Wallis積分とガンマ関数

同義語:Wallis integrals and the gamma function

概要

Wallis積分とガンマ関数(Wallis integrals and the gamma function)は、Wallis 積分 $I_n=\int_0^{\pi/2}\sin^nx\,dx$ の計算がガンマ関数 $\Gamma(s)=\int_0^\infty t^{s-1}e^{-t}dt$($s>0$)の性質の特別な場合であるという関係である。部分積分から $\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$、$\Gamma(n+1)=n!$、Gauss 積分から $\Gamma(\frac12)=\sqrt\pi$ が得られ、$I_n=\frac{\sqrt\pi}2\Gamma(\frac{n+1}2)/\Gamma(\frac n2+1)$ となる。漸化式 $I_n=\frac{n-1}nI_{n-2}$ は関数等式の特別な場合である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Wallis積分(高校数学), Gauss積分(高校数学), 部分積分, 置換積分, 階乗

高校での出発点:階乗を積分で表す

部分積分をくり返すと、階乗が積分で表せる。まず有限の区間で計算する。

t e^{-t} と t² e^{-t} の積分
  1. $(te^{-t})$ の積分:$\bigl(-te^{-t}-e^{-t}\bigr)'=-e^{-t}+te^{-t}+e^{-t}=te^{-t}$ なので
    $$ \int_0^Rte^{-t}\,dt=\bigl[-te^{-t}-e^{-t}\bigr]_0^R=1-(R+1)e^{-R} $$
    である。$R\to\infty$ で $(R+1)e^{-R}\to0$ なので、極限は $1=1!$ である。
  2. $(t^2e^{-t})$ の積分:部分積分で $\int_0^Rt^2e^{-t}dt=\bigl[-t^2e^{-t}\bigr]_0^R+2\int_0^Rte^{-t}dt$ であり、$R\to\infty$ で $0+2\cdot1=2=2!$ に近づく(境界の項は $-R^2e^{-R}$ で、$R\to\infty$ で $R^2e^{-R}\to0$ である)。
    同じ計算をくり返すと、$\int_0^\infty t^ne^{-t}dt=n!$ となりそうである。

右辺の $n!$ は整数 $n$ にしか意味がないが、左辺の積分は $n$ を $\frac12$ などの実数にしても意味をもつ。これがガンマ関数である。一方、Wallis積分(高校数学) $I_n=\int_0^{\pi/2}\sin^nx\,dx$ の値は、偶数番目に $\pi$、奇数番目に階乗の比が現れた。この記事では、Wallis 積分のこの形が、ガンマ関数の性質から一度に説明できることを示す。

高校の計算ガンマ関数の言葉本記事の箇所
部分積分で $\int t^ne^{-t}$ の次数を下げる$\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$prop-wg-gamma
$\int_0^\infty t^ne^{-t}dt=n!$$\Gamma(n+1)=n!$prop-wg-gamma
Gauss 積分 $\int_0^\infty e^{-x^2}dx=\frac{\sqrt\pi}2$$\Gamma(\frac12)=\sqrt\pi$prop-wg-gamma
漸化式 $I_n=\frac{n-1}nI_{n-2}$$\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$ を $s=\frac{n-1}2,\ \frac n2$ に使うprop-wg-wallis-gamma、ex-wg-dictionary
$I_n$ の偶奇の違い$\Gamma$ を整数で見るか半整数で見るかex-wg-dictionary
積の保存 $nI_nI_{n-1}=\frac\pi2$$\Gamma(\frac{n+1}2)$ の約分ex-wg-dictionary

ガンマ関数

ガンマ関数の定義

$s>0$ について
$$ \Gamma(s):=\int_0^\infty t^{s-1}e^{-t}\,dt $$
と定め、$\Gamma$ をガンマ関数という(Γ関数)。$s\ge1$ では区間 $[0,\infty)$ の広義積分、$0< s<1$ では $t=0$ の近くでも被積分関数が大きくなるので、区間 $(0,\infty)$ の広義積分($\int_0^1$ と $\int_1^\infty$ に分けて、それぞれの極限をとる)である。

この広義積分が $s>0$ で収束することは、本記事では証明しない(Rud76 第 8 章)。

Γ(1) と Γ(2)
  1. $\Gamma(1)=\int_0^\infty e^{-t}dt=\lim_{R\to\infty}\bigl[-e^{-t}\bigr]_0^R=\lim_{R\to\infty}(1-e^{-R})=1$ である。
  2. $\Gamma(2)=\int_0^\infty te^{-t}dt=1$ である(ex-wg-factorial-integrals の 1)。
ガンマ関数の基本的な値
  1. $s>0$ について $\Gamma(s+1)=s\,\Gamma(s)$ である。
  2. $\Gamma(1)=1$ であり、$n=0,1,2,\dots$ について $\Gamma(n+1)=n!$ である。
  3. $\Gamma(\frac12)=\sqrt\pi$ である。
部分積分と Gauss 積分

方針:1 は有限の区間 $[\varepsilon,R]$ で部分積分し、極限をとる。2 は 1 をくり返す。3 は $t=x^2$ の置換で Gauss 積分に直す。
段 1(1 の部分積分):$0<\varepsilon< R$ とする。$f(t)=t^s$、$g(t)=-e^{-t}$ として部分積分すると、$f'(t)=st^{s-1}$、$g'(t)=e^{-t}$ なので
$$ \int_\varepsilon^Rt^se^{-t}\,dt=\Bigl[-t^se^{-t}\Bigr]_\varepsilon^R+s\int_\varepsilon^Rt^{s-1}e^{-t}\,dt $$
である。
段 2(1 の極限):境界の項は $\varepsilon^se^{-\varepsilon}-R^se^{-R}$ である。$s>0$ なので $\varepsilon\to+0$ で $\varepsilon^s\to0$、$e^{-\varepsilon}\to1$ であり、$\varepsilon^se^{-\varepsilon}\to0$ である。また $R\to\infty$ で $R^se^{-R}\to0$ である(指数関数は冪関数より速く大きくなる)。段 1 の式の 2 つの積分は、$\varepsilon\to+0$、$R\to\infty$ でそれぞれ $\Gamma(s+1)$、$\Gamma(s)$ に近づく(どちらの広義積分も収束することは上で引用した。また $\varepsilon$ と $R$ を互いに独立に動かした極限は、$\int_0^1$ と $\int_1^\infty$ に分けた定義の値と一致する。$\int_\varepsilon^R=\int_\varepsilon^1+\int_1^R$ と分ければ、それぞれが一方の文字だけの極限になるからである)。よって $\varepsilon\to+0$、$R\to\infty$ として $\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$ を得る。
段 3(2):$\Gamma(1)=1$ は ex-wg-small の 1 である。$\Gamma(n+1)=n!$ を $n$ についての帰納法で示す。$n=0$ では $\Gamma(1)=1=0!$ である。$\Gamma(n)=(n-1)!$ なら、1 により $\Gamma(n+1)=n\Gamma(n)=n\cdot(n-1)!=n!$ である。
段 4(3):$0<\varepsilon< R$ で $t=x^2$($x>0$)と置換すると $dt=2x\,dx$、$t^{-1/2}=\frac1x$ なので
$$ \int_\varepsilon^Rt^{-1/2}e^{-t}\,dt=\int_{\sqrt\varepsilon}^{\sqrt R}\frac1x\,e^{-x^2}\cdot2x\,dx=2\int_{\sqrt\varepsilon}^{\sqrt R}e^{-x^2}\,dx $$
である。$\varepsilon\to+0$、$R\to\infty$ とすると、Gauss積分(高校数学)により右辺は $2\cdot\frac{\sqrt\pi}2=\sqrt\pi$ に近づく。よって $\Gamma(\frac12)=\sqrt\pi$ である。$\square$

$\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$ を導いた部分積分で、どちらを微分する側に選ぶかの考え方は 部分積分の使い方 で扱う。

半整数での値

prop-wg-gamma の 1 と 3 から、
$$ \Gamma\Bigl(\frac32\Bigr)=\frac12\Gamma\Bigl(\frac12\Bigr)=\frac{\sqrt\pi}2=0.8862\ldots,\qquad \Gamma\Bigl(\frac52\Bigr)=\frac32\Gamma\Bigl(\frac32\Bigr)=\frac{3\sqrt\pi}4=1.3293\ldots,\qquad \Gamma\Bigl(\frac72\Bigr)=\frac52\cdot\frac{3\sqrt\pi}4=\frac{15\sqrt\pi}8 $$
である。整数では $\Gamma(3)=2$、$\Gamma(4)=6$、$\Gamma(5)=24$ である(図 1)。整数点では階乗、半整数点では $\sqrt\pi$ の有理数倍が現れる。

図1:!FORMULA[104][856055513][0] のグラフ。整数点で !FORMULA[105][1232621762][0]、!FORMULA[106][841629927][0] で !FORMULA[107][1875492167][0] をとる 図1:$y=\Gamma(s)$ のグラフ。整数点で $\Gamma(n+1)=n!$、$s=\frac12$ で $\sqrt\pi$ をとる

反例:s = 0 では積分が収束しない

$s=0$ のときの積分 $\int_0^1t^{-1}e^{-t}dt$ を考える。$0< t\le1$ では $e^{-t}\ge e^{-1}$ なので、$0<\varepsilon<1$ について
$$ \int_\varepsilon^1\frac{e^{-t}}t\,dt\ge e^{-1}\int_\varepsilon^1\frac{dt}t=e^{-1}\log\frac1\varepsilon $$
であり、右辺は $\varepsilon\to+0$ で限りなく大きくなる($\varepsilon=0.1,\ 0.01,\ 0.001$ で $0.84\ldots,\ 1.69\ldots,\ 2.54\ldots$。左辺の数値は $1.60\ldots,\ 3.81\ldots,\ 6.11\ldots$)。よって $\Gamma(0)$ は定まらない。定義の条件 $s>0$ を外すと積分が収束せず、$\Gamma(1)=0\cdot\Gamma(0)$ のように prop-wg-gamma の 1 を $s=0$ に使うこともできない。

Wallis 積分をガンマ関数で書く

Wallis 積分のガンマ関数表示

$n=0,1,2,\dots$ について
$$ I_n=\frac{\sqrt\pi}2\cdot\frac{\Gamma\bigl(\frac{n+1}2\bigr)}{\Gamma\bigl(\frac n2+1\bigr)} $$
である。

同じ漸化式と初めの値

方針:右辺を $K_n$ とおき、$K_n$ が $I_n$ と同じ初めの値と同じ漸化式をもつことを示す。すると帰納法で $I_n=K_n$ である。
段 1(初めの値):prop-wg-gamma により
$$ K_0=\frac{\sqrt\pi}2\cdot\frac{\Gamma(\frac12)}{\Gamma(1)}=\frac{\sqrt\pi}2\cdot\sqrt\pi=\frac\pi2,\qquad K_1=\frac{\sqrt\pi}2\cdot\frac{\Gamma(1)}{\Gamma(\frac32)}=\frac{\sqrt\pi}2\cdot\frac1{\frac12\sqrt\pi}=1 $$
である。これは $I_0=\frac\pi2$、$I_1=1$ と一致する。
段 2(漸化式):$n\ge2$ とする。prop-wg-gamma の 1 を $s=\frac{n-1}2$ と $s=\frac n2$ に使うと
$$ \Gamma\Bigl(\frac{n+1}2\Bigr)=\frac{n-1}2\,\Gamma\Bigl(\frac{n-1}2\Bigr),\qquad \Gamma\Bigl(\frac n2+1\Bigr)=\frac n2\,\Gamma\Bigl(\frac n2\Bigr) $$
である。よって
$$ K_n=\frac{\sqrt\pi}2\cdot\frac{\frac{n-1}2\Gamma(\frac{n-1}2)}{\frac n2\Gamma(\frac n2)}=\frac{n-1}n\cdot\frac{\sqrt\pi}2\cdot\frac{\Gamma(\frac{(n-2)+1}2)}{\Gamma(\frac{n-2}2+1)}=\frac{n-1}nK_{n-2} $$
である($\frac{n-1}2=\frac{(n-2)+1}2$、$\frac n2=\frac{n-2}2+1$)。
段 3(結論):$I_n$ も漸化式 $I_n=\frac{n-1}nI_{n-2}$(Wallis積分(高校数学))を満たす。$I_0=K_0$、$I_1=K_1$ から始めて、帰納法により、すべての $n$ で $I_n=K_n$ である。$\square$

ガンマ関数から I_4 と I_5 を計算する
  1. $I_4=\frac{\sqrt\pi}2\cdot\frac{\Gamma(\frac52)}{\Gamma(3)}=\frac{\sqrt\pi}2\cdot\frac{3\sqrt\pi/4}{2}=\frac{3\pi}{16}$ である。
  2. $I_5=\frac{\sqrt\pi}2\cdot\frac{\Gamma(3)}{\Gamma(\frac72)}=\frac{\sqrt\pi}2\cdot\frac{2}{15\sqrt\pi/8}=\frac{8}{15}$ である。
    どちらも、漸化式で計算した値(Wallis積分(高校数学))と一致する。
高校の計算をガンマ関数で読む
  1. 漸化式:prf-prop-wg-wallis-gamma の段 2 のとおり、$I_n=\frac{n-1}nI_{n-2}$ は、関数等式 $\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$ を $s=\frac{n-1}2$ と $s=\frac n2$ に使ったものである。
  2. 偶奇の違い:$n$ が偶数なら $\frac{n+1}2$ は半整数、$\frac n2+1$ は整数なので、$I_n$ には $\Gamma(\frac12)=\sqrt\pi$ が 1 つ残り、前の $\frac{\sqrt\pi}2$ と合わせて $\pi$ が現れる。$n$ が奇数なら逆に分母が半整数になり、$\sqrt\pi$ が約分されて有理数になる。
  3. 積の保存:$I_n$ と $I_{n-1}$ の式を掛けると、$I_{n-1}$ の分母の $\Gamma(\frac{n-1}2+1)=\Gamma(\frac{n+1}2)$ と $I_n$ の分子が約分されて
    $$ I_nI_{n-1}=\frac\pi4\cdot\frac{\Gamma(\frac n2)}{\Gamma(\frac n2+1)}=\frac\pi4\cdot\frac{\Gamma(\frac n2)}{\frac n2\Gamma(\frac n2)}=\frac{\pi}{2n} $$
    となる。これは $nI_nI_{n-1}=\frac\pi2$ にほかならない。$n=4$ では $\frac\pi4\cdot\frac{\Gamma(2)}{\Gamma(3)}=\frac\pi4\cdot\frac12=\frac\pi8=\frac{\pi}{2\cdot4}$ である。

ベータ関数と、実数の指数への拡張

t = sin² x と置換する

$0< x<\frac\pi2$ で $t=\sin^2x$ とおくと $dt=2\sin x\cos x\,dx$、$\cos x=\sqrt{1-t}$ なので、$dx=\frac{dt}{2\sqrt t\sqrt{1-t}}$ である。よって
$$ I_n=\int_0^1t^{n/2}\cdot\frac{dt}{2\sqrt t\sqrt{1-t}}=\frac12\int_0^1t^{\frac{n-1}2}(1-t)^{-\frac12}\,dt $$
である($t=1$ の近くでは広義積分。$n=0$ では $t=0$ の近くも)。右辺の積分はベータ関数 $B(p,q):=\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$($p,q>0$)の $p=\frac{n+1}2$、$q=\frac12$ での値なので、$I_n=\frac12B(\frac{n+1}2,\frac12)$ である。$n=4$ では $\frac12B(\frac52,\frac12)=0.58904\ldots=\frac{3\pi}{16}$ である(数値計算)。

ベータ関数とガンマ関数の間には、公式 $B(p,q)=\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}$($p,q>0$)がある(本記事では証明しない。Rud76 第 8 章)。これを使うと、prop-wg-wallis-gamma の式は、指数が整数でない実数 $s>-1$ にも広がる。条件 $s>-1$ がどこから来るのかを、次のボックスで順に見る。

実数の指数への拡張

主張:実数 $s>-1$ について
$$ \int_0^{\pi/2}\sin^sx\,dx=\frac{\sqrt\pi}2\cdot\frac{\Gamma\bigl(\frac{s+1}2\bigr)}{\Gamma\bigl(\frac s2+1\bigr)} $$
である($s$ が整数 $n$ のときは prop-wg-wallis-gamma)。
段 1(置換は実数の指数でも同じ):ex-wg-beta の置換 $t=\sin^2x$ の計算は、指数が整数であることを使っていない。$\sin^sx=(\sin^2x)^{s/2}=t^{s/2}$ なので、実数 $s$ でも同じ計算で
$$ \int_0^{\pi/2}\sin^sx\,dx=\frac12\int_0^1t^{\frac{s-1}2}(1-t)^{-\frac12}\,dt=\frac12B\Bigl(\frac{s+1}2,\frac12\Bigr) $$
となる。右辺の $t$ の積分は、$t\to1-0$ で $(1-t)^{-\frac12}$ が限りなく大きくなるので、$t=1$ の近くで広義積分である。さらに $s<1$ では、指数 $\frac{s-1}2$ が負なので $t\to+0$ で $t^{\frac{s-1}2}$ が限りなく大きくなり、$t=0$ の近くでも広義積分である($s=0$ が ex-wg-beta の $n=0$ の場合)。左辺の $x$ の積分は、$-1< s<0$ では $x\to+0$ で $\sin^sx$ が限りなく大きくなるので $x=0$ の近くで広義積分であり、$s\ge0$ では普通の定積分である。このように $x$ の積分と $t$ の積分とで広義積分になる範囲は違う。右辺が広義積分なので、この等式は、両端を少し切った区間で置換してから端を近づける極限をとったものとして読み、右辺の収束は次の段 2 で確かめる。
段 2(条件 $s>-1$ の出どころ):$B(p,q)$ の定義の積分は、$p>0$、$q>0$ のときに収束する。たとえば $t=0$ の近くを見る。$0< t\le\frac12$ では $\frac12\le1-t<1$ なので、$(1-t)^{q-1}$ は $1$ と $2^{1-q}$ の大きい方(これを $M$ とおく)以下である。$p>0$ なら $\int_\varepsilon^{1/2}t^{p-1}dt=\frac{(1/2)^p-\varepsilon^p}p<\frac{(1/2)^p}p$ なので、$\int_\varepsilon^{1/2}t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$ は $M\cdot\frac{(1/2)^p}p$ 以下である。被積分関数は正なので、この積分は $\varepsilon$ を $0$ に近づけると増加し、上に有界だから収束する($t=1$ の近くも、$q>0$ なら同じように収束する)。ここでは $q=\frac12>0$ であり、$p=\frac{s+1}2>0$ は $s>-1$ と同じ条件である。
段 3($s\le-1$ では収束しない):$0< x<\frac\pi2$ では $0<\sin x< x$ かつ $\sin x<1$ なので、$s\le-1$ なら $\sin^sx\ge\frac1{\sin x}>\frac1x$ である。$\int_\varepsilon^{\pi/2}\frac{dx}x=\log\frac\pi{2\varepsilon}$ は $\varepsilon\to+0$ で限りなく大きくなるので、左辺の積分は収束しない。条件 $s>-1$ を外すと、主張の左辺が定まらない。
段 4(ガンマ関数で書く):段 1 の式に引用の公式を $p=\frac{s+1}2$、$q=\frac12$ で使う。$p+q=\frac s2+1$ なので
$$ \frac12B\Bigl(\frac{s+1}2,\frac12\Bigr)=\frac12\cdot\frac{\Gamma\bigl(\frac{s+1}2\bigr)\Gamma\bigl(\frac12\bigr)}{\Gamma\bigl(\frac s2+1\bigr)}=\frac{\sqrt\pi}2\cdot\frac{\Gamma\bigl(\frac{s+1}2\bigr)}{\Gamma\bigl(\frac s2+1\bigr)} $$
である(最後に $\Gamma(\frac12)=\sqrt\pi$ を使った)。$s>-1$ なら $\frac{s+1}2>0$、$\frac s2+1>0$ なので、右辺のガンマ関数はどちらも定義されている。
数値の確認(数値計算):$s=\frac12$ では、左辺 $\int_0^{\pi/2}\sqrt{\sin x}\,dx$ と右辺 $\frac{\sqrt\pi}2\cdot\frac{\Gamma(\frac34)}{\Gamma(\frac54)}$ がともに $1.19814\ldots$ である。$s=-\frac12$ では、両辺ともに $2.62205\ldots$ である(図 2)。

図2:実数 !FORMULA[261][38197][0] に広げた !FORMULA[262][-850100445][0] のガンマ関数の式。整数点が Wallis 積分 !FORMULA[263][35516240][0] 図2:実数 $s$ に広げた $\int_0^{\pi/2}\sin^sx\,dx$ のガンマ関数の式。整数点が Wallis 積分 $I_n$

さらに先へ

  • 複素数への拡張:ガンマ関数は複素数 $s$ に拡張され、$\Gamma(s)\Gamma(1-s)=\frac{\pi}{\sin\pi s}$ などの公式をもつ。実数 $x\to\infty$ でも $\Gamma(x+1)\sim\sqrt{2\pi x}(x/e)^x$ が成り立つ(Rud76 第 8 章。本記事では証明しない。整数の場合は階乗の大きさの見積もり)。
  • 球の体積:$n$ 次元の単位球の体積は $\frac{\pi^{n/2}}{\Gamma(\frac n2+1)}$ であり、$n=2$ で $\pi$、$n=3$ で $\frac{\pi^{3/2}}{\Gamma(5/2)}=\frac{\pi^{3/2}}{3\sqrt\pi/4}=\frac43\pi$ になる(AAR99 第 1 章)。
  • 歴史:ガンマ関数は Euler が階乗を補間する問題から導入した(AAR99 第 1 章)。
  • 大学での扱い:この記事は高校生向けに、実数 $s>0$ のガンマ関数を Wallis 積分と結びつけるところまでを扱った。大学数学の用語としてのガンマ関数は、大学向けの記事 Γ関数 で扱う。

関連項目

参考文献

[1]
Walter Rudin, Principles of Mathematical Analysis, McGraw-Hill, 1976, Chapter 8(8.17–8.22:Γ関数の定義と収束、Beta 関数と Γ の関係、Stirling の公式)

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