平均の大小関係

同義語:重み付きの相加相乗平均の不等式

概要

平均の大小関係(inequalities between means)とは、正の数 $a_1,\dots,a_n$ の調和平均 $H$、相乗平均 $G$、相加平均 $A$、2 乗平均 $Q$ の間に $H\le G\le A\le Q$ が成り立ち、どの等号もすべての $a_i$ が等しいときに限るという関係である。中心は重み付きの相加相乗平均の不等式 $a_1^{\lambda_1}\cdots a_n^{\lambda_n}\le\lambda_1a_1+\cdots+\lambda_na_n$($a_i>0$、$\lambda_i\ge0$、$\sum\lambda_i=1$)であり、$x>0$ での $\log x\le x-1$ から示せる。$H\le G$ は逆数に $G\le A$ を使い、$A\le Q$ は差の 2 乗の和が $0$ 以上であることから従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 相加平均と相乗平均, 対数関数, 導関数

いろいろな平均

2 つの正の数の相加平均 $\frac{a+b}2$ と相乗平均 $\sqrt{ab}$ については、$\sqrt{ab}\le\frac{a+b}2$ が成り立つ(相加平均と相乗平均)。平均には、ほかにも調和平均や 2 乗平均がある。この記事では、$n$ 個の正の数についての 4 つの平均の大小関係と、数ごとに重みを付けた相加相乗平均の不等式を証明する。

  • 4 つの平均とは何か。→ def-means-four
  • 重みを付けても相乗平均 $\le$ 相加平均か。→ thm-means-weighted-amgm
  • 4 つの平均はどの順に並ぶか。→ thm-means-chain
    高校の計算この記事の言葉大学での見方
    2 数・3 数の相加平均 $\ge$ 相乗平均重み付きの相加相乗平均の不等式凹関数 $\log$ の Jensenの不等式(高校数学)
    往復の平均の速さ調和平均べき平均 $M_{-1}$
    $a+b+c$ が一定のときの $a^2+b^2+c^2$ の最小値相加平均 $\le$ 2 乗平均分散が $0$ 以上であること

4 つの平均

調和平均・相乗平均・相加平均・2 乗平均

$a_1,\dots,a_n$ を正の数とする。
$$ H:=\frac n{\dfrac1{a_1}+\cdots+\dfrac1{a_n}},\quad G:=\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n},\quad A:=\frac{a_1+\cdots+a_n}n,\quad Q:=\sqrt{\frac{a_1^2+\cdots+a_n^2}n} $$
をそれぞれ調和平均、相乗平均、相加平均、2 乗平均という。ここで $\sqrt[n]{c}$ は、$n$ 乗すると $c$ になる正の数である。

調和平均は「逆数の相加平均の逆数」、2 乗平均は「2 乗の相加平均の平方根」である。

4 つの平均を計算する

$1,4$ の場合:$H=\frac2{1+\frac14}=\frac85=1.6$、$G=\sqrt4=2$、$A=\frac52=2.5$、$Q=\sqrt{\frac{1+16}2}=\sqrt{8.5}=2.915\ldots$。
$2,3,6$ の場合:$H=\frac3{\frac12+\frac13+\frac16}=\frac31=3$、$G=\sqrt[3]{36}=3.301\ldots$、$A=\frac{11}3=3.666\ldots$、$Q=\sqrt{\frac{4+9+36}3}=\sqrt{\frac{49}3}=4.041\ldots$。
どちらも $H< G< A< Q$ の順に並んでいる。$2,3,6$ の場合の調和平均 $3$ は、たまたまデータの $3$ と同じ値である(図 1 では同じ位置に重なって見える)。

数直線上の 4 つの平均。どちらの例でも、左から調和・相乗・相加・2 乗平均の順に並ぶ 数直線上の 4 つの平均。どちらの例でも、左から調和・相乗・相加・2 乗平均の順に並ぶ

平均の速さは調和平均

ある道のりを行きは時速 $60\,\mathrm{km}$、帰りは時速 $40\,\mathrm{km}$ で往復する。片道を $d\,\mathrm{km}$ とすると、かかる時間は $\frac d{60}+\frac d{40}$ 時間、進んだ道のりは $2d\,\mathrm{km}$ なので、往復の平均の速さは
$$ \frac{2d}{\frac d{60}+\frac d{40}}=\frac2{\frac1{60}+\frac1{40}}=\frac2{\frac{5}{120}}=48 $$
(時速 $48\,\mathrm{km}$)であり、$60$ と $40$ の調和平均になる。相加平均の $50$ ではない。

重み付きの相加相乗平均の不等式

数ごとに重みを付けた平均を考える。

重みと重み付きの平均

$0$ 以上の実数 $\lambda_1,\dots,\lambda_n$ で和が $\lambda_1+\cdots+\lambda_n=1$ となるものを重みという。正の数 $a_1,\dots,a_n$ に対して、$\lambda_1a_1+\cdots+\lambda_na_n$ を重み付き相加平均、$a_1^{\lambda_1}a_2^{\lambda_2}\cdots a_n^{\lambda_n}$ を重み付き相乗平均という。ここで $a>0$ と実数 $\lambda$ について $a^\lambda:=e^{\lambda\log a}$ であり、$\log(a^\lambda)=\lambda\log a$ が成り立つ。

重みがすべて $\frac1n$ なら、ふつうの相加平均 $A$ と相乗平均 $G$ になる。Jensenの不等式(高校数学) で使う重みと同じものである。
証明の道具は、対数関数についての次の不等式である。

対数の不等式

$x>0$ について $\log x\le x-1$ が成り立つ。等号は $x=1$ のときに限る。

差の関数の増減

$g(x):=x-1-\log x$($x>0$)とおく。$g'(x)=1-\frac1x=\frac{x-1}x$ である。$0< x<1$ では $x-1<0$ なので $g'(x)<0$、$x>1$ では $g'(x)>0$ である。よって $g$ は $0< x\le1$ で狭義に減少し、$x\ge1$ で狭義に増加する。したがって $x\ne1$ なら $g(x)>g(1)=1-1-\log1=0$ であり、$x=1$ では $g(1)=0$ である。$g(x)\ge0$ は $\log x\le x-1$ と同じである。$\square$

対数の不等式を数で確かめる
  1. $x=2$:左辺は $\log2=0.693\ldots$、右辺は $2-1=1$ で、$0.693\ldots\le1$ である。
  2. $x=\frac12$:左辺は $\log\frac12=-\log2=-0.693\ldots$、右辺は $\frac12-1=-\frac12$ で、$-0.693\ldots\le-0.5$ である。
  3. $x=1$:左辺は $\log1=0$、右辺は $1-1=0$ で、等号が成り立つ。

$y=x-1$ は $y=\log x$ の $x=1$ での接線であり、この不等式は「上に凸なグラフは接線より下にある」ことの例である(曲線の凹凸と接線)。
一般の証明の前に、数で同じ計算をしてみる。

証明の計算を数でたどる

$a_1=1$、$a_2=8$、重み $\lambda_1=\frac23$、$\lambda_2=\frac13$ とする。重み付き相乗平均は $1^{2/3}\cdot8^{1/3}=2$、重み付き相加平均は $A:=\frac23\cdot1+\frac13\cdot8=\frac{10}3$ である。
各数を $A$ で割ると $\frac{a_1}A=\frac3{10}$、$\frac{a_2}A=\frac{12}5$ であり、lem-means-log から
$$ \log\frac3{10}\le\frac3{10}-1=-\frac7{10},\qquad\log\frac{12}5\le\frac{12}5-1=\frac75 $$
である。それぞれに重み $\frac23$、$\frac13$ を掛けて足すと、右辺は $\frac23\cdot\bigl(-\frac7{10}\bigr)+\frac13\cdot\frac75=-\frac7{15}+\frac7{15}=0$ となる。左辺は $\frac23\log\frac3{10}+\frac13\log\frac{12}5=\log\Bigl(\bigl(\frac3{10}\bigr)^{2/3}\bigl(\frac{12}5\bigr)^{1/3}\Bigr)=\log\frac{1^{2/3}\cdot8^{1/3}}{10/3}=\log\frac2{10/3}=\log0.6$ であり、$\log0.6\le0$、つまり $2\le\frac{10}3$ が出る。

重み付きの相加相乗平均の不等式

正の数 $a_1,\dots,a_n$ と重み $\lambda_1,\dots,\lambda_n$($0$ 以上で和が $1$)について
$$ a_1^{\lambda_1}a_2^{\lambda_2}\cdots a_n^{\lambda_n}\le\lambda_1a_1+\lambda_2a_2+\cdots+\lambda_na_n $$
が成り立つ。等号は、$\lambda_i>0$ となるすべての $i$ について $a_i$ が等しいときに限る。
特に、重みをすべて $\frac1n$ にすると $\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n}\le\frac{a_1+a_2+\cdots+a_n}n$ であり、等号は $a_1=\cdots=a_n$ のときに限る。

各数を相加平均で割って対数の不等式を使う

方針:ex-means-proof-preview と同じく、各 $a_i$ を重み付き相加平均 $A$ で割った数に lem-means-log を使い、重みを掛けて足す。
段 1(重みが $0$ の項を除く)。$\lambda_i=0$ の項は、左辺では $a_i^0=1$、右辺では $0\cdot a_i=0$ となり、両辺に影響しない。そこで、$\lambda_i=0$ の項を除いて、すべての $\lambda_i>0$ としてよい(除いた後も重みの和は $1$ である)。
段 2($A$ で割る)。$A:=\lambda_1a_1+\cdots+\lambda_na_n$ とおく。$a_i>0$、$\lambda_i>0$ なので $A>0$ である。各 $i$ について $x=\frac{a_i}A$ に lem-means-log を使うと
$$ \log\frac{a_i}A\le\frac{a_i}A-1\qquad(i=1,\dots,n) $$
である。
段 3(重みを掛けて足す)。$\lambda_i>0$ を掛けても向きは変わらない。$i$ について足すと、右辺は
$$ \sum_{i=1}^n\lambda_i\Bigl(\frac{a_i}A-1\Bigr)=\frac{\lambda_1a_1+\cdots+\lambda_na_n}A-(\lambda_1+\cdots+\lambda_n)=\frac AA-1=0 $$
となる。よって $\sum_{i=1}^n\lambda_i\log\frac{a_i}A\le0$ である。
段 4(左辺を 1 つの対数にする)。$\log\frac{a_i}A=\log a_i-\log A$ と $\sum_i\lambda_i=1$ より
$$ \sum_{i=1}^n\lambda_i\log\frac{a_i}A=\sum_{i=1}^n\lambda_i\log a_i-\log A=\log\bigl(a_1^{\lambda_1}\cdots a_n^{\lambda_n}\bigr)-\log A $$
である($\lambda_i\log a_i=\log a_i^{\lambda_i}$ と $\log s+\log t=\log(st)$ を使った)。段 3 と合わせて $\log\bigl(a_1^{\lambda_1}\cdots a_n^{\lambda_n}\bigr)\le\log A$ であり、$\log$ は狭義に増加するので $a_1^{\lambda_1}\cdots a_n^{\lambda_n}\le A$ である。
段 5(等号の条件)。すべての $a_i$ が等しければ、両辺はともにその値である。逆に等号が成り立つとすると、段 3 の和で等号が成り立つ。各項は $\lambda_i\log\frac{a_i}A\le\lambda_i\bigl(\frac{a_i}A-1\bigr)$ であり、1 つでも $<$ があれば和も $<$ になるので、すべての $i$ で等号である。$\lambda_i>0$ で割ると $\log\frac{a_i}A=\frac{a_i}A-1$ であり、lem-means-log の等号条件から $\frac{a_i}A=1$、つまり $a_i=A$ である。よってすべての $a_i$ は $A$ に等しい。$\square$

Jensen の不等式との関係

$\log$ は $(0,\infty)$ で上に凸(凹関数)なので、Jensenの不等式(高校数学)を凹関数の向きに使うと $\sum_i\lambda_i\log a_i\le\log\bigl(\sum_i\lambda_ia_i\bigr)$ となり、両辺の指数をとると thm-means-weighted-amgm になる。上の証明は、$\log$ の $x=1$ での接線 $y=x-1$ 1 本だけを使って、この議論を直接行ったものである。凸関数 $-\log$ から重み付きの相加相乗平均の不等式を導く議論は BV04 §3.1.9 にもある。

重み付きの数値例
  1. $a=(1,8)$、重み $\bigl(\frac23,\frac13\bigr)$:重み付き相乗平均 $2$、重み付き相加平均 $\frac{10}3=3.33\ldots$(ex-means-proof-preview)。
  2. $a=(4,8,64)$、重み $\bigl(\frac12,\frac13,\frac16\bigr)$:重み付き相乗平均は $4^{1/2}\cdot8^{1/3}\cdot64^{1/6}=2\cdot2\cdot2=8$、重み付き相加平均は $2+\frac83+\frac{64}6=\frac{46}3=15.33\ldots$ である。
Young の不等式

$p,q>1$、$\frac1p+\frac1q=1$ とし、$a,b>0$ とする。thm-means-weighted-amgm を 2 数 $a^p,b^q$、重み $\frac1p,\frac1q$ に使うと、$(a^p)^{1/p}(b^q)^{1/q}=ab$ なので
$$ ab\le\frac{a^p}p+\frac{b^q}q $$
である。等号は $a^p=b^q$ のときに限る。数値:$p=q=2$、$a=2$、$b=3$ で $6\le2+\frac92=6.5$。$p=3$、$q=\frac32$、$a=2$、$b=4$ では $a^p=8=b^q$ で、$ab=8$、$\frac83+\frac{8}{3/2}=\frac83+\frac{16}3=8$ と等号になる。

4 つの平均の大小

調和・相乗・相加・2 乗平均の大小

正の数 $a_1,\dots,a_n$ の調和平均 $H$、相乗平均 $G$、相加平均 $A$、2 乗平均 $Q$ について
$$ H\le G\le A\le Q $$
が成り立つ。どの $\le$ についても、等号が成り立つのは $a_1=a_2=\cdots=a_n$ のときに限る。

3 つの不等号を 1 つずつ示す

方針:真ん中の $G\le A$ は thm-means-weighted-amgm そのものである。左の $H\le G$ は、逆数に $G\le A$ を使って導く。右の $A\le Q$ は、2 乗の和が $0$ 以上であることから直接示す。
段 1($G\le A$)。thm-means-weighted-amgm で重みをすべて $\frac1n$ にしたものである。等号は $a_1=\cdots=a_n$ のときに限る。
段 2($H\le G$)。正の数 $\frac1{a_1},\dots,\frac1{a_n}$ に段 1 を使うと
$$ \sqrt[n]{\frac1{a_1}\cdots\frac1{a_n}}\le\frac1n\Bigl(\frac1{a_1}+\cdots+\frac1{a_n}\Bigr) $$
である。左辺は $\frac1{\sqrt[n]{a_1\cdots a_n}}=\frac1G$($\frac1G$ を $n$ 乗すると $\frac1{a_1\cdots a_n}$ になるので)、右辺は $\frac1H$($H$ の定義の逆数)である。よって $\frac1G\le\frac1H$ であり、$G,H>0$ なので両辺の逆数をとると向きが逆になって $H\le G$ である。等号は $\frac1{a_1}=\cdots=\frac1{a_n}$、つまり $a_1=\cdots=a_n$ のときに限る。
段 3($A\le Q$)。各 $a_i$ と $A$ の差の 2 乗の平均を展開する。
$$ \begin{aligned} 0\le\frac1n\sum_{i=1}^n(a_i-A)^2 &=\frac1n\sum_{i=1}^n\bigl(a_i^2-2Aa_i+A^2\bigr)\\ &=\frac1n\sum_{i=1}^na_i^2-2A\cdot\frac1n\sum_{i=1}^na_i+A^2\\ &=Q^2-2A\cdot A+A^2=Q^2-A^2 \end{aligned} $$
ここで $\frac1n\sum a_i^2=Q^2$、$\frac1n\sum a_i=A$、$\frac1n\sum_{i=1}^nA^2=A^2$ を使った。よって $A^2\le Q^2$ であり、$A,Q>0$ なので $A\le Q$ である。等号は $\sum_i(a_i-A)^2=0$、つまりすべての $i$ で $a_i=A$ のときに限る。$\square$

調和平均と相乗平均が、正多角形の辺の数を 2 倍にする漸化式に現れることは 正多角形で円周率を挟む で扱う。
段 3 の $\frac1n\sum(a_i-A)^2$ は、データの分散と同じ式である。$Q^2-A^2$ が分散に等しいことから、「2 乗平均と相加平均の差は、数のばらつきの大きさで決まる」ことがわかる。
2 数 1 と x の 4 つの平均。x=1 以外では常に調和 < 相乗 < 相加 < 2 乗平均の順に並ぶ 2 数 1 と x の 4 つの平均。x=1 以外では常に調和 < 相乗 < 相加 < 2 乗平均の順に並ぶ
図 2 は 2 数 $1$ と $x$ の 4 つの平均を $x$ の関数としてかいたものである。4 本の曲線は $x=1$(2 数が等しいとき)だけで交わり、それ以外では上から 2 乗・相加・相乗・調和の順に並ぶ。$x=4$ での値は ex-means-numeric の $1.6<2<2.5<2.915\ldots$ である。

和が一定のときの 2 乗の和の最小値

正の数 $a,b,c$ が $a+b+c=3$ を満たすとき、$A=1$ なので、thm-means-chain の $A\le Q$ から $1\le\sqrt{\frac{a^2+b^2+c^2}3}$、つまり $a^2+b^2+c^2\ge3$ である。等号は $a=b=c=1$ のときに限る。数値:$(0.5,1,1.5)$ では $0.25+1+2.25=3.5\ge3$ である。

項を分ける技法を重みで読む

$x>0$ のとき $x^2+\frac2x\ge3$ を示すのに、$\frac2x=\frac1x+\frac1x$ と分けて 3 数の相加相乗平均を使う方法がある(相加平均と相乗平均)。これは thm-means-weighted-amgm を 2 数 $x^2$、$\frac1x$、重み $\frac13,\frac23$ に使うことと同じである。
$$ \frac13x^2+\frac23\cdot\frac1x\ge\bigl(x^2\bigr)^{1/3}\Bigl(\frac1x\Bigr)^{2/3}=x^{2/3}\cdot x^{-2/3}=1 $$
両辺を 3 倍して $x^2+\frac2x\ge3$ であり、等号は $x^2=\frac1x$、つまり $x=1$ のときである。重みを使うと、項を何個に分けるかを考えなくてよい。

例と反例

外した条件崩れることボックス
数が正平均の大小(調和平均は定義もできない)ex-means-nonpositive
重みが $0$ 以上重み付きの相加相乗平均の不等式ex-means-negative-weight
すべての重みが正「等号ならすべての数が等しい」ex-means-zero-weight
反例:正でない数

$a=(-1,-4)$ では、$\sqrt{(-1)(-4)}=2$ は計算できるが、相加平均は $-\frac52$ であり、$G\le A$ は成り立たない。$a=(0,1)$ では $\frac10$ が定義されないので、調和平均が定義できない。thm-means-chain の「正の数」という仮定は外せない。

反例:負の重み

$a=(1,4)$、「重み」$\lambda=(2,-1)$(和は $1$ だが負の数を含む)とすると、左辺は $1^2\cdot4^{-1}=\frac14$、右辺は $2\cdot1-1\cdot4=-2$ であり、$\frac14\le-2$ は成り立たない。prf-thm-means-weighted-amgm の段 3 で「$\lambda_i$ を掛けても向きは変わらない」が使えなくなるからである。

反例:重みが 0 の数は等号条件にかからない

$a=(1,9)$、重み $\lambda=(1,0)$ では、左辺は $1^1\cdot9^0=1$、右辺は $1\cdot1+0\cdot9=1$ で等号が成り立つが、$1\ne9$ である。重みが $0$ の数は平均に参加していないので、等号の条件は「$\lambda_i>0$ となる $a_i$ がすべて等しい」としか言えない。

さらに先へ

  • べき平均:実数 $p\ne0$ について $M_p:=\bigl(\frac1n\sum a_i^p\bigr)^{1/p}$ とおくと、$M_{-1}=H$、$M_1=A$、$M_2=Q$ であり、$p\to0$ の極限が $G$ になる。$M_p$ は $p$ について増加する(この記事では証明しない)。thm-means-chain はその $p=-1,0,1,2$ の場合である。
  • Hölder の不等式:実数の組 $x=(x_1,\dots,x_n)$、$y=(y_1,\dots,y_n)$(どちらもすべてが $0$ ではないとする)を $\bigl(\sum|x_i|^p\bigr)^{1/p}$、$\bigl(\sum|y_i|^q\bigr)^{1/q}$ で割って $\sum|x_i|^p=\sum|y_i|^q=1$ と正規化し、$a=|x_i|$、$b=|y_i|$ とした ex-means-young の Young の不等式を $i$ について足し合わせると $\sum|x_iy_i|\le\frac1p+\frac1q=1$ となる($a$ や $b$ が $0$ の項では $ab=0$ なので、Young の不等式は $a,b\ge0$ でも成り立つ)。割った数を掛け戻すと、Hölder の不等式 $\sum|x_iy_i|\le\bigl(\sum|x_i|^p\bigr)^{1/p}\bigl(\sum|y_i|^q\bigr)^{1/q}$ が得られ、$p=q=2$ が Cauchy–Schwarz の不等式である。証明は 不等式の証明の技法 にある。
  • エントロピー:確率 $p_1,\dots,p_n>0$(和が $1$)について、thm-means-weighted-amgm を数 $\frac1{p_i}$、重み $p_i$ に使って対数をとると $\sum_ip_i\log\frac1{p_i}\le\log n$ が得られる。等号は thm-means-weighted-amgm の等号条件から、すべての $\frac1{p_i}$ が等しいとき、つまりすべての $p_i=\frac1n$ のときに限る。左辺は情報理論のエントロピーであり、「一様な分布がいちばん不確かさが大きい」ことを表す。

関連項目

参考文献

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