射影多様体

同義語:射影代数多様体projective variety

概要

射影多様体(projective variety)とは、体 $k$ 上の射影空間 $\mathbb{P}^n_k$ への閉埋め込みをもつ代数多様体、すなわち $\mathbb{P}^n_k$ の閉部分多様体と同型な多様体のことである。$\mathbb{P}^n_k$ の閉部分多様体は、無関係イデアルを含まない斉次素イデアルで定まる斉次多項式の連立方程式の解の空間であり、$k$ が代数閉体なら古典的には $\mathbb{P}^n(k)$ の既約な閉集合にあたる。射影多様体は完備であり、代数閉体上では大域的な正則関数は定数に限る。超曲面、ねじれ 3 次曲線、旗多様体などが例で、アフィン直線は射影多様体でない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 射影空間, スキーム, 代数多様体

平面の 3 次曲線 $y^2=x^3-x$ を平面 $\mathbb{A}^2$ の中で考えると、$x\to\infty$ の方向へ伸びていく部分が「はみ出して」いる。射影空間 $\mathbb{P}^2$ の中で斉次方程式 $y^2z=x^3-xz^2$ として考え直すと、無限遠に点 $[0:1:0]$ が 1 つ加わり、曲線は閉じた(コンパクトな)図形になる。射影多様体は、このように射影空間の中で斉次多項式の連立方程式によって定まる代数多様体である。射影多様体は代数幾何でのコンパクトな多様体の役割を果たし、交点の個数の数え上げ(代数閉体上では、直線と次数 $d$ の超曲面は重複度を込めてちょうど $d$ 点で交わる、thm-projective-variety-line-hypersurface)や、大域的な関数が定数しかないこと(prop-projective-variety-affine)など、アフィン多様体にない性質をもつ。

定義

以下、$k$ は体、$S:=k[x_0,\dots,x_n]$ は次数付き環($x_i$ の次数は $1$)とし、次数 $d$ の斉次多項式と $0$ の全体を $S_d$ と書く。$S$ のイデアル $I$ が 斉次イデアル であるとは、$I$ が斉次多項式で生成されること、同じことだが、$I$ の元の斉次成分がすべて $I$ に属することをいう。$S_+:=(x_0,\dots,x_n)$ を 無関係イデアル(irrelevant ideal)という。斉次イデアル $I\neq S$ は $S_+$ に含まれる($I$ が定数項が $0$ でない元を含めば、その次数 $0$ の成分である $0$ でない定数も含み、$I=S$ となるから)。

射影空間の閉部分スキーム

スキームとしての射影空間 $\mathbb{P}^n_k$ は、$n+1$ 個のアフィン空間
$$ U_i:=\operatorname{Spec}k\Bigl[\tfrac{x_0}{x_i},\dots,\tfrac{x_n}{x_i}\Bigr]\cong\mathbb{A}^n_k\qquad(i=0,\dots,n) $$
を貼り合わせたものである(スキームの例「射影空間の貼り合わせ」)。$U_i$ は「$x_i\neq0$ の部分」にあたる。斉次イデアル $I\subset S$ に対し、各 $U_i$ の座標環のイデアル
$$ I_{(i)}:=\Bigl(\tfrac{F}{x_i^{d}}\ \Big|\ d\ge0,\ F\in I\cap S_d\Bigr) $$
をとると、これらは重なり $U_i\cap U_j$ の上で同じ閉部分スキームを定め($F/x_i^d=(x_j/x_i)^d\cdot F/x_j^d$ で、$x_j/x_i$ は $U_i\cap U_j$ 上の単元)、$\mathbb{P}^n_k$ の閉部分スキーム $V_+(I)$ が得られる(Vak25 9.3.1)。$\mathbb{P}^n_k$ の閉部分スキームはすべてこの形である(Vak25 演習 15.7.I)。$V_+(I)$ は $\operatorname{Proj}S/I$ とも書かれる(Vak25 4.5)。

射影多様体と準射影多様体

体 $k$ 上の 代数多様体 $X$ が 射影多様体(projective variety)であるとは、ある $n\ge0$ と、$k$ 上の閉埋め込み $X\to\mathbb{P}^n_k$ が存在することをいう。同じことだが、$X$ がある $\mathbb{P}^n_k$ の閉部分多様体(整な閉部分スキーム)と同型であることをいう。
$k$ 上の多様体 $X$ が 準射影多様体(quasi-projective variety)であるとは、$X$ がある射影多様体の開部分多様体と同型であることをいう。

$k$ 上の射影多様体の構造射 $X\to\operatorname{Spec}k$ は射影射の定義「射影射と準射影射(閉埋め込みによる定義)」の意味で射影的であり、準射影多様体の構造射は準射影的である。$\mathbb{P}^n_k$ の閉部分多様体は、斉次素イデアルで記述できる。

閉部分多様体と斉次素イデアル

斉次素イデアル $\mathfrak{p}\subset S$ で $\mathfrak{p}\not\supset S_+$ であるものに対し、$V_+(\mathfrak{p})$ は $\mathbb{P}^n_k$ の閉部分多様体である。逆に、$\mathbb{P}^n_k$ の閉部分多様体はどれも、ただ 1 つのこのような $\mathfrak{p}$ によって $V_+(\mathfrak{p})$ と書ける。

閉部分多様体と斉次素イデアルの対応の所在

$\mathbb{P}^n_k=\operatorname{Proj}S$ の点は、$S_+$ を含まない斉次素イデアルそのものである(Vak25 4.5.7)。代数多様体の命題「開部分多様体と閉部分多様体」により閉部分多様体は空でない既約閉集合と 1 対 1 に対応し、既約閉集合はその生成点(スキームの命題「既約閉集合は生成点をただ 1 つもつ」)、すなわち斉次素イデアル $\mathfrak{p}\not\supset S_+$ と対応する。点 $\mathfrak{p}$ の閉包の被約誘導構造が $V_+(\mathfrak{p})$ と一致することは、$V_+(\mathfrak{p})\cap U_i$ の座標環 $k[x_0/x_i,\dots,x_n/x_i]/\mathfrak{p}_{(i)}$ が、整域 $(S/\mathfrak{p})_{x_i}$ の次数 $0$ の部分と同型であることによる(Vak25 4.5.7、演習 5.3.E(b))。ここでは証明を割愛する。

古典的な射影多様体

$k$ が代数閉体のとき、射影多様体は古典的には $\mathbb{P}^n(k):=(k^{n+1}\setminus\{0\})/k^\times$ の部分集合として扱われた。$F\in S_d$ と $t\in k$ について $F(ta)=t^dF(a)$ なので、「$F([a])=0$」は代表 $a$ のとり方によらない。斉次イデアル $J\subset S$ に対し
$$ V_+(J):=\{[a]\in\mathbb{P}^n(k)\mid J\text{ のすべての斉次元 }F\text{ について }F(a)=0\} $$
とおき(スキームの $V_+(J)$ と同じ記号を使うが、ここでは点の集合)、これらを閉集合とする位相(Zariski 位相)を $\mathbb{P}^n(k)$ に入れる。部分集合 $Y\subset\mathbb{P}^n(k)$ に対し、$Y$ 上で消える斉次多項式全体が生成するイデアルを $I_+(Y)$ と書く。古典的な射影多様体とは $\mathbb{P}^n(k)$ の既約な閉集合のことであり、代数多様体の定理「アフィン多様体の閉点と零点集合の点」を各 $U_i$ に当てはめると、スキームとしての射影多様体の閉点の集合がこれにあたる。

定義の流儀

この記事被約だけを課す流儀古典的な流儀
典拠代数多様体 の定義に合わせるVak25 5.3.7斉次多項式の零点集合
基礎体 $k$任意の体任意の体代数閉体
定義$\mathbb{P}^n_k$ に閉埋め込みをもつ多様体被約な射影的 $k$ スキーム$\mathbb{P}^n(k)$ の既約な閉集合
既約性課す課さない課すことが多い
例 $V_+(xy)\subset\mathbb{P}^2$射影多様体でない射影多様体流儀による

Vak25 5.3.7 は既約性や代数閉体を定義に含める文献があることを注意している。この記事では代数多様体の定義(体上の整で分離的な有限型スキーム)に合わせて既約性を課す。

例と反例

例

射影空間と超曲面

$\mathbb{P}^n_k=V_+(0)$ 自身は射影多様体である(代数多様体の例「アフィン空間と射影空間」)。
$n\ge1$ とし、$F\in S_d$($d\ge1$)を既約な斉次多項式とする。$S$ は一意分解整域なので $(F)$ は素イデアルであり、斉次元 $F$ で生成されるので斉次イデアルである。また $(F)\not\supset S_+$ である($S_+\subset(F)$ なら $F$ は $x_0$ と $x_1$ をともに割り切り、次数を比べると $d=1$ で、$F$ は $x_0$ の定数倍かつ $x_1$ の定数倍となって矛盾する)。よって prop-projective-variety-prime により $V_+(F)$ は射影多様体であり、次数 $d$ の 超曲面 と呼ばれる。$d=1$ のものは超平面、$n=2$、$d=2$ のものは 2 次曲線(円錐曲線)である。

平面 3 次曲線

$\mathbb{P}^2_k$(斉次座標 $x,y,z$)の中の
$$ E:=V_+(F),\qquad F:=y^2z-x^3+xz^2 $$
は射影多様体である。$F$ が既約であることを確かめる。$F=GH$($G,H$ は次数が正の斉次多項式)と分解したとすると、$z=1$ を代入して $y^2-x^3+x=G(x,y,1)H(x,y,1)$ となる。左辺は既約なので(代数多様体の例「平面曲線」)、たとえば $G(x,y,1)$ が定数 $c$ である。斉次多項式 $G$ で $G(x,y,1)=c$ となるのは $G=cz^e$ の場合に限るので $z\mid F$ となるが、$F(x,y,0)=-x^3\neq0$ なので矛盾である。
$E$ と $U_2=\{z\neq0\}\cong\mathbb{A}^2_k$ の共通部分はアフィン曲線 $y^2=x^3-x$ であり、残りは直線 $z=0$ との交わり $F(x,y,0)=-x^3=0$、すなわち 1 点 $[0:1:0]$ である。thm-projective-variety-line-hypersurface の意味では、直線 $z=0$ は $E$ と点 $[0:1:0]$ で重複度 $3$ で交わる(直線 $z=0$ を $a=(0,1,0)$、$b=(1,0,0)$ によって $[sa+tb]=[t:s:0]$ と表すと、$F(t,s,0)=-t^3$ となる)。$E$ は楕円曲線の典型例である。

積・Grassmann 多様体・旗多様体

Segre 埋め込み $\mathbb{P}^n\times\mathbb{P}^m\to\mathbb{P}^{(n+1)(m+1)-1}$、$([a],[b])\mapsto[a_ib_j]$ は閉埋め込みである(射影射の命題「Segre埋め込みは閉埋め込みである」)。$k$ が代数閉体なら 2 つの多様体の積は多様体なので(Stacks Tag 05P3)、射影多様体 $X\subset\mathbb{P}^n_k$、$Y\subset\mathbb{P}^m_k$ の積 $X\times_kY$ は $\mathbb{P}^n_k\times_k\mathbb{P}^m_k$ の閉部分スキームを通して $\mathbb{P}^{(n+1)(m+1)-1}_k$ の閉部分多様体となり、射影多様体である。$k$ が代数閉体でないと積は整とは限らない(代数多様体の例「反例:多様体の積が既約でない」)。
Grassmann 多様体は Plücker 埋め込みによって、旗多様体はさらに Segre 埋め込みと合わせて射影空間の閉部分多様体になり、射影多様体である(旗多様体の命題「旗多様体は射影多様体である」)。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
閉部分であること$\mathbb{A}^1_k=U_0\subset\mathbb{P}^1_k$準射影多様体だが射影多様体でない
既約性$V_+(xy)\subset\mathbb{P}^2_k$射影的なスキームだが整でない
被約性$V_+(x^2)\subset\mathbb{P}^2_k$射影的なスキームだが被約でない
射影空間への埋め込み固有だが射影的でない多様体完備でも射影多様体とは限らない
反例:アフィン直線は射影多様体でない

$\mathbb{A}^1_k$ は $\mathbb{P}^1_k$ の開部分多様体 $U_0$ と同型なので準射影多様体だが、射影多様体でない。射影多様体の構造射は射影射であり、射影射は固有である(射影射の定理「射影射は固有である」)。一方、$\mathbb{A}^1_k\to\operatorname{Spec}k$ は固有でない(固有射の例「反例:アフィン直線」。底変換した $\mathbb{A}^2_k\to\mathbb{A}^1_k$ で閉集合 $V(xy-1)$ の像が閉でない)。$k$ が代数閉体なら、prop-projective-variety-affine からも従う。

反例:既約でない・被約でない射影的スキーム

$V_+(xy)\subset\mathbb{P}^2_k$ は 2 本の直線 $V_+(x)$、$V_+(y)$ の和であり、どちらも真の閉集合なので既約でない。$(xy)$ は根基イデアルだが素イデアルでない。$V_+(x^2)$ の台は直線 $V_+(x)$ だが、$U_1$ の上では $\operatorname{Spec}k[x/y,z/y]/((x/y)^2)$ となり、$x/y\neq0$ が冪零なので被約でない。どちらも $\mathbb{P}^2_k$ の閉部分スキームだから射影的なスキームだが、整でないので射影多様体でない(前者はVak25 5.3.7 の流儀では射影多様体である)。

反例:固有だが射影的でない多様体

射影多様体は完備($k$ 上固有)だが、逆は成り立たない。完備で非特異だが射影的でない 3 次元の多様体(Hironaka の例)や、完備で射影的でない曲面(永田の例)がある。これらの例と出典は固有射の例「反例:射影的でない固有スキーム」、射影射の例「反例:射影的でない固有スキーム」にある。

性質

射影零点定理

$k$ が代数閉体のとき、$\mathbb{P}^n(k)$ の閉集合と斉次根基イデアルの対応は、アフィンの場合の Hilbertの零点定理から導かれる。ただし、無関係イデアル $S_+$ は $\mathbb{P}^n(k)$ に共通零点をもたない($x_0,\dots,x_n$ が同時に $0$ になる点は $\mathbb{P}^n(k)$ にない)ので、これを除く必要がある。以下、$\pi\colon k^{n+1}\setminus\{0\}\to\mathbb{P}^n(k)$ を商写像とし、$J\subset S$ の $k^{n+1}$ での共通零点の集合を $V(J)$、部分集合 $C\subset k^{n+1}$ 上で消える多項式全体を $I(C)$ と書く。

射影零点定理

$k$ を代数閉体、$J\subset S$ を斉次イデアルとする。

  1. $V_+(J)=\emptyset$ であることと、$\sqrt{J}\supset S_+$ であることは同値である。
  2. $V_+(J)\neq\emptyset$ なら、$I_+(V_+(J))=\sqrt{J}$ である。
  3. $Y\mapsto I_+(Y)$ と $J\mapsto V_+(J)$ は、$\mathbb{P}^n(k)$ の空でない閉集合全体と、$S_+$ を含まない斉次根基イデアル全体との間の、互いに逆な全単射である。

準備として、$C\subset k^{n+1}$ が錐($a\in C$、$t\in k$ なら $ta\in C$)ならば $I(C)$ は斉次イデアルである。$k$ が無限体なので、$f(ta)=0$ が $t$ の多項式として $0$ になり、各斉次成分が $C$ で消えるからである。

詳細

$f\in I(C)$ を斉次成分に分けて $f=\sum_df_d$ とすると、$a\in C$ と任意の $t\in k$ について $0=f(ta)=\sum_dt^df_d(a)$ である。$k$ は代数閉体なので無限体であり、$t$ の多項式 $\sum_df_d(a)t^d$ が無限個の $t$ で $0$ になるから、係数 $f_d(a)$ はすべて $0$ である。よって $f_d\in I(C)$ である。


次に、斉次イデアル $J\neq S$ について
$$ V(J)=\{0\}\cup\pi^{-1}\bigl(V_+(J)\bigr) $$
が成り立つ。$J\subset S_+$ だから $J$ の斉次元は次数が正で原点で消え、$a\neq0$ については、$J$ が斉次元で生成されることから「$a\in V(J)$」と「$J$ の斉次元がすべて $a$ で消える」とが同値だからである。とくに $V(J)$ は錐である。
1:$J=S$ なら両辺とも成り立つ。$J\neq S$ とする。$V_+(J)=\emptyset$ なら上の式から $V(J)=\{0\}$ であり、アフィンの零点定理(Hilbertの零点定理の定理「Hilbertの零点定理」の 3、$I(V(J))=\sqrt{J}$)により $\sqrt{J}=I(\{0\})=S_+$ である。逆に $\sqrt{J}\supset S_+$ なら $V(J)=V(\sqrt{J})\subset V(S_+)=\{0\}$ なので、$\pi^{-1}(V_+(J))=\emptyset$、すなわち $V_+(J)=\emptyset$ である。
2:$V_+(J)\neq\emptyset$ なら $J\neq S$ であり、$C:=V(J)=\{0\}\cup\pi^{-1}(V_+(J))$ は錐である。$I_+(V_+(J))=I(C)$ を示す。$V_+(J)$ 上で消える斉次多項式 $F$ は、次数が正なら原点でも消えるので $C$ 上で消え、次数 $0$ なら空でない集合上で消える定数だから $0$ である。よって $I_+(V_+(J))\subset I(C)$ である。逆に $f\in I(C)$ なら、準備によりその斉次成分 $f_d$ も $I(C)$ に属し、$f_d$ は $\pi^{-1}(V_+(J))$ 上で消えるので $V_+(J)$ 上で消える斉次多項式である。よって $f=\sum_df_d\in I_+(V_+(J))$ である。アフィンの零点定理により $I(C)=I(V(J))=\sqrt{J}$ となる。
3:$J$ を $S_+$ を含まない斉次根基イデアルとすると、$\sqrt{J}=J\not\supset S_+$ だから 1 により $V_+(J)\neq\emptyset$ であり、2 により $I_+(V_+(J))=\sqrt{J}=J$ である。逆に $Y=V_+(J')$ を空でない閉集合とすると、2 により $I_+(Y)=\sqrt{J'}$ は根基イデアルで($I_+(Y)$ は定義から斉次)、1 により $S_+$ を含まない。さらに $Y$ 上で $I_+(Y)$ の斉次元は消えるので $Y\subset V_+(I_+(Y))$、また $J'\subset I_+(Y)$ から $V_+(I_+(Y))\subset V_+(J')=Y$ である。よって $V_+(I_+(Y))=Y$ である。$\square$

1 の「$\sqrt{J}\supset S_+$」は、$J$ が $x_0,\dots,x_n$ のそれぞれの冪を含むことと同じである。たとえば $J=(x_0^2,x_1)\subset k[x_0,x_1]$ は $V_+(J)=\emptyset$ だが $J\neq S$ であり、アフィンの場合の「共通零点がないならイデアルは全体」は射影の場合には成り立たない。

直線と超曲面の交わり

射影空間では、平行線も無限遠で交わるように、交わりの点の個数が「重複度を込めればちょうど次数だけ」になる。その最も簡単な場合が直線と超曲面である。$\mathbb{P}^n(k)$ の 直線 とは、$2$ 次元部分空間 $W\subset k^{n+1}$ について $L=\pi(W\setminus\{0\})$ となる部分集合をいう。$W$ の基底 $a,b$ をとると、写像 $\lambda\colon\mathbb{P}^1(k)\to L$、$[s:t]\mapsto[sa+tb]$ は全単射である。

直線と超曲面の交点の個数

$k$ を代数閉体、$F\in S_d$($d\ge1$)を $0$ でない斉次多項式、$L\subset\mathbb{P}^n(k)$ を直線とし、$L\not\subset V_+(F)$ とする。$L$ の基底 $a,b$ による媒介変数表示 $\lambda$ をとり、$g(s,t):=F(sa+tb)$ とおくと、$g$ は $0$ でない次数 $d$ の斉次多項式で
$$ g(s,t)=c\prod_{j=1}^{d}(\beta_js-\alpha_jt)\qquad(c\in k^\times,\ (\alpha_j,\beta_j)\in k^2\setminus\{0\}) $$
と 1 次式の積に分解し、$L\cap V_+(F)=\{\lambda([\alpha_j:\beta_j])\mid j=1,\dots,d\}$ である。点 $p\in L\cap V_+(F)$ の 交わりの重複度 を $\lambda([\alpha_j:\beta_j])=p$ となる $j$ の個数と定めると、重複度の総和は $d$ である。とくに $L$ と $V_+(F)$ は $1$ 点以上 $d$ 点以下で交わる。

$g$ の各単項式は $s,t$ について次数 $d$ なので、$g$ は $0$ または次数 $d$ の斉次多項式である。$g=0$(多項式として)なら、すべての $(s,t)$ について $F(sa+tb)=0$ となり $L\subset V_+(F)$ となるので、仮定から $g\neq0$ である。
$g=\sum_{i=0}^dc_is^it^{d-i}$ と書き、$m:=\max\{i\mid c_i\neq0\}$ とおく。1 変数多項式 $g(s,1)=\sum_{i\le m}c_is^i$ は次数 $m$ で、$k$ は代数閉体なので $g(s,1)=c_m\prod_{j=1}^m(s-\alpha_j)$ と分解する。両辺を斉次化すると $\sum_{i\le m}c_is^it^{m-i}=c_m\prod_{j=1}^m(s-\alpha_jt)$ であり(両辺は次数 $m$ の斉次多項式で、$t=1$ とおくと一致する)、
$$ g(s,t)=t^{d-m}\sum_{i\le m}c_is^it^{m-i}=c_m\,t^{d-m}\prod_{j=1}^m(s-\alpha_jt) $$
となる。$t$ を $\beta s-\alpha t$ の形($\alpha=-1$、$\beta=0$)とみなせば、主張の分解が得られる。
$(s,t)\neq0$ について $g(s,t)=0$ となるのは、ある因子 $\beta_js-\alpha_jt$ が $0$ になるとき、すなわち $(s,t)$ が $(\alpha_j,\beta_j)$ の定数倍のときに限る。$F(sa+tb)=g(s,t)$ だから、$[s:t]\in\mathbb{P}^1(k)$ について $\lambda([s:t])\in V_+(F)$ であることと $[s:t]=[\alpha_j:\beta_j]$ となる $j$ があることは同値である。$\lambda$ は全単射なので $L\cap V_+(F)=\{\lambda([\alpha_j:\beta_j])\}$ であり、重複度の総和は因子の個数 $d$ に等しい。$\square$

重複度は基底 $a,b$ のとり方によらない。別の基底をとることは $(s,t)$ の可逆な 1 次変換にあたり、$g$ の 1 次因子は 1 次因子に、その重複の個数を保って移るからである。

円錐曲線と直線

$F=x^2+y^2-z^2$($\mathbb{P}^2$ の 2 次曲線)とする。

  • 直線 $z=0$($a=(1,0,0)$、$b=(0,1,0)$)では $g=s^2+t^2=(s-it)(s+it)$ となり、$k=\mathbb{C}$ なら 2 点 $[1:\pm i:0]$ で交わる。$k=\mathbb{R}$ ではこの直線は曲線と交わらない。代数閉体の仮定を外すと定理が成り立たない例である。
  • 直線 $x=z$($a=(1,0,1)$、$b=(0,1,0)$)では $g=s^2+t^2-s^2=t^2$ となり、$1$ 点 $[1:0:1]$ で重複度 $2$ で交わる。この直線は点 $[1:0:1]$ での接線である。
  • $F=xy$ と直線 $x=0$ では $g\equiv0$ であり、直線は $V_+(F)$ に含まれる。この場合は交点の個数が有限にならない。

直線と超曲面の場合を一般化した、代数閉体上の $\mathbb{P}^n$ で次数 $d_1,\dots,d_n$ の $n$ 個の超曲面の交わりが有限個の点からなるとき、その個数が重複度込みで $d_1\cdots d_n$ になるという Bézout の定理は、交叉理論の中心的な結果の 1 つである。

ねじれ 3 次曲線

$\nu\colon\mathbb{P}^1(k)\to\mathbb{P}^3(k)$、$[s:t]\mapsto[s^3:s^2t:st^2:t^3]$ の像を ねじれ 3 次曲線(twisted cubic)という。これは $\mathbb{P}^3$ の中の曲線で、定義イデアルが 3 つの 2 次式で生成され、そのうち 2 つだけでは余分な直線が現れる例として知られる。

ねじれ 3 次曲線の定義イデアル

$k$ を体とし、$S=k[x_0,x_1,x_2,x_3]$ の中で行列 $\begin{pmatrix}x_0&x_1&x_2\\x_1&x_2&x_3\end{pmatrix}$ の $2\times2$ 小行列式
$$ q_0:=x_0x_2-x_1^2,\qquad q_1:=x_0x_3-x_1x_2,\qquad q_2:=x_1x_3-x_2^2 $$
が生成するイデアルを $I$ とする。$\varphi\colon S\to k[s,t]$ を $x_i\mapsto s^{3-i}t^i$ で定まる $k$ 代数の準同型とする。

  1. $I=\ker\varphi$ である。とくに $I$ は $S_+$ を含まない斉次素イデアルであり、$C:=V_+(I)$ は $\mathbb{P}^3_k$ の閉部分多様体、すなわち射影多様体である。
  2. $q_0,q_1,q_2$ の共通零点の集合 $\{[a]\in\mathbb{P}^3(k)\mid q_0(a)=q_1(a)=q_2(a)=0\}$ は $\nu(\mathbb{P}^1(k))$ に等しく、$\nu$ は単射である。
  3. $q_0,q_1$ の 2 つだけの共通零点の集合は、$\nu(\mathbb{P}^1(k))$ に直線 $x_0=x_1=0$ を加えたものである。

1:$\varphi(q_0)=s^3\cdot st^2-(s^2t)^2=0$ などから $I\subset\ker\varphi$ である。逆を示す。$\varphi$ は次数 $d$ の斉次多項式を $s,t$ の次数 $3d$ の斉次多項式に写すので、$\ker\varphi$ は斉次イデアルであり、斉次元 $f\in\ker\varphi\cap S_d$ が $I$ に属することを示せばよい。$I$ を法として
$$ x_1^2\equiv x_0x_2,\qquad x_1x_2\equiv x_0x_3,\qquad x_2^2\equiv x_1x_3 $$
と書き換えられる。単項式 $x_0^ax_1^bx_2^cx_3^e$ についての量 $b+c$ は、どの書き換えでも真に減る($2\to1$、$2\to0$、$2\to1$)ので、書き換えを繰り返すと、どの単項式も $I$ を法として $b+c\le1$ の単項式、すなわち
$$ x_0^ax_3^e\ (a+e=d),\qquad x_0^ax_1x_3^e,\quad x_0^ax_2x_3^e\ (a+e=d-1) $$
のどれかに合同になる。これらを標準単項式と呼ぶ。標準単項式の $\varphi$ による像はそれぞれ $s^{3d-3e}t^{3e}$、$s^{3d-3e-1}t^{3e+1}$、$s^{3d-3e-2}t^{3e+2}$ であり、$t$ の指数 $3e$($0\le e\le d$)、$3e+1$、$3e+2$($0\le e\le d-1$)はどの 2 つも異なる。よって $\varphi$ は標準単項式の張る空間の上で単射である。$f\in\ker\varphi\cap S_d$ を $I$ を法として標準単項式の 1 次結合 $h$ に書き換えると、$\varphi(h)=\varphi(f)=0$ から $h=0$、すなわち $f\in I$ である。
$S/I=S/\ker\varphi$ は整域 $k[s,t]$ の部分環と同型なので整域であり、$I$ は素イデアルである。$\varphi(x_0)=s^3\neq0$ より $x_0\notin I$ だから $I\not\supset S_+$ である。後半は prop-projective-variety-prime による。
2 と 3 は、$a_0\neq0$ なら $a_0=1$ として $q_0,q_1$ から $a_2=a_1^2$、$a_3=a_1^3$ が決まること、$a_0=0$ の場合を分けて調べることで示せる。

2 と 3 の証明を開く

2:$1$ より $q_0,q_1,q_2$ は $\nu(\mathbb{P}^1(k))$ 上で消える。逆に $[a]=[a_0:a_1:a_2:a_3]$ で 3 つが消えるとする。$a_0\neq0$ なら $a_0=1$ としてよく、$u:=a_1$ とおくと $q_0$ から $a_2=u^2$、$q_1$ から $a_3=a_1a_2=u^3$ となり、$[a]=\nu([1:u])$ である。$a_0=0$ なら $q_0$ から $a_1=0$、$q_2$ から $a_2=0$ となり、$[a]=[0:0:0:1]=\nu([0:1])$ である。単射性:$\nu([s:t])$ の第 $0$ 座標が $0$ でなければ $s\neq0$ で、$[s:t]=[1:a_1/a_0]$ が像から決まる。第 $0$ 座標が $0$ なら $s=0$ で $[s:t]=[0:1]$ である。

3:$x_0=x_1=0$ なら $q_0=q_1=0$ となるので直線 $x_0=x_1=0$ は $q_0,q_1$ の共通零点に含まれるが、$[0:0:1:0]$ では $q_2=-1\neq0$ である。$a_0\neq0$ の点で $q_0=q_1=0$ なら、2 と同じ計算で $\nu$ の像の点である。$a_0=0$ なら $q_0$ から $a_1=0$ で、直線 $x_0=x_1=0$ の上にある。$\square$

$\nu$ はスキームとしても $\mathbb{P}^1_k$ から $C$ への同型を与える(Vak25 演習 9.3.A)。これは $\mathbb{P}^1$ を次数 $3$ の単項式で埋め込む Veronese 埋め込みの特別な場合である(Vak25 9.3.6)。

大域関数とアフィン多様体との関係

射影多様体の大域関数

$k$ を代数閉体、$X$ を $k$ 上の射影多様体とする。

  1. $\Gamma(X,\mathcal{O}_X)=k$ である。
  2. $X$ がアフィンでもあれば、$X$ は 1 点 $\operatorname{Spec}k$ と同型である。とくに $n\ge1$ のとき $\mathbb{A}^n_k$ は射影多様体でない。

1:$X$ の構造射は射影射なので固有であり(射影射の定理「射影射は固有である」)、$X$ は $k$ 上固有な整スキームである。よって固有射の系「完備整スキームの大域切断」により $\Gamma(X,\mathcal{O}_X)=k$ である。
2:$X\cong\operatorname{Spec}A$ なら $A=\Gamma(X,\mathcal{O}_X)=k$ なので $X\cong\operatorname{Spec}k$ である。$n\ge1$ なら $\Gamma(\mathbb{A}^n_k,\mathcal{O})=k[x_1,\dots,x_n]\neq k$ なので、1 により $\mathbb{A}^n_k$ は射影多様体でない。$\square$

1 は、コンパクトな複素多様体の上の正則関数が定数に限ること(最大値の原理)の類似である。射影多様体の上の関数を調べるには、大域関数でなく、可逆層の大域切断(斉次多項式にあたるもの)を使う。

アフィン多様体は準射影多様体である

$k$ 上のアフィン多様体 $X$ は準射影多様体である。より詳しく、$X$ を $\mathbb{A}^n_k=U_0\subset\mathbb{P}^n_k$ の閉部分多様体として実現し、$\overline{X}$ を $X$ の $\mathbb{P}^n_k$ での閉包に被約誘導構造を入れた射影多様体とすると、$X$ は $\overline{X}$ の開部分多様体 $\overline{X}\cap U_0$ と一致する。

要点:閉包 $\overline{X}$ は既約なので射影多様体であり、$\overline{X}\cap U_0$ と $X$ はどちらも台が $X$ で被約な $U_0$ の閉部分スキームだから一致する。

詳しい証明を開く

$X\cong\operatorname{Spec}k[x_1,\dots,x_n]/\mathfrak{p}$ と書けるので、$X$ は $\mathbb{A}^n_k=U_0$ の閉部分多様体として実現できる。$X$ の $\mathbb{P}^n_k$ での閉包 $T$ は、既約集合の閉包なので既約であり、$\overline{X}$($T$ の被約誘導構造)は $\mathbb{P}^n_k$ の閉部分多様体、すなわち射影多様体である(代数多様体の命題「開部分多様体と閉部分多様体」)。

$X$ は $U_0$ の閉集合だから $T\cap U_0=X$ である($U_0$ での $X$ の閉包は $T\cap U_0$ に等しい)。開部分スキーム $\overline{X}\cap U_0$ は、閉埋め込み $\overline{X}\to\mathbb{P}^n_k$ を開集合 $U_0$ に制限したものなので $U_0$ の閉部分スキームであり、被約で、台は $T\cap U_0=X$ である。台が $X$ で被約な $U_0$ の閉部分スキームはただ 1 つなので(Stacks Tag 01J3)、$\overline{X}\cap U_0=X$ である。$\square$

$k$ が代数閉体のとき、閉点の集合で見た $\overline{X}$ は $X$ の射影閉包である。射影閉包の記事は、$\overline{X}$ の斉次イデアルが $X$ のイデアルの斉次化で与えられることや、無限遠点の様子を詳しく扱っている。準射影多様体の開部分多様体も準射影多様体なので、代数多様体の例「一般線形群」の $GL_{n,k}$ は準射影多様体である。

注意

同じ閉部分スキームを定める異なるイデアル

$V_+(I)$ は $I$ だけで決まるが、異なる斉次イデアルが同じ閉部分スキームを定めることがある。たとえば $I:=(x_0^2,x_0x_1,\dots,x_0x_n)$($n\ge1$)は根基イデアルでないが、$V_+(I)=V_+(x_0)$ は被約な超平面である(Vak25 演習 5.3.E の注意)。

計算を開く

$U_0$ の上では $I_{(0)}\ni x_0^2/x_0^2=1$ なので $V_+(I)\cap U_0=\emptyset$、$U_i$($i\ge1$)の上では $I_{(i)}$ は $x_0/x_i=x_0x_i/x_i^2$ で生成される(ほかの生成元 $x_0^2/x_i^2$、$x_0x_j/x_i^2$ は $x_0/x_i$ の倍元)。よって $V_+(I)=V_+(x_0)$ は超平面で、被約である。しかし $I\neq(x_0)$ であり、$x_0^2\in I$、$x_0\notin I$ なので $I$ は根基イデアルでもない。


$I$ と $(x_0)$ は次数 $2$ 以上の斉次成分では一致し($d\ge2$ なら $I\cap S_d=x_0S_{d-1}$)、次数 $1$ の成分 $x_0$ だけが違う。$V_+$ は有限個の低い次数の違いを見分けない。thm-projective-variety-nullstellensatz で $S_+$ を含むイデアルを除いたのも同じ理由である。

射影性の判定と複素射影多様体

  • $k$ 上の固有な多様体が射影多様体であるための必要十分条件は、豊富な可逆層をもつことである(射影射の系「固有スキームの射影性の判定」を $A=k$ に当てはめる)。
  • $k=\mathbb{C}$ のとき、射影多様体の解析化はコンパクトな複素解析空間であり、逆に $\mathbb{P}^n(\mathbb{C})$ の閉解析的部分空間はすべて代数的である(複素解析空間の例「射影多様体の解析化」、Chow の定理)。滑らかな複素射影多様体のコホモロジーにはHodge構造が入る。

関連項目

参考文献

[1]
Ravi Vakil, The Rising Sea: Foundations of Algebraic Geometry, Princeton University Press, 2025, 4.5, 4.5.7; 5.3.7, Exercise 5.3.E; 9.3.1, Exercise 9.3.A; 9.3.6; Exercise 15.7.I

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