対角行列(diagonal matrix)とは、正方行列のうち対角成分 $a_{11},\dots,a_{nn}$ 以外の成分がすべて $0$ のもの $\operatorname{diag}(d_1,\dots,d_n)$ のことで、各座標軸の方向を $d_i$ 倍するだけの線形写像を表す。対角行列どうしの和・積・冪・多項式は対角成分ごとの計算になり、左から掛けると行ごと、右から掛けると列ごとの倍率の変更になる。固有値は対角成分で、標準基底が固有ベクトルの基底になる。対角成分が相異なる対角行列と可換な行列は対角行列に限り、しかも多項式で書ける。2 つの対角行列が相似であることは、対角成分が重複度こめて並べ替えで一致することと同値であり、行列を対角行列に直す対角化の基礎になる。
行列 $D=\begin{pmatrix}2&0\\0&3\end{pmatrix}$ でベクトル $\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}$ を移すと $\begin{pmatrix}2x\\3y\end{pmatrix}$ になる。$x$ 座標は $2$ 倍、$y$ 座標は $3$ 倍されるだけで、2 つの座標は互いに混ざらない。このように対角線の外の成分がすべて $0$ の正方行列を 対角行列 という。対角行列どうしの和・積・冪は対角成分ごとの計算で済み、固有値と固有ベクトルは見ただけでわかる。そのため、一般の行列 $A$ をうまい基底で見て対角行列に直すこと(対角化)が、行列の冪や線形微分方程式を計算する基本の方法になる。この記事では、対角行列の定義と演算、固有値と固有空間、どんな行列が対角行列と可換になるか、2 つの対角行列がいつ相似になるかを証明し、対角行列に関するよくある思い込みを反例で確かめる。
以下、$K$ は体とし、$K$ の元を成分とする $n$ 次正方行列の全体を $M_n(K)$、$m\times n$ 行列の全体を $M_{m,n}(K)$ と書く。$K^n$ の元は列ベクトルとし、$e_1,\dots,e_n$ を標準基底($e_i$ は第 $i$ 成分だけが $1$ でほかが $0$)とする。
$A=(a_{ij})\in M_n(K)$ の成分 $a_{11},a_{22},\dots,a_{nn}$ を $A$ の 対角成分 という。$i\ne j$ ならば $a_{ij}=0$ であるとき、$A$ を 対角行列(diagonal matrix)という。対角成分が $d_1,\dots,d_n$ の対角行列を
$$
\operatorname{diag}(d_1,\dots,d_n)=\begin{pmatrix}d_1&&&\\&d_2&&\\&&\ddots&\\&&&d_n\end{pmatrix}
$$
と書く(空白の成分は $0$)。対角成分がすべて等しい対角行列 $\operatorname{diag}(c,\dots,c)=cI_n$ を スカラー行列 という。
対角成分のいくつかが $0$ でもよい。零行列 $O$ と単位行列 $I_n$ は対角行列であり、どちらもスカラー行列である。定義は Axl24 5.48(§5D、p. 163)、Bee15 Section SD の Definition DIM(p. 314)と同じである。対角行列は上三角行列でも下三角行列でもあり、逆に上三角かつ下三角の行列は対角行列である。また対角行列は転置行列をとっても変わらない対称行列である。
$D=\operatorname{diag}(d_1,\dots,d_n)$ の $(i,j)$ 成分は、Kronecker のデルタ($i=j$ なら $1$、$i\ne j$ なら $0$)$\delta_{ij}$ を使って $d_i\delta_{ij}$ と書ける。このことから $De_j=d_je_j$、すなわち $D$ の第 $j$ 列は $d_je_j$ である。
対角行列 $\operatorname{diag}(d_1,\dots,d_n)$ が表す線形写像は、第 $i$ 座標軸の方向を $d_i$ 倍するだけの写像であり、座標どうしが互いに影響しない。そのため $n$ 次元の問題が $n$ 個の 1 次元の問題(数の掛け算)に分かれる。冪 $D^k$ は各座標を $d_i^k$ 倍するだけであり、方程式 $Dx=b$ は $d_ix_i=b_i$ を 1 つずつ解けばよい。一般の行列を扱う多くの方法は、「基底を取り替えて対角行列に直す」か「対角行列に近い形(三角行列・Jordan標準形)に直す」ことを目指している。ただし、対角行列であることは基底の選び方による性質であり、同じ線形写像でも基底を変えれば対角行列でなくなる。
$D=\operatorname{diag}(2,-1,3)$、$A=\begin{pmatrix}1&2&3\\4&5&6\\7&8&9\end{pmatrix}$ とすると
$$
D^{5}=\operatorname{diag}(32,-1,243),\qquad DA=\begin{pmatrix}2&4&6\\-4&-5&-6\\21&24&27\end{pmatrix},\qquad AD=\begin{pmatrix}2&-2&9\\8&-5&18\\14&-8&27\end{pmatrix}
$$
である。$DA$ は $A$ の各行に $2,-1,3$ を掛けたもの、$AD$ は $A$ の各列に $2,-1,3$ を掛けたものであり(prop-dm-operations の 2)、$DA\ne AD$ である。$\det D=-6\ne0$ なので $D$ は正則で $D^{-1}=\operatorname{diag}(1/2,-1,1/3)$ である(正則行列 の記事の例「対角行列」)。
$A=\begin{pmatrix}1&1\\0&2\end{pmatrix}$ は対角行列でないが、固有ベクトル $(1,0)^{\top}$(固有値 $1$)、$(1,1)^{\top}$(固有値 $2$)を並べた $P=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}$ について
$$
P^{-1}AP=\begin{pmatrix}1&-1\\0&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&1\\0&2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&0\\0&2\end{pmatrix}
$$
となる。したがって $A^k=P\operatorname{diag}(1,2^k)P^{-1}=\begin{pmatrix}1&2^k-1\\0&2^k\end{pmatrix}$ である。逆に、対角行列 $\operatorname{diag}(1,2)$ を $P$ で共役にした $PDP^{-1}=A$ は対角行列でない。対角行列であることは相似で保たれない。
$N=\begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix}$ は $N^2=O$ を満たす。$N$ がある対角行列 $D$ に相似なら、$D^2$ は $N^2=O$ に相似なので $D^2=O$ であり、prop-dm-operations の 1 から $D$ の対角成分の 2 乗がすべて $0$、したがって $D=O$、$N=PDP^{-1}=O$ となって矛盾する。$N$ の固有多項式は $x^2$ で、$K$ 上で 1 次式の積に分解している。この例は「固有多項式が 1 次式の積に分解する」を満たすが「対角行列に相似」を満たさないことを示す(対角化 の記事の系「冪零行列は零行列でなければ対角化できない」)。
$D=\operatorname{diag}(1,1,2)$ と $D'=\operatorname{diag}(1,2,2)$ は、固有値の集合がともに $\{1,2\}$ で、どちらも $(D-I)(D-2I)=O$ を満たす(最小多項式(線形代数) が同じ $(x-1)(x-2)$)。しかし跡が $4$ と $5$ で異なるので相似でない(相似な行列の跡は等しい。固有値 の記事の命題「固有多項式の相似不変性」)。この例は「固有値の集合と最小多項式が等しい」を満たすが「相似である」を満たさない。相似かどうかは、対角成分を重複度こめて比べて決まる(thm-dm-similar)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 対角成分が相異なる | $D=I_2$ | $D$ と可換な行列は対角行列に限る(thm-dm-commutant) |
| 基底を取り替えない | ex-dm-diagonalizable の $PDP^{-1}$ | 対角行列であること(相似で保たれない) |
| 幾何重複度と代数重複度が一致 | $\begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix}$ | 固有多項式が 1 次式の積なら対角行列に相似 |
| 重複度まで比べる | $\operatorname{diag}(1,1,2)$ と $\operatorname{diag}(1,2,2)$ | 固有値の集合と最小多項式が同じなら相似 |
| 対角行列どうし | $\operatorname{diag}(1,2)$ と $\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}$ | 積が可換であること |
最後の行は、$\operatorname{diag}(1,2)\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&1\\2&0\end{pmatrix}$ と $\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}\operatorname{diag}(1,2)=\begin{pmatrix}0&2\\1&0\end{pmatrix}$ が異なることによる。対角行列どうしは可換だが(prop-dm-operations)、片方が対角行列でなければ一般に可換でない。
以下 $D=\operatorname{diag}(d_1,\dots,d_n)$、$D'=\operatorname{diag}(d_1',\dots,d_n')$ とする。
2 から示す。$D$ の $(i,k)$ 成分は $d_i\delta_{ik}$ なので
$$
(DA)_{ij}=\sum_{k=1}^n d_i\delta_{ik}a_{kj}=d_ia_{ij},\qquad (BD)_{ij}=\sum_{k=1}^n b_{ik}d_k\delta_{kj}=b_{ij}d_j
$$
である。これは主張そのものである。
1:和とスカラー倍は成分ごとの演算なので明らかである。2 を $A=D'$ に当てはめると、$DD'$ の $(i,j)$ 成分は $d_i\cdot d_j'\delta_{ij}$ であり、これは $i=j$ のとき $d_id_i'$、$i\ne j$ のとき $0$ である。$K$ の積は可換なので $DD'=D'D$ である。$D^k$ は $k$ についての帰納法で得られ($D^0=I_n=\operatorname{diag}(1,\dots,1)$)、$f(x)=\sum_kc_kx^k$ なら和とスカラー倍の規則により $f(D)=\sum_kc_kD^k=\operatorname{diag}\bigl(\sum_kc_kd_1^k,\dots\bigr)=\operatorname{diag}(f(d_1),\dots,f(d_n))$ である。
3:対角行列は三角行列なので、行列式は対角成分の積である(行列式 の記事の命題「三角行列と区分三角行列の行列式」)。跡は定義から対角成分の和である。正則性の判定と逆行列は 正則行列 の記事の例「対角行列」にある。$\square$
1 から、$n$ 次の対角行列の全体は和と積について閉じた可換な部分環であり、$D\mapsto(d_1,\dots,d_n)$ によって成分ごとの演算をもつ $K^n$ と同じ構造になる。$n\ge2$ なら $M_n(K)$ 自体は可換でない(行列環 の記事の命題「行列環が可換になる場合」)ので、対角行列は非可換な行列の世界の中の可換な部分である。2 は、行列に左から対角行列を掛けると「行ごとの倍率の変更」、右から掛けると「列ごとの倍率の変更」になることを言っている。
1 から、多項式 $f$ について $f(D)=O$ となるのは $f(d_1)=\cdots=f(d_n)=0$ のときである。したがって $D$ を零にする最低次の最高次係数 $1$ の多項式(最小多項式)は、対角成分に現れる相異なる値 $c_1,\dots,c_k$ について $(x-c_1)\cdots(x-c_k)$ である(最小多項式(線形代数) の記事の定理「対角化の判定」の証明の前半)。重複する値は 1 回だけ数えることに注意する(ex-dm-multiset)。
$D$ の固有値は $d_1,\dots,d_n$ に現れる値であり、固有多項式は $(x-d_1)\cdots(x-d_n)$ である。$c\in K$ について
$$
\ker(D-cI_n)=\operatorname{span}\{e_i:\ d_i=c\}
$$
であり、$c$ の幾何重複度(固有空間の次元)と代数重複度は、ともに $d_i=c$ となる $i$ の個数に等しい。
$D-cI_n=\operatorname{diag}(d_1-c,\dots,d_n-c)$ なので、$x\in K^n$ について $(D-cI_n)x=0$ は $(d_i-c)x_i=0$($i=1,\dots,n$)と同値である。$d_i\ne c$ なら $x_i=0$ であり、$d_i=c$ なら $x_i$ は任意である。よって $\ker(D-cI_n)$ は $d_i=c$ となる $e_i$ の張る空間であり、その次元は $d_i=c$ となる $i$ の個数である。とくに $\ker(D-cI_n)\ne\{0\}$、すなわち $c$ が固有値であることは、$c$ がある $d_i$ に等しいことと同値である。固有多項式は $\det(xI_n-D)=\det\operatorname{diag}(x-d_1,\dots,x-d_n)=\prod_i(x-d_i)$(prop-dm-operations の 3)である。$d_i=c$ となる $i$ の個数を $m$ とすると $\prod_i(x-d_i)=(x-c)^m g(x)$、$g(x):=\prod_{d_i\ne c}(x-d_i)$ で、$g(c)\ne0$ なので $x-c$ は $g$ を割り切らない(因数定理)。よって $c$ の根としての重複度は $m$ である。$\square$
とくに標準基底 $e_1,\dots,e_n$ は $D$ の固有ベクトルからなる基底である。逆に、線形変換がある基底の各ベクトルを定数倍するなら、その基底に関する表現行列は対角行列である。これが「対角化可能 = 固有ベクトルからなる基底をもつ」の意味である(固有値 の記事の定義「対角化可能な線形変換」、Axl24 5.55、§5D、p. 165)。
$A=(a_{ij})\in M_n(K)$ について、次は同値である。
prop-dm-operations の 2 により $(AD)_{ij}=a_{ij}d_j$、$(DA)_{ij}=d_ia_{ij}$ である。よって $AD=DA$ は、すべての $(i,j)$ について $(d_i-d_j)a_{ij}=0$ であることと同値である。$K$ は体なので、これは「$d_i\ne d_j$ なら $a_{ij}=0$」と同値である。$d_1,\dots,d_n$ が相異なるなら、$i\ne j$ のとき $d_i\ne d_j$ なので $a_{ij}=0$、すなわち $A$ は対角行列である。$\square$
対角成分に等しい値があると、可換な行列はもっと多い。$D=\operatorname{diag}(1,1,2)$ なら条件 2 は $a_{13}=a_{23}=a_{31}=a_{32}=0$ であり、$D$ と可換な行列は $\begin{pmatrix}*&*&0\\ *&*&0\\0&0&*\end{pmatrix}$ の形の行列(左上の $2\times2$ の部分は任意)である。極端な場合 $D=cI_n$ はすべての行列と可換である。一般に、対角成分を等しい値ごとにまとめて $D=\operatorname{diag}(c_1I_{m_1},\dots,c_kI_{m_k})$($c_1,\dots,c_k$ は相異なる)と並べると、$D$ と可換な行列は、対角線上の $m_1\times m_1,\dots,m_k\times m_k$ の区画の外がすべて $0$ の行列(区分対角行列)である。
$d_1,\dots,d_n$ が相異なるとき、$D$ と可換な行列 $A$ は、次数 $n-1$ 以下のある多項式 $f\in K[x]$ によって $A=f(D)$ と書ける。
thm-dm-commutant により $A=\operatorname{diag}(a_1,\dots,a_n)$ は対角行列である。
$$
f(x):=\sum_{i=1}^na_i\prod_{j\ne i}\frac{x-d_j}{d_i-d_j}
$$
とおく(分母は $d_i\ne d_j$ なので $0$ でない)。$f$ の次数は $n-1$ 以下で、$x=d_k$ を代入すると $i\ne k$ の項は因子 $d_k-d_k=0$ を含むので消え、$i=k$ の項は $a_k\prod_{j\ne k}\frac{d_k-d_j}{d_k-d_j}=a_k$ である。よって $f(d_k)=a_k$ であり、prop-dm-operations の 1 により $f(D)=\operatorname{diag}(f(d_1),\dots,f(d_n))=A$ である。$\square$
対角成分が相異なるという仮定は外せない。$D=I_2$ はすべての行列と可換だが、$f(I_2)=f(1)I_2$ はスカラー行列なので、$\begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix}$ は $I_2$ の多項式で書けない。
すべての対角行列と可換な行列は対角行列である。実際、$d_i$ が相異なる対角行列がとれれば thm-dm-commutant から従い、$K$ の元が $n$ 個より少ない有限体のときでも、各 $E_{ii}:=\operatorname{diag}(0,\dots,1,\dots,0)$(第 $i$ 成分だけ $1$)との可換性を thm-dm-commutant に当てはめると、$j\ne i$ について $a_{ij}=a_{ji}=0$ が出る。さらにすべての行列と可換な行列はスカラー行列に限る(行列環 の記事の命題「行列環の中心」)。
2 つの対角行列 $D=\operatorname{diag}(d_1,\dots,d_n)$ と $D'=\operatorname{diag}(d_1',\dots,d_n')$ について、次は同値である。
2 ならば 1:置換 $\sigma$ について、第 $i$ 列が $e_{\sigma(i)}$ である行列を $P_\sigma$ とする。$P_\sigma$ の列は標準基底を並べ替えたものなので $K^n$ の基底をなし、$P_\sigma$ は正則である(正則行列 の記事の定理「正則性の同値条件」の 8)。$P_\sigma e_i=e_{\sigma(i)}$ なので
$$
DP_\sigma e_i=De_{\sigma(i)}=d_{\sigma(i)}e_{\sigma(i)}=P_\sigma\bigl(d_{\sigma(i)}e_i\bigr)=P_\sigma D'e_i
$$
がすべての $i$ で成り立つ。両辺の第 $i$ 列が一致するので $DP_\sigma=P_\sigma D'$、すなわち $P_\sigma^{-1}DP_\sigma=D'$ である。
1 ならば 2:相似な行列の固有多項式は等しい(固有値 の記事の命題「固有多項式の相似不変性」)ので、prop-dm-eigen により
$$
(x-d_1)\cdots(x-d_n)=(x-d_1')\cdots(x-d_n')
$$
である。各 $c\in K$ について、$d_i=c$ となる $i$ の個数と $d_i'=c$ となる $i$ の個数は、どちらもこの多項式の根 $c$ の重複度($(x-c)^m$ が割り切る最大の $m$)に等しい(prop-dm-eigen の証明の後半)。したがって値ごとに個数がそろっており、$d_i'=c$ となる添字を $d_j=c$ となる添字に 1 対 1 に対応させていけば、求める置換 $\sigma$ が得られる。$\square$
たとえば $\operatorname{diag}(1,2,3)$ と $\operatorname{diag}(3,1,2)$ は、$\sigma(1)=3$、$\sigma(2)=1$、$\sigma(3)=2$ の置換行列 $P_\sigma=\begin{pmatrix}0&1&0\\0&0&1\\1&0&0\end{pmatrix}$ で $P_\sigma^{-1}\operatorname{diag}(1,2,3)P_\sigma=\operatorname{diag}(3,1,2)$ となる。1 ならば 2 の向きは、対角化 の記事の命題「対角化の結果の一意性」(対角化したときの対角行列は並べ方を除いて決まる)と同じことを、対角行列どうしについて言ったものである。
この定理により、対角化できる行列の相似の類は、固有値を重複度こめて並べた組(並べ方は問わない)で完全に決まる。対角化できる 2 つの行列が相似であることは、固有多項式が等しいことと同値である。対角化できない行列では固有多項式だけでは相似の類は決まらず、Jordan標準形 が必要になる(ex-dm-nilpotent の $N$ と $O$ は固有多項式が同じ $x^2$ だが相似でない)。
対角行列どうしは可換なので、同じ正則行列 $P$ で同時に対角行列に直せる行列 $A,B$($P^{-1}AP$、$P^{-1}BP$ がともに対角行列)は、$P^{-1}ABP=(P^{-1}AP)(P^{-1}BP)=(P^{-1}BP)(P^{-1}AP)=P^{-1}BAP$ より可換である。逆に、可換な対角化可能行列は同時に対角化できる(対角化 の記事の定理「可換な対角化可能行列の同時対角化」)。その証明の中心は、thm-dm-commutant の「区分対角行列」の考え方を固有空間の分解に当てはめることである。
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