Hahn–Banachの定理(Hahn–Banach theorem)とは、実ベクトル空間の部分空間上で劣線形関数 $p$ に抑えられた線形汎関数を、$p$ に抑えられたまま空間全体へ延長できるという定理であり、交わらない凸集合を閉超平面で分ける分離定理(幾何形)も同じ名で呼ばれる。複素数の場合は実部への帰着で半ノルムに抑えた延長が得られ、ノルム空間では連続線形汎関数をノルムを変えずに延長できる。解析形は Zorn の補題から従い、凸集合のゲージに当てはめると開凸集合との分離やコンパクト凸集合との強い分離が得られる。連続双対空間が点を分離すること、閉凸集合が弱閉であること、稠密性の判定、Banach 極限の存在などがその帰結である。
部分空間の上でだけ定義された線形汎関数を、全体へ延ばしたい場面は多い。有限次元なら基底を延長して値を決めればよいが、そのとき「ある上界を超えない」という条件まで保てるかは自明でない。Hahn–Banach の定理は、劣線形な関数で抑えられているという条件を保ったまま、線形汎関数を空間全体へ延長できることを述べる。
この定理には二つの顔がある。一つは上の延長の主張(解析形)であり、ノルム空間ではノルムを変えない延長を与える。もう一つは、交わらない二つの凸集合を閉超平面で分けられるという主張(幾何形、凸集合の分離定理)である。後者は前者に、凸集合から作る劣線形関数(ゲージ)を当てはめて得られる。
以下、$\mathbb K=\mathbb R$ または $\mathbb C$ とする。延長の主張はまず実ベクトル空間で証明し、複素数の場合は実部へ帰着させる。証明には Zornの補題 を使うので、集合論は選択公理を含む ZFC を前提にする。
実ベクトル空間 $E$ 上の関数 $p\colon E\to\mathbb R$ が劣線形であるとは、次の二つを満たすことをいう。
$$
p(tx)=tp(x)\quad(x\in E,\ t>0),\qquad p(x+y)\le p(x)+p(y)\quad(x,y\in E).
$$
ノルム空間のノルム $\|x\|$ やその正の定数倍は劣線形である。半ノルムも劣線形である。線形汎関数も劣線形だが、劣線形関数は一般に $p(-x)=-p(x)$ を満たさない。たとえば $\mathbb R$ 上の $p(x)=\max\{x,0\}$ は劣線形で、$p(-1)=0\ne-p(1)$ である。最初の条件を $x=0$、$t=2$ で使えば $p(0)=2p(0)$ となり、$p(0)=0$ が従う。
延長の核心は、1 次元ずつ広げる段である。
$p$ を実ベクトル空間 $E$ 上の劣線形汎関数、$G\subset E$ を線形部分空間、$g\colon G\to\mathbb R$ を $g\le p$($G$ 上)を満たす線形汎関数とする。$x_0\in E\setminus G$ なら、$G_1=G+\mathbb Rx_0$ 上の線形汎関数 $g_1$ で、$g$ を延長し $G_1$ 上で $g_1\le p$ を満たすものがある。
$G_1$ の元は $x+tx_0$($x\in G$、$t\in\mathbb R$)と一意に書けるから、$\alpha\in\mathbb R$ を選んで $g_1(x+tx_0)=g(x)+t\alpha$ と定めれば線形な延長になる。条件 $g_1\le p$ を確かめる。$t>0$ のとき、$x$ を $tx$ に取り替えて $t$ で割れば($p$ の正斉次性)、条件は
$$
g(x)+\alpha\le p(x+x_0)\qquad(x\in G)
$$
と同値である。$t<0$ のときは同様に $-t$ で割って
$$
g(y)-\alpha\le p(y-x_0)\qquad(y\in G)
$$
と同値になる。$t=0$ では仮定 $g\le p$ そのものである。したがって
$$
\sup_{y\in G}\{g(y)-p(y-x_0)\}\le\alpha\le\inf_{x\in G}\{p(x+x_0)-g(x)\}
$$
を満たす $\alpha$ を選べればよい。任意の $x,y\in G$ について、劣線形性から
$$
g(x)+g(y)=g(x+y)\le p(x+y)\le p(x+x_0)+p(y-x_0)
$$
なので $g(y)-p(y-x_0)\le p(x+x_0)-g(x)$ である。左辺を $y$ について、右辺を $x$ について動かせば、上限は下限以下である。$G\ne\emptyset$($0\in G$)なので上限と下限はともに有限の実数であり、その間に $\alpha$ がとれる。
$E$ を実ベクトル空間、$p$ を $E$ 上の劣線形汎関数、$G\subset E$ を線形部分空間、$g\colon G\to\mathbb R$ を $G$ 上で $g\le p$ を満たす線形汎関数とする。このとき $E$ 全体で定義された線形汎関数 $f$ で、$G$ 上で $f=g$、かつ $E$ 上で $f\le p$ となるものが存在する。
$\mathcal P$ を、組 $(D,h)$($D$ は $G\subset D$ を満たす $E$ の線形部分空間、$h\colon D\to\mathbb R$ は $g$ を延長する線形汎関数で $D$ 上 $h\le p$)全体の集合とする。$(D_1,h_1)\le(D_2,h_2)$ を「$D_1\subset D_2$ かつ $h_2$ は $h_1$ の延長」で定めると半順序であり、$(G,g)\in\mathcal P$ だから $\mathcal P$ は空でない。
$\mathcal P$ の空でない全順序部分集合 $\{(D_i,h_i)\}_{i\in I}$ をとる。$D=\bigcup_iD_i$ は線形部分空間である。実際 $x\in D_i$、$y\in D_j$ なら全順序性からどちらかが他方を含み、$x+y$ と $tx$ も同じ $D_i$ か $D_j$ に入る。$x\in D_i$ のとき $h(x)=h_i(x)$ と定めると、$x\in D_i\cap D_j$ なら大きい方が小さい方の延長なので $h_i(x)=h_j(x)$ であり、$h$ は矛盾なく定まる。同じ理由で $h$ は線形、$g$ の延長で、$h\le p$ を満たす。よって $(D,h)$ はこの全順序部分集合の上界である。空の全順序部分集合には $(G,g)$ が上界になる。Zornの補題 の記事の定理「鎖の上界から得られる極大元」により、$\mathcal P$ は極大元 $(D,f)$ をもつ。
$D\ne E$ と仮定すると、$x_0\in E\setminus D$ がとれ、lem-hb-one-step により $(D,f)$ より真に大きい $(D+\mathbb Rx_0,f_1)\in\mathcal P$ が得られて極大性に反する。よって $D=E$ であり、$f$ が求める延長である。
延長の一意性は一般には成り立たない。lem-hb-one-step の $\alpha$ の範囲が 1 点とは限らないからである。具体例は後の節で見る。
複素ベクトル空間 $E$ はスカラーを実数に制限すれば実ベクトル空間とみなせる。複素線形な汎関数はその実部で決まり、逆に実線形汎関数から複素線形汎関数を作れる。これが複素数の場合の鍵である。
$E$ を複素ベクトル空間とする。
1:実線形性は明らか。$f(x)=u(x)+iv(x)$($v=\operatorname{Im}f$)と書くと、$f(ix)=if(x)=-v(x)+iu(x)$ だから $u(ix)=\operatorname{Re}f(ix)=-v(x)$、すなわち $v(x)=-u(ix)$ である。
2:$f$ は実線形で $\operatorname{Re}f=u$ である。$f(ix)=u(ix)-iu(-x)=u(ix)+iu(x)=i\bigl(u(x)-iu(ix)\bigr)=if(x)$ なので、$i$ 倍とも交換する。実線形かつ $i$ 倍と交換すれば複素線形である。
3:$|u(x)|=|\operatorname{Re}f(x)|\le|f(x)|$ だから右辺は左辺以下である。逆に $f(x)\ne0$ なら $\theta\in\mathbb R$ を $e^{i\theta}f(x)=|f(x)|$ と選ぶと、$|f(x)|=f(e^{i\theta}x)=u(e^{i\theta}x)$(実数だから実部に等しい)であり、$\|e^{i\theta}x\|=\|x\|$ なので左辺は右辺以下である。連続性は単位球上の有界性と同値である(連続双対空間 の記事の命題「線形汎関数の連続性と双対ノルム」)。
複素数の場合、劣線形関数の代わりに半ノルム($p(\lambda x)=|\lambda|p(x)$ と劣加法性をもつ関数)で抑える形に述べる。
$E$ を $\mathbb K$ 上のベクトル空間、$p$ を $E$ 上の半ノルム、$G\subset E$ を線形部分空間、$g\colon G\to\mathbb K$ を $G$ 上で $|g|\le p$ を満たす線形汎関数とする。このとき $E$ 上の線形汎関数 $f$ で、$G$ 上で $f=g$、かつ $E$ 上で $|f|\le p$ となるものが存在する。
$\mathbb K=\mathbb R$ のとき:半ノルムは劣線形なので、thm-hb-analytic により $f\le p$ を満たす延長 $f$ がある。$-f(x)=f(-x)\le p(-x)=p(x)$ と合わせて $|f|\le p$ である。
$\mathbb K=\mathbb C$ のとき:$E$ と $G$ を実ベクトル空間とみる。$u_0=\operatorname{Re}g$ は $G$ 上の実線形汎関数で、$u_0\le|g|\le p$ を満たす。thm-hb-analytic により、$E$ 上の実線形汎関数 $u$ で $u_0$ を延長し $u\le p$ となるものがある。$f(x):=u(x)-iu(ix)$ とおくと、lem-hb-real-part の 2 により $f$ は複素線形で $\operatorname{Re}f=u$ である。$x\in G$ なら $ix\in G$ なので、lem-hb-real-part の 1 を $g$ に用いて $f(x)=u_0(x)-iu_0(ix)=g(x)$ となり、$f$ は $g$ の延長である。最後に $f(x)\ne0$ なら $e^{i\theta}f(x)=|f(x)|$ となる $\theta$ をとると、
$$
|f(x)|=f(e^{i\theta}x)=u(e^{i\theta}x)\le p(e^{i\theta}x)=p(x)
$$
である。$f(x)=0$ なら $|f(x)|\le p(x)$ は $p\ge0$ から明らか。
複素数の場合の証明で「実部への帰着」が使うのは、複素線形性が「実線形かつ $i$ 倍と交換する」と言い換えられることと、半ノルムが $|\lambda|=1$ の回転で値を変えないことだけである。劣線形関数 $p$ で抑える形($\operatorname{Re}f\le p$)も、実線形汎関数の段階までは同じに進む。
以下、$X$ を $\mathbb K$ 上のノルム空間、$X^*$ をその連続双対空間とする(連続双対空間)。部分空間 $G$ には $X$ のノルムを制限して入れ、$g\in G^*$ のノルムを $\|g\|=\sup\{|g(x)|:x\in G,\ \|x\|\le1\}$ とする。
$G\subset X$ を線形部分空間、$g\in G^*$ とする。このとき $f\in X^*$ で、$G$ 上で $f=g$、かつ $\|f\|=\|g\|$ となるものが存在する。
$p(x)=\|g\|\,\|x\|$ は $X$ 上の半ノルムで、$G$ 上で $|g(x)|\le\|g\|\,\|x\|=p(x)$ である。thm-hb-seminorm により $|f|\le p$ を満たす延長 $f$ がある。これは $\|f\|\le\|g\|$ を意味し、$f$ は連続である。逆に $f$ は $g$ の延長なので $\|f\|\ge\|g\|$ である。
連続双対空間 の記事の定理「点でノルムを実現する汎関数」と系「双対ノルムによる元のノルムの復元」は、この系を 1 次元部分空間 $\mathbb Kx_0$ と $g(\lambda x_0)=\lambda\|x_0\|$ に当てはめたものである。とくに各 $x\in X$ について
$$
\|x\|=\max_{f\in X^*,\ \|f\|\le1}|f(x)|
$$
であり、上限は実際に達成される($x\ne0$ なら上の $f$、$x=0$ なら $f=0$ で達成)。双対ノルムの定義 $\|f\|=\sup_{\|x\|\le1}|f(x)|$ の上限は一般には達成されないので、二つの式の役割は対称でない。この非対称性は 反射的Banach空間 の特徴づけで再び現れる。
同じ考え方で、閉部分空間とその外の点も汎関数で分けられる。
$M\subset X$ を閉線形部分空間、$x_0\in X\setminus M$ とし、$d=\inf_{m\in M}\|x_0-m\|$ とおく。このとき $d>0$ であり、$f\in X^*$ で
$$
f|_M=0,\qquad \|f\|=1,\qquad f(x_0)=d
$$
を満たすものが存在する。
$M$ は閉で $x_0\notin M$ だから、$x_0$ のある球は $M$ と交わらず $d>0$ である。$G=M+\mathbb Kx_0$ 上で $g(m+\lambda x_0)=\lambda d$ と定める(表し方は一意なので well-defined で線形)。$\lambda\ne0$ なら $-m/\lambda\in M$ なので
$$
\|m+\lambda x_0\|=|\lambda|\,\bigl\|x_0-(-m/\lambda)\bigr\|\ge|\lambda|d=|g(m+\lambda x_0)|
$$
であり、$\lambda=0$ でも $|g(m)|=0$ だから $\|g\|\le1$ である。$\|x_0-m_n\|\to d$ となる $m_n\in M$ をとると $g(x_0-m_n)=d$ なので $\|g\|\ge d/\|x_0-m_n\|\to1$、よって $\|g\|=1$ である。cor-hb-norm-extension で $g$ をノルム $1$ のまま延長したものが $f$ である。
線形部分空間 $L\subset X$ が $X$ で稠密であるための必要十分条件は、$L$ 上で $0$ になる $f\in X^*$ が $f=0$ に限ることである。
$L$ が稠密で $f|_L=0$ なら、$f$ の連続性から $f=0$ である。逆に $L$ が稠密でなければ、閉包 $\overline L$ は閉線形部分空間で $\overline L\ne X$ である。$x_0\notin\overline L$ に cor-hb-distance を用いれば、$\overline L$ 上で $0$ で $f(x_0)\ne0$ となる $f\in X^*$ が得られる。
$X=\mathbb R^2$ に $\|(x,y)\|_1=|x|+|y|$ を入れ、$G=\mathbb R(1,0)$、$g(t,0)=t$ とする。$\|g\|=1$ である。$G$ 上で $g$ に一致する線形汎関数は $f_c(x,y)=x+cy$($c\in\mathbb R$)の形で、
$$
\|f_c\|=\sup_{|x|+|y|\le1}|x+cy|=\max\{1,|c|\}
$$
である($|x+cy|\le\max\{1,|c|\}(|x|+|y|)$ で、$(1,0)$ と $(0,1)$ で等号)。したがって $|c|\le1$ のすべての $f_c$ がノルムを保つ延長である。一方 $\|(x,y)\|_\infty=\max\{|x|,|y|\}$ を入れると $\|f_c\|=1+|c|$ なので、ノルムを保つ延長は $f_0$ だけになる。延長の一意性はノルムの形に依存する。
Hahn–Banach の定理が具体的な式では書けない汎関数を与える典型例が、有界数列の「極限」の延長である。
実数値の有界数列の空間 $\ell^\infty$(上限ノルム)上の線形汎関数 $L$ で、次を満たすものが存在する。
$p(x)=\limsup_{n\to\infty}\frac1n(x_1+\cdots+x_n)$ とおくと、上極限の性質から $p$ は劣線形である。収束列のなす部分空間 $c$ 上で $g(x)=\lim_nx_n$ とすると、Cesàro 平均も同じ極限に収束するので $g=p$($c$ 上)である。thm-hb-analytic により $g$ を延長し $L\le p$ を満たす線形汎関数 $L$ がある。これで 1 が成り立つ。次に 3 を示す。$y=Sx-x$ の部分和は $y_1+\cdots+y_n=x_{n+1}-x_1$ だから、$|x_{n+1}-x_1|/n\le2\|x\|_\infty/n\to0$ より $p(y)=p(-y)=0$ である。よって $L(y)\le0$ かつ $-L(y)=L(-y)\le0$ となり、$L(Sx)=L(x)$ である。
2 を示す。平均は項の上限以下なので $p(z)\le\sup_nz_n$ である。$k$ を固定すると 3 から $L(x)=L(S^kx)\le p(S^kx)\le\sup_{n>k}x_n$ である。$k\to\infty$ として $L(x)\le\limsup_nx_n$。$-x$ に用いて $L(x)\ge\liminf_nx_n$。$x_n\ge0$ なら $L(x)\ge\liminf x_n\ge0$ である。$|L(x)|\le\sup_n|x_n|$ と定数列 $(1,1,\ldots)$ での値 $1$ から $\|L\|=1$。$\square$
$(1,0,1,0,\ldots)$ と $(0,1,0,1,\ldots)$ は互いのずらしで、和は定数列 $1$ だから、どの Banach 極限でも値は $1/2$ である。他方、この $L$ は $\ell^\infty$ の元の具体的な式としては与えられていない。Zorn の補題による延長は、このように存在だけを保証する。
この節では実数上の空間で述べる。複素数の場合は節の終わりで扱う。
$E$ を実数上の位相ベクトル空間とする。$0$ でない連続線形汎関数 $f$ と $\alpha\in\mathbb R$ に対し、$H=[f=\alpha]=\{x\in E:f(x)=\alpha\}$ を閉超平面という。部分集合 $A,B\subset E$ について、
$f,\alpha$ を $-f,-\alpha$ に替えると $A$ と $B$ の役割が入れ替わるので、分離・強い分離は $A$ と $B$ について対称な関係である。連続性を課すのは、$[f=\alpha]$ が閉集合になるためである。連続でない線形汎関数の超平面は閉でなく、ノルム空間ではむしろ稠密になる(超平面 の記事の命題「線形超平面は閉か稠密か」)。
凸集合から劣線形関数を作るのがゲージである。
$E$ を実数上の位相ベクトル空間、$C\subset E$ を $0$ を含む開凸集合とし、
$$
p_C(x)=\inf\{t>0:x\in tC\}\qquad(x\in E)
$$
とおく。このとき
凸集合 $C\ni0$ の Minkowski 汎関数の正の斉次性・劣加法性と、包含 $\{p_C<1\}\subset C$ は、Minkowski汎関数 の記事の命題「凸集合の Minkowski 汎関数の性質」の 1・2・3 で、位相を使わずに示されている。同じ命題の 4 により、$p_C$ が有限値であることは $C$ が吸収的であること(各 $x$ にある $t>0$ で $x\in tC$)と同値である。ここでは位相を使う部分だけを示す。
1:$x$ を固定すると $s\mapsto sx$ は連続で $0\cdot x=0\in C$、$C$ は開だから、十分小さい $s>0$ で $sx\in C$、すなわち $x\in s^{-1}C$ である。よって $C$ は吸収的で $p_C$ は有限値であり、上の命題と合わせて劣線形である。
2:$x\in C$ なら、$s\mapsto sx$ の $s=1$ での連続性と $C$ が開であることから、ある $\varepsilon>0$ で $(1+\varepsilon)x\in C$ である。よって $p_C(x)\le1/(1+\varepsilon)<1$。逆向きの包含 $\{p_C<1\}\subset C$ は上の命題の 3 である。
3:$x\ne0$ と $0< s< r$ について $sx/\|x\|\in C$ なので $p_C(x)\le\|x\|/s$。$s\to r$ とする。$x=0$ では $p_C(0)=0$。
$E$ を実数上の位相ベクトル空間、$C\subset E$ を空でない開凸集合、$x_0\notin C$ とする。このとき連続線形汎関数 $f$ で、すべての $x\in C$ について $f(x)< f(x_0)$ となるものが存在する。
$c_0\in C$ をとり、$D=C-c_0$、$z_0=x_0-c_0$ とおく。$D$ は $0$ を含む開凸集合で $z_0\notin D$ だから、lem-hb-gauge の 2 により $p_D(z_0)\ge1$ であり、特に $z_0\ne0$ である。$G=\mathbb Rz_0$ 上で $g(tz_0)=t$ とおくと、$t>0$ なら $g(tz_0)=t\le tp_D(z_0)=p_D(tz_0)$、$t\le0$ なら $g(tz_0)\le0\le p_D(tz_0)$ なので $g\le p_D$ である。thm-hb-analytic により、$g$ を延長し $f\le p_D$ を満たす線形汎関数 $f$ がある。
$f$ の連続性:$x\in D$ なら $f(x)\le p_D(x)<1$、$x\in-D$ なら $f(x)=-f(-x)>-1$ だから、$D\cap(-D)$ 上で $|f|<1$ である。$D\cap(-D)$ は $0$ の開近傍なので、$\varepsilon>0$ に対し $\varepsilon(D\cap(-D))$ 上で $|f|<\varepsilon$ となり、$f$ は $0$ で連続である。線形写像は $0$ で連続なら連続である(位相ベクトル空間 の記事の定理「線形写像の原点での判定」)。
最後に $x\in C$ なら $f(x)-f(c_0)=f(x-c_0)\le p_D(x-c_0)<1=f(z_0)=f(x_0)-f(c_0)$ であり、$f(x)< f(x_0)$ を得る。
$E$ を実数上の位相ベクトル空間、$A,B\subset E$ を空でなく互いに交わらない凸集合とし、$A$ は開集合とする。このとき $A$ と $B$ を分離する閉超平面が存在する。さらに $f$ と $\alpha$ を $f(a)<\alpha\le f(b)$($a\in A$、$b\in B$)となるように選べる。
$C=A-B=\{a-b:a\in A,\ b\in B\}$ とおく。$C$ は凸であり($(1-t)(a-b)+t(a'-b')=\bigl((1-t)a+ta'\bigr)-\bigl((1-t)b+tb'\bigr)$)、$C=\bigcup_{b\in B}(A-b)$ は開集合の和なので開であり、$A\cap B=\emptyset$ から $0\notin C$ である。lem-hb-point-open を $x_0=0$ に用いると、連続線形汎関数 $f$ で $f(a-b)< f(0)=0$、すなわち $f(a)< f(b)$($a\in A$、$b\in B$)となるものがある。$f\ne0$ である。$\alpha=\sup_Af$ とおくと $\alpha\le\inf_Bf$ である。$A$ は開で $f\ne0$ だから、$a\in A$ に対し $f(v)>0$ となる $v$ をとれば十分小さい $s>0$ で $a+sv\in A$、$f(a+sv)>f(a)$ となる。よって上限 $\alpha$ は $A$ 上で達成されず、$f(a)<\alpha$ である。
ノルム空間では、一方がコンパクトなら閉集合との間に「すき間」を取れる。
$X$ を実ノルム空間、$A,B\subset X$ を空でなく互いに交わらない凸集合とし、$A$ は閉集合、$B$ はコンパクトとする。このとき $A$ と $B$ を強く分離する閉超平面が存在する。
$C=A-B$ は凸で $0\notin C$ である。$C$ は閉である:$a_n-b_n\to z$($a_n\in A$、$b_n\in B$)とすると、$B$ はコンパクトな距離空間の部分集合なので部分列で $b_{n_k}\to b\in B$ となり、$a_{n_k}=(a_{n_k}-b_{n_k})+b_{n_k}\to z+b$ である。$A$ は閉なので $z+b\in A$、すなわち $z\in C$ である。よってある $r>0$ で開球 $U=\{\|x\|< r\}$ は $C$ と交わらない。thm-hb-first-geometric を開凸集合 $U$ と凸集合 $C$ に用いると、$0$ でない $f\in X^*$ と $\beta$ で $f(u)<\beta\le f(c)$($u\in U$、$c\in C$)となるものがある。$\sup_Uf=r\|f\|$ なので、$a\in A$、$b\in B$ に対し $f(a)-f(b)\ge r\|f\|$ である。$\varepsilon=r\|f\|/2>0$ とし、$\alpha$ を $\sup_Bf+\varepsilon\le\alpha\le\inf_Af-\varepsilon$ と選べば($\sup_Bf$ はコンパクト性から有限)、$[f=\alpha]$ は $B$ と $A$ を強く分離する。
$X$ を実ノルム空間、$C\subset X$ を空でない閉凸集合、$x_0\notin C$ とする。このとき $f\in X^*$ で $\sup_{x\in C}f(x)< f(x_0)$ となるものがある。したがって空でない閉凸集合は、それを含む閉半空間 $\{f\le\alpha\}$($f\in X^*$、$f\ne0$)全体の共通部分に等しい。
thm-hb-second-geometric を $A=C$、$B=\{x_0\}$ に用いると、$f(x_0)<\inf_Cf$ となる $f\in X^*$ が得られる(証明中の向き)。$-f$ に替えればよい。後半:$C$ を含む閉半空間の共通部分は $C$ を含み、$x_0\notin C$ は前半の $f$ と $\alpha=\sup_Cf$ の半空間に入らない。
$X$ 上の弱位相 $\sigma(X,X^*)$ を、すべての $f\in X^*$ を連続にする最も粗い位相とする。上の系の $x_0$ には弱開近傍 $\{x:f(x)>\sup_Cf\}$ があって $C$ と交わらないから、ノルム位相で閉じた凸集合は弱位相でも閉じている(Bre11 Theorem 3.7、p. 60)。凸性を外すとこれは成り立たない。たとえば $\ell^2$ の単位球面はノルム閉だが、正規直交列 $e_n$ が $0$ に弱収束する(連続双対空間 の記事の例「弱収束とノルム収束の違い」)ので弱閉でない。
複素数の場合:複素ノルム空間(複素位相ベクトル空間)$X$ は、スカラーを実数に制限して実ノルム空間(実位相ベクトル空間)とみなせる。この節の定理で得た実連続線形汎関数 $u$ は、lem-hb-real-part により $u=\operatorname{Re}f$ となる複素線形汎関数 $f(x)=u(x)-iu(ix)$ をもち、$x\mapsto ix$ が連続なので $f$ も連続である。したがって複素数の場合も、各定理は $f$ を $\operatorname{Re}f$ に置き換えた形で成り立つ。たとえば cor-hb-closed-convex は $\sup_C\operatorname{Re}f<\operatorname{Re}f(x_0)$ となる。
thm-hb-analytic、thm-hb-first-geometric、thm-hb-second-geometric の仮定を一つずつ外す。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $p$ の劣加法性 | $\mathbb R^2$、$p(x,y)=\min\{\lvert x\rvert,\lvert y\rvert\}$、$G=\mathbb R(1,1)$、$g(t,t)=t$ | $p$ で抑えた線形な延長の存在 |
| 一方の凸性(第二幾何形) | $\mathbb R^2$ の単位円周 $A$ と $B=\{0\}$ | 閉超平面による分離 |
| 一方が開(第一幾何形) | $\ell^2$ の $A=c_{00}$ と $B=\{x_0\}$、$x_0=(1/n)_n$ | 閉超平面による分離 |
| $A$ が閉(第二幾何形) | 同じ $A=c_{00}$、$B=\{x_0\}$ | 閉超平面による分離(強い分離も) |
| $B$ のコンパクト性 | $\mathbb R^2$ の $A=\{x>0,\ xy\ge1\}$、$B=\{y\le0\}$ | 強い分離 |
各行が本当に反例になっていることを確かめる。
1 行目:$p$ は正斉次だが、$p(1,0)+p(0,1)=0<1=p(1,1)$ なので劣加法的でない。$G$ 上で $g(t,t)=t\le\lvert t\rvert=p(t,t)$ である。延長は $f(x,y)=ax+by$($a+b=1$)の形だが、$f\le p$ なら $\pm a=f(\pm1,0)\le p(\pm1,0)=0$ から $a=0$、同様に $b=0$ となり $a+b=1$ に反する。
2 行目:$A$ はコンパクトで $B$ は凸だが、$A$ は凸でない。$0$ でない線形汎関数 $f$ は $f(0)=0$ で、$A$ 上で $\pm\|f\|$ の値($\|f\|$ はユークリッドノルムの双対ノルム)をとる。$f\le\alpha$ が $A$ 上、$f\ge\alpha$ が $B$ 上なら $\|f\|\le\alpha\le0$ となり矛盾する。逆向き($f\ge\alpha$ が $A$ 上)も同様に $0\le\alpha\le-\|f\|$ で矛盾する。
3・4 行目:$c_{00}$(有限個を除いて $0$ の数列)は凸で、閉でも開でもない。$x_0\in\ell^2\setminus c_{00}$ である。連続な $f$ が $c_{00}$ 上で上に(または下に)有界なら、$c_{00}$ が部分空間であることから $c_{00}$ 上で $f=0$ であり、$c_{00}$ の稠密性から $f=0$ となる。よって $A$ と $B$ を分離する閉超平面はない。第二幾何形では $B$ はコンパクトで凸、$A$ は凸だが閉でない。
5 行目:$A$ は凸関数 $1/x$($x>0$)のグラフの上側で閉凸、$B$ は閉凸、互いに交わらない。$f(x,y)=ax+by$ が $B$ 上で上に有界なら、$(t,0)\in B$($t\in\mathbb R$)から $a=0$、$(0,-t)\in B$($t>0$)から $b\ge0$ である。すると $\sup_Bf=0=\inf_Af$($(x,1/x)$ で $x\to\infty$)となり、すき間 $\varepsilon>0$ はとれない。$B$ はコンパクトでない。
解析形は「部分空間で決めた汎関数を、上界を保ったまま全体へ」という場面で使う。ノルムを保つ延長(cor-hb-norm-extension)から、連続双対空間が点を分離すること、二重双対への評価写像が等長であること(連続双対空間 の記事の定理「評価写像は等長埋め込み」)が従う。部分空間の稠密性を示すには、その上で消える連続線形汎関数が $0$ だけであることを確かめればよい(cor-hb-dense)。
幾何形は凸集合を半空間で記述する道具である。閉凸集合は閉半空間の共通部分であり、弱位相でも閉じている。この事実は 反射的Banach空間 で有界閉凸集合が弱コンパクトであることを示すときに使い、局所凸空間での分離は Krein–Milmanの定理 の証明の中心になる。
証明は Zorn の補題に依存する。Banach 極限のように、得られる汎関数は具体的な式をもたないことが多い。実ベクトル空間での解析形・幾何形とその系は Bre11 §§1.1–1.2(Theorem 1.1、pp. 1–3、Corollaries 1.2–1.4、pp. 3–4、Lemmas 1.2–1.3 と Theorems 1.6–1.7、pp. 5–7、Corollary 1.8、p. 8)にある。
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