Eberlein–Šmulianの定理

同義語:Eberlein-Šmulianの定理Eberlein–Smulianの定理エバーライン・シュムリアンの定理Eberlein–Šmulian theorem

概要

Eberlein–Šmulianの定理(Eberlein–Šmulian theorem)とは、Banach 空間の部分集合について、弱位相での閉包がコンパクトであることと、任意の点列が弱収束する部分列をもつことが同値であるという定理である。弱位相は無限次元では距離化できないが、弱コンパクト性は点列で確かめられ、さらに相対弱コンパクトな集合では弱閉包の各点がその集合の点列の弱極限になる。証明は、点列の張る可分な部分空間で弱コンパクト集合に距離を入れる向きと、二重双対の有限次元部分空間のノルムを有限個の汎関数で測って弱スター閉包の点を点列の極限として捉える向きからなる。系として、Banach 空間が反射的であることは、有界列がつねに弱収束部分列をもつことと同値である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 弱位相(関数解析), Banach–Alaogluの定理, 反射的Banach空間, 点列コンパクト

何を述べる定理か

距離空間では、コンパクト性と点列コンパクト性(任意の点列が収束部分列をもつこと)は同じである。一般の位相空間ではそうはいかない。最小の非可算順序数 $\omega_1$ は点列コンパクトだがコンパクトでなく、連続体濃度個の区間の直積 $[0,1]^{[0,1]}$ はコンパクトだが点列コンパクトでない(点列コンパクト の記事の例「反例:点列コンパクトだがコンパクトでない空間」「反例:コンパクトだが点列コンパクトでない空間」)。
無限次元の Banach 空間の弱位相は距離化できない(弱位相(関数解析) の記事の節「有限次元では一致し、無限次元では真に粗い」)。それにもかかわらず、Eberlein–Šmulian の定理(Eberlein–Šmulian theorem)は、Banach 空間の部分集合については弱位相でのコンパクト性と点列コンパクト性が一致すると述べる。この定理のおかげで、弱コンパクト性を使う議論を、ネットではなく点列で進められる。系として、Banach 空間が反射的であることは、有界列がいつも弱収束部分列をもつことと同値になる。
以下 $\mathbb K=\mathbb R$ または $\mathbb C$、$X$ は $\mathbb K$ 上の Banach 空間、$X^*$ は連続双対空間、$B_X=\{x:\|x\|\le1\}$ とする。弱位相 $\sigma(X,X^*)$ での収束を $x_n\rightharpoonup x$、集合 $A\subset X$ の弱位相での閉包を $\overline A^{\,w}$ と書く。$J\colon X\to X^{**}$ は評価写像 $J(x)(f)=f(x)$ である。

定義と定理

相対弱コンパクトと相対弱点列コンパクト

$A\subset X$ とする。

  1. $\overline A^{\,w}$ が弱位相でコンパクトであるとき、$A$ は相対弱コンパクトであるという。
  2. $A$ の任意の点列が、$X$ のある点に弱収束する部分列をもつとき、$A$ は相対弱点列コンパクトであるという。
Eberlein–Šmulianの定理

Banach 空間 $X$ の部分集合 $A$ について、次の 2 条件は同値である。

  1. $A$ は相対弱コンパクトである。
  2. $A$ は相対弱点列コンパクトである。
    さらにこれらが成り立つとき、$\overline A^{\,w}$ の各点は $A$ の点列の弱極限である。

2 ⇒ 1 と最後の主張は下の節「点列から弱コンパクトへ」で、1 ⇒ 2 は節「弱コンパクトから点列へ」で示す。

準備

有界性

$A$ が相対弱コンパクトか相対弱点列コンパクトなら、$A$ はノルム有界である。

相対弱点列コンパクトで有界でないなら、$\|x_n\|\ge n$ となる $x_n\in A$ がとれるが、弱収束する部分列は有界である(弱位相(関数解析) の記事の命題「弱収束列の基本性質」の 2)から矛盾する。相対弱コンパクトなら、各 $f\in X^*$ は弱連続なので弱コンパクト集合 $\overline A^{\,w}$ 上で有界であり、$\{J(x):x\in A\}$ は Banach 空間 $X^*$ 上で各点有界な連続線形汎関数の族になる。一様有界性原理 により $\sup_{x\in A}\|J(x)\|< \infty$ で、$J$ は等長なので $A$ は有界である。$\square$

可分な空間での弱コンパクト集合の距離化

ノルム空間 $Y$ が可分で、$K\subset Y$ が弱位相 $\sigma(Y,Y^*)$ でコンパクトなら、$K$ の任意の点列は $K$ の点に弱収束する部分列をもつ。

$Y$ の稠密列 $(y_k)$ をとり、$\|g_k\|=1$、$g_k(y_k)=\|y_k\|$ となる $g_k\in Y^*$ を選ぶ(連続双対空間 の記事の定理「点でノルムを実現する汎関数」。$y_k=0$ なら任意の $\|g_k\|=1$ でよい)。$x\ne0$ なら $\|x-y_k\|< \|x\|/3$ となる $k$ があり、
$$ \bigl|g_k(x)\bigr|\ge|g_k(y_k)|-\|x-y_k\|=\|y_k\|-\|x-y_k\|\ge\|x\|-2\|x-y_k\|>\|x\|/3>0 $$
なので、$(g_k)$ は $Y$ の点を分離する。そこで
$$ d(x,y)=\sum_{k=1}^\infty2^{-k}\min\{1,|g_k(x-y)|\} $$
とおくと $d$ は $Y$ 上の距離である。各項は弱連続で、級数は一様収束するから、$d(\cdot,y)$ は弱連続であり、$d$ の定める位相は弱位相より粗い。したがって恒等写像 $(K,\sigma(Y,Y^*))\to(K,d)$ は連続な全単射で、コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続全単射なので同相写像である。$K$ は弱位相でコンパクトな距離空間とみなせるから、点列コンパクト の記事の定理「距離空間における同値性」により点列コンパクトである。$\square$

有限次元部分空間のノルムを有限個の汎関数で測る

$M\subset X^{**}$ を有限次元部分空間とする。$B_{X^*}$ の有限個の元 $f_1,\ldots,f_m$ で、すべての $\eta\in M$ について
$$ \max_{1\le i\le m}|\eta(f_i)|\ge\tfrac12\|\eta\| $$
となるものがある。

$M=\{0\}$ なら明らかなので、$M\ne\{0\}$ とする。$M$ の単位球面 $S$ は有限次元ノルム空間の有界閉集合なのでコンパクトであり、有限個の $\eta_1,\ldots,\eta_m\in S$ で $S\subset\bigcup_i\{\eta:\|\eta-\eta_i\|<1/4\}$ となる。双対ノルムの定義から $|\eta_i(f_i)|\ge3/4$ となる $f_i\in B_{X^*}$ を選ぶ。$\eta\in S$ について $\|\eta-\eta_i\|<1/4$ となる $i$ をとれば $|\eta(f_i)|\ge|\eta_i(f_i)|-\|\eta-\eta_i\|>1/2$ である。一般の $\eta\ne0$ は $\eta/\|\eta\|$ に当てはめればよい。$\square$

点列から弱コンパクトへ

thm-es の 2 ⇒ 1 を示す。$A$ は相対弱点列コンパクトとする。lem-es-bounded により $A\subset RB_X$ となる $R$ がある。$X^{**}$ の弱スター位相 $\sigma(X^{**},X^*)$ での $J(A)$ の閉包を $W$ とおく。中心になるのは次の主張である。

弱スター閉包の点は点列の弱極限

$A$ が相対弱点列コンパクトなら、任意の $\xi\in W$ に対し、$A$ の点列 $(x_k)$ とその部分列 $(x_{k_j})$、$x\in X$ で、$x_{k_j}\rightharpoonup x$ かつ $\xi=J(x)$ となるものがある。

点列の構成:$M_0=\mathbb K\xi$ とおく。$k=0,1,2,\ldots$ について順に、$M_k$ に lem-es-finite-norming を用いて有限集合 $F_{k+1}\subset B_{X^*}$ を選び、$G_{k+1}=F_1\cup\cdots\cup F_{k+1}$ とする。$\xi$ は $J(A)$ の弱スター閉包の点で、$G_{k+1}$ は有限集合なので、
$$ \bigl|\xi(f)-f(x_{k+1})\bigr|< \frac1{k+1}\qquad(f\in G_{k+1})\qquad(1) $$
となる $x_{k+1}\in A$ がとれる。$M_{k+1}=\operatorname{span}\{\xi,J(x_1),\ldots,J(x_{k+1})\}$ とおいて続ける。作り方から
$$ \max_{f\in F_{k+1}}|\eta(f)|\ge\tfrac12\|\eta\|\qquad(\eta\in M_k)\qquad(2) $$
である。
ノルムを測る可算集合:$G=\bigcup_kF_k$、$M=\bigcup_kM_k$ とおく。(2) から、$\eta\in M$ なら $\sup_{f\in G}|\eta(f)|\ge\frac12\|\eta\|$ である。$\|f\|\le1$ なので $\eta\mapsto\eta(f)$ は $1$-Lipschitz であり、この不等式は $M$ のノルム閉包 $\overline M$ の元にもそのまま延びる($\eta_n\to\eta$ なら $\sup_G|\eta(f)|\ge\frac12\|\eta_n\|-\|\eta-\eta_n\|$)。
極限の同定:仮定から $(x_k)$ の部分列 $x_{k_j}$ と $x\in X$ で $x_{k_j}\rightharpoonup x$ となるものがある。$\{x_k\}$ の張る部分空間の閉包 $L$ は閉凸集合なので弱閉であり(Mazurの補題 の記事の定理「凸集合の強閉と弱閉」)、$x\in L$ である。$J$ は線形等長なので $J(L)\subset\overline M$ であり、$\xi\in M$ と合わせて $\eta=\xi-J(x)\in\overline M$ である。$f\in G$ をとると、$f\in G_{k+1}$ がすべての大きな $k$ で成り立つので、(1) から
$$ \xi(f)=\lim_{j\to\infty}f(x_{k_j})=f(x) $$
であり、$\eta(f)=0$ である。したがって $\|\eta\|\le2\sup_{f\in G}|\eta(f)|=0$ で、$\xi=J(x)$ である。$\square$

2 ⇒ 1 の証明:prop-es-key から $W\subset J(X)$ である。$W$ は $X^{**}$ の半径 $R$ の閉球に含まれ、この閉球は Banach–Alaogluの定理 により弱スター位相でコンパクトなので、その弱スター閉部分集合 $W$ もコンパクトである。$J$ は弱位相から像 $J(X)$ の弱スター位相への同相写像である(反射的Banach空間 の記事の節「弱コンパクト性:角谷の定理」)から、$C=J^{-1}(W)$ は弱コンパクトである。$C$ は $A$ を含む弱閉集合なので $\overline A^{\,w}\subset C$ であり、$\overline A^{\,w}$ はコンパクト集合の閉部分集合として弱コンパクトである。
最後の主張:$y\in\overline A^{\,w}$ とする。$J$ は弱位相から弱スター位相へ連続なので $J(y)\in W$ であり、prop-es-key により $A$ の点列の部分列が $x$ に弱収束して $J(x)=J(y)$、つまり $x=y$ となる。$\square$

弱コンパクトから点列へ

thm-es の 1 ⇒ 2 を示す。$A$ は相対弱コンパクトとし、$(x_n)$ を $A$ の点列とする。$\{x_n\}$ の張る部分空間の閉包を $Y$ とする。係数の実部・虚部が有理数の有限一次結合は可算個で $Y$ で稠密なので、$Y$ は可分である。
$Y$ は閉部分空間なので弱閉であり、$K=\overline A^{\,w}\cap Y$ は弱コンパクト集合 $\overline A^{\,w}$ の弱閉部分集合として、$X$ の弱位相でコンパクトである。$Y$ 自身の弱位相 $\sigma(Y,Y^*)$ は、$X$ の弱位相の $Y$ への相対位相に一致する。実際、$f\in X^*$ の制限は $Y^*$ に属し、逆に $g\in Y^*$ は Hahn–Banachの定理 の系「ノルムを保つ延長」によりある $f\in X^*$ の制限である。よって $K$ は $\sigma(Y,Y^*)$ でコンパクトであり、lem-es-metrizable により部分列 $x_{n_k}$ と $x\in K$ で、すべての $g\in Y^*$ について $g(x_{n_k})\to g(x)$ となるものがある。$f\in X^*$ に対して $g=f|_Y$ とすれば $f(x_{n_k})\to f(x)$、すなわち $x_{n_k}\rightharpoonup x$ である。$\square$
弱位相が距離化できなくても、点列が張る可分な部分空間の中では弱コンパクト集合が距離化できることが要点である。

帰結

反射性の点列による特徴づけ

Banach 空間 $X$ が反射的であるための必要十分条件は、$X$ の任意の有界列が弱収束部分列をもつことである。

必要性は 反射的Banach空間 の記事の定理「有界列の弱収束部分列」である。十分性:仮定は $B_X$ が相対弱点列コンパクトであることを言うので、thm-es により $\overline{B_X}^{\,w}$ は弱コンパクトである。$B_X$ はノルムで閉じた凸集合なので弱閉であり(Mazurの補題 の記事の定理「凸集合の強閉と弱閉」)、$B_X$ 自身が弱コンパクトになる。反射的Banach空間 の記事の定理「角谷の定理」により $X$ は反射的である。$\square$

この系の十分性は、Bre11 Theorem 3.19(p. 70)で Eberlein–Šmulian の定理として述べられている形である。部分集合についての thm-es の形は、同書 Problem 10(pp. 448–450)が小問に分けて扱う。

弱コンパクトと弱点列コンパクト

$K\subset X$ について、$K$ が弱位相でコンパクトであることと、$K$ の任意の点列が $K$ の点に弱収束する部分列をもつことは同値である。

$K$ が弱コンパクトなら、弱位相は Hausdorff なので $K$ は弱閉で $\overline K^{\,w}=K$ である。thm-es の 1 ⇒ 2 で得た部分列の弱極限は、弱閉集合 $K$ の点の弱極限なので $K$ に属する。逆を仮定すると thm-es により $\overline K^{\,w}$ は弱コンパクトである。$y\in\overline K^{\,w}$ は $K$ の点列 $(x_n)$ の弱極限であり、仮定からその部分列は $K$ の点に弱収束する。弱極限は一意なので $y\in K$ となり、$K=\overline K^{\,w}$ は弱コンパクトである。$\square$

例

$c_0$ の部分和の列

$c_0$ で $s_n=e_1+\cdots+e_n$(最初の $n$ 成分が $1$、残りが $0$)とおくと $\|s_n\|_\infty=1$ である。ある部分列が $x\in c_0$ に弱収束したとすると、第 $j$ 座標をとる汎関数は連続なので、$x_j=\lim_k(s_{n_k})_j=1$ がすべての $j$ で成り立ち、$x\notin c_0$ となって矛盾する。よって $(s_n)$ は弱収束部分列をもたず、cor-es-reflexive により $c_0$ は反射的でない。同時に thm-es から、$c_0$ の閉単位球は弱コンパクトでない。

$\ell^1$ の標準基底

$\ell^1$ の標準基底 $(e_n)$ は有界だが弱収束部分列をもたない(反射的Banach空間 の記事の節「反例の表」の 2 行目)。したがって $\ell^1$ の閉単位球も弱コンパクトでない。一方 $1< p< \infty$ の $\ell^p$ では $e_n\rightharpoonup0$ であり(弱位相(関数解析) の記事の例「$\ell^p$ と $c_0$ の標準基底」)、$\ell^p$ は反射的なので、どの有界列も弱収束部分列をもつ。

反射的Banach空間 の記事の定理「有界列の弱収束部分列」は、反射的な空間で可分な部分空間に移って Banach–Alaoglu の定理の点列版を使う。thm-es の 1 ⇒ 2 も同じく可分な部分空間に移るが、双対の可分性を使わず、弱コンパクト集合の上だけで距離を作る点が違う。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
位相が Banach 空間の弱位相であること(一般の Hausdorff 空間に替える)順序位相を入れた $\omega_1$点列コンパクトならコンパクト
位相が Banach 空間の弱位相であること(双対空間の弱スター位相に替える)$(\ell^\infty)^*$ の閉単位球と座標汎関数 $\delta_n$コンパクトなら点列コンパクト
反射性$c_0$ の部分和 $s_n=e_1+\cdots+e_n$有界列が弱収束部分列をもつ
有界性$\ell^2$ の $x_n=ne_1$反射的な空間で点列が弱収束部分列をもつ

1 行目は 点列コンパクト の記事の例「反例:点列コンパクトだがコンパクトでない空間」による。2 行目:$(\ell^\infty)^*$ の閉単位球は Banach–Alaogluの定理 により弱スター位相でコンパクトだが、$\delta_n(x)=x_n$ のどの部分列も弱スター収束しない(同記事の例「反例:可分でない $X$ では有界列が弱スター収束部分列をもたない」)。弱スター位相は $(\ell^\infty)^*$ 自身の弱位相より粗く、thm-es はこの位相には当てはまらない。3 行目は ex-es-c0。4 行目:弱収束する列は有界なので、$\|x_n\|=n$ のどの部分列も弱収束しない。

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Universitext, Springer, 2011, Theorem 3.17(pp. 67–69、角谷の定理)、Theorem 3.18(p. 69)、Theorem 3.19 と Remark 17(p. 70、Eberlein–Šmulian の定理の主張)、Problem 10(pp. 448–450、Eberlein–Šmulian の定理を小問に分けた問題)

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する