Prince Rupertの立方体(Prince Rupert's cube)とは、1 辺 $1$ の立方体を 2 つに分けずに正方形の断面の穴をあけて通せる立方体のうち最大のもので、1 辺は $\frac{3\sqrt2}4\approx1.0607$ である。立方体の 4 本の辺の上の点 $(0,\frac14,0)$、$(\frac34,1,0)$、$(1,\frac34,1)$、$(\frac14,0,1)$ は 1 辺 $\frac{3\sqrt2}4$ の正方形の頂点で、この正方形は立方体に含まれる。これを中心のまわりに縮めた 1 辺 $t<\frac{3\sqrt2}4$ の正方形のまわりには余裕が残るので、法線ベクトル $(2,-2,-1)$ の向きに穴をあければ、1 辺 $1$ の立方体を含め、1 辺 $t$ の立方体を通せる。
前提知識: 空間図形の計量, 空間の平面と法線ベクトル, ベクトルの内積
1 辺 $1$ の立方体に穴をあけて、同じ大きさの立方体を通すことはできるだろうか。穴を 1 つの向きにまっすぐあけるなら、手がかりは「その向きから見た立方体の影」である。穴の断面は影の中に収まっていなければならず、しかも穴のまわりに立方体の一部が残らなければ、立方体はばらばらになってしまう。
以下、立方体は座標空間の $0\le x\le1$、$0\le y\le1$、$0\le z\le1$ の部分とし、中心を $M\left(\dfrac12,\dfrac12,\dfrac12\right)$ とする。向き $\vec n$ から見た影とは、立方体の各点を $\vec n$ に垂直な平面へ正射影した点の集まりである(正射影と面積)。
影の平面に、正六角形の中心を原点とし、頂点が $(\pm a,0)$、$\left(\pm\dfrac a2,\pm\dfrac{\sqrt3}2a\right)$ にくる座標をとる($a=\dfrac{\sqrt6}3$)。正六角形の辺は、上下の $y=\pm\dfrac{\sqrt3}2a=\pm\dfrac{\sqrt2}2$ と、右上の $\sqrt3x+y=\sqrt3a=\sqrt2$ およびそれを軸に関して折り返した 3 本である。
辺を座標軸に平行にした 1 辺 $1$ の正方形の頂点 $\left(\pm\dfrac12,\pm\dfrac12\right)$ で調べる。右上の頂点 $\left(\dfrac12,\dfrac12\right)$ は
$$
\frac12<\frac{\sqrt2}2=0.7071\ldots,\qquad\sqrt3\cdot\frac12+\frac12=1.3660\ldots<\sqrt2=1.4142\ldots
$$
を満たし、正六角形の内側にある。直線 $\sqrt3x+y=\sqrt2$ までの距離は $\dfrac{\sqrt2-\frac{\sqrt3+1}2}2=0.0240\ldots$、上の辺までの距離は $\dfrac{\sqrt2-1}2=0.2071\ldots$ である。ほかの 3 つの頂点も対称性から同じである。正方形は影の内部に、幅 $0.024$ 程度の余裕をもって入る。
右上の頂点が直線 $\sqrt3x+y=\sqrt2$ に届くまで正方形を大きくすると、半分の長さ $h$ は $\left(\sqrt3+1\right)h=\sqrt2$ から $h=\dfrac{\sqrt2}{\sqrt3+1}=\dfrac{\sqrt6-\sqrt2}2$ で、1 辺は $\sqrt6-\sqrt2=1.0352\ldots$ である。
3 つの向きから見た 1 辺 1 の立方体の影(灰色)と、1 辺 1 の正方形(青)。右の正六角形だけに余裕がある
図 1 の右のように、空間の対角線の向きに穴をあければ、1 辺 $1$ の立方体を通せそうである。では、どこまで大きな立方体を通せるか。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 空間の点の平面への正射影 | 立方体の影 | 凸体の射影 |
| 空間の平面と法線ベクトル | 穴の向きと断面 | 凸体の切断 |
| ベクトルの内積で垂直・長さを調べる | 4 点が正方形になる | 直交性の判定 |
| 重み付きの平均 $\lambda\vec p+(1-\lambda)\vec q$ | 断面の正方形を縮めたときの余裕 | 凸集合の内部 |
$C$ を 1 辺 $1$ の立方体 $0\le x,y,z\le1$、$M\left(\dfrac12,\dfrac12,\dfrac12\right)$ をその中心とする。$\vec 0$ でないベクトル $\vec n$ に対し、$M$ を通り $\vec n$ に垂直な平面を $\Pi$ とする。
(R1) $C$ の各点を $\Pi$ に正射影した点の集まりを、$C$ の $\vec n$ の向きの 影 という。
(R2) $\Pi$ の上の正方形 $Q$ が 影の内部にある とは、ある正の数 $r$ があって、$Q$ のどの点 $q$ についても、$q$ からの距離が $r$ 以下の $\Pi$ の点がすべて影に含まれることをいう。$r$ を 余裕の幅 とよぶ。
(R3) 1 辺 $t$ の正方形で影の内部にあるものがあるとき、「1 辺 $t$ の立方体は $\vec n$ の向きに $C$ を 通り抜けられる」という。
条件 (iii) の意味を説明する。$Q$ を断面とし $\vec n$ の向きに伸びた四角柱で $C$ をくり抜くと、$\vec n$ の向きに 1 辺 $t$ の立方体を押し込める通り道ができる(1 辺 $t$ の立方体を、1 つの面が $Q$ に重なる向きにして、$\vec n$ の向きに動かす)。条件 (ii) により、影の中で穴のまわりには幅 $r$ 以上の輪が残るので、$C$ の残りの部分は穴のまわりでつながって残り、ばらばらにならないと考えられる。このことを厳密に述べて証明するには位相の言葉が要るので、この記事では条件 (ii) を通り抜けの定義として採用し、それ以上は証明しない。
ex-pr-start (1) の正方形は影そのもので、余裕の幅 $r$ をとれない。(2) の正方形も上下の辺で影の境界に触れていて、$r$ をとれない。(3) では ex-pr-hexagon により $r=0.024$ ととれるので、1 辺 $1$ の立方体は $(1,1,1)$ の向きに通り抜けられる。
影を直接調べる代わりに、次の事実を使う。$\Pi$ の上にあって $C$ に含まれる点は、正射影しても動かないので、影に含まれる。したがって、$q$ からの距離が $r$ 以下の $\Pi$ の点がすべて $C$ に含まれることを示せば、条件 (ii) が成り立つ。
$M$ からの距離が $\dfrac12$ 以下の点 $X(x,y,z)$ は $C$ に含まれる。実際、$\lvert x-\dfrac12\rvert\le\sqrt{\left(x-\dfrac12\right)^2+\left(y-\dfrac12\right)^2+\left(z-\dfrac12\right)^2}=MX\le\dfrac12$ なので $0\le x\le1$ で、$y$、$z$ も同じである。
たとえば $\vec n=(2,-2,-1)$ のとき、$\Pi$ の上で $M$ から距離 $\dfrac12$ 以下の円板は $C$ に含まれ、影に含まれる。
次の 4 点を考える(図 2)。
$$
P_0\left(0,\frac14,0\right),\qquad P_1\left(\frac34,1,0\right),\qquad P_2\left(1,\frac34,1\right),\qquad P_3\left(\frac14,0,1\right)
$$
方針:(1) は 2 辺のベクトルの長さと内積を計算する。(2) は、$Q_t$ の点から少しずらした点を、$Q$ の点と中心のまわりの球の点の重み付きの平均として書き、立方体に含まれることを示す。
段 1(辺の上にある)。$P_0$ は $x=z=0$ で $0\le y\le1$ なので、$(0,0,0)$ と $(0,1,0)$ を結ぶ辺の上にある。同じく $P_1$ は $(0,1,0)$ と $(1,1,0)$ を結ぶ辺、$P_2$ は $(1,0,1)$ と $(1,1,1)$ を結ぶ辺、$P_3$ は $(0,0,1)$ と $(1,0,1)$ を結ぶ辺の上にある。
段 2(平行四辺形)。$\vec u=\overrightarrow{P_0P_1}=\left(\dfrac34,\dfrac34,0\right)$、$\vec v=\overrightarrow{P_0P_3}=\left(\dfrac14,-\dfrac14,1\right)$ とおく。$\overrightarrow{P_0P_2}=\left(1,\dfrac12,1\right)=\vec u+\vec v$ なので、$P_0P_1P_2P_3$ は平行四辺形である。
段 3(正方形)。
$$
\lvert\vec u\rvert^2=\frac9{16}+\frac9{16}=\frac98,\qquad\lvert\vec v\rvert^2=\frac1{16}+\frac1{16}+1=\frac98,\qquad\vec u\cdot\vec v=\frac3{16}-\frac3{16}+0=0
$$
である。隣り合う 2 辺の長さが等しく垂直な平行四辺形は正方形なので、$P_0P_1P_2P_3$ は 1 辺 $\sqrt{\dfrac98}=\dfrac{3}{2\sqrt2}=\dfrac{3\sqrt2}4$ の正方形である。対角線の中点は $\dfrac{P_0+P_2}2=\left(\dfrac12,\dfrac12,\dfrac12\right)=M$ である。
段 4(平面)。$\vec n=(2,-2,-1)$ について $\vec n\cdot\vec u=\dfrac32-\dfrac32+0=0$、$\vec n\cdot\vec v=\dfrac12+\dfrac12-1=0$ なので、$\vec n$ は正方形の平面の法線ベクトルである(空間の平面と法線ベクトル)。$P_0$ で $2x-2y-z=-\dfrac12$ なので、平面の方程式は $2x-2y-z=-\dfrac12$ で、$M$ も $2\cdot\dfrac12-2\cdot\dfrac12-\dfrac12=-\dfrac12$ を満たす。
段 5($Q$ は $C$ に含まれる)。正方形 $Q$ の点は $X=P_0+\sigma\vec u+\tau\vec v$($0\le\sigma\le1$、$0\le\tau\le1$)と書ける。座標は
$$
X=\left(\frac34\sigma+\frac14\tau,\ \frac14+\frac34\sigma-\frac14\tau,\ \tau\right)
$$
である。$x$ 座標は $0$ 以上 $\dfrac34+\dfrac14=1$ 以下、$y$ 座標は $\dfrac14-\dfrac14=0$ 以上 $\dfrac14+\dfrac34=1$ 以下、$z$ 座標は $0$ 以上 $1$ 以下なので、$X$ は $C$ に含まれる。
段 6($Q_t$ のまわりの余裕)。$Q_t$ の点 $q'$ は、$Q$ の点 $q$ を使って $\overrightarrow{Mq'}=\lambda\overrightarrow{Mq}$ と書ける。$\Pi$ に平行なベクトル $\vec w$ で $\lvert\vec w\rvert\le r=\dfrac{1-\lambda}2$ のものをとり、$Y=q'+\vec w$ とおく。位置ベクトルで
$$
Y=\lambda q+(1-\lambda)M+\vec w=\lambda q+(1-\lambda)\left(M+\frac{\vec w}{1-\lambda}\right)
$$
と書ける。$Z=M+\dfrac{\vec w}{1-\lambda}$ とおくと $MZ=\dfrac{\lvert\vec w\rvert}{1-\lambda}\le\dfrac12$ なので、ex-pr-ball により $Z$ は $C$ に含まれる。$q$ も段 5 により $C$ に含まれる。$Y=\lambda q+(1-\lambda)Z$ の各座標は、$0$ 以上 $1$ 以下の 2 つの数の重み付きの平均(重み $\lambda$、$1-\lambda$ はどちらも正で和が $1$)なので、$0$ 以上 $1$ 以下である。よって $Y$ は $C$ に含まれ、$\Pi$ の上にあるので影に含まれる。$q'$ は $Q_t$ の任意の点、$\vec w$ は長さ $r$ 以下の任意のベクトルだったので、$Q_t$ は余裕の幅 $r$ で影の内部にある。$t=1$ では $\lambda=\dfrac1{3\sqrt2/4}=\dfrac{2\sqrt2}3<1$ なので、1 辺 $1$ の場合も含まれる。$\square$
1 辺 1 の立方体の 4 本の辺の上の点 P0、P1、P2、P3 は、1 辺 3√2/4 の正方形の頂点になる
$t=1$ では $\lambda=\dfrac{2\sqrt2}3=0.9428\ldots$ で、余裕の幅は
$$
r=\frac{1-\lambda}2=\frac{3-2\sqrt2}6=0.0285\ldots
$$
である。$Q_1$ の頂点は $M+\lambda\overrightarrow{MP_i}$ で、たとえば $\overrightarrow{MP_0}=\left(-\dfrac12,-\dfrac14,-\dfrac12\right)$ から
$$
M+\lambda\overrightarrow{MP_0}=\left(\frac12-\frac{\sqrt2}3,\ \frac12-\frac{\sqrt2}6,\ \frac12-\frac{\sqrt2}3\right)=(0.0285\ldots,\ 0.2642\ldots,\ 0.0285\ldots)
$$
である。$x$ 座標と $z$ 座標が $0.0285\ldots$ で、立方体の面 $x=0$、$z=0$ から $r$ と同じだけ離れている。
n=(2,−2,−1) に近い向きから見ると、1 辺 1 の正方形(青)が立方体の輪郭の内側に収まる
図 3 は $\vec n$ に近い向きから立方体を見たもので、1 辺 $1$ の正方形 $Q_1$ が輪郭の内側に収まっている。この正方形を断面として $\vec n$ の向きに穴をあければ、1 辺 $1$ の立方体を通せる。ex-pr-hexagon の $(1,1,1)$ の向きでも 1 辺 $1$ は通せたが、そちらで正方形の辺を六角形の辺に平行に置いたときの限界 $\sqrt6-\sqrt2=1.0352\ldots$ より、thm-pr-main の $\dfrac{3\sqrt2}4=1.0606\ldots$ の方が大きい。
thm-pr-main の 4 点は、4 本の辺を $\dfrac14$ と $\dfrac34$ に分ける位置にある。この位置が選ばれる理由を、同じ 4 本の辺の上で点を動かして調べる。
$0\le a<1$ に対し、4 点
$$
A_0(0,a,0),\qquad A_1(1-a,1,0),\qquad A_2(1,1-a,1),\qquad A_3(a,0,1)
$$
をとる。
(1) $A_0A_1A_2A_3$ はいつも長方形で、2 辺の長さは $A_0A_1=\sqrt2(1-a)$、$A_0A_3=\sqrt{2a^2+1}$ である。
(2) この長方形が正方形になるのは $a=\dfrac14$ のときだけである。
(3) 短い方の辺の長さ $m(a)=\min\left\{\sqrt2(1-a),\ \sqrt{2a^2+1}\right\}$ は $m(a)\le\dfrac{3\sqrt2}4$ を満たし、等号は $a=\dfrac14$ のときだけ成り立つ。
段 1(長方形)。$\vec u=\overrightarrow{A_0A_1}=(1-a,\ 1-a,\ 0)$、$\vec v=\overrightarrow{A_0A_3}=(a,\ -a,\ 1)$ とおく。$\overrightarrow{A_0A_2}=(1,\ 1-2a,\ 1)=\vec u+\vec v$ なので平行四辺形であり、$\vec u\cdot\vec v=a(1-a)-a(1-a)+0=0$ なので隣り合う辺が垂直で、長方形である。$\lvert\vec u\rvert^2=2(1-a)^2$、$\lvert\vec v\rvert^2=2a^2+1$ から (1) の長さが出る。
段 2(正方形)。$\lvert\vec u\rvert^2=\lvert\vec v\rvert^2$ は $2(1-a)^2=2a^2+1$、展開して $2-4a+2a^2=2a^2+1$、つまり $a=\dfrac14$ と同値である。
段 3(短い辺の最大)。$a\le\dfrac14$ なら $m(a)\le\sqrt{2a^2+1}\le\sqrt{2\cdot\dfrac1{16}+1}=\sqrt{\dfrac98}=\dfrac{3\sqrt2}4$ で、2 つ目の等号は $a=\dfrac14$ のときだけである。$a\ge\dfrac14$ なら $m(a)\le\sqrt2(1-a)\le\sqrt2\cdot\dfrac34=\dfrac{3\sqrt2}4$ で、2 つ目の等号は $a=\dfrac14$ のときだけである。$a=\dfrac14$ では 2 辺とも $\dfrac{3\sqrt2}4$ なので $m\left(\dfrac14\right)=\dfrac{3\sqrt2}4$ である。$\square$
長方形の中に入る最大の正方形の 1 辺は、短い方の辺の長さ $m(a)$ である。したがって prop-pr-quarter (3) は、「prop-pr-quarter の形の 4 点 $A_0,A_1,A_2,A_3$ が作る長方形の断面の中では、$a=\dfrac14$ の正方形がいちばん大きな正方形を含む」ことを示している。
| $a$ | $A_0A_1=\sqrt2(1-a)$ | $A_0A_3=\sqrt{2a^2+1}$ | 短い方 $m(a)$ |
|---|---|---|---|
| $0$ | $1.4142\ldots$ | $1$ | $1$ |
| $\dfrac14$ | $1.0606\ldots$ | $1.0606\ldots$ | $1.0606\ldots$ |
| $\dfrac13$ | $0.9428\ldots$ | $1.1055\ldots$ | $0.9428\ldots$ |
| $\dfrac12$ | $0.7071\ldots$ | $1.2247\ldots$ | $0.7071\ldots$ |
$a=0$ の長方形は、4 点 $(0,0,0)$、$(1,1,0)$、$(1,1,1)$、$(0,0,1)$ を頂点とする、平面 $x=y$ による断面(横 $\sqrt2$、縦 $1$)である。これは ex-pr-start (2) の影と同じ形で、1 辺 $1$ の正方形しか入らない。$a$ を $0$ から $\dfrac14$ まで動かすと、長方形が傾いて縦が伸び、横が縮み、$a=\dfrac14$ でちょうど正方形になる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 頂点を辺の $\frac14$ の位置にとる | 4 本の辺の中点($a=\frac12$) | 4 点が正方形になる |
| 1 辺が $\frac{3\sqrt2}4$ より小さい | 同じ中心・同じ向きで 1 辺を $\frac{3\sqrt2}4$ より大きくした正方形 | 正方形が影の内部にある |
| 穴の向きを選ぶ | 辺の向き $(0,0,1)$ | 1 辺 $1$ の正方形が影の内部にある |
prop-pr-quarter で $a=\dfrac12$ とすると、4 点は 4 本の辺の中点 $\left(0,\dfrac12,0\right)$、$\left(\dfrac12,1,0\right)$、$\left(1,\dfrac12,1\right)$、$\left(\dfrac12,0,1\right)$ である。2 辺の長さは $\sqrt2\cdot\dfrac12=\dfrac{\sqrt2}2=0.7071\ldots$ と $\sqrt{2\cdot\dfrac14+1}=\dfrac{\sqrt6}2=1.2247\ldots$ で等しくないので、正方形ではない(図 4)。中に入る正方形の 1 辺は $\dfrac{\sqrt2}2<1$ で、1 辺 $1$ の立方体の通り道にはならない。
4 本の辺の中点を結ぶと、正方形ではなく細長い長方形になる
$\vec n=(2,-2,-1)$ の向きの影を、$\Pi$ の上の座標で求める。$\Pi$ に平行で長さ $1$ の 2 つの垂直なベクトル $\vec e_1=\dfrac{\vec u}{\lvert\vec u\rvert}=\dfrac1{\sqrt2}(1,1,0)$、$\vec e_2=\dfrac{\vec v}{\lvert\vec v\rvert}=\dfrac1{3\sqrt2}(1,-1,4)$ をとり、点 $X$ の影を座標 $\left(\overrightarrow{MX}\cdot\vec e_1,\ \overrightarrow{MX}\cdot\vec e_2\right)$ で表す。
立方体の 8 つの頂点の影は、$\left(\pm\dfrac{\sqrt2}2,\pm\dfrac{\sqrt2}3\right)$ の 4 点、$\left(0,\pm\dfrac{\sqrt2}2\right)$ の 2 点、中の 2 点 $\left(0,\pm\dfrac{\sqrt2}6\right)$ で、影ははじめの 6 点を頂点とする六角形である(図 5)。$P_0$ の影は $\left(-\dfrac{3\sqrt2}8,-\dfrac{3\sqrt2}8\right)$ で、これは $(0,0,0)$ の影 $\left(-\dfrac{\sqrt2}2,-\dfrac{\sqrt2}3\right)$ と $(0,1,0)$ の影 $\left(0,-\dfrac{\sqrt2}2\right)$ を結ぶ六角形の辺の上にある($P_0$ はこの 2 頂点を結ぶ立方体の辺の上の点である)。$P_1,P_2,P_3$ の影も同じく六角形の辺の上にある。
したがって、$Q$ を $M$ を中心に $\mu$ 倍($\mu>1$)に広げると、頂点は六角形の外に出る($M$ の影は六角形の内部にあり、六角形は凸なので、$M$ から辺の上の点を越えて進んだ点は外側にある)。広げた正方形は影の内部にない。影で見ると、正方形の 4 つの角が影の外にはみ出し、穴のまわりの輪が 4 か所で切れてしまう。
$(0,0,0)$ では $\overrightarrow{MX}=\left(-\dfrac12,-\dfrac12,-\dfrac12\right)$ で、$\overrightarrow{MX}\cdot\vec e_1=-\dfrac1{\sqrt2}=-\dfrac{\sqrt2}2$、$\overrightarrow{MX}\cdot\vec e_2=\dfrac{-\frac12+\frac12-2}{3\sqrt2}=-\dfrac{\sqrt2}3$ である。$(0,1,0)$ では $\overrightarrow{MX}=\left(-\dfrac12,\dfrac12,-\dfrac12\right)$ で、$0$ と $\dfrac{-\frac12-\frac12-2}{3\sqrt2}=-\dfrac{\sqrt2}2$ である。$(0,0,1)$ では $\left(-\dfrac12,-\dfrac12,\dfrac12\right)$ から $\left(-\dfrac{\sqrt2}2,\dfrac{\sqrt2}3\right)$、$(1,1,0)$ では $\left(\dfrac12,\dfrac12,-\dfrac12\right)$ から $\left(\dfrac{\sqrt2}2,-\dfrac{\sqrt2}3\right)$、$(1,1,1)$ では $\left(\dfrac{\sqrt2}2,\dfrac{\sqrt2}3\right)$、$(1,0,1)$ では $\left(0,\dfrac{\sqrt2}2\right)$、$(1,0,0)$ では $\left(0,-\dfrac{\sqrt2}6\right)$、$(0,1,1)$ では $\left(0,\dfrac{\sqrt2}6\right)$ である。$P_0$ では $\overrightarrow{MP_0}=\left(-\dfrac12,-\dfrac14,-\dfrac12\right)$ から $\left(-\dfrac{3}{4\sqrt2},\dfrac{-\frac12+\frac14-2}{3\sqrt2}\right)=\left(-\dfrac{3\sqrt2}8,-\dfrac{3\sqrt2}8\right)$ である。六角形の辺 $\left(-\dfrac{\sqrt2}2,-\dfrac{\sqrt2}3\right)$–$\left(0,-\dfrac{\sqrt2}2\right)$ は傾き $-\dfrac13$ の直線 $Y=-\dfrac{\sqrt2}3-\dfrac13\left(X+\dfrac{\sqrt2}2\right)$ の上にあり、$X=-\dfrac{3\sqrt2}8$ を代入すると $Y=-\dfrac{\sqrt2}3-\dfrac{\sqrt2}{24}=-\dfrac{3\sqrt2}8$ となる。
n=(2,−2,−1) の向きの影(灰色の六角形)。1 辺 3√2/4 の正方形(だいだい色)の頂点は影の辺の上にあり、1 辺 1 の正方形(青)のまわりには余裕が残る。破線は平面 Π による立方体の断面
図 5 では、破線の六角形が平面 $\Pi$ による立方体の断面で、thm-pr-main の証明はこの断面の中に余裕を見つけている。影(実線の六角形)は断面より大きいが、正方形 $Q$ の 4 つの頂点では断面と影が同じ点で接している。
ex-pr-start (1) のとおり、向き $(0,0,1)$ の影は 1 辺 $1$ の正方形そのものである。影の中の 1 辺 $1$ の正方形は影と一致し、その辺の上の点からは、どんなに小さい $r$ をとっても影の外に出る点がある。よって条件「影の内部にある」が成り立たない。1 辺 $1$ の立方体を通すには、穴の向きを傾けなければならない。
Wei26 は、1 辺 $1$ の立方体を 2 つに分けずにあけられる、正方形の断面の穴の 1 辺の最大値を Prince Rupert の立方体の 1 辺と定め、その値が $\dfrac{3\sqrt2}4\approx1.06066$ であり、この大きさ以下の立方体は通せると述べている。thm-pr-main は $\dfrac{3\sqrt2}4$ より小さい立方体が通せることを示したが、どの向きのどの穴でもこれより大きい立方体は通せないこと(最大であること)は、この記事では証明しない。prop-pr-quarter (3) と ex-pr-cx-large が示したのは、prop-pr-quarter の形の長方形の中での最大と、$\vec n=(2,-2,-1)$ の向きで $Q$ を広げられないことだけである。
図 5 の影の六角形の面積は、横 $\sqrt2$、縦 $\dfrac{2\sqrt2}3$ の長方形と、底辺 $\sqrt2$、高さ $\dfrac{\sqrt2}2-\dfrac{\sqrt2}3=\dfrac{\sqrt2}6$ の三角形 2 つに分けて
$$
\sqrt2\cdot\frac{2\sqrt2}3+2\cdot\frac12\cdot\sqrt2\cdot\frac{\sqrt2}6=\frac43+\frac13=\frac53
$$
である。これは $\vec n$ を長さ $1$ にした $\dfrac13(2,-2,-1)$ の成分の絶対値の和 $\dfrac{2+2+1}3$ に等しい。$(1,1,1)$ の向きでも、1 辺 $\dfrac{\sqrt6}3$ の正六角形の面積は $\dfrac{3\sqrt3}2\cdot\dfrac23=\sqrt3$ で、$\dfrac1{\sqrt3}(1,1,1)$ の成分の和 $\sqrt3$ に等しい。影が、手前に見える 3 つの面の影に分かれ、各面の影の面積が「面の面積 $\times\cos\theta$」になる(正射影と面積 の定理)ことから説明できるが、この一般の関係はこの記事では証明しない。
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