2次曲線の接線と光学的性質(tangents and reflective properties of conics)とは、楕円・双曲線・放物線の接線を鏡とみなしたときの反射の性質である。楕円 $\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1$($a>b>0$)の接線の上では、2 つの焦点までの距離の和は接点でだけ最小値 $2a$ をとり、そのため一方の焦点から出た光は反射して他方の焦点を通る。双曲線の接線は 2 つの焦点を見る角を 2 等分し、一方の焦点から出た光は他方の焦点から出たように反射する。放物線 $y^2=4px$($p>0$)の接線は、焦点と、接点から準線に下ろした垂線の足を結ぶ線分の垂直二等分線で、軸に平行な光は焦点に集まる。同じ焦点をもつ楕円と双曲線は直角に交わる。
前提知識: 2次曲線の焦点と準線, 陰関数の微分, 点と直線の距離, 絶対値と三角不等式
パラボラアンテナは、遠くの衛星から平行にやってくる電波を、放物線の形の面で反射させて 1 点(焦点)に集める。楕円の形の部屋では、一方の焦点でささやいた声が、壁で跳ね返って他方の焦点に集まる(SH16 §7.5 は、これらの反射の性質を放物線・楕円・双曲線のそれぞれについて紹介している)。この記事では、これらの性質を、接線の式と焦点の性質から証明する。
曲線に当たった光は、当たった点での接線を鏡とみなして反射する。まず、楕円の接線で光を折り返してみる。楕円の接線の式は 陰関数の微分 と 円の接線と極線 で求めてある:楕円 $\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1$ の点 $(x_0,y_0)$ での接線は $\frac{x_0x}{a^2}+\frac{y_0y}{b^2}=1$ である。
楕円 $\frac{x^2}{25}+\frac{y^2}9=1$ の焦点は $F(4,0)$、$F'(-4,0)$ である($4^2=25-9$)。楕円上の点 $P\bigl(3,\frac{12}5\bigr)$ での接線は $\frac{3x}{25}+\frac{12}5\cdot\frac y9=1$、両辺を $75$ 倍して
$$
\ell:\ 9x+20y=75
$$
である。
放物線 $y^2=4x$ の焦点は $F(1,0)$、準線は $x=-1$ である。点 $P(4,4)$ での接線は、両辺を $x$ で微分した $2yy'=4$ から傾き $y'=\frac24=\frac12$ で、$y-4=\frac12(x-4)$、つまり
$$
\ell:\ x-2y+4=0
$$
である。右から軸に平行に進んできた光(向き $\boldsymbol d=(-1,0)$)が $P$ で $\ell$ に当たるとする。$\ell$ の法線ベクトル $\boldsymbol m=(1,-2)$ について、$\boldsymbol d$ を $\ell$ で折り返した向きは
$$
\boldsymbol d-\frac{2(\boldsymbol d\cdot\boldsymbol m)}{\boldsymbol m\cdot\boldsymbol m}\boldsymbol m=(-1,0)-\frac{2\cdot(-1)}{5}(1,-2)=\Bigl(-\frac35,\ -\frac45\Bigr)
$$
である(この式の意味は def-trc-reflection で述べる)。一方 $F-P=(-3,-4)$ で、反射した光はちょうど焦点 $F$ に向かう。
2 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| 接線の式を陰関数の微分で求める | 接線は光を折り返す鏡 | fml-trc-tangents、def-trc-reflection |
| 焦点と接線の距離を計算する | 焦点半径の公式から、2 つの焦点で比が等しい | ex-trc-start-ellipse、thm-trc-hyperbola |
| 楕円の定義:距離の和が $2a$ | 接線の上では、接点で距離の和が最小になる | thm-trc-ellipse |
| 放物線の定義:焦点と準線から等距離 | 接線は焦点と準線上の点を結ぶ線分の垂直二等分線 | prop-trc-parabola |
| 楕円と双曲線を別々に扱う | 焦点を共有すると直角に交わる | cor-trc-confocal |
2次曲線の焦点と準線 と同じく、焦点が $x$ 軸上にある標準形で考える。接線は、陰関数の微分 で求めた傾き $y'$ をもち接点を通る直線とする($y'$ の分母が $0$ になる点では縦の直線)。
1 は 陰関数の微分 の例「楕円の接線の方程式」で示されている(円の接線と極線 は、楕円を単位円に縮める方法で、この直線が楕円とただ 1 点を共有する直線であることも示している)。
2:両辺を $x$ で微分すると $\frac{2x}{a^2}-\frac{2yy'}{b^2}=0$ である。$y_0\ne0$ なら $y'=\frac{b^2x_0}{a^2y_0}$ で、接線は $y-y_0=\frac{b^2x_0}{a^2y_0}(x-x_0)$ である。両辺に $\frac{y_0}{b^2}$ を掛けて整理すると $\frac{x_0x}{a^2}-\frac{y_0y}{b^2}=\frac{x_0^2}{a^2}-\frac{y_0^2}{b^2}=1$ となる(最後は点が双曲線上にあることを使った)。$y_0=0$ なら点は $(\pm a,0)$ で、$x$ を $y$ の関数とみて微分すると $\frac{dx}{dy}=\frac{a^2y}{b^2x}=0$ なので接線は縦の直線 $x=\pm a$ であり、これは式 $\frac{\pm a\,x}{a^2}=1$ と一致する。
3:両辺を $x$ で微分すると $2yy'=4p$ である。$y_0\ne0$ なら $y'=\frac{2p}{y_0}$ で、接線は $y-y_0=\frac{2p}{y_0}(x-x_0)$ である。両辺に $y_0$ を掛けると $y_0y-y_0^2=2px-2px_0$ で、$y_0^2=4px_0$ を使うと $y_0y=2px+2px_0=2p(x+x_0)$ となる。$y_0=0$ なら点は原点で、接線は縦の直線 $x=0$ であり、式 $0=2p(x+0)$ と一致する。$\square$
次に、鏡での反射を式で表す。平らな鏡(直線 $\ell$)に当たった光は、入射角と反射角が等しくなるように進む。これはベクトルで次のように書ける。
直線 $\ell$ に関する折り返し(線対称移動)を $\sigma$ と書く。ベクトル $\boldsymbol d$ を $\ell$ で折り返したベクトルとは、$\boldsymbol d$ の $\ell$ に平行な成分をそのままにし、$\ell$ に垂直な成分の向きを逆にしたもので、$\ell$ の法線ベクトルを $\boldsymbol m$ とすると
$$
\sigma(\boldsymbol d)=\boldsymbol d-\frac{2(\boldsymbol d\cdot\boldsymbol m)}{\boldsymbol m\cdot\boldsymbol m}\boldsymbol m
$$
である。向き $\boldsymbol d$ に進む光が点 $P$ で鏡 $\ell$ に当たると、$P$ から向き $\sigma(\boldsymbol d)$ に進む。これを反射の法則という。光が曲線に点 $P$ で当たるときは、$P$ での接線を鏡とみなす。
$\ell$ 上の点 $P$ と点 $X$ について、$X$ を $\ell$ で折り返した点を $\sigma(X)$ とすると、$\sigma(X)-P=\sigma(X-P)$ である(折り返しは $P$ を動かさず、点の位置の差をベクトルとして折り返す)。したがって「$P$ から $X$ に向かう光の向き $X-P$ を折り返すと、$P$ から $\sigma(X)$ に向かう向きになる」。また $\boldsymbol d$ と $\sigma(\boldsymbol d)$ は $\ell$ と同じ大きさの角をなす(平行な成分が同じで、垂直な成分は大きさが同じ)。この 2 つが以下の証明の道具である。行列で書いた折り返しは 回転・鏡映と行列の群 で扱う。
以下、楕円 $E:\ \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1$($a>b>0$)、$c=\sqrt{a^2-b^2}$、焦点 $F(c,0)$、$F'(-c,0)$ とする。2次曲線の焦点と準線 により、$E$ は $PF+PF'=2a$ を満たす点 $P$ 全体である。点 $X=(x,y)$ について
$$
g(X):=\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2},\qquad s(X):=XF+XF'
$$
とおく。$g(X)<1$ の点を楕円の内部、$g(X)>1$ の点を外部という。証明の鍵は、次の 2 つの補題である。
$P(x_0,y_0)\in E$ での接線 $\ell$ の上の点 $X$ について、$g(X)-1=\Bigl(\dfrac{x-x_0}a\Bigr)^2+\Bigl(\dfrac{y-y_0}b\Bigr)^2$ である。特に、$X\ne P$ なら $g(X)>1$ である。
$X_0=\frac{x_0}a$、$Y_0=\frac{y_0}b$、$X_1=\frac xa$、$Y_1=\frac yb$ とおく。$P\in E$ から $X_0^2+Y_0^2=1$、$X\in\ell$ から $X_0X_1+Y_0Y_1=1$ である。よって
$$
(X_1-X_0)^2+(Y_1-Y_0)^2=X_1^2+Y_1^2-2(X_0X_1+Y_0Y_1)+(X_0^2+Y_0^2)=g(X)-2+1=g(X)-1
$$
である。$X\ne P$ なら $(X_1,Y_1)\ne(X_0,Y_0)$ なので左辺は正であり、$g(X)>1$ である。$\square$
点 $X$ について $s(X)\le2a$ ならば $g(X)\le1$ である。対偶をとると、$g(X)>1$(外部)ならば $s(X)>2a$ である。
方針:$s(X)=2a'$ とおくと、$X$ は焦点 $F$、$F'$ をもち長軸の長さが $2a'$ の楕円の上にある。$a'\le a$ なら、その楕円は $E$ の内側にある。
段 1($s(X)=2c$ のとき)。三角不等式(絶対値と三角不等式)により $s(X)=XF+XF'\ge FF'=2c$ で、等号は $X$ が線分 $FF'$ の上にあるときだけである。このとき $X=(x,0)$、$|x|\le c< a$ なので、$g(X)=\frac{x^2}{a^2}<1$ である。
段 2($2c< s(X)\le2a$ のとき)。$a':=\frac{s(X)}2$ とおくと $c< a'\le a$ である。2次曲線の焦点と準線 の楕円の定理(焦点 $(\pm c,0)$、$0< c< a'$ で、$PF+PF'=2a'$ と $\frac{x^2}{a'^2}+\frac{y^2}{a'^2-c^2}=1$ が同値)により
$$
\frac{x^2}{a'^2}+\frac{y^2}{a'^2-c^2}=1
$$
である。$0< a'\le a$ から $\frac{x^2}{a^2}\le\frac{x^2}{a'^2}$、$0< a'^2-c^2\le a^2-c^2=b^2$ から $\frac{y^2}{b^2}\le\frac{y^2}{a'^2-c^2}$ である。足すと $g(X)\le1$ である。$\square$
2 つの補題を合わせると、接線 $\ell$ の上の点 $X$ は、$X\ne P$ なら $s(X)>2a=s(P)$ となる。つまり、接線の上で 2 つの焦点までの距離の和が最小になるのは、接点だけである。これが反射の性質の中身である。
$P\in E$ での接線を $\ell$ とする。
方針:$F'$ を $\ell$ で折り返した点を $F''$ とすると、$\ell$ の上では $XF'=XF''$ なので、1 は「$\ell$ の上の点 $X$ で $XF+XF''$ が最小になるのは $X=P$」と言いかえられる。$F$ と $F''$ が $\ell$ の反対側にあれば、最小になる点は線分 $FF''$ と $\ell$ の交点であり、そこから $F$、$P$、$F''$ が一直線に並ぶことが出る。
段 1(1 の証明)。$X=P$ なら $s(P)=2a$ である。$X\in\ell$、$X\ne P$ なら、lem-trc-outside により $g(X)>1$、lem-trc-sum により $s(X)>2a$ である。
段 2($F$ と $F'$ は $\ell$ の同じ側にある)。$L(X):=\frac{x_0x}{a^2}+\frac{y_0y}{b^2}-1$ とおくと、$\ell$ は $L=0$ の直線で、$L$ の符号が $\ell$ のどちら側かを表す。$|x_0|\le a$ なので $\bigl|\frac{cx_0}{a^2}\bigr|\le\frac ca<1$ であり、$L(F)=\frac{cx_0}{a^2}-1<0$、$L(F')=-\frac{cx_0}{a^2}-1<0$ である。よって $F$ と $F'$ は $\ell$ の同じ側にある。
段 3(折り返した点)。$F''=\sigma(F')$ とする($\sigma$ は $\ell$ に関する折り返し)。$F''$ は $\ell$ に関して $F'$ の反対側、したがって $F$ の反対側にある。$\ell$ の点 $X$ は折り返しで動かないので、$XF''=XF'$ である。
段 4(最小の点)。線分 $FF''$ は $\ell$ をまたぐので、$\ell$ と 1 点 $X^*$ で交わる。$X^*$ は線分 $FF''$ の上にあるので $X^*F+X^*F''=FF''$ である。$\ell$ のどの点 $X$ についても、三角不等式と段 3 から
$$
s(X)=XF+XF''\ge FF''=X^*F+X^*F''=s(X^*)
$$
である。特に $s(X^*)\le s(P)=2a$ で、段 1 により $X^*=P$ である。よって $P$ は線分 $FF''$ の上にあり、$F$、$P$、$F''$ はこの順に一直線に並ぶ。
段 5(反射)。$F$ から $P$ に向かう光の向き $P-F$ は、$F''-P$ の正の数倍である(段 4)。def-trc-reflection の後で述べたとおり、折り返し $\sigma$ は $F''-P$ を $\sigma(F'')-P=F'-P$ に移す。したがって反射した光の向き $\sigma(P-F)$ は $F'-P$ の正の数倍で、光は $F'$ に向かう。$P-F$ と $\sigma(P-F)$ は $\ell$ と同じ大きさの角をなすので、$PF$ と $PF'$ は $\ell$ と等しい角をなす。$\square$
左は楕円 $\frac{x^2}{25}+\frac{y^2}{9}=1$ の焦点 $F$ から出た光(橙)が、どこで反射しても他方の焦点 $F'$ を通ること(青)を見る図。右は証明の図で、$F'$ を接線 $9x+20y=75$ で折り返した点 $F''$ をとると、$F$、$P$、$F''$ が一直線に並び、接線上の別の点 $Q$ では $QF+QF'$ が $10$ より大きいことを見る。
ex-trc-start-ellipse の楕円と接線 $9x+20y=75$ で確かめる。
thm-trc-ellipse の 1 は、「$\ell$ の片側にある 2 点 $F$、$F'$ を、$\ell$ 上の 1 点を経由して結ぶ最短の折れ線」を求める問題の答えでもある。$F'$ を $\ell$ で折り返して一直線にする方法は、対称点と折れ線の最短 と同じ考え方である。
双曲線では、thm-trc-ellipse と同じ折り返しの議論も使えるが、ここでは ex-trc-start-ellipse で見た「焦点と接線の距離の比」の計算で示す。
双曲線 $\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$($a,b>0$)、$c=\sqrt{a^2+b^2}$、焦点 $F(c,0)$、$F'(-c,0)$ とし、双曲線上の点 $P(x_0,y_0)$ での接線を $\ell$ とする。
方針:焦点と接線の距離を焦点半径で表し、$PF$ と $PF'$ が $\ell$ となす角の正弦が等しいことを示す。$F$ と $F'$ は $\ell$ の反対側にあるので、等しい角は $\ell$ をはさんで向かい合い、折り返しで移り合う。
段 1(焦点と接線の距離)。$e=\frac ca>1$ とし、$N:=\sqrt{\frac{x_0^2}{a^4}+\frac{y_0^2}{b^4}}$ とおく。$\ell:\ \frac{x_0}{a^2}x-\frac{y_0}{b^2}y-1=0$ と $F(c,0)$ の距離は、点と直線の距離 により
$$
\frac{\bigl|\frac{cx_0}{a^2}-1\bigr|}{N}=\frac{|ex_0-a|}{aN}
$$
である($\frac c{a^2}=\frac ea$)。2次曲線の焦点と準線 の双曲線の定理(焦点半径の公式)により $PF=|ex_0-a|$ なので、この距離は $\frac{PF}{aN}$ である。同じく $F'$ と $\ell$ の距離は $\frac{|ex_0+a|}{aN}=\frac{PF'}{aN}$ である。
段 2(角の正弦)。$P\ne F$ である($F$ は双曲線の上にない:$\frac{c^2}{a^2}=e^2>1$ だが $y=0$ なので $\frac{c^2}{a^2}-0\ne1$)。線分 $PF$ と $\ell$ のなす角を $\theta$($0^\circ\le\theta\le90^\circ$)とすると、$F$ から $\ell$ に下ろした垂線と $PF$ で直角三角形ができるので、$\sin\theta=\frac{(F\text{ と }\ell\text{ の距離})}{PF}=\frac1{aN}$ である。$PF'$ と $\ell$ のなす角 $\theta'$ も $\sin\theta'=\frac1{aN}$ である。$0^\circ\le\theta,\theta'\le90^\circ$ なので $\theta=\theta'$ である。
段 3($F$ と $F'$ は反対側)。$L(X):=\frac{x_0x}{a^2}-\frac{y_0y}{b^2}-1$ とおくと、$L(F)=\frac{ex_0-a}a$、$L(F')=-\frac{ex_0+a}a$ である。双曲線上では $|x_0|\ge a$、$e>1$ なので $e|x_0|>a$ であり、$ex_0-a$ と $ex_0+a$ は同じ符号($x_0>0$ ならともに正、$x_0<0$ ならともに負)である。よって $L(F)$ と $L(F')$ は異符号で、$F$ と $F'$ は $\ell$ の反対側にある。
段 4(半直線の特定)。$\ell$ を横軸とする座標で考えると、$P$ から出る半直線のうち、$F'$ の側にあって $\ell$ と角 $\theta$ をなすものは、法線に関して対称な 2 本($\theta=90^\circ$ なら 1 本)である。1 本は半直線 $PF$ を $\sigma$ で折り返したもの、もう 1 本は半直線 $PF$ の反対向きの半直線である。半直線 $PF'$ はこのどちらかである。反対向きの半直線だとすると、$F$、$P$、$F'$ が一直線上に $P$ をはさんで並び、$P$ は $x$ 軸上にあって $y_0=0$ となる。このとき $\theta=90^\circ$ で 2 本は一致する。いずれの場合も $\sigma$ は半直線 $PF$ を半直線 $PF'$ に移す。これで 1 が示せた。
段 5(2 の証明)。1 から $\sigma(F-P)$ は $F'-P$ の正の数倍である。光の向きは $P-F=-(F-P)$ なので、反射した向き $\sigma(P-F)=-\sigma(F-P)$ は $P-F'$ の正の数倍である。つまり光は直線 $F'P$ の上を、$F'$ から $P$ へ向かう向きのまま進む。$\square$
双曲線 $\frac{x^2}4-\frac{y^2}5=1$($a=2$、$c=3$、$e=\frac32$)の点 $P(4,\sqrt{15})$ での接線は $\frac{4x}4-\frac{\sqrt{15}\,y}5=1$、つまり $\ell:\ 5x-\sqrt{15}\,y=5$ である。
放物線は焦点が 1 つなので、もう一方の焦点の代わりに準線を使う。
放物線 $y^2=4px$($p>0$)、焦点 $F(p,0)$、準線 $x=-p$ とし、放物線上の点 $P(x_0,y_0)$ から準線に下ろした垂線の足を $H(-p,y_0)$ とする。
段 1(垂直)。$H-F=(-2p,\ y_0)$ である。$\ell:\ 2px-y_0y+2px_0=0$(fml-trc-tangents の 3 を移項したもの)の法線ベクトルは $(2p,-y_0)=-(H-F)$ なので、$FH\perp\ell$ である。
段 2(中点を通る)。$FH$ の中点は $M\bigl(0,\frac{y_0}2\bigr)$ である。$\ell$ の式に入れると、左辺 $y_0\cdot\frac{y_0}2=\frac{y_0^2}2$、右辺 $2p(0+x_0)=2px_0$ で、$y_0^2=4px_0$ から等しい。よって $\ell$ は $M$ を通る。段 1・段 2 から、$\ell$ は $FH$ の垂直二等分線であり、$\ell$ に関する折り返し $\sigma$ は $H$ と $F$ を入れかえる。1 が示せた。
段 3(反射)。$H-P=(-p-x_0,\ 0)$ で、$-p-x_0<0$ なので、光の向き $(-1,0)$ は $H-P$ の正の数倍である。$\sigma$ は $H-P$ を $\sigma(H)-P=F-P$ に移すので、反射した光は $F$ に向かう。$\square$
$P$ は $FH$ の垂直二等分線の上にあるので $PF=PH$ であり、これは放物線の定義そのものである。1 は「放物線の定義を満たす点 $P$ で、接線がちょうど $FH$ の垂直二等分線になる」と言っている。
左は放物線 $y^2=4x$ に軸に平行に入った光(橙)が焦点 $F(1,0)$ に集まること(青)と、$P(4,4)$ での接線が線分 $FH$ の垂直二等分線であることを見る図。右は双曲線 $\frac{x^2}{4}-\frac{y^2}{5}=1$ で、焦点 $F$ から出た光が右の枝で反射して、もう一方の焦点 $F'$ から出たかのように進むことを見る図。
同じ 2 点 $F(c,0)$、$F'(-c,0)$($c>0$)を焦点とする楕円と双曲線を、共焦点(焦点を共有する)2 次曲線という。$a>c$ のとき楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{a^2-c^2}=1$、$0< A< c$ のとき双曲線 $\dfrac{x^2}{A^2}-\dfrac{y^2}{c^2-A^2}=1$ が、この 2 点を焦点とする(2次曲線の焦点と準線)。
$F$、$F'$ を焦点とする楕円と双曲線が点 $P$ で交わるとき、$P$ での 2 本の接線は直交する。また、座標軸の上にない点 $P$ を通る共焦点の楕円と双曲線は、ちょうど 1 つずつある。
段 1($P$ は軸の上にない)。楕円と双曲線の共有点 $P$ が $x$ 軸上にあったとすると、楕円の $x$ 軸上の点は $(\pm a,0)$、双曲線の $x$ 軸上の点は $(\pm A,0)$ で、$A< c< a$ なので一致しない。$y$ 軸上の点は双曲線にない($-\frac{y^2}{c^2-A^2}\ne1$)。よって $P$ は座標軸の上になく、$F$、$P$、$F'$ は一直線に並ばない。
段 2(直交)。$P$ での双曲線の接線 $\ell_h$ に関する折り返しは、半直線 $PF$ を半直線 $PF'$ に移す(thm-trc-hyperbola の 1)。楕円の接線を $\ell_e$、$P$ での $\ell_e$ の垂線(法線)を $n_e$ とする。thm-trc-ellipse の 2 により、$F$ から $P$ への向き $P-F$ を $\ell_e$ で折り返すと $F'-P$ の正の数倍になる。$\ell_e$ での折り返しと $n_e$ での折り返しは、ベクトルの $\ell_e$ 方向の成分と $n_e$ 方向の成分のどちらを逆にするかの違いで、互いに $-1$ 倍の関係にある。よって $n_e$ での折り返しは $F-P$ を $F'-P$ の正の数倍に移し、半直線 $PF$ を半直線 $PF'$ に移す。$F$、$P$、$F'$ は一直線にないので、半直線 $PF$ を半直線 $PF'$ に移す折り返しの直線は、$\angle FPF'$ の二等分線ただ 1 本である。したがって $\ell_h=n_e$ で、$\ell_h\perp\ell_e$ である。
段 3(1 つずつあること)。座標軸の上にない点 $P$ について、$a:=\frac{PF+PF'}2$、$A:=\frac{|PF-PF'|}2$ とおく。$F$、$P$、$F'$ は一直線にないので、三角不等式の等号は成り立たず、$PF+PF'>FF'=2c$、$|PF-PF'|<2c$ である。よって $a>c$、$A< c$ である。また $P$ は $y$ 軸($FF'$ の垂直二等分線)の上にないので $PF\ne PF'$、$A>0$ である。2次曲線の焦点と準線 により、$P$ は def-trc-confocal の楕円(この $a$)と双曲線(この $A$)の上にある。逆に $P$ を通る共焦点の楕円・双曲線は、距離の和・差から $a$、$A$ が上の値に決まるので、ほかにない。$\square$
焦点 $(\pm4,0)$ の楕円 $\frac{x^2}{25}+\frac{y^2}9=1$ と双曲線 $\frac{x^2}4-\frac{y^2}{12}=1$($4+12=16$)を考える。
焦点 $(\pm4,0)$ を共有する楕円(青)と双曲線(橙)の族。どの楕円とどの双曲線も直角に交わることを見る図。太線は楕円 $\frac{x^2}{25}+\frac{y^2}{9}=1$ と双曲線 $\frac{x^2}{4}-\frac{y^2}{12}=1$ で、点 $P$ で直交する。
反射の性質と直交の性質は、仮定を外すと次のように崩れる。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 光源が焦点にある(楕円) | 反射光がすべて 1 点(もう一方の焦点)を通る | ex-trc-not-focus |
| 光が軸に平行に進む(放物線) | 反射光が焦点を通る | ex-trc-not-parallel |
| 直線が接点での接線である | 直線上で接点以外の点では 2 つの焦点までの距離の和が $2a$ より大きい | ex-trc-chord |
| 楕円と双曲線が焦点を共有する | 交点で 2 本の接線が直交する | ex-trc-not-confocal |
楕円 $\frac{x^2}{25}+\frac{y^2}9=1$ で、焦点でない点 $G(2,0)$ から光を出す。
放物線 $y^2=4x$ に、向き $\boldsymbol d=(-2,1)$ の平行な光を当てる。
楕円 $\frac{x^2}{25}+\frac{y^2}9=1$ の点 $P\bigl(3,\frac{12}5\bigr)$ と $(-5,0)$ を結ぶ弦を考える。弦の中点 $Q\bigl(-1,\frac65\bigr)$ では $g(Q)=\frac1{25}+\frac{36/25}9=\frac1{25}+\frac4{25}=\frac15<1$ で楕円の内部にあり、
$$
QF+QF'=\sqrt{25+\frac{36}{25}}+\sqrt{9+\frac{36}{25}}=\frac{\sqrt{661}+3\sqrt{29}}5\approx8.37<10
$$
である。$P$ を通る直線が接線でないと、lem-trc-outside の結論(接点以外は外部)が成り立たず、「直線上では接点で距離の和が最小($2a$)」という thm-trc-ellipse の 1 が崩れる。
楕円 $\frac{x^2}{25}+\frac{y^2}9=1$(焦点 $(\pm4,0)$)と双曲線 $x^2-y^2=1$(焦点 $(\pm\sqrt2,0)$)の交点を求める。$x^2=1+y^2$ を入れて $225$ 倍すると $9+9y^2+25y^2=225$ で、$y^2=\frac{108}{17}$、$x^2=\frac{125}{17}$ である。接線の法線ベクトル $\bigl(\frac{x_0}{25},\frac{y_0}9\bigr)$ と $(x_0,-y_0)$ の内積は
$$
\frac{x_0^2}{25}-\frac{y_0^2}9=\frac5{17}-\frac{12}{17}=-\frac7{17}\ne0
$$
で、接線は直交しない。焦点を共有するという仮定を外すと、cor-trc-confocal の直交が崩れる。
楕円は関数 $f(X)=XF+XF'$ の等高線 $f=2a$ である。多変数の微分では、関数の勾配(各変数での微分を並べたベクトル)は等高線に垂直であり、$f$ の勾配は $F$ から $X$ への向きの単位ベクトルと $F'$ から $X$ への向きの単位ベクトルの和になる。2 つの単位ベクトルの和は、それらのなす角を 2 等分する向きなので、法線が $\angle FXF'$ を 2 等分し、thm-trc-ellipse の 2 が出る(Tab05 第 4 章 Lemma 4.2 の証明)。双曲線 $XF-XF'=\pm2A$ の勾配は 2 つの単位ベクトルの差で、和と差は直交するので、共焦点の楕円と双曲線は直交する(同書の同じ章。cor-trc-confocal の別証明)。勾配が等高線に垂直であることは、この記事では証明しない(偏微分 を参照)。高校数学の範囲では、陰関数の微分 の「大学数学で見ると:法線ベクトルと接線」が同じ見方を $F(x,y)=0$ の形の曲線で述べている。
ex-trc-start-ellipse の $P\bigl(3,\frac{12}5\bigr)$ で、$F$ から $P$ への単位ベクトルは $\frac{P-F}{PF}=\frac5{13}\bigl(-1,\frac{12}5\bigr)=\bigl(-\frac5{13},\frac{12}{13}\bigr)$、$F'$ から $P$ への単位ベクトルは $\frac5{37}\bigl(7,\frac{12}5\bigr)=\bigl(\frac{35}{37},\frac{12}{37}\bigr)$ である。和は
$$
\Bigl(\frac{-185+455}{481},\ \frac{444+156}{481}\Bigr)=\Bigl(\frac{270}{481},\ \frac{600}{481}\Bigr)=\frac{30}{481}(9,20)
$$
で、接線 $9x+20y=75$ の法線ベクトル $(9,20)$ の正の数倍である。
楕円の形の台でボールを転がし、壁で反射の法則どおりに跳ね返らせる(楕円のビリヤード)。軌道の線分が 2 つの焦点を結ぶ線分と交わらなければ、すべての線分が同じ共焦点の楕円に接し、交われば、すべての線分が同じ共焦点の双曲線に接する(Tab05 第 4 章 Theorem 4.4。この記事では証明しない)。焦点を通る軌道は、thm-trc-ellipse により次にもう一方の焦点を通る。このように、軌道がいつまでも 1 つの曲線に接し続けることは、楕円のビリヤードが「可積分」と呼ばれる性質をもつことの表れである。
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