実スペクトル(real spectrum)とは、可換環 $A$ の素イデアル $\mathfrak{p}$ と剰余環 $A/\mathfrak{p}$ の商体の順序との組の全体に、元が正になる点の集合を開基とする位相を入れた空間 $\operatorname{Sper}A$ である。点は素錐という $A$ の部分集合と同じもので、各点で $A$ の元の符号が分かる。$\operatorname{Sper}A$ はスペクトル空間で、$\operatorname{Sper}\mathbb{R}[x]$ の点は実数 $a$、そのすぐ右と左の点 $a^+,a^-$、$\pm\infty$ で尽くされる。実閉体上の半代数的集合は実スペクトルの構成可能集合と Boole 代数として一対一に対応し、$\operatorname{Sper}\mathbb{C}[x]$ は空である。
実スペクトル(real spectrum)は、可換環 $A$ に対して、素イデアル $\mathfrak p$ と剰余環 $A/\mathfrak p$ の商体の順序との組の全体に、「元が正になる」という条件で位相を入れた空間 $\operatorname{Sper}A$ である。Coste と Roy が、実代数幾何学で Zariski スペクトル $\operatorname{Spec}A$ の代わりをするものとして導入した(BFP24 §1、p. 1)。
$\operatorname{Spec}A$ の点で環の元の「値が $0$ かどうか」が分かるのに対し、$\operatorname{Sper}A$ の点では元の「符号」が分かる。不等式で定義される半代数的集合を扱うには符号が必要である。たとえば $\operatorname{Sper}\mathbb R[x]$ は、実数 $a$ のほかに、「$a$ のすぐ右」「$a$ のすぐ左」「無限大」という点をもつ。これらは、ある多項式の符号が $a$ の右側の小さな区間の上で一定になる、という事情を 1 点として記録したものである。こうして、実数直線の半代数的集合は $\operatorname{Sper}\mathbb R[x]$ の構成可能集合と一対一に対応する。
この記事では、実スペクトルを定義し、素錐という部分集合による言い換えを与え、主定理として $\operatorname{Sper}A$ がスペクトル空間であることを証明する。次に $\operatorname{Sper}\mathbb R[x]$ の点をすべて決定し、実数直線の半代数的集合と構成可能集合の対応を証明する。多変数の対応の定理は所在付きで述べる。
$A$ を単位元をもつ可換環とする。体の順序と正錐については順序体の記事に従う。
$A$ の実スペクトル $\operatorname{Sper}A$ とは、素イデアル $\mathfrak p$ と、剰余環の商体 $k(\mathfrak p):=\operatorname{Frac}(A/\mathfrak p)$ の順序 $\le$ との組 $\alpha=(\mathfrak p,\le)$ の全体である。$a\in A$ の $k(\mathfrak p)$ での像を $a(\alpha)$ と書き、$a(\alpha)>0$ などと符号を言う。$\mathfrak p$ を $\alpha$ の台といい、$\operatorname{supp}\alpha$ と書く。$a_1,\dots,a_n\in A$ について
$$
D(a_1,\dots,a_n):=\{\alpha\in\operatorname{Sper}A\mid a_1(\alpha)>0,\ \dots,\ a_n(\alpha)>0\}
$$
とおき、これらを開基とする位相(スペクトル位相)を $\operatorname{Sper}A$ に入れる。
この定義は BIPP20 §2(p. 4)による。$D(a_1,\dots,a_n)\cap D(b_1,\dots,b_m)=D(a_1,\dots,a_n,b_1,\dots,b_m)$ なので、これらは確かにある位相の開基である。$\operatorname{supp}\colon\operatorname{Sper}A\to\operatorname{Spec}A$ は連続である:$\operatorname{Spec}A$ の基本開集合 $\{\mathfrak p\mid f\notin\mathfrak p\}$ の逆像は、$f(\alpha)\neq0$、すなわち $f^2(\alpha)>0$ となる $\alpha$ の全体 $D(f^2)$ だからである。$\operatorname{supp}$ の像は、商体 $k(\mathfrak p)$ が順序をもつ素イデアルの全体である。
点を部分集合で表すと、位相の議論がしやすくなる。
$\alpha=(\mathfrak p,\le)\in\operatorname{Sper}A$ に $P_\alpha:=\{a\in A\mid a(\alpha)\ge0\}$ を対応させると、$\operatorname{Sper}A$ は、次の 5 条件を満たす部分集合 $P\subset A$(素錐)の全体と一対一に対応する。
要点:素錐 $P$ から台 $\mathfrak p=P\cap(-P)$ が素イデアルとして決まり、$P$ の像が $A/\mathfrak p$ の全順序の正の部分を与える。
$P_\alpha$ が 5 条件を満たすことは、$k(\mathfrak p)$ の順序の性質(正の元の和と積は正、どの元も $\ge0$ か $\le0$、$-1< 0$)と、$P_\alpha\cap(-P_\alpha)=\{a\mid a(\alpha)=0\}=\mathfrak p$ が素イデアルであることから従う。
逆に $P$ が 5 条件を満たすとし、$\mathfrak p:=P\cap(-P)$ とおく。$a,b\in\mathfrak p$ なら 1 から $\pm(a+b)\in P$ なので $a+b\in\mathfrak p$ である。$r\in A$、$a\in\mathfrak p$ とする。3 により $r\in P$ か $-r\in P$ であり、$r\in P$ なら 2 から $ra\in P$ と $r(-a)\in P$、$-r\in P$ なら $(-r)(-a)=ra\in P$ と $(-r)a\in P$ なので、どちらでも $ra\in\mathfrak p$ である。4 から $1\notin\mathfrak p$ であり、5 から $\mathfrak p$ は素イデアルである。
$A/\mathfrak p$ の元 $\bar a$ について「$\bar a\ge0$ $:\Leftrightarrow$ $a\in P$」と定める。$a\in P$、$m\in\mathfrak p$ なら $a+m\in P$ なので、これは代表元によらない。1・2・3 からこの関係は加法と乗法を保つ全順序で、$\bar a\ge0$ かつ $-\bar a\ge0$ なら $a\in\mathfrak p$、すなわち $\bar a=0$ である。整域 $A/\mathfrak p$ の全順序(和と積を保つもの)は、$a/b>0:\Leftrightarrow ab>0$ により商体の順序にただ 1 通りに延びる。こうして $P$ から $\alpha$ が作られ、$P_\alpha=P$ となる。この 2 つの対応は互いに逆である。
最後の主張:$a(\alpha)>0$ は $a(\alpha)\ge0$ かつ $a(\alpha)\neq0$、すなわち $-a(\alpha)< 0$、つまり $-a\notin P_\alpha$ と同じである。$\square$
素錐による定義は BFP24 §3.1(p. 12)で使われている。以下、点 $\alpha$ と素錐 $P_\alpha$ を同一視する。
各点を素錐 $P_\alpha\subset A$ とみれば、$\operatorname{Sper}A$ は冪集合 $\{0,1\}^A$ の部分集合である。$\{0,1\}^A$ に積位相(各 $a\in A$ について「$a\in P$」とその否定を開かつ閉とする位相)を入れ、$\operatorname{Sper}A$ への相対位相を構成可能位相と呼ぶ。$D(a)=\{P\mid -a\notin P\}$ は構成可能位相で開かつ閉であり、スペクトル位相は構成可能位相より粗い。
$A$ を可換環とする。
1。 $\{0,1\}^A$ は Tychonoff の定理によりコンパクトな Hausdorff 空間なので、$\operatorname{Sper}A$ が閉集合であることを示せばよい。prop-rs-prime-cone の 5 条件は、それぞれ有限個の座標だけを見る条件の共通部分である。たとえば 1 は、すべての $a,b\in A$ についての条件「$a\in P$ かつ $b\in P$ かつ $a+b\notin P$ ではない」の共通部分であり、各条件は座標 $a,b,a+b$ だけで決まる開かつ閉な集合である。2・3・4 も同じである。5 は、すべての $a,b$ についての条件「$ab\in P$、$-ab\in P$ が成り立ち、しかも $\{a,-a\}\not\subset P$ かつ $\{b,-b\}\not\subset P$ となる、ということはない」の共通部分で、各条件は座標 $ab,-ab,a,-a,b,-b$ だけで決まる。開かつ閉な集合の共通部分は閉集合なので、$\operatorname{Sper}A$ は閉集合である。
2:準コンパクトな開集合。 基本開集合 $D(a_1,\dots,a_n)$ は構成可能位相で閉集合なので、1 によりこの位相でコンパクトである。スペクトル位相はそれより粗いので、スペクトル位相でも準コンパクトである。よって基本開集合の有限個の和は準コンパクトであり、とくに $\operatorname{Sper}A=D(1)$ は準コンパクトである。逆に準コンパクトな開集合は、基本開集合の和で表したとき有限個で覆えるので、有限個の和である。有限個の和どうしの共通部分は、$D(\vec a)\cap D(\vec b)=D(\vec a,\vec b)$ により再び有限個の和である。基本開集合は定義により開基である。
2:$T_0$。 $P\neq Q$ を素錐とし、$a\in P\setminus Q$ とする(必要なら $P$ と $Q$ を入れ替える)。素錐の条件 3 から $-a\in Q$ であり、$a\notin Q$ なので $a(Q)< 0$、すなわち $Q\in D(-a)$ である。一方 $a(P)\ge0$ なので $P\notin D(-a)$ である。
2:sober。 $Z$ を空でない既約閉集合とする。$Z$ と交わる準コンパクトな開集合 $U$ の全体を $\mathcal U$ とし、族 $\{Z\cap U\}_{U\in\mathcal U}$ を考える。$U_1,\dots,U_n\in\mathcal U$ なら、$Z\cap U_1,\dots,Z\cap U_n$ は既約な $Z$ の空でない開集合なので、その共通部分は空でない(既約空間の空でない開集合は交わる)。$Z$ は スペクトル位相で閉なので構成可能位相でも閉であり、各 $U$ は有限個の基本開集合の和なので構成可能位相で閉である。よって $Z\cap U$ は、1 によりコンパクトな空間の閉集合で、有限交叉性をもつ。したがって $\bigcap_{U\in\mathcal U}(Z\cap U)$ は空でなく、その点 $z$ をとる。$z\in Z$ なので $\overline{\{z\}}\subset Z$ である。$\overline{\{z\}}\neq Z$ なら、点 $y\in Z\setminus\overline{\{z\}}$ と、$y$ を含み $\overline{\{z\}}$ と交わらない基本開集合 $U$ があり($\operatorname{Sper}A\setminus\overline{\{z\}}$ は $y$ を含む開集合である)、$U\in\mathcal U$ だが $z\notin U$ となって $z$ のとり方に反する。よって $Z=\overline{\{z\}}$ であり、$T_0$ なので生成点はただ 1 つである。
以上で、スペクトル空間の定義の 4 条件がすべて確かめられた。$\square$
構成可能位相は、スペクトル空間の定義「constructible 位相」の意味の位相と一致する(準コンパクトな開集合は $D(\vec a)$ の有限個の和で、それとその補集合から生成される位相は、座標ごとの位相と同じものである)。スペクトル空間なので、Hochster の定理により $\operatorname{Sper}A$ はある可換環の素スペクトルと同相になる(スペクトル空間の定理「Hochster の定理」)。また、$\operatorname{Sper}A$ の上の層のトポスはコヒーレントトポスである(コヒーレントトポスの命題「スペクトル空間の層のトポスはコヒーレント」)。閉点の全体は準コンパクトな Hausdorff 空間である(BIPP20 p. 4、BFP24 pp. 1–2)が、この記事では証明しない。
$\operatorname{Sper}\mathbb R[x]$ の点を決定する。$a\in\mathbb R$ について、次の記号を使う。
$\operatorname{Sper}\mathbb R[x]$ の点は、$a$、$a^+$、$a^-$($a\in\mathbb R$)と $+\infty$、$-\infty$ で尽くされ、これらはすべて異なる。閉点は $a$($a\in\mathbb R$)と $\pm\infty$ であり、$a$ は $a^\pm$ の閉包に属する($a^\pm$ は $a$ に特殊化する)。
要点:$\mathbb R(x)$ の順序は、$x$ が実数のどこに「割り込む」か(切断)で決まる。
$\mathbb R[x]$ の素イデアルは $(0)$、$(x-a)$、既約な 2 次式 $q$ の生成する $(q)$ である。$(q)$ の商体は $\mathbb C$ と同型で順序をもたない。$(x-a)$ の商体 $\mathbb R$ の順序はただ 1 つで、点 $a$ を与える。残るのは $\mathbb R(x)$ の順序 $\le$ である。
$\le$ は $\mathbb R$ の上では通常の順序に一致する($\mathbb R$ の正の元は平方なので正)。モニックな既約 2 次式は $(x-u)^2+v^2$($v\neq0$)と書けて正である。よって $f=c\prod_i(x-r_i)^{m_i}\prod_jq_j$ の符号は、$c$ の符号と $x-r_i$ の符号で決まる。$C:=\{r\in\mathbb R\mid r< x\}$ とおく。$r\in C$ と $x-r>0$ は同値であり、$C$ は下に閉じている。
$C=\emptyset$ ならすべての $x-r$ は負で、$t\to-\infty$ での $t-r$ の符号と一致するので、$\le$ は $-\infty$ と同じ符号を多項式に与える。$C=\mathbb R$ なら同様に $+\infty$ である。それ以外なら、$C$ は空でなく上に有界なので $a:=\sup C$ が存在し、$r< a$ なら $r\in C$、$r>a$ なら $r\notin C$ である。$x-a\neq0$ なので $a\in C$($x>a$)か $a\notin C$($x< a$)であり、それぞれ $a^+$、$a^-$ と同じ符号を $x-r$ たちに与える。多項式の符号が決まれば、$f/g>0\Leftrightarrow fg>0$ により $\mathbb R(x)$ の順序は決まる。よって順序は $a^\pm$、$\pm\infty$ のどれかである。異なることは、$x-a$、$x-b$ の符号を比べれば分かる。
特殊化:$a$ を含む基本開集合 $D(f_1,\dots,f_n)$ では $f_i(a)>0$ なので、連続性から $a$ の近くで $f_i>0$ であり、$a^\pm\in D(f_1,\dots,f_n)$ である。よって $a\in\overline{\{a^\pm\}}$ で、$a^\pm$ は閉点でない。閉点であること:$a$ 以外の点は $D((x-a)^2)$ か $D(\pm(x-a))$ に入り、これらは $a$ を含まない。$+\infty$ 以外の点 $\beta$ は、$N$ を十分大きくとると $D(N-x)$ に入るが、$+\infty$ は入らない。$-\infty$ も同様である。$\square$
この記述は、BIPP20 Example 2.1(pp. 5–6)が実代数的数の体の上の有理関数体について与えている、Archimedes 的でない順序の分類($a^\pm$ と $\pm\infty$)と同じ形である。$\operatorname{Sper}\mathbb R[x]$ の閉点の空間は、$\mathbb R$ の両端に $\pm\infty$ を付け加えた閉区間 $[-\infty,+\infty]$ のようにふるまう。点 $a^\pm$ は「$a$ に無限に近い、$a$ の右(左)の点」である。
$\operatorname{Sper}A$ の構成可能集合とは、基本開集合 $D(f)$ から有限個の共通部分・和・補集合で作られる集合のことである。$f=0$ で定まる集合 $\{\alpha\mid f(\alpha)=0\}$ は $D(f^2)$ の補集合なので構成可能である。
$R$ を実閉体とし、$A=R[x_1,\dots,x_n]$ とする。$R^n$ の点 $u$ は、$f\mapsto f(u)$ の核と $R$ の順序によって $\operatorname{Sper}A$ の点を定め、これにより $R^n\subset\operatorname{Sper}A$ とみなす。半代数的集合 $S\subset R^n$ が、多項式の符号条件 $f>0$、$f=0$ の有限個の論理結合 $\Phi$ で定義されているとき、同じ $\Phi$ を $\operatorname{Sper}A$ の点で評価した集合を $\widetilde S$ とする。
$\widetilde S$ は $\Phi$ の選び方によらずに定まり、$S\mapsto\widetilde S$ は、$R^n$ の半代数的集合の Boole 代数から $\operatorname{Sper}R[x_1,\dots,x_n]$ の構成可能集合の Boole 代数への同型である。$\widetilde S\cap R^n=S$ であり、この対応は開集合・閉集合であることを保つ。
この定理は、実閉体上の半代数的集合という幾何学的な対象を、実スペクトルの構成可能集合という環論的な対象と対応させる。$S$ を定める論理式の選び方によらず $\widetilde S$ が決まることが要点であり、これによって半代数的集合の和・共通部分・補集合がそのまま構成可能集合の演算に移る。定理自体の証明はここでは与えず、1 変数の場合に対応を具体的に書き下したものが次の命題である。
これは Bochnak–Coste–Roy『Real Algebraic Geometry』(Springer、1998 年の英語版)の Proposition 7.2.2 と Theorem 7.2.3 である。BFP24 §1(p. 1)は、一般の実閉体の上で、実代数的集合 $V$ の半代数的部分集合 $S$ と、$\widetilde S\cap V=S$ となる構成可能集合 $\widetilde S$ との同一視を Prop. 7.2.2 として引く。BIPP20 §2(p. 4)は、係数を実代数的数に限った場合に、Boole 代数の同型で開・閉を保つことを Theorem 7.2.3 として引く。この記事では証明しない。要になるのは、$\Phi$ と $\Psi$ が $R^n$ の上で同じ集合を定めるなら $\operatorname{Sper}A$ の上でも同じ集合を定める、という点である。1 変数で $R=\mathbb R$ の場合は、thm-rs-line から直接証明できる。
半代数的集合 $S\subset\mathbb R$ について、
$$
\widetilde S=S\cup\{a^+\mid\exists\varepsilon>0,\ (a,a+\varepsilon)\subset S\}\cup\{a^-\mid\exists\varepsilon>0,\ (a-\varepsilon,a)\subset S\}\cup\{\pm\infty\mid\exists T,\ \pm(T,\infty)\subset S\}
$$
が成り立つ。したがって $\widetilde S$ は $S$ だけで決まり、$S\mapsto\widetilde S$ は $\mathbb R$ の半代数的集合の Boole 代数から $\operatorname{Sper}\mathbb R[x]$ の構成可能集合の Boole 代数への同型で、$\widetilde S\cap\mathbb R=S$ を満たす。
要点:$a^+$ で論理式が成り立つことは、$a$ の右の小さな区間の上で成り立つことと同じである。
$\Phi$ を $S$ を定義する論理式とし、$\Phi$ に現れる多項式を $f_1,\dots,f_m$ とする。実数の点 $a$ では $\Phi(a)$ は $a\in S$ と同じである。$0$ でない $f_i$ は $(a,a+\varepsilon)$ の上で符号が一定になる $\varepsilon>0$ をもち、その符号が $f_i(a^+)$ の符号である($f_i=0$ なら両方で $0$)。$\varepsilon$ を $f_1,\dots,f_m$ について共通にとると、符号条件の論理結合 $\Phi$ は、$a^+$ で成り立つことと、$(a,a+\varepsilon)$ のすべての点 $t$ で $\Phi(t)$ が成り立つこと、すなわち $(a,a+\varepsilon)\subset S$ が同値になる。$(a,a+\varepsilon)\not\subset S$ なら、同じ理由で $(a,a+\varepsilon)$ のどの点でも $\Phi$ は成り立たない。よって「$a^+\in\widetilde S$」と「ある $\varepsilon$ で $(a,a+\varepsilon)\subset S$」は同値である。$a^-$、$\pm\infty$ も同じである。thm-rs-line によりこれで全点を調べ終えたので、式が示された。
同型であること:式の右辺は $S$ だけで決まるので、$\widetilde S$ は $\Phi$ によらない。$\Phi\wedge\Psi$、$\neg\Phi$ はそれぞれ $S\cap T$、$\mathbb R\setminus S$ を定義し、評価の集合はそれぞれ $\widetilde S\cap\widetilde T$、補集合になるので、$S\mapsto\widetilde S$ は Boole 代数の準同型である。$\widetilde S\cap\mathbb R=S$ なので単射である。構成可能集合は $D(f)=\widetilde{\{f>0\}}$ から Boole 演算で作られるので全射である。$\square$
開区間 $(0,1)$ では $\widetilde{(0,1)}=(0,1)\cup\{a^\pm\mid0< a< 1\}\cup\{0^+,1^-\}$ である。閉区間では $\widetilde{[0,1]}=\widetilde{(0,1)}\cup\{0,1\}$ となる。$0^+$ は $\widetilde{(0,1)}$ に属するが $0$ は属さず、$0\in\overline{\{0^+\}}$ なので、$\widetilde{(0,1)}$ は閉集合でない。1 点 $\{0\}$ には $\widetilde{\{0\}}=\{0\}$ が対応し、$0^\pm$ は含まれない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 基礎体が実閉体であること | $\mathbb Q$ の上の $\{x^2=2\}$ | 対応 $S\mapsto\widetilde S$ が矛盾なく定まること($\emptyset$ と同じ集合を定める式が 2 点を定める) |
| 環が実の点をもつこと | $\operatorname{Sper}\mathbb C[x]=\emptyset$ | $\operatorname{Spec}$ と同じく空でないこと |
| 台で点が決まること | $\operatorname{Sper}\mathbb R[x]$ の台 $(0)$ の点 | 台の写像 $\operatorname{Sper}A\to\operatorname{Spec}A$ の単射性(ファイバーは無限集合) |
| Hausdorff 性 | $a$ と $a^+$ | 異なる 2 点を交わらない開集合で分けられること |
| 半代数的であること | $\mathbb Z\subset\mathbb R$ | ある構成可能集合 $C$ で $C\cap\mathbb R=\mathbb Z$ となること |
各行を確かめる。1 行目:$x^2-2$ は $\mathbb Q$ に零点をもたないので、$\mathbb Q$ の上では $\{x^2-2=0\}$ も $\{1< 0\}$ も空集合を定める。ところが $\operatorname{Sper}\mathbb Q[x]$ では、台 $(x^2-2)$ の商体 $\mathbb Q(\sqrt2)$ が 2 つの順序をもつので、$\{x^2-2=0\}$ は 2 点からなる(ex-rs-fields の 1)。2 行目:$\mathbb C[x]$ の素イデアルの商体は $\mathbb C$ か $\mathbb C(x)$ で、どちらも $-1=i^2$ を含むので順序をもたない。3・4 行目は thm-rs-line による。$a$ を含む開集合はつねに $a^+$ を含むので、2 点は開集合で分けられない。5 行目:構成可能集合 $C$ は $D(f)$ たちの Boole 結合なので、$C\cap\mathbb R$ は $\{f>0\}$ たちの Boole 結合で半代数的である。$\mathbb Z$ は半代数的でない(半代数的集合の例「反例:整数全体」)。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する