Kan拡張(Kan extension)とは、全ての概念である。
まず、『圏論の基礎(Categories for the Working Mathematician)』から引用しよう。
圏論の基本概念が終わりの二章にまとめられている。たとえば極限の、より差し迫って必要となる性質、特にフィルター極限の性質、「エンド」の計算、そしてカン拡張の概念、といったものである。カン拡張は随伴の基本的構成の、より深い形式である。圏論のすべての概念はカン拡張である、ということを見て本書は終わる。
全ての概念はKan拡張であるという言葉はこの『圏論の基礎』に由来するものであり、実際、Kan拡張は圏論の多くの概念が見通しよく整理する上で大変役に立つ。
圏 $\cat$ からの二つの関手 $\func{F}{\cat}{\cat'}$ および $\func{G}{\cat}{\mathcal{D}}$ が与えられてるとする。このとき、組 $\KanExt{G'}{\eta}$ が $F$ に沿った $G$ の左Kan拡張であるとは、次のデータの中で終普遍性を満たすことをいう。
Kan拡張は $G$ を $F$ を経由するように近似するとき、最も $G$ に近いものを与えていることに他ならない。とくに、$G=G'F$ なる $G'$ が取れる場合(このような状況を $G$ は $F$ を経由するという)は、これと恒等自然変換との組が $G$ の $F$ に沿った左Kan拡張である。逆に、Kan拡張は、経由するとは限らないが、$2$-射 ($2$-cell) の違いまで許したときの最良近似といる。