カップ積(cup product)とは、可換環 $R$ 係数の特異余鎖 $\varphi\in C^k(X;R)$、$\psi\in C^\ell(X;R)$ に、特異単体の前の $k$ 面での $\varphi$ の値と後ろの $\ell$ 面での $\psi$ の値の積を対応させる余鎖 $\varphi\smile\psi$ のことで、コホモロジーに双線形な積を誘導する。これにより $H^*(X;R)$ は次数付き可換な環(コホモロジー環)になり、連続写像の引き戻しは環準同型なので、環の構造はホモトピー型の不変量である。たとえばトーラスと $S^1\vee S^1\vee S^2$ はコホモロジー群が同型だが環が異なり、ホモトピー同値でない。
トーラス $T^2$ と、2 つの円周と球面を 1 点で貼り合わせた $W=S^1\vee S^1\vee S^2$(ウェッジ和)は、どちらも整数係数のコホモロジー群が $H^0\cong\mathbb{Z}$、$H^1\cong\mathbb{Z}^2$、$H^2\cong\mathbb{Z}$ で、Betti数も $1,2,1$ と同じである。しかし両者はホモトピー同値でない。違いは「掛け算」に現れる。トーラスでは、ひと回りの向きの異なる 2 つの 1 次元の類を掛けると $H^2$ の生成元になるのに対し、$W$ では 1 次元の類どうしの積はつねに $0$ である。
この掛け算が カップ積(cup product)である。余鎖 $\varphi$、$\psi$ の積を「単体の前半で $\varphi$ を、後半で $\psi$ を測って掛ける」という式で定めると、コホモロジーに双線形な積が入り、$H^*(X;R)=\bigoplus_nH^n(X;R)$ は次数付き環(コホモロジー環)になる。連続写像の引き戻しは環準同型なので、コホモロジー環はホモトピー型の不変量であり、コホモロジー群だけでは区別できない空間を区別する。微分形式の外積(微分形式)は、de Rhamの定理 を通じてカップ積に対応する。
$R$ を単位元をもつ可換環とする。特異コホモロジー の定義「標準単体と特異単体」のとおり、標準 $n$ 単体 $\Delta^n$ の頂点を $e_0,\dots,e_n$ とし、$\delta\varphi:=\varphi\circ\partial$ を余境界作用素とする。特異 $n$ 単体 $\sigma\colon\Delta^n\to X$ と $0\le i_0<\cdots< i_k\le n$ に対し、頂点 $e_j$ を $e_{i_j}$ に送る $\Delta^k\to\Delta^n$ のアフィン写像と $\sigma$ の合成を $\sigma|[e_{i_0},\dots,e_{i_k}]$ と書く。$\sigma$ の $i$ 番目の面 $\sigma\circ d_i$ は $\sigma|[e_0,\dots,\widehat{e_i},\dots,e_n]$ であり($\widehat{e_i}$ は $e_i$ を除くことを表す)、制限の制限は制限である。
$\varphi\in C^k(X;R)$、$\psi\in C^\ell(X;R)$ に対し、$(k+\ell)$ 余鎖 $\varphi\smile\psi\in C^{k+\ell}(X;R)$ を、特異 $(k+\ell)$ 単体 $\sigma$ について
$$
(\varphi\smile\psi)(\sigma):=\varphi\bigl(\sigma|[e_0,\dots,e_k]\bigr)\cdot\psi\bigl(\sigma|[e_k,\dots,e_{k+\ell}]\bigr)
$$
(右辺は $R$ の積)で定め、$\varphi$ と $\psi$ の カップ積 という。$\sigma|[e_0,\dots,e_k]$ を $\sigma$ の前の $k$ 面、$\sigma|[e_k,\dots,e_{k+\ell}]$ を後ろの $\ell$ 面と呼ぶ。両者は頂点 $e_k$ を共有する。
これは 特異コホモロジー の定義「カップ積」と同じ式であり(Hat02 §3.2、p. 206)、以下ではその基本性質を証明し、具体的な空間で計算する。カップ積は余鎖のレベルで双線形・結合的で、定数関数 $1$(各特異 $0$ 単体に $1$ を割り当てる $0$ 余鎖)が左右の単位元になる。実際、3 つの余鎖の積はどちらの順に括っても $\sigma$ の前・中・後の面での値の積であり、$(1\smile\varphi)(\sigma)=1\cdot\varphi(\sigma|[e_0,\dots,e_\ell])=\varphi(\sigma)$ である。
$\varphi\in C^k(X;R)$、$\psi\in C^\ell(X;R)$ について
$$
\delta(\varphi\smile\psi)=\delta\varphi\smile\psi+(-1)^k\varphi\smile\delta\psi
$$
が成り立つ。
特異 $(k+\ell+1)$ 単体 $\sigma$ で両辺の値を比べる。右辺の 2 つの項を定義どおり展開すると
$$
(\delta\varphi\smile\psi)(\sigma)=\sum_{i=0}^{k+1}(-1)^i\varphi\bigl(\sigma|[e_0,\dots,\widehat{e_i},\dots,e_{k+1}]\bigr)\psi\bigl(\sigma|[e_{k+1},\dots,e_{k+\ell+1}]\bigr),
$$
$$
(-1)^k(\varphi\smile\delta\psi)(\sigma)=\sum_{i=k}^{k+\ell+1}(-1)^i\varphi\bigl(\sigma|[e_0,\dots,e_k]\bigr)\psi\bigl(\sigma|[e_k,\dots,\widehat{e_i},\dots,e_{k+\ell+1}]\bigr)
$$
である(第 2 式は $\delta\psi$ の和の添字 $j$ を $i=k+j$ と付け替えた)。第 1 式の $i=k+1$ の項と第 2 式の $i=k$ の項は、どちらも $\varphi(\sigma|[e_0,\dots,e_k])\,\psi(\sigma|[e_{k+1},\dots,e_{k+\ell+1}])$ に符号 $(-1)^{k+1}$、$(-1)^k$ を付けたものなので打ち消し合う。残りは、$0\le i\le k$ の項と $k+1\le i\le k+\ell+1$ の項が 1 つずつである。一方、左辺は
$$
\delta(\varphi\smile\psi)(\sigma)=(\varphi\smile\psi)(\partial\sigma)=\sum_{i=0}^{k+\ell+1}(-1)^i(\varphi\smile\psi)\bigl(\sigma|[e_0,\dots,\widehat{e_i},\dots,e_{k+\ell+1}]\bigr)
$$
であり、$i\le k$ なら面 $\sigma|[e_0,\dots,\widehat{e_i},\dots,e_{k+\ell+1}]$ の前の $k$ 面は $\sigma|[e_0,\dots,\widehat{e_i},\dots,e_{k+1}]$、後ろの $\ell$ 面は $\sigma|[e_{k+1},\dots,e_{k+\ell+1}]$、$i\ge k+1$ なら前の $k$ 面は $\sigma|[e_0,\dots,e_k]$、後ろの $\ell$ 面は $\sigma|[e_k,\dots,\widehat{e_i},\dots,e_{k+\ell+1}]$ である。よって左辺の各項は右辺の残りの項と 1 つずつ一致する。$\square$
1:lem-cup-product-leibniz により、$\delta\varphi=0$、$\delta\psi=0$ なら $\delta(\varphi\smile\psi)=0$ である。$\varphi=\delta\eta$ で $\delta\psi=0$ なら $\varphi\smile\psi=\delta(\eta\smile\psi)$、$\delta\varphi=0$ で $\psi=\delta\eta$ なら $\varphi\smile\psi=(-1)^k\delta(\varphi\smile\eta)$ であり、余輪体と余境界の積はどちらの順でも余境界である。よって積はコホモロジー類の代表の取り方によらない。双線形性は余鎖のレベルの双線形性から従う。
2:結合法則と単位元は余鎖のレベルで成り立つ(定義の後の段落)。$\delta1=0$ である(道 $\tau$ について $\delta1(\tau)=1-1=0$)。
3:$f$ が誘導する余鎖写像 $f^\sharp\varphi=\varphi\circ f_\sharp$ について、$(f\circ\sigma)|[e_0,\dots,e_k]=f\circ(\sigma|[e_0,\dots,e_k])$ なので
$$
f^\sharp(\varphi\smile\psi)(\sigma)=\varphi\bigl((f\circ\sigma)|[e_0,\dots,e_k]\bigr)\psi\bigl((f\circ\sigma)|[e_k,\dots,e_{k+\ell}]\bigr)=(f^\sharp\varphi\smile f^\sharp\psi)(\sigma)
$$
であり、$f^\sharp1=1$ である(Hat02 Proposition 3.10)。ホモトピー同値 $f$ について $f^*$ は群の同型(特異コホモロジー の定理「ホモトピー不変性」)で、しかも環準同型なので環の同型である。$\square$
$\alpha\in H^k(X;R)$、$\beta\in H^\ell(X;R)$ について
$$
\alpha\smile\beta=(-1)^{k\ell}\,\beta\smile\alpha
$$
が成り立つ。とくに $k$ が奇数なら $2\,\alpha\smile\alpha=0$ であり、$R$ で $2$ が可逆(たとえば $R=\mathbb{Q},\mathbb{R}$)なら $\alpha\smile\alpha=0$ である。
特異コホモロジー の定理「コホモロジー環と次数付き可換性」と同じ主張で、証明は Hat02 Theorem 3.11(pp. 210–212)に譲る。余鎖のレベルでは等式は成り立たない(ex-cup-product-counterexamples の 1)。
$\varphi\smile\psi$ と $\psi\smile\varphi$ は、単体の頂点の並べ方が違うだけである。そこで各特異 $n$ 単体 $\sigma$ に、頂点の順を逆にした単体 $\bar\sigma$($\bar\sigma(e_i)=\sigma(e_{n-i})$ となるように $\Delta^n$ の頂点を逆順に並べるアフィン写像と合成したもの)に符号 $\varepsilon_n=(-1)^{n(n+1)/2}$ を付けた $\rho(\sigma):=\varepsilon_n\bar\sigma$ を対応させる。$\rho$ は鎖写像で恒等写像と鎖ホモトピックなので、コホモロジーでは恒等写像を誘導する。一方、余鎖のレベルで $\rho^*\varphi\smile\rho^*\psi=(-1)^{k\ell}\rho^*(\psi\smile\varphi)$ が直接の計算で確かめられ($\varepsilon_{k+\ell}=(-1)^{k\ell}\varepsilon_k\varepsilon_\ell$ による)、コホモロジーに移ると主張が得られる。
微分形式の外積も $\omega\wedge\eta=(-1)^{k\ell}\eta\wedge\omega$ を満たすが、こちらは形式そのものの等式である。de Rhamの定理 の定理「外積とカップ積の対応」は、de Rham コホモロジー環 $H^*_{dR}(M)$(微分形式 の命題「de Rhamコホモロジー環」)と $H^*(M;\mathbb{R})$ が次数付き環として同型であることを述べる。余鎖のレベルでは両者の積は一致しない(同定理の注意)。
カップ積を具体的に計算するには、空間を少数の単体に分け、その単体だけの上で余鎖を考えるのが便利である。トーラスで実行する。
$q\colon\mathbb{R}^2\to T^2:=\mathbb{R}^2/\mathbb{Z}^2$ を商写像とし、$\mathbb{R}^2$ の点 $p_0,\dots,p_k$ について、$e_j\mapsto p_j$ となるアフィン写像 $\Delta^k\to\mathbb{R}^2$ と $q$ の合成を $[p_0,\dots,p_k]$ と書く($T^2$ の特異 $k$ 単体)。$m\in\mathbb{Z}^2$ だけ平行移動しても $[p_0+m,\dots,p_k+m]=[p_0,\dots,p_k]$ である。正方形 $[0,1]^2$ を対角線で 2 つに分けて
$$
v=[(0,0)],\quad a=[(0,0),(1,0)],\quad b=[(0,0),(0,1)],\quad c=[(0,0),(1,1)],
$$
$$
L=[(0,0),(1,0),(1,1)],\qquad U=[(0,0),(0,1),(1,1)]
$$
とおく。$L$ の面は $L\circ d_0=[(1,0),(1,1)]=b$、$L\circ d_1=c$、$L\circ d_2=a$ で、$U$ についても同様なので
$$
\partial L=\partial U=a+b-c,\qquad\partial a=\partial b=\partial c=v-v=0
$$
である。また $L$ の前の 1 面は $a$、後ろの 1 面は $[(1,0),(1,1)]=b$、$U$ の前の 1 面は $b$、後ろの 1 面は $[(0,1),(1,1)]=a$ である。
正方形を対角線で分けたトーラスの単体
図の正方形の向かい合う辺を矢印の向きにそろえて貼ると $T^2$ になり、$a$(上下の辺)、$b$(左右の辺)、$c$(対角線)と 2 つの三角形 $L$、$U$ が $T^2$ を分ける。これは Hat02 Example 2.3(p. 106)の $\Delta$ 複体の構造である。$v,a,b,c,L,U$ が生成する部分鎖複体 $\Delta_\bullet\subset C_\bullet(T^2)$ への包含はホモロジーの同型を誘導し(Hat02 Theorem 2.27)、制限 $C^\bullet(T^2;R)\to\Delta^\bullet:=\operatorname{Hom}(\Delta_\bullet,R)$ はコホモロジーの同型を誘導する(Hat02 §3.1、p. 202)。しかも上で見たとおり $L$、$U$ の前後の面は $a,b$ なので、$\Delta^\bullet$ の上でもカップ積が同じ式で定まり、制限は余鎖のレベルでカップ積を保つ。したがって $H^*(T^2;R)$ の環構造は $\Delta^\bullet$ の上で計算できる。
$1$ 余鎖 $\alpha,\beta\in\Delta^1$ を
$$
\alpha(a)=1,\ \alpha(b)=0,\ \alpha(c)=1,\qquad\beta(a)=0,\ \beta(b)=1,\ \beta(c)=1
$$
で定めると、その類は $H^1(T^2;R)$ の基底をなし、$\alpha\smile\beta$ の類は $H^2(T^2;R)\cong R$ の生成元で
$$
\alpha\smile\alpha=0,\qquad\beta\smile\beta=0,\qquad\beta\smile\alpha=-\alpha\smile\beta
$$
(コホモロジー類として)が成り立つ。すなわち $H^*(T^2;R)$ は、次数 $1$ の $\alpha,\beta$ が生成する外積代数 $\Lambda_R[\alpha,\beta]$(基底 $1,\alpha,\beta,\alpha\smile\beta$)である。
$0$ 余鎖 $f$ について $\delta f(a)=f(v)-f(v)=0$($b,c$ も同様)なので $\delta=0\colon\Delta^0\to\Delta^1$ であり、$H^0=\Delta^0=R\cdot1$ である。$1$ 余鎖 $\varphi$ について $\delta\varphi(L)=\delta\varphi(U)=\varphi(a)+\varphi(b)-\varphi(c)$ なので、余輪体は $\varphi(c)=\varphi(a)+\varphi(b)$ をみたすもの、すなわち $\varphi=\varphi(a)\alpha+\varphi(b)\beta$ の形のものであり、余境界は $0$ だけである。よって $H^1=R\alpha\oplus R\beta$ である。$2$ 余鎖は $L,U$ での値で決まり、余境界の全体は $\{\psi\mid\psi(L)=\psi(U)\}$ である($\varphi(c)$ を動かせば $\delta\varphi(L)=\delta\varphi(U)$ は任意の値をとる)。よって
$$
H^2\cong R,\qquad[\psi]\mapsto\psi(U)-\psi(L)
$$
である。カップ積は前後の面の値の積なので
$$
(\alpha\smile\beta)(L)=\alpha(a)\beta(b)=1,\quad(\alpha\smile\beta)(U)=\alpha(b)\beta(a)=0,\quad(\beta\smile\alpha)(L)=\beta(a)\alpha(b)=0,\quad(\beta\smile\alpha)(U)=\beta(b)\alpha(a)=1
$$
であり、$\alpha\smile\beta\mapsto-1$、$\beta\smile\alpha\mapsto1$ となる。$\alpha\smile\alpha$ と $\beta\smile\beta$ は $L,U$ のどちらでも値が $0$(因子の一方が $\alpha(b)=0$ か $\beta(a)=0$)なので $0$ である。$\square$
$\alpha,\beta$ は、$H_1(T^2)$ の基底をなす輪 $a,b$ の類に対する双対基底($\alpha(a)=1$、$\alpha(b)=0$、$\beta(a)=0$、$\beta(b)=1$)を表す。その積が $H^2$ を生成することは、2 つの方向の輪がちょうど 1 点で交わることの代数的な表れである(Hat02 Example 3.7 は種数 $g$ の閉曲面で同じ計算をし、$\alpha_i\smile\beta_j$ が $i=j$ のとき $H^2$ の生成元、$i\ne j$ のとき $0$ であることを示す)。この積から作る $H^1\times H^1\to\mathbb{Z}$ の対は、Poincaré双対 の例「トーラスの双対」のユニモジュラーな交代形式である。
一点和(ウェッジ和)の正次数のコホモロジーは各成分のコホモロジーの直和になり、しかも異なる成分から来る類どうしの積は $0$ になる。これを使うと、冒頭の $T^2$ と $W$ のように、コホモロジー群が同じ空間を区別できる。
$X_1,\dots,X_m$ を CW 複体とし、その 0 胞体を基点とする一点和を $X=X_1\vee\cdots\vee X_m$、包含写像を $i_j\colon X_j\to X$ とする。$k\ge1$ について、$(i_1^*,\dots,i_m^*)\colon H^k(X;R)\to\bigoplus_jH^k(X_j;R)$ は同型であり、$\alpha\in H^k(X;R)$、$\beta\in H^\ell(X;R)$($k,\ell\ge1$)の積はこの同型で $(i_j^*\alpha\smile i_j^*\beta)_j$ に対応する。
同型であることは一点和の被約コホモロジーの計算による(Hat02 Corollary 2.25 のコホモロジー版。Hat02 Example 3.14 は、これが環の同型であることも述べる)。積については、thm-cup-product-ring の 3 により $i_j^*(\alpha\smile\beta)=i_j^*\alpha\smile i_j^*\beta$ だからである。$\square$
1:$W$ の任意の $\alpha,\beta\in H^1(W;\mathbb{Z})$ について、prop-cup-product-wedge により $\alpha\smile\beta$ は各成分への引き戻しの積 $i_j^*\alpha\smile i_j^*\beta$ で決まる。$S^1$ の成分では積が $H^2(S^1;\mathbb{Z})=0$ に入り、$S^2$ の成分では $i_j^*\alpha\in H^1(S^2;\mathbb{Z})=0$ なので、すべての成分で $0$、よって $\alpha\smile\beta=0$ である。一方 $T^2$ では thm-cup-product-torus により $\alpha\smile\beta\ne0$ となる $\alpha,\beta\in H^1$ がある。次数付き環の同型は $H^1$ どうしの積を保つので、両者の環は同型でない。thm-cup-product-ring の 3 により、ホモトピー同値ではない。
2:$S^2\vee S^4$ の $\alpha\in H^2$ について、$S^2$ の成分では $i_1^*\alpha\smile i_1^*\alpha\in H^4(S^2;\mathbb{Z})=0$、$S^4$ の成分では $i_2^*\alpha\in H^2(S^4;\mathbb{Z})=0$ なので $\alpha\smile\alpha=0$ である。$\mathbb{CP}^2$ では ex-cup-product-rings の 4 により $H^2$ の生成元の平方は $H^4$ の生成元である。あとは 1 と同じである。$\square$
2 は、$\mathbb{CP}^2$ が $S^2$ に 4 胞体を貼り付けて得られること(CW複体)と合わせると、その貼り付け写像 $S^3\to S^2$ が定値写像とホモトピックでないことを意味する(Hat02 Example 3.14、p. 214)。
$X$ が可縮な開集合 $A,B$ の和 $X=A\cup B$ なら、$k,\ell\ge1$ の $\alpha\in H^k(X;R)$、$\beta\in H^\ell(X;R)$ について $\alpha\smile\beta=0$ である。とくに空間 $Y$ の懸垂($Y\times[0,1]$ の上端と下端をそれぞれ 1 点につぶした空間)では、正次数の類どうしの積はすべて $0$ である。
要点:$\alpha$ は $A$ に制限すると $0$ なので相対類 $\alpha'\in H^k(X,A;R)$ から来て、同様に $\beta$ は $\beta'\in H^\ell(X,B;R)$ から来る。相対カップ積 $\alpha'\smile\beta'$ は $H^{k+\ell}(X,A\cup B;R)=H^{k+\ell}(X,X;R)=0$ に入り、その像が $\alpha\smile\beta$ なので $\alpha\smile\beta=0$ である。
$A$ は可縮空間なので $H^k(A;R)=0$($k\ge1$)であり、対 $(X,A)$ の長完全列(特異コホモロジー の定理「対の長完全列」)$H^k(X,A;R)\xrightarrow{j_A^*}H^k(X;R)\to H^k(A;R)=0$ により $\alpha=j_A^*\alpha'$ となる $\alpha'$ がある。同様に $\beta=j_B^*\beta'$ である。$A,B$ が開集合のとき、相対カップ積 $H^k(X,A;R)\times H^\ell(X,B;R)\to H^{k+\ell}(X,A\cup B;R)$ が定まり、絶対的なカップ積と $j^*(\alpha'\smile\beta')=j_A^*\alpha'\smile j_B^*\beta'$ で両立する(Hat02 §3.2、pp. 209–210。$A$ 上で消える余鎖と $B$ 上で消える余鎖の積は、$A$ の鎖と $B$ の鎖の和の上で消えることによる)。$A\cup B=X$ なので $H^{k+\ell}(X,X;R)=0$ であり、$\alpha\smile\beta=j^*(0)=0$ である。懸垂は、上端をつぶした点を除いた部分と下端をつぶした点を除いた部分という、可縮な 2 つの開集合(どちらも錐と同じ形)の和である。$\square$
たとえば $T^2$ は、$\alpha\smile\beta\ne0$ なので、どの空間の懸垂ともホモトピー同値でない。球面 $S^n=$($S^{n-1}$ の懸垂)では確かに $u\smile u=0$ である。
| 期待すること | 例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 余鎖のレベルでの次数付き可換性 | $T^2$ の余輪体 $\alpha,\beta$ | $\alpha\smile\beta=-\beta\smile\alpha$(余鎖として) |
| 奇数次の類の平方は $0$ | $\mathbb{RP}^2$、係数 $\mathbb{Z}/2$ | $\alpha\smile\alpha=0$($\deg\alpha=1$) |
| 群の同型から環の同型 | $T^2$ と $S^1\vee S^1\vee S^2$、$\mathbb{CP}^2$ と $S^2\vee S^4$ | 「コホモロジー群が同型なら環も同型」 |
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