安定ベクトル束の分類とK群の表現

同義語:classification of stable vector bundles and representability of K-theory

概要

安定ベクトル束の分類とK群の表現(classification of stable vector bundles and representability of K-theory)とは、自明束を足して同型になる束を同一視した安定同型類が、有限連結 CW 複体 $X$ の上で簡約 $K$ 群 $\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)$ をなし、それが $B\mathbb{K}=\bigcup_n\mathrm{Gr}_n(\mathbb{K}^{2n})$ への写像のホモトピー類と一対一に対応するという定理である($\mathbb{K}=\mathbb{R},\mathbb{C}$)。証明は、階数が大きければ安定同型が同型であることと、有限次元の Grassmann 多様体による分類による。直和は段ごとに直和をとる写像に対応する。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ベクトル束の安定域, 位相的K理論, ベクトル束の分類定理, CW複体

ベクトル束を「自明束を足せば同型になる」という安定同型の範囲でしか区別しないとき、その同型類を安定ベクトル束の類という。有限連結 CW 複体の上では、安定同型類の全体は直和について群をなし、位相的K理論 の簡約 K 群 $\widetilde K(X)$ と一致する。この記事の主題は、この群が一つの決まった空間
$$ B\mathbb{K}:=\bigcup_{n\ge1}\mathrm{Gr}_n(\mathbb{K}^{2n}) $$
への写像のホモトピー類として表されること、すなわち有限連結 CW 複体 $X$ について
$$ \widetilde K_{\mathbb{K}}(X)\cong[X,B\mathbb{K}] $$
が成り立つことである。$\mathbb{K}=\mathbb{R}$ では $B\mathbb{R}$ を $BO$、$\mathbb{K}=\mathbb{C}$ では $B\mathbb{C}$ を $BU$ と書く。
ベクトル束の分類定理 は階数を固定した束を $\mathrm{Gr}_k(\mathbb{K}^\infty)$ で分類する。安定類では階数を忘れるので、「階数と周りの空間の次元を同時に増やす」極限 $B\mathbb{K}$ が現れる。証明の材料は ベクトル束の安定域 の 2 つの定理、すなわち底空間の次元に比べて階数が大きければ安定同型は同型であることと、有限次元の Grassmann 多様体による分類である。この記事では次のことを示す。

問い答え
安定同型類は群をなすか連結な有限次元 CW 複体の上で群をなし、十分大きい階数 $k$ の束の同型類と一対一に対応する(prop-svk-group)
有限連結 CW 複体ではどの群になるか簡約 K 群 $\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)$(同)
写像で表せるか有限連結 CW 複体では $\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)\cong[X,B\mathbb{K}]$ で、直和は段ごとの「直和をとる写像」に対応する(thm-svk-main)
条件を外すと連結でない空間、有限の段で止めた場合、階数が小さい場合に破れる(反例の表)

記号は ベクトル束の安定域 にそろえる。$\mathbb{K}$ は $\mathbb{R}$ または $\mathbb{C}$、$c:=\dim_{\mathbb{R}}\mathbb{K}$、$\varepsilon^n$ は自明束、$\operatorname{Vect}^k(X)$ は階数 $k$ の束の同型類の集合、$\gamma_{k,N}$ は $\mathrm{Gr}_k(\mathbb{K}^N)$ 上のトートロジー束である。コンパクト Hausdorff 空間 $X$ について、$K_{\mathbb{K}}(X)$ は束の同型類のなす可換モノイドの Grothendieck 群、$\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)$ は基点への制限の核である(位相的K理論 の定義「K 群」とその直後の段落。$\mathbb{K}=\mathbb{C}$ なら $K$、$\mathbb{K}=\mathbb{R}$ なら $KO$)。$K_{\mathbb{K}}(X)$ と $S_{\mathbb{K}}(X)$ を考えるときは、位相的K理論 と同じく、階数が局所定数の束($X$ を開かつ閉な集合に分け、それぞれの上で階数一定の束を並べたもの)も許す。$X$ が連結なら束の階数は一定である。

安定同型類の群

安定同型類

$X$ を位相空間とする。$X$ 上の $\mathbb{K}$ ベクトル束(階数は問わない)の安定同型類(ベクトル束の安定域 の定義「安定化写像」)の集合を $S_{\mathbb{K}}(X)$ と書き、直和 $[\xi]+[\eta]:=[\xi\oplus\eta]$ を入れる。

安定同型な束に同じ束を足したものは安定同型なので、和は矛盾なく定まり、$S_{\mathbb{K}}(X)$ は $[\varepsilon^0]$(自明束の類)を零元とする可換モノイドである。

安定同型類の群と安定域

$X$ を連結な $d$ 次元 CW 複体とする。

  1. $S_{\mathbb{K}}(X)$ はアーベル群である。
  2. $d\le c(k+1)-2$ を満たす $k$ について、$[\xi]\mapsto[\xi]$ で定まる $\operatorname{Vect}^k(X)\to S_{\mathbb{K}}(X)$ は全単射である。とくに $S_{\mathbb{K}}(X)$ は $[X,\mathrm{Gr}_k(\mathbb{K}^\infty)]$、および $d\le c(m+1)-2$ を満たす $m$ について $[X,\mathrm{Gr}_k(\mathbb{K}^{k+m})]$ と一対一に対応する。
  3. $X$ が有限 CW 複体なら、$[\xi]\mapsto[\xi]-\operatorname{rank}\xi$ は群の同型 $S_{\mathbb{K}}(X)\to\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)$ である。

1:$[\xi]$ の逆元を作る。ベクトル束の安定域 の系「補束と一般の打ち消し」の 1 により、ある束 $\eta$ と $N$ で $\xi\oplus\eta\cong\varepsilon^N$ となり、$[\xi]+[\eta]=[\varepsilon^N]=[\varepsilon^0]$ である。
2:全射:$\xi$ の階数を $r$ とする。$r\le k$ なら $\xi\oplus\varepsilon^{k-r}$ は $\xi$ と安定同型で階数 $k$ である。$r>k$ なら、$k\le j< r$ について $d\le c(k+1)-2< c(j+1)-1$ なので、ベクトル束の安定域 の定理「安定域の定理」の 1 を階数 $r,r-1,\dots,k+1$ に順に当てて、$\xi\cong\xi'\oplus\varepsilon^{r-k}$($\xi'$ は階数 $k$)を得る。$\xi'$ は $\xi$ と安定同型である。単射:同記事の系「自明な部分の分離と打ち消し」の 2 による。後半は ベクトル束の分類定理 の定理「ベクトル束の分類定理」(CW 複体はパラコンパクト Hausdorff)と ベクトル束の安定域 の定理「有限次元の Grassmann 多様体による分類」の 2 による。
3:有限 CW 複体はコンパクト Hausdorff であり、連結なので階数は一定である。$\xi\oplus\varepsilon^a\cong\eta\oplus\varepsilon^b$ なら $K_{\mathbb{K}}(X)$ で $[\xi]-\operatorname{rank}\xi=[\eta]-\operatorname{rank}\eta$ なので、写像は矛盾なく定まり、基点での階数は $0$ なので値は $\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)$ に入る。和を保つことは明らかである。全射:$\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)$ の元 $[\xi]-[\zeta]$ について、1 の補束 $\zeta'$($\zeta\oplus\zeta'\cong\varepsilon^N$)をとると $[\xi]-[\zeta]=[\xi\oplus\zeta']-N$ で、基点での階数が $0$ なので $N=\operatorname{rank}(\xi\oplus\zeta')$ である。単射:$[\xi]-\operatorname{rank}\xi=0$ なら、Grothendieck 群の定義によりある束 $G$ について $\xi\oplus G\cong\varepsilon^{r}\oplus G$($r=\operatorname{rank}\xi$)であり、$G$ の補束を足すと $\xi\oplus\varepsilon^M\cong\varepsilon^{r+M}$、すなわち $[\xi]=0$ である。$\square$

3 の複素の場合は 位相的K理論 の系「安定同型」の 3 と同じ内容で、実の場合も補束の存在から同じ議論が通る。2 により、有限連結 CW 複体では $\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)$ は十分大きい $k$ について $\operatorname{Vect}^k(X)$ と同じものであり、ベクトル束の安定域 の定理「有限次元の Grassmann 多様体による分類」によって有限次元の Grassmann 多様体への写像で表される。主定理は、この表示を $k$ によらない一つの空間にまとめる。

空間 $B\mathbb{K}$

$G_n:=\mathrm{Gr}_n(\mathbb{K}^{2n})$ とおく。$\mathbb{K}^{2n}\subset\mathbb{K}^{2n+2}$ を最初の $2n$ 個の座標として、
$$ j_n\colon G_n\to G_{n+1},\qquad W\mapsto W\oplus\mathbb{K}e_{2n+2} $$
とする。$j_n$ は包含 $\mathrm{Gr}_n(\mathbb{K}^{2n})\subset\mathrm{Gr}_n(\mathbb{K}^{2n+1})$ と ベクトル束の安定域 の命題「安定化と包含の可換性」の写像 $\iota$($N=2n+1$)の合成である。

安定 Grassmann 多様体

列 $G_1\xrightarrow{j_1}G_2\xrightarrow{j_2}\cdots$ の和集合($W$ と $j_n(W)$ を同じ点とみる)を $B\mathbb{K}$ と書き、$U\subset B\mathbb{K}$ が開であることを、すべての $n$ で $U\cap G_n$ が $G_n$ の開集合であることと定める(直極限位相)。$BO:=B\mathbb{R}$、$BU:=B\mathbb{C}$ と書く。

有限の段
  1. $j_n$ は連続な単射で、$G_n$ を $G_{n+1}$ の閉部分空間に写す同相写像である。各 $G_n$ は $B\mathbb{K}$ の閉集合で、$G_n$ 自身の位相は $B\mathbb{K}$ からの相対位相と一致する。
  2. $B\mathbb{K}$ のコンパクト集合はある $G_n$ に含まれる。とくにコンパクト空間 $K$ からの連続写像 $K\to B\mathbb{K}$ と、そのホモトピー $K\times[0,1]\to B\mathbb{K}$ は、ある $G_n$ への連続写像である。
  3. $B\mathbb{K}$ は弧状連結である。
  4. $j_n^*\gamma_{n+1,2n+2}\cong\gamma_{n,2n}\oplus\varepsilon^1$ である。

要点:$G_n$ はコンパクト Hausdorff なので $j_n$ は閉埋め込みであり、コンパクト集合が無限個の段にまたがると、各段と有限個の点でしか交わらない無限集合が取り出せて、それは離散な閉集合になる。

詳しい証明を開く

1:$\iota$ は連続で(ベクトル束の安定域 の命題「安定化と包含の可換性」)、包含 $\mathrm{Gr}_n(\mathbb{K}^{2n})\to\mathrm{Gr}_n(\mathbb{K}^{2n+1})$ も行列に $0$ の行を加える連続写像から誘導されるので連続である。$j_n$ は明らかに単射で、$G_n$ はコンパクト、$G_{n+1}$ は Hausdorff(Grassmann多様体 の定理「多様体の構造」の 2)なので、$j_n$ は像の上への同相写像で像は閉集合である。$C\subset G_n$ が閉なら、$m\ge n$ では $C$ の $G_m$ への像は閉埋め込みの合成による閉集合の像なので閉であり、$m< n$ では $C\cap G_m$ は $G_m\to G_n$ による $C$ の逆像なので閉である。よって $C$ は $B\mathbb{K}$ の閉集合であり、主張が従う。

2:コンパクト集合 $K'\subset B\mathbb{K}$ がどの $G_n$ にも含まれないとする。$y_1\in K'$ と $y_1\in G_{n_1}$ となる $n_1$ をとり、$y_2\in K'\setminus G_{n_1}$ と $y_2\in G_{n_2}$ となる $n_2>n_1$ をとり、以下同様に $y_i$、$n_i$ を選ぶ。$T:=\{y_i\}$ は無限集合で、各 $G_n$ とは有限個の点でしか交わらない($G_n\subset G_{n_i}$ となる $i$ をとれば $y_{i+1},y_{i+2},\dots\notin G_n$)。$T$ のどの部分集合も各 $G_n$ との交わりが Hausdorff 空間の有限集合で閉なので、$B\mathbb{K}$ の閉集合である。よって $T$ は $K'$ の離散な閉部分集合で無限なので、$K'$ のコンパクト性に反する。後半:像はある $G_n$ に入り、1 により $G_n$ への写像としても連続である。

3:$SO(2n)$($\mathbb{K}=\mathbb{C}$ なら $U(2n)$)は弧状連結で、$W_0:=\mathrm{span}(e_1,\dots,e_n)$ を動かして $G_n$ の全体に推移的に作用する(Grassmann多様体 の命題「等質空間としての記述」の 2。実の場合は $O(n)\times O(n)$ に行列式 $-1$ の元があるので、$SO(2n)$ でも推移的である)。よって各 $G_n$ は弧状連結で、$W_0$ は $j_n$ で $G_{n+1}$ の点に写るので、$B\mathbb{K}$ は弧状連結である。

4:包含 $\mathrm{Gr}_n(\mathbb{K}^{2n})\subset\mathrm{Gr}_n(\mathbb{K}^{2n+1})$ による $\gamma_{n,2n+1}$ の引き戻しは $\gamma_{n,2n}$ と同型であり(ファイバーはどちらも $W$ 自身)、ベクトル束の安定域 の命題「安定化と包含の可換性」により $\iota^*\gamma_{n+1,2n+2}\cong\gamma_{n,2n+1}\oplus\varepsilon^1$ である。$\square$

主定理:写像による表現

$f\colon X\to B\mathbb{K}$ の像が $G_n$ に入るとき、$f^*\gamma_{n,2n}$ は階数 $n$ の束である。lem-svk-stage の 4 により、$f$ を $G_{n+1}$ への写像とみて引き戻しても $f^*\gamma_{n,2n}\oplus\varepsilon^1$ になるだけなので、$[f^*\gamma_{n,2n}]-n\in\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)$ は $n$ の選び方によらない。
直和に対応する写像も段ごとに定める。$d_{\mathrm o},d_{\mathrm e}\colon\mathbb{K}^{2n}\to\mathbb{K}^{4n}$ を $d_{\mathrm o}(e_i):=e_{2i-1}$、$d_{\mathrm e}(e_i):=e_{2i}$ で定まる線形写像とし、
$$ \mu_n\colon G_n\times G_n\to G_{2n},\qquad(W,W')\mapsto d_{\mathrm o}(W)\oplus d_{\mathrm e}(W') $$
とおく。$d_{\mathrm o}$ と $d_{\mathrm e}$ の像は互いに直交する座標部分空間なので、右辺は $2n$ 次元である。

K群の表現定理

$X$ を有限連結 CW 複体とする。

  1. $f$ の像が $G_n$ に入るとき $\theta_X([f]):=[f^*\gamma_{n,2n}]-n$ とおくと、$\theta_X\colon[X,B\mathbb{K}]\to\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)$ は矛盾なく定まる全単射である。
  2. 有限連結 CW 複体の間の連続写像 $h\colon Y\to X$ について $\theta_Y([f\circ h])=h^*\theta_X([f])$ である。
  3. $f,g\colon X\to G_n$ について $\theta_X([\mu_n\circ(f,g)])=\theta_X([f])+\theta_X([g])$ である。したがって $[f]+[g]:=[\mu_n\circ(f,g)]$ は $[X,B\mathbb{K}]$ の上の演算として矛盾なく定まり、$\theta_X$ はアーベル群の同型になる。零元は定値写像の類である。
    とくに、$K_{\mathbb{K}}(X)=\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)\oplus\mathbb{Z}$(階数で分ける)により $K_{\mathbb{K}}(X)\cong[X,\mathbb{Z}\times B\mathbb{K}]$ である。

$X$ の次元を $d$ とする。$X$ はコンパクト Hausdorff である(CW複体 の命題「有限 CW 複体はコンパクト」)。
矛盾なく定まること:$f_0\simeq f_1$ とすると、lem-svk-stage の 2 によりホモトピー $X\times[0,1]\to B\mathbb{K}$ はある $G_N$ への連続写像である。ベクトル束の分類定理 の定理「引き戻しのホモトピー不変性」により $f_0^*\gamma_{N,2N}\cong f_1^*\gamma_{N,2N}$ であり、上で見たとおり $\theta_X([f_i])=[f_i^*\gamma_{N,2N}]-N$ なので、両者は等しい。
全射:$x\in\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)$ をとる。prop-svk-group の 3 により $x=[\xi]-\operatorname{rank}\xi$ となる束 $\xi$ がある。$n\ge\operatorname{rank}\xi$ を $d\le c(n+1)-1$ となるようにとり、$\xi':=\xi\oplus\varepsilon^{n-\operatorname{rank}\xi}$ とおく。ベクトル束の安定域 の定理「有限次元の Grassmann 多様体による分類」の 1($k=m=n$)により $\xi'\cong f^*\gamma_{n,2n}$ となる $f\colon X\to G_n$ があり、$\theta_X([f])=[\xi']-n=x$ である。
単射:$\theta_X([f])=\theta_X([g])$ とする。$X$ はコンパクトなので、lem-svk-stage の 2 により $f,g$ はある $G_N$ への写像で、$N$ は大きくとり直して $d\le c(N+1)-2$ としてよい。$\xi:=f^*\gamma_{N,2N}$、$\eta:=g^*\gamma_{N,2N}$ は階数 $N$ で $[\xi]-N=[\eta]-N$ なので、prop-svk-group の 3 により安定同型であり、ベクトル束の安定域 の系「自明な部分の分離と打ち消し」の 2 により $\xi\cong\eta$ である。同記事の定理「有限次元の Grassmann 多様体による分類」の 2($k=m=N$)により $f\simeq g$($G_N$ の中で、したがって $B\mathbb{K}$ の中で)である。
2:$(f\circ h)^*\gamma_{n,2n}\cong h^*f^*\gamma_{n,2n}$ による。
3:$\mu_n$ は、列が線形独立な $2n\times n$ 行列の組 $(M,M')$ に、列が $d_{\mathrm o}M$ の列と $d_{\mathrm e}M'$ の列からなる $4n\times2n$ 行列を対応させる連続写像から誘導されるので連続である(行列にその列の張る部分空間を対応させる写像は、$\mathrm{GL}$ の作用による飽和が開集合を開集合に保つので開写像であり、その 2 つの直積も商写像である)。$\mathrm{pr}_1^*\gamma_{n,2n}\oplus\mathrm{pr}_2^*\gamma_{n,2n}\to\mu_n^*\gamma_{2n,4n}$、$(v,w)\mapsto d_{\mathrm o}v+d_{\mathrm e}w$ は連続な束写像で、各ファイバーで線形同型なので束同型である(ベクトル束の直和・テンソル積 の補題「ファイバーごとに同型な束写像は束同型」)。$(f,g)$ で引き戻すと $(\mu_n\circ(f,g))^*\gamma_{2n,4n}\cong f^*\gamma_{n,2n}\oplus g^*\gamma_{n,2n}$ なので、
$$ \theta_X([\mu_n\circ(f,g)])=[f^*\gamma_{n,2n}\oplus g^*\gamma_{n,2n}]-2n=\theta_X([f])+\theta_X([g]) $$
である。$[X,B\mathbb{K}]$ の任意の 2 元は、lem-svk-stage の 2 により共通の $G_n$ への写像で代表される。左辺の類は 1 の全単射により $\theta_X^{-1}(\theta_X([f])+\theta_X([g]))$ に等しいので、代表の選び方によらない。群の公理は $\theta_X$ で $\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)$ から移る。定値写像 $c$ について $c^*\gamma_{n,2n}$ は自明なので $\theta_X([c])=0$ であり、定値写像どうしは lem-svk-stage の 3 によりホモトピックである。
最後の主張:$X$ は連結なので、$X$ から離散空間 $\mathbb{Z}$ への写像は定値であり、$[X,\mathbb{Z}\times B\mathbb{K}]=\mathbb{Z}\times[X,B\mathbb{K}]$ である。$(r,[f])\mapsto r+\theta_X([f])$ が全単射を与える。$\square$

証明は 2 段に分かれている。安定化の側では、十分大きい階数で安定同型が同型になること(ベクトル束の安定域 の定理「安定域の定理」)により、$\widetilde K_{\mathbb{K}}(X)$ を一つの $\operatorname{Vect}^N(X)$ に置き換える。分類の側では、$\operatorname{Vect}^N(X)$ が有限次元の $G_N=\mathrm{Gr}_N(\mathbb{K}^{2N})$ への写像で分類され、しかも段を上げる $j_N$ と両立する。$X$ がコンパクトであることは、写像とホモトピーが有限の段に収まることに使った。Hus94 第 9 章では、Theorem 3.8(p. 117)が prop-svk-group の 3 にあたり、Theorem 4.2(p. 118)と Proposition 4.4(p. 119)がこの 2 段にあたる。
3 の演算は、写像の段ごとに定めた $\mu_n$ を使い、ホモトピー類の上でだけ定めている。Hus94 第 9 章 Theorem 4.5(pp. 119–120)は $\mu_n$ を段について両立させて連続写像 $B\mathbb{K}\times B\mathbb{K}\to B\mathbb{K}$ を作り、$B\mathbb{K}$ を H空間 にしている。その場合は直積 $B\mathbb{K}\times B\mathbb{K}$ の位相と各段の直積の直極限の位相を比べる必要がある。この記事ではその構成は扱わない。

例

円周

$X=S^1$ とする。円周上のベクトル束の分類 の定理「円周上のベクトル束の分類」により、$S^1$ 上の階数 $k\ge1$ の実ベクトル束は $\varepsilon^k$ と $M\oplus\varepsilon^{k-1}$($M$ は Möbius 束)の 2 つである。$M\oplus M\cong\varepsilon^2$ であり、$M\oplus\varepsilon^k$ はどの $k$ でも自明でない(ベクトル束の直和・テンソル積 の命題「Möbius 束の直和は自明」「Möbius 束は安定的にも自明でない」)。よって $\widetilde{KO}(S^1)\cong\mathbb{Z}/2$ で、thm-svk-main により $[S^1,BO]$ はちょうど 2 元からなり、その群構造は $\mathbb{Z}/2$ である。一方、複素ベクトル束は $S^1$ 上ですべて自明なので(位相的K理論 の命題「円周上の複素ベクトル束」)、$\widetilde K(S^1)=0$ であり、$S^1$ から $BU$ への写像はすべて定値写像にホモトピックである。

2 次元球面

$X=S^2$、$\mathbb{K}=\mathbb{C}$ とする。$d=2\le c(1+1)-2=2$ なので、prop-svk-group の 2 により $\widetilde K(S^2)$ は複素直線束の同型類 $\operatorname{Vect}^1(S^2)$ と一対一に対応し、ベクトル束の安定域 の定理「有限次元の Grassmann 多様体による分類」の 2($k=m=1$)により $[S^2,\mathrm{Gr}_1(\mathbb{C}^2)]=[S^2,\mathbb{C}\mathrm{P}^1]$ とも一対一に対応する。位相的K理論 の定理「Bott の周期性定理」により $\widetilde K(S^2)\cong\mathbb{Z}$ なので、この 3 つの集合はどれも整数と一対一に対応し、主定理により $[S^2,BU]$ もそうである。実の場合、$TS^2$ は $TS^2\oplus\varepsilon^1\cong\varepsilon^3$ を満たすので(ベクトル束 の命題「球面の接束は安定的に自明」)、$\widetilde{KO}(S^2)$ では $[TS^2]-2=0$ であり、$\theta_{S^2}$ でこの元に対応する $BO$ への写像は定値写像にホモトピックである。

反例:条件を外すと

外す条件反例成り立たなくなること
$X$ が連結(thm-svk-main)2 点からなる $X=S^0$$\theta_X$ が全単射であること
段を上げて $B\mathbb{K}$ を使うこと(有限の段 $G_1=\mathrm{Gr}_1(\mathbb{C}^2)$ で止める)$X=S^4$、$\mathbb{K}=\mathbb{C}$$[X,G_1]\to\widetilde K(X)$、$[f]\mapsto[f^*\gamma_{1,2}]-1$ が全射であること
$d\le c(k+1)-2$(prop-svk-group の 2)$X=S^2$、$\mathbb{K}=\mathbb{R}$、$k=2$$\operatorname{Vect}^2(X)\to S_{\mathbb{R}}(X)$ が単射であること
表の確かめ

1 行目:$S^0=\{x_0,x_1\}$(基点 $x_0$)上の束は 2 点のファイバーの次元の組 $(a,b)$ で決まり、$K_{\mathbb{K}}(S^0)\cong\mathbb{Z}^2$、$\widetilde K_{\mathbb{K}}(S^0)\cong\mathbb{Z}$($x_1$ での次元から $x_0$ での次元を引いたもの)である。一方 $B\mathbb{K}$ は弧状連結なので(lem-svk-stage の 3)、$S^0$ から $B\mathbb{K}$ への写像はすべてホモトピックで、$[S^0,B\mathbb{K}]$ は 1 点である。$S^0$ は有限 CW 複体である。
2 行目:$S^4$ 上の複素直線束は、$H^2(S^4;\mathbb{Z})=0$ と、CW 複体の上の複素直線束が $H^2(X;\mathbb{Z})$ と一対一に対応すること(ベクトル束の分類定理 の例「直線束と無限次元射影空間」が引用する結果。この記事では証明しない)によりすべて自明である。よって $[f^*\gamma_{1,2}]-1=0$ である。一方 位相的K理論 の定理「Bott の周期性定理」により $\widetilde K(S^4)\cong\mathbb{Z}\ne0$ である。$B\mathbb{K}$ を使えば thm-svk-main により全射になる。
3 行目:$d=2$、$c(2+1)-2=1$ で条件が外れている。$TS^2\oplus\varepsilon^1\cong\varepsilon^2\oplus\varepsilon^1$ なので $TS^2$ と $\varepsilon^2$ は $S_{\mathbb{R}}(S^2)$ の同じ元に写るが、毛玉の定理 により $TS^2\not\cong\varepsilon^2$ である。全射性は保たれている(ベクトル束の安定域 の例「2 次元球面の接束」)。

補足

有限でない CW 複体 prop-svk-group の 1・2 は有限次元なら胞体が無限個でも成り立ち、$S_{\mathbb{K}}(X)$ は $[X,\mathrm{Gr}_k(\mathbb{K}^\infty)]$($k$ は十分大きい)で表される。一方 $X$ がコンパクトでないと、写像が有限の段に収まらず、thm-svk-main の証明は使えない。位相的K理論 の反例の表の 4 行目は、偶数次元の球面の可算個の一点和の上で、$BU$ への写像が有限階数の束の差で表されない例である。
四元数の場合 Hus94 第 9 章 Theorem 4.5(p. 119)は四元数体 $\mathbb{H}$ も含めて同じ形の同型を述べ、$B\mathbb{H}$ を $BSp$ と書く。四元数ベクトル束にはテンソル積がないので $K_{\mathbb{H}}$ は群にとどまる(同章 Example 3.1・Definition 3.4、pp. 115–116)。この記事では四元数の場合は証明しない。
球面と古典群 $X=S^i$ では $\widetilde K_{\mathbb{K}}(S^i)$ は古典群のホモトピー群で計算される(Hus94 第 9 章 Theorem 5.1、p. 120)。球面上の束をクラッチング関数で調べる方法は 球面上のベクトル束の分類 で扱う。

関連項目

参考文献

[1]
Dale Husemoller, Fibre Bundles, Graduate Texts in Mathematics 20, 3rd ed., Springer, 1994, 第 9 章 Example 3.1(p. 115)、Definition 3.4(p. 116)、Theorem 3.8(p. 117)、Theorem 4.2(p. 118)、Proposition 4.4・Theorem 4.5(pp. 119–120)、Theorem 5.1(p. 120)

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する