Laplace変換の入口(高校数学)

同義語:Laplace変換(高校数学)ラプラス変換(高校数学)Laplace transform (high school mathematics)

概要

Laplace変換の入口(Laplace transform)とは、$[0,\infty)$ で連続な関数 $f$ に広義積分 $F(s)=\int_0^\infty e^{-st}f(t)\,dt$ を対応させる操作と、その使い方である。$\lvert f(t)\rvert\le Me^{at}$ なら $s>a$ で収束し、$f'$ も連続で同じ形の不等式を満たせば $\mathcal L[f'](s)=sF(s)-f(0)$ となり、微分が $s$ の掛け算に変わる。$\mathcal L[t^n]=\frac{n!}{s^{n+1}}$、$\mathcal L[\sin\omega t]=\frac{\omega}{s^2+\omega^2}$ などの表を使うと、定数係数の線形微分方程式の初期値問題が 1 次方程式と部分分数分解で解ける。得た関数は代入と一意性の定理で確かめる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 強制振動と共振(高校数学), 部分積分の使い方, Gauss積分(高校数学), 有理関数の積分

高校での出発点:$e^{-st}$ を掛けて積分すると微分が消える

1階線形微分方程式と積分因子(高校数学) では、方程式に積分因子を掛けて左辺を 1 つの関数の導関数にまとめた。ここでは別の関数 $e^{-st}$($s$ は正の定数)を掛けて、$0$ から $\infty$ まで積分してみる。すると、微分の計算が $s$ を掛ける計算に変わる。

$y'+2y=0$、$y(0)=3$ を積分で解く

解が $y=3e^{-2t}$ であることは 微分方程式としての指数関数・三角関数 の定理「$y'=ky$ の解」から分かっている。これを別の方法で求めてみる。
(1) $y$ の積分。解 $y(t)$ に対して $Y(s)=\displaystyle\int_0^\infty e^{-st}y(t)\,dt$ とおく(積分が収束するとして計算を進め、最後に答えを確かめる)。
(2) $y'$ の積分。部分積分により
$$ \int_0^Re^{-st}y'(t)\,dt=\Bigl[e^{-st}y(t)\Bigr]_0^R+s\int_0^Re^{-st}y(t)\,dt=e^{-sR}y(R)-y(0)+s\int_0^Re^{-st}y(t)\,dt $$
である。$R\to\infty$ で $e^{-sR}y(R)\to0$ となるなら、$\displaystyle\int_0^\infty e^{-st}y'(t)\,dt=sY(s)-y(0)=sY(s)-3$ となる。
(3) 方程式の積分。$y'+2y=0$ の両辺に $e^{-st}$ を掛けて $0$ から $\infty$ まで積分すると
$$ \bigl(sY(s)-3\bigr)+2Y(s)=0,\qquad\text{すなわち}\qquad Y(s)=\frac3{s+2} $$
となる。微分方程式が、$Y$ の 1 次方程式に変わった。
(4) もとにもどす。$s>-2$ のとき
$$ \int_0^\infty e^{-st}\cdot3e^{-2t}\,dt=\lim_{R\to\infty}\Bigl[-\frac3{s+2}e^{-(s+2)t}\Bigr]_0^R=\lim_{R\to\infty}\frac3{s+2}\bigl(1-e^{-(s+2)R}\bigr)=\frac3{s+2} $$
なので、関数 $3e^{-2t}$ に同じ操作をすると $\dfrac3{s+2}$ になる。そこで $y=3e^{-2t}$ が答えの候補になる。代入すると $y'+2y=-6e^{-2t}+6e^{-2t}=0$、$y(0)=3$ で、確かに解である。

関数 $y(t)$ に $Y(s)=\displaystyle\int_0^\infty e^{-st}y(t)\,dt$ を対応させる操作を Laplace 変換 という。ex-lap-start の (2) のように、Laplace 変換は微分を「$s$ を掛けて初期値を引く」計算に変える。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. Laplace 変換の積分はどんな関数で収束するか。(2) の「$e^{-sR}y(R)\to0$」はいつ成り立つか。→ thm-lap-main
    1. で使ったような「関数とその変換」の対応を、よく使う関数について求めておけるか。→ thm-lap-table
  2. この方法で得た答えは本当に解か。解はほかにないか。→ rem-lap-logic
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    $e^{-st}$ を掛けて $0$ から $\infty$ まで積分Laplace 変換 $\mathcal L[f](s)$積分変換
    部分積分$\mathcal L[f']=sF-f(0)$微分が掛け算になる
    部分分数分解(有理関数の積分)変換の表を逆に読む逆変換
    数列の母関数(母関数:数列を関数として扱う)関数の Laplace 変換生成関数と積分変換

取り出す構造:Laplace 変換の定義

広義積分 $\displaystyle\int_0^\infty g(t)\,dt=\lim_{R\to\infty}\int_0^Rg(t)\,dt$ の意味は、Gauss積分(高校数学) の定義「広義積分の収束」のとおりとする。極限が有限の値として存在するとき「収束する」という。

Laplace 変換

$f$ を区間 $[0,\infty)$ で連続な関数とする。実数 $s$ について、広義積分
$$ F(s)=\int_0^\infty e^{-st}f(t)\,dt $$
が収束するとき、$F(s)$ を $f$ の Laplace 変換 といい、$\mathcal L[f](s)$ とも書く。$F$ は、積分が収束する $s$ の範囲で定義された $s$ の関数である。

基本の変換
  1. $f(t)=1$。$s>0$ なら $\displaystyle\int_0^Re^{-st}\,dt=\Bigl[-\frac{e^{-st}}s\Bigr]_0^R=\frac{1-e^{-sR}}s$ で、$R\to\infty$ で $e^{-sR}\to0$ なので $\mathcal L[1](s)=\dfrac1s$ である。$s=1,2$ で $1,\ \dfrac12$ である。
  2. $f(t)=e^{ct}$($c$ は実数の定数)。$s>c$ なら
    $$ \int_0^Re^{-st}e^{ct}\,dt=\int_0^Re^{-(s-c)t}\,dt=\frac{1-e^{-(s-c)R}}{s-c}\longrightarrow\frac1{s-c}\quad(R\to\infty) $$
    なので $\mathcal L[e^{ct}](s)=\dfrac1{s-c}$ である。$c=-2$ で $3$ 倍したものが ex-lap-start の (4) である。
  3. $f(t)=t$。$s>0$ なら、部分積分により $\mathcal L[t](s)=\dfrac1{s^2}$ である。$s=\dfrac12,1,2$ で $4,1,\dfrac14$ となる(図 1)。
    部分積分の計算を開く

    $$\int_0^Rte^{-st}\,dt=\Bigl[-\frac{te^{-st}}s\Bigr]_0^R+\frac1s\int_0^Re^{-st}\,dt=-\frac{Re^{-sR}}s+\frac{1-e^{-sR}}{s^2}$$

    で、$Re^{-sR}=\dfrac R{e^{sR}}\to0$、$e^{-sR}\to0$ なので、$R\to\infty$ で $\dfrac1{s^2}$ に近づく。

f(t)=t について、e^{-st}t のグラフを s=0.5、1、2 で描き、下の面積 F(s)=1/s^2 を塗った。s が大きいほど e^{-st} が早く小さくなり、面積が小さい f(t)=t について、e^{-st}t のグラフを s=0.5、1、2 で描き、下の面積 F(s)=1/s^2 を塗った。s が大きいほど e^{-st} が早く小さくなり、面積が小さい
図 1 のように、$e^{-st}$ は $t$ が大きいところの $f(t)$ を小さく押さえる「重み」で、$s$ が大きいほど強く押さえる。$f$ が $t\to\infty$ で大きくなっても、$e^{-st}$ の減り方の方が速ければ積分は収束する。どのくらい速ければよいかを、次の条件で表す。

指数型の増大

$[0,\infty)$ で連続な関数 $f$ について、定数 $M\ge0$ と実数 $a$ があって、すべての $t\ge0$ で
$$ \lvert f(t)\rvert\le Me^{at} $$
が成り立つとき、$f$ は 指数型(指数 $a$)であるという。

$1$、$\sin\omega t$、$\cos\omega t$ は $M=1$、$a=0$ で指数型である。$e^{ct}$ は $M=1$、$a=c$ で指数型である。$t^n$ がどんな $a>0$ についても指数型であることは、lem-lap-poly で示す。

Laplace 変換の線形性

$f$、$g$ の Laplace 変換がある $s$ で収束するなら、定数 $\alpha$、$\beta$ について $\alpha f+\beta g$ の Laplace 変換もその $s$ で収束し、$\mathcal L[\alpha f+\beta g](s)=\alpha\mathcal L[f](s)+\beta\mathcal L[g](s)$ である。

要点:$0$ から $R$ までの定積分は線形なので、$R\to\infty$ の極限をとればよい。

証明を開く

$R>0$ について $\displaystyle\int_0^Re^{-st}(\alpha f+\beta g)\,dt=\alpha\int_0^Re^{-st}f\,dt+\beta\int_0^Re^{-st}g\,dt$ である(定積分の線形性)。右辺の 2 つの積分は $R\to\infty$ で収束するので、極限の和と定数倍の性質により、左辺も収束して $\alpha\mathcal L[f](s)+\beta\mathcal L[g](s)$ に近づく。$\square$

主定理 1:収束と微分の公式

収束と、導関数の Laplace 変換
  1. $f$ が $[0,\infty)$ で連続で、$\lvert f(t)\rvert\le Me^{at}$($t\ge0$)を満たすとする。このとき、$s>a$ のすべての $s$ で $F(s)=\mathcal L[f](s)$ は収束し、$\lvert F(s)\rvert\le\dfrac M{s-a}$ である。
  2. さらに $f$ が $[0,\infty)$ で微分可能で、$f'$ が連続で $\lvert f'(t)\rvert\le Me^{at}$ も満たすとする。このとき $s>a$ で
    $$ \mathcal L[f'](s)=sF(s)-f(0) $$
    である。
  3. さらに $f'$ も微分可能で、$f''$ が連続で $\lvert f''(t)\rvert\le Me^{at}$ も満たすとする。このとき $s>a$ で
    $$ \mathcal L[f''](s)=s^2F(s)-sf(0)-f'(0) $$
    である。

段 1((1):負にならない関数に直す)。$s>a$ とし、$b=s-a>0$ とおく。仮定から $-Me^{at}\le f(t)\le Me^{at}$ なので、両辺に $e^{-st}>0$ を掛けて
$$ -Me^{-bt}\le e^{-st}f(t)\le Me^{-bt} $$
である。$g(t)=e^{-st}f(t)+Me^{-bt}$ とおくと、左の不等式から $g(t)\ge0$、右の不等式から $g(t)\le2Me^{-bt}$ である。
段 2((1):単調で有界)。$g\ge0$ なので $G(R)=\displaystyle\int_0^Rg(t)\,dt$ は $R$ について増加する。さらに
$$ G(R)\le\int_0^R2Me^{-bt}\,dt=\frac{2M}b\bigl(1-e^{-bR}\bigr)\le\frac{2M}b $$
なので上に有界である。増加して上に有界な関数は $R\to\infty$ で収束する(Gauss積分(高校数学) の節「区間の端が無限大の積分」で、負にならない関数の広義積分について述べたのと同じ理由。単調で有界な数列が収束するのと同じく、実数の上限の性質による)。よって $\displaystyle\int_0^\infty g(t)\,dt$ は収束する。
段 3((1):差をとる)。ex-lap-basic の (2) の計算($c=0$、$s$ を $b$ に替えたもの)により $\displaystyle\int_0^\infty Me^{-bt}\,dt=\frac Mb$ も収束する。$e^{-st}f(t)=g(t)-Me^{-bt}$ なので、lem-lap-linear と同じ理由で $\displaystyle\int_0^\infty e^{-st}f(t)\,dt$ は収束する。また、段 1 の不等式を $0$ から $R$ まで積分すると $\Bigl\lvert\displaystyle\int_0^Re^{-st}f(t)\,dt\Bigr\rvert\le\dfrac Mb\bigl(1-e^{-bR}\bigr)$ で、$R\to\infty$ として $\lvert F(s)\rvert\le\dfrac Mb=\dfrac M{s-a}$ を得る。
段 4((2):部分積分)。$s>a$ とする。(1) を $f'$ に使うと $\mathcal L[f'](s)$ は収束する。部分積分により
$$ \int_0^Re^{-st}f'(t)\,dt=\Bigl[e^{-st}f(t)\Bigr]_0^R-\int_0^R(-s)e^{-st}f(t)\,dt=e^{-sR}f(R)-f(0)+s\int_0^Re^{-st}f(t)\,dt $$
である。$\lvert e^{-sR}f(R)\rvert\le Me^{-(s-a)R}\to0$($R\to\infty$)なので、両辺の $R\to\infty$ の極限をとって $\mathcal L[f'](s)=sF(s)-f(0)$ を得る。
段 5((3))。(2) を $f'$ に使う($f'$ と $f''$ が (2) の仮定を満たす)と、$\mathcal L[f''](s)=s\mathcal L[f'](s)-f'(0)$ である。これに (2) を代入して
$$ \mathcal L[f''](s)=s\bigl(sF(s)-f(0)\bigr)-f'(0)=s^2F(s)-sf(0)-f'(0) $$
である。$\square$

  1. の主張は Leb26a Exercise 5.5.6 に演習として挙げられている(そこでは $f$ が Riemann 積分可能で、十分大きい $t$ で $\lvert f(t)\rvert\le Me^{at}$ という、より弱い仮定である)。(2) の $e^{-sR}f(R)\to0$ が、ex-lap-start の (2) で「となるなら」と仮定したことの答えである。
公式を確かめる:$f(t)=e^{-2t}$

$s>-2$ で $F(s)=\dfrac1{s+2}$ なので、thm-lap-main の (2) は $\mathcal L[-2e^{-2t}](s)=\dfrac s{s+2}-1=\dfrac{-2}{s+2}$ を主張する。左辺は lem-lap-linear と ex-lap-basic の (2) から $-2\cdot\dfrac1{s+2}$ で、確かに一致する。

仮定を満たすことの確かめを開く

$f(t)=e^{-2t}$ は $M=1$、$a=-2$ で指数型、$f'(t)=-2e^{-2t}$ も $M=2$、$a=-2$ で指数型である((2) の $M$ は 2 つの $M$ の大きい方をとればよい)。

主定理 2:変換の表

表を作る前に、多項式が指数型であることを示す。

指数関数は累乗より大きい

$n=0,1,2,\ldots$ と $x\ge0$ について $e^x\ge\dfrac{x^n}{n!}$ である($0!=1$)。したがって、どんな $a>0$ についても $t^n\le\dfrac{n!}{a^n}e^{at}$($t\ge0$)で、$t^n$ は指数 $a$ の指数型である。

要点:$h(x)=e^x-\dfrac{x^n}{n!}$ の導関数は、$n-1$ のときの同じ形の式なので、$n$ についての帰納法で $h$ が増加し $h(x)\ge h(0)>0$ となる。

帰納法の証明を開く

$n$ についての数学的帰納法で示す。$n=0$ では $e^x\ge1$($x\ge0$)である。$n-1$ で正しいとし、$h(x)=e^x-\dfrac{x^n}{n!}$ とおくと、$h'(x)=e^x-\dfrac{x^{n-1}}{(n-1)!}\ge0$(帰納法の仮定)なので $h$ は $x\ge0$ で増加し、$h(x)\ge h(0)=1>0$ である。後半は $x=at$ とおくと $e^{at}\ge\dfrac{a^nt^n}{n!}$ だから、両辺に $\dfrac{n!}{a^n}$ を掛ければよい。$\square$

Laplace 変換の表

$n=0,1,2,\ldots$、$c$ は実数、$\omega>0$ とする。次が成り立つ。
$$ \mathcal L[t^n]=\frac{n!}{s^{n+1}}\ (s>0),\qquad\mathcal L[e^{ct}]=\frac1{s-c}\ (s>c), $$
$$ \mathcal L[\sin\omega t]=\frac\omega{s^2+\omega^2},\qquad\mathcal L[\cos\omega t]=\frac s{s^2+\omega^2},\qquad\mathcal L[t\sin t]=\frac{2s}{(s^2+1)^2}\qquad(s>0) $$

方針:$\sin$、$\cos$、$t\sin t$ は、積分を直接計算せずに thm-lap-main の (3) を使い、$F(s)$ についての 1 次方程式を解いて求める。
段 1($t^n$)。$s>0$ とし、$0< a< s$ となる $a$ を 1 つとる。lem-lap-poly により $t^n$ は指数 $a$ の指数型で、$n\ge1$ なら導関数 $nt^{n-1}$ も指数型である。$n\ge1$ のとき $f(t)=t^n$ に thm-lap-main の (2) を使うと、$f(0)=0$ なので $\mathcal L[nt^{n-1}]=s\mathcal L[t^n]$、つまり
$$ \mathcal L[t^n]=\frac ns\,\mathcal L[t^{n-1}] $$
である。$\mathcal L[1]=\dfrac1s$(ex-lap-basic の (1))から始めてこれを繰り返すと $\mathcal L[t^n]=\dfrac ns\cdot\dfrac{n-1}s\cdots\dfrac1s\cdot\dfrac1s=\dfrac{n!}{s^{n+1}}$ である。
段 2($e^{ct}$)。ex-lap-basic の (2) で示した。
段 3($\sin\omega t$)。$f(t)=\sin\omega t$ とおくと $f'=\omega\cos\omega t$、$f''=-\omega^2\sin\omega t$ で、$f,f',f''$ はどれも $M=\max(1,\omega,\omega^2)$、$a=0$ で指数型である。$f(0)=0$、$f'(0)=\omega$ なので、$s>0$ で thm-lap-main の (3) と lem-lap-linear により
$$ \underbrace{-\omega^2F(s)}_{\mathcal L[f'']=\mathcal L[-\omega^2f]}=s^2F(s)-s\cdot0-\omega $$
である。$(s^2+\omega^2)F(s)=\omega$ から $F(s)=\dfrac\omega{s^2+\omega^2}$ である。
段 4($\cos\omega t$)。$g(t)=\cos\omega t$ では $g''=-\omega^2g$、$g(0)=1$、$g'(0)=0$ なので、同じく $-\omega^2G(s)=s^2G(s)-s$ で、$G(s)=\dfrac s{s^2+\omega^2}$ である。
段 5($t\sin t$)。$h(t)=t\sin t$ とおくと
$$ h'=\sin t+t\cos t,\qquad h''=2\cos t-t\sin t=2\cos t-h $$
で、$h(0)=0$、$h'(0)=0$ である。$\lvert h\rvert\le t$、$\lvert h'\rvert\le1+t$、$\lvert h''\rvert\le2+t$ で、$s>0$ に対し $0< a< s$ をとると lem-lap-poly により $1+t$、$2+t$ はどれも $\Bigl(2+\dfrac1a\Bigr)e^{at}$ 以下なので、指数 $a$ の指数型である。thm-lap-main の (3)、lem-lap-linear と段 4 により、$H(s)=\mathcal L[h](s)$ について
$$ 2\cdot\frac s{s^2+1}-H(s)=s^2H(s) $$
である。$(s^2+1)H(s)=\dfrac{2s}{s^2+1}$ から $H(s)=\dfrac{2s}{(s^2+1)^2}$ である。$\square$

表にまとめると次のとおりである。thm-lap-main の公式とあわせて、微分方程式を解くときの「辞書」として使う。

$f(t)$$F(s)=\mathcal L[f](s)$収束する $s$ の範囲根拠
$1$$\dfrac1s$$s>0$ex-lap-basic
$t^n$$\dfrac{n!}{s^{n+1}}$$s>0$thm-lap-table 段 1
$e^{ct}$$\dfrac1{s-c}$$s>c$ex-lap-basic
$\sin\omega t$$\dfrac\omega{s^2+\omega^2}$$s>0$thm-lap-table 段 3
$\cos\omega t$$\dfrac s{s^2+\omega^2}$$s>0$thm-lap-table 段 4
$t\sin t$$\dfrac{2s}{(s^2+1)^2}$$s>0$thm-lap-table 段 5
$f'(t)$$sF(s)-f(0)$$s>a$thm-lap-main
$f''(t)$$s^2F(s)-sf(0)-f'(0)$$s>a$thm-lap-main

$\mathcal L[t^n]$ で $s=1$ とおくと $\displaystyle\int_0^\infty t^ne^{-t}\,dt=n!$ である。たとえば $n=3$ で $6$ である。この積分は、Wallis積分とガンマ関数 で扱うガンマ関数の $n$ が自然数の場合にあたる。

微分方程式を解く

ex-lap-start の手順を、論理の順序がはっきりするように整理しておく。

Laplace 変換で初期値問題を解く手順

定数係数の線形微分方程式と初期条件が与えられたとき、次の手順で解を求める。
(R1) 解 $y$ とその導関数が指数型だと仮定して、方程式の両辺を Laplace 変換する。thm-lap-main により、$y'$、$y''$ は $sY-y(0)$、$s^2Y-sy(0)-y'(0)$ に変わり、$Y=\mathcal L[y]$ の 1 次方程式が得られる。
(R2) その 1 次方程式を $Y$ について解く。
(R3) $Y$ を部分分数に分け、thm-lap-table の表を逆に読んで、$\mathcal L[f]=Y$ となる関数 $f$ を見つける。
(R4) 見つけた $f$ を方程式と初期条件に代入して、解であることを確かめる。解がただ 1 つであることは、既に証明した一意性の定理から従う。
手順 (i)〜(iii) は「解があるとしたら何か」を探す計算で、答えの候補を与える。候補が本当に解であることと、ほかに解がないことは、(iv) の代入と一意性の定理で示す。したがって、この記事の結論は、「Laplace 変換が等しい 2 つの連続関数は等しい」という事実(Lerch の定理。この記事では証明しない)には頼っていない。なお、この記事の 2 階の例で使う一意性の定理は、$t$ を実数全体で考えた解についてのものである。(iii) で見つかる $f$ はどれも実数全体で定義された式なので、そのまま当てはめられる。

次の ex-lap-second の方程式で、この流れを図式にすると次のようになる。
$$ \xymatrix{ y''+3y'+2y=0,\ y(0)=1,\ y'(0)=0 \ar[r]^-{\mathcal L} \ar@{.>}[d]_{\text{直接解く}} & (s^2+3s+2)Y=s+3 \ar[d]^{\text{割り算と部分分数}} \\ y=2e^{-t}-e^{-2t} & Y=\frac2{s+1}-\frac1{s+2} \ar[l]^-{\text{表を逆に読む}} } $$
図式の右回りの道は、$\mathcal L[y''+3y'+2y]=(s^2Y-s)+3(sY-1)+2Y$ という変換、$Y=\dfrac{s+3}{(s+1)(s+2)}=\dfrac2{s+1}-\dfrac1{s+2}$ という割り算、$\mathcal L\bigl[2e^{-t}-e^{-2t}\bigr]=\dfrac2{s+1}-\dfrac1{s+2}$ という表の読み取りの 3 つの等式である。左の点線は、微分方程式としての指数関数・三角関数 の定理「定数係数の 2 階線形微分方程式の一般解」で直接解く道で、どちらの道でも同じ $y$ に着く。

1 階の方程式:$y'+y=1$、$y(0)=0$

(i) 両辺を変換すると、$\mathcal L[1]=\dfrac1s$ なので $sY-0+Y=\dfrac1s$ である。
(ii) $Y=\dfrac1{s(s+1)}$ である。
(iii) 部分分数に分けると $\dfrac1{s(s+1)}=\dfrac1s-\dfrac1{s+1}$ で、表から $\mathcal L[1]=\dfrac1s$、$\mathcal L[e^{-t}]=\dfrac1{s+1}$ なので、候補は $y=1-e^{-t}$ である。
(iv) $y'=e^{-t}$ で $y'+y=1$、$y(0)=0$ を満たす。1階線形微分方程式と積分因子(高校数学) の主定理により、この初期値問題の解はこれだけである。コンデンサーの充電(同じ記事の例「コンデンサーの充電」)で、時定数 $1$、電圧 $1$ の場合にあたる。

2 階の方程式:$y''+3y'+2y=0$、$y(0)=1$、$y'(0)=0$

(i) thm-lap-main の (2)(3) により $\mathcal L[y'']=s^2Y-s$、$\mathcal L[y']=sY-1$ なので
$$ (s^2Y-s)+3(sY-1)+2Y=0,\qquad\text{すなわち}\qquad(s^2+3s+2)Y=s+3 $$
である。
(ii) $s^2+3s+2=(s+1)(s+2)$ なので $Y=\dfrac{s+3}{(s+1)(s+2)}$ である。
(iii) $\dfrac{s+3}{(s+1)(s+2)}=\dfrac A{s+1}+\dfrac B{s+2}$ とおくと $s+3=A(s+2)+B(s+1)$ で、$s=-1$ を代入して $A=2$、$s=-2$ を代入して $B=-1$ である。よって $Y=\dfrac2{s+1}-\dfrac1{s+2}$ で、表から候補は $y=2e^{-t}-e^{-2t}$ である。
(iv) 代入すると、方程式と初期条件を満たす。

代入の計算を開く

$y'=-2e^{-t}+2e^{-2t}$、$y''=2e^{-t}-4e^{-2t}$ で、$y''+3y'+2y=(2-6+4)e^{-t}+(-4+6-2)e^{-2t}=0$ である。$y(0)=2-1=1$、$y'(0)=-2+2=0$ も満たす。


微分方程式としての指数関数・三角関数 の系「初期値問題の解の存在と一意性」により、解はこれだけである。$y(1)=2e^{-1}-e^{-2}=0.600\ldots$ である。

y''+3y'+2y=0、y(0)=1、y'(0)=0 の解 y=2e^{-t}-e^{-2t} のグラフ y''+3y'+2y=0、y(0)=1、y'(0)=0 の解 y=2e^{-t}-e^{-2t} のグラフ
その Laplace 変換 Y(s)=(s+3)/((s+1)(s+2)) のグラフ。s=0、1、2 での値を赤い点で示した その Laplace 変換 Y(s)=(s+3)/((s+1)(s+2)) のグラフ。s=0、1、2 での値を赤い点で示した

図 2 は $t$ の世界の解、図 3 は $s$ の世界の $Y$ である。$Y$ の式は $s>-1$ で積分が収束し、$s=0$ での値 $Y(0)=\dfrac32$ は、$\displaystyle\int_0^\infty y(t)\,dt=2-\dfrac12$ に等しい。

共振の方程式:$x''+x=\cos t$、$x(0)=x'(0)=0$

強制振動と共振(高校数学) の例「共振:$x''+x=\cos t$」を、特殊解の形を予想せずに解く。
(i) $X=\mathcal L[x]$ とおくと、$\mathcal L[x'']=s^2X-0-0$、$\mathcal L[\cos t]=\dfrac s{s^2+1}$ なので $s^2X+X=\dfrac s{s^2+1}$ である。
(ii) $X=\dfrac s{(s^2+1)^2}$ である。
(iii) 表の $\mathcal L[t\sin t]=\dfrac{2s}{(s^2+1)^2}$ と lem-lap-linear により、$\mathcal L\left[\dfrac t2\sin t\right]=\dfrac s{(s^2+1)^2}$ なので、候補は $x=\dfrac t2\sin t$ である。
(iv) 代入すると、方程式と初期条件を満たす。

代入の計算を開く

$x'=\dfrac12\sin t+\dfrac t2\cos t$、$x''=\cos t-\dfrac t2\sin t$ なので $x''+x=\cos t$、$x(0)=0$、$x'(0)=0$ である。


強制振動と共振(高校数学) の補題「解の全体」により、この初期値問題の解はこれだけである。
$X$ の分母 $(s^2+1)^2$ が 2 乗になっていることが、$t$ が掛かった解に対応している。前の記事では「$a\cos t+b\sin t$ を置くと失敗するので $t\sin t$ を試す」という見当が必要だったが、Laplace 変換では $t\sin t$ が計算から自然に出てくる。

母関数とくらべる

母関数:数列を関数として扱う では、数列 $\{a_n\}$ に $A(x)=\displaystyle\sum_{n=0}^\infty a_nx^n$ を対応させて、漸化式を $A(x)$ の式の計算に変えた。Laplace 変換は、その「関数版」である。$e^{-st}=(e^{-s})^t$ と書くと、$x^n$ の $n$ を連続な時刻 $t$ に、和を積分に替えたものになる。

母関数 $A(x)=\displaystyle\sum_{n=0}^\infty a_nx^n$Laplace 変換 $F(s)=\displaystyle\int_0^\infty f(t)e^{-st}\,dt$
もとの対象数列 $a_0,a_1,a_2,\ldots$関数 $f(t)$($t\ge0$)
重み$x^n$$e^{-st}=(e^{-s})^t$
1 つ先を見る操作$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty a_{n+1}x^n=\frac{A(x)-a_0}x$$\mathcal L[f'](s)=sF(s)-f(0)$
変わるもの漸化式 → $A(x)$ の方程式微分方程式 → $F(s)$ の方程式

どちらも、初期値 $a_0$、$f(0)$ が式の中に自然に入ってくる点が同じである。

例と反例

thm-lap-main の仮定を外すと何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
$f$ が指数型$f(t)=e^{t^2}$ある $s$ で $\mathcal L[f](s)$ が収束する
$f$ が $[0,\infty)$ で連続$f(t)=\dfrac1t$($t>0$)ある $s$ で $\mathcal L[f](s)$ が収束する
$s>a$$f(t)=e^t$ で $s=1$$\mathcal L[f](s)=\dfrac1{s-1}$ が収束する
反例:$e^{t^2}$ はどの $s$ でも収束しない

$f(t)=e^{t^2}$ は $[0,\infty)$ で連続である。どんな実数 $s$ をとっても、$t\ge\max(s,0)$ では $t^2-st=t(t-s)\ge0$ なので
$$ e^{-st}e^{t^2}=e^{t(t-s)}\ge1 $$
である(図 4)。よって $R>\max(s,0)$ なら $\displaystyle\int_0^Re^{-st}e^{t^2}\,dt\ge\int_{\max(s,0)}^R1\,dt=R-\max(s,0)$ で、$R\to\infty$ で限りなく大きくなり、収束しない。$e^{t^2}$ は指数型でない。

指数型でないことの確かめを開く

どんな $M$、$a$ についても $\dfrac{e^{t^2}}{e^{at}}=e^{t(t-a)}$ は $t\to\infty$ で限りなく大きくなるので、$e^{t^2}\le Me^{at}$ はいつか破れる。

f(t)=e^{t^2} について e^{t^2-st} を s=1、2、4 で描いた。どの s でも t=s を過ぎると 1 以上になり、そこから先の面積は限りなく大きくなる f(t)=e^{t^2} について e^{t^2-st} を s=1、2、4 で描いた。どの s でも t=s を過ぎると 1 以上になり、そこから先の面積は限りなく大きくなる

反例:$\dfrac1t$ は $t=0$ の近くで発散する

$f(t)=\dfrac1t$ は $t=0$ で定義されず、$[0,\infty)$ で連続な関数ではない。$t>0$ の範囲で $\displaystyle\int_\varepsilon^Re^{-st}\cdot\frac1t\,dt$ を考える。$0<\varepsilon<1< R$、$s>0$ とすると、$\varepsilon\le t\le1$ で $e^{-st}\ge e^{-s}$ なので
$$ \int_\varepsilon^Re^{-st}\,\frac{dt}t\ge\int_\varepsilon^1e^{-s}\,\frac{dt}t=e^{-s}\log\frac1\varepsilon $$
である。$\varepsilon\to+0$ で右辺は限りなく大きくなる($s=1$、$\varepsilon=10^{-6}$ でも $5.08\ldots$ 以上)。$s\le0$ なら $e^{-st}\ge1$ なので、なおさら大きくなる。よってどの $s$ でも収束しない。

どこが問題かを開く

$t\ge1$ では $\dfrac1t\le1=1\cdot e^{0t}$ で、$t\to\infty$ の側は指数型の不等式を満たしている。収束しない原因は、$t=0$ の近くで $\dfrac1t$ が限りなく大きくなることにある。thm-lap-main の (1) が $[0,\infty)$ 全体での連続性を仮定しているのは、このような $t=0$ の近くの発散を除くためである。

反例:$\mathcal L[e^t]$ を $s=1$ で使う

$f(t)=e^t$ は $M=1$、$a=1$ で指数型で、thm-lap-table により $s>1$ で $\mathcal L[e^t](s)=\dfrac1{s-1}$ である。$s=1$ では $e^{-t}e^t=1$ なので $\displaystyle\int_0^R1\,dt=R\to\infty$ で、収束しない。$s<1$ でも $e^{(1-s)t}\ge1$ なので同じく収束しない。式 $\dfrac1{s-1}$ は $s=0$ でも値 $-1$ をもつが、$\displaystyle\int_0^\infty e^t\,dt$ は収束しないので、$\mathcal L[e^t](0)=-1$ とは言えない。変換の表は、収束する $s$ の範囲とあわせて使う。

大学数学で見る:逆変換と畳み込み

この記事で証明しなかった事実を、紹介だけしておく(どれもこの記事では証明しない)。

  • Lerch の定理:$[0,\infty)$ で連続な指数型の 2 つの関数の Laplace 変換が、十分大きいすべての $s$ で等しければ、2 つの関数は等しい。これにより「表を逆に読む」操作(逆変換)がただ 1 通りに決まる。この記事では、rem-lap-logic の (iv) で代入して確かめたので、この定理を使っていない。
    複素数の $s$、畳み込み、伝達関数を開く

    複素数の $s$:$s$ を複素数にしても、実部が $a$ より大きければ積分は収束する。複素数の $s$ まで広げると、$F(s)$ から $f(t)$ をもどす積分の公式(逆変換の公式)が得られる。

    畳み込み:$(f*g)(t)=\displaystyle\int_0^tf(u)g(t-u)\,du$ を $f$ と $g$ の畳み込みという。$\mathcal L[f*g]=\mathcal L[f]\,\mathcal L[g]$ が成り立つ。たとえば $y'+ky=q(t)$、$y(0)=0$ を変換すると $(s+k)Y=Q$ で、$Y=\dfrac1{s+k}\,Q=\mathcal L[e^{-kt}]\,\mathcal L[q]$ だから、$y=\displaystyle\int_0^te^{-k(t-u)}q(u)\,du$ となる。これは 1階線形微分方程式と積分因子(高校数学) の節「二項間漸化式とくらべる」の表で、積分因子から得た式と同じである。

    伝達関数:$x''+2\gamma x'+\omega^2x=f(t)$、$x(0)=x'(0)=0$ を変換すると $(s^2+2\gamma s+\omega^2)X=\mathcal L[f]$ で、$X=H(s)\,\mathcal L[f]$、$H(s)=\dfrac1{s^2+2\gamma s+\omega^2}$ となる。$H$ はこの振動系の伝達関数で、強制振動と共振(高校数学) の「大学数学で見る」に出てきたものと同じである。

さらに先へ

  • $\mathcal L[t^n](1)=n!$ は、ガンマ関数 $\Gamma(n+1)=\displaystyle\int_0^\infty t^ne^{-t}\,dt$ の値である。$n$ を自然数でない正の数にすると、$\mathcal L[t^p](s)=\dfrac{\Gamma(p+1)}{s^{p+1}}$ となる(Wallis積分とガンマ関数。この記事では証明しない)。
  • 表の $e^{ct}$ と $\sin\omega t$ を組み合わせると $\mathcal L[e^{ct}\sin\omega t]=\dfrac\omega{(s-c)^2+\omega^2}$($s>c$)が得られ、減衰振動の解もこの方法で求められる。$\mathcal L[e^{ct}f(t)](s)=F(s-c)$ という「ずらし」の性質による(定義の積分の中で $e^{-st}e^{ct}=e^{-(s-c)t}$ となるから)。

関連項目

参考文献

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