シェイプ理論(shape theory)とは、位相空間 $X$ を、$X$ から絶対近傍レトラクト(ANR)$P$ への写像のホモトピー類 $[X,P]$ を通して調べ、ホモトピー型より粗い「シェイプ」で空間を分類する理論である。シェイプ射は関手 $[Y,-]$ から $[X,-]$ への自然変換として定義でき、ANR に対してはホモトピー類と一致する。距離空間のコンパクト集合の減少列の共通部分では $[X,P]$ が各段の帰納極限になり、これを使うとワルシャワ円は円周と、位相幾何学者の正弦曲線は 1 点と同じシェイプをもつことが示せる。局所的な構造の悪いコンパクト距離空間を扱うために Borsuk が導入した。
ホモトピー論は、多様体や CW複体、絶対近傍レトラクト(ANR)のように局所的な構造のよい空間ではよく働くが、局所的な構造の悪い空間では情報を失う。ワルシャワ円 $W$ はその典型で、すべてのホモトピー群が自明なのに可縮でなく、円周 $S^1$ とよく似た形をしているのに $S^1$ とホモトピー同値でない。原因は、$S^1$ から $W$ への連続写像が少なすぎることにある。
シェイプ理論(shape theory)は、空間 $X$ を、$X$ へ入る写像ではなく、$X$ から局所的な構造のよい空間 $P$ への写像のホモトピー類 $[X,P]$ を通して調べる。Borsuk が 1968 年にコンパクト距離空間について始めた理論で、ホモトピー型より粗い「シェイプ」という分類を与える(Mar72 §1、p. 291)。この記事では Mardešić による関手的な定義を述べ、次の 3 つを証明する。
位相空間 $X,Y$ について、連続写像 $X\to Y$ のホモトピー類の集合を $[X,Y]$ と書き、$f$ の類を $[f]$ と書く。ANR は距離化可能空間に対する絶対近傍レトラクトを指す(絶対近傍レトラクトの記事の定義「絶対近傍レトラクトと絶対レトラクト」)。
$X,Y$ を位相空間とする。$X$ から $Y$ への シェイプ射 $F\colon X\to Y$ とは、各 ANR $P$ に対する写像
$$
F_P\colon[Y,P]\to[X,P]
$$
の族であって、ANR の間の任意の連続写像 $u\colon P\to Q$ と $[g]\in[Y,P]$ について $F_Q([u\circ g])=[u]\circ F_P([g])$ を満たすもの(自然性)をいう。ここで $[u]\circ[k]:=[u\circ k]$ である。シェイプ射 $F\colon X\to Y$ と $F'\colon Y\to Z$ の合成 $F'\circ F\colon X\to Z$ を $(F'\circ F)_P:=F_P\circ F'_P$ で、恒等射を $\mathrm{id}_P$ の族で定める。こうして得られる圏を シェイプ圏 といい、その同型射を シェイプ同値 という。$X$ から $Y$ へのシェイプ同値があるとき、$X$ と $Y$ は 同じシェイプをもつ という。
ANR の圏で連続写像をホモトピー類に置き換えた圏を $\mathrm{HANR}$ と書くと、$P\mapsto[X,P]$ は $\mathrm{HANR}$ から集合の圏への関手 $[X,-]$ であり、シェイプ射 $X\to Y$ は自然変換 $[Y,-]\Rightarrow[X,-]$ にほかならない。
連続写像 $f\colon X\to Y$ は、$\mathrm{Sh}(f)_P([g]):=[g\circ f]$ によってシェイプ射 $\mathrm{Sh}(f)\colon X\to Y$ を定める。自然性は $[u\circ g\circ f]=[u]\circ[g\circ f]$ から明らかである。$\mathrm{Sh}(g\circ f)_P([k])=[k\circ g\circ f]=\mathrm{Sh}(f)_P(\mathrm{Sh}(g)_P([k]))$ なので $\mathrm{Sh}(g\circ f)=\mathrm{Sh}(g)\circ \mathrm{Sh}(f)$、$\mathrm{Sh}(\mathrm{id}_X)=\mathrm{id}$ である。$f\simeq f'$ なら $g\circ f\simeq g\circ f'$ なので $\mathrm{Sh}(f)=\mathrm{Sh}(f')$ である。したがって、ホモトピー同値な空間は同じシェイプをもつ。
連続写像 $f\colon X\to Y$ について、$\mathrm{Sh}(f)$ がシェイプ同値であることと、すべての ANR $P$ について $f^*:=\mathrm{Sh}(f)_P\colon[Y,P]\to[X,P]$ が全単射であることは同値である。
$\mathrm{Sh}(f)$ に逆射 $F'$ があれば、$F'_P$ が各 $f^*$ の逆写像である。逆に各 $f^*$ が全単射なら、$F'_P:=(f^*)^{-1}$ とおく。$u\colon P\to Q$ と $[k]\in[X,P]$ について $[k]=f^*([g])$ と書くと、$f^*$ の自然性から $f^*([u\circ g])=[u]\circ[k]$ なので $F'_Q([u]\circ[k])=[u\circ g]=[u]\circ F'_P([k])$ であり、$F'$ は自然である。$F'$ は $\mathrm{Sh}(f)$ の逆射である。$\square$
この判定は Gev23 Theorem 4(p. 9)として述べられている。
$X$ を位相空間、$Y$ を ANR とする。
1:$[f]:=F_Y([\mathrm{id}_Y])$ とおく。ANR $P$ と $g\colon Y\to P$ について、自然性を $u=g\colon Y\to P$ と $[\mathrm{id}_Y]$ に使うと
$$
F_P([g])=F_P([g\circ\mathrm{id}_Y])=[g]\circ F_Y([\mathrm{id}_Y])=[g\circ f]=\mathrm{Sh}(f)_P([g])
$$
なので $F=\mathrm{Sh}(f)$ である。逆に $\mathrm{Sh}(f)_Y([\mathrm{id}_Y])=[f]$ である。よって 2 つの対応は互いに逆である。
2:ホモトピー同値なら同じシェイプをもつことは上で見た。逆に $F\colon X\to Y$、$F'\colon Y\to X$ を互いに逆なシェイプ同値とすると、1 により $F=\mathrm{Sh}(f)$、$F'=\mathrm{Sh}(g)$ となる連続写像がある。$\mathrm{Sh}(g\circ f)=F'\circ F=\mathrm{id}=\mathrm{Sh}(\mathrm{id}_X)$ であり、$X$ は ANR なので 1 の単射性から $[g\circ f]=[\mathrm{id}_X]$ である。同様に $[f\circ g]=[\mathrm{id}_Y]$ であり、$f$ はホモトピー同値である。$\square$
1 は米田の補題の特別な場合であり、シェイプ理論がホモトピー論を ANR の上で変えないことを示す。Mar72 §1(p. 291)は Holsztyński による特徴づけとして、ホモトピー類で決まること、ANR へのシェイプ射が写像のホモトピー類から一意に得られること、逆極限について連続であることの 3 点を挙げている。この記事の主定理 1 は 2 点目、主定理 2 は 3 点目に当たる。
$Z$ を距離空間、$K_1\supset K_2\supset\cdots$ をコンパクト集合の列、$K:=\bigcap_kK_k$ とし、$O\subset Z$ を $K\subset O$ となる開集合とする。このとき、ある $k$ について $K_k\subset O$ である。
コンパクト集合は距離空間で閉なので、$K_k\setminus O=K_k\cap(Z\setminus O)$ はコンパクト集合 $K_1$ の閉集合からなる減少列で、共通部分は $K\setminus O=\emptyset$ である。有限交叉性により、ある $K_k\setminus O$ が空である。$\square$
$Z$ を距離空間、$X_1\supset X_2\supset\cdots$ を $Z$ のコンパクト集合の列、$X:=\bigcap_kX_k$ とし、$P$ を ANR とする。
ANR は、距離化可能空間に対する絶対近傍拡張子である(絶対近傍レトラクトの記事の命題「レトラクトと拡張子の一致」)。すなわち、距離化可能空間 $Y$ の閉集合 $A$ から $P$ への連続写像は、$A$ を含む $Y$ のある開集合の上の連続写像に拡張できる。
1:$X$ はコンパクトなので $Z$ の閉集合である。$f$ の拡張 $F\colon O\to P$($O\supset X$ は開集合)をとる。lem-sh-decreasing によりある $k$ で $X_k\subset O$ なので、$g:=F|_{X_k}$ とすればよい。
2:$H\colon X\times[0,1]\to P$ を $g|_X$ から $g'|_X$ へのホモトピーとする。距離化可能空間 $Z\times[0,1]$ の閉集合
$$
A:=(X_k\times\{0\})\cup(X\times[0,1])\cup(X_k\times\{1\})
$$
の上で、$X_k\times\{0\}$ では $g$、$X\times[0,1]$ では $H$、$X_k\times\{1\}$ では $g'$ をとる写像 $\Phi$ を考える。3 つの閉集合の共通部分 $X\times\{0\}$、$X\times\{1\}$ の上で値は一致するので、$\Phi$ は連続である。$\Phi$ を $A$ を含む開集合 $O\subset Z\times[0,1]$ 上の連続写像 $\Psi$ に拡張する。$X_m\times[0,1]$($m\ge k$)はコンパクト集合の減少列で、共通部分 $X\times[0,1]$ は $O$ に含まれるので、lem-sh-decreasing によりある $m\ge k$ で $X_m\times[0,1]\subset O$ である。$\Psi|_{X_m\times[0,1]}$ が $g|_{X_m}$ から $g'|_{X_m}$ へのホモトピーである。
最後の主張:1 は写像が全射であること、2 は単射であることを述べている。自然性は、制限と合成 $u\circ-$ が交換することによる。$\square$
ANR $X_k$ の減少列については、この定理は包含写像の系 $\{X_k\}$ が Morita の意味で $X$ に付随する ANR 系であることを述べている(Gev23 Definition 3、p. 8)。主定理 2 から、シェイプ同値を判定する次の補題が得られる。
thm-sh-continuity の状況で、空間 $T$ と連続写像 $\varphi_k\colon X_k\to T$ が、すべての $k$ について $\varphi_{k+1}=\varphi_k|_{X_{k+1}}$ を満たし、各 $\varphi_k$ がホモトピー同値であるとする。このとき $\varphi:=\varphi_1|_X\colon X\to T$ はシェイプ同値である。
prop-sh-criterion により、ANR $P$ について $\varphi^*\colon[T,P]\to[X,P]$ が全単射であることを示せばよい。$\psi_k\colon T\to X_k$ を $\varphi_k$ のホモトピー逆写像とする。全射性:$f\colon X\to P$ に対し、thm-sh-continuity の 1 により拡張 $g\colon X_k\to P$ がある。$g\simeq g\circ\psi_k\circ\varphi_k$ なので、$X$ に制限して $f\simeq(g\circ\psi_k)\circ\varphi$ である($\varphi_k|_X=\varphi$)。単射性:$a,b\colon T\to P$ が $a\circ\varphi\simeq b\circ\varphi$ を満たすとする。$a\circ\varphi_1$ と $b\circ\varphi_1$ の $X$ への制限はホモトピックなので、thm-sh-continuity の 2 によりある $m$ で $a\circ\varphi_m\simeq b\circ\varphi_m$ である。右から $\psi_m$ を合成すると $a\simeq b$ である。$\square$
位相幾何学者の正弦曲線の記事と同じく、$G:=\{(x,\sin(1/x))\mid0< x\le1\}$、$I:=\{0\}\times[-1,1]$、$S:=G\cup I\subset\mathbb{R}^2$ とし、$L$ を $(0,-1)\to(0,-2)\to(2,-2)\to(2,\sin1)\to(1,\sin1)$ の折れ線、$W:=S\cup L$ をワルシャワ円とする(ワルシャワ円、$L\cap S=\{(0,-1),(1,\sin1)\}$)。
段 1(近似する列).$a_k:=1/(\pi/2+2\pi k)$($k\ge1$)とおくと $\sin(1/a_k)=1$、$a_1=2/(5\pi)<1$ で、$a_k$ は $0$ に減少する。$R_k:=[0,a_k]\times[-1,1]$、$G_k:=\{(x,\sin(1/x))\mid a_k\le x\le1\}$、$p_k:=(a_k,1)$ とし、
$$
Y_k:=R_k\cup G_k,\qquad X_k:=Y_k\cup L
$$
とおく。これらはコンパクトである。$0< x\le a_k$ の部分のグラフは $R_k$ に含まれるので $G\cup I\subset Y_k$ であり、$R_{k+1}\subset R_k$ と合わせて $Y_{k+1}\subset Y_k$、$X_{k+1}\subset X_k$ である。$(x,y)\in\bigcap_kY_k$ とすると、$x=0$ なら $(x,y)\in R_k$ から $(x,y)\in I$ であり、$x>0$ なら $a_k< x$ となる $k$ について $(x,y)\notin R_k$ なので $(x,y)\in G_k\subset G$ である。よって $\bigcap_kY_k=S$、$\bigcap_kX_k=W$ である。また $G_k\cap R_k=\{p_k\}$、$L\cap R_k=\{(0,-1)\}$、$L\cap G_k=\{(1,\sin1)\}$ である。
段 2(正弦曲線).$Y_k$ は可縮である。実際、$\gamma(x):=(x,\sin(1/x))$ とおき、$G_k$ の上で $H_t(\gamma(x)):=\gamma((1-t)x+ta_k)$、$R_k$ の上で $H_t(z):=(1-t)z+tp_k$ と定める。$R_k$ は凸なので $H_t(R_k)\subset R_k$ で、共通点 $p_k=\gamma(a_k)$ では両式とも $p_k$ を与えるので、閉集合での貼り合わせにより $H$ は連続であり、$H_0=\mathrm{id}$、$H_1$ は定値写像である。したがって 1 点への写像 $Y_k\to\{\ast\}$ はホモトピー同値であり、lem-sh-tower を $T=\{\ast\}$ に適用して 2 の前半を得る。
段 3(ワルシャワ円の近似の形).$A_k:=G_k\cup L$ は $p_k$ から $(1,\sin1)$ を経て $(0,-1)$ に至る弧($[0,1]$ と同相な集合)で、$A_k\cap R_k=\{p_k,(0,-1)\}$ である。$D_k$ を $(0,-1)$ と $p_k$ を結ぶ線分($R_k$ の対角線)とし、$C_k:=A_k\cup D_k$ とおく。$\pi_k\colon R_k\to D_k$ を、$D_k$ を含む直線への直交射影とする。$v:=(a_k,2)$ とおくと $\pi_k(z)=(0,-1)+\tau(z)v$、$\tau(z):=\langle z-(0,-1),v\rangle/\lvert v\rvert^2$ であり、$\tau$ は $R_k$ の 4 頂点で $0$、$1$、$4/(a_k^2+4)$、$a_k^2/(a_k^2+4)$ をとる。$\tau$ は 1 次式なので $R_k$ の上で $[0,1]$ に値をとり、$\pi_k(R_k)\subset D_k$ である。$R_k$ の上の $(1-t)z+t\pi_k(z)$ と $A_k$ の上の恒等写像は、共通点($D_k$ の端点で $\pi_k$ が動かさない点)で一致するので、貼り合わせて $X_k$ から $X_k$ へのホモトピーを得る。これは $\mathrm{id}_{X_k}$ から、$C_k$ へのレトラクション $\rho_k\colon X_k\to C_k$ へのホモトピーである。よって包含写像 $C_k\hookrightarrow X_k$ はホモトピー同値で、$\rho_k$ がそのホモトピー逆写像である。
段 4(円周への写像).$A_1$ は弧なので、同相写像 $\alpha\colon[0,1]\to A_1$ で $\alpha(0)=p_1$、$\alpha(1)=(0,-1)$ となるものがある。$Q\colon X_1\to S^1\subset\mathbb{C}$ を、$R_1$ の上で $Q:=1$、$A_1$ の上で $Q(\alpha(\sigma)):=e^{2\pi i\sigma}$ と定める。$R_1\cap A_1=\{\alpha(0),\alpha(1)\}$ で両式は $1$ を与えるので $Q$ は連続である。$q_k:=Q|_{X_k}$、$q:=Q|_W$ とおくと $q_{k+1}=q_k|_{X_{k+1}}$ であり、$q$ は $I\subset R_1$ を $1$ に送る。
段 5($q_k$ はホモトピー同値).$0< x\le a_1$ の部分のグラフは $R_1$ に含まれるので、$B_k:=\{(x,\sin(1/x))\mid a_k\le x\le a_1\}\subset R_1$ であり、$E_k:=D_k\cup B_k$ は $(0,-1)$ から $p_k$ を経て $p_1$ に至る $R_1$ の中の弧で、$C_k=A_1\cup E_k$、$A_1\cap E_k=\{p_1,(0,-1)\}$ である。$Q$ は $E_k$ の上で $1$ である。$\beta\colon[\frac12,1]\to E_k$ を $\beta(\frac12)=(0,-1)$、$\beta(1)=p_1$ となる同相写像とし、$\lambda\colon[0,1]\to C_k$ を $[0,\frac12]$ では $\alpha(2\sigma)$、$[\frac12,1]$ では $\beta(\sigma)$ と定める。$\lambda$ は $\lambda(0)=\lambda(1)$ 以外では単射なので、$e^{2\pi i\sigma}\mapsto\lambda(\sigma)$ は連続な全単射 $\bar\lambda\colon S^1\to C_k$ を与え、$S^1$ はコンパクト、$C_k$ は Hausdorff なので同相写像である。$\phi(\sigma):=\min\{2\sigma,1\}$ とおくと $q_k(\bar\lambda(e^{2\pi i\sigma}))=e^{2\pi i\phi(\sigma)}$ である。$K_t(e^{2\pi i\sigma}):=e^{2\pi i((1-t)\phi(\sigma)+t\sigma)}$ は、$\sigma=0,1$ で $(1-t)\phi+t\sigma$ がそれぞれ $0,1$ なので $S^1\times[0,1]$ 上で矛盾なく定まって連続であり、$q_k|_{C_k}\circ\bar\lambda$ と $\mathrm{id}_{S^1}$ を結ぶ。よって $q_k|_{C_k}=(q_k|_{C_k}\circ\bar\lambda)\circ\bar\lambda^{-1}$ はホモトピー同値である。段 3 により $q_k\simeq q_k\circ\rho_k=(q_k|_{C_k})\circ\rho_k$ はホモトピー同値の合成なので、$q_k$ はホモトピー同値である。
段 6(まとめ).lem-sh-tower を $T=S^1$、$\varphi_k=q_k$ に適用して、$q$ はシェイプ同値である。$W$ はどの CW 複体ともホモトピー同値でない(位相幾何学者の正弦曲線の記事の命題「ワルシャワ円のホモトピー群と可縮性」の 3)ので、CW 複体 $S^1$ ともホモトピー同値でない。$S$ が弧状連結でないことは同記事の定理「弧状連結でない」であり、弧状連結性はホモトピー同値で保たれるので、$S$ は 1 点とホモトピー同値でない。$\square$
1:シェイプ同値 $F$ の成分 $F_P$ が全単射である。$S^1$ は多様体なので ANR である(絶対近傍レトラクトの記事の例「多様体と局所有限CW複体」)。$F=\mathrm{Sh}(f)$ のとき $f^*([a][b])=[(a\circ f)(b\circ f)]=f^*([a])f^*([b])$ なので $f^*$ は準同型である。
2:1 と主定理 3 による。$S\to\{\ast\}$ がシェイプ同値なので $[S,S^1]$ は $[\{\ast\},S^1]$ と全単射で対応し、後者は $S^1$ が弧状連結なので 1 元である。$\square$
ワルシャワ円の記事の定理「円周への写像の分類」により $[W,S^1]\cong\mathbb{Z}$ であり、2 と合わせて $[S^1,S^1]\cong\mathbb{Z}$ でもある。円周 $S^1$ は Eilenberg–MacLane 空間 $K(\mathbb{Z},1)$ であり、$[X,S^1]$ は 1 次の Čechコホモロジー と関係する。Čech コホモロジー群と Čech ホモロジー群はシェイプ不変量である(Mar72 §1、p. 292。この記事では証明しない)。一方、特異ホモロジーや基本群はシェイプ不変量でない。$W$ の基本群は自明だが $S^1$ の基本群は $\mathbb{Z}$ である。
| 空間 | 弧状連結 | 基本群 | $[X,S^1]$ | シェイプ |
|---|---|---|---|---|
| 円周 $S^1$ | 成り立つ | $\mathbb{Z}$ | $\mathbb{Z}$ | $S^1$ |
| ワルシャワ円 $W$ | 成り立つ | 自明 | $\mathbb{Z}$ | $S^1$ |
| 位相幾何学者の正弦曲線 $S$ | 成り立たない | 各弧状連結成分で自明 | 1 元 | 1 点 |
| 1 点 | 成り立つ | 自明 | 1 元 | 1 点 |
$S$ の弧状連結成分 $I$ と $G$ はそれぞれ線分と半開区間に同相で可縮である(位相幾何学者の正弦曲線の記事の系「二つの弧状連結成分」)。ホモトピー論で見える量(弧状連結性・基本群)はシェイプで保たれず、ANR への写像で測る量が保たれる。
平面の連続体(連結なコンパクト集合)については、Borsuk が、2 つが同じシェイプをもつことと、1 次の(Čech ホモロジーの)Betti 数が一致することが同値であることを示した(Mar72 §1、p. 292。この記事では証明しない)。このため平面の連続体のシェイプは、1 点、$n$ 個の円周のブーケ($n\ge1$)、可算無限個の円周を半径が $0$ に近づくように 1 点で束ねた ハワイの耳飾り のいずれかと一致する。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $X_k$ がコンパクトであること(thm-sh-continuity) | $Z=\mathbb{R}$、$X_k=[k,\infty)$、$P=\{0,1\}$ | 2($X$ 上でホモトピックなら小さい $X_m$ 上でホモトピック) |
| $P$ が ANR であること(thm-sh-continuity) | $X_k$ は段 1 のもの、$X=W$、$P=W$ | 1($X$ 上の写像の $X_k$ への拡張) |
| $Y$ が ANR であること(thm-sh-anr の 1) | $X=S^1$、$Y=W$ | シェイプ射とホモトピー類の一対一対応 |
| $X,Y$ が ANR であること(thm-sh-anr の 2) | $q\colon W\to S^1$ | シェイプ同値ならホモトピー同値であること |
1 行目:$X=\emptyset$ なので $[X,P]$ は 1 元である。$P=\{0,1\}$ は ANR である($\mathbb{R}\setminus\{\frac12\}$ は ANR $\mathbb{R}$ の開集合なので ANR で、$\{0,1\}$ はそのレトラクトである。絶対近傍レトラクトの記事の命題「開集合とレトラクトへの遺伝」)。定値写像 $0$ と $1$ は $X$ 上では一致するが、連結な $X_m$ の上ではホモトピックでない。2 行目:$X_k$ は凸集合 $R_k$ と弧 $A_k$ の和で、共通部分は 2 点なので ANR である(同記事の定理「絶対近傍レトラクトのさらなる性質」の 1 による。この記事では証明しない)。$\mathrm{id}_W$ が $r\colon X_k\to W$ に拡張されれば $W$ は ANR $X_k$ のレトラクトとなり ANR になるが、$W$ は ANR でない(ワルシャワ円の記事の系「局所的な性質の欠如」)。3 行目:主定理 3 と主定理 1 により、シェイプ射 $S^1\to W$ は $S^1\to S^1$ のシェイプ射、すなわち $[S^1,S^1]\cong\mathbb{Z}$ と一対一に対応する。一方 $W$ は弧状連結で基本群が自明なので、$S^1\to W$ はすべて定値写像にホモトピックであり、$[S^1,W]$ は 1 元である。4 行目は主定理 3 の 1 である。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する