弱位相の距離化可能性

同義語:弱位相の距離化metrizability of weak topologies

概要

弱位相の距離化可能性(metrizability of weak topologies)とは、関数解析の弱位相・弱スター位相が距離で記述できるかという問題である。無限次元の実 Banach 空間 $X$ では、$X$ 全体の弱位相も $X^*$ 全体の弱スター位相も距離化できない。一方、$X$ が可分であることは双対の閉単位球の上で弱スター位相が距離化できることと同値であり、$X^*$ が可分であることは $X$ の閉単位球の上で弱位相が距離化できることと同値である。後者の必要性は Goldstine の定理から示され、$X^*$ が可分なら有界集合の弱閉包は点列の弱極限で記述できる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 弱位相(関数解析), 弱スター位相, 距離化可能空間, 可分空間

ノルム空間の位相は距離から来るので、閉集合や連続性を点列だけで調べられる。ところが関数解析の弱位相 $\sigma(X,X^*)$ と弱スター位相 $\sigma(X^*,X)$ は、無限次元の Banach 空間ではどんな距離からも来ない。そのため、弱収束する点列を調べるだけでは弱閉包や弱コンパクト性が分からない場面がある。
それでも、有界集合に話を限れば事情は変わる。$X^*$ が可分なら $X$ の閉単位球の上の弱位相は距離で書け、$X$ が可分なら双対の閉単位球の上の弱スター位相が距離で書ける。しかもどちらの条件も、距離化できるための必要条件でもある。この記事では、全空間で距離化できないことと、閉単位球の上で距離化できるための必要十分条件を述べて証明する。
以下、$X$ は実 Banach 空間、$X^*$ はその連続双対とし、$B_X=\{x\in X:\|x\|\le1\}$、$B_{X^*}=\{f\in X^*:\|f\|\le1\}$ と書く。位相空間の部分集合 $A$ について「$A$ の上で位相が距離化できる」とは、$A$ に部分空間の位相を入れた空間が距離化可能(距離化可能空間)であることをいう。

全空間では距離化できない

全空間の弱位相は距離化できない

$X$ を無限次元の実 Banach 空間とする。

  1. $X$ に弱位相 $\sigma(X,X^*)$ を入れた空間は距離化可能でない。
  2. $X^*$ に弱スター位相 $\sigma(X^*,X)$ を入れた空間は距離化可能でない。

1 は 弱位相(関数解析) の節「有限次元では一致し、無限次元では真に粗い」で証明されている。そこでは $0$ が可算個の弱近傍からなる基本近傍系をもつと仮定し、$X^*$ が有限次元部分空間の可算和になることを導いて、Baire の範疇定理に矛盾させている。2 も同じ筋で、今度は $X$ の側に Baire の範疇定理を使う。
2 を示す。弱スター位相がある距離で定まると仮定すると、$0\in X^*$ は可算個の弱スター近傍からなる基本近傍系をもつ。弱スター位相 の定義「弱スター位相」の基本近傍に取り替えて、それらを
$$ V_k=\{\varphi\in X^*:|\varphi(x)|<\varepsilon_k\ (x\in F_k)\}\qquad(k\ge1) $$
($F_k\subset X$ は有限集合、$\varepsilon_k>0$)としてよい。$L_k=\operatorname{span}F_k$ とおく。
(i)$X=\bigcup_kL_k$ である。$x\in X$ を取ると、$\{\varphi:|\varphi(x)|<1\}$ は $0$ の弱スター近傍なので、ある $k$ で $V_k$ に含まれる。$\varphi\in X^*$ が $F_k$ の上で $0$ なら、すべての実数 $t$ について $t\varphi\in V_k$ なので $|t|\,|\varphi(x)|<1$ となり、$\varphi(x)=0$ である。$L_k$ は有限次元なので閉部分空間である(ノルム空間 の系「有限次元ノルム空間の性質」の 4)。もし $x\notin L_k$ なら、Hahn–Banachの定理 の系「閉部分空間の外の点を検出する汎関数」により、$L_k$ の上で $0$ で $\varphi(x)\ne0$ となる $\varphi\in X^*$ がある。これは今示したことに反するので、$x\in L_k$ である。
(ii)$X$ は完備なので、Baireの範疇定理 の系「閉集合による可算被覆」により、ある $L_k$ は内点をもつ。内点のまわりの球を含む部分空間は、平行移動と拡大によって $X$ 全体を含むので $X=L_k$ となり、$X$ が無限次元であることに反する。

2 では $X$ の完備性を使った。完備でないノルム空間では、2 の結論が成り立たないことがある(ex-mwt-c00)。
距離化可能な空間では、集合 $A$ の閉包の点 $x$ は $A$ の点列の極限である。$x$ を中心とする半径 $1/k$ の球が $A$ と交わるので、そこから $a_k$ を選べばよいからである。弱位相ではこれが崩れる。次の例は、定理の 1 を $\ell^2$ について直接確かめるものでもある。

$\ell^2$ の集合 $\{\sqrt n\,e_n\}$

$\ell^2$ の標準基底を $e_n$ とし、$A=\{\sqrt n\,e_n:n\ge1\}$ とおく。

  1. $0$ は $A$ の弱閉包に属する。
  2. $A$ の点列で $0$ に弱収束するものはない。
  3. 各 $r>0$ について $A\cap\{\|x\|_2\le r\}$ は有限集合である。
    したがって $\ell^2$ の弱位相では、閉包の点が点列の極限になるとは限らず、弱位相は距離化可能でない。

1:$\ell^2$ 上の連続線形汎関数は、ある $y\in\ell^2$ との内積 $x\mapsto\langle y,x\rangle$ で表される(Rieszの表現定理)。$0$ の基本近傍 $V=\{x:|\langle y_i,x\rangle|<\varepsilon\ (1\le i\le m)\}$ を取り、$s_n=\sum_{i=1}^m|y_i(n)|^2$ とおく($y_i(n)$ は $y_i$ の第 $n$ 座標)。$\sum_ns_n=\sum_i\|y_i\|_2^2<\infty$ である。もしある $N$ 以降のすべての $n$ で $ns_n\ge\varepsilon^2$ なら、$\sum_{n\ge N}s_n\ge\varepsilon^2\sum_{n\ge N}1/n=\infty$ となって矛盾する。よって $ns_n<\varepsilon^2$ となる $n$ があり、各 $i$ について
$$ |\langle y_i,\sqrt n\,e_n\rangle|=\sqrt n\,|y_i(n)|\le\sqrt{ns_n}<\varepsilon $$
である。すなわち $\sqrt n\,e_n\in V$ であり、$0$ の基本近傍はどれも $A$ と交わる。
3:$\|\sqrt n\,e_n\|_2=\sqrt n$ なので、$A\cap\{\|x\|_2\le r\}$ は $n\le r^2$ の元だけからなる。
2:$A$ の点列 $(a_k)$ が $0$ に弱収束したとする。弱収束する列はノルム有界なので(弱位相(関数解析) の命題「弱収束列の基本性質」)、3 により $(a_k)$ は有限集合の中の値しか取らない。すると、ある元 $a\in A$ が無限回現れ、その部分列は定数列 $a$ である。弱極限はただ一つなので $a=0$ となるが、$0\notin A$ である。これは矛盾である。

閉単位球の上では距離化できる場合

全空間で距離化できなくても、閉単位球の上では可分性によって距離化できる。まず可分性どうしの関係を確かめる。

双対が可分なら空間も可分

$X^*$ が可分なら $X$ も可分である。

$X^*$ の稠密な列 $(g_n)$ を取る。$\|g_n\|=\sup_{x\in B_X}g_n(x)$ なので、$y_n\in B_X$ を $g_n(y_n)\ge\|g_n\|/2$ となるように選べる($g_n=0$ なら $y_n=0$ とする)。$L$ を $\{y_n\}$ の張る部分空間とし、$f\in X^*$ が $L$ の上で $0$ であるとする。$\varepsilon>0$ に対し $\|f-g_n\|<\varepsilon$ となる $n$ を取ると
$$ \tfrac12\|g_n\|\le g_n(y_n)=(g_n-f)(y_n)<\varepsilon $$
なので、$\|f\|\le\|f-g_n\|+\|g_n\|<3\varepsilon$ である。$\varepsilon$ は任意なので $f=0$ となる。Hahn–Banachの定理 の系「稠密性の判定」により $L$ は稠密であり、有理数を係数とする $y_n$ の有限一次結合の全体が $X$ の可算な稠密集合になる。

逆は成り立たない。$\ell^1$ は可分だが、その双対 $\ell^\infty$ は可分でない(可分空間 の注意「反例:有界数列の空間」)。

双対の閉単位球の弱スター位相

次は同値である。

  1. $X$ は可分である。
  2. $B_{X^*}$ の上で弱スター位相 $\sigma(X^*,X)$ は距離化できる。

1 ⇒ 2 は 弱スター位相 の命題「可分な空間の双対閉球」($R=1$ の場合)である。
2 ⇒ 1:$d$ を $B_{X^*}$ の弱スター位相を定める距離とし、$U_n=\{\varphi\in B_{X^*}:d(\varphi,0)<1/n\}$ とおく。$U_n$ は $B_{X^*}$ の中の $0$ の近傍なので、有限集合 $F_n\subset X$ と $\varepsilon_n>0$ で
$$ \{\varphi\in B_{X^*}:|\varphi(x)|<\varepsilon_n\ (x\in F_n)\}\subset U_n $$
となるものがある。$D=\bigcup_nF_n$ は可算集合である。$D$ の張る部分空間が $X$ で稠密であることを示す。$\varphi\in X^*$ が $D$ の上で $0$ であるとし、$\psi=\varphi/\max\{1,\|\varphi\|\}\in B_{X^*}$ とおく。$\psi$ も $D$ の上で $0$ なので、すべての $n$ で上の左辺に属し、$\psi\in U_n$ である。よって $d(\psi,0)=0$、$\psi=0$、したがって $\varphi=0$ である。Hahn–Banachの定理 の系「稠密性の判定」により $D$ の張る部分空間は稠密であり、その有理数係数の一次結合の全体が可算な稠密集合になる。

$X$ の閉単位球の上の弱位相については、$X$ と $X^*$ の役割を入れ替えた主張が成り立つ。必要性の証明はこちらのほうが込み入っていて、Goldstineの定理 を使う。

閉単位球の弱位相

次は同値である。

  1. $X^*$ は可分である。
  2. $B_X$ の上で弱位相 $\sigma(X,X^*)$ は距離化できる。

1 ⇒ 2:$X^*$ の可算な稠密集合 $\{h_m\}$ を取る。各 $m,k$ について、$h_m$ からの距離が $1/k$ 未満の $B_{X^*}$ の元があれば一つ選ぶ。選んだ元は可算個で、$B_{X^*}$ で稠密である。実際、$g\in B_{X^*}$ と $k$ に対し $\|g-h_m\|<1/(2k)$ となる $m$ を取れば、$(m,2k)$ について選んだ元 $g'$ は $\|g'-g\|<1/(2k)+1/(2k)=1/k$ を満たす。こうして $B_{X^*}$ で稠密な列 $(g_n)_{n\ge1}$ が得られる。$x,y\in B_X$ に対し
$$ d(x,y)=\sum_{n=1}^\infty2^{-n}|g_n(x-y)| $$
とおく。$|g_n(x-y)|\le2$ なので級数は収束する。$d$ は対称で三角不等式を満たす。$d(x,y)=0$ ならすべての $n$ で $g_n(x-y)=0$ であり、$(g_n)$ は $B_{X^*}$ で稠密だから、すべての $g\in B_{X^*}$ で $g(x-y)=0$ となる。ノルムは $\|x-y\|=\sup_{g\in B_{X^*}}|g(x-y)|$ で復元されるので(連続双対空間 の系「双対ノルムによる元のノルムの復元」)、$x=y$ である。よって $d$ は $B_X$ 上の距離である。各点 $x_0\in B_X$ で、$d$ の球と弱位相の基本近傍が互いに他を含むことを示す。
(i)$d$ の球は弱近傍を含む。$r>0$ に対し $2^{1-m}< r/2$ となる $m$ を取り、$V=\{x\in B_X:|g_n(x-x_0)|< r/2\ (n\le m)\}$ とおく。$x\in V$ なら
$$ d(x,x_0)<\sum_{n\le m}2^{-n}\frac r2+\sum_{n>m}2^{-n}\cdot2<\frac r2+\frac r2=r $$
である。
(ii)弱近傍は $d$ の球を含む。$x_0$ の基本近傍 $W=\{x\in B_X:|f_i(x-x_0)|<\varepsilon\ (1\le i\le k)\}$ を取る。$f_i$ と $\varepsilon$ を同じ正の数で割っても $W$ は変わらないので、$\|f_i\|\le1$ としてよい。各 $i$ について $\|f_i-g_{n_i}\|<\varepsilon/4$ となる $n_i$ を取り、$r>0$ を $2^{n_i}r<\varepsilon/2$($1\le i\le k$)となるように選ぶ。$d(x,x_0)< r$ なら $|g_{n_i}(x-x_0)|\le2^{n_i}d(x,x_0)<\varepsilon/2$ であり、$\|x-x_0\|\le2$ から
$$ |f_i(x-x_0)|\le\|f_i-g_{n_i}\|\,\|x-x_0\|+|g_{n_i}(x-x_0)|<\frac\varepsilon4\cdot2+\frac\varepsilon2=\varepsilon $$
となる。よって $d$ の半径 $r$ の球は $W$ に含まれる。
(i)(ii)により、$d$ の定める位相は $B_X$ 上の弱位相と一致する。
2 ⇒ 1:$d$ を $B_X$ の弱位相を定める距離とし、$U_n=\{x\in B_X:d(x,0)<1/n\}$ とおく。有限集合 $\Phi_n\subset X^*$ と $\varepsilon_n>0$ で
$$ V_n\cap B_X\subset U_n,\qquad V_n=\{x\in X:|f(x)|<\varepsilon_n\ (f\in\Phi_n)\} $$
となるものがある。$F$ を $\bigcup_n\Phi_n$ の張る部分空間とし、$F$ が $X^*$ で稠密であることを示す。
稠密でないと仮定すると、閉包 $\overline F$ は $X^*$ と異なる閉部分空間である。$h\in X^*\setminus\overline F$ を取り、Banach 空間 $X^*$ に Hahn–Banachの定理 の系「閉部分空間の外の点を検出する汎関数」を使うと、$\xi\in X^{**}$ で $\|\xi\|=1$、$\overline F$ の上で $\xi=0$、$\xi(h)=\delta>0$ となるものがある。$f_0=2h/\delta$ とおくと $\xi(f_0)=2$ である。
$W=\{x\in B_X:|f_0(x)|<1/2\}$ は $B_X$ の中の $0$ の弱近傍なので、$d$ の球を含む。すなわち $U_{n_0}\subset W$ となる $n_0$ があり、$V_{n_0}\cap B_X\subset W$ である。$J\colon X\to X^{**}$ を評価写像とする。$\xi\in B_{X^{**}}$ なので、Goldstineの定理 の定理「Goldstineの定理」により、$\xi$ の弱スター近傍
$$ \{\eta\in X^{**}:|\eta(f)-\xi(f)|<\varepsilon_{n_0}\ (f\in\Phi_{n_0}),\ |\eta(f_0)-\xi(f_0)|<1/2\} $$
は $J(B_X)$ と交わる。その点を $J(x_1)$($x_1\in B_X$)とする。$f\in\Phi_{n_0}\subset F$ なら $\xi(f)=0$ なので $|f(x_1)|<\varepsilon_{n_0}$ であり、$x_1\in V_{n_0}\cap B_X\subset W$、つまり $|f_0(x_1)|<1/2$ である。一方 $f_0(x_1)>\xi(f_0)-1/2=3/2$ である。これは矛盾である。
よって $F$ は稠密であり、$\bigcup_n\Phi_n$ の有理数係数の一次結合の全体は $X^*$ の可算な稠密集合である。

二つの定理を並べると、次の対応が見える。

閉単位球と位相距離化できるための必要十分条件必要性の証明で使うもの
$B_{X^*}$ と弱スター位相$X$ が可分Hahn–Banach の定理($X$ での稠密性の判定)
$B_X$ と弱位相$X^*$ が可分Goldstine の定理($J(B_X)$ の弱スター稠密性)

lem-mwt-dual-separable と合わせると、$B_X$ の弱位相が距離化できれば $X$ 自身も可分である。また $x\mapsto rx$($r>0$)は弱位相についての同相写像なので、閉単位球で距離化できれば、半径 $r$ の閉球の上でも、したがって任意の有界集合の上でも距離化できる。それでも $X$ が無限次元なら、全空間では距離化できない(thm-mwt-whole)。実際、thm-mwt-ball の 1 ⇒ 2 の証明の式 $d(x,y)=\sum_n2^{-n}|g_n(x-y)|$ は、$|g_n(x-y)|\le\|x-y\|$ なので $x,y\in X$ 全体でも収束して $X$ 上の距離を定める。(i)(ii)の議論は $\|x-x_0\|\le2$ を $\|x-x_0\|\le2R$ に替え、$m$ と $n_i$ をそれに合わせて取り直せば半径 $R$ の閉球の上でもそのまま通るので、この一つの距離はどの有界集合の上でも弱位相を定める。それでも $X$ が無限次元なら、$X$ 全体では弱位相を定めない(thm-mwt-whole)。

帰結と例

距離化できる集合の上では、閉包を点列で調べられる。

有界集合の弱閉包と点列

$X^*$ が可分で、$A\subset X$ が有界であるとする。$x\in X$ が $A$ の弱閉包に属するための必要十分条件は、$A$ の点列で $x$ に弱収束するものが存在することである。

点列 $a_k\in A$ が $x$ に弱収束すれば、$x$ の弱近傍はどれも十分先の $a_k$ を含むので、$x$ は弱閉包に属する。
逆に $x$ が $A$ の弱閉包に属するとする。$A\subset rB_X$ となる $r>0$ を取る。$rB_X=\bigcap_{\|f\|\le1}\{y:|f(y)|\le r\}$ は弱閉集合なので(弱位相(関数解析) の系「単位球面の弱閉包」の証明と同じ)、$x\in rB_X$ であり、$x$ は部分空間 $rB_X$ の中で $A$ の閉包に属する。$y\mapsto y/r$ は $rB_X$ から $B_X$ への弱位相についての同相写像なので、thm-mwt-ball により $rB_X$ の弱位相はある距離 $d$ で定まる。$d$ について $x$ を中心とする半径 $1/k$ の球から $a_k\in A$ を選べば、$a_k$ は $rB_X$ の弱位相で $x$ に収束し、したがって $a_k\rightharpoonup x$ である。

同様に、$X$ が可分なら $X^*$ の有界集合の弱スター閉包は点列の弱スター極限で記述できる。ex-mwt-sqrt は、有界性を外すとこの記述が崩れることを示している。

$\ell^1$ の閉単位球

$X=\ell^1$ とすると、$B_X$ の上の弱位相は距離化できない。$X^*=\ell^\infty$ は可分でないので、これは thm-mwt-ball から従う。ここでは Schur の定理を使う別の確かめ方を示す。
$B_X$ の弱位相がある距離で定まるとする。$C\subset B_X$ をノルムについて閉じた集合とし、$C$ の点列 $(c_k)$ が $B_X$ の点 $c$ に弱収束するとすると、ℓp空間 の定理「Schurの定理」により $c_k\to c$(ノルム)であり、$c\in C$ となる。距離化可能な空間では、点列の極限で閉じた集合は閉集合なので、$C$ は $B_X$ の中で弱閉である。特に $C=\{x\in B_X:\|x\|_1\ge1/2\}$ が弱閉なので、$\{x\in B_X:\|x\|_1<1/2\}$ は $B_X$ の中の $0$ の弱近傍であり、$0$ のある基本近傍 $V$ について $V\cap B_X$ を含む。ところが $V$ は $\{0\}$ でない部分空間 $N$ を含む(弱位相(関数解析) の命題「弱近傍は部分空間を含む」)。$y\in N$ を $\|y\|_1=1$ と取れば $y\in V\cap B_X$ で $\|y\|_1=1$ となり、矛盾する。

列の収束で見る限り、$B_{\ell^1}$ の上では弱位相とノルムの位相は区別できない。それでも二つの位相は異なり、その差は点列では捉えられない。代表的な空間をまとめると次のとおりである。可分性は 可分空間 と ℓp空間 の命題「有限列の稠密性」の後の段落、双対は同記事の定理「$\ell^p$ と $c_0$ の双対」による。$(\ell^\infty)^*$ が可分でないのは、可分なら lem-mwt-dual-separable により $\ell^\infty$ が可分になるからである。

$X$$X$ は可分か$X^*$ は可分か$B_X$ の弱位相$B_{X^*}$ の弱スター位相
$\ell^p$($1< p<\infty$)可分可分($\ell^{p/(p-1)}$)距離化できる距離化できる
$c_0$可分可分($\ell^1$)距離化できる距離化できる
$\ell^1$可分可分でない($\ell^\infty$)距離化できない距離化できる
$\ell^\infty$可分でない可分でない距離化できない距離化できない

距離化できる場合の代表的な使い方は、有界列から収束部分列を取り出すことである。$X$ が可分なら $B_{X^*}$ は弱スター位相でコンパクト(Banach–Alaogluの定理)かつ距離化可能なので、$X^*$ の有界列は弱スター収束する部分列をもつ(同記事の命題「可分な場合の部分列」)。

完備でない空間の双対の弱スター位相

$X=c_{00}$(有限個の座標だけが $0$ でない実数列の空間に上限ノルムを入れたもの)とする。$X$ は無限次元で完備でない。このとき $X^*$ 全体の弱スター位相は距離化できる。
実際、$e_k$ を標準基底とすると、各 $x\in X$ は有限和 $x=\sum_kx_ke_k$ なので $\varphi(x)=\sum_kx_k\varphi(e_k)$ である。したがって弱スター位相は、可算個の写像 $\varphi\mapsto\varphi(e_k)$ を連続にする最も粗い位相と一致する。$\varphi,\psi\in X^*$ に対し
$$ d(\varphi,\psi)=\sum_{k=1}^\infty2^{-k}\min\{1,|\varphi(e_k)-\psi(e_k)|\} $$
とおく。$d(\varphi,\psi)=0$ なら $\varphi$ と $\psi$ は基底の上で一致し、$\varphi=\psi$ である。$0<\varepsilon\le1$ について、$d(\varphi,\psi)<2^{-m}\varepsilon$ なら $k\le m$ で $|\varphi(e_k)-\psi(e_k)|<\varepsilon$ となる。逆に $r>0$ に対し $2^{-m}< r/2$ と取ると、$k\le m$ で $|\varphi(e_k)-\psi(e_k)|< r/2$ なら $d(\varphi,\psi)< r/2+2^{-m}< r$ である。よって $d$ の球と弱スター位相の基本近傍は互いに他を含み、$d$ は弱スター位相を定める。thm-mwt-whole の 2 で完備性が必要だったのは、Baire の範疇定理を使うためである。

文献

thm-mwt-whole は Bre11 の Remark 3(p. 60)と Remark 20(p. 76)で述べられ、Exercise 3.8(p. 81)が 1 の証明の誘導である。lem-mwt-dual-separable は Theorem 3.26(p. 73)、thm-mwt-dual-ball と thm-mwt-ball は Theorem 3.28・3.29(p. 74)にあたる。Theorem 3.29 の必要性の証明は本文では省かれ、Exercise 3.24(p. 85)がその誘導になっている。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
閉単位球に制限すること(thm-mwt-ball の 2)$\ell^2$ 全体(ex-mwt-sqrt)弱位相の距離化可能性
$X^*$ の可分性(thm-mwt-ball の 1)$X=\ell^1$(ex-mwt-l1)$B_X$ の弱位相の距離化可能性
$X$ の可分性(thm-mwt-dual-ball の 1)$X=\ell^\infty$$B_{X^*}$ の弱スター位相の距離化可能性(有界列から弱スター収束部分列を取れなくなる例は Banach–Alaogluの定理 にある)
$X$ の完備性(thm-mwt-whole の 2)$X=c_{00}$(ex-mwt-c00)全空間の弱スター位相が距離化できないこと
無限次元(thm-mwt-whole)$X=\mathbb R^d$全空間の弱位相が距離化できないこと(弱位相はノルムの位相と一致する)

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, 2011, §3.2 Remark 3(p. 60)、§3.6:Theorem 3.26(p. 73)、Theorem 3.28・3.29 とその証明、Remark 20(pp. 74–76);第 3 章の演習:Exercise 3.8(p. 81)、Exercise 3.24(p. 85)

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