k}(-1)^{n-k}=a_k\bigl\{(-1)^k+(-1)^{n-k}\bigr\}
$$
である($a_{n-k}=a_k$)。$n-k$ と $k$ の和 $n$ は奇数なので、$n-k$ と $k$ の偶奇は異なり、$(-1)^{n-k}=-(-1)^k$ である。よって組の和は $0$ で、$P(-1)=0$ である。
段 2($R$ は相反多項式)。因数定理により $P(x)=(x+1)R(x)$ となる $2m$ 次の多項式 $R$ がある。lem-req-flip により、$x\ne0$ で $x^{2m+1}P\bigl(\frac1x\bigr)=P(x)$ である。左辺は
$$
x^{2m+1}\Bigl(\frac1x+1\Bigr)R\Bigl(\frac1x\Bigr)=(1+x)\,x^{2m}R\Bigl(\frac1x\Bigr)
$$
なので、$(x+1)x^{2m}R\bigl(\frac1x\bigr)=(x+1)R(x)$ である。$x\ne0,-1$ で両辺を $x+1$ で割ると $x^{2m}R\bigl(\frac1x\bigr)=R(x)$ である。両辺はどちらも $x$ の多項式(左辺は $R$ の係数を逆に並べた多項式)で、無数の $x$ で一致するので多項式として等しく、lem-req-flip により $R$ は相反多項式である。$\square$
$2x^5-7x^4+5x^3+5x^2-7x+2=0$ を解く。$x=-1$ を代入すると $-2-7-5+5+7+2=0$ である。組立除法で $x+1$ で割ると
$$
2x^5-7x^4+5x^3+5x^2-7x+2=(x+1)(2x^4-9x^3+14x^2-9x+2)
$$
で、商は ex-req-start の 4 次の相反多項式である。よって解は $x=-1$、$1$(2 重解)、$2$、$\dfrac12$ である。
係数が「符号を反対にして」対称な多項式も、同じように扱える。
$n$ 次の多項式 $P(x)=\displaystyle\sum_{k=0}^na_kx^k$($a_n\ne0$)が $a_k=-a_{n-k}$($k=0,\ldots,n$)を満たすとき、反相反多項式 という。
$P(x)$ を反相反多項式とする。
(R1) $P(1)=0$ で、$P(x)=(x-1)R(x)$ の $R$ は相反多項式である。
(R1) $P$ の次数が偶数なら、さらに $P(-1)=0$ で、$P(x)=(x^2-1)S(x)$ の $S$ は相反多項式である。
要点:$a_k=-a_{n-k}$ なので、$x=1$ を代入すると組ごとに打ち消し合って $P(1)=0$ である。lem-req-flip と同じ計算で $x^nP\bigl(\frac1x\bigr)=-P(x)$ となり、これに $P=(x-1)R$ を入れると $R$ が相反多項式であることが分かる。
(i):$n$ を $P$ の次数とする。$k=n-k$ となる $k$($n$ が偶数のときの真ん中)では $a_k=-a_k$ から $a_k=0$ である。それ以外の $k$ は $k$ と $n-k$ で組にでき、$x=1$ での組の和は $a_k+a_{n-k}=0$ である。よって $P(1)=0$ で、因数定理により $P=(x-1)R$ となる $n-1$ 次の $R$ がある。prf-req-flip と同じ計算で、$x\ne0$ のとき $x^nP\bigl(\frac1x\bigr)=\sum_ja_{n-j}x^j=-\sum_ja_jx^j=-P(x)$ である。左辺は $x^n\bigl(\frac1x-1\bigr)R\bigl(\frac1x\bigr)=-(x-1)x^{n-1}R\bigl(\frac1x\bigr)$ なので、$-(x-1)x^{n-1}R\bigl(\frac1x\bigr)=-(x-1)R(x)$ で、$x\ne0,1$ で割って $x^{n-1}R\bigl(\frac1x\bigr)=R(x)$ である。lem-req-flip により $R$ は相反多項式である。
(ii):$n$ が偶数なら $R$ は奇数次の相反多項式なので、cor-req-odd により $R(-1)=0$、$R=(x+1)S$ で $S$ は相反多項式である。$P=(x-1)(x+1)S=(x^2-1)S$ である。$\square$
| 多項式の種類 | 次数 | 必ずもつ解 | 取り除いた後 |
|---|---|---|---|
| 相反 $a_k=a_{n-k}$ | 偶数 $2m$ | なし | そのまま $x^mQ(t)$(thm-req-main) |
| 相反 $a_k=a_{n-k}$ | 奇数 | $x=-1$ | $x+1$ で割ると偶数次の相反(cor-req-odd) |
| 反相反 $a_k=-a_{n-k}$ | 奇数 | $x=1$ | $x-1$ で割ると偶数次の相反 |
| 反相反 $a_k=-a_{n-k}$ | 偶数 | $x=1$、$x=-1$ | $x^2-1$ で割ると偶数次の相反 |
1 の 7 乗根の方程式から、$2\cos\dfrac{2\pi}7$ が満たす 3 次方程式が出る。
$P(x)=x^6+x^5+x^4+x^3+x^2+x+1$ は 6 次の相反多項式で、$m=3$、$a_3=a_2=a_1=a_0=1$ である。thm-req-main の証明の $Q$ は
$$
Q(t)=1+C_1(t)+C_2(t)+C_3(t)=1+t+(t^2-2)+(t^3-3t)=t^3+t^2-2t-1
$$
で、$P(x)=x^3\bigl(t^3+t^2-2t-1\bigr)$($t=x+\frac1x$)である。
$x^7-1=(x-1)P(x)$ なので、$P(x)=0$ の 6 つの解は $1$ 以外の 1 の 7 乗根 $x=\cos\dfrac{2\pi k}7+i\sin\dfrac{2\pi k}7$($k=1,\ldots,6$)である。$x$ と $\dfrac1x$($k$ と $7-k$)の組ごとに $t=2\cos\dfrac{2\pi k}7$ となるので、$Q(t)=0$ の 3 つの解は
$$
t=2\cos\frac{2\pi}7=1.2469\ldots,\qquad 2\cos\frac{4\pi}7=-0.4450\ldots,\qquad 2\cos\frac{6\pi}7=-1.8019\ldots
$$
である。どれも $-2$ と $2$ の間にあり、prop-req-t-range (iii) のとおり、対応する $x$ は絶対値 $1$ の虚数である。
$t^3+t^2-2t-1=0$ は有理数の解をもたない。最高次の係数と定数項が $\pm1$ なので、有理数の解の候補は $\pm1$ だけである(剰余の定理と因数定理 の命題「有理数の根の候補」)。ところが $t=1$ で $1+1-2-1=-1$、$t=-1$ で $-1+1+2-1=1$ で、どちらも $0$ でない。
1 の 7 乗根のうち 1 以外の 6 点は単位円の上にあり、x と 1/x は実軸について対称な位置にある。x + 1/x は実軸の上の点 2cos(2πk/7) になる
図 2 は、ex-req-seven の 6 つの解を複素数平面にかいたものである。$\lvert x\rvert=1$ のとき $\dfrac1x=\bar x$(共役な複素数)なので、$x$ と $\dfrac1x$ は実軸について対称な位置にある。2 つの和 $x+\bar x=2\cos\theta$ は実軸の上の点になる。こうして 6 次方程式が 3 次方程式に落ちる。$t^3+t^2-2t-1=0$ の解が平方根だけでは書けないこと、そのため正七角形が定規とコンパスで作図できないことは 正多角形の作図可能性 で扱う(同記事では、この 3 次方程式を余弦の和から導いている)。Chebyshev多項式 の例「周期 3 の軌道と 7 等分の角」にも同じ方程式が現れる。
thm-req-main と prop-req-inverse の仮定を外すと何が崩れるか、また $t$ から $x$ にもどすときの注意を並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 係数が対称 | $x^2-3x+2$ | $\alpha$ が解なら $\frac1\alpha$ も解 |
| $a_0\ne0$(両端の係数が $0$ でない) | 係数の並び $0,1,2,1,0$ の $x^3+2x^2+x$ | $\alpha$ が解なら $\frac1\alpha$ も解、$Q$ が $m$ 次 |
| $\lvert t\rvert\ge2$ | $t=1$ | 実数の $t$ から実数の $x$ が出る |
$x^2-3x+2=(x-1)(x-2)$ の解は $1$ と $2$ である。$2$ は解だが $\dfrac12$ は解でない($\dfrac14-\dfrac32+2=\dfrac34\ne0$)。係数 $1,-3,2$ は対称でないので、prop-req-inverse の仮定を満たさない。
$x^3+2x^2+x$ を「$0\cdot x^4+x^3+2x^2+x+0$」と見ると、係数の並び $0,1,2,1,0$ は左右対称である。しかし $x^4$ の係数が $0$ なので、これは 4 次の多項式ではなく、def-req-reciprocal の相反多項式ではない。実際、$x^3+2x^2+x=x(x+1)^2$ は $x=0$ を解にもち、$0$ の逆数はない。$x^2$ で割ると $x+2+\dfrac1x=t+2$ となり、$Q(t)=t+2$ は $2$ 次でなく $1$ 次である。$x$ をくくり出した残り $x^2+2x+1$ は 2 次の相反多項式で、$x=0$ 以外の解は $-1$(重解)である。
$t=1$ のとき $x^2-x+1=0$ で、判別式は $1-4=-3<0$ なので、解 $x=\dfrac{1\pm\sqrt3\,i}2$ は虚数である。絶対値は $\sqrt{\dfrac14+\dfrac34}=1$ で、prop-req-t-range (iii) のとおりである。実数の解だけを求める問題では、$Q(t)=0$ の解のうち $\lvert t\rvert\ge2$ のものだけが実数の $x$ を与える。
ex-req-five と ex-req-seven の $x^4+x^3+x^2+x+1$ と $x^6+\cdots+1$ は、$1$ 以外の 1 の $p$ 乗根($p=5,7$)を解にもつ多項式である。一般に、1 の $n$ 乗根のうち、$n$ 乗して初めて $1$ になるもの(原始 $n$ 乗根、1の冪根)をすべて解にもつ最高次の係数 $1$ の多項式を、円分多項式 $\Phi_n(x)$ という。$\Phi_n$ の次数は $\varphi(n)$($1$ 以上 $n$ 以下で $n$ と互いに素な整数の個数)で、有理数係数の範囲ではそれ以上因数分解できない(Mil22 の §5、Theorem 5.10)。
$n\ge3$ のとき、原始 $n$ 乗根 $\zeta$ の逆数 $\dfrac1\zeta=\zeta^{n-1}$ も原始 $n$ 乗根で、$\zeta\ne\dfrac1\zeta$ である($\zeta=\dfrac1\zeta$ なら $\zeta^2=1$ で、$n\ge3$ の原始 $n$ 乗根にならない)。解が逆数どうしの組に分かれるので、$\Phi_n$ は偶数次の相反多項式になる(この記事では証明しない)。thm-req-main により $\Phi_n(x)=x^{\varphi(n)/2}Q_n\bigl(x+\frac1x\bigr)$ と書け、$Q_n(t)=0$ の解は $2\cos\dfrac{2\pi k}n$($k$ は $n$ と互いに素、$1\le k<\dfrac n2$)である。ex-req-seven は $n=7$ の場合で、$Q_7(t)=t^3+t^2-2t-1$ である。$2\cos\dfrac{2\pi}n$ を解にもつ有理数係数の多項式の最小の次数が $\dfrac{\varphi(n)}2$ になることは、正多角形の作図可能性 の定理「次数についての 2 つの事実」で紹介されている(この記事では証明しない)。
方程式の解の入れ替えの対称性を調べる理論(Galois 理論)では、thm-req-main の次数下げは、「$x$ と $\frac1x$ を入れ替える」対称性で方程式を割り算したものと見られる(Galois理論)。
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