散在型単純群(sporadic simple group)とは、有限単純群のうち、素数位数の巡回群、5 次以上の交代群、Lie 型の単純群のどれとも同型でないものであり、有限単純群の分類によりちょうど 26 個ある。最小のものは位数 $7920$ の Mathieu 群 $M_{11}$、最大のものは Monster $\mathbb{M}$ である。2 重推移的な置換群は、点の固定部分群が単純で点の個数が素数の冪でなければ単純になり、この判定法と Sylow の定理から、11 点に鋭く 4 重推移的な群の単純性と、5 個の Mathieu 群がすべて単純であることが導かれる。
散在型単純群 は、有限単純群のうち、素数位数の巡回群、交代群、Lie 型の単純群という 3 つの無限系列のどれにも属さないものである。有限単純群の分類により、それはちょうど 26 個ある。最も小さいものは位数 $7920$ の Mathieu 群 $M_{11}$、最も大きいものは位数がおよそ $8\times10^{53}$ の Monster 群 $\mathbb{M}$ である。
この記事では、26 個の群とその位数を一覧にしたうえで、多重推移的な置換群が単純であることを示す一般的な判定法を証明する。それを使って、11 点に鋭く 4 重推移的に作用する群は単純であることを完全に証明し、5 個の Mathieu 群 $M_{11},M_{12},M_{22},M_{23},M_{24}$ がすべて単純群であることを、それぞれの置換表現の基本的な事実から導く。ほかの散在型単純群の構成と単純性は扱わない。
有限単純群(単純群)のうち、次のどれとも同型でないものを 散在型単純群(sporadic simple group)という。
単純群 の定理「有限単純群の分類」により、有限単純群は 1〜3 のどれかか、26 個の散在型単純群のどれかと同型である。したがって散在型単純群はちょうど 26 個である(Sol01 p. 341、DF04 §3.4, p. 104。この記事では分類を証明しない)。Tits 群 ${}^2F_4(2)'$ は慣例上 Lie 型に含め、26 個には数えない(群論 の注意「有限単純群の分類の出典」)。
ATLAS の分け方に従い、位数とその素因数分解を並べる。位数はすべて ATLAS の各群の頁による。
| 群 | 位数 | 素因数分解 |
|---|---|---|
| $M_{11}$ | $7920$ | $2^4\cdot3^2\cdot5\cdot11$ |
| $M_{12}$ | $95040$ | $2^6\cdot3^3\cdot5\cdot11$ |
| $M_{22}$ | $443520$ | $2^7\cdot3^2\cdot5\cdot7\cdot11$ |
| $M_{23}$ | $10200960$ | $2^7\cdot3^2\cdot5\cdot7\cdot11\cdot23$ |
| $M_{24}$ | $244823040$ | $2^{10}\cdot3^3\cdot5\cdot7\cdot11\cdot23$ |
| 分類(ATLAS) | 群 | 位数 | 素因数分解 |
|---|---|---|---|
| Leech 格子の群 | $HS$ | $44352000$ | $2^{9}\cdot3^{2}\cdot5^{3}\cdot7\cdot11$ |
| Leech 格子の群 | $J_2$ | $604800$ | $2^{7}\cdot3^{3}\cdot5^{2}\cdot7$ |
| Leech 格子の群 | $Co_1$ | $4157776806543360000$ | $2^{21}\cdot3^{9}\cdot5^{4}\cdot7^{2}\cdot11\cdot13\cdot23$ |
| Leech 格子の群 | $Co_2$ | $42305421312000$ | $2^{18}\cdot3^{6}\cdot5^{3}\cdot7\cdot11\cdot23$ |
| Leech 格子の群 | $Co_3$ | $495766656000$ | $2^{10}\cdot3^{7}\cdot5^{3}\cdot7\cdot11\cdot23$ |
| Leech 格子の群 | $McL$ | $898128000$ | $2^{7}\cdot3^{6}\cdot5^{3}\cdot7\cdot11$ |
| Leech 格子の群 | $Suz$ | $448345497600$ | $2^{13}\cdot3^{7}\cdot5^{2}\cdot7\cdot11\cdot13$ |
| Monster の切片 | $He$ | $4030387200$ | $2^{10}\cdot3^{3}\cdot5^{2}\cdot7^{3}\cdot17$ |
| Monster の切片 | $HN$ | $273030912000000$ | $2^{14}\cdot3^{6}\cdot5^{6}\cdot7\cdot11\cdot19$ |
| Monster の切片 | $Th$ | $90745943887872000$ | $2^{15}\cdot3^{10}\cdot5^{3}\cdot7^{2}\cdot13\cdot19\cdot31$ |
| Monster の切片 | $Fi_{22}$ | $64561751654400$ | $2^{17}\cdot3^{9}\cdot5^{2}\cdot7\cdot11\cdot13$ |
| Monster の切片 | $Fi_{23}$ | $4089470473293004800$ | $2^{18}\cdot3^{13}\cdot5^{2}\cdot7\cdot11\cdot13\cdot17\cdot23$ |
| Monster の切片 | $Fi_{24}'$ | $1255205709190661721292800$ | $2^{21}\cdot3^{16}\cdot5^{2}\cdot7^{3}\cdot11\cdot13\cdot17\cdot23\cdot29$ |
| Monster の切片 | $\mathbb{B}$ | $4154781481226426191177580544000000$ | $2^{41}\cdot3^{13}\cdot5^{6}\cdot7^{2}\cdot11\cdot13\cdot17\cdot19\cdot23\cdot31\cdot47$ |
| Monster の切片 | $\mathbb{M}$ | $808017424794512875886459904961710757005754368000000000$ | $2^{46}\cdot3^{20}\cdot5^{9}\cdot7^{6}\cdot11^{2}\cdot13^{3}\cdot17\cdot19\cdot23\cdot29\cdot31\cdot41\cdot47\cdot59\cdot71$ |
| 孤立した群 | $J_1$ | $175560$ | $2^{3}\cdot3\cdot5\cdot7\cdot11\cdot19$ |
| 孤立した群 | $O'N$ | $460815505920$ | $2^{9}\cdot3^{4}\cdot5\cdot7^{3}\cdot11\cdot19\cdot31$ |
| 孤立した群 | $J_3$ | $50232960$ | $2^{7}\cdot3^{5}\cdot5\cdot17\cdot19$ |
| 孤立した群 | $Ru$ | $145926144000$ | $2^{14}\cdot3^{3}\cdot5^{3}\cdot7\cdot13\cdot29$ |
| 孤立した群 | $J_4$ | $86775571046077562880$ | $2^{21}\cdot3^{3}\cdot5\cdot7\cdot11^{3}\cdot23\cdot29\cdot31\cdot37\cdot43$ |
| 孤立した群 | $Ly$ | $51765179004000000$ | $2^{8}\cdot3^{7}\cdot5^{6}\cdot7\cdot11\cdot31\cdot37\cdot67$ |
表の 5 個は Mathieu 群、ほかは Higman–Sims 群 $HS$、Janko 群 $J_1,\dots,J_4$、Conway 群 $Co_1,Co_2,Co_3$、McLaughlin 群 $McL$、Suzuki 群 $Suz$、Held 群 $He$、Harada–Norton 群 $HN$、Thompson 群 $Th$、Fischer 群 $Fi_{22},Fi_{23},Fi_{24}'$、Baby Monster $\mathbb{B}$、Monster $\mathbb{M}$、O'Nan 群 $O'N$、Rudvalis 群 $Ru$、Lyons 群 $Ly$ である(ATLAS、Sol01 p. 341)。Monster の位数は DF04 §18.3, p. 865 にもある。散在型の Suzuki 群 $Suz$ は、Lie 型の Suzuki 群 ${}^2B_2(q)$ とは別の群である。
Lie 型の単純群は、体の大きさ $q$ や次元を動かすと無限に続く族をなし、どれもベクトル空間や Lie 環という一様な構造の対称性として現れる。散在型単純群はそのような族に入らず、多くは特殊な組合せ構造の対称性として 1 つずつ現れる。Mathieu 群は Steiner 系 $S(t,k,n)$($n$ 点集合の $k$ 点部分集合(ブロック)の族で、どの $t$ 点もちょうど 1 つのブロックに含まれるもの)を保つ置換群として 3〜5 重推移的に働く(ATLAS の各置換表現の頁の注記)。Conway 群などは Leech 格子と呼ばれる格子に結びつき、Fischer 群などは Monster の部分群の剰余群(切片)として現れる(ATLAS の分け方)。小さい散在型単純群の単純性は、群の作用の推移性と Sylow の定理から、次の節のように初等的に確かめられる。
この節では有限群 $G$ が有限集合 $X$ に忠実に作用しているとする(群の作用)。$x\in X$ の固定部分群を $G_x$、$x,y$ をともに動かさない元の部分群を $G_{x,y}$ と書き、$N\subseteq G$ について $N_x:=N\cap G_x$ とおく。$k\le\lvert X\rvert$ について、作用が $k$ 重推移的 であるとは、相異なる $k$ 点の任意の列 $(x_1,\dots,x_k)$、$(y_1,\dots,y_k)$ に対し $gx_i=y_i$($1\le i\le k$)となる $g$ があることをいい、そのような $g$ がつねにただ 1 つのとき 鋭く $k$ 重推移的 という。推移的で $G_x=\{e\}$ となる作用を 正則 という。$k$ 重推移的なら、$G_x$ は $X\setminus\{x\}$ に $(k-1)$ 重推移的に作用する。
1:作用は忠実なので、$N$ のある元 $n$ はある点 $x$ を動かす。$y:=nx\ne x$ とする。$z\notin Nx$ となる点 $z$ があったとすると、2 重推移性から $gx=x$、$gy=z$ となる $g$ があり、$z=gnx=(gng^{-1})gx=(gng^{-1})x\in Nx$ となって矛盾する。
2:$g(Nx)=N(gx)$ なので $G$ は $N$ の軌道たちを互いに写し合い、$G$ が推移的だからどの軌道も同じ大きさ $d$ をもつ。$d$ は $p$ を割るので $d=1$ か $p$ であり、$d=1$ なら $N$ はすべての点を動かさず、忠実性から $N=\{e\}$ となる。よって $d=p$ である。$\square$
作用が 2 重推移的で $\lvert X\rvert\ge2$ とし、$N$ を $X$ に正則に作用する $G$ の正規部分群とする。このとき $N$ はある素数 $p$ について、すべての単位元でない元の位数が $p$ の可換群であり、$\lvert X\rvert=\lvert N\rvert$ は $p$ の冪である。
$x\in X$ を固定すると、正則性から $\varphi\colon N\to X$、$n\mapsto nx$ は全単射で、$\varphi(e)=x$ である。$h\in G_x$ について $\varphi(hnh^{-1})=hnh^{-1}x=hnx=h\varphi(n)$ なので、$G_x$ の $N$ への共役による作用は、$\varphi$ を通して $G_x$ の $X$ への作用と同じである。$G_x$ は $X\setminus\{x\}$ に推移的なので、$N\setminus\{e\}$ の元はすべて互いに共役であり、同じ位数 $m$ をもつ。$m=ab$($a,b>1$)なら $n^a$ は位数 $b\ne m$ の単位元でない元になるので、$m$ は素数 $p$ である。$\lvert N\rvert$ を割る素数 $q$ について位数 $q$ の元がある(Sylowの定理 の系「素数位数の元の存在」)ので $q=p$ であり、$N$ は $p$ 群である。中心 $Z(N)$ は自明でなく(群の中心 の定理「有限 $p$-群の中心は自明でない」)、共役で保たれるので、$Z(N)\setminus\{e\}$ は $G_x$ の共役で閉じた $N\setminus\{e\}$ の空でない部分集合であり、推移性から $N\setminus\{e\}$ 全体に等しい。よって $N=Z(N)$ は可換である。$\square$
$p$ を素数とし、$P$ を対称群 $S_p$ の位数 $p$ の部分群とする。このとき $\lvert N_{S_p}(P)\rvert=p(p-1)$ である。
$\lvert S_p\rvert=p\cdot(p-1)!$ で $p\nmid(p-1)!$ なので、位数 $p$ の部分群は Sylow $p$ 部分群である。位数 $p$ の元は $p$ 個の点を巡る巡回置換で、全部で $p!/p=(p-1)!$ 個あり、各 Sylow $p$ 部分群はそのうち $p-1$ 個を含み、異なる 2 つは単位元だけで交わる。よって Sylow $p$ 部分群の個数は $(p-1)!/(p-1)=(p-2)!$ であり、Sylowの定理 の定理「Sylowの定理の主張」の 4 により $\lvert N_{S_p}(P)\rvert=p!/(p-2)!=p(p-1)$ である。$\square$
作用が 2 重推移的で $\lvert X\rvert\ge2$ とし、ある $x\in X$ について $G_x$ が単純群であるとする。このとき $G$ は単純群であるか、または $X$ に正則に作用する正規部分群をもち、$\lvert X\rvert$ は素数の冪である。とくに $\lvert X\rvert$ が素数の冪でなければ $G$ は単純群である。
$N$ を $G$ の正規部分群で $N\ne\{e\}$、$N\ne G$ とする。lem-spor-normal-transitive の 1 により $N$ は推移的である。$N_x=N\cap G_x$ は $G_x$ の正規部分群なので、$G_x$ の単純性から $N_x=\{e\}$ か $N_x=G_x$ である。$N_x=G_x$ なら、任意の $g\in G$ について $gx=nx$ となる $n\in N$ があり $n^{-1}g\in G_x\subseteq N$ なので $g\in N$、すなわち $N=G$ となって仮定に反する。よって $N_x=\{e\}$ で、$N$ は正則に作用し、lem-spor-regular-normal により $\lvert X\rvert$ は素数の冪である。忠実性と $\lvert X\rvert\ge2$ から $G\ne\{e\}$ なので、正規部分群 $N$ がないときは $G$ は単純群である。$\square$
作用が推移的で $\lvert X\rvert=p$ は素数、$G_x$ は単純群で、$\lvert G\rvert>p(p-1)$ とする。このとき $G$ は単純群である。
$N\ne\{e\}$ を正規部分群とすると、lem-spor-normal-transitive の 2 により推移的である。$N_x=N\cap G_x$ は単純群 $G_x$ の正規部分群なので $\{e\}$ か $G_x$ である。$N_x=G_x$ なら、thm-spor-criterion の証明と同じく、$gx=nx$($n\in N$)から $g\in nG_x\subseteq N$ となり $N=G$ である。$N_x=\{e\}$ なら $\lvert N\rvert=\lvert X\rvert=p$ であり、$G$ を $S_p$ の部分群とみると、$N$ は $G$ で正規なので $G\subseteq N_{S_p}(N)$ となり、lem-spor-normalizer から $\lvert G\rvert\le p(p-1)$ となって仮定に反する。$\square$
$G$ が 11 点の集合 $X$ に鋭く 4 重推移的に作用するなら、$G$ は位数 $7920$ の単純群である。
相異なる 4 点の列は $11\cdot10\cdot9\cdot8$ 個あり、$G$ はその上に正則に作用するので $\lvert G\rvert=7920=2^4\cdot3^2\cdot5\cdot11$ であり、作用は忠実である。相異なる $x,y\in X$ について、$G_x$ は $X\setminus\{x\}$(10 点)に 3 重推移的、$G_{x,y}$ は $X\setminus\{x,y\}$(9 点)に 2 重推移的に作用する。$N\ne\{e\}$ を $G$ の正規部分群とする。
段 1.$N$ は推移的である(lem-spor-normal-transitive の 1)。$N_x=\{e\}$ なら $N$ は位数 $11$ の正規部分群で、$G\subseteq N_{S_{11}}(N)$ となり、lem-spor-normalizer から $\lvert G\rvert\le11\cdot10=110$ となって矛盾する。よって $N_x\ne\{e\}$ である。
段 2.$N_x$ は $G_x$ の正規部分群で、$G_x$ は 10 点に忠実かつ 2 重推移的に作用するので、$N_x$ は 10 点に推移的である。$N_{x,y}=\{e\}$ なら $N_x$ は 10 点に正則に作用する正規部分群になり、lem-spor-regular-normal により $10$ が素数の冪となって矛盾する。よって $N_{x,y}\ne\{e\}$ であり、同じ理由で $N_{x,y}$ は 9 点に推移的である。軌道と固定部分群の関係(群の作用 の定理「軌道・安定化群定理」)から $\lvert N\rvert=11\lvert N_x\rvert=11\cdot10\cdot\lvert N_{x,y}\rvert$ は $11\cdot10\cdot9=990$ の倍数なので、$\lvert G:N\rvert$ は $8$ の約数である。
段 3.$P$ を $G$ の Sylow $11$ 部分群とする。$G\subseteq S_{11}$ なので $N_G(P)\subseteq N_{S_{11}}(P)$ であり、lem-spor-normalizer により $\lvert N_G(P)\rvert$ は $110$ の約数で $11$ の倍数、$11m$($m\mid10$)と書ける。Sylow $11$ 部分群の個数 $720/m$ は $11$ で割って $1$ 余る(Sylowの定理 の定理「Sylowの定理の主張」の 4)。$720/m$ は $m=1,2,5,10$ に対し $720,360,144,72$ で、$11$ で割った余りは $5,8,1,6$ なので $m=5$、$\lvert N_G(P)\rvert=55$ である。
段 4.$11$ は $\lvert N\rvert$ を割るので $N$ はある Sylow $11$ 部分群を含み、Sylow 部分群は互いに共役で $N$ は正規なので $P\subseteq N$ である。$g\in G$ について $gPg^{-1}\subseteq N$ は $N$ の Sylow $11$ 部分群なので、ある $n\in N$ で $gPg^{-1}=nPn^{-1}$ となり、$n^{-1}g\in N_G(P)$ である。よって $G=N\,N_G(P)$ であり、準同型定理 の定理「第2同型定理」により
$$
G/N=N\,N_G(P)/N\cong N_G(P)/\bigl(N\cap N_G(P)\bigr)
$$
なので、$\lvert G:N\rvert$ は $\lvert N_G(P)\rvert=55$ の約数である。段 2 と合わせると $\lvert G:N\rvert$ は $\gcd(8,55)=1$ の約数で、$N=G$ である。$\square$
段 1〜2 は推移性を 1 点ずつ下ろしていく議論で、段 3〜4 は Sylow の定理と「Frattini の論法」と呼ばれる分解 $G=N\,N_G(P)$ による。$G_x$ そのものは単純でない(ATLAS によれば $M_{11}$ の点の固定部分群 $M_{10}$ は $A_6$ を指数 $2$ で含む)ので、thm-spor-criterion はそのままでは使えず、もう 1 段下の $G_{x,y}$ まで推移性を使う。
5 個の Mathieu 群の基本的な置換表現を並べる。点の個数・推移度・点の固定部分群・位数は ATLAS の各群の頁とその置換表現の頁による(この記事では群の構成を扱わない)。
| 群 | 点の個数 | 推移度 | 点の固定部分群 | 位数 |
|---|---|---|---|---|
| $M_{11}$ | $11$ | $4$ | $M_{10}$ | $7920=11\cdot10\cdot9\cdot8$ |
| $M_{12}$ | $12$ | $5$ | $M_{11}$ | $95040=12\cdot11\cdot10\cdot9\cdot8$ |
| $M_{22}$ | $22$ | $3$ | $\mathrm{PSL}_3(\mathbb{F}_4)$ | $443520$ |
| $M_{23}$ | $23$ | $4$ | $M_{22}$ | $10200960$ |
| $M_{24}$ | $24$ | $5$ | $M_{23}$ | $244823040$ |
$M_{11}$ と $M_{12}$ では、位数が相異なる $4$ 点($5$ 点)の列の個数に等しいので、推移性から作用は鋭く $4$ 重($5$ 重)推移的である。$M_{22}$ の 22 点への作用の点の固定部分群は指数 $22$ の部分群で、作用が 2 重推移的なので極大部分群であり(古典群 の補題「2 重推移的な作用の固定部分群は極大」)、ATLAS の $M_{22}$ の極大部分群の表で指数 $22$ のものは $L_3(4)=\mathrm{PSL}_3(\mathbb{F}_4)$ だけである。
上の表の事実のもとで、$M_{11}$、$M_{12}$、$M_{22}$、$M_{23}$、$M_{24}$ はすべて単純群である。
$M_{11}$ は 11 点に鋭く 4 重推移的なので、thm-spor-m11 により単純である。$M_{12}$ は 12 点に 2 重推移的で、点の固定部分群 $M_{11}$ は単純、$12$ は素数の冪でないので、thm-spor-criterion により単純である。$M_{22}$ は 22 点に 2 重推移的で、点の固定部分群 $\mathrm{PSL}_3(\mathbb{F}_4)$ は単純(古典群 の定理「射影特殊線形群の単純性」)、$22$ は素数の冪でないので単純である。$M_{23}$ は素数 $23$ 個の点に推移的で、点の固定部分群 $M_{22}$ は単純、$\lvert M_{23}\rvert=10200960>23\cdot22$ なので、prop-spor-prime-degree により単純である。$M_{24}$ は 24 点に 2 重推移的で、点の固定部分群 $M_{23}$ は単純、$24$ は素数の冪でないので単純である。$\square$
$M_{11}\to M_{12}$ と $M_{22}\to M_{23}\to M_{24}$ は、点の固定部分群として 1 つ前の群を含む「1 点拡大」の列になっていて、単純性も列に沿って受け渡される。出発点の $M_{11}$ だけは固定部分群が単純でないので、thm-spor-m11 で直接示した。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| thm-spor-criterion の 2 重推移性 | $A_5\times A_5$ の $A_5$ への作用 $(g,h)\cdot x=gxh^{-1}$ | 正則な正規部分群があれば $\lvert X\rvert$ が素数の冪 |
| thm-spor-criterion の $G_x$ の単純性 | $S_5$ の 5 点への作用 | 単純であるか正則な正規部分群をもつ |
| thm-spor-m11 の 4 重推移性(2 重推移性に弱める) | $\{x\mapsto ax+b\mid a\in\mathbb{F}_{11}^\times,b\in\mathbb{F}_{11}\}$ の $\mathbb{F}_{11}$ への作用 | 単純であること |
| thm-spor-m11 の点の個数 $11$ | $S_4$ の 4 点への作用 | 単純であること |
| prop-spor-prime-degree の $\lvert G\rvert>p(p-1)$ | $S_3$ の 3 点への作用 | 単純であること |
1 行目:$A_5\times A_5$ は $A_5$(60 点)に推移的かつ忠実に作用し($(g,h)$ がすべての $x$ を固定すれば $x=1$ から $g=h$、さらに $g$ は $A_5$ の中心に属し $g=e$)、$1$ の固定部分群は対角部分群 $\{(g,g)\}\cong A_5$ で単純である。$A_5\times\{e\}$ は正則な正規部分群だが、$60$ は素数の冪でない。2 重推移的でないのは、$G_1$ が共役で作用するとき単位元でない元の位数が保たれ、位数 $2$ の元と位数 $3$ の元を写し合えないからである。
2 行目:$S_5$ は 5 点に 2 重推移的に作用し、$G_x\cong S_4$ は単純でない。$S_5$ の正規部分群 $N$ について $N\cap A_5$ は単純群 $A_5$ の正規部分群なので $\{e\}$ か $A_5$ であり、前者なら $\lvert N\rvert\le2$ で、位数 $2$ の正規部分群は中心に含まれるが $S_5$ の中心は自明なので $N=\{e\}$ である。よって正規部分群は $\{e\},A_5,S_5$ で、正則に作用するには位数 $5$ でなければならないので、正則な正規部分群はない。$S_5$ は単純でもない。
3 行目:この群は位数 $110$ で 11 点に鋭く 2 重推移的に作用し、平行移動の群 $\{x\mapsto x+b\}$ は位数 $11$ の正規部分群である。4 行目:$S_4$ は 4 点に鋭く 4 重推移的に作用するが、Klein の四元群を正規部分群にもつ。5 行目:$S_3$ は 3 点に推移的で、$G_x$ は位数 $2$ の単純群、$\lvert S_3\rvert=6=3\cdot2$ であり、$A_3$ を正規部分群にもつ。
散在型単純群が 26 個であることと群の一覧は Sol01 p. 341 と ATLAS による。表の位数、Mathieu 群の置換表現の推移度・点の固定部分群・極大部分群の表は ATLAS の各頁にある。Mathieu 群の位数と推移度は、ATLAS に載っている標準生成元の置換から有限の計算でも確かめられる。thm-spor-criterion、thm-spor-m11、cor-spor-mathieu とそれらの補題は、引用した記事の定理と表の事実を除いて記事の中で証明した。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する